(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112291
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】細胞の分類に用いるための識別器の生成装置、細胞の分類に用いるための識別器、細胞分類装置、および細胞処理システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20240813BHJP
C12Q 1/04 20060101ALN20240813BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12Q1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009913
(22)【出願日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2023016496
(32)【優先日】2023-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】598072179
【氏名又は名称】株式会社片岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(72)【発明者】
【氏名】松本 潤一
(72)【発明者】
【氏名】草鹿 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】森下 忠夫
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
4B029FA03
4B063QA05
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
4B063QX10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】メニスカスによる影響が生じている領域においても、目的細胞および目的外細胞の判別が改善された、細胞の分類に用いるための識別器の生成装置を提供する。
【解決手段】本開示細胞の分類に用いるための識別器の生成装置100は、培養容器D内の細胞を含む観察対象物の撮像画像を取得する取得部と、前記撮像画像の画素に基づき、分類データを生成する分類データ生成部であり、前記分類データは、前記撮像画像の画素の分類を含み、前記分類は、領域の分類と、観察対象物の分類とを含み、前記領域の分類は、少なくとも2種類の領域の分類を含み、前記観察対象物の分類は、目的細胞の分類および目的外細胞の分類を含む、少なくとも3種類の観察対象物の分類を含む、分類データ生成部と、前記撮像画像と前記分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することで識別器を生成する生成部とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養容器内の細胞を含む観察対象物の撮像画像を取得する取得部と、
前記撮像画像の画素に基づき、分類データを生成する分類データ生成部であり、
前記分類データは、前記撮像画像の画素の分類を含み、
前記分類は、領域の分類と、観察対象物の分類とを含み、
前記領域の分類は、少なくとも2種類の領域の分類を含み、
前記観察対象物の分類は、目的細胞の分類および目的外細胞の分類を含む、少なくとも3種類の観察対象物の分類を含む、分類データ生成部と、
前記撮像画像と前記分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することで識別器を生成する生成部とを含む、
細胞の分類に用いるための識別器の生成装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記培養容器内の細胞の位相差顕微鏡画像および蛍光顕微鏡画像を、前記撮像画像として取得し、
前記蛍光顕微鏡画像では、前記細胞が識別可能に蛍光標識されており、
前記分類データ生成部は、
前記撮像画像として、前記蛍光顕微鏡画像を用い、
前記蛍光顕微鏡画像の画素に基づき、前記分類データを生成し、
前記生成部は、前記位相差顕微鏡画像と前記分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することで識別器を生成する、
請求項1に記載の生成装置。
【請求項3】
前記蛍光顕微鏡画像は、
前記目的細胞および前記目的外細胞の両者が、他の観察対象物と識別可能に蛍光標識により標識された第1の蛍光顕微鏡画像と、
前記目的細胞が、他の観察対象物と識別可能に蛍光標識により標識された第2の蛍光顕微鏡画像と、
を含み、
前記分類データ生成部は、
前記第1の蛍光顕微鏡画像および前記第2の蛍光顕微鏡画像を比較することにより、前記目的外細胞が存在する画素を抽出して、抽出された画素を、前記観察対象物の分類として前記目的外細胞と分類し、
前記第2の蛍光顕微鏡画像から、前記目的細胞が存在する画素を抽出して、抽出された画素を、前記観察対象物の分類として前記目的細胞と分類し、
前記目的細胞および前記目的外細胞が存在しない領域を、その他の観察対象物が存在する画素として抽出して、抽出された画素を、前記観察対象物の分類として前記目的細胞の分類および前記目的外細胞の分類以外の観察対象物と分類して前記分類データを生成する、
請求項2に記載の生成装置。
【請求項4】
前記取得部は、
前記培養容器の位相差顕微鏡画像を取得する位相差顕微鏡と、
前記培養容器の蛍光微鏡画像を取得する蛍光顕微鏡と、
を含む、請求項2または3に記載の生成装置。
【請求項5】
前記撮像画像は、位相差顕微鏡画像である、
請求項1に記載の生成装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記培養容器の位相差顕微鏡画像を取得する位相差顕微鏡を含む、請求項5に記載の生成装置。
【請求項7】
前記観察対象物の分類は、さらに、培地の分類を含み、
前記分類データ生成部は、前記目的細胞の分類および前記目的外細胞の分類以外の観察対象物の分類として、前記培地と分類して前記分類データを生成する、
請求項1または2に記載の生成装置。
【請求項8】
前記取得部は、前記培養容器について、複数画分に分画され、各画分について撮像された分割画像を取得する、
請求項1または2に記載の生成装置。
【請求項9】
前記領域の分類は、メニスカス領域の分類および非メニスカス領域の分類を含む、
請求項1または2に記載の生成装置。
【請求項10】
前記目的細胞は、未分化細胞または分化細胞である、
請求項1または2に記載の生成装置。
【請求項11】
前記未分化細胞は、iPS細胞または前駆細胞である、
請求項10に記載の生成装置。
【請求項12】
培養容器内の細胞を含む観察対象物の撮像画像の画素に、前記培養容器における画素の存在する領域および前記画素に存在する観察対象物の分類を付与するために、機械学習により生成された識別器であり、
前記撮像画像と分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することにより生成され、
前記分類データは、前記撮像画像の画素の分類を含み、
前記分類は、領域の分類と、観察対象物の分類とを含み、
前記領域の分類は、少なくとも2種類の領域の分類を含み、
前記観察対象物の分類は、目的細胞の分類および目的外細胞の分類を含む、少なくとも3種類の観察対象物の分類を含む、
細胞の分類に用いるための識別器。
【請求項13】
前記撮像画像は、前記培養容器内の細胞の位相差顕微鏡画像および蛍光顕微鏡画像を含み、
前記位相差顕微鏡画像と、前記分類データとして、前記蛍光顕微鏡画像から生成された分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することにより生成される、
請求項12に記載の識別器。
【請求項14】
前記撮像画像は、位相差顕微鏡画像である、
請求項12に記載の識別器。
【請求項15】
前記観察対象物の分類は、さらに、培地の分類を含む、
請求項12または13に記載の識別器。
【請求項16】
前記領域の分類は、メニスカス領域の分類および非メニスカス領域の分類を含む、
請求項12または13に記載の識別器。
【請求項17】
前記目的細胞は、未分化細胞または分化細胞である、
請求項12または13に記載の識別器。
【請求項18】
前記未分化細胞は、iPS細胞または前駆細胞である、
請求項17に記載の識別器。
【請求項19】
培養容器内の細胞を含む観察対象物の撮像画像の画素に、前記培養容器における画素の存在する領域および前記画素に存在する観察対象物の分類を付与するために、機械学習により生成された識別器であり、
前記撮像画像と分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することにより生成され、
前記分類データは、前記撮像画像の画素の分類を含み、
前記分類は、領域の分類と、観察対象物の分類とを含み、
前記領域の分類は、少なくとも2種類の領域の分類を含み、
前記観察対象物の分類は、目的細胞の分類および目的外細胞の分類を含む、少なくとも3種類の観察対象物の分類を含む、識別器と、
培養容器内の細胞を含む観察対象物の撮像画像を取得する取得部と、
前記取得部で得られた撮像画像に対し、前記識別器を用いて前記撮像画像の画素に前記分類を付与する分類付与部と、
を含む、細胞の分類装置。
【請求項20】
前記取得部は、前記培養容器の位相差顕微鏡画像を取得する位相差顕微鏡を含む、請求項19に記載の分類装置。
【請求項21】
前記教師データに用いる撮像画像は、前記培養容器内の細胞の位相差顕微鏡画像および蛍光顕微鏡画像を含み、
前記位相差顕微鏡画像と、前記分類データとして、前記蛍光顕微鏡画像から生成された分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することにより生成される、
請求項19または20に記載の分類装置。
【請求項22】
前記教師データに用いる撮像画像は、位相差顕微鏡画像である、
請求項19または20に記載の分類装置。
【請求項23】
前記観察対象物の分類は、さらに、培地の分類を含む、
請求項19または20に記載の分類装置。
【請求項24】
前記領域の分類は、メニスカス領域の分類および非メニスカス領域の分類を含む、
請求項19または20に記載の分類装置。
【請求項25】
前記目的細胞は、未分化細胞または分化細胞である、
請求項19または20に記載の分類装置。
【請求項26】
前記未分化細胞は、iPS細胞または前駆細胞である、
請求項25に記載の分類装置。
【請求項27】
請求項19または20に記載の細胞の分類装置と、
培養容器に対してレーザを照射可能なレーザ照射装置と、を含み、
前記レーザ照射装置は、前記培養容器に対してレーザを照射することにより、前記分類装置において、目的細胞の分類および目的外細胞の分類が付与された細胞の少なくとも一方の細胞の状態を変化させる、
細胞の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細胞の分類に用いるための識別器の生成装置、細胞の分類に用いるための識別器、細胞分類装置、および細胞処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
培養器具を用いた細胞の拡大培養または未分化細胞から分化細胞への分化誘導において、目的とする細胞(以下、「目的細胞」ともいう。)以外に、目的としない細胞(以下、「目的外細胞」ともいう。)が生じる。このため、前記拡大培養および分化誘導では、前記目的細胞または目的外細胞を判別し、前記目的外細胞を除去することにより、前記目的細胞を選抜することが行われている。
【0003】
前記目的細胞の判別および除去は、熟練の作業者により実施されている(特許文献1)。しかしながら、前記判別および除去操作は、顕微鏡下での実施が必要等の手間がかかり、且つ作業者の技術レベルによって得られる目的細胞の品質が大きく異なるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らは、目的外細胞がラベルされた教師データを用いて識別器を生成し、前記識別器を用いて目的外細胞を判別する技術について検討した。しかしながら、前記識別器を用いた判別においても、前記目的細胞と前記目的外細胞とを、十分に判別できない場合があるという問題が生じた。特に、前記培養器具において、メニスカスが生じる領域では、培養液の液面での屈曲現象により、前記目的細胞および前記目的外細胞の判別が十分にできないという問題が生じた。
【0006】
そこで、本開示は、メニスカスによる影響が生じている領域においても、目的細胞および目的外細胞の判別が改善された、細胞の分類に用いるための識別器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本開示の細胞の分類に用いるための識別器の生成装置(以下、「生成装置」ともいう)は、
前記分類データは、前記撮像画像の画素の分類を含み、
前記分類は、領域の分類と、観察対象物の分類とを含み、
前記領域の分類は、少なくとも2種類の領域の分類を含み、
前記観察対象物の分類は、目的細胞の分類および目的外細胞の分類を含む、少なくとも3種類の観察対象物の分類を含む、分類データ生成部と、
前記撮像画像と前記分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することで識別器を生成する生成部とを含む。
【0008】
本開示の細胞の分類に用いるための識別器(以下、「識別器」ともいう。)は、培養容器内の細胞を含む観察対象物の撮像画像の画素に、前記培養容器における画素の存在する領域および前記画素に存在する観察対象物の分類を付与するために、機械学習により生成された識別器であり、
前記撮像画像と前記分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することにより生成され、
前記分類データは、前記撮像画像の画素の分類を含み、
前記分類は、領域の分類と、観察対象物の分類とを含み、
前記領域の分類は、少なくとも2種類の領域の分類を含み、
前記観察対象物の分類は、目的細胞の分類および目的外細胞の分類を含む、少なくとも3種類の観察対象物の分類を含む。
【0009】
本開示の細胞の分類装置(以下、「分類装置」ともいう。)は、培養容器内の細胞を含む観察対象物の撮像画像の画素に、前記培養容器における画素の存在する領域および前記画素に存在する観察対象物の分類を付与するために、機械学習により生成された識別器であり、
前記撮像画像と前記分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することにより生成され、
前記分類データは、前記撮像画像の画素の分類を含み、
前記分類は、領域の分類と、観察対象物の分類とを含み、
前記領域の分類は、少なくとも2種類の領域の分類を含み、
前記観察対象物の分類は、目的細胞の分類および目的外細胞の分類を含む、少なくとも3種類の観察対象物の分類を含む、識別器と、
培養容器内の細胞を含む観察対象物の撮像画像を取得する取得部と、
前記取得部で得られた撮像画像に対し、前記識別器を用いて前記撮像画像の画素に前記分類を付与する分類付与部と、
を含む。
【0010】
本開示の細胞の処理システムは、前記本開示の細胞の分類装置と、
培養容器に対してレーザを照射可能なレーザ照射装置と、を含み、
前記レーザ照射装置は、前記培養容器に対してレーザを照射することにより、前記分類装置において、目的細胞の分類および目的外細胞の分類が付与された細胞の少なくとも一方の細胞の状態を変化させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、メニスカスによる影響が生じている領域においても、前記目的細胞および目的外細胞の判別を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1における生成装置(分類装置)の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態1における生成装置(分類装置)における演算装置の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態1における生成方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態1のカメラを用いて培養容器について、複数画分に分画し、各画分について撮像された分割画像を統合した写真と、前記写真におけるメニスカス領域および非メニスカス領域の拡大写真と、培養容器におけるメニスカスの状態を示す模式断面図での一例である。
【
図5】
図5は、実施形態1における取得部により取得された位相差顕微鏡画像と、前記領域の分類および前記観察対象物の分類を含む分類データの模式図との一例を示す。
【
図6】
図6は、実施形態1における分類方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態2における位相差顕微鏡画像と組合せて教師データとして用いる、前記蛍光顕微鏡画像への前記分類の付与手順を示す模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態3における細胞処理システムの構成の一例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、実施形態3における細胞処理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<定義>
本明細書において、「細胞」は、細胞または細胞を含む構成物を意味する。前記細胞は、例えば、細胞、細胞から構成される細胞塊、組織、臓器等でもよい。前記細胞は、例えば、細胞でもよいし、生体から単離した細胞でもよい。具体例として、前記細胞は、例えば、iPS細胞、ES細胞等の多能性幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞等の体性幹細胞;前駆細胞;体細胞;等があげられる。前記細胞は、例えば、未分化細胞でもよいし、分化細胞(例えば、未分化逸脱細胞)でもよい。
【0014】
本明細書において、「観察」は、被観察体の観察を意味する。前記「観察」は、例えば、撮像を伴う観察でもよいし、撮像を伴わない観察でもよい。
【0015】
本明細書において、「細胞の状態」は、細胞の生死、細胞の形態、細胞の遺伝子発現等を意味する。本明細書において、「細胞の状態の変化」は、細胞の生死、細胞の形態、細胞の遺伝子発現等が変化することを意味する。具体例として、前記「細胞の状態の変化」は、例えば、細胞の致死、細胞の遺伝子発現の誘導または抑制等があげられる。前記遺伝子発現の変化は、例えば、光遺伝学的手法により実施できる。
【0016】
本明細書において、「光軸方向」とは、前記結像光学系における光軸(対称軸)の方向を意味し、「Z軸方向」ともいう。前記光軸方向は、例えば、前記被観察体の載置面に対する直交(垂直)方向ということもできる。また、本明細書において、「X軸方向」は、前記光軸方向に直交する平面(XY平面)における1方向をいい、「Y軸方向」は、XY平面において、X軸方向に直交(垂直)する方向を意味する。
【0017】
以下、本開示について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、本開示は、以下の説明に限定されない。なお、以下の
図1~
図9において、同一部分には、同一符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、図面においては、説明の便宜上、各部の構造は適宜簡略化して示す場合があり、各部の寸法比等は、実際とは異なり、模式的に示す場合がある。また、各実施形態は、特に言及しない限り、互いにその説明を援用できる。
【0018】
(実施形態1)
実施形態1は、本開示の生成装置、識別器、および分類装置に関する。
【0019】
本実施形態は、生成装置、識別器、および分類装置の一例である。
図1は、実施形態1の生成装置100の模式図である。
図1に示すように、生成装置100は、撮像装置200と、制御ユニット6とを主要な構成として備える。撮像装置200は、位相差顕微鏡と同様の構成を備え、配置ユニットであるステージ1、結像光学系である対物レンズ2、撮像ユニットであるカメラ3、移動ユニット4、および照明5を主要な構成として備える。移動ユニット(駆動部)4は、第1の移動ユニットであるZ軸方向の移動ユニット41と、第2の移動ユニットであるX軸方向の移動ユニット42およびY軸方向の移動ユニット43と、を備える。Z軸方向の移動ユニット41は、Z軸モータ41aおよびZ軸ボールねじ41bを備える。X軸方向の移動ユニット42は、X軸モータ42aおよびX軸ボールねじ42bを備える。Y軸方向の移動ユニット43は、Y軸モータ43aおよびY軸ボールねじ43bを備える。照明5は、光源51と、光源51を支持する支持部材52とを備える。制御ユニット6は、演算装置61と、シーケンサ(PLC)62と、モータドライバ63と、を備える。演算装置61の構成は、後述する。モータドライバ63は、X軸方向のモータドライバ63xと、Y軸方向のモータドライバ63yと、Z軸方向のモータドライバ63zとを備える。後述するように、実施形態1の生成装置100は、分類装置としても機能する。
【0020】
ステージ1には、生成装置100外の構成である細胞を含む培養容器Dが載置されている。また、ステージ1としては、被観察体を配置可能な任意の構成を採用してもよい。具体例として、前記配置ユニットは、光学観察装置における配置ユニットの構成を利用できる。前記光学観察装置は、例えば、明視野顕微鏡、実体顕微鏡、位相差顕微鏡、微分干渉顕微鏡、偏光顕微鏡、蛍光顕微鏡、共焦点レーザ顕微鏡、全反射照明蛍光顕微鏡、ラマン顕微鏡等があげられ、好ましくは、位相差顕微鏡である。ステージ1において、培養容器Dの配置領域は、ステージ1の下方に配置された対物レンズ2から培養容器Dを観察可能なように構成されている。培養容器Dの配置領域は、ガラス、石英、プラスチックまたは樹脂等の透光性の材料で形成されてもよいし、その一部に貫通孔が形成されてもよい。
【0021】
前記被観察体は、生成装置100の撮像装置200により観察または撮像される対象物である。本実施形態において、前記被観察体は、細胞を含む培養容器Dであるが、前記被観察体は、光学観察装置で観察可能な任意の試料とできる。前記被観察体は、例えば、細胞を含むディッシュ、プレート、フラスコ(細胞培養フラスコ)等の細胞培養容器、サンプルが配置されたプレパラート等があげられる。
【0022】
対物レンズ2は、前記被観察体である培養容器Dの観察像を撮像素子であるカメラ3に結像する。より具体的には、対物レンズ2は、培養容器Dの内の細胞の観察像をカメラ3に結像する。これにより、撮像装置200は、培養容器D内の細胞の観察および撮像が可能となる。撮像装置200において、前記結像光学系は、対物レンズ2として構成されているが、前記被観察体の観察像を結像可能であればよい。前記結像光学系は、例えば、前述の光学観察装置における結像光学系の構成を採用できる。撮像装置200において、対物レンズ2の数は、1つであるが、複数でもよい。この場合、各対物レンズ2の倍率は、同じでも、異なってもよい。
【0023】
撮像装置200において、対物レンズ2は、培養容器Dの下方に配置されているが、培養容器Dの上方に配置されてもよい。前記結像光学系である対物レンズ2の配置場所は、例えば、前述の光学観察装置の種類に応じて、適宜設定できる。
【0024】
カメラ3は、前記被観察体である培養容器Dの観察像を撮像可能であり、より具体的には、培養容器D内の細胞の観察像を撮像可能に構成されている。撮像装置200において、前記撮像ユニットとしては、撮像素子を備えるカメラ3を用いているが、前記被観察体の観察像を撮像可能な構成を採用できる。前記撮像素子は、例えば、公知の撮像素子が使用でき、具体例として、Charge-Coupled Device(CCD、電荷結合素子)、Complementary Metal Oxide Semiconductor(CMOS)等の素子があげられる。このため、前記撮像ユニットは、例えば、これらの撮像素子を備えるカメラ等の撮像装置を採用できる。
【0025】
カメラ3は、後述の演算装置61から送信された撮像トリガ信号を受信すると、前記被観察体である培養容器Dの観察像を撮像するように構成されている。カメラ3の1回の撮像時間(露光時間)は、例えば、前記被観察体の明るさに応じて適宜設定できる。
【0026】
撮像装置200では、前記観察像をカメラ3に結像後、カメラ3により観察像を撮像し、得られた画像(撮像画像)を装置外の表示装置66により表示する。撮像装置200は、表示装置66への表示に加えて、対物レンズ2により得られる像(一次像)を、撮像装置200の使用者が観察する接眼レンズまでリレーしてもよい。この場合、撮像装置200は、例えば、前記一次像を接眼レンズまでリレーするリレー光学系および接眼レンズを含む。前記リレー光学系および前記接眼レンズは、例えば、前述の光学観察装置におけるリレー光学系および接眼レンズの構成を採用できる。表示装置66の具体例は、後述する。
【0027】
前記結像光学系であるカメラ3は、撮像した撮像画像を、演算装置61に送信する。この場合、カメラ3は、前記撮像画像に、前記画像の撮像位置(例えば、XY座標またはXYZ座標等の座標)を関連付けし、演算装置61に送信することが好ましい。
【0028】
移動ユニット4は、前記結像光学系である対物レンズ2および前記撮像素子であるカメラ3を移動(駆動)可能である。撮像装置200において、移動ユニット4は、対物レンズ2およびカメラ3を移動可能であるが、対物レンズ2のみを移動可能に構成されてもよい。また、移動ユニット4は、対物レンズ2に加えて、または代えて前記配置ユニットであるステージ1を移動可能に構成されてもよい。この場合、ステージ1は、電動ステージ、メカニカルステージ等のステージ1と移動ユニット4とが一体化した構成としてもよい。移動ユニット4は、前記結像光学系である対物レンズ2を移動可能に構成することにより、ステージ1を移動可能に構成する場合と比較して、前記被観察体である培養容器D内の培養液の液面のゆれ等を低減できる。これにより、撮像装置200は、液面のゆれにより生じる照明光の強度の変動、焦点位置の変動等の発生を抑制できるため、より精度よく合焦している画像(合焦画像)を含む複数の画像をカメラ3により取得できる。
【0029】
移動ユニット4は、Z軸方向、すなわち、光軸方向に移動可能な第1の移動ユニット(駆動部)およびXY平面方向に移動可能な第2の移動ユニット(駆動部)から構成される。移動ユニット4において、前記第1の移動ユニットは、Z軸モータ41aおよびZ軸ボールねじ41bを備える。また、前記第2の移動ユニットは、X軸モータ42aおよびX軸ボールねじ42bと、Y軸モータ43aおよびY軸ボールねじ43bとを備える。
図1に示すように、Z軸ボールねじ41b、X軸ボールねじ42b、およびY軸ボールねじ43bは、それぞれ、Z軸、X軸、およびY軸方向となるように取付けられている。また、Z軸ボールねじ41bは、X軸ボールねじ42b上をX軸方向に移動可能なように、X軸ボールねじ42b上のナットと接続されている。X軸ボールねじ42bは、Y軸ボールねじ43b上をY軸方向に移動可能なように、Y軸ボールねじ43b上のナットと接続されている。対物レンズ2およびカメラ3は、Z軸ボールねじ41b上をZ軸(光軸)方向に移動可能なように、Z軸ボールねじ41b上のナットと接続されている。そして、Z軸モータ41a、X軸モータ42a、およびY軸モータ43aは、それぞれ、Z軸方向のモータドライバ63z、X軸方向のモータドライバ63x、およびY軸方向のモータドライバ63yと接続されている。このため、撮像装置200では、後述のモータドライバ63により、後述の駆動信号が送信される。そして、前記駆動信号に基づき、Z軸モータ41a、X軸モータ42a、およびY軸モータ43aが駆動することで、対物レンズ2およびカメラ3は、前記駆動信号により指定されたXYZ座標に移動する。Z軸モータ41a、X軸モータ42a、およびY軸モータ43aは、例えば、位置制御可能なモータがあげられ、具体例として、ステッピングモータが使用できる。
【0030】
撮像装置200において、移動ユニット4は、前記配置ユニットおよび前記結像光学系の少なくとも一方を移動可能であればよく、前述の光学観察装置における対応する構成を採用できる。移動ユニット4は、ボールねじおよびモータから構成されているが、リニアモータから構成してもよいし、さらに、台車と組合せてもよい。対物レンズ2がレンズ繰り出し機構等の焦点調節機構を備える場合、前記焦点調節機構を、移動ユニット4における前記第1の移動ユニットとしてもよい。
【0031】
移動ユニット4は、前記光軸(Z軸)方向に、前記配置ユニットおよび前記結像光学系の少なくとも一方を移動可能に構成されていればよく、さらに、前記X軸方向およびY軸方向の少なくとも一方に移動可能に構成されてもよい。前記X軸方向およびY軸方向の移動は、例えば、前記光軸方向の垂直(直交)方向の平面(XY平面)における移動ということもできる。
【0032】
つぎに、照明5は、ステージ1に配置された被観察体である培養容器Dを照明する。照明5は、前記被観察体を照明可能な光源51を備える。照明5は、光源51に加え、光源51からの照明光を被観察体に導光する照明光学系を備えてもよい。光源51は、例えば、ハロゲンランプ、タングステンランプ、LED(Light Emitting Diode)等があげられる。前記照明光学系は、例えば、前述の光学観察装置における照明光学系の構成を採用できる。
【0033】
生成装置100において、照明5は、ステージ1を挟んで、対物レンズ2およびカメラ3と対向するように、配置されている。すなわち、照明5は、ステージ1の上方に配置されているが、照明5の配置場所は、これに限定されず、前記光学観察装置の種類に応じて、適宜設定でき、例えば、ステージ1の下方に配置されてもよい。また、照明5は、カメラ3と支持部材52を介して連結され、これにより、カメラ3の移動と連動して移動するが、これに限定されない。照明5は、カメラ3と独立に移動可能に構成されてもよいし、移動しなくてもよい。照明5がカメラ3と独立に移動可能に構成される場合、照明5は、Z軸方向において、カメラ3と同軸上に配置されるように移動することが好ましい。生成装置100において、照明5は、カメラ3と連動して移動することにより、対物レンズ2およびカメラ3により観察および撮像される培養容器Dの撮像対象領域を好適に照明できる。前記撮像対象領域は、撮像装置200により撮像を実施する領域を意味する。
【0034】
制御ユニット6は、前述のように、演算装置61と、PLC62と、モータドライバ63とを備える。生成装置100において、制御ユニット6における演算装置61が、PLC62と、モータドライバ63と協働して、移動制御ユニット、撮像制御ユニット、取得部611、分類データ生成部612、および生成部613等の各部として機能する。本開示は、これに限定されず、演算装置61が単独で前記移動制御ユニット、前記撮像制御ユニット、取得部611、分類データ生成部612、および生成部613として機能してもよいし、演算装置61と、モータドライバ63とが協働して、前記移動制御ユニット、前記撮像制御ユニット、取得部611、分類データ生成部612、および生成部613として機能してもよい。
【0035】
演算装置61は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ワークステーション等と類似する構成を備える。
図2は、撮像装置200における演算装置61の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、演算装置61は、中央演算装置(CPU)61a、メインメモリ(主記憶デバイス)61b、補助記憶デバイス61c、ビデオコーデック61d、I/O(input-output)インターフェイス61e、GPU61f等を含み、これらがコントローラ(システムコントローラ、I/Oコントローラ等)61gにより制御され、連携動作する。補助記憶デバイス61cは、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の記憶手段があげられる。演算装置61は、演算手段(プロセッサー)としてCPU61aおよびGPU61fを備えるが、いずれか一方のみを備えてもよい。ビデオコーデック61dは、CPU61aより受けた描画指示をもとに表示する画面を生成し、その画面信号を、例えば、撮像装置200外の表示装置66等に向けて送信するGPU(Graphics Processing Unit)、画面および画像のデータを一時的に記憶しておくビデオメモリ等を含む。I/Oインターフェイス61eは、PLC62およびカメラ3と通信可能に接続して、これらを制御または画像等の情報を取得するためのデバイスである。I/Oインターフェイス61eは、サーボドライバ(サーボコントローラ)を含んでもよい。また、I/Oインターフェイス61eは、例えば、撮像装置200外の入力装置67と接続してもよい。表示装置66は、映像により出力するモニター(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、ブラウン管(CRT)ディスプレイ等の各種画像表示装置等)等があげられる。入力装置67は、ユーザが手指で操作可能なタッチパネル、トラックパッド、マウス等のポインティングデバイス、キーボード、押下ボタン等があげられる。GPU61fは、撮像装置200のカメラ3から入力された画像(撮像画像)を処理する。
【0036】
演算装置61が実行するプログラムおよび各情報は、補助記憶デバイス61cに記憶されている。前記プログラムは、実行時にメインメモリ61bに読み込まれ、CPU61aによって解読される。そして、演算装置61は、プログラムに従い、前記移動制御ユニット、前記撮像制御ユニット、取得部611、分類データ生成部612および生成部613等の各部として機能する。このため、生成装置100において、CPU61aが、前記移動制御ユニット、前記撮像制御ユニット、取得部611、分類データ生成部612および生成部613として機能する。各部の機能については後述する。
【0037】
また、演算装置61で用いる識別器は、補助記憶デバイス61cに記憶される。このため、生成装置100が分類装置として機能する場合、すなわち、演算装置61が前記分類を付与する場合、前記識別器は、実行時にメインメモリ61bに読み込まれ、GPU61fによって解読される。このため、GPU61fが、分類付与部614として機能する。各部の機能については後述する。
【0038】
図1に示すように、PLC62は、モータドライバ63と接続され、より具体的には、モータドライバ63のZ軸方向のモータドライバ63z、X軸方向のモータドライバ63x、およびY軸方向のモータドライバ63yと接続されている。PLC62は、例えば、プログラマブル・ロジック・コントローラまたはシーケンサを使用できる。PLC62は、演算装置61により送信された対物レンズ2の移動位置を指定する情報を、Z軸モータ41a、X軸モータ42a、およびY軸モータ43aを制御するモータドライバ63へのモータ指令に変換する。そして、PLC62は、モータドライバ63を介して、Z軸モータ41a、X軸モータ42a、およびY軸モータ43aを駆動し、対物レンズ2が指定された移動位置に到達すると、演算装置61に対物レンズ2の移動が完了したとの情報を送信する。
【0039】
撮像装置200において、演算装置61は、PLC62を介して、モータドライバ63を制御している。すなわち、演算装置61は、PLC62、およびモータドライバ63が協働して、移動ユニット4による移動を制御する移動制御ユニットとして機能している。ただし、本開示は、これに限定されず、演算装置61が、直接的にモータドライバ63を制御してもよい。この場合、演算装置61は、例えば、モータコントローラー;モータ制御機能を有するマイクロコントローラ、FPGA(field-programmable gate array);等を備える。
【0040】
図1に示すように、モータドライバ63は、Z軸方向のモータドライバ63z、X軸方向のモータドライバ63x、およびY軸方向のモータドライバ63yを備える。Z軸方向のモータドライバ63z、X軸方向のモータドライバ63x、およびY軸方向のモータドライバ63yは、それぞれ、Z軸モータ41a、X軸モータ42a、およびY軸モータ43aと接続されている。そして、Z軸方向のモータドライバ63z、X軸方向のモータドライバ63x、およびY軸方向のモータドライバ63yは、それぞれ、PLC62から送信されたモータ指令に基づき、駆動信号を送信し、Z軸モータ41a、X軸モータ42a、およびY軸モータ43aを駆動する。前記駆動信号は、例えば、二相パルスの信号である。
【0041】
生成装置100では、演算装置61が、直接的にカメラ3による撮像を制御する。すなわち、生成装置100では、演算装置61が、カメラ3に対して、撮像を行なうよう指令する撮像トリガ信号を送信する。
【0042】
つぎに、実施形態1の生成装置100を用いた実施形態1の生成方法について説明する。
【0043】
図3は、実施形態1の生成方法を示すフローチャートである。
図3に示すように、実施形態1の生成方法は、S1工程(移動)、S2工程(撮像)、S3工程(データ生成)、およびS4工程(識別器生成)を含む。また、実施形態1の生成方法において、S1工程とS2工程とは並行して実施される。
【0044】
S1工程では、前記被観察体である培養容器Dの観察像を結像する対物レンズ2を、前記移動開始位置から前記移動終了位置まで対物レンズ2の光軸方向に沿って移動する。具体的には、S1工程では、演算装置61の前記移動制御ユニットが、PLC62に対して、対物レンズ2の移動位置を指定する情報(例えば、XYZ座標)を送信する。すると、PLC62およびモータドライバ63が、対物レンズ2の移動位置を指定する情報に基づき、協働して、移動ユニット4による移動を制御する。そして、S1工程では、移動ユニット4により、前記移動開始位置から前記移動終了位置まで、対物レンズ2がZ軸方向に移動される。
【0045】
前記移動開始位置は、前記光軸方向の移動を開始する位置を意味し、具体的には、前記光軸方向の移動を開始し、かつ前記撮像制御ユニットによる前記観察像の撮像開始の制御を実施する位置を意味する。前記移動終了位置は、前記光軸方向の移動を終了する位置を意味し、具体的には、前記光軸方向の移動を終了し、かつ後述の撮像指示ユニット512による前記観察像の撮像終了の制御を実施する位置を意味する。前記移動開始位置および前記移動終了位置は、例えば、撮像装置200の使用者により予め設定されてもよいし、培養容器Dの容器内の底面またはステージ1の座標に基づき、設定されてもよい。前記移動開始位置および前記移動終了位置は、例えば、XYZ座標として表される。前記光軸(Z軸)方向における前記移動開始位置と前記移動終了位置との距離は、例えば、前記被観察体の厚み、すなわち、光軸方向の長さに基づき設定できる。前記被観察体が細胞の場合、前記光軸方向における前記移動開始位置と前記移動終了位置との距離は、例えば、0.2~0.5mmである。前記移動開始位置および前記移動終了位置は、例えば、メニスカスの影響を受けない領域において、合焦画像が得られるZ軸方向の位置を含むように設定できる。
【0046】
実施形態1の生成方法において、S1工程では、前記結像光学系である対物レンズ2およびカメラ3を移動させているが、本開示は、これに限定されない。S1工程では、前記配置ユニットであるステージ1を移動させてもよいし、ステージ1および対物レンズ2の両者を移動させてもよい。
【0047】
つぎに、S2工程では、前記光軸方向の移動において、カメラ3により前記観察像を複数枚撮像する。具体的には、S2工程では、演算装置61の撮像制御ユニットが、PLC62およびZ軸方向のモータドライバ63zに対して、ONの信号を送信する。すると、PLC62およびZ軸方向のモータドライバ63zが、前記ONの信号に基づき、協働して、S1工程における対物レンズ2の光軸方向の移動において、カメラ3により、培養容器D内の細胞の観察像を複数枚撮像する。そして、S2工程では、カメラ3が、各撮像画像について、撮像時の対物レンズ2のXYZ座標を紐付けた後、撮像された複数枚の撮像画像を演算装置61に送信し、演算装置61の補助記憶デバイス61cに格納される。なお、S2工程では、前記複数枚の撮像画像を格納したが、ユーザ等により選択された1枚の撮像画像を格納してもよい。
【0048】
前記撮像制御ユニットは、前記光軸方向の移動において、カメラ3により前記観察像を複数枚撮像するように、カメラ3による撮像を制御する。撮像される観察像の数は、前記光軸方向の移動距離と、前記移動開始位置と前記移動終了位置との距離によって決定できる。前記撮像される観察像の数は、複数枚であればよく、その上限は、特に制限されない。撮像指示ユニット512は、前記光軸方向の移動において、所定距離の移動毎に前記撮像素子により前記観察像を撮像することで、前記観察像を複数枚撮像するように、カメラ3を制御することが好ましい。これにより、撮像装置200は、後述の選抜ユニット514における選抜において、前記被観察体により焦点があった合焦画像を選抜できる。なお、S2工程では、複数枚の撮像画像を撮像し、合焦画像を選抜しているが、本開示はこれに限定されず、1枚の撮像画像を撮像してもよい。この場合、S2工程では、例えば、ユーザにより、培養容器Dの被観察体に焦点があった位置となるように、対物レンズ2の位置が調整されることが好ましい。撮像装置200は、この状態で、撮像を行うことにより、前記被観察体により焦点があった合焦画像を撮像できる。
【0049】
つぎに、S3工程およびS4工程では、補助記憶デバイス51cに格納された撮像画像の画素に、前記画素の分類を付与し、前記撮像画像と、前記分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することで識別器を生成する。実施形態1の特徴的な処理であるS3工程およびS4工程について、
図4を用いて説明する。
図4は、カメラ3を用いて、iPS細胞を拡大培養した培養容器Dについて、複数画分に分画し、各画分について撮像された分割画像を統合した画像(位相差顕微鏡画像)と、前記写真におけるメニスカスが生じている領域(メニスカス領域)およびメニスカスが生じていない領域(通常領域、非メニスカス領域)の拡大写真と、培養容器Dにおけるメニスカスの状態を示す模式断面図での一例である。
図4(A)において、上段は、培養容器Dの模式断面図であり、下段は、培養容器D全体の位相差顕微鏡画像である。
図4において、(B)は、(A)における矢印Xの通常領域の拡大画像であり、(C)は、(A)における矢印Yのメニスカス領域の拡大画像である。以下、
図4において、前記目的細胞がiPS細胞であり、前記目的外細胞がiPS細胞以外の細胞である場合を例にあげて説明する。
【0050】
図4(A)~(C)に示すように、前記通常領域では、前記位相差顕微鏡画像において大きなコントラストが得られ、前記目的細胞(iPS細胞)と、前記目的外細胞(iPS細胞以外の細胞)との観察像が明確に確認できる。他方、前記メニスカス領域では、前記位相差顕微鏡画像において、位相差の劣化が生じ、前記目的細胞(iPS細胞)と、前記目的外細胞(iPS細胞以外の細胞)との観察像が変化する。特に、前記通常領域および前記メニスカス領域間を比較した場合、前記目的外細胞の観察像が大きく変化する。このため、前記目的外細胞がラベルされた教師データを用いて生成した識別器では、前記培養器具における目的外細胞を十分に判別できず、特に、前記メニスカス領域における前記目的外細胞を判別できないという問題が生じると推定された。
【0051】
本発明者らは、
図4(B)および(C)に示すように、前記通常領域および前記メニスカス領域の各領域では、前記目的細胞の観察像および前記目的外細胞の観察像間で、前記観察像の変化が相対的に小さいことを見出した。そこで、本発明者らは、前記撮像画像の画素への分類の付与において、前記画素に存在する観察対象物、すなわち、細胞等の分類に、各画素の領域の分類を組合せて付与するという工夫を行った。これにより、前記識別器は、前記領域の情報を踏まえてパラメーターが設定される。このため、実施形態1の生成装置100では、メニスカスによる影響が生じている領域においても、前記目的細胞および目的外細胞の判別を改善できる。
【0052】
つづいて、
図5を用いて、S3工程の詳細について説明する。
図5は、取得部611により取得された位相差顕微鏡画像と、前記領域の分類および前記観察対象物の分類を含む分類データの模式図との一例を示す。
図5において、(A)は、前記通常領域における位相差顕微鏡画像を示し、(B)は、前記メニスカス領域における位相差顕微鏡画像を示し、(C)は、前記通常領域における分類を模式的に示す分類データを示し、(D)は、前記メニスカス領域における分類を模式的に示す分類データを示す。なお、
図5(C)および(D)では、分類データを模式的に画像で示しているが、前記分類データは、前記画像における座標と前記分類とが紐付けられたデータである。
【0053】
S3工程では、
図5(A)および(B)の位相差顕微鏡画像を用いて、
図5(C)および(D)の分類が付与された分類データを作製する。S3工程では、まず、取得部611が、補助記憶デバイス61cに格納された観察画像である位相差顕微鏡画像を取得する。つぎに、S3工程では、分類データ生成部612により、取得された位相差顕微鏡画像の各画素に対して分類を付与する。S3工程において、前記分類の付与は、例えば、ユーザにより入力された情報を紐付けることにより実施できる。具体的には、S3工程では、まず、表示装置66に、前記分類を付与する位相差顕微鏡画像を表示する。そして、ユーザが、入力装置67を用いて、前記位相差顕微鏡画像の各画素に対して、前記領域の分類および前記観察対象物の分類を付与する。実施形態1の生成装置100では、ユーザは、前記領域の分類として、前記メニスカス領域の分類および前記通常領域(非メニスカス領域)の分類を付与する。また、ユーザは、前記観察対象物の分類として、前記目的細胞(iPS細胞)、前記目的外細胞(iPS細胞以外の細胞)、およびその他の観察対象物(例えば、培地)の分類を付与する。実施形態1の生成装置100では、入力装置67により入力された情報に基づき、分類データ生成部612が、前記画素の座標(例えば、XY座標)と、前記領域の分類および前記観察対象物の分類とを紐付けて、分類データを生成する。これにより、S3工程では、
図5(A)および(B)の位相差顕微鏡画像から、
図5(C)および(D)の分類が付与された分類データを生成できる。
【0054】
つぎに、前記被観察体がカメラ3の一視野で撮像可能な複数の領域(分割領域)に分割され、前記被観察体が分割領域毎に撮像される場合、S1工程では、演算装置61の移動指示ユニット511が、PLC62に対して、つぎの分割領域を撮像するための対物レンズ2の移動位置を指定する情報(例えば、XYZ座標)を送信する。すると、PLC62およびモータドライバ63が、対物レンズ2の移動位置を指定する情報に基づき、協働して、移動ユニット4による移動を制御し、対物レンズ2は、新たな分割領域に移動する。前記新たな分割領域への移動は、XY平面上の移動であることが好ましく、より好ましくは、隣接する新たな分割領域へのXY平面上の移動である。そして、実施形態1の生成装置100は、新たな分割領域への移動後、S1~S3工程を同様に実施する。そして、実施形態1の生成装置100は、撮像されていない分割領域がなくなるまで、同様に、新たな分割領域への移動および新たな分割領域でのS1~S3工程の処理を繰り返し実施する。
【0055】
つぎに、S4工程では、前記位相差顕微鏡画像と、S3工程で作製された前記分類データとを用いて、前記識別器を生成する。具体的には、S4工程では、生成部613が、前記位相差顕微鏡画像と、前記分類データとを組として、教師データを生成する。そして、生成部613は、前記教師データを用いて、機械学習を実施することにより、識別器を生成する。前記機械学習は、例えば、U-Net等のセマンティックセグメンテーション用のモデルが使用できる。前記教師データの数は、特に制限されず、例えば、得られる識別器の判別精度に応じて、ユーザにより設定できる。これにより、S4工程では、培養容器D内の細胞を含む観察対象物の撮像画像の画素に、培養容器Dにおける画素の存在する領域および前記画素に存在する観察対象物の分類を付与可能な識別器を生成できる。そして、S4工程では、得られた識別器を補助記憶デバイス61cに格納して終了する。
【0056】
つぎに、実施形態1の生成装置100を用いた実施形態1の分類方法について説明する。
【0057】
図6は、実施形態1の分類方法を示すフローチャートである。
図6に示すように、実施形態1の分類方法は、S5工程(移動)、S6工程(撮像)、およびS7工程(分類付与)を含む。また、実施形態1の分類方法において、S5工程とS6工程とは並行して実施される。なお、実施形態1の分類方法は、S5工程およびS6工程の実施後に、S7工程を実施しているが、本開示はこれに限定されず、S5工程、S6工程およびS7工程を並行して実施してもよい。
【0058】
まず、実施形態1の付与方法では、S5工程およびS6工程を、それぞれ、S1工程およびS2工程と同様に実施する。
【0059】
つぎに、S7工程では、補助記憶デバイス51cに格納された撮像画像に対して、S4工程で得られた識別器を用いて前記撮像画像の画素に前記分類を付与する。S7工程では、まず、取得部611が、補助記憶デバイス61cに格納された観察画像である位相差顕微鏡画像を取得する。つぎに、S7工程では、分類付与部614により、取得された位相差顕微鏡画像の各画素に対して、前記識別器を用いて、前記領域の分類および前記観察対象物の種類の分類を付与する。具体的には、S7工程では、前記撮像画像および前記識別器を、分類付与部614に入力し、前記撮像画像の各画素に対して、前記領域の分類および前記観察対象物の種類の分類を付与する。これにより、S7工程では、前記画素の座標(例えば、XY座標)と、前記目的細胞の分類および前記目的外細胞の分類とが紐付けられたデータが生成でき、前記撮像画像における目的細胞および目的外細胞を判別するための情報を取得できる。そして、S7工程では、前記撮像画像の各画素に付与された分類に関する前記データについて、補助記憶デバイス61cに格納して、終了する。
【0060】
実施形態1の生成装置100は、全ての分割領域の撮像後、各分割領域において、複数枚の撮像画像から、培養容器D全体の合焦画像を生成してもよい。前記統合は、各分割領域の撮像画像に紐付いたXYZ座標に基づき、各撮像画像を配置することにより実施できる。これにより、実施形態1の生成装置100は、培養容器Dの全体の撮像画像を得ることができる。この場合、実施形態1の生成装置100では、前記全体の撮像画像について、S3工程およびS4工程を実施してもよい。また、実施形態1の生成装置100では、前記全体の撮像画像について、S7工程を実施してもよい。
【0061】
実施形態1の生成装置100において、撮像装置200は、位相差顕微鏡を用いたが、本開示はこれに限定されず、前述の他の光学観察装置を用いてもよいし、前記位相差顕微鏡と他の光学観察装置とを組合せて用いてもよい。前記組合せは、例えば、前記位相差顕微鏡と前記蛍光顕微鏡との組合せがあげられる。
【0062】
(実施形態1の効果)
実施形態1の生成装置100では、分類データ生成部612が、前記撮像画像の画素への分類の付与において、前記画素に存在する観察対象物、すなわち、細胞等の分類に、各画素の領域の分類を組合せて付与する。そして、実施形態1の生成装置100では、生成部613が、前記領域の分類および前記観察対象物の分類を含む分類データと、前記撮像画像とを組として教師データとし、これを用いて識別器を生成する。このため、実施形態1の生成装置100では、前記領域の情報を踏まえてパラメーターが設定された識別器を生成できる。このため、実施形態1の生成装置100で得られた識別器によれば、撮像画像に対して分類を付与した際に、培養容器Dにおける領域を考慮して、観察対象物の分類を付与できるため、前記目的細胞および目的外細胞の判別を改善できる。
【0063】
実施形態1の生成装置100では、前記観察対象物の分類において、前記目的細胞をiPS細胞、前記目的外細胞をiPS細胞以外の細胞とする例をあげて説明したが、本開示はこれに限定されず、前記目的細胞および前記目的外細胞の組合せは、任意の組合せとできる。前記目的細胞および前記目的外細胞の組合せ(順不同)は、例えば、分化誘導系における未分化細胞(前駆細胞)から分化する細胞および前記未分化細胞の組合せ等があげられる。
【0064】
実施形態1の生成装置100では、前記観察対象物の分類において、前記目的細胞および前記目的外細胞の分類は、それぞれ、1つとしたが、本開示はこれに限定されず、複数としてもよい。実施形態1の生成装置100では、例えば、前記目的細胞および前記目的外細胞が複数種類ある場合、それぞれの目的細胞および目的外細胞の分類を設定し、分類データ生成部612により異なる目的細胞および目的外細胞について、対応する目的細胞の分類および目的外細胞の分類を付与することにより、より判別精度が改善された識別器を生成できる。前記目的細胞の種類および前記目的外細胞の種類は、例えば、細胞の種類、細胞が形成する形態(例えば、凝集)の種類、細胞の大きさ、コロニーの大きさ、特定のタンパク質の発現等があげられる。
【0065】
実施形態1の生成装置100は、撮像装置200を含むが、撮像装置200は任意の構成であり、撮像装置200を含まなくてもよい。この場合、生成装置100において取得部611は、例えば、撮像装置200が、生成装置100外に格納した撮像画像を取得し、分類データ生成部612および生成部613は、取得部611により取得された撮像画像を用いて識別器の生成を実施する。
【0066】
実施形態1の生成装置100は、さらに、前記目的細胞または前記目的外細胞の分類が付与された細胞に対して処理を行う処理装置を含んでもよい。これにより、実施形態1の生成装置100は、前記目的細胞および前記目的外細胞の少なくとも一方に対して、細胞の状態を所望の状態に変化させることができる。前記処理は、例えば、レーザ等の光による処理、熱処理、化学物質による処理等があげられる。
【0067】
実施形態1の生成装置100は、撮像装置200で撮像された撮像画像を全て用いているが、本開示はこれに限定されず、前記撮像画像のうち一部の撮像画像または前記撮像画像のうち任意の枚数の撮像画像を用いて、前記識別器を生成してもよい。前記撮像画像のうち一部の撮像画像を用いる場合、生成装置100では、例えば、撮像に失敗した撮像画像、前記教師データとして用いるのに適さないゴミ等が含まれる撮像画像等を除去して学習することで、前記目的細胞および目的外細胞の判別を改善できる。また、前記撮像画像のうち一部の撮像画像を用いる場合、生成装置100では、例えば、前記撮像画像における目的細胞および目的外細胞の割合を調整できるため、前記教師データにとして入力する前記目的細胞の画素および前記目的外細胞の画素の偏りを防止することができる。また、実施形態1の生成装置100は、1つの培養容器Dに由来する撮像画像を用いて識別器を生成したが、本開示はこれに限定されず、複数の培養容器D、すなわち、異なる培養容器Dに由来する撮像画像を用いて識別器を生成してもよい。
【0068】
本実施形態の生成装置100は、分類装置の機能を兼ねているが、本開示はこれに限定されず、生成装置100と前記分類装置とは、別個の装置としてもよい。
【0069】
(実施形態2)
実施形態1の生成装置100は、前記撮像画像への分類の付与において、ユーザにより入力された分類を紐付けることにより、前記撮像画像への分類を付与した。そこで、実施形態2の生成装置100Aでは、前記目的細胞および前記目的外細胞を予め蛍光染色し、前記目的細胞および前記目的外細胞を含む蛍光顕微鏡画像を用いて、分類データ生成部612により、前記目的細胞および前記目的外細胞の分類を付与する生成装置について説明する。
【0070】
実施形態2の生成装置100Aは、実施形態1の生成装置100の撮像装置200が、位相差顕微鏡の構成に加えて、蛍光顕微鏡の構成を備える。前記蛍光顕微鏡は、例えば、公知の蛍光観察法を適用された顕微鏡であり、一例として落射型蛍光顕微鏡または透過型蛍光顕微鏡を用いることができる。本実施形態では、前記蛍光顕微鏡として、落射型蛍光顕微鏡を用いている。前記落射型蛍光顕微鏡は、落射照明で励起光を照射する蛍光顕微鏡である。具体的には、前記落射型蛍光顕微鏡では、ダイクロイックミラーで励起光の波長のみを試料に照射後、前記試料から発生した蛍光と前記試料によって散乱された励起光とを接眼部または撮像素子に導き、さらに、目的とする蛍光の波長のみを透過する吸収フィルタを用いて、蛍光のみを取り出して蛍光を観察する顕微鏡である。また、生成装置100Aは、S2工程において、前記位相差顕微鏡による位相差顕微鏡画像の撮像後に、前記蛍光顕微鏡により蛍光顕微鏡画像を撮像する。具体的には、生成装置100Aは、実施形態1の生成装置100と同様に、各分割領域の位相差顕微鏡画像を撮像する。つぎに、生成装置100Aは、撮像装置200として、前記位相差顕微鏡に代えて、前記蛍光顕微鏡を用いる以外は、前記位相差顕微鏡画像の撮像と同様にして、各分割領域について蛍光顕微鏡画像を取得する。前記蛍光顕微鏡画像は、例えば、蛍光の退色を抑制するために、各分割領域において、1枚撮像することが好ましい。この点を除き、実施形態2の生成装置100Aは、実施形態1の生成装置100と同様の構成を有し、その説明を援用できる。なお、前記位相差顕微鏡画像および前記蛍光顕微鏡画像の撮像は併行して実施してもよい。この場合、生成装置100Aは、新たな分割領域への移動後に位相差顕微鏡画像を撮像する。ついで、生成装置100Aは、同じ分割領域について、蛍光顕微鏡画像を撮像する。そして、生成装置100Aは、つぎの分割領域へ移動し、同様の撮像を未撮像の分割領域がなくなるまで繰り返し実施する。
【0071】
S3工程およびS4工程について、
図7を用いてより具体的に説明する。
図7は、前記位相差顕微鏡画像と組合せて教師データとして用いる、前記蛍光顕微鏡画像への前記分類の付与手順を示す模式図である。
図7に示すように、培養容器D内の細胞は、予め、目的細胞であるiPS細胞のみが染色される蛍光染色試薬と、前記目的細胞であるiPS細胞と、前記目的外細胞であるiPS細胞以外の細胞が染色される蛍光染色試薬とで染色されている。そして、S3工程では、予め蛍光染色された培養容器D中の細胞について、撮像装置200の蛍光顕微鏡を用いて、撮像された蛍光顕微鏡画像を使用する。
【0072】
まず、S3工程では、目的細胞の蛍光染色像を撮像した蛍光顕微鏡画像について、二値化処理を行うことにより、目的細胞が存在する領域を抽出する。前記二値化は、例えば、ユーザにより入力装置67を介して指定されてもよいし、大津の二値化を用いてもよいし、人工知能(AI)を用いて実施してもよい。そして、抽出された目的細胞が存在する領域について、前記目的細胞の分類を付与する。前記二値化処理を、AIを用いて実施する場合、S3工程の一部、すなわち、二値化処理は、GPU61fを用いて実施する。
【0073】
つぎに、S3工程では、前記目的細胞の蛍光染色像を撮像した蛍光顕微鏡画像と、前記目的細胞および前記目的外細胞(全細胞)の蛍光染色像を撮像した蛍光顕微鏡画像とを用いて、前記目的外細胞が存在する領域を抽出する。具体的には、前記全細胞の蛍光顕微鏡画像について、二値化処理を行うことにより、全細胞が存在する領域を抽出する。つぎに、前記全細胞が存在する領域と、前記目的細胞が存在する領域との差分を抽出することにより、前記目的外細胞の存在する領域を抽出する。さらに、抽出された目的外細胞が存在する領域について、前記目的外細胞の分類を付与する。そして、前記目的細胞の分類および前記目的外細胞の分類が付与されていない領域について、培地(または背景)の分類を付与する。
【0074】
また、前記目的細胞の分類および前記目的外細胞の分類の付与と並行して、前記領域の分類を付与する。前記メニスカスが生じる領域は、培養容器Dの形状および培地の量に依存する。そこで、メニスカスが生じる領域について、予め演算装置61に格納しておく。そして、S3工程では、予め設定されたメニスカスが生じる領域の情報を参照し、前記蛍光顕微鏡画像においてメニスカスが生じる領域には、メニスカス領域の分類を、前記蛍光顕微鏡画像においてメニスカスが生じない領域には、通常領域の分類を付与する。これにより、S3工程では、前記分類データを生成できる。S3工程では、例えば、前記分類データについて、ユーザが入力装置67を介して前記画素の分類および前記観察対象物の分類の少なくとも一方を修正してもよい。
【0075】
そして、S4工程では、生成部613が、前記位相差顕微鏡画像と、前記位相差顕微鏡画像と対応する蛍光顕微鏡画像から生成された分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することで識別器を生成する。そして、S4工程では、生成された識別器を補助記憶デバイス61cに記憶して、終了する。
【0076】
実施形態2の生成装置100Aでは、分類データ生成部612が、前記蛍光顕微鏡画像を用いて、前記目的細胞の存在する領域および前記目的外細胞の存在する領域を特定して、前記蛍光顕微鏡画像に前記観察対象物の分類を付与できる。このため、実施形態2の生成装置100Aによれば、ユーザの入力によらず、前記教師データに用いる撮像画像に分類を付与できる。
【0077】
(実施形態3)
実施形態1の生成装置100および実施形態2の生成装置100Aでは、位相差顕微鏡画像、または位相差顕微鏡画像および蛍光顕微鏡画像を用いて、細胞の分類を付与する識別器を生成し、得られた識別器を用いて、位相差顕微鏡画像における細胞に対して分類を付与した。実施形態3の細胞処理システム300では、前記識別器により付与された分類を利用して、前記細胞のうち、目的以外の細胞を処理する例について説明する。
【0078】
実施形態3の細胞処理システム300は、生成装置100と、移動ユニット(駆動部)7と、レーザ照射ユニット(レーザエミッター)8とを備える。
図8に示すように、移動ユニット7は、XYステージ71および台車72、73を備える。XYステージ71はY軸方向の共通のレールと、2つのX軸方向のレールとを備え、Y軸方向の共通のレールに、2つのX軸方向のレールが、前記共通のレール上を移動可能に配置されている。また、2つのX軸方向のレール上には、それぞれ、台車72、73がレールを移動可能なように配置されている。レーザ照射ユニット8は、レーザ光源81、光ファイバ82、およびレーザ出射部83を備える。光ファイバ82は、レーザ光源81とレーザ出射部83とを光学的に接続している。生成装置100の撮像装置200は、移動ユニット7の台車73上に配置されている。また、レーザ照射ユニット8のレーザ出射部83は、台車72に配置されている。これにより、XYステージ71上を台車72、73が移動することにより、撮像装置200およびレーザ照射ユニット8は、培養容器Dにおける任意の位置について撮像およびレーザの照射を実施できる。また、細胞処理システム300において、生成装置100の制御ユニット6は、レーザ照射ユニット8と接続されており、レーザ照射ユニット8によるレーザ照射を制御する。
【0079】
つぎに、実施形態3の細胞処理システム300を用いた実施形態3の細胞処理方法について説明する。
【0080】
図9は、実施形態3の細胞処理方法を示すフローチャートである。
図9に示すように、実施形態3の細胞処理方法は、実施形態1の生成方法および分類方法の各工程に加えて、
S8工程(細胞処理)を含む。
【0081】
まず、識別器の生成に用いるための、細胞を含む培養容器D1を用いて、実施形態1の生成方法と同様にして、S1~S4工程を実施して、培養容器D1内の細胞を含む観察対象物の撮像画像の画素に、培養容器D1における画素の存在する領域および前記画素に存在する観察対象物の分類を付与可能な識別器を生成する。
【0082】
つぎに、処理を行うための細胞を含む培養容器D2を用いて、実施形態1の分類方法と同様にして、S5~S7工程を実施する。これにより、培養容器D2の撮像画像の各画素に対して、前記識別器を用いて前記分類を付与する。培養容器D1および培養容器D2は、異なる培養容器としているが、同じ培養容器としてもよい。
【0083】
つぎに、S8工程では、S7工程で付与された分類に関するデータに基づき、目的外の細胞に対して、レーザ照射ユニット8を用いてレーザを照射することにより、前記目的外の細胞を致死させる。これにより、S8工程では、培養容器D2内の目的外の細胞を除去して、目的細胞のみを残存させる。具体的には、S8工程では、S7工程で得られた分類を補助記憶デバイス61cから読み出し、S6工程で得られた撮像画像に重畳する。そして、前記分類が重畳された撮像画像は、表示装置66に出力される。ユーザは、前記分類が重畳された撮像画像に基づき、前記分類を修正してもよい。つぎに、ユーザが、入力装置67を用いて、レーザ照射ユニット8によるレーザ照射の開始の指示を入力する。すると、制御ユニット6は、移動ユニット7のXYステージ71および台車72を駆動して、レーザ出射部83から出射されたレーザが細胞に照射可能な位置にレーザ照射ユニット8を移動する。そして、制御ユニット6は、レーザ照射ユニット8によるレーザ照射をONにすることにより、レーザ出射部83からレーザが培養容器Dの目的外の細胞に照射され、前記目的外の細胞を致死させる。制御ユニット6は、前記目的外の細胞の分類が付与された画素と対応する位置に対して同様の処理を繰り返し実施する。そして、S8工程では、培養容器D2内の目的外の細胞を除去後に、終了する。なお、S8工程では、ユーザにより前記目的外細胞の分類が入力され、前記入力に基づき、入力された目的外の細胞に対して、レーザによる処理を実施してもよい。
【0084】
なお、実施形態2では、生成装置100の撮像装置200が、位相差顕微鏡の構成に加えて、蛍光顕微鏡の構成を備える場合を説明したが、本開示はこれに限られるものではなく、撮像装置200を位相差観察機能と蛍光観察機能とを備えた顕微鏡で構成し、位相差観察機能と蛍光観察機能とを切り替えて使用するように構成してもよい。
【0085】
以上、実施形態を参照して本開示を説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。本開示の構成および詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0086】
この出願は、2023年2月7日に出願された日本出願特願2023-016496を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0087】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
<細胞の分類に用いるための識別器の生成装置>
(付記1)
培養容器内の細胞を含む観察対象物の撮像画像を取得する取得部と、
前記撮像画像の画素に基づき、分類データを生成する分類データ生成部であり、
前記分類データは、領域の分類と、観察対象物の分類とを含み、
前記領域の分類は、少なくとも2種類の領域の分類を含み、
前記観察対象物の分類は、目的細胞の分類および目的外細胞の分類を含む、少なくとも3種類の観察対象物の分類を含む、分類データ生成部と、
前記撮像画像と前記分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することで識別器を生成する生成部とを含む、
細胞の分類に用いるための識別器の生成装置。
(付記2)
前記取得部は、前記培養容器内の細胞の位相差顕微鏡画像および蛍光顕微鏡画像を、前記撮像画像として取得し、
前記蛍光顕微鏡画像では、前記細胞が識別可能に蛍光標識されており、
前記分類データ生成部は、
前記撮像画像として、前記蛍光顕微鏡画像を用い、
前記蛍光顕微鏡画像の画素に基づき、前記分類データを生成し、
前記生成部は、前記位相差顕微鏡画像と前記分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することで識別器を生成する、
付記1に記載の生成装置。
(付記3)
前記蛍光顕微鏡画像は、
前記目的細胞および前記目的外細胞の両者が、他の観察対象物と識別可能に蛍光標識により標識された第1の蛍光顕微鏡画像と、
前記目的細胞が、他の観察対象物と識別可能に蛍光標識により標識された第2の蛍光顕微鏡画像と、
を含み、
前記分類データ生成部は、
前記第1の蛍光顕微鏡画像および前記第2の蛍光顕微鏡画像を比較することにより、前記目的外細胞が存在する画素を抽出して、抽出された画素を、前記観察対象物の分類として前記目的外細胞と分類し、
前記第2の蛍光顕微鏡画像から、前記目的細胞が存在する画素を抽出して、抽出された画素を、前記観察対象物の分類として前記目的細胞と分類し、
前記目的細胞および前記目的外細胞が存在しない領域を、その他の観察対象物が存在する画素として抽出して、抽出された画素を、前記観察対象物の分類として前記目的細胞の分類および前記目的外細胞の分類以外の観察対象物と分類して前記分類データを生成する、
付記2に記載の生成装置。
(付記4)
前記取得部は、
前記培養容器の位相差顕微鏡画像を取得する位相差顕微鏡と、
前記培養容器の蛍光微鏡画像を取得する蛍光顕微鏡と、
を含む、付記2または3に記載の生成装置。
(付記5)
前記撮像画像は、位相差顕微鏡画像である、
付記1に記載の生成装置。
(付記6)
前記取得部は、前記培養容器の位相差顕微鏡画像を取得する位相差顕微鏡を含む、付記5に記載の生成装置。
(付記7)
前記観察対象物の分類は、さらに、培地の分類を含み、
前記分類データ生成部は、前記目的細胞の分類および前記目的外細胞の分類以外の観察対象物の分類として、前記培地と分類して前記分類データを生成する、
付記1から6のいずれかに記載の生成装置。
(付記8)
前記取得部は、前記培養容器について、複数画分に分画され、各画分について撮像された分割画像を取得する、
付記1から7のいずれかに記載の生成装置。
(付記9)
前記領域の分類は、メニスカス領域の分類および非メニスカス領域の分類を含む、
付記1から8のいずれかに記載の生成装置。
(付記10)
前記目的細胞は、未分化細胞または分化細胞である、
付記1から9のいずれかに記載の生成装置。
(付記11)
前記未分化細胞は、iPS細胞または前駆細胞である、
付記10に記載の生成装置。
<細胞の分類に用いるための識別器>
(付記12)
培養容器内の細胞を含む観察対象物の撮像画像の画素に、前記培養容器における画素の存在する領域および前記画素に存在する観察対象物の分類を付与するために、機械学習により生成された識別器であり、
前記撮像画像と前記分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することにより生成され、
前記分類データは、前記撮像画像の画素の分類を含み、
前記分類は、領域の分類と、観察対象物の分類とを含み、
前記領域の分類は、少なくとも2種類の領域の分類を含み、
前記観察対象物の分類は、目的細胞の分類および目的外細胞の分類を含む、少なくとも3種類の観察対象物の分類を含む、
細胞の分類に用いるための識別器。
(付記13)
前記撮像画像は、前記培養容器内の細胞の位相差顕微鏡画像および蛍光顕微鏡画像を含み、
前記位相差顕微鏡画像と、前記分類データとして、前記蛍光顕微鏡画像から生成された分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することにより生成される、
付記12に記載の識別器。
(付記14)
前記撮像画像は、位相差顕微鏡画像である、
付記12に記載の識別器。
(付記15)
前記観察対象物の分類は、さらに、培地の分類を含む、
付記12から14のいずれかに記載の識別器。
(付記16)
前記領域の分類は、メニスカス領域の分類および非メニスカス領域の分類を含む、
付記12から15のいずれかに記載の識別器。
(付記17)
前記目的細胞は、未分化細胞または分化細胞である、
付記12から16のいずれかに記載の識別器。
(付記18)
前記未分化細胞は、iPS細胞または前駆細胞である、
付記17に記載の識別器。
<細胞の分類装置>
(付記19)
培養容器内の細胞を含む観察対象物の撮像画像の画素に、前記培養容器における画素の存在する領域および前記画素に存在する観察対象物の分類を付与するために、機械学習により生成された識別器であり、
前記撮像画像と前記分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することにより生成され、
前記分類データは、前記撮像画像の画素の分類を含み、
前記分類は、領域の分類と、観察対象物の分類とを含み、
前記領域の分類は、少なくとも2種類の領域の分類を含み、
前記観察対象物の分類は、目的細胞の分類および目的外細胞の分類を含む、少なくとも3種類の観察対象物の分類を含む、識別器と、
培養容器内の細胞を含む観察対象物の撮像画像を取得する取得部と、
前記取得部で得られた撮像画像に対し、前記識別器を用いて前記撮像画像の画素に前記分類を付与する分類付与部と、
を含む、細胞の分類装置。
(付記20)
前記取得部は、前記培養容器の位相差顕微鏡画像を取得する位相差顕微鏡を含む、付記19に記載の分類装置。
(付記21)
前記教師データに用いる撮像画像は、前記培養容器内の細胞の位相差顕微鏡画像および蛍光顕微鏡画像を含み、
前記位相差顕微鏡画像と、前記分類データとして、前記蛍光顕微鏡画像から生成された分類データとを組とした教師データを用いて、機械学習することにより生成される、
付記19または20に記載の分類装置。
(付記22)
前記教師データに用いる撮像画像は、位相差顕微鏡画像である、
付記19または20に記載の分類装置。
(付記23)
前記観察対象物の分類は、さらに、培地の分類を含む、
付記19から22のいずれかに記載の分類装置。
(付記24)
前記領域の分類は、メニスカス領域の分類および非メニスカス領域の分類を含む、
付記19から23のいずれかに記載の分類装置。
(付記25)
前記目的細胞は、未分化細胞または分化細胞である、
付記19から24のいずれかに記載の分類装置。
(付記26)
前記未分化細胞は、iPS細胞または前駆細胞である、
付記25に記載の分類装置。
<細胞の処理システム>
(付記27)
付記19から26のいずれかに記載の細胞の分類装置と、
培養容器に対してレーザを照射可能なレーザ照射装置と、を含み、
前記レーザ照射装置は、前記培養容器に対してレーザを照射することにより、前記分類装置において、目的細胞の分類および目的外細胞の分類が付与された細胞の少なくとも一方の細胞の状態を変化させる、
細胞の処理システム。
【符号の説明】
【0088】
1 ステージ
2 対物レンズ
3 カメラ
4 移動ユニット
41 X軸方向の移動ユニット
41a X軸モータ
41b X軸ボールねじ
42 Y軸方向の移動ユニット
42a Y軸モータ
42b Y軸ボールねじ
43 Z軸方向の移動ユニット
43a Z軸モータ
43b Z軸ボールねじ
5 照明
51 光源
52 支持部材
6 制御ユニット
61 演算装置
611 取得部
612 分類データ生成部
613 生成部
614 分類付与部
61a CPU
61b メインメモリ
61c 補助記憶デバイス
61d ビデオコーデック
61e I/Oインターフェイス
61f GPU
61g コントローラ
62 PLC
63 モータドライバ
63x X軸方向のモータドライバ
63y Y軸方向のモータドライバ
63z Z軸方向のモータドライバ
66 表示装置
67 入力装置
7 移動ユニット
71 XYステージ
72、73 台車
8 レーザ照射ユニット
81 レーザ光源
82 光ファイバ
83 レーザ出射部
100、100A 生成装置
200 撮像装置
300 細胞処理システム