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特開2024-1123自己免疫疾患の治療に応答性の対象を同定する方法およびそれを治療するための組成物
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  • 特開-自己免疫疾患の治療に応答性の対象を同定する方法およびそれを治療するための組成物 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001123
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】自己免疫疾患の治療に応答性の対象を同定する方法およびそれを治療するための組成物
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20231226BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231226BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20231226BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 31/715 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231226BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 D
G01N33/536 D
A61K45/00
A61P37/02
A61P43/00 107
A61P3/10
A61P17/14
A61P7/06
A61P1/16
A61P9/00
A61P17/00
A61P25/00
A61P1/04
A61P19/02
A61P5/14
A61P11/00
A61P13/12
A61P21/04
A61P21/00
A61P17/06
A61P29/00 101
A61P27/02
A61K39/39
A61K35/74
A61K38/19
A61K38/20
A61K31/715
A61K47/02
A61P43/00 121
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171996
(22)【出願日】2023-10-03
(62)【分割の表示】P 2021170871の分割
【原出願日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】61/892,140
(32)【優先日】2013-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファウストマン,デニス,エル.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】TNF-α受容体II活性化因子による治療に応答しやすい自己免疫疾患を有する対象を同定する方法、およびその治療に応答しやすいと同定される対象を治療する方法の提供。
【解決手段】自己反応性CD8+T細胞の表面上のCD8タンパク質密度を測定するステップと、CD8タンパク質密度が基準CD8+T細胞と比較して低下している場合、対象を上記治療に応答しやすいと同定するステップを含む、上記方法。1型糖尿病について、上記方法は、対象由来のin vitro生物学的サンプル中のCペプチドレベルを測定するステップ、Cペプチドレベルが検出可能である場合に対象を上記治療に応答しやすいと同定するステップ、およびCペプチドレベルが実質的に検出不能である場合に対象を治療に応答しにくいと同定するステップを含み得る。本発明はまた、治療的使用のための、1つ以上のTNFR2活性化因子の医薬組成物も特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の組成物及び方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
全般的に、本発明は、TNF-α受容体II活性化因子による治療に応答しやすい自己免疫疾患を有する対象を同定する方法、およびその治療に応答しやすいと同定される対象を治療する方法に関する。本発明はまた、TNF-α受容体II活性化因子治療単独に応答しにくいと判定される対象を治療するための方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患は、正常状態では観察されない、身体自身の構成要素に対する免疫応答を伴うと考えられており、様々な組織障害および/または機能障害を引き起こす病理的状態をもたらす。自己免疫疾患は、それらの特徴に従って、全身性自己免疫疾患と器官特異的自己免疫疾患に大きく分類される。自己免疫疾患の例としては、インスリン依存性糖尿病(1型糖尿病としても知られる)、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、橋本病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アディソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、円板状ループス、潰瘍性大腸炎、乾癬性関節炎、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、甲状腺機能低下、特発性肺線維症、特発性血症板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、若年性関節炎、扁平苔癬、ループス、メニエール病、混合結合組織疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、デビック病、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫症ならびに自己免疫神経障害(例えば、自己免疫性アルツハイマー病、自己免疫性パーキンソン病、または筋萎縮性側索硬化症)が挙げられる。
【0003】
特に、1型糖尿病は、血液グルコースレベルの正常な調節を妨げるインスリン欠乏によって特徴付けられる重度の小児期の自己免疫疾患である。インスリンは、膵臓のランゲルハンス島内のβ細胞(β膵島細胞)により産生されるペプチドホルモンである。インスリンは、グルコース利用、タンパク質合成、中性脂肪の形成および貯蔵を促進し、且つ脳および筋肉組織の主要エネルギー源である。1型糖尿病は、インスリン産生を排除して最終的に高血糖症およびケトアシドーシスを生じさせる、膵臓のβ膵島細胞の完全な破壊をもたらす自己免疫反応によって引き起こされる。インスリン注射療法は、重度の高血糖症およびケトアシドーシの予防においては有用であったが、血液グルコースレベルを完全に正常化させることはできない。インスリン注射療法は極めて成功しているが、現代の糖尿病の罹患の主因である早期血管劣化は予防しない。糖尿病関連血管劣化(微小血管劣化とアテローム性動脈硬化症の促進の両方を含む)は、最終的には腎不全、網膜劣化、狭心症、心筋梗塞、末梢神経障害、およびアテローム性動脈硬化症を引き起こす可能性がある。
【0004】
Cペプチド(すなわち結合ペプチド)は、プロインスリン分子内のインスリンのA鎖とB鎖を結合する短い31アミノ酸のタンパク質である。膵臓のβ膵島細胞は、A鎖、Cペプチド、B鎖、およびシグナル配列を含むプレプロインスリンを分泌する。シグナル配列は切断されてプロインスリンを生じる。その後、Cペプチドが切断されて成熟インスリンタンパク質(ジスルフィド結合したA鎖およびB鎖を含む)を生じる。新たに診断された糖尿病患者は、しばしば、彼らのCペプチドレベルに基づき、1型糖尿病を有する患者と2型糖尿病を有する患者に分類される。対象におけるCペプチドレベルの測定は、対象の体内のインスリン産生の有用なプロキシ試験(proxy test)を構成するが、これは肝臓代謝に起因する対象の循環系内のインスリンレベルの変動性が、インスリンレベルの測定を不確定にするためである。他方、Cペプチドレベルには肝臓代謝による影響が少ない。このため、末梢Cペプチド濃度は、インスリン濃度よりも正確に、β膵島細胞によるインスリンの分泌を反映する。
【0005】
HbA1c(糖化ヘモグロビンまたはグリコシル化ヘモグロビン)は、血漿中のヘモグロビンの非酵素的糖化によってin vivoで産生されるヘモグロビンの一形態である。非糖化形態のヘモグロビンに対するHbA1cの比率は、血漿中のグルコース濃度と直接相関している。従って、糖尿病患者由来のサンプル中で長期間にわたって観察される高レベルのHbA1cは、重篤な症状、例えば高血糖症(例えば、急性高血糖症)を示し得る。
【0006】
腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)は、腫瘍と闘う手段としてのバチルス・カルメット-ゲラン(Bacillus Calmette-Guerin)(BCG)注射後に誘導された血清因子として1975年に記載された天然のサイトカインである(Carswellら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 72:3666-3670, 1975年)。TNF-αおよびその2つの受容体のクローニングは、微生物病原体のゲノムに対する配列相同性を明らかにした(例えば、Loetscherら, Cell 62:351, 1990年)。この驚くべき配列重複は、宿主のTNF-α分泌およびその受容体の活性を調節する複雑な微生物応答のシステムを示す(Rahmanら, PloS Pathogens 2:66, 2006年)。
【0007】
TNF-αの発現は、多様な細菌、寄生生物、およびウイルスによって、宿主の感染に対する防御の最前線として誘導される。ウイルス(例えばエプスタイン・バーウイルス)は、TNF-αおよびTNF-αシグナル伝達を増強さえする受容体およびタンパク質をコードする(Liebowitz, New Engl. J. Med. 338:1461-1463, 1998年;Guasparriら, Blood 111:3813-3821, 2008年;Wangら, Cell 43:831-840, 1985年)。あるいは、TNF-αシグナル伝達活性および宿主における機能を抑制するタンパク質を発現する様々なウイルスが示されている(Rahmanら, PloS Pathogens 2:66, 2006年)。ウイルス感染(例えば、エプスタイン・バーウイルス感染)が自己免疫疾患を引き起こし得ることを示唆する証拠もある(Sairenjiら, Diabetologia 34:33-39, 1991年)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Carswellら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 72:3666-3670, 1975年
【非特許文献2】Loetscherら, Cell 62:351, 1990年
【非特許文献3】Rahmanら, PloS Pathogens 2:66, 2006年
【非特許文献4】Liebowitz, New Engl. J. Med. 338:1461-1463, 1998年
【非特許文献5】Guasparriら, Blood 111:3813-3821, 2008年
【非特許文献6】Wangら, Cell 43:831-840, 1985年
【非特許文献7】Rahmanら, PloS Pathogens 2:66, 2006年
【非特許文献8】Sairenjiら, Diabetologia 34:33-39, 1991年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
自己免疫疾患に対する研究された多くの治療法が、幾つかの苦痛緩和特性または治療特性さえも示しているが、これらの治療法は、自己免疫疾患(例えば1型糖尿病)を有する全ての対象に一貫して有益な転帰をもたらすことはできない。このため、これらの対象を治療する前に治療または一連の治療に応答しやすい対象を正確に同定する方法、ならびに治療に応答しやすいと同定された対象を治療するための治療法に対するニーズが残されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要約
第1の態様において、本発明は、自己免疫疾患を有する対象が腫瘍壊死因子-α(TNF-α)受容体II(TNFR2)活性化因子による治療に応答する可能性を判定する方法を提供する。この方法は、以下のステップ:
(i) 上記対象由来のCD8+ T細胞集団を含むin vitro生物学的サンプルを、TNFR2活性化因子を含む組成物と接触させるステップ;および
(ii) 上記集団中の自己反応性CD8+ T細胞の表面上のCD8タンパク質密度を測定するステップ;
を含み、ここで基準CD8+ T細胞と比較した、上記自己反応性CD8+T細胞の表面上のCD8タンパク質密度の低下は、対象が治療に応答しやすいことを示す。一部の実施形態において、基準CD8+ T細胞は、自己免疫疾患を有し、且つTNFR2活性化因子により治療または前治療されていない対象由来の基準サンプルに由来する。他の実施形態において、基準CD8+ T細胞は、健康な対象由来の基準サンプルに由来する。ある実施形態において、測定は、蛍光色素にコンジュゲートされていてよい抗CD8抗体を用いて行われる。特定の実施形態において、生物学的サンプルは、接触の前にダサチニブと共にインキュベートされる(例えば、生物学的サンプルは少なくとも4時間ダサチニブと共にインキュベートされ、および/または生物学的サンプルは最大48時間ダサチニブと共にインキュベートされる)。
【0011】
本発明の方法の一部の実施形態において、自己免疫疾患は、I型糖尿病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アディソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、円板状ループス、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、乾癬性関節炎、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下、特発性肺線維症、特発性血症板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、若年性関節炎、扁平苔癬、ループス、メニエール病、混合結合組織疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、デビック病、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫症または自己免疫神経障害である。特定の実施形態において、自己免疫疾患は、1型糖尿病、セリアックスプルー皮膚炎、クローン病、グレーブス病、甲状腺機能低下、ループス、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、サルコイドーシス、シェーグレン症候群または潰瘍性大腸炎である。特定の実施形態において、自己免疫神経障害は、ニューロンに対する自己免疫媒介性損傷、自己免疫性アルツハイマー病、自己免疫性パーキンソン病、または自己免疫媒介性筋萎縮性側索硬化症である。
【0012】
第2の態様において、本発明は、1型糖尿病を有する対象が腫瘍壊死因子-α(TNF-α)受容体II(TNFR2)活性化因子による治療に応答する可能性を判定する方法を提供する。その方法は、対象由来のin vitro生物学的サンプルを、サンプル中のCペプチドを検出することができるデバイスと接触させるステップを含み、ここでサンプル中の検出可能なCペプチドレベルは対象が治療に応答しやすいことを示し、また実質的に検出不能なCペプチドレベルは対象が治療に応答しにくいことを示す。一部の実施形態において、Cペプチドの実質的に検出不能なレベルは、対象が治療から除外されるべきであることを示す。ある実施形態において、実質的に検出不能なレベルは、約1.5pmol/L未満(例えば、約1.0pmol/L未満)のCペプチドレベルである。他の実施形態において、検出可能なレベルは、約1.5pmol/L超のCペプチドレベルである。具体的実施形態において、対象は、Cペプチドの濃度が約1.5pmol/L~約4.0pmol/Lの範囲である場合、治療に応答しやすいと同定される。
【0013】
本発明のこの態様のある実施形態において、接触は、対象の治療前に行われる。その接触は、以下のステップ:
(i) サンプルを、表面に固定化捕捉剤を有するデバイスと接触させることにより、サンプル中のCペプチドを固定化捕捉剤に結合させるステップ;
(ii) 上記表面を結合検出剤に接触させることにより、Cペプチドを上記結合検出剤に結合させるステップ;および
(iii) 上記結合検出剤を用いてサンプル中のCペプチドの濃度を測定するステップ
を含む。
【0014】
一部の実施形態において、上記の結合検出剤はペルオキシダーゼ酵素を含む。特定の実施形態において、上記の測定は、上記表面を、過酸化水素およびペルオキシダーゼ基質を含む溶液と接触させるステップを含む。
【0015】
本発明のこの態様の一部の実施形態において、本発明の方法は、治療を開始する前に対象由来の血液サンプル中の基準HbA1cレベルを測定するステップをさらに含む。その方法は、以下のステップ:
(i) 治療後に対象から採取された血液サンプル中のHbA1cレベルを測定するステップ、
(ii) 上記HbA1cレベルを基準HbA1cレベルと比較するステップ、および
(iii) 上記HbA1cレベルが基準HbA1cレベル以上である場合、上記対象を、1つ以上のTNFR2活性化因子による反復治療を必要としていると同定するステップ
を含む。
【0016】
本発明の特定の実施形態において、血液サンプルは、治療の少なくとも6ヶ月後(例えば、治療の少なくとも1年後、治療の少なくとも2年後、治療の少なくとも3年後、または治療の少なくとも5年後)に対象から採取される。
【0017】
本発明のいずれかの態様の特定の実施形態において、サンプルは、血液、血液成分、または尿を含む。ある実施形態において、血液成分は、血清または血漿である。他の実施形態において、サンプルは尿を含む。
【0018】
本発明のいずれかの態様の一部の実施形態において、TNFR2活性化因子は、バチルス・カルメット-ゲラン(BCG)、完全フロイントアジュバント、TNF-α、TNF-α受容体IIアゴニスト、TNF-αムテイン、インターロイキン-1、インターロイキン-2、組織プラスミノーゲン因子、リポ多糖(LPS)、リンホトキシン、またはカケクチンである。特定の実施形態において、TNFR2活性化因子はBCGである。特定の実施形態において、自己免疫疾患は1型糖尿病であり、上記方法は、本発明の第2の態様の1つ以上の方法と組み合わせて使用される。
【0019】
第3の態様において、本発明は、治療に応答しやすいと診断された対象における自己免疫疾患の治療において使用するための、1つ以上のTNFR2活性化因子を含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、対象由来のサンプルは、TNFR2活性化因子への曝露後に、基準対象(例えば、健康な対象、または自己免疫疾患を有し、且つ1つ以上のTNFR2活性化因子により治療または前治療されていない対象)由来のサンプル中の基準T細胞の表面上のCD8タンパク質密度と比較して、その表面上のCD8タンパク質密度の低下を有するT細胞集団を含む。一部の実施形態において、対象は、本発明の第1の態様の方法により治療に応答しやすいと同定される。
【0020】
本発明のこの態様の一部の実施形態において、自己免疫疾患は、I型糖尿病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アディソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、円板状ループス、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、乾癬性関節炎、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下、特発性肺線維症、特発性血症板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、若年性関節炎、扁平苔癬、ループス、メニエール病、混合結合組織疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、デビック病、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫症または自己免疫神経障害である。一部の実施形態において、自己免疫疾患は、1型糖尿病、セリアックスプルー皮膚炎、クローン病、グレーブス病、甲状腺機能低下、ループス、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、サルコイドーシス、シェーグレン症候群または潰瘍性大腸炎である。特定の実施形態において、自己免疫神経障害は、ニューロンに対する自己免疫媒介性損傷、自己免疫性アルツハイマー病、自己免疫性パーキンソン病、または自己免疫媒介性筋萎縮性側索硬化症である。
【0021】
第4の態様において、本発明は、対象由来のin vitroサンプル中のCペプチドのレベルを決定する(ここで実質的に検出不能なCペプチドレベルは対象が治療に応答しにくいことを示し、またここで検出可能なCペプチドレベルは対象が治療に応答しやすいことを示す)ことにより治療の前に治療に応答しやすいと同定された対象における1型糖尿病の治療において使用するための、1つ以上のTNFR2活性化因子を含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、実質的に検出不能なCペプチドレベルは、対象が治療から除外されるべきであることを示す。一部の実施形態において、実質的に検出不能なレベルは、1.5pmol/L未満のCペプチドレベルである。他の実施形態において、検出可能なレベルは、1.5pmol/Lを超えることはないCペプチドである。ある実施形態において、対象由来の尿サンプルが約4.0pmol/mmol未満の、クレアチニンに対するCペプチドの比率を示す場合、対象は治療から除外される。さらに他の実施形態において、対象由来の尿サンプルが約4.0pmol/mmol以上の、クレアチニンに対するCペプチドの比率を示す場合、対象は治療に応答しやすいと同定される。特定の実施形態において、対象は、第2の態様の方法により、治療に応答しやすいと同定される。
【0022】
この態様の一部の実施形態において、本医薬組成物は、本組成物の投与後約4年以内に対象のHbA1cレベルが少なくとも0.1%低下することを特徴とする。他の実施形態において、本医薬組成物は、本組成物の投与後約3年以内に対象のHbA1cレベルが少なくとも0.1%低下することを特徴とする。具体的実施形態において、本組成物は、対象における1型糖尿病の2回目またはそれ以降の治療において使用するためのものであり、ここで対象におけるHbA1cレベルは、以前の治療の前の対象におけるHbA1cレベルと比較して増加するかまたは変化しない。特定の実施形態において、対象は、第2の態様の方法により、1つ以上のTNFR2活性化因子による反復治療を必要としていると同定される。一部の実施形態において、対象はヒトである。他の実施形態において、対象は長期糖尿病患者である。
【0023】
本発明のいずれかの態様の一部の実施形態において、1つ以上のTNFR2活性化因子は、バチルス・カルメット-ゲラン(BCG)、完全フロイントアジュバント、TNF-α、TNF-α受容体IIアゴニスト、TNF-αムテイン、インターロイキン-1、インターロイキン-2、組織プラスミノーゲン因子、リポ多糖(LPS)、リンホトキシンおよびカケクチンから選択される。特定の実施形態において、1つ以上のTNFR2活性化因子はBCGである。特定の実施形態において、本組成物は、2x106 CFU超/BCG用量(例えば、2.3x106 CFU/BCG用量)を含む。具体的実施形態において、本組成物は、4x106 CFU未満/BCG用量を含む。一部の実施形態において、本組成物は、凍結乾燥BCGを含む。特定の実施形態において、本組成物は、BCGの生理食塩水溶液を含む。
【0024】
本発明のいずれかの態様の特定の実施形態において、本組成物は、対象に1回以上(例えば2回以上、例えば2回)投与される。一部の実施形態において、本組成物の投与の少なくとも2回は、少なくとも2週間の間隔があけられる。他の実施形態において、本組成物の投与の少なくとも2回は、少なくとも4週間の間隔があけられる。
【0025】
本発明のいずれかの態様のある実施形態において、本組成物は、皮内、筋肉内、非経口、静脈内、動脈内、頭蓋内、皮下、眼窩内、脳室内、脊髄内、腹腔内および鼻腔内から選択される経路による投与用に製剤化される。具体的実施形態において、本組成物は、皮内投与用に製剤化される。特定の実施形態において、本組成物は、生理食塩水溶液としての投与用に製剤化される。一部の実施形態において、上記の溶液は、1用量当たり約0.2cc未満の体積(例えば1用量当たり0.1ccの体積)を有する。一部の実施形態において、本医薬組成物は、2つ以上のTNFR2活性化因子の個別投与用に製剤化される。他の実施形態において、本医薬組成物は、2つ以上のTNFR2活性化因子の組み合わせ投与用に製剤化される。
【0026】
本発明の医薬組成物の一部の実施形態において、本医薬組成物は、対象においてTNF-αの発現を誘導することができると特徴付けられる。特定の実施形態において、本医薬組成物は、組成物が、対象の自己反応性免疫細胞(例えば、自己反応性CD8+ T細胞)においてNF-κB経路の活性化を誘導することができることを特徴とする。具体的実施形態において、本医薬組成物は、組成物が対象において自己反応性免疫細胞(例えば自己反応性CD8+ T細胞)の死滅を引き起こすことを特徴とする。ある実施形態において、本医薬組成物は、組成物が対象において調節T細胞(例えば、調節CD4+T細胞)の増殖を引き起こすことを特徴とする。
【0027】
本発明のいずれかの態様のある実施形態において、本医薬組成物は、組成物が、対象において高血糖症に由来する合併症を予防することを特徴とする。一部の実施形態において、高血糖症に由来する合併症は、腎障害、神経障害、心血管損傷、網膜への損傷、足への損傷、脚への損傷、心臓への損傷およびケトアシドーシスから選択される。具体的実施形態において、本組成物は、1つ以上の製薬上許容される担体または賦形剤を含む。
【0028】
定義
本明細書において使用される「約」は、挙げられた値の±10%の値を意味する。
【0029】
本明細書において使用される「抗体」は、全抗体または免疫グロブリンおよびその任意の抗原結合フラグメントもしくは一本鎖を意味する。本明細書中で使用される抗体は、哺乳動物(例えばヒトまたはマウス)抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、合成的に産生された抗体、または天然に単離された抗体であり得る。大部分の哺乳動物(ヒトを含む)において、全抗体は、ジスルフィド結合により結合された少なくとも2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖を有する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中VHと略される)と重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2およびCH3と、CH1とCH2間のヒンジ領域からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中VLと略される)と軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLからなる。VH領域とVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存性の高い領域によって分断されている、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化することができる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順番で配置された3つのCDRと4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、宿主組織または因子(免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(Clq)を含む)への結合を媒介することができる。本発明の抗体は、全ての公知形態の抗体および抗体様特性を有する他のタンパク質足場を包含する。例えば、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、一価抗体、キメラ抗体、または抗体様特性を有するタンパク質足場(例えばフィブロネクチンまたはアンキリンリピート)であり得る。抗体は、以下のアイソタイプのいずれかを示し得る:IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)、IgM、IgA(例えば、IgA1、IgA2、およびIgAsec)、IgD、またはIgE。
【0030】
本明細書において使用される「糖尿病患者」は、1型糖尿病と診断された対象を意味する。特に、長期糖尿病患者は、1型糖尿病の発症から少なくとも約5年間(例えば、少なくとも約6年間、少なくとも約7年間、少なくとも約8年間、少なくとも約9年間、少なくとも10年間、少なくとも11年間、少なくとも約12年間、少なくとも約13年間、または少なくとも約14年間)1型糖尿病を有する対象である。
【0031】
本明細書において使用される「Hox11+脾細胞」は、Hox11遺伝子を発現し且つ脾臓中に見出される多能性CD45-細胞を意味する。
【0032】
本明細書において使用される「免疫細胞」は、後天性または先天性免疫系の生成、調節、または効果に関与する任意の細胞を意味する。免疫細胞としては、例えば、T細胞(例えば、CD4+細胞またはCD8+細胞)、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球および樹状細胞、ならびに好中球が挙げられる。
【0033】
本明細書において使用される「ムテイン(mutein)」は、そのアミノ酸配列において少なくとも1つ以上のアミノ酸が異なるポリペプチドを意味する。例えば、ムテインは、基準ポリペプチドのアミノ酸配列に対して、90%超であるが100%未満の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0034】
本明細書中で互換的に用いられる「製薬上許容される担体」または「製薬上許容される賦形剤」は、本明細書中に記載される化合物以外の任意の成分(例えば、活性化合物を懸濁または溶解することができるビヒクル)であって、患者において非毒性および非炎症性の特性を有する前記成分を意味する。担体および賦形剤としては、例えば以下のものが挙げられる:抗付着剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮助剤、崩壊剤、色素(着色剤)、皮膚軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、フィルム形成剤またはフィルムコーティング剤、香味料、香料、滑剤(流動促進剤)、滑沢剤、保存剤、印刷用インク、吸着剤、懸濁化剤または分散剤、甘味料または水和水。例示的な担体および賦形剤としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、前ゼラチン化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、キシリトール、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、酢酸緩衝生理食塩水(ABS)、リンガー溶液、デキストロース、グリセロール、エタノール等およびこれらの組み合わせ。
【0035】
本明細書において使用される「サンプル」は、対象から採取される任意の検体(例えば、血液、血液成分(例えば、血清もしくは血漿)、尿、唾液、羊水、脳脊髄液、組織(例えば、胎盤または皮膚)、膵液、絨毛膜絨毛サンプル、および細胞)を意味する。好ましくは、サンプルは、血液、血液成分(例えば、血清もしくは血漿)、または尿である。
【0036】
本明細書中で互換的に用いられる「対象」または「患者」は、任意の動物、例えば哺乳動物(例えばヒト)を意味する。本明細書中に記載される医薬組成物で治療される対象は、医師によりこのような状態(例えば、1型糖尿病などの自己免疫疾患)を有すると診断された対象、またはこのような状態を発症するリスクがある対象であり得る。診断は、当技術分野で公知の任意の技術または方法によって行うことができる。当業者であれば、標準的な試験もしくは検査を用いて対象が自己免疫疾患(例えば1型糖尿病)を有すると診断され得たか、または検査を行うことなく、1つ以上のリスク因子の存在によってリスクが高い対象であると同定され得たことを理解するであろう。1型糖尿病について、このようなリスク因子としては、例えば、自己反応性T細胞(例えば自己反応性CD8+ T細胞)の存在、少なくとも6.1mmol/Lの空腹時血漿グルコースレベル、75gの経口グルコース負荷の2時間後の少なくとも11.1mmol/Lの血漿グルコースレベル、またはCペプチドの血清レベルの低下が挙げられる。本発明の医薬組成物による治療の前に、自己免疫疾患(例えば1型糖尿病)を有する対象を、対象が本発明の医薬組成物による治療に応答しやすいかまたは治療に応答しにくいかを判定するため、本明細書中に記載される診断試験に供することができる。
【0037】
本明細書において使用される「実質的に検出不能なCペプチドレベル」は、対象由来のサンプルが、約1.5pmol/L未満のCペプチドレベル(例えば約1.0pmol/L未満、または約0.5pmol/L未満さえも)を有し得ることを意味する。実質的に検出不能なCペプチドレベルに対応するCペプチドレベルは、サンプルが得られた時点の対象の摂食状態には依存しない。例えば、サンプルは、空腹時対象に由来するものであってもよいし、混合食物耐性試験もしくはグルカゴン試験による刺激作用などの刺激を受けた対象に由来するものであってもよい。
【0038】
本明細書中で互換的に用いられる「腫瘍壊死因子-α(TNF-α)誘導物質」または「TNF-α誘導物質」は、in vivoまたはin vitroで腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の発現を誘導する組成物または分子を意味する。TNF-α誘導物質は、バチルス・カルメット-ゲラン(BCG)、完全フロイントアジュバント、インターロイキン-1、インターロイキン-2、組織プラスミノーゲン因子、リポ多糖(LPS)、リンホトキシンまたはカケクチンであり得る。好ましくは、TNF-α誘導物質はBCGである。
【0039】
本明細書中で互換的に用いられる「TNF-α受容体II(TNFR2)アゴニスト」または「TNFR2アゴニスト」は、in vivoまたはin vitroで結合するとTNFR2を活性化させる組成物または分子を意味する。TNFR2アゴニストの例としては、TNFR2に特異的に結合して活性化するTNFR2アゴニスト抗体およびTNFムテインが挙げられる。
【0040】
本明細書中で互換的に用いられる「TNF-α受容体II(TNFR2)活性化因子」または「TNFR2活性化因子」は、in vivoまたはin vitroでTNFR2を直接的または間接的に活性化する組成物を意味する。TNFR2活性化因子は、例えばTNFR2に結合することにより、TNFR2を直接活性化することもできるし、例えばTNF-αの発現を誘導することにより、間接的に活性化することもできる。TNFR2活性化因子は、TNF-α、TNF-α誘導物質、およびTNFR2アゴニストを包含する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1A図1Aは、対象1、対象2、および対象3におけるEBV-特異的T細胞の出現を示す経時変化データを提示する3つのグラフのセットである。各グラフにおいて、時点0は、EBVに対する抗体の出現のタイミングに基づいた、推定されるEBV感染の発生を示す。
図1B図1Bは、テトラマー染色した、EBV-特異的自己反応性CD8+ T細胞を含むサンプルおよび陰性対照のフローサイトメトリー分析結果の3つのドットプロットのセットである。無関係なペプチド配列がロードされたテトラマー(陰性対照、左パネル)を用いて、CD8+ T細胞により結合された非特異的テトラマーのレベルを決定した。中央パネルおよび右パネルは、EBV-特異的テトラマーを用いた陽性染色の例を示す。
図2図2は、活性EBV感染を伴わない1型糖尿病を有する対象の基準集団と対比した、3人のEBV感染した対象のそれぞれにおけるCペプチドレベルの経時変化を示す幾つかのグラフのセットである。対象1および2は、基準集団と比較して統計的に有意な(それぞれp<0.04およびp=0.00134)、Cペプチドの一過性増加を示した。対象3は、Cペプチドレベルの増加を示さなかった。
図3A図3Aは、インスリンB自己反応性T細胞の存在を定量化し、さらに感染していない1型糖尿病対象における自己反応性T細胞の濃度と比較した、EBV感染後の1型糖尿病対象における循環インスリンB自己反応性T細胞の存在の増加を示すグラフのセットである。クラスI試薬を含む無関係なペプチドで染色した、同じ対象由来の末梢T細胞のバックグラウンド蛍光は0.2%であった。
図3B図3Bは、EBV感染を伴うまたは伴わない1型糖尿病を有する対象由来のサンプルのフローサイトメトリーヒストグラムのセットであり、T細胞の表面上のCD8タンパク質密度を定量化している。T細胞の表面上のCD8タンパク質密度の低下は、EBV感染した対象の新たに出現するインスリンB自己反応性T細胞について特異的であった。EBV感染を伴わない長期1型糖尿病患者は、より少数の末梢インスリンB自己反応性T細胞を有していたが、T細胞の表面上のCD8タンパク質の密度は正常範囲内であった。同様に、EBV感染した対象由来のEBV特異的T細胞も正常密度のCD8タンパク質を有していた。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明
本発明者は、自己免疫疾患を有する対象が、TNF-α受容体II(TNFR2)活性化因子による治療に応答しやすいかまたはTNF-α受容体II(TNFR2)活性化因子による治療に応答しにくいかを判定する方法を見出した。本発明の方法によれば、自己免疫疾患を有する対象由来のサンプル中の、表面上のCD8タンパク質密度の低下を示す、in vivoまたはin vitroで1つ以上のTNF-α受容体II(TNFR2)活性化因子に曝露された自己反応性CD8+ T細胞集団の存在は、対象が1つ以上のTNFR2活性化因子による治療に応答しやすいことを示し得る。1つ以上のTNFR2活性化因子に曝露された自己反応性CD8+ T細胞の表面上のCD8タンパク質密度の低下は、基準CD8+ T細胞の表面上のCD8タンパク質密度に対する低下であり得る。基準CD8+ T細胞は、自己免疫疾患を有し、且つTNFR2活性化因子によりin vivoまたはin vitroで治療または前治療されていない対象由来のサンプルに由来し得る。あるいは、基準CD8+ T細胞は、健康な対象由来のサンプルに由来し得る。本発明の方法によれば、CD8+ T細胞の表面上のCD8タンパク質密度は、抗CD8抗体を用いて決定することができる。
【0043】
本発明者はまた、TNF-α受容体II(TNFR2)活性化因子による治療に応答しやすい1型糖尿病を有する対象と、TNFR2活性化因子による治療に応答しにくい1型糖尿病を有する対象とを識別する方法も見出した。本発明者は、対象におけるCペプチドレベルを使用して、対象が治療、特にTNFR2活性化因子による治療に応答する可能性を評価することができることを見出した。検出可能なレベルのCペプチド(例えば約1.5pmol/L以上のレベル)を有する1型糖尿病を有する対象は、TNFR2活性化因子を含む医薬組成物による治療に応答しやすい。特に、TNFR2活性化因子による治療に対する応答は、TNFR2活性化因子による治療後の対象におけるCペプチドレベルの増加を検出することによって評価することができる。他方、実質的に検出不能なレベルのCペプチド(例えば約1.5pmol/L未満のレベル)を有する1型糖尿病を有する対象は、TNFR2活性化因子を含む医薬組成物による治療に応答しにくい(例えば、対象をこのような治療法から除外してもよいし、またはTNFR2療法を細胞療法(例えば多能性細胞(例えばHox11+細胞)による治療法)と組み合わせて投与してもよい)。
【0044】
Cペプチドレベルは、対象由来のサンプル(例えば血液、血液成分(血清もしくは血漿)、または尿)を用いてアッセイすることができる。Cペプチドレベルの測定は、当技術分野で公知の任意の方法、例えばThermo Scientific Pierce Assay Development Technical Handbook, 第2版, 2011年(この文献の開示は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて行うことができる。
【0045】
例えば、検出可能なCペプチドレベルを有する1型糖尿病患者の治療におけるTNFR2活性化因子の使用は、膵臓中のβ膵島細胞への損傷を低下させることができれば(例えば、β膵島細胞を標的とする自己反応性T細胞の数を低下させることにより)、これらの細胞を経時的に修復または再生することができるという発見に基づき予測される。実質的に検出不能なCペプチドレベルを有する1型糖尿病を有する対象は、検出可能なCペプチドレベルを有する対象とは異なり、膵臓中のβ膵島細胞を修復または再生することができない。これは、疾患の結果としての多数のまたは実質的に全てのβ膵島細胞の喪失に起因する可能性が高い(例えば、実質的に検出不能なCペプチドレベルを有する対象は、体内に不十分な数のβ膵島細胞しか残っていない可能性が高く、このため自己反応性免疫細胞による細胞傷害が存在しない場合でも、正常血糖を確立することができない可能性がある)。さらに、β膵島細胞の修復または再生は、対象に存在する、様々な細胞型(β膵島細胞を含む)を生じ得る細胞源を提供することができる多能性細胞(例えば、Hox11+脾細胞)の分化能に関連し得る。対象における実質的に検出不能なCペプチドレベルは、対象に、β膵島細胞を修復または再生して正常血糖を確立するために十分な数のこれらの多能性細胞(例えばHox11+脾細胞)が不足していることも示し得る。
【0046】
検出可能なCペプチドレベルを有する1型糖尿病を有する対象におけるTNFR2活性化因子の有益な活性は、それらのin vivoで自己反応性CD8+ T細胞を死滅させる能力に関連し(例えば、Banら, Proc. Nat. Acad. Sci, USA, 105:13644-13649, 2008年(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)参照)、この能力は、これらの細胞によって引き起こされる組織損傷(例えば、β膵島細胞の喪失)を低下または最小化する。TNFR2活性化因子はまた、in vivoで疾患の炎症性成分を調節する有益な調節CD4+ T細胞の増殖も促進する。任意の特定の理論に拘泥するものではないが、TNFR2アゴニズムは細胞内NF-κBシグナル伝達を活性化させると考えられており、このシグナル伝達は自己反応性T細胞中でアポトーシスを誘導し、これによりTNFR2活性化因子を投与された対象(例えばヒト)において1型糖尿病を治療すると考えられている。
【0047】
本発明の診断方法
CD8表面タンパク質アッセイ
本発明は、自己免疫疾患を有する対象(例えばヒト)を1つ以上のTNFR2活性化因子による治療に応答しやすいと同定する方法を特徴とする。一部の実施形態において、上記方法は以下のステップ:(i) 上記対象由来の1つ以上のCD8+T細胞を含むin vitro生物学的サンプル(例えば血液)を、TNFR2活性化因子を含む組成物と接触させるステップ、および(ii) 抗CD8抗体を用いて自己反応性CD8+T細胞を検出するステップを含む。基準CD8+ T細胞と比較した、1つ以上の自己反応性CD8+ T細胞の表面上のCD8タンパク質密度の低下は、対象が治療に応答しやすいことを示す。基準CD8+T細胞(例えば自己反応性CD8+ T細胞)は、自己免疫疾患を有し、且つTNFR2活性化因子によりin vivoまたはin vitroで治療または前治療されていない対象由来のサンプルに由来するものであってよい。あるいは、基準CD8+ T細胞(例えば、非自己反応性CD8+ T細胞)は、健康な対象由来のサンプルに由来するものであってよい。
【0048】
自己反応性CD8+ T細胞の表面上のCD8タンパク質密度の分析のための、1つ以上の自己反応性CD8+ T細胞を含むサンプル(例えば血液)を、自己免疫疾患を有する対象から得ることができる。サンプルは、サンプル中の細胞を代謝的に「凍結させる」チロシンキナーゼ阻害剤、例えばダサチニブ(Axon Medchem BV社、グローニンゲン、オランダ)(Lissinaら, J. Immunol. Methods, 340:11-24, 2009年(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)参照)と共に保存することができる。サンプル中のダサチニブの最終濃度は、少なくとも約10nM(例えば、少なくとも50nM、少なくとも約100nM、少なくとも約200nM、少なくとも約500nM、または少なくとも約1μM)であり得る。CD8+ T細胞を保存するため、これらの細胞を含むサンプルとチロシンキナーゼ阻害剤を、サンプル中の細胞を用いて細胞表面CD8タンパク質密度の決定を行う前に、少なくとも約4時間(例えば、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約12時間、または少なくとも約14時間)、また最大約48時間まで(例えば、最大約40時間まで、最大約36時間まで、最大約32時間まで、最大約28時間まで、最大約24時間まで、または最大約20時間まで)インキュベートすることができる。ダサチニブは、細胞表面構造を変化させない代謝阻害剤である。このためダサチニブと共に保存された細胞は、4~48時間保存された場合でも正確に染色することができる。
【0049】
サンプル(新鮮なサンプルであるか、チロシンキナーゼ阻害剤(例えばダサチニブ)と共に保存されたサンプルであるかに関わらず)は、例えばサンプルを当技術分野で公知の任意の蛍光色素にコンジュゲートした抗CD8抗体と接触させることによって分析することができる。蛍光色素の非限定的例としては、FITC、RD1、アロフィコシアニン(APC)、CF(商標)色素(Biotium社、ヘイワード、カリフォルニア州)、BODIPY(Life TechnologiesのInvitrogen(商標)社、カールスバッド、カリフォルニア州)、Alexa Fluor(登録商標)(Life TechnologiesのInvitrogen(商標)社、カールスバッド、カリフォルニア州)、DyLight蛍光標識(Thermo Scientific Pierce社製タンパク質生物学製品、ロックフォード、イリノイ州)、ATTO(ATTO-TEC GmbH社、ジーゲン、ドイツ)、Fluoプローブ(Interchim SA社、モントルコン、フランス)、およびAbberiorプローブ(Abberior GmbH社、ゲッティンゲン、ドイツ)が挙げられる。方法(例えばフローサイトメトリー)を使用して、自己反応性T細胞の表面上のCD8タンパク質に結合した抗CD8抗体にコンジュゲートした蛍光色素に由来する蛍光を検出することができる。蛍光の強度は、細胞表面上のCD8タンパク質密度の定量的測定を提供する。
【0050】
TNFR2活性化因子への曝露後の、自己反応性CD8+ T細胞集団の細胞表面CD8タンパク質密度の低下の検出は、対象が、TNFR2活性化因子を用いた自己免疫疾患の治療に応答しやすいことを示す。基準CD8+ T細胞と比較した、自己反応性CD8+T細胞上の細胞表面CD8タンパク質密度の低下は、自己反応性CD8+T細胞が、TNFR2活性化因子による治療の結果として生じるアポトーシスを受けることを示す。基準CD8+ T細胞は、健康な対象由来の非自己反応性CD8+T細胞であってよい。あるいは、基準CD8+ T細胞は、in vivoまたはin vitroでTNFR2活性化因子に曝露されていない自己反応性CD8+ T細胞であってよい。このように、上記のアッセイを用いて検出されるCD8細胞表面密度の低下は、対象が、TNFR2活性化因子によるin vivo療法(治療中に自己反応性CD8+T細胞死を引き起こすことが期待される)に応答しやすいことを示す。生存可能な自己反応性CD8+ T細胞の不存在は、これらの細胞によって引き起こされる細胞傷害の低下、さらに恐らく損傷した組織の再生を促進する可能性があり、これが対象の健康を改善し得る。
【0051】
Cペプチドアッセイ
本発明はまた、1型糖尿病を有する対象(例えばヒト)を1つ以上のTNFR2活性化因子による治療に応答しやすいと同定する方法も特徴とする。この方法は、対象(例えばヒト)由来のin vitro生物学的サンプル(例えば、血液、血液成分(例えば血清もしくは血漿)、または尿)を、サンプル中のCペプチドを検出することができるデバイスと接触させるステップを含む。約1.5pmol/L超(例えば約2.5pmol/L超)のサンプル中のCペプチドレベルの検出は、対象(例えばヒト)が治療に応答しやすいことを示す。約1.5pmol/L未満のサンプル中のCペプチドレベルの検出は、対象が治療に応答しにくいことを示す(例えば、対象をこのような治療法から除外してもよいし、TNFR2療法を細胞療法(例えば多能性細胞(例えばHox11+脾細胞))と組み合わせて投与してもよい)。約1.5pmol/L~約900pmol/Lの範囲(例えば、約500pmol/L、約200pmol/L、約100pmol/L、約50pmol/L、または約4.0pmol/L)の、サンプル中のCペプチドレベルの検出は、対象が治療に応答しやすいことを示す。本発明の方法によれば、対象は長期糖尿病患者であり得る。1.5pmol/L超のCペプチドレベルは、対象がTNFR2活性化因子による治療に応答しやすいことを示す。Cペプチドレベルは、空腹時対象由来のサンプル(空腹時Cペプチドレベル)、または混合食物耐性試験もしくはグルカゴン試験による刺激における対象由来のサンプル中で測定することができる。治療が自己反応性CD8+ T細胞の細胞死および/または内因性β膵島細胞の増殖もしくは再生を引き起こし、これにより治療前のレベルと比較して、インスリンレベルの増加および平均血漿グルコースレベルの低下をもたらす(例えば、正常血糖を確立する)場合、対象はTNFR2活性化因子による治療に応答するであろう。
【0052】
本発明の方法によれば、接触ステップは:(i) サンプルを表面上に固定化捕捉剤(例えばCペプチドに結合する抗体)を有するデバイスと接触させることにより、サンプル中のCペプチドを固定化捕捉剤に結合させ;(ii) 上記表面を結合検出剤と接触させることにより、Cペプチドを結合検出剤(例えばCペプチドに特異的に結合する抗体)に結合させ;さらに(iii) 結合検出剤を用いてサンプル中のCペプチドのレベルを検出することによって行うことができる。結合検出剤は、Cペプチドに特異的であり得る。結合検出剤をペルオキシダーゼ酵素にコンジュゲートすることが可能であり、このペルオキシダーゼ酵素を、デバイスの表面を過酸化水素溶液と接触させることによって検出することができる。過酸化水素溶液は、ペルオキシダーゼ基質をさらに含み得る。本発明の方法によれば、当技術分野で公知の任意のペルオキシダーゼ基質を使用することができる。一部の一般的なペルオキシダーゼ基質は、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)、3,3’,5,5’-テトラメチル-ベンジジン(TMB)、o-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)、10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン(ADHP)、ルミノール、p-ニトロフェニルリン酸ニナトリウム(PNPP)、o-ニトロフェニル-β-ガラクトピラノシダーゼ(ONPG)、QuantaBlu蛍光発生ペルオキシダーゼ基質(Thermo Scientific Pierce社製タンパク質生物学製品、ロックフォード、イリノイ州)、QuantaRed増強化学蛍光ペルオキシダーゼ基質(Thermo Scientific Pierce社製タンパク質生物学製品、ロックフォード、イリノイ州)、SuperSignal ELISA femto最高感度基質(Thermo Scientific Pierce社製タンパク質生物学製品、ロックフォード、イリノイ州)、およびSuperSignal ELISA pico化学発光基質(Thermo Scientific Pierce社製タンパク質生物学製品、ロックフォード、イリノイ州)である。ペルオキシダーゼ基質とペルオキシダーゼとの反応は、分光光度法で検出することができる。
【0053】
対象由来のサンプル中のCペプチドの検出は、当技術分野で公知の任意のアッセイを用いて行うことができる。例えば、超高感度Cペプチド酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(例えばMercodia AB(ウプサラ、スウェーデン)により製造されるELISA)は、サンプル中のCペプチドの定量的決定のための固相二部位酵素免疫アッセイを提供する。免疫アッセイは、2つのモノクローナル抗体がCペプチド分子上の別々の抗原決定基に向けられる直接サンドウィッチ技術に基づく。インキュベーション中、サンプル中のCペプチドは、マイクロ滴定ウェルに結合した抗Cペプチド抗体と反応する。洗浄後、抗Cペプチド抗体にコンジュゲートしたペルオキシダーゼ(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ)を加える。2回目のインキュベーションおよび単一の洗浄ステップの後、結合したコンジュゲートを、過酸化水素と3,3’,5,5’-テトラメチル-ベンジジン(TMB)との反応によって検出することができる。反応は酸の添加によって停止され、分光光度法で読み取られるエンドポイントを与える。あるいは、2回目のインキュベーション後、当技術分野で公知の任意の他のペルオキシダーゼ基質(例えば上記に挙げた基質)によって結合コンジュゲートを検出することができる。
【0054】
本発明の方法によれば、1型糖尿病を有する対象由来のサンプル中の実質的に検出不能なレベルのCペプチドは、特にCペプチドレベルが約1.5pmol/Lより低い場合、対象がβ膵島細胞を再生する能力を喪失したことを示し得る。実質的に検出不能なCペプチドレベルは、対象に、β膵島細胞を再生することができるHox11+脾細胞が不足していることも示し得る。
【0055】
TNFR2活性化因子による1型糖尿病治療の長期有効性は、対象の、β膵島細胞を再生する能力、および/または治療前の対象における高血糖症および低血糖症の発生率と比較して高血糖症および低血糖症の発生率を低下させる能力によって判断することができる(例えば、有効性は、対象が正常血糖状態にある期間の増加によって判断することができる)。治療は、対象に、本発明の医薬組成物(例えば1つ以上のTNFR2活性化因子を含む組成物、1つ以上の多能性細胞(例えばHox11+脾細胞)を含む組成物、またはそれらの組み合わせ)を投与するステップを含む。Cペプチドレベルは、治療された対象における本発明の医薬組成物による治療の有効性を評価するための代用指標(proxy)として使用することができる。本発明の医薬組成物で治療された対象におけるCペプチドレベルの変化(例えば増加)は、対象が治療に応答していることを示す。対象の治療の少なくとも1ヶ月(例えば少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年または少なくとも6年)後の、対象におけるCペプチドレベルの約1%(例えば、約2%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約100%、約200%、約500%、約1000%、約2000%、約5000%または約7000%)の増加は、対象の治療の成功と、対象の反復治療が不要であることを示し得る。対象の治療の少なくとも1ヶ月(例えば少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年または少なくとも6年)後の対象におけるCペプチドレベルの低下また変化の欠如は、対象が本発明の医薬組成物の反復投与を必要とすることを示し得る。Cペプチドレベルは、対象の治療の少なくとも1ヶ月(例えば少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年または少なくとも6年)後に検出することができる。Cペプチドレベルの変化は、基準Cペプチドレベルと比較して評価することができる。基準Cペプチドレベルは、本発明の医薬組成物による最初の(またはそれ以降の)治療の前に対象から採取されたサンプル中で検出されたCペプチドレベルであってよい。
【0056】
HbA1cアッセイ
本発明はまた、対象の治療前、治療中、または治療後に対象由来の血液サンプル中のHbA1cレベルを測定することにより、対象がTNFR2活性化因子による治療(単独で、または1つ以上の多能性細胞(例えばHox11+脾細胞)を含む組成物と組み合わせて)に応答しやすい状態にあるかまたは将来応答しやすいであろうかを判定する方法も特徴とする。対象の治療の前に測定されたHbA1cレベルを、基準HbA1cレベルとして使用することができる。対象から採取された血液サンプル中のHbA1cレベルのさらなる測定は、対象の治療の少なくとも1ヶ月(例えば少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年または少なくとも6年)後に行うことができる。本発明の方法は、治療後に測定されたHbA1cレベルを基準HbA1cレベルに対して比較するステップ、およびHbA1cレベルが基準HbA1cレベル以上である場合、対象を、本発明の医薬組成物による反復治療を必要としていると同定するステップをさらに含み得る。1つ以上のTNFR2活性化因子の投与後、HbA1cレベルを対象由来のサンプル中で測定してエンドポイントを決定し、治療の長期成功を評価することができる。基準HbA1cレベルと比較した、HbA1cレベルの少なくとも約0.1%(例えば0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.4%または0.5%)の低下は、治療の長期成功の可能性が高いことを示す。基準HbA1cレベルを超える、HbA1cレベルの少なくとも約0.1%(例えば0.2%、0.3%、0.4%または0.5%)の増加は、本発明の医薬組成物による1回以上の反復治療を対象に与えるべきであることを示し得る。
【0057】
血液サンプル中のHbA1cレベルは、当技術分野で公知の方法、例えば高性能液体クロマトグラフィー、免疫アッセイ、酵素アッセイ(直接酵素HbA1cアッセイ、Diazyme Laboratories社、ポウェイ、カリフォルニア州)、キャピラリー電気泳動(Sebia社、ノークロス、ジョージア州)、またはボロン酸アフィニティークロマトグラフィー(Trinity Biotech Plc社、ブレイ、アイルランド)によって測定することができる。対象由来のサンプル中のHbA1の測定方法は、例えばLittleら, Clin. Chem. 54:1277-1282, 2008年(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。HbA1cレベルを記載するために使用した標準測定基準は、例えばGoodall, I., Clin. Biochem. Rev. 26:5-20, 2005年(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0058】
本発明の医薬組成物
本発明はまた、自己免疫疾患(例えば1型糖尿病)を有する対象(例えばヒト)の治療において、また特に、本発明の1つ以上の診断方法により治療に応答しやすい(例えば、CD8+ T細胞死を経験しやすいおよび/または自己免疫疾患により損傷した組織(例えば、1型糖尿病を有する対象におけるβ膵島細胞)の修復および/または再生を経験しやすい)と同定された対象の治療において使用するための1つ以上のTNFR2活性化因子を含む医薬組成物も特徴とする。
【0059】
1つ以上のTNFR2活性化因子を含む医薬組成物は、治療に応答しやすい対象における自己免疫疾患(例えば1型糖尿病)の治療において使用することができる。基準T細胞の表面上のCD8タンパク質密度と比較した、自己免疫疾患を有する対象由来のサンプル中の自己反応性CD8+ T細胞の表面上のCD8タンパク質密度の低下は、対象がTNFR2活性化因子による治療に応答しやすいことを示す。基準T細胞は、治療対象の対象から得ることもできるし、異なる対象から得ることもできる。基準T細胞は、健康な対象由来のT細胞であってもよいし、1つ以上のTNFR2活性化因子により治療されていない自己免疫疾患を有する対象由来のT細胞であってもよい。
【0060】
本発明の1つ以上の診断方法により治療に応答しやすいと同定された対象における、本発明の医薬組成物を用いて治療し得る自己免疫疾患の例としては、I型糖尿病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アディソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、円板状ループス、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、乾癬性関節炎、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下、特発性肺線維症、特発性血症板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、若年性関節炎、扁平苔癬、ループス、メニエール病、混合結合組織疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、デビック病、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫症ならびに自己免疫神経障害が挙げられる。特に、本発明の診断方法により治療法に応答しやすいと同定される、1型糖尿病、セリアックスプルー皮膚炎、クローン病、グレーブス病、甲状腺機能低下、ループス、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、または潰瘍性大腸炎を有する対象を治療することができる。自己免疫神経障害は、ニューロン(例えば運動ニューロン)に対する損傷を引き起こす自己免疫媒介性障害であり得る。特定の自己免疫神経障害としては、自己免疫性アルツハイマー病、自己免疫性パーキンソン病、および自己免疫媒介性筋萎縮性側索硬化症(ALS)が挙げられる。
【0061】
1型糖尿病を有する対象由来のサンプル(例えば、血液、血液成分(例えば血清もしくは血漿)または尿)中の実質的に検出不能なCペプチドレベルは、対象が1つ以上のTNFR2活性化因子を含む医薬組成物による治療に応答しにくいことを示す(例えば、対象をこのような治療法から除外してもよいし、TNFR2療法を細胞療法(例えば多能性細胞(例えばHox11+細胞))と組み合わせて投与してもよい)。1型糖尿病を有する対象由来のサンプル中の検出可能なCペプチドレベル(例えば約1.5pmol/L超のレベル)は、対象が1つ以上のTNFR2活性化因子を含む医薬組成物による治療に応答しやすいことを示す。対象は、長期糖尿病患者であり得る。本発明の組成物は、1型糖尿病を有し、且つ本発明のいずれか1つ以上の方法によりTNFR2活性化因子による治療に応答しやすいと同定される対象を治療するために使用することができる。
【0062】
さらに、1型糖尿病を有する対象由来の尿サンプル中の、約4pmol/mmol未満の、クレアチニンに対するCペプチドの比率は、対象が、1つ以上のTNFR2活性化因子を含む医薬組成物による治療に応答しにくいことも示し得る(例えば、対象をこのような治療法から除外してもよいし、TNFR2療法を細胞療法(例えば多能性細胞(例えばHox11+細胞))と組み合わせて投与してもよい)。1型糖尿病を有する対象由来の尿サンプル中の約4pmol/mmol超の、クレアチニンに対するCペプチドの比率は、対象が1つ以上のTNFR2活性化因子による治療に応答しやすいことを示し得る。1型糖尿病を有する対象由来の尿サンプル中の約4pmol/mmol~約11pmol/mmolの、クレアチニンに対するCペプチドの比率は、対象が1つ以上のTNFR2活性化因子による治療に応答しやすいことを示し得る。尿サンプル中のクレアチニンに対するCペプチドの比率は、Besserら(Diabetes Care 34:607-609, 2011年)(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるとおりに決定することができる。TNFR2活性化因子(例えばBCG)による治療に応答しやすいと同定されるこれらの対象を、その後TNFR2活性化因子(例えばBCG)により1回以上治療することができる。
【0063】
本発明の医薬組成物は、1つ以上のTNFR2活性化因子、例えばバチルス・カルメット-ゲラン(BCG)、完全フロイントアジュバント、TNF-α、TNF-α受容体IIアゴニスト(TNFR2アゴニストの非限定的例(例えば抗体)は、米国特許第7,582,313号、米国特許第8,017,392号、および米国特許第8,173,129号(これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている)、TNF-αムテイン(TNF-αムテインの非限定的例は、米国特許第5,597,899号(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている)、インターロイキン-1、インターロイキン-2、組織プラスミノーゲン因子、リポ多糖(LPS)、リンホトキシンおよびカケクチンなどを含み得る。本発明の医薬組成物の一部は、投与されると対象においてTNF-αの発現を誘導することができる。本発明の他の組成物は、投与されると対象の自己反応性免疫細胞(例えば自己反応性CD8+ T細胞)中でTNF-α受容体II(アゴニストとして)を特異的に活性化させ、および/またはNF-κB経路の活性化を誘導することができる。好ましくは、本発明の組成物の投与はまた、対象において1つ以上の自己反応性免疫細胞の死滅も引き起こす。本発明の組成物はまた、対象において調節T細胞(例えば、調節CD4+ T細胞)の増殖も引き起こし得る。本発明の組成物はまた、1型糖尿病を有する対象において、高血糖症に由来する合併症(例えば腎障害、神経障害、心血管損傷、網膜への損傷、足への損傷、脚への損傷、心臓への損傷、またはケトアシドーシス)を低下させるかまたは治療することもできる。
【0064】
本発明のTNFR2活性化因子含有医薬組成物は、1回目の治療後に、対象由来のサンプル(例えば、血液、血液成分(例えば血清もしくは血漿)、または尿)中のHbA1cレベルが、以前の治療の前の対象由来の基準HbA1cレベルと比較して増加するかまたは変化しない場合、対象(例えばヒト)における1型糖尿病を2回目またはそれ以降に治療するために使用することができる。治療された対象におけるHbA1cレベルの低下は、対象がTNFR2活性化因子治療に応答することを示し得る(例えば、対象は2回目またはそれ以降の治療を必要としなくてよい)。対象へのTNFR2活性化因子の投与後約4年以内に(例えば約3年以内に)、少なくとも約0.1%(例えば、少なくとも約0.15%、少なくとも約0.2%、少なくとも約0.25%、少なくとも約0.3%、少なくとも約0.4%、少なくとも約0.5%、少なくとも約0.6%、少なくとも約0.7%、少なくとも約0.8%、少なくとも約0.9%、少なくとも約1.0%)低下する、対象におけるHbA1cレベルは、対象が治療に応答することを示す。
【0065】
細胞療法
本発明の方法による、1型糖尿病を有し、実質的に検出不能なCペプチドレベル(例えば、約1.5pmol/L未満のCペプチドレベル)を有する対象の同定は、対象が、β膵島細胞またはβ膵島細胞を再生することができる細胞(例えば、多能性細胞(例えばHox11+脾細胞))による治療から利益を得る可能性があるか、またはそれを必要とすることを示し得る。Hox11+脾細胞は、国際公開番号第WO 2005/042727号(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるとおり、対象においてin vivoでβ膵島細胞を再生することができる細胞の内因性源である。従って、1型糖尿病を有する対象は、1つ以上のTNFR2活性化因子による治療が、自己反応性T細胞を死滅させ、さらに対象が内因性β膵島細胞を(例えば、内因性β膵島細胞の増殖を通じて、または多能性細胞(例えばHox11+脾細胞)のβ膵島細胞への分化により)再生することを可能とする場合、細胞治療から(例えば、4年以内(例えば3年以内))の長期利益を有し得る。対象においてβ膵島細胞に分化し得る他の種類の多能性細胞(例えば、米国特許第7,432,104号および第8,008,075号(これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている多能性細胞など)を、対象に投与することができる。1型糖尿病を有する対象由来のサンプル中の実質的に検出不能なCペプチドレベル(例えば約1.5pmol/L未満)は、対象が、例えば、Hox11+脾細胞コンパートメントから、β膵島細胞を再生する能力を喪失したことを示し得る。このようにして、対象は、β膵島細胞の外因性源の投与から利益を得ることができる。
【0066】
本発明により多能性細胞を必要とする対象に投与することができる多能性細胞の非限定的例としては、例えば、WO 2002/059278、WO 2003/026584、WO 2005/042727、WO 2006/074308、WO 2012/152717、U.S. 7,432,104、およびU.S. 8,008,075(これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている多能性細胞が挙げられる。1つ以上の多能性細胞を含有する組成物(例えば、Hox11+脾細胞)は、TNFR2活性化因子含有組成物の投与前、投与後、または同時に投与してもよいし、2つの組成物を単一剤形での投与用に組み合わせてもよい。
【0067】
本発明の医薬組成物の製剤
1つ以上のTNFR2活性化因子を含む本発明の医薬組成物は、任意の経路による投与、例えば皮内、筋肉内、非経口、静脈内、動脈内、頭蓋内、皮下、眼窩内、脳室内、脊髄内、腹腔内、または鼻腔内投与用に製剤化することができる。本発明の組成物は、皮内投与用に製剤化することができる。
【0068】
本発明の医薬組成物は、製薬上許容される担体または賦形剤を含み得る。このような担体または賦形剤は、例えば、水、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)、酢酸塩緩衝生理食塩水(ABS)、リンガー溶液、デキストロース、グリセロール、エタノール等およびこれらの組み合わせから選択することができる。さらに、所望の場合、対象に投与するための組成物は、少量の補助物質(例えば湿潤剤もしくは乳化剤)、または本組成物の有効性を高めるpH緩衝剤を含み得る。
【0069】
同様に、TNFR2活性化因子は、複数の様々な回数および/または頻度で投与することができる。例えば、TNFR2活性化因子の1回以上(例えば、1回、2回、3回、4回、もしくは5回またはそれ以上)の用量を、毎日、毎週、毎月、または毎年(例えば、1日2回、2週間に1回、年4回、年2回、または年3回)投与することができる。
【0070】
本発明のTNFR2活性化因子(例えばBCG)含有組成物は、1型糖尿病を有し、且つ本明細書中に記載される診断方法によりTNFR2活性化因子による治療に応答しやすいと同定される対象に、1回以上(例えば2回以上(例えば2回))投与することができる。TNFR2活性化因子含有組成物は、投与間に、例えば約1週間(例えば、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間もしくは約8週間またはそれ以上)間隔をあけて2回以上投与することができる。一部の実施形態において、TNFR2活性化因子組成物の投与は、少なくとも2週間離れた(例えば4週間離れた)間隔をあけることができる。
【0071】
TNFR2活性化因子は、TNF-α誘導物質(例えばBCG)であり得る。本医薬組成物は、2x106 CFU超/BCG用量(例えば、2.3x106 CFU超/BCG用量)を含み得る。本組成物は、4x106CFU未満/BCG用量を含み得る。本組成物は、約2x106~約2.5x106、約2.5x106~約3x106 CFU/BCG用量、約3x106~約3.5x106 CFU/BCG用量、または約3.5x106~約4x106 CFU/BCG用量を含み得る。本組成物は、約2x106~約4x106 CFU/BCG用量を含み得る。本組成物は、約2.3x106~約4x106 CFU/BCG用量を含み得る。本組成物は、約2.5x106~約4x106 CFU/BCG用量を含み得る。一実施形態において、BCG組成物は凍結乾燥され得る。あるいは、本組成物は、BCGの生理食塩水溶液を含み得る。BCGの生理食塩水溶液は、凍結乾燥BCGを生理食塩水溶液中で再構成することによって作製することができる。溶液は、1用量当たり約0.2cc未満の体積を有し得る(例えば、1用量当たり約0.1cc)。
【0072】
1つ以上の多能性細胞を含む本発明の組成物は、対象がTNFR2活性化因子による治療に応答しにくいと同定された後に投与することができる。多能性細胞を必要とする対象に投与される多能性細胞を含む組成物は、任意の経路による投与、例えば、皮内、筋肉内、非経口、静脈内、動脈内、頭蓋内、皮下、眼窩内、脳室内、脊髄内、腹腔内、または鼻腔内投与用に製剤化することができる。好ましくは、1つ以上の多能性細胞を含む組成物は、例えば、注射(例えば静脈注射もしくは筋肉注射)または外科的移植を通じて非経口的に投与される。多能性細胞を含む組成物は、それを必要とする対象に1回以上(例えば、1回、2回、3回、4回、もしくは5回またはそれ以上)投与することができる。1回以上の投与は、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、2ヶ月、6ヶ月、1年、1.5年、2年もしくは3年またはそれ以上間隔をあけることができる。TNFR2活性化因子の投与は、多能性細胞を含む組成物の投与の1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、2ヶ月、6ヶ月、1年、1.5年、2年もしくは3年またはそれ以上後に行うことができる。あるいは、TNFR2活性化因子を、上記の任意の経路(例えば、経路は同じであっても異なっていてもよい)による多能性細胞を含む組成物の投与と同時にもしくはその後に投与してもよいし、組成物を単一剤形での投与のために組み合わせてもよい。
【0073】
本発明のキット
CD8表面タンパク質アッセイ用キット
本発明は、対象由来のサンプル用の容器、保存剤(例えば、ダサチニブ(例えばサンプル中少なくとも約10nM(例えば少なくとも約50nM、少なくとも約100nM、少なくとも約200nM、少なくとも約500nM、または少なくとも約1μM)のダサチニブの最終溶液;例えば少なくとも約10mMのダサチニブを有する1mL溶液を生成するのに十分な量のダサチニブ)、または少なくとも約1.0μg~約25mgの固体形態のダサチニブを有する容器)、サンプルを採取しおよび/またはサンプルを容器に入れるための機器、ならびにサンプルを採取および保存するための使用説明書を含むキットを提供する。本キットは、蛍光色素にコンジュゲートしたCD8抗体および/またはTNFR2活性化因子(例えば、バチルス・カルメット-ゲラン(BCG)、完全フロイントアジュバント、TNF-α、TNF-α受容体IIアゴニスト、TNF-αムテイン、インターロイキン-1、インターロイキン-2、組織プラスミノーゲン因子、リポ多糖(LPS)、リンホトキシン、またはカケクチン)をさらに含み得る。上記のキット中の使用説明書は、実務者(例えば、医師、看護師、または実験助手)が、対象がTNFR2活性化因子による治療に応答しやすいか否かを判定するために対象由来のサンプルを使用し得る方法についても説明し得る。本キットは、サンプルの採取および上記の容器への移動のための器具(例えば、注射針またはカテーテル)、細胞を規定の温度(例えば、約4℃~約27℃)に保つための成分、例えば冷却剤(例えば、アイスパック、ドライアイス、冷却ポーチ、または冷却板)をさらに含み得る。本キットは、必要であれば、細胞サンプルを輸送するためのクーラーボックスまたは絶縁担体も含み得る。
【0074】
Cペプチド検出用キット
本発明はまた、捕捉剤(例えば、Cペプチドに結合する抗体)が表面に固定されたデバイス、ペルオキシダーゼ酵素にコンジュゲートした結合検出剤(例えば、Cペプチドに選択的に結合する抗体)、ペルオキシダーゼ基質、実務者(例えば、医師、看護師、または実験助手)が、対象がTNFR2活性化因子による治療に応答しやすいか否かを判定するための対象由来のサンプルの分析のためにキットの内容物を使用し得る方法を説明する使用説明書を含むキットも提供する。
【0075】
HbA1cアッセイ用キット
本発明はまた、対象由来のサンプルを保存するための容器、およびサンプル中のHbA1cレベルを決定し、このHbA1cレベルを用いて対象がTNFR2活性化因子含有組成物の投与を必要とするか否かを判定するための使用説明書を含むキットも提供する。
【0076】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図するものである。これらの実施例は、決して本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例0077】
実施例1. 1型糖尿病を有する対象についてのTNFR2活性化因子による治療に応答しやすいことの同定
本発明の医薬組成物(例えばTNFR2活性化因子)による治療の前に、対象(例えばヒト)を試験して対象が治療に応答しやすいかどうかを判定してもよい。試験は、対象から採取されたサンプル(例えば、血液、血液成分、または尿)を用いて行ってもよい。例えば、血清サンプルを調製するため、血液を静脈穿刺によって採取して凝固させてもよく、さらに遠心分離により血清を分離してもよい。血漿サンプルを調製するため、血液を、静脈穿刺によって抗凝血剤としてのヘパリンまたはEDTAを含むチューブに採取してもよく;その後血漿画分をサンプルから分離してもよい。尿サンプルを調製するため、24時間尿サンプル(保存剤なし)を採取してもよい。細胞デブリを、試験の前に、濾過または遠心分離のいずれかによってサンプルから除去してもよい。
【0078】
次いで、対象由来の調製されたサンプルを、例えばMercodia超高感度CペプチドELISAキット(Mercodia AB社製、ウプサラ、スウェーデン)を用いてアッセイし、対象由来のサンプル中のCペプチドレベルを与えてもよい。対象は、測定されたCペプチドレベルが約1.5pmol/Lより低い場合、TNFR2活性化因子による治療に応答しにくいと同定される。実質的に検出不能なCペプチドレベルを有すると同定された対象は、TNFR2活性化因子含有組成物による治療から除外することができる。特に、このような対象は、残っている内因性β膵島細胞が不十分な数であるか、または不十分な量の、β膵島細胞にまだ分化していない多能性細胞(例えばHox11+脾細胞)を有しており、このためTNFR2活性化因子による治療後に正常血糖の回復または改善を示しにくいと判定することができる。対象が実質的に検出不能なCペプチドレベルを有するとの決定はまた、対象がβ膵島細胞またはβ膵島細胞に分化できる多能性細胞(例えばHox11+脾細胞)の移植から利益を得る可能性も示し得る。対象は、測定されたCペプチドレベルが約1.5pmol/L超である場合、TNFR2活性化因子による治療に応答しやすいと判定され得る;この対象は、このような治療法がβ膵島細胞の再生および/または正常血糖の回復もしくは改善をもたらすことを期待して、本発明のTNFR2活性化因子組成物によって治療することができる。
【0079】
試験は、データのありうる単一測定変動性を補正するため、1回以上繰り返してもよい。
【0080】
実施例2. 本発明の医薬組成物によるヒトにおける1型糖尿病の治療
TNFR2活性化因子(例えばBCG)による治療の前に、サンプル(例えば血液)を、実施例1で治療に応答しやすいと同定された対象から採取することができる。HbA1cレベルについてサンプルを分析し、研究のためのベースラインHbA1cレベルを決定することができる。
【0081】
生理食塩水中で再構成したBCGを含む医薬組成物を、4週間空けた2回の皮内注射として、1.0~2.3x106 CFU/投与(体積=0.1cc/投与)を含む用量で対象に投与することができる。治療後、対象から得られたサンプルを、以下にさらに記載される機能的アッセイ(自己反応性CD8+ T細胞アッセイおよび調節CD4+ T細胞アッセイ)を用いて試験することによって、対象を経時的にモニターすることができる。
【0082】
上記の治療の後、TNFR2活性化因子(例えばBCG)の投与の1年(例えば2年、3年、4年、5年または6年)後に、対象由来のサンプルを、エンドポイントを決定して治療の長期成功を確認するため、HbA1cレベルについて評価することができる。ベースラインHbA1cレベルと比較した、HbA1cレベルの少なくとも約0.1%(例えば、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.4%または0.5%)の低下は、治療の長期成功を示す。
【0083】
対象を、HbA1cレベルの変化についてモニターし続けることができる。ベースラインHbA1cレベルを超えるHbA1cレベルの少なくとも約0.1%(例えば、0.2%、0.3%、0.4%または0.5%)の増加は、対象に本発明の医薬組成物を再度投与しなければならないことを示し得る。
【0084】
免疫モニタリング
1. T細胞アッセイ
CD4+およびCD8+ T細胞は、新鮮なヒト血液から、静脈穿刺の1.5時間以内に、Dynal社製CD4陽性単離キットおよびDynal社製CD8陽性単離キット(Invitrogen社、カールスバッド、カリフォルニア州)を用いて単離することができる。この方法は、磁性粒子も抗体による陽性選択も用いずに細胞が得られる点において独特である。
【0085】
2. 1型糖尿病における自己反応性CD8 + T細胞の検出
以前に記載されたとおり(Verginisら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 105:3479-3484, 2008年)、高度に精製された、高収率の生存CD8+ T細胞を、テトラマー染色に利用することができる。テトラマーは、外部結合溝中にロードされたペプチドを有する特異的HLAクラス1タンパク質の結合領域から構成される診断試薬である。次いで、当該テトラマーは蛍光発光性にされ、提示されたペプチドフラグメントに対して特異的反応性を有するT細胞に結合し得る診断試薬として機能する。インスリンに対する自己反応性T細胞の検出については、HLVEALYLVのフラグメントを有する、HLA*0210インスリンβ10-18に対するテトラマー(Beckman Coulter社、#T02001)を使用することができる。陰性対照テトラマーについては、以下のテトラマー試薬を使用することができる:KIFGSLAFLに対する配列を有するHLA *0201 Her-2/neu(Beckman Coulter社、#T02001)、乳癌ペプチド、非特異的ペプチドフラグメントを有さないHLA *0201 null(Beckman Coulter社、#T01010)および/またはNLVPMVATVの配列を有する、CMVウイルスHLA-A *0201 CMGPP65に対するテトラマー(Beckman Coulter社、#T01009)。
【0086】
テトラマー試薬染色は、26℃で12時間、その後37℃で6時間の培養後および/または26℃で1時間、その後37℃で12時間の静置後のいずれに行ってもよい。次いで、細胞を、Sytox-グリーン(MBL International Co.社、ウーバン、マサチューセッツ州)および/またはCD8抗体(BD Biosciences社、サンノゼ、カリフォルニア州)で染色することができる。全細胞を、暗所で4℃で30分間染色し、その後2%加熱不活性化ウシ血清を含むハンクスバッファー中で2回洗浄することができる。平均して100,000個の高純度なCD8+ T細胞を分析して明らかなデータポイントを確保し、希少な自己反応性T細胞の検出を可能とすることができる。全細胞は、固定アーチファクトを防止し、生細胞に対する死細胞の定量化を可能とするため、新鮮な細胞であってよい。細胞生存能は、死細胞を蛍光標識する2種類の染色剤、Sytox(MBL International Co.社、ウーバン、マサチューセッツ州))またはヨウ化プロピジウム(PI)のいずれかによって定量することができる。
【0087】
3. 1型糖尿病におけるT reg CD4 + 細胞の検出
TREG細胞の検出のため、2つの異なる方法を使用することができる。TREG細胞は、CD4、CD25bright、およびFoxp3染色を用いて、またはCD4、CD25bright、およびCD127low抗体染色により検出することができる。手短に言えば、単離したCD4陽性細胞を、CD4-PE-Cy5(クローンRPA-T4)抗体およびCD25-PE(クローンBC96)抗体と共に室温で20分間インキュベートすることができる。洗浄後、細胞を、Foxp3 Fix/Perm溶液(Biolegend社)を用いて室温で20分間かけて固定することができる。細胞を洗浄し、Biolegend社のFoxp3 Permバッファーを用いて室温で15分間かけて透過処理することができる。次いで、細胞を、Foxp3 Alexa Fluor477抗体(クローン259D)で30分間かけて染色することができる。フローサイトメトリー分析の前に、各サンプルについてアイソタイプコントロールを行うことができる。あるいは、T調節細胞の検出のため、CD4抗体(クローンRPA-T4、BD Biosciences社、サンノゼ、カリフォルニア州)および抗ヒトCD127抗体(クローンhIL-7R-M21、BD Biosciences社)による染色も行うことができる。TREG細胞を検出するための他の方法は、米国特許出願第61/763,217号(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0088】
実施例3. EBV感染を有する対象由来のサンプル中のCD8 + T細胞の検出
材料及び方法
対象
マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)にて、1型糖尿病を有する患者を集めた。糖尿病患者を日常的にスクリーニングして疾患の経過を特徴付け、干渉の可能性がある医学的状態を有する対象を除外した。スクリーニングの間、3人の患者が、長期1型糖尿病を有し、且つEBVを最近発症したと同定された。この研究においては、EBV感染を伴わない糖尿病患者(N=66)を基準集団として用いた。全ての患者および対照の血液は、EDTAを含むBD Vacutainer(商標)チューブ(BD社、フランクリン・レイク、ニュージャージー州)中に採血された。
【0089】
倫理声明
本研究は、マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)の施設内治験審査委員会(Institutional Review Board)によって承認された(IRBプロトコルNo. 2001P-001379)。全ての血液ドナーから書面による同意を得た。
【0090】
エピトープ特異的CD8 + T細胞の検出
拘束された抗原特異性を有するT細胞の特定亜集団の検出のため、小ペプチドフラグメントがロードされた市販のHLAクラスI試薬を使用した。これらの市販の試薬は、一般的にはテトラマー(MBL International社、デスプレーンズ、イリノイ州、以前はBeckman Coulter社、フラートン、カリフォルニア州)またはデキストラマー(Immudex社、フェアファックス、バージニア州)と呼ばれる。2つのT細胞検出法は、検出試薬の骨格構造において異なるが、自己反応性T細胞に対する結合特異性は異ならない。テトラマーまたはデキストラマー試薬は、購入されて、フローサイトメーターによる、抗原特異的T細胞に結合した試薬の検出のために蛍光標識される。
【0091】
本書に含まれる研究について、2種類の抗原特異的T細胞が検出された。すなわち、EBV-特異的T細胞(ペプチドGLCTLVAMLがロードされたHLAクラスI)またはインスリンB自己反応性T細胞(インスリンB鎖HLVEALYLVがロードされたHLAクラスI)。T細胞のバックグラウンド蛍光のため、合致したHLAクラスI構造に、無関係なペプチドをロードした(Beckman Coulter社、Immudex社)。
【0092】
単離CD8 + T細胞法
新鮮な血液からCD8+T細胞を直接単離するため、抗CD8抗体でコーティングした常磁性ビーズをベースとした「Detach-a-bead」CD8陽性単離キットを使用した(Life Technologies社、カールスバッド、カリフォルニア州)(Burgerら, PLoS One, 6:e22430, 2011年(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)参照)。ビーズを、タンブラー上の連続撹拌下、室温で1時間付着させた。次いで、ビーズ/細胞複合体を磁石を用いて固定化し、任意の非結合(非CD8)細胞を、2%FBS(ウシ胎仔血清)を含むHBSS(カルシウムおよびマグネシウムを含まないハンクス液(Hank's Balanced Salt Solution)、Invitrogen社、グランドアイランド、ニューヨーク州)による反復洗浄によって除去した。その後、ビーズを、単離キット中に供給されるDetach-A-Bead試薬を用いて残りのCD8+細胞から分離した。この試薬は、ビーズ上にコーティングされたCD8抗体の抗原認識部位に対するポリクローナル抗体である。この試薬は、CD8抗体結合部位に対する競合によって抗体/ビーズ複合体を細胞から分離し、本質的に処女細胞としておく。
【0093】
次いで、単離CD8+T細胞を、PE(フィコエリスリン)標識したテトラマーまたはデキストラマーで標識し(暗所、RT(室温)で20分間)、その後APC-抗CD8抗体で標識し(暗所、室温(RT)にて10分間;クローンSK1, BD Biosciences社、サンノゼ、カリフォルニア州)、単離細胞プレップの純度を決定した。次いで、フローサイトメトリーのために、サンプルをHBSS 0.1%ホルムアルデヒドバッファーで固定し、HBSSで洗浄し、HBSS/0.05%ホルムアルデヒド中で再懸濁した。
【0094】
全血法
血液サンプルを、最初に2%FBSを含む50倍体積のHBSSで洗浄した。次いで、これらをテトラマーまたはデキストラマーで標識し(暗所で室温(RT)にて20分間)、その後APC-抗CD8抗体で標識して(暗所で室温(RT)にて10分間)、CD8+ T細胞上でゲーティングすることを可能とした。次いで、フローサイトメトリーのため、サンプルを同時に溶解してNH4Cl/ホルムアルデヒドバッファーで固定し、HBSSで洗浄し、HBSS/ホルムアルデヒドに再懸濁した。
【0095】
フローサイトメトリー
FACSCaliburフローサイトメーター(BD Biosciences社、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて細胞を分析し、リストモードでデータを収集した。データ分析は、Cell Questソフトウェア(BD Biosciences社)を用いて行った。全ての細胞を取り込むため、フローゲートを「オープン」に設定した。オープンゲートはあらゆるサイズの細胞を取り込んだが、細胞デブリ、赤血球、断片化した細胞、およびアポトーシス小体は排除した。PE蛍光およびAPC蛍光を、FL2およびFL7中でそれぞれ検出した。パーセントCD8+ T細胞は、CD8陽性事象の数と、リンパ球ゲート中の事象の総数との比率として定義された。
【0096】
ELISA
Cペプチドを、EBV感染患者の血液血清中のElisaによって決定した。超高感度CペプチドElisaは、Mercodia社(ウプサラ、スウェーデン)から購入した。このキットを、製造者の使用説明書に従って使用した。VCA IgM、早期抗原D、およびEBNAの血清レベルは、マサチューセッツ総合病院臨床検査サービス(Massachusetts General Hospital Clinical Laboratory Services)によって決定された。
【0097】
統計値
統計的有意性は、0.05の信頼レベルの独立片側スチューデントt検定(図3Aおよび2B)または片側コルモゴロフ-スミルノフ検定(図2)を用いて決定した。
【0098】
結果
臨床プロファイル
1型糖尿病患者の日常的な受診の過程で、臨床的には単核球症または「モノ」としても知られるEBV感染を最近発症した3人の患者を同定した(表1参照)。これらの患者を、感染の提示後少なくとも15週間注意深く経過観察した。EBV感染の最近の発症は、EBV感染の臨床症状中および臨床症状後の両方の、自己免疫T細胞およびEBV-特異的T細胞の罹患率および特性を研究する機会を提供する。EBV感染の最近の発症はまた、EBV感染が膵臓によるインスリン産生の一過性増加を引き起こした(共分泌されたCペプチドとして測定された)という、BCG治療の臨床試験における過去の観察の再現性を実証する機会も提供する(Faustmanら, PLoS One, 7:e41756, 2012年(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)参照)。
【0099】
【表1】
【0100】
EBV感染は、最初に、標準的な血清学的方法および症状により臨床的に診断された。これらの対象の臨床的特徴は表1にまとめられる。全ての対象は、6年、19年、および30年の期間の確立された1型糖尿病および上昇したHbA1cを有していた。対象のうちの2人(対象1および2)は、1型糖尿病の膵島特異的マーカーであるグルタミン酸デカルボキシラーゼGAD65自己抗体について陽性だった。
【0101】
EBV感染の経時変化
EBV感染の症状の提示および臨床的診断の後、感染の経時変化の詳細を決定し、感染開始時点を推定するため、ここで実施された連続血液研究と比較して、さらに詳細なEBV抗体血清学を行った(表2)。
【0102】
【表2】
【0103】
EBVウイルス粒子の異なる部分に対するEBV抗体のサブクラスは、感染が検出された後、異なる時点でピークに達する。VCA IgM、早期抗原D、およびEBNAの組み合わせを使用した。これらのマーカーは、それぞれEBV感染後、0~6週間、4~8週間、および6~8週間後にピークに達する(表2)。この研究において報告された全ての後続データ、とりわけ免疫学的事象の時系列をプロットし、感染日「0」に外挿した。対象1について、本研究への提示時は、感染後2週目であると推定された。対象2について、提示時は、感染後4週目であると推定された。対象3について、提示時は、感染後2週目であると推定された。
【0104】
EBV-特異的CD8 + T細胞の検出
EBV感染の診断の典型的な臨床的方法は抗体検査を伴うが、研究の設定において、新たに創出されたEBV-特異的T細胞の直接モニタリングによって感染を確認することが可能である。EBV-特異的テトラマー(すなわち合成ペプチド配列GLCTLVAMLをロードしたHLAクラスIタンパク質)を使用した。このようにして、フローサイトメトリーを用いてEBV-特異的CD8+ T細胞を検出した(図1Aおよび1B)。対象1においては、これらのEBV-特異的T細胞の検出のために対象2および3に対してわずかに異なる方法を用いたが(溶解した血液中のCD8+ T細胞の直接観察に対し、単離CD8+ T細胞)、全ての対象は、EBV特異的T細胞が蛍光のバックグラウンドレベルを超えて早期に上昇していた(図1B)。
【0105】
EBV感染した対象におけるCペプチドの時間的経過
最近15年間にわたる研究は、BCGまたはEBVのいずれかによるTNFの全身性増加またはTNFの誘導が、Cペプチドの回復と共に膵臓の再生をもたらすことを示した(Kodamaら, Science, 302:1223-1227, 2003年;Faustmanら, PLoS One, 7:e41756, 2012年;およびFaustman, J. Clin. Immunol. 13:1-7, 1993年(参照により本明細書に組み込まれる)を参照)。Cペプチドはインスリンと共分泌されるタンパク質であり、体外から投与されたインスリンの存在下における膵臓からのインスリン分泌を測定するための高感度な方法である。
【0106】
EBV感染がインスリン分泌能に与える影響を決定するため、連続血清Cペプチドレベルを、EBVを有する対象が研究病院を受診した後、少なくとも15週間モニターした。同時に研究した、EBV感染していない長期糖尿病患者の基準集団を、同様に15週間モニターした。基準対象の空腹時朝のCペプチドのモニタリングは、対象およびアッセイの変動性を示した。
【0107】
EBV感染した対象1および2におけるCペプチドは、基準集団におけるCペプチドを上回る、p=0.04およびp=0.0013の統計的に有意な増加をそれぞれ示した。対象3は、膵臓Cペプチドの有意な増加を示さなかった(図2)。
【0108】
1型糖尿病患者においてEBVがインスリンB自己反応性T細胞に与える影響
前のデータは、BCG(または非cGMP対応完全フロイントアジュバント(CFA))によるNODマウスまたは糖尿病ヒトの治療が、死滅した自己反応性T細胞の一過性増加をもたらすことを示す。NODマウスにおいて、膵臓に存在する自己反応性T細胞は、膵臓中のインスリン分泌膵島の上部で、TNF、BCGまたはCFAにより直接アポトーシスを受けることが観察される(Kuhtreiberら, J. Mol. Endocrinol. 31:373-399, 2003年、この文献は参照により本明細書に組み込まれる)。ヒトにおいて、死滅した自己反応性T細胞を循環に迅速に放出させることにより、TNFが自己反応性T細胞に与える影響をモニターすることができる(Faustmanら, PLoS One, 7:e41756, 2012年(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)を参照)。増加したTNFまたはTNFR2アゴニスト抗体は、培地中でマウスおよびヒトの糖尿病自己反応性T細胞のアポトーシスを引き起こすことが知られている(Banら, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 105:13644-13649, 2008年(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)を参照)。
【0109】
EBV感染が、自己反応性T細胞を同様に死滅させまたは傷害するかどうかを決定するため、3人の最近EBV感染した対象の末梢血中のインスリンB自己反応性CD8+ T細胞を検出し、感染していない長期糖尿病対象と比較した。長期糖尿病患者におけるインスリンB自己反応性T細胞のトラッキング(追跡)は実行可能である。高感度モニタリング法によれば、無作為に集めた長期1型対象の約41%(51人中21人)は、検出可能なインスリンB自己反応性T細胞を有していた(0.28%~0.65%、図3A)。ネガティブデキストラマー試薬で染色した同じ1型糖尿病CD8+ T細胞は、0.19%~0.27%のバックグラウンドシグナル範囲を示した(図3A)。
【0110】
TNF誘導感染に曝露された長期糖尿病患者について前に示されたとおり、EBV感染した対象は、感染後に末梢血中に過剰量のインスリンB自己反応性T細胞を示した。EBV感染した対象におけるインスリンB自己反応性T細胞の平均パーセントは、ネガティブバックグラウンド染色(p=0.002)、ならびに感染していない基準糖尿病患者の対応集団(p=0.02)におけるインスリンB自己反応性T細胞の平均パーセントを上回った。この知見は、TNFをブーストする感染が、循環へのこれらの自己反応性T細胞の放出をもたらすという結論を裏付ける。
【0111】
新たに放出されたインスリンB自己反応性T細胞は、異常に低いCD8 + 密度を有する
EBVウイルスに感染した長期糖尿病患者におけるインスリンB自己反応性T細胞のさらなる分析は、抗原特異的CD8+ T細胞の幾つかのさらなる顕著な特徴を明らかにした(図3B)。EBV感染後、循環中にさらに多くのインスリンB自己反応性CD8+ T細胞が存在していただけでなく、細胞上のCD8マーカーの密度も劇的に低かった。図3Bの3つの特徴的ヒストグラムに示されるとおり、EBV感染した対象におけるインスリンB自己反応性T細胞について、CD8の平均log蛍光密度は、1408、1157および1516であった。対照的に、感染していない長期糖尿病対象に由来するインスリンB自己反応性T細胞について、CD8マーカーの平均log抗原密度は、2976、4003、および4948であった。EBV感染した対象におけるより低いCD8タンパク質の密度は、全ての抗原特異的T細胞に一般化された傾向ではなく、自己反応性T細胞にのみ特異的であった。これらの同じ感染した対象について、EBV特異的T細胞のlog CD8+T細胞密度は正常であった。細胞表面上のCD8タンパク質密度は、4308、3530および4416(感染していない糖尿病患者のインスリンB自己反応性T細胞上のCD8タンパク質の密度と同様の値)であった(図3B)。CD8+マーカーの喪失は、T細胞の細胞損傷またはアポトーシスを示す(Diazら, J. Leukoc. Biol., 76:609-615, 2004年(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)参照)。このように、TNFR2活性化因子(例えばTNF-αまたはBCG)に反応した自己反応性T細胞の表面上のCD8タンパク質の喪失は、自己免疫疾患を有する対象を、TNFR2活性化因子を用いて治療し得る可能性を診断するための代用指標(proxy)として使用することができる。
【0112】
他の実施形態
上記の明細書中で言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載される装置および使用方法の様々な改変および変形は、本発明の範囲および精神を逸脱することなく当業者に明らかであろう。本発明は具体的実施形態に関連して記載されているが、請求される発明は、このような具体的実施形態に過度に限定されるべきではないと理解されるべきである。実際、当業者には明らかである本発明を実施するための記載される様式の様々な改変は、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0113】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
すなわち本発明は以下の実施形態を含む。
[1] 自己免疫疾患を有する対象が腫瘍壊死因子-α(TNF-α)受容体II(TNFR2)活性化因子による治療に応答する可能性を判定する方法であって、以下のステップ:
(i) 該対象由来のCD8+ T細胞集団を含むin vitro生物学的サンプルを、TNFR2活性化因子を含む組成物と接触させるステップ;および
(ii) 該集団中の自己反応性CD8+ T細胞の表面上のCD8タンパク質密度を測定するステップ;
を含み、ここで基準CD8+ T細胞と比較した、該自己反応性CD8+T細胞の表面上のCD8タンパク質密度の低下は、該対象が該治療に応答しやすいことを示す、前記方法。
[2] 前記基準CD8+ T細胞が、自己免疫疾患を有し、且つTNFR2活性化因子により治療または前治療されていない対象に由来する基準サンプルに由来する、上記[1]に記載の方法。
[3] 前記基準CD8+ T細胞が、健康な対象に由来する基準サンプルに由来する、上記[1]に記載の方法。
[4] 前記測定が、抗CD8抗体を用いて行われる、上記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 前記抗体が蛍光色素にコンジュゲートされている、上記[4]に記載の方法。
[6] 前記生物学的サンプルが、前記接触の前にダサチニブと共にインキュベートされる、上記[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7] 前記接触の前に、前記生物学的サンプルが少なくとも4時間ダサチニブと共にインキュベートされる、上記[6]に記載の方法。
[8] 前記接触の前に、前記生物学的サンプルが最大48時間ダサチニブと共にインキュベートされる、上記[7]に記載の方法。
[9] 前記自己免疫疾患が、1型糖尿病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アディソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、円板状ループス、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、乾癬性関節炎、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下、特発性肺線維症、特発性血症板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、若年性関節炎、扁平苔癬、ループス、メニエール病、混合結合組織疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、デビック病、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫症ならびに自己免疫神経障害からなる群から選択される、上記[1]~[8]のいずれかに記載の方法。[10] 前記自己免疫疾患が、1型糖尿病、セリアックスプルー皮膚炎、クローン病、グレーブス病、甲状腺機能低下、ループス、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、および潰瘍性大腸炎からなる群から選択される、上記[9]に記載の方法。
[11] 前記自己免疫神経障害が、ニューロンに対する自己免疫媒介性損傷、自己免疫性アルツハイマー病、自己免疫性パーキンソン病、または自己免疫媒介性筋萎縮性側索硬化症である、上記[9]に記載の方法。
[12] 1型糖尿病を有する対象が腫瘍壊死因子-α(TNF-α)受容体II(TNFR2)活性化因子による治療に応答する可能性を判定する方法であって、該方法が、該対象由来のin vitro生物学的サンプルを該サンプル中のCペプチドを検出することができるデバイスと接触させるステップを含み、ここで該サンプル中の検出可能なCペプチドレベルは該対象が該治療に応答しやすいことを示し、また実質的に検出不能なCペプチドレベルは該対象が該治療に応答しにくいことを示す、前記方法。
[13] 前記Cペプチドの実質的に検出不能なレベルは、前記対象が前記治療から除外されるべきであることを示す、上記[12]に記載の方法。
[14] 前記実質的に検出不能なレベルが、約1.5pmol/L未満のCペプチドレベルである、上記[12]または[13]に記載の方法。
[15] 前記実質的に検出不能なレベルが、約1.0pmol/L未満のCペプチドレベルである、上記[12]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16] 前記検出可能なレベルが、約1.5pmol/L超のCペプチドレベルである、上記[12]に記載の方法。
[17] 前記Cペプチドの濃度が約1.5pmol/L~約4.0pmol/Lの範囲である場合、前記対象が前記治療に応答しやすいと同定される、上記[12]~[16]のいずれかに記載の方法。
[18] 前記接触が、前記対象の前記治療の前に行われる、上記[12]~[17]のいずれかに記載の方法。
[19] 前記治療を開始する前に、前記対象由来の血液サンプル中の基準HbA1cレベルを測定するステップをさらに含む、上記[12]~[18]のいずれかに記載の方法。
[20] さらに以下のステップ:
(i) 前記治療後に前記対象から採取された血液サンプル中のHbA1cレベルを測定するステップ、
(ii) 該HbA1cレベルを前記基準HbA1cレベルと比較するステップ、および
(iii) 該HbA1cレベルが該基準HbA1cレベル以上である場合、該対象を、前記1つ以上のTNFR2活性化因子による反復治療を必要としていると同定するステップ
を含む、上記[18]に記載の方法。
[21] 前記血液サンプルが、前記治療の少なくとも6ヶ月後に前記対象から採取される、上記[20]に記載の方法。
[22] 前記血液サンプルが、前記治療の少なくとも1年後に前記対象から採取される、上記[21]に記載の方法。
[23] 前記血液サンプルが、前記治療の少なくとも2年後に前記対象から採取される、上記[22]に記載の方法。
[24] 前記血液サンプルが、前記治療の少なくとも3年後に前記対象から採取される、上記[23]に記載の方法。
[25] 前記血液サンプルが、前記治療の少なくとも5年後に前記対象から採取される、上記[24]に記載の方法。
[26] 前記接触が、以下のステップ:
(i) 前記サンプルを、表面に固定化捕捉剤を有する前記デバイスと接触させることにより、該サンプル中の前記Cペプチドを該固定化捕捉剤に結合させるステップ;
(ii) 該表面を結合検出剤と接触させることにより、該Cペプチドを該結合検出剤に結合させるステップ;および
(iii) 該結合検出剤を用いて該サンプル中の該Cペプチドのレベルを測定するステップを含む、上記[12]~[25]のいずれかに記載の方法。
[27] 前記結合検出剤がペルオキシダーゼ酵素を含む、上記[26]に記載の方法。[28] 前記測定が、前記表面を、過酸化水素およびペルオキシダーゼ基質を含む溶液と接触させるステップを含む、上記[26]に記載の方法。
[29] 前記サンプルが、血液、血液成分、または尿サンプルを含む、上記[1]~[28]のいずれかに記載の方法。
[30] 前記血液成分が、血清または血漿である、上記[29]に記載の方法。
[31] 前記サンプルが尿を含む、上記[29]に記載の方法。
[32] 前記TNFR2活性化因子が、バチルス・カルメット-ゲラン(BCG)、完全フロイントアジュバント、TNF-α、TNF-α受容体IIアゴニスト、TNF-αムテイン、インターロイキン-1、インターロイキン-2、組織プラスミノーゲン因子、リポ多糖(LPS)、リンホトキシンおよびカケクチンからなる群から選択される、上記[1]~[31]のいずれかに記載の方法。
[33] 前記TNFR2活性化因子がBCGである、上記[32]に記載の方法。
[34] 上記[10]に記載の方法であって、前記自己免疫疾患が1型糖尿病であり、また前記方法が上記[12]~[33]のいずれかに記載の1つ以上の方法と組み合わせて使用される、前記方法。
[35] 前記治療に応答しやすいと診断された対象における自己免疫疾患の治療において使用するための、1つ以上のTNFR2活性化因子を含む医薬組成物。
[36] 前記対象由来のサンプルが、基準対象由来のサンプル中の基準T細胞の表面上のCD8タンパク質密度と比較して、TNFR2活性化因子への曝露後に表面上のCD8タンパク質密度の低下を示すT細胞集団を含む、上記[35]に記載の医薬組成物。
[37] 前記基準対象が健康な対象である、上記[36]に記載の医薬組成物。
[38] 前記基準対象が自己免疫疾患を有し、1つ以上のTNFR2活性化因子により治療または前治療されていない、上記[36]に記載の医薬組成物。
[39] 前記自己免疫疾患が、I型糖尿病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アディソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、円板状ループス、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、乾癬性関節炎、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下、特発性肺線維症、特発性血症板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、若年性関節炎、扁平苔癬、ループス、メニエール病、混合結合組織疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、デビック病、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫症ならびに自己免疫神経障害からなる群から選択される、上記[35]~[38]のいずれかに記載の医薬組成物。
[40] 前記自己免疫疾患が、1型糖尿病、セリアックスプルー皮膚炎、クローン病、グレーブス病、甲状腺機能低下、ループス、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、および潰瘍性大腸炎からなる群から選択される、上記[39]に記載の医薬組成物。
[41] 前記自己免疫神経障害が、ニューロンに対する自己免疫媒介性損傷、自己免疫性アルツハイマー病、自己免疫性パーキンソン病、または自己免疫媒介性筋萎縮性側索硬化症である、上記[39]に記載の医薬組成物。
[42] 前記対象が、上記[1]~[11]のいずれかに記載の方法により前記治療に応答しやすいと同定される、上記[35]~[41]のいずれかに記載の医薬組成物。
[43] 前記治療前に、前記対象由来のin vitroサンプル中のCペプチドのレベルを決定することによって該治療に応答しやすいと同定された対象における1型糖尿病の治療において使用するための、1つ以上のTNFR2活性化因子を含む医薬組成物であって、実質的に検出不能なCペプチドレベルは該対象が該治療に応答しにくいことを示し、また検出可能なCペプチドレベルは該対象が該治療に応答しやすいことを示す、前記医薬組成物。
[44] 前記実質的に検出不能なCペプチドレベルが、前記対象が前記治療から除外されるべきであることを示す、上記[43]に記載の医薬組成物。
[45] 前記実質的に検出不能なレベルが、1.5pmol/L未満のCペプチドレベルである、上記[43]または[44]に記載の医薬組成物。
[46] 前記検出可能なレベルが、1.5pmol/Lを超えることはないCペプチドである、上記[43]または[44]に記載の医薬組成物。
[47] 前記対象由来の尿サンプルが約4.0pmol/mmol未満の、クレアチニンに対するCペプチドの比率を示す場合、該対象が前記治療から除外される、上記[43]~[46]のいずれかに記載の医薬組成物。
[48] 前記対象由来の尿サンプルが約4.0pmol/mmol以上の、クレアチニンに対するCペプチドの比率を示す場合、該対象が前記治療に応答しやすいと同定される、上記[43]~[46]のいずれかに記載の医薬組成物。
[49] 前記対象が、上記[11]~[33]のいずれかに記載の方法により前記治療に応答しやすいと同定される、上記[43]~[46]のいずれかに記載の医薬組成物。[50] 前記対象のHbA1cレベルが、前記組成物の投与後約4年以内に少なくとも0.1%低下することを特徴とする、上記[43]~[46]のいずれかに記載の医薬組成物。
[51] 前記対象のHbA1cレベルが、前記組成物の投与後約3年以内に少なくとも0.1%低下することを特徴とする、上記[50]に記載の医薬組成物。
[52] 前記組成物が、前記対象における1型糖尿病の2回目またはそれ以降の治療において使用するためのものであり、ここで前記対象におけるHbA1cレベルは、以前の治療の前の前記対象におけるHbA1cレベルと比較して増加するかまたは変化しない、上記[43]~[49]のいずれかに記載の医薬組成物。
[53] 前記対象が、上記[20]~[25]のいずれかに記載の方法により1つ以上のTNFR2活性化因子による反復治療を必要としていると同定されている、上記[52]に記載の医薬組成物。
[54] 前記対象がヒトである、上記[35]~[53]のいずれかに記載の医薬組成物。
[55] 前記対象が長期糖尿病患者である、上記[35]~[54]のいずれかに記載の医薬組成物。
[56] 前記1つ以上のTNFR2活性化因子が、バチルス・カルメット-ゲラン(BCG)、完全フロイントアジュバント、TNF-α、TNF-α受容体IIアゴニスト、TNF-αムテイン、インターロイキン-1、インターロイキン-2、組織プラスミノーゲン因子、リポ多糖(LPS)、リンホトキシンおよびカケクチンからなる群から選択される、上記[35]~[55]のいずれかに記載の医薬組成物。
[57] 前記1つ以上のTNFR2活性化因子がBCGである、上記[56]に記載の医薬組成物。
[58] 前記組成物が、2x106 CFU超/BCG用量を含む、上記[57]に記載の医薬組成物。
[59] 前記組成物が、2.3x106 CFU超/BCG用量を含む、上記[57]または[58]に記載の医薬組成物。
[60] 前記組成物が、4x106 CFU未満/BCG用量を含む、上記[57]~[59]のいずれかに記載の医薬組成物。
[61] 前記組成物が凍結乾燥BCGを含む、上記[57]~[60]のいずれかに記載の医薬組成物。
[62] 前記組成物が、BCGの生理食塩水溶液を含む、上記[57]~[61]のいずれかに記載の医薬組成物。
[63] 前記組成物が、前記対象に1回以上投与される、上記[56]~[62]のいずれかに記載の医薬組成物。
[64] 前記組成物が、前記対象に2回以上投与される、上記[63]に記載の医薬組成物。
[65] 前記組成物が、前記対象に2回投与される、上記[63]または[64]に記載の医薬組成物。
[66] 前記組成物の前記投与の少なくとも2回は、少なくとも2週間の間隔があけられる、上記[64]または[65]に記載の医薬組成物。
[67] 前記組成物の前記投与の少なくとも2回は、少なくとも4週間の間隔があけられる、上記[64]~[66]のいずれかに記載の医薬組成物。
[68] 前記組成物が、皮内、筋肉内、非経口、静脈内、動脈内、頭蓋内、皮下、眼窩内、脳室内、脊髄内、腹腔内および鼻腔内からなる群から選択される経路による投与のために製剤化される、上記[35]~[67]のいずれかに記載の医薬組成物。
[69] 前記組成物が皮内投与用に製剤化される、上記[68]に記載の医薬組成物。[70] 前記組成物が、生理食塩水溶液としての投与用に製剤化される、上記[35]~[69]のいずれかに記載の医薬組成物。
[71] 前記溶液が、1用量当たり約0.2cc未満の体積を有する、上記[70]に記載の医薬組成物。
[72] 前記溶液が、1用量当たり0.1ccの体積を有する、上記[71]に記載の医薬組成物。
[73] 2つ以上のTNFR2活性化因子の個別投与用に製剤化される、上記[35]~[72]のいずれかに記載の医薬組成物。
[74] 2つ以上のTNFR2活性化因子の組み合わせ投与用に製剤化される、上記[35]~[73]のいずれかに記載の医薬組成物。
[75] 前記組成物が、前記対象においてTNF-αの発現を誘導することができることを特徴とする、上記[35]~[74]のいずれかに記載の医薬組成物。
[76] 前記組成物が、前記対象の自己反応性免疫細胞におけるNF-κB経路の活性化を誘導することができることを特徴とする、上記[35]~[75]のいずれかに記載の医薬組成物。
[77] 前記自己反応性免疫細胞が、自己反応性CD8+ T細胞である、上記[76]に記載の医薬組成物。
[78] 前記組成物が、前記対象において自己反応性免疫細胞の死滅を引き起こすことを特徴とする、上記[35]~[75]のいずれかに記載の医薬組成物。
[79] 前記組成物が、前記対象において調節T細胞の増殖を引き起こすことを特徴とする、上記[35]~[78]のいずれかに記載の医薬組成物。
[80] 前記調節T細胞が、調節CD4+ T細胞である、上記[79]に記載の医薬組成物。
[81] 前記組成物が、前記対象において高血糖症に由来する合併症を予防することを特徴とする、上記[35]~[80]のいずれかに記載の医薬組成物。
[82] 前記高血糖症に由来する合併症が、腎障害、神経障害、心血管損傷、網膜への損傷、足への損傷、脚への損傷、心臓への損傷、およびケトアシドーシスからなる群から選択される、上記[81]に記載の医薬組成物。
[83] 前記組成物が、1つ以上の製薬上許容される担体または賦形剤を含む、上記[35]~[82]のいずれかに記載の医薬組成物。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
【手続補正書】
【提出日】2023-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己免疫疾患を有する対象が腫瘍壊死因子-α(TNF-α)受容体II(TNFR2)活性化因子による治療に応答する可能性を判定する方法であって、以下のステップ:
(i) 該対象由来のCD8+T細胞集団を含むin vitro生物学的サンプルを、TNFR2活性化因子を含む組成物と接触させるステップ;および
(ii) 該集団中の自己反応性CD8+T細胞の表面上のCD8タンパク質密度を測定するステップ;
を含み、ここで基準CD8+ T細胞と比較した、該自己反応性CD8+T細胞の表面上のCD8タンパク質密度の低下は、該対象が該治療に応答しやすいことを示す、前記方法。