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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112297
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】フラックス用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/72 20060101AFI20240813BHJP
   C11D 3/26 20060101ALI20240813BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20240813BHJP
   B22F 7/04 20060101ALI20240813BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20240813BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20240813BHJP
   C11D 3/20 20060101ALN20240813BHJP
【FI】
C11D1/72
C11D3/26
B22F7/08 C
B22F7/04 D
B08B3/08 Z
H05K3/34 503Z
C11D3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014368
(22)【出願日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2023017041
(32)【優先日】2023-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健太
(72)【発明者】
【氏名】長沼 純
【テーマコード(参考)】
3B201
4H003
4K018
5E319
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB02
3B201BB02
3B201BB22
3B201BB82
3B201BB83
3B201BB94
3B201BB95
3B201CC01
3B201CC11
4H003AC08
4H003AC11
4H003DA15
4H003DB01
4H003EB20
4H003ED02
4H003ED31
4H003FA04
4K018BD04
4K018DA21
4K018DA50
4K018JA36
4K018KA32
5E319AA03
5E319BB20
5E319CD01
5E319CD21
5E319GG20
(57)【要約】
【課題】 一態様において、200℃以上の加熱処理後の変色した金属及びフラックス残渣の両方の除去性に優れるフラックス用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】 本開示は、一態様において、焼結工程により2つの部材間を接合した後に残存するフラックスを除去するための洗浄剤組成物であって、下記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分A)と下記式(II)で表されるイミダゾール化合物(成分B)とを含むフラックス用洗浄剤組成物に関する。
1-O-(AO)n-H (I)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分A)と下記式(II)で表されるイミダゾール化合物(成分B)とを含むフラックス用洗浄剤組成物。
1-O-(AO)n-H (I)
式(I)において、R1は、フェニル基又はベンジル基を示す。AOは、エチレンオキシ基(EO)又はプロピレンオキシ基(PO)を示す。nは、AOの付加モル数であって、1以上5以下の整数を示す。
【化1】
式(II)において、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、フェニル基、アルデヒド基、カルボキシ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アセチル基、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基を示す。
【請求項2】
成分Aの含有量が、10質量%以上90質量%以下である、請求項1に記載のフラックス用洗浄剤組成物。
【請求項3】
成分Bの含有量が、0.5質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載のフラックス用洗浄剤組成物。
【請求項4】
成分Aは、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、1-プロピレングリコールモノフェニルエーテル、及び2-プロピレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のフラックス用洗浄剤組成物。
【請求項5】
成分Bは、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-イソプロピルイミダゾール、1-アセチルイミダゾール、1-アミノプロピルイミダゾール、1-ヒドロキシエチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-アセチルイミダゾール、2-アミノプロピルイミダゾール、2-ヒドロキシエチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、4-プロピルイミダゾール、4-イソプロピルイミダゾール、4-アセチルイミダゾール、4-アミノプロピルイミダゾール、4-ヒドロキシエチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール及び2-エチル-4-メチルイミダゾールから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のフラックス用洗浄剤組成物。
【請求項6】
成分Bと成分Aとの質量比(B/A)が、0.005以上1.0以下である、請求項1に記載のフラックス用洗浄剤組成物。
【請求項7】
水(成分C)を含む、請求項1に記載のフラックス用洗浄剤組成物。
【請求項8】
成分Cの含有量が、0.5%質量以上20質量%以下である、請求項7に記載のフラックス用洗浄剤組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の洗浄剤組成物からなるフラックス残渣洗浄除去剤組成物。
【請求項10】
被洗浄物を、請求項1から8のいずれかに記載の洗浄剤組成物で洗浄する洗浄工程を含み、前記被洗浄物は200℃以上に加熱する工程を経たフラックス残渣を有する基板である、洗浄方法。
【請求項11】
被洗浄物は前記200℃以上に加熱する工程を経た、フラックス残渣を有する基板上に、金属部材を有する、請求項10に記載の洗浄方法。
【請求項12】
被洗浄物は、金属が酸化した部分を含む、請求項10に記載の洗浄方法。
【請求項13】
被洗浄物からフラックス残渣を、請求項9に記載のフラックス残渣洗浄除去剤組成物で洗浄除去する工程を含み、前記被洗浄物は200℃以上に加熱する工程を経たフラックス残渣を有する基板である、フラックス残渣洗浄除去方法。
【請求項14】
下記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分A)と下記式(II)で表されるイミダゾール化合物(成分B)とを含む洗浄剤組成物のフラックス洗浄剤としての使用。
1-O-(AO)n-H (I)
式(I)において、R1は、フェニル基又はベンジル基を示す。AOは、エチレンオキシ基(EO)又はプロピレンオキシ基(PO)を示す。nは、AOの付加モル数であって、1以上5以下の整数を示す。
【化2】
式(II)において、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、フェニル基、アルデヒド基、カルボキシ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アセチル基、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基を示す。
【請求項15】
基板と金属部材との間又は基板上の2つの金属部材の間にフラックスを含むスラリーを塗布した後、200℃以上に加熱する工程(焼結工程)及び前記焼結工程を経た基板を、請求項1から9のいずれかに記載の洗浄剤組成物で洗浄する工程(洗浄工程)を含む、電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フラックス用洗浄剤組成物、及び該洗浄剤組成物を用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージ等の電子基板の回路を形成する電極には、製造コストを低減する為に、銅、銅合金等の金属が用いられている。
【0003】
プリント配線板の実装方法として、実装密度を向上させた表面実装が広く採用されている。実装密度を向上するために、基板上の配線と電子素子の端子間にナノ金属ペーストを塗布し、加熱によりナノ金属を溶融及び固化させ、基板上の配線と電子素子の端子間を結合させる技術が知られている。
例えば、特許文献1には、特定の銀微粒子と特定の銀粉と珪素含有トリアジン化合物とを含み、さらに沸点が100~300℃の酸無水物であるカルボン酸化合物を焼結助剤として含むペースト組成物からなるダイアタッチ材料を介して接着し、基板上に固定された半導体素子が開示されている。同文献の0051段落には、カルボン酸化合物の沸点が300℃を超えると、焼結の際に揮発せず膜中にフラックス成分(有機酸等の有機物)が残存することとなるので好ましくないことが開示されている。
【0004】
一方、はんだ付け後の電子部品のはんだフラックスを洗浄する技術が知られている。例えば、特許文献2には、全体量に対して、グリコール化合物の含有量が1重量%未満の場合には、ベンジルアルコールの含有量を70~99.9重量%の範囲およびアミノアルコールの含有量を0.1~30重量%の範囲とし、グリコール化合物の含有量が1~40重量%の場合には、ベンジルアルコールの含有量を15~99重量%の範囲およびアミノアルコールの含有量を0.1~30重量%の範囲とすることを特徴とする半田フラックス除去用洗浄剤が開示されている。
【0005】
銅等の金属用の洗浄液として、例えば、特許文献3には、有機溶剤と、水と、錯生成剤と、分散剤とを含む金属ナノインク用洗浄剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-35721号公報
【特許文献2】国際公開第2005/021700号
【特許文献3】特開2016-56319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
酸(フラックス成分)を含むナノ金属ペーストを塗布し、加熱によりナノ金属を溶融及び固化させて、基板上の配線と電子素子の端子間を結合させる際には、金属を溶融させるために基板を200℃以上の高温で保持する工程が必要となる。この工程を経た基板上に酸を主成分とするフラックス残渣が残存すると、これを洗浄する必要がある。しかしながら、特許文献2のはんだフラックス用洗浄剤では、200℃以上の高温で保持する工程を経た酸を主成分とするフラックス残渣に対する洗浄性(フラックス残渣除去性)が十分ではない。
また、基板表面や金属部材の金属の種類によっては、200℃以上の高温で保持することによって表面が酸化して変色する場合がある。そのため、200℃以上の加熱処理により変色した部分、すなわち、酸化した金属(金属酸化物)を除去できる洗浄剤組成物が求められる。しかしながら、特許文献3の金属ナノインク用洗浄剤では、加熱処理により酸化した金属の除去性が十分でない。
【0008】
そこで、本開示は、200℃以上の加熱処理後の変色した金属及びフラックス残渣の両方の除去性に優れるフラックス用洗浄剤組成物及び洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、一態様において、下記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分A)と下記式(II)で表されるイミダゾール化合物(成分B)とを含むフラックス用洗浄剤組成物に関する。
1-O-(AO)n-H (I)
式(I)において、R1は、フェニル基又はベンジル基を示す。AOは、エチレンオキシ基(EO)又はプロピレンオキシ基(PO)を示す。nは、AOの付加モル数であって、1以上5以下の整数を示す。
【化1】
式(II)において、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、フェニル基、アルデヒド基、カルボキシ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アセチル基、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基を示す。
【0010】
本開示は、一態様において、本開示の洗浄剤組成物からなるフラックス残渣洗浄除去剤組成物に関する。
【0011】
本開示は、一態様において、被洗浄物を本開示の洗浄剤組成物で洗浄する洗浄工程を含み、被洗浄物は200℃以上に加熱する工程を経たフラックス残渣を有する基板である、洗浄方法に関する。
【0012】
本開示は、一態様において、フラックス残渣を有する被洗浄物からフラックスを本開示のフラックス残渣洗浄除去剤組成物で洗浄除去する工程を含み、被洗浄物は200℃以上に加熱する工程を経た基板である、フラックス残渣洗浄除去方法に関する。
【0013】
本開示は、一態様において、下記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分A)と下記式(II)で表されるイミダゾール化合物(成分B)とを含む洗浄剤組成物のフラックス洗浄剤としての使用に関する。
1-O-(AO)n-H (I)
式(I)において、R1は、フェニル基又はベンジル基を示す。AOは、エチレンオキシ基(EO)又はプロピレンオキシ基(PO)を示す。nは、AOの付加モル数であって、1以上5以下の整数を示す。
【化2】
式(II)において、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、フェニル基、アルデヒド基、カルボキシ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アセチル基、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基を示す。
【0014】
本開示は、一態様において、基板と金属部材との間又は基板上の2つの金属部材の間にフラックスを含むスラリーを塗布した後、200℃以上に加熱する工程(焼結工程)及び前記工程を経た基板を本開示の洗浄剤組成物で洗浄する工程(洗浄工程)を含む、電子部品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、200℃以上の加熱処理後の変色した金属(金属酸化物)及びフラックス残渣の両方の除去性に優れるフラックス用洗浄剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、上記式(I)で表される溶剤(成分A)と上記式(II)で表されるイミダゾール化合物(成分B)を組み合わせて用いることで、200℃以上の加熱処理後の変色した金属(金属酸化物)及びフラックス残渣の両方の除去性を向上できるという知見に基づく。
【0017】
すなわち、本開示は、一態様において、上記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分A)と上記式(II)で表されるイミダゾール化合物(成分B)とを含むフラックス用洗浄剤組成物(以下、「本開示の洗浄剤組成物」ともいう)に関する。
【0018】
本開示によれば、200℃以上の加熱処理後の変色した金属(金属酸化物)及びフラックス残渣の両方の除去性に優れるフラックス用洗浄剤組成物を提供できる。
【0019】
本開示の効果発現の作用メカニズムの詳細は不明な部分はあるが、以下のように推察される。
本開示の洗浄剤組成物では、特定のイミダゾール化合物(成分B)が、変色した金属(例えば、酸化銅等の金属酸化物)に対して吸着し、イミダゾール化合物金属錯体(例えば、イミダゾール化合物銅錯体)を形成する。一方、イミダゾール化合物銅錯体等の錯体は、一般的な有機溶剤との親和性が低く、酸化銅等の金属酸化物表面からの拡散が進行せず酸化銅等の金属酸化物の除去が完結しない。しかし、本開示では、前記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分A)が、イミダゾール化合物銅錯体等の錯体に対して溶媒和し親和性の高いクラスターを形成した結果、特定のグリコールエーテル(成分A)中へ拡散が進行する。この効果により溶解反応が進行し酸化銅等の金属酸化物の除去が完結する。また、フラックス残渣除去性においてはフラックス残渣中に含有されるロジン酸とイミダゾール化合物の中和反応によって溶解性を高めると考えられる。以上より、本開示の洗浄剤組成物は良好なフラックス残渣除去性と変色した金属(金属酸化物)の除去性を示すと考えられる。なお、トリアゾール類の化合物にはイミダゾール化合物のような錯体形成能がない。
ただし、本開示はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0020】
本開示における「フラックス」とは、一又は複数の形態において、焼結工程(例えば、200℃以上の高温で保持する工程)により2つの部材間を接合するために用いられるフラックスであり、例えば、放熱板と半導体素子との接合や、放熱板と基板との接合に用いられる。フラックスは、一又は複数の実施形態において、酸を主成分とする接合助剤である。
本開示における「フラックス用洗浄剤組成物」は、一又は複数の実施形態において、焼結工程により2つの部材間を接合した後に残存するフラックス残渣を除去するための洗浄剤組成物をいう。
【0021】
[成分A:式(I)で表されるグリコールエーテル]
本開示の洗浄剤組成物は、下記式(I)で表されるグリコールエーテル(以下、「成分A」ともいう)を含む。成分Aは、1種でもよいし、2種以上の組合せもよい。
1-O-(AO)n-H (I)
【0022】
上記式(I)において、R1は、フェニル基又はベンジル基を示し、変色した金属除去性向上の観点から、フェニル基が好ましい。AO(アルキレンオキシ基)は、エチレンオキシ基(EO)又はプロピレンオキシ基(PO)を示し、すすぎ容易性の観点から、エチレンオキシ基が好ましい。nは、AOの付加モル数であって、1以上5以下の整数を示し、フラックス残渣除去性向上から、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0023】
成分Aとしては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のモノフェニルグリコールエーテル;エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノベンジルエーテル等のモノベンジルグリコールエーテル;等が挙げられる。これらのなかでも、成分Aとしては、変色した金属除去性向上及びフラックス残渣除去性向上の観点から、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、1-プロピレングリコールモノフェニルエーテル、2-プロピレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノベンジルエーテル、1-プロピレングリコールモノベンジルエーテル、及び2-プロピレングリコールモノベンジルエーテルから選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、1-プロピレングリコールモノフェニルエーテル、及び2-プロピレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0024】
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Aの含有量は、変色した金属除去性向上の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%超が更に好ましく、40質量%以上が更に好ましく、成分Bの溶解性向上の観点から、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Aの含有量は、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上85質量%以下がより好ましく、25質量%超80質量%以下が更に好ましい。成分Aが2種以上の組合せである場合、成分Aの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0025】
[成分B:式(II)で表されるイミダゾール化合物]
本開示の洗浄剤組成物は、下記式(II)で表されるイミダゾール化合物(以下、「成分B」ともいう)を含む。成分Bは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【化3】
【0026】
上記式(II)において、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、フェニル基、アルデヒド基、カルボキシ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アセチル基、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基を示す。
上記式(II)中のR2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立に、変色した金属除去性向上の観点から、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、フェニル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アセチル基、ヒドロキシエチル基、又はヒドロキシプロピル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、又はヒドロキシエチル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。
【0027】
成分Bとしては、変色した金属及びフラックス残渣の両方の除去性向上の観点から、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-イソプロピルイミダゾール、1-アセチルイミダゾール、1-アミノプロピルイミダゾール、1-ヒドロキシエチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-アセチルイミダゾール、2-アミノプロピルイミダゾール、2-ヒドロキシエチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、4-プロピルイミダゾール、4-イソプロピルイミダゾール、4-アセチルイミダゾール、4-アミノプロピルイミダゾール、4-ヒドロキシエチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール及び2-エチル-4-メチルイミダゾールから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのなかでも、変色した金属及びフラックス残渣の両方の除去性向上の観点から、成分Bは、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール及び2-エチル-4-メチルイミダゾールから選ばれる少なくとも1種が好ましく、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール及び2-エチル-4-メチルイミダゾールから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、2-エチル-4-メチルイミダゾールが更に好ましい。
【0028】
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Bの含有量は、変色した金属及びフラックス残渣の両方の除去性向上の観点から、0.5質量%以上が好ましく、0.75質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、そして、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Bの含有量は、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上8質量%以下がより好ましく、0.75質量%以上8質量%以下が更に好ましく、0.75質量%以上5質量%以下が更に好ましい。成分Bが2種類以上の組合せである場合、成分Bの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0029】
本開示の洗浄剤組成物において、成分Bと成分Aとの質量比(B/A)は、変色した金属の除去性向上の観点から、0.005以上が好ましく、0.008以上がより好ましく、0.01以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、1.0以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.1以下が更に好ましい。より具体的には、質量比(B/A)は、0.005以上1.0以下が好ましく、0.008以上0.5以下がより好ましく、0.01以上0.1以下が更に好ましい。
【0030】
[成分C:水]
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、水(以下、「成分C」ともいう)を含む。成分Cとしては、イオン交換水、RO水(逆浸透膜処理水)、蒸留水、純水、超純水等が挙げられる。
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Cの含有量は、変色した金属の除去性向上の観点から、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましく、そして、変色した金属及びフラックス残渣の両方の除去性向上の観点から、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示の洗浄剤組成物における成分Cの含有量は、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましく、5質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
【0031】
[成分A以外の溶剤(成分D)]
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、成分A以外の溶剤(以下、「成分D」ともいう)をさらに含んでもよい。成分Dとしては、フラックス残渣除去性向上及び成分Aの溶解性向上の観点から、下記式(III)で表される化合物、下記式(IV)で表される化合物及び下記式(V)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の溶剤が好ましく、下記式(III)で表される化合物がより好ましい。
【0032】
<式(III)で表される化合物>
6-O-(AO)n-R7 (III)
【0033】
上記式(III)において、R6は、フェニル基又は炭素数1以上8以下のアルキル基を示し、フラックス残渣除去性向上の観点から、フェニル基又は炭素数4以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素数4以上6以下のアルキル基がより好ましい。R7は、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、すすぎ容易性の観点から、水素原子が好ましく、フラックス残渣除去性向上の観点から、炭素数2以上4以下のアルキル基が好ましく、n-ブチル基がより好ましい。AOは、エチレンオキシ基(EO)又はプロピレンオキシ基(PO)であり、同様の観点から、エチレンオキシ基が好ましい。nは、AOの付加モル数であって、1以上3以下の整数を示し、同様の観点から、1又は2が好ましく、2がより好ましい。
式(III)で表される化合物は、式(I)で表されるグルコールエーテル(成分A)を含まない。
【0034】
上記式(III)で表される化合物としては、例えば、炭素数1以上8以下のアルキル基を有するエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル等のモノアルキルエーテル;炭素数1以上8以下のアルキル基及び炭素数1以上4以下のアルキル基を有するエチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル等のジアルキルエーテル;フェニル基及び炭素数1以上4以下のアルキル基を有するエチレングリコールフェニルアルキルエーテル、ジエチレングリコールフェニルアルキルエーテル、トリエチレングリコールフェニルアルキルエーテル等のフェニルアルキルエーテル;等が挙げられる。これらのなかでも、上記式(III)で表される化合物としては、フラックス残渣除去性向上の観点から、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールジブチルエーテルから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(BFDG)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DBDG)及びジエチレングリコールジエチルエーテルから選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)が更に好ましい。
【0035】
<式(IV)で表される化合物>
8-CH2OH (IV)
【0036】
上記式(IV)において、R8は、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、フリル基、テトラヒドロフリル基、フルフリル基又はテトラヒドロフルフリル基を示し、フラックス残渣除去性向上の観点から、フェニル基、シクロヘキシル基又はテトラヒドロフリル基が好ましく、フェニル基又はテトラヒドロフリル基がより好ましい。
【0037】
上記式(IV)で表される化合物としては、例えば、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、シクロヘキサンメタノール、フルフリルアルコール、及びテトラヒドロフルフリルアルコールから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。前記式(IV)で表される化合物としては、フラックス残渣除去性向上の観点から、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、及びテトラヒドロフルフリルアルコールから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ベンジルアルコール(BzOH)及びテトラヒドロフルフリルアルコールから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0038】
<式(V)で表される化合物>
【化4】
【0039】
上記式(V)において、R9、R10、R11、R12はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上8以下の炭化水素基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基又は水酸基を示し、フラックス残渣除去性向上の観点から、R9、R10、R11、R12のいずれか一つが炭素数1以上8以下の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上6以下の炭化水素基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、又はビニル基のいずれかであることが更に好ましい。
【0040】
上記式(V)で表される化合物としては、例えば、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-ビニル-2-ピロリドン、1-フェニル-2-ピロリドン、1-シクロヘキシル-2-ピロリドン、1-オクチル-2-ピロリドン、3-ヒドロキシプロピル-2-ピロリドン、4-ヒドロキシ-2-ピロリドン、4-フェニル-2-ピロリドン及び5-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。上記式(V)で表される化合物としては、フラックス残渣除去性向上の観点から、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-ビニル-2-ピロリドン、1-フェニル-2-ピロリドン、1-シクロヘキシル-2-ピロリドン、1-オクチル-2-ピロリドン及び5-メチル-2-ピロリドンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン及び1-ビニル-2-ピロリドンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)が更に好ましい。
【0041】
本開示の洗浄剤組成物が成分Dを含む場合、本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Dの含有量は、成分Bの溶解性向上の観点から、1.0質量%以上が好ましく、3.0質量%以上がより好ましく、5.0質量%以上が更に好ましく、そして、変色した金属及びフラックス残渣の両方の除去性向上の観点から、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい。成分Dが2種以上の組合せである場合、成分Dの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0042】
[その他の成分]
本開示の洗浄剤組成物は、本開示の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、通常洗浄剤に用いられる、キレート剤、防錆剤、増粘剤、分散剤、成分B以外の塩基性物質、pH調整剤、高分子化合物、界面活性剤、可溶化剤、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、消泡剤、酸化防止剤を適宜含有することができる。
【0043】
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、珪素含有トリアジン化合物を実質的に含まない。例えば、本開示の洗浄剤組成物の使用時における珪素含有トリアジン化合物の含有量は、好ましくは0.01質量%未満、より好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、金属ナノ粒子を分散させる分散剤を実質的に含まない。例えば、本開示の洗浄剤組成物の使用時における金属ナノ粒子を分散させる分散剤の含有量は、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、金属ナノ粒子を実質的に含まない。例えば、本開示の洗浄剤組成物の使用時における金属ナノ粒子の含有量は、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、ジホスホン酸を実質的に含まない。例えば、本開示の洗浄剤組成物の使用時におけるジホスホン酸の含有量は、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
【0044】
[洗浄剤組成物の製造方法]
本開示の洗浄剤組成物は、例えば、成分A、成分B、必要に応じて任意成分(成分C、成分D、その他の成分)を公知の方法で配合することにより製造できる。一又は複数の実施形態において、本開示の洗浄剤組成物は、少なくとも成分Aと成分Bとを配合してなるものとすることができる。したがって、本開示は、一態様において、少なくとも成分Aと成分Bを配合する工程を含む、洗浄剤組成物の製造方法に関する。本開示において「配合する」とは、成分A、成分Bを必要に応じて任意成分(成分C、成分D、その他の成分)を同時に又は任意の順に混合することを含む。本開示の洗浄剤組成物の製造方法において、各成分の配合量は、上述した本開示の洗浄剤組成物の使用時における各成分の含有量と同じとすることができる。本開示において「洗浄剤組成物の使用時における各成分の含有量」とは、洗浄時、すなわち、洗浄剤組成物の洗浄への使用を開始する時点での各成分の含有量をいう。
【0045】
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、フラックスを有する被洗浄物、とりわけ、焼結工程により2つの部材間を接合した後に残存するフラックス残渣を有する被洗浄物の洗浄に使用される。本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、フラックス残渣を有する被洗浄物からフラックスを除去するための洗浄剤として用いることができる。したがって、本開示は、一態様において、成分Aと成分Bとを含む洗浄剤組成物(すなわち、本開示の洗浄剤組成物)のフラックス洗浄剤としての使用に関する。
【0046】
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、フラックス残渣を有する被洗浄物からフラックス残渣を除去するための除去剤として用いることができる。したがって、本開示は、その他の態様において、本開示の洗浄剤組成物からなるフラックス残渣洗浄除去剤組成物に関する。本開示は、その他の態様において、本開示のフラックス残渣洗浄除去剤組成物のフラックス残渣除去剤としての使用に関する。
【0047】
[被洗浄物]
被洗浄物としては、一又は複数の実施形態において、200℃以上に加熱する工程を経たフラックス残渣を有する基板が挙げられ、一又は複数の実施形態において、前記200℃以上に加熱する工程を経た、フラックス残渣を有する基板上に金属部材を有するものであってもよい。前記金属部材は、導電性向上の観点から、好ましくは銀又は銅を含む。前記200℃以上に加熱する工程は、一又は複数の実施形態において、200℃以上の高温で保持する工程(焼結工程)である。
被洗浄物としては、一又は複数の実施形態において、フラックス残渣を有する被洗浄物が挙げられる。フラックス残渣を有する被洗浄物は、一又は複数の実施形態において、基板と金属部材との間又は基板上の2つの金属部材の間にフラックスを含むスラリーを塗布した後、200℃以上に加熱する工程(焼結工程)を経た、フラックス残渣を有する基板が挙げられる。したがって、本開示は、一態様において、基板と金属部材との間又は基板上の2つの金属部材の間にフラックスを含むスラリーを塗布した後、200℃以上に加熱する工程(焼結工程)を経た、フラックス残渣を有する基板の洗浄における、本開示の洗浄剤組成物又は本開示のフラックス残渣洗浄除去剤組成物の使用に関する。
前記焼結工程において、加熱温度は、例えば、200℃~350℃が挙げられる。加熱時間は、例えば、3分~5時間が挙げられる。フラックスの熱による変性に対する洗浄性を発揮する観点から、被洗浄物としては、1時間以上加熱された被洗浄物が好ましい。
被洗浄物は、一又は複数の実施形態において、金属が加熱により変色した部分、すなわち、金属が酸化した部分(金属酸化物)を含む。
前記フラックスは、一又は複数の実施形態において、主成分として酸を含む。酸としては、例えば、アビエチン酸等の有機酸が挙げられる。
前記フラックスを含有するスラリーは、一又は複数の実施形態において、金属粒子をさらに含むことができる。金属粒子は、焼結温度(硬化温度)が300℃以下の金属粒子が好ましく、例えば、錫、銅、銀、又はそれらの混合金属等が挙げられ、銅、銀、又はそれらの混合金属が好ましく、銀又は銅がより好ましい。金属粒子は、一又は複数の実施形態において、基板と金属部材との間又は基板上の2つの金属部材間を接合可能な接合材となる。前記フラックスを含有するスラリーは、一又は複数の実施形態において、ダイアタッチペーストとして使用できる。前記フラックスを含有するスラリーが金属粒子をさらに含む場合、前記スラリーは、一又は複数の実施形態において、導電型ダイアタッチペーストとして使用できる。
前記金属部材は、一又は複数の実施形態において、基板上に固定されている。
前記金属部材の金属は、一又は複数の実施形態において、銅、鉄等の金属を含む。前記金属部材としては、例えば、放熱板、電気回路等が挙げられる。
前記基板としては、一又は複数の実施形態において、金属表面を有する基板が挙げられ、例えば、銅板、鋼板、ステンレス鋼板等が挙げられる。
【0048】
[洗浄方法]
本開示は、一態様において、被洗浄物を本開示の洗浄剤組成物で洗浄する洗浄工程を含み、前記被洗浄物は200℃以上に加熱する工程を経た、フラックス残渣を有する基板である、洗浄方法(以下、「本開示の洗浄方法」ともいう)に関する。前記被洗浄物としては、上述した被洗浄物が挙げられる。前記洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、フラックス残渣を有する被洗浄物を本開示の洗浄剤組成物に接触させることを含む。本開示の洗浄方法によれば、200℃以上の高温処理後の変色した金属(金属酸化物)及びフラックス残渣の両方を効率よく除去できる。
前記洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、本開示の洗浄剤組成物を用いて変色した金属を除去することを含む。したがって、本開示は、一態様において、本開示の洗浄剤組成物の、変色した金属及びフラックス残渣の除去への使用に関する。変色した金属は、一又は複数の実施形態において、金属が加熱により酸化した部分(金属酸化物)を含む。
被洗浄物を本開示の洗浄剤組成物で洗浄する方法、又は、被洗浄物に本開示の洗浄剤組成物を接触させる方法としては、例えば、超音波洗浄装置の浴槽内で接触させる方法、洗浄剤組成物をスプレー状に射出して接触させる方法(シャワー方式)等が挙げられる。本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、希釈することなくそのまま洗浄に使用できる。
前記洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、前記被洗浄物を本開示の洗浄剤組成物に浸漬する工程である。浸漬温度は、変色した金属及びフラックス残渣の両方の除去性向上の観点から、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下が更に好ましく、そして、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上が更に好ましい。浸漬時間は、同様の観点から、5分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましく、そして、3時間以下が好ましく、2時間以下がより好ましく、1時間以下が更に好ましい。
本開示の洗浄方法は、一又は複数の実施形態において、洗浄剤組成物に被洗浄物を接触させた後、水及び/又はメタノール等のアルコールでリンスし、乾燥する工程を含むことが好ましい。
本開示の洗浄方法は、本開示の洗浄剤組成物の洗浄力が発揮されやすい点から、本開示の洗浄剤組成物と被洗浄物との接触時に超音波を照射することが好ましく、その超音波は比較的強いものであることがより好ましい。前記超音波の周波数としては、同様の観点から、26~72Hz、80~1500Wが好ましく、36~72Hz、80~1500Wがより好ましい。
【0049】
本開示の洗浄方法における洗浄工程は、その他の一又は複数の実施形態において、被洗浄物からフラックス残渣をフラックス残渣除去剤で洗浄除去する工程(除去工程)である。前記除去工程におけるフラックス残渣除去剤としては、上述した本開示のフラックス残渣洗浄除去剤組成物が挙げられる。
すなわち、本開示の洗浄方法は、一又は複数の実施形態において、被洗浄物からフラックス残渣を本開示のフラックス洗浄除去剤組成物で洗浄除去する工程を含み、前記被洗浄物は200℃以上に加熱する工程(焼結工程)を経た、フラックス残渣を有する基板である、フラックス残渣洗浄除去方法である。
【0050】
[電子部品の製造方法]
本開示の電子部品の製造方法は、基板と金属部材との間又は基板上の2つの金属部材の間にフラックスを含むスラリーを塗布した後、200℃以上に加熱する工程(焼結工程)及び前記焼結工程を経た基板(被洗浄物)を本開示の洗浄剤組成物で洗浄する工程(洗浄工程)を含む。前記洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、フラックス残渣を有する被洗浄物を本開示の洗浄剤組成物に接触させることを含む。前記洗浄工程における洗浄方法としては、上述した本開示の洗浄方法と同様の方法が挙げられる。被洗浄物としては、上述した被洗浄物を挙げることができる。
【実施例0051】
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0052】
1.洗浄剤組成物の調製(実施例1~19、比較例1~8)
100mLガラスビーカーに、下記表1-1、表1-2及び表2に記載の組成となるように各成分を配合し、下記条件で混合することにより、実施例1~19及び比較例1~8の洗浄剤組成物を調製した。表中の各成分の数値は、断りのない限り、調製した洗浄剤組成物における含有量(質量%)を示す。
<混合条件>
液温度:25℃
攪拌機:マグネチックスターラー(50mm回転子)
回転数:300rpm
攪拌時間:10分
【0053】
洗浄剤組成物の成分として下記のものを使用する。
(成分A)
A1:フェノキシエタノール[エチレングリコールモノフェニルエーテル、東京化成工業株式会社製]
A2:フェノキシプロパノール[1-プロピレングリコールモノフェニルエーテル、東京化成工業株式会社製]
A3:ベンジルグリコール[エチレングリコールモノベンジルエーテル、東京化成工業株式会社製]
A4:2-プロピレングリコールモノフェニルエーテル[東京化成工業株式会社製]
A5:ジエチレングリコールモノベンジルエーテル[東京化成工業株式会社製]
A6:トリエチレングリコールモノフェニルエーテル[日本乳化剤株式会社製]
(成分B)
B1:イミダゾール[富士フイルム和光純薬株式会社製]
B2:1-メチルイミダゾール[東京化成工業株式会社製]
B3:2-メチルイミダゾール[東京化成工業株式会社製]
B4:4-メチルイミダゾール[東京化成工業株式会社製]
B5:1,2-ジメチルイミダゾール[東京化成工業株式会社製]
B6:1-イソブチル-2-メチルイミダゾール[東京化成工業株式会社製]
B7:2-エチル-4-メチルイミダゾール[富士フイルム和光純薬株式会社製]
(非成分B)
B8:N,Nジブチルモノエタノールアミン[日本乳化剤株式会社製]
B9:ジイソプロパノールアミン[日本乳化剤株式会社製]
B10:N-n-ブチルエタノールアミン[日本乳化剤株式会社製]
B11:トリエタノールアミン[日本乳化剤株式会社製]
B12:メチルジエタノールアミン[日本乳化剤株式会社製]
B13:ベンゾトリアゾール[東京化成工業株式会社製]
(成分C)
水[オルガノ株式会社製純水装置G-10DSTSETで製造した1μS/cm以下の純水]
(成分D)
ジエチレングリコールモノブチルエーテル[日本乳化剤株式会社製]
【0054】
2.洗浄剤組成物の評価
調製した実施例1~19及び比較例1~8の洗浄剤組成物を用いてフラックス残渣除去性及び変色した金属(金属酸化物)の除去性について試験を行い、評価した。
【0055】
<テスト基板>
50mm×20mmのタフピッチ銅板上にアビエチン酸(フラックス)を0.05g塗布し、ホットプレートにて250℃で1時間加熱することで、テスト基板を作製した。アビエチン酸は銅板表面の一部に乗った状態である。
ここで作製されたテスト基板は、加熱温度並びに保持時間から、基板上の金属同士を接合することを模したモデルである。例えば、特許文献1の実施例では200℃で60分保持している。
また、ナノ粒子接合材により接合された半導体素子を有する半導体装置に関する特開2020-74498号公報の[0025]段落には、ナノ粒子接合材は、概ね300℃以下の低温で接合可能な接合材であり、ナノ粒子接合材が焼結された銀すなわち焼結銀である場合、その焼結温度すなわち硬化温度はおよそ210℃であることが記載されている。
【0056】
[フラックス残渣除去性の評価]
60℃に加温した各洗浄剤組成物100g中にテスト基板を浸漬し、38kHz、400Wの出力で超音波により15分間洗浄を行った。その後、洗浄剤組成物からテスト基板を引き上げ、水すすぎを行い、エアブローにて乾燥し、洗浄後のテスト基板を得た。洗浄前後のテスト基板の外観を観察し、下記式によりフラックス除去率を算出し、フラックス除去性を評価した。フラックス除去率が高いほど、フラックス残渣の除去性に優れていると評価できる。
フラックス除去率(%)=洗浄後にフラックスが除去された面積/洗浄前のフラックスが付着している面積×100
【0057】
[変色した金属(金属酸化物)の除去性]
銅板上にアビエチン酸を乗せずに行ったこと以外は、フラックス除去性の評価と同様にして、洗浄後のテスト基板を得た。銅板は、高温で処理されたことにより表面が酸化し、茶褐色化する。洗浄前後のテスト基板の外観を観察し、下記式により変色した金属除去率を算出し、変色した金属(金属酸化物)の除去性を評価した。変色した金属除去率が高いほど、変色した金属の除去性に優れていると評価できる。
変色した金属除去率(%)=洗浄後に変色した金属が除去された面積/洗浄前の変色した金属が付着している面積×100
【0058】
[溶出銅イオン量]
金属表面から酸化物が除去された結果、洗浄液中に溶解した金属イオン量(溶出銅イオン量、ppm)はICP-MSにより測定した。
【0059】
【表1-1】
【0060】
【表1-2】
【0061】
【表2】
【0062】
上記表1-1、表1-2及び表2に示すとおり、実施例1~19の洗浄剤組成物は、比較例1~8に比べて、変色した金属及びフラックス残渣の両方の除去性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示の洗浄剤組成物を用いることにより、変色した金属及びフラックス残渣の両方を効率よく除去できることから、例えば、半導体装置の製造プロセスにおけるフラックスの洗浄工程の短縮化及び製造される半導体装置の性能・信頼性の向上が可能となり、半導体装置の生産性を向上できる。