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特開2024-11230ランヤード及びランヤード用の発光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011230
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ランヤード及びランヤード用の発光装置
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20240118BHJP
   G09F 13/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A62B35/00 A
G09F13/00 P
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113062
(22)【出願日】2022-07-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000126056
【氏名又は名称】株式会社つくし工房
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 照生
【テーマコード(参考)】
2E184
5C096
【Fターム(参考)】
2E184JA03
2E184KA11
2E184KA20
2E184MA10
5C096AA02
5C096BA01
5C096CB02
5C096CB04
5C096FA14
(57)【要約】
【課題】比較的暗い状況下や比較的離れた場所からであってもフックの位置や取付状況を好適に視認できるランヤード及びランヤード用の発光装置を提供する。
【解決手段】墜落制止用器具100の一部として親綱110と作業者との間に介在可能に構成されたランヤード10には、紐状のロープ52におけるフック1が設けられる側の端部に発光部材160が取着される。当該ランヤード10は、操作部7を操作することによって、作業者が、発光部材160を発光させる操作が可能に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
墜落制止用器具(100)の一部として取付設備(110)と作業者との間に介在可能に構成されたランヤード(10,210,310,410)であって、
前記取付設備に連結されるフック(1)が一端側に設けられる紐状のロープ部(52)と、
該ロープ部(52)における前記フック(1)が設けられる側の端部に取着される発光部材(160,260,360,460)と、
該発光部材(160,260,360,460)を発光させることが可能な操作部(7,362,462)とを備えていることを特徴とするランヤード。
【請求項2】
前記発光部材(160,260,360,460)は、前記ロープ部(52)が連続する方向に交差する所定の第1方向と、当該第1方向とは異なる第2方向とを含む少なくとも2方向に向けて発光可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のランヤード。
【請求項3】
前記発光部材(160,260,360,460)は、前記ロープ部(52)の周囲を囲う筒状に構成され、又は前記ロープ部(52)の周囲に巻き付けられるようにして取着され、前記ロープ部(52)が変形した場合において前記発光部材(160,260,360,460)が変形可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のランヤード。
【請求項4】
前記発光部材(160,260,360,460)の発光態様が複数種類に切り替え操作可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のランヤード。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の前記発光部材(160,260,360,460)と、前記操作部(7,362,462)と、前記発光部材(160,260,360,460)を前記ロープ部(52)に取着するための取着手段(155,261,361)とを組み合わせたことを特徴とするランヤード用の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、墜落制止用器具の一部として取付設備と作業者との間に介在可能に構成されたランヤード及びランヤード用の発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高所作業をする作業者に装着が義務付けられている墜落制止用器具(安全帯)のランヤードは、作業者が着用したフルハーネス又は胴ベルトと、親綱等の取付設備とを接続する部品として使用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図7に示すように、高所作業をする作業者は、例えばフルハーネス53を着用することによって墜落制止用器具100を装着し、当該墜落制止用器具100のフック51(ランヤード50の一部)を親綱110に接続する。これにより、当該作業者が作業床115から足を踏み外すことがあったとしても、ランヤード50によって作業者の安全が確保される。
【0004】
高所作業時において墜落制止用器具を着用した作業者は、移動に際してフックの掛け替えを行う。フックの掛け替え忘れを防ぐため、作業者や監督者は、フックの取付状況を必要に応じて目視により確認していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-224257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、曇天時や夜間等の比較的暗い状況下においては、作業者がフックの位置や取付状況を確認し難い場合があり、また、監督者が比較的離れた場所から墜落制止用器具のフックの取付状況を視認し難い場合があるという問題を有していた。
【0007】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、比較的暗い状況下や比較的離れた場所からであってもフックの位置や取付状況を好適に視認できるランヤード及びランヤード用の発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のランヤード(10,210,310,410)は、墜落制止用器具(100)の一部として取付設備(110)と作業者との間に介在可能に構成されたランヤードであって、前記取付設備に連結されるフック(1)が一端側に設けられる紐状のロープ部(52)と、該ロープ部(52)における前記フック(1)が設けられる側の端部に取着される発光部材(160,260,360,460)と、該発光部材(160,260,360,460)を発光させることが可能な操作部(7,362,462)とを備えていることを特徴とする。
【0009】
この請求項1に記載のランヤード(10,210,310,410)によれば、ロープ部(52)に取着された発光部材(160,260,360,460)を操作部(7,362,462)によって発光させることができるので、比較的暗い状況下や比較的離れた場所からであっても当該ランヤードのロープ部(52)の一端側に設けられるフック(1)の位置や取付状況を視認し易くすることができる。
【0010】
請求項2に記載のランヤード(10,210,310,410)は、請求項1に記載のランヤード(10,210,310,410)において、前記発光部材(160,260,360,460)は、前記ロープ部(52)が連続する方向に交差する所定の第1方向と、当該第1方向とは異なる第2方向とを含む少なくとも2方向に向けて発光可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
この請求項2に記載のランヤード(10,210,310,410)によれば、発光部材(160,260,360,460)が、ロープ部(52)が連続する方向に交差する方向のうち少なくとも2方向に向けて発光可能に構成されるので、ロープ部(52)に取着された発光部材(160,260,360,460)による発光の死角を減らすことができる。
【0012】
請求項3に記載のランヤード(10,210,310,410)は、請求項1又は2に記載のランヤード(10,210,310,410)において、前記発光部材(160,260,360,460)は、前記ロープ部(52)の周囲を囲う筒状に構成され、又は前記ロープ部(52)の周囲に巻き付けられるようにして取着され、前記ロープ部(52)が変形した場合において前記発光部材(160,260,360,460)が変形可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
この請求項3に記載のランヤード(10,210,310,410)によれば、ロープ部(52)が撓み等によって変形した場合であっても、発光部材(160,260,360,460)はその変形に応じて変形でき、当該ロープ部(52)の周囲を囲う又は巻き付けられているので脱落し難い。
【0014】
請求項4に記載のランヤード(10,210,310,410)は、請求項1又は2に記載のランヤード(10,210,310,410)において、前記発光部材(160,260,360,460)の発光態様が複数種類に切り替え操作可能に構成されていることを特徴とする。
【0015】
この請求項4に記載のランヤード(10,210,310,410)によれば、作業者毎や作業の状況等に対応して異なる発光態様を割り当てることができる。これにより、監督者等が遠くから発光態様の相違によって各作業者や作業の状況等を判別することができる。
【0016】
請求項5に記載のランヤード用の発光装置(80)は、請求項1又は2に記載の前記発光部材(160,260,360,460)と、前記操作部(7,362,462)と、前記発光部材(160,260,360,460)を前記ロープ部(52)に取着するための取着手段(155,261,361)とを組み合わせたことを特徴とする。
【0017】
この請求項5に記載のランヤード用の発光装置(80)によれば、発光装置(80)における発光部材(160,260,360,460)を取着手段(155,261,361)によってロープ部(52)に取着できるので、発光装置(80)が破損又は故障した場合に別の発光装置(80)に交換可能とし、また、発光装置(80)のない墜落制止用器具(100)のランヤードに発光機能を付加することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のランヤード(10,210,310,410)及びランヤード用の発光装置(80)によれば、比較的暗い状況下や比較的離れた場所からであってもフック(1)の位置や取付状況を好適に視認できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のランヤードを示し、(a)は正面図、(b)は裏面図である。
図2】本発明のランヤードに取り付けられる発光部材を示し、(a)は正面図、(b)は(a)におけるA-A線で切断した場合における基板付近の切断部端面図である。
図3】本発明のランヤードに取り付けられる操作部を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)はベルトを装着した状態での正面図、(d)はベルトを装着した状態での裏面図、(e)は操作部に装着されたベルトをランヤードのロープに巻き付けた状態で当該ロープを径方向に切断した場合の部分的な断面図である。
図4】実施例2に係るランヤードを示し、(a)は正面図、(b)は裏面図である。
図5】実施例3に係るランヤードを示し、(a)は正面図、(b)は裏面図、(c)は発光部材を示した図である。
図6】実施例4に係るランヤードを示し、(a)は正面図、(b)は裏面図、(c)は当該ランヤードに取り付けられる発光部材の正面図、(d)は(c)の発光部材におけるB-B線で切断した場合における基板付近の切断部端面図である。
図7】高所で作業する作業者の状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のランヤード10は、当該ランヤード10のロープ52におけるフック1が設けられる側の端部に取着される発光部材160を備え、比較的暗い状況下や比較的離れた場所からであってもフック1の位置や取付状況を好適に視認可能に構成される。
【実施例0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
<ランヤード10の全体構成>
図1は、本発明のランヤード10を示し、(a)は正面図、(b)は裏面図である。なお、図1において、(a)は、フック1の開閉レバー3が閉鎖された状態を図示し、(b)は、開閉レバー3が開放された状態を図示している。
【0023】
本発明のランヤード10は、墜落制止用器具100(図7参照)の一部として取付設備である親綱110と作業者との間に介在可能に構成されるものである。ランヤード10は、親綱110に連結されるフック1と、当該フック1と作業者(より詳細には、作業者が着用したフルハーネス又は胴ベルト)とを連結する紐状のロープ52と、発光部材6,160と、操作部7と、接続部材8,180とを有する。なお、本発明のランヤード10は、ロープ52に代えて紐状のストラップを適用する構成であってもよい。
【0024】
ランヤード10のフック1は、図1(a)及び図1(b)に示すように、親綱110を進入させることが可能な穴部分が内周側に形成された環状に形成される。フック1は、本体部材2と、本体部材2の内周側と外側とを連通可能に開閉動作が可能な開閉レバー3と、開閉レバー3の開閉動作に連動して動作する連動部材4と、開閉レバー3のロック機構として機能する回動部材5と、発光部材6とを有する。
【0025】
本体部材2は、ランヤード10の先端側となる鉤状の屈曲部2aと、ランヤード10のロープ52が連結される連結部2bと、屈曲部2aより曲率半径が大きく設定された直状部2cとを有する。開閉レバー3は、回転軸11によって本体部材2に回動可能に取り付けられている。開閉レバー3には、フック1の内周側(内側)に突出部3bが設けられ、回動部材5の係止部5bと係合してロック機構として機能する。
【0026】
連動部材4は、回転軸12によって本体部材2に対して回動可能に取り付けられている
。開閉レバー3には、長孔3cが貫通形成され、長孔3c内には、連動部材4の板状部4a,4aに設けられるピン13が挿通される。開閉レバー3が矢印P2方向に押し込まれると、回転軸11を中心として開閉レバー3が回動し、連動部材4も回転軸12を中心として回動する。連動部材4は、バネ(図示せず)によって、図1(a)の矢印R1方向に回動するよう付勢されている。開閉レバー3は、操作されていない状況において、図1(a)に示すように、本体部材2における屈曲部2a側の先端2dが開閉レバー3の先端3aに設けられた切欠部に係合して閉鎖状態となる。
【0027】
回動部材5は、板状の回転本体部5a,5aに設けられる回転軸14により、本体部材2に対して回動可能に取り付けられている。回動部材5は、バネ(図示せず)によって、図1(a)の矢印R2方向に回動するよう付勢されている。回動部材5は、操作されていない状況において初期位置(図1(a)における実線で示す位置)にて静止して留まるよう設けられる。回動部材5には、係止部5bが設けられている。係止部5bは、各回転本体部5a,5aにおけるフック1の内周側の端部をそれぞれ他方の回転本体部5aの側へ折り曲げることによって形成される。回動部材5の係止部5bは、図1(a)に示すように、回動部材5が初期位置に位置する場合に閉鎖状態の開閉レバー3の突出部3bに接触して突出部3bの移動を制限し、閉鎖状態の開閉レバー3の開放側への回動が禁止される。
【0028】
回動部材5を矢印P1方向に押し込みながら、開閉レバー3を矢印P2方向に押し込むことで、親綱110やロープ52等を本体部材2の内周側に進入させることができる。また、連結部2bにロープ52等を進入させることができる。
【0029】
発光部材6は、断面略コの字状に形成され、本体部材2の直状部2cに対し、当該本体部材2の外周側から嵌め込んだ状態にして取着(貼着)される。発光部材6は、LED(発光ダイオード)などの発光体21,31によって発光可能に構成される。発光体21,31は、直状部2cの厚み方向の両側面にそれぞれ設けられる。また、発光部材6には、発光体21,31の発光の態様を変化させることが可能な発光部側操作部28が設けられ、操作部7に対しての操作とは別に、発光部材6の側でも、発光態様(例えば、発光体21,31のオンオフ)を切り替え可能に構成される。
【0030】
発光部材160は、ロープ52におけるフック1が連結される(設けられる)側の端部に設けられる。発光部材160は、ロープ52の周囲に巻き付けられて、当該ロープ52の周囲を囲う筒状に構成される。
【0031】
発光部材160は、LEDなどの発光体121,131によって発光可能に構成される。なお、図示例においては発光体121及び発光体131がそれぞれ3つずつ設けられている場合を例示したが、発光体121及び発光体131の設置数は必ずしも3つである必要はなく、少なくとも1以上の適宜数を設ける構成であればよい。
【0032】
発光体121は、図1(a)に示すように、フック1の正面側から手前側へ向けて光を照射可能な向きに設けられ、発光体131は、図1(b)に示すように、フック1の裏面側から奥側へ向けて光を照射可能な向きに設けられる。これにより、発光部材160は、ロープ52が連続する方向に交差する所定の第1方向(図示例においては、フック1に対する手前向き)と、当該第1方向とは異なる第2方向(図示例においては、フック1に対する奥向き)の2方向に向けて発光可能に構成される。よって、ロープ52に取着された発光部材160による発光の死角を減らすことができる。
【0033】
なお、発光部材160が、発光体121,131に加え、発光体121,131のいずれの発光方向とも異なる方向(例えば、フック1の側面方向)に光を照射可能に設けられ
た発光体を含む構成であってもよい。つまり、発光部材160は、ロープ52が連続する方向に交差する所定の第1方向(発光体121の向く方向)、当該第1方向とは異なる第2方向(発光体121の向く方向)と、第1方向及び第2方向とは別の少なくとも1の方向とに向けて発光可能に構成してもよい。ロープ52が連続する方向に交差する方向のうち発光部材160による発光可能な方向が多い程、発光部材160による発光の死角を減らすことができる。
【0034】
操作部7は、上述した発光部材6及び発光部材160を発光させることが可能に構成されている。操作部7の内部には、ボタン電池や充電池により構成される電源(図示せず)と当該電源からの電力を制御する制御基板(図示せず)とが収容され、操作部7に設けられた電源スイッチ43の操作によって電源からの電力の供給(オン)と遮断(オフ)とを切り替え可能に構成される。具体的に、電源スイッチ43が押下操作される毎に、操作部7から、発光部材6及び発光部材160の各発光体21,31,121,131への電力の供給(オン)と遮断(オフ)とが切り替わる。よって、作業者は、操作部7に対する操作(より詳細には、電源スイッチ43に対する操作)を行うことによって発光部材6の発光体21,31と、発光部材160の発光体121,131とを発光させることができる。
【0035】
図1(a)及び図1(b)に示すように、操作部7は、発光部材6対して本体部材2の連結部2b側に設けられている。図示例においては、操作部7は、当該操作部7に取り付けたベルト41をロープ52における連結部2b側の端側に巻き付け、バックル42で固定することによって取り付けられる。なお、ロープ52に巻き付けたベルト41を固定する手段としては、必ずしもバックル42を用いる必要はなく、他の手段により構成してもよく、例えば、ベルト41の一面側と他面側にそれぞれ設けた面ファスナーによってベルト41が固定される構成であってもよい。
【0036】
発光部材6と操作部7との間には、発光部材6(より詳細には、発光体21,31)と操作部7とを電気的に接続する接続部材8が設けられる。また、発光部材160と操作部7との間には、発光部材160(より詳細には、発光体121,131)と操作部7とを電気的に接続する接続部材180が設けられる。
【0037】
操作部7の内部に収容される制御基板は、上述したように電源からの電力を制御するだけでなく、発光部材6及び発光部材160の発光態様(より詳細には、発光体21,31,121,131の発光態様)を制御可能に構成される。具体的に、操作部7は、発光部材6及び発光部材160の発光態様を複数種類に切り替え操作可能に構成される。なお、当該「発光態様」としては、例えば、色の相違(例えば、赤、青、黄、橙など)によるものであってもよく、発光パターン(例えば、点灯又は点滅、点滅回数、インターバル時間など)の相違によるものであってもよく、色と発光パターンとの組合せの相違によるものであってもよい。
【0038】
図1(a)に示すように、操作部7には発光態様切替スイッチ44が設けられており、作業者が発光態様切替スイッチ44を操作する毎に、発光部材6及び発光部材160の発光態様として予め準備されている複数種類の発光態様を所定の順序で順次切り替え可能に構成される。これにより、発光部材6,160を適宜の発光態様で発光させることができるので、例えば、作業者毎に異なる発光態様の発光部材6,160を割り当てることが可能となる。これにより、監督者等が遠くから発光態様の相違によって各作業者や作業の状況等を判別することが可能となる。
【0039】
<発光部材160の具体的な構成>
図2は、本発明のランヤード10に取り付けられる発光部材160を示し、(a)は正
面図、(b)は(a)におけるA-A線で切断した場合における基板付近の切断部端面図である。
【0040】
発光部材160は、上述した発光体121,131と、発光体121が搭載される基板122と、発光体131が搭載される基板132と、表層151と、裏層152と、導光カバー153とを有する。
【0041】
表層151及び裏層152は、化学繊維シートを用いて構成される。表層151及び裏層152は、発光体131が搭載された基板132を収容可能なポケット部P(図2(b)参照)と、発光体121が搭載された基板122を収容可能なポケット部を除く部分において重ねて配置される。これらのポケット部は、発光部材160をロープ52に取り付ける場合に表面側となる位置に基板122,132を挿入可能な開口が設けられている。なお、裏層152は、発光体121,131が搭載された基板122,132に対応する複数の位置において基板122,132を覆う大きさに形成することにより、ポケット部Pを構成してもよい。
【0042】
表層151における発光体121,131の配置位置には、発光体121,131を当該表層151から露出させる孔151aが形成される。これにより、各ポケット部に基板122,132と共に収容された発光体121,131の光が視認可能となる。
【0043】
導光カバー153は、ポリ塩化ビニル等の導光性を有する樹脂によって構成され、表層151に対して表面側(発光体121,131の発光方向側)に配設される。導光カバー153は、乳白色等の半透明に構成された光拡散性を有するシートであり、発光体121,131の光を拡散する光拡散手段として機能する。なお、透明なシートの表面側又は裏面側に光を拡散する光拡散シートを重ねて構成した導光カバー153を光拡散手段とする構成であってもよい。導光カバー153が光拡散手段として機能することで、発光体121,131がLEDのような指向性の高い光源であっても眩しさを抑制することができる。よって、発光部材160が取付けられたランヤード10を使用する場合に、作業中に作業者が発光体121,131の光によって目が眩むことを抑制できる。
【0044】
なお、発光体121,131の光を拡散する光拡散手段は、必ずしも導光カバー153で構成する必要はなく、例えば、光を拡散する光拡散機能を有したキャップを発光体121,131の各々に被せる構成であってもよい。発光体121,131にキャップを被せる構成においては、導光カバー153に代えて光拡散性を有さない透明カバーを用いる構成としてもよい。
【0045】
発光部材160を構成する表層151、裏層152及び導光カバー153は、いずれも湾曲(屈曲)可能な構成であるとともに、基板122,132もまた湾曲可能なフレキシブル基板によって構成される。これにより、発光部材160は、ロープ52の周方向に巻き付けて取着することができると共に、ロープ52への取着後に当該ロープ52が撓み等によって変形した場合においてもその変形に応じて変形できる。よって、発光部材160は、ロープ52が変形した場合であっても脱落し難い。
【0046】
なお、必ずしも基板122,132をフレキシブル基板によって構成する必要はなく、湾曲困難な平板状のプリント基板を用いて構成してもよいが、この場合には、ロープ52の直径より幅の小さなプリント基板を用いることが好ましい。
【0047】
発光部材160は、表層151と導光カバー153との間に反射層154を有する。反射層154は、蛍光色や銀色等の反射シートから構成される。これにより、発光体121,131の発光が反射層154によって反射され、それによって、当該発光を目立たせる
ことができるし、外部からの光によって反射層を発光させることもできる。
【0048】
発光部材160を巻き付ける方向の一端側の表層151側には、図2(a)に示すように、面ファスナー155の一方面(例えば、ループ面)155aが設けられる。なお、図2(a)においては、図面に対する理解の容易のために、一方面155aの設置領域にハッチングを付している。
【0049】
これに対し、他端側の裏層152の側には、面ファスナー155の他方面(例えば、フック面)155bが設けられる。発光部材160は、ロープ52の周方向に巻き付けた後、面ファスナー155の一方面155aと他方面155bとを貼り合わせることによって、当該ロープ52の周囲を囲う筒状に取り付けられる。
【0050】
接続部材180は、オス端子171と、オス端子171に接続される配線172とを有している。オス端子171は、操作部7に設けられたメス端子181(図3(a)参照)に装着可能な端子であり、オス端子171とメス端子181とにより接続コネクタが構成される。オス端子171には、メス端子181のラッチ係合部に係合可能なラッチが設けられており、メス端子181に装着された場合に当該メス端子181から抜け難いよう構成されている。メス端子181に装着されたオス端子171は、ラッチを押し下げながら引き抜くことによって取り外すことができる。配線172は2つに分岐して基板122及び基板132にそれぞれ接続される。
【0051】
なお、フック1に設けられる発光部材6側の接続部材8もまた、オス端子171と同様のオス端子を有しており、操作部7に設けられたメス端子81に対して抜け難く装着可能に構成されると共に、メス端子81から取り外し可能な接続コネクタが構成される。
【0052】
<操作部7の具体的な構成>
図3は、本発明のランヤード10に取り付けられる操作部7を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)はベルト41を装着した状態での正面図、(d)はベルト41を装着した状態での裏面図、(e)は操作部7に装着されたベルト41をランヤード50のロープ52に巻き付けた状態で当該ロープ52を径方向に切断した場合の部分的な断面図である。
【0053】
操作部7は、内部に電源と制御基板を収容可能なケース7aと、電源用ホルダー7bとを有している。電源用ホルダー7bに装着されたボタン電池等の電源は、当該電源用ホルダー7bをケース7aに装着することで制御基板への電源を供給可能にする。電源用ホルダー7bは、ケース7aに対して着脱可能に構成されるので、操作部7の電源を必要に応じて交換することができる。
【0054】
ケース7aは、アクリル等の導光性を有する樹脂によって構成される。ケース7a内には、LED等の発光体141が設けられ、発光体141から発光された光をケース7aの外部から視認可能に構成される。ケース7aは、乳白色等の半透明に構成された光拡散性を有する構成とされ、発光体141の光を拡散する光拡散手段として機能する。なお、光拡散シートを、透明な材料で形成したケース7aに貼付して、光拡散手段として機能させる構成であってもよい。
【0055】
発光体141は、電源スイッチ43の操作によって電源からの電力の供給(オン)と遮断(オフ)とを切り替え可能に構成される。発光体141は、ケース7aの正面から手前側へ向けて光を照射可能な位置(図3(a)参照)と、ケース7aの裏面から奥側へ向けて光を照射可能な位置(図3(d)参照)と、ケース7aの側面から側方側へ向けて光を照射可能な位置(図3(b)参照)とに設けられている。操作部7は、発光体141の発
光によって、ケース7aを手前向き、奥向き及び側方の全方向に発光させることができる。このように、操作部7は、ロープ52が連続する方向に交差する方向のうち2方向以上に向けて発光可能に構成される。なお、発光体141に光拡散手段として拡散キャップを被せる構成としてもよい。
【0056】
図3(b)に示すように、電源スイッチ43は、発光態様切替スイッチ44と比べると、その表面から突出した(突出量が多い)態様でケース7aの正面に設けられているので、作業者が電源スイッチ43の操作を行い易い。一方、発光態様切替スイッチ44は、その表面からあまり突出しない(突出量が少ない)態様で設けられているので、発光態様切替スイッチ44の誤操作を抑制できる。例えば、発光態様切替スイッチ44は、作業者毎に態様を作業前に予め設定し、作業中には、全く触らないといった利用方法としてもよい。
【0057】
図3(a)に示すように、操作部7には、2つのメス端子81,181が設けられる。メス端子181は、ロープ52に取り付けられる発光部材160のオス端子171を着脱可能な部位であり、操作部7をロープ52に取り付けた場合に発光部材160が位置するケース7aの一側面(図1(a)参照)に設けられる。また、メス端子81は、フック1に取り付けられる発光部材6のオス端子を着脱可能な部位であり、操作部7をロープ52に取り付けた場合にフック1が位置するケース7aの一側面に設けられる。
【0058】
ケース7aの裏面側には、ベルト通し部85が設けられている。ベルト通し部85にベルト41を挿通することによって、操作部7をロープ52に取り付けることが可能となる。ロープ52に巻き付けたベルト41をバックル42で固定した後に余ったベルト41の部分をさらにロープ52に巻き付けてベルト通し部85に通す構成としてもよい(例えば、図1(a)参照)。
【0059】
ベルト通し部85におけるベルト41を通す方向の幅Wは、ランヤード50のロープ52の径を超えないことが好ましい。幅Wをロープ52の径より小さくすることによって、ロープ52に巻き付けたベルト41がロープ52から浮いて当該ロープ52との接触面積が減ることを抑制できる。これにより、後述する突起92による滑り止め効果を好適に奏することを可能にする。
【0060】
図3(d)に示すように、ベルト通し部85においてロープ52(図示例においては二点鎖線により図示)に接する面には、多数の四角錐の突起91がロープ52に対する滑り止め手段として設けられている。操作部7の装着時にロープ52に接する面に突起91による滑り止め手段を設けたことにより、操作部7をロープ52に対して滑り難くできる。図示例において、多数の突起91は、ロープ52が連続する方向に沿った向きにも当該連続する方向に対して交差する向きにも配列される構成であるので、操作部7がロープ52の長手方向に沿った向きに滑ることも、周方向に沿った向きに滑ることも抑制できる。
【0061】
図3(d)に示すように、ベルト41には、その裏面側(すなわち、ロープ52に接する面)に、操作部7の装着時にロープ52が連続する方向に沿って延びる複数本の筋状の突起92がロープ52に対する滑り止め手段として設けられている。ベルト41をロープ52に巻き付けた場合、これらの突起92は、図3(e)に示すように、ロープ52の周方向に各々配置されるので、ベルト41がロープ52の周方向に沿った向きに滑ることを抑制できる。これにより、ロープ52に装着された操作部7を滑り難くできる。
【0062】
このように、滑り止め手段として機能する突起91や突起92をベルト通し部85及びベルト41に設けることにより、操作部7をロープ52に対して滑り難くすることができるので、接続部材8や接続部材180の各配線の自由度を規制し、これら接続部材8,1
80の各端部側に負荷がかかることで接続部材8,180が損傷して、発光部材6,160が発光しなくなることを抑制できる。
【0063】
なお、ロープ52に対する滑り止め手段としては、突起91,92として例示した形態に限らず、各種の凹凸パターンを採用できる。また、ゴムシートや凹凸を有するシート等の摩擦係数の高い表面を有するシート状部材を滑り止め手段としてベルト通し部85またはベルト41に貼設する構成としてもよい。また、滑り止め手段として粘着や接着を用いてもよく、例えば、接着層を有する接着シートを内面に付加して、ロープ52に操作部7を接着する構成としてもよい。
【0064】
発光部材160にも、ロープ52に対する滑り止め手段が設けられている。発光部材160の裏面側であってロープ52に接触する部分は、面ファスナー155により構成され、ロープ52に対して突起部分が接触することで滑り止め手段として機能する。発光部材160の滑り止め手段としては、上記したベルト通し部85やベルト41において説明した各種の構成を付加することができ、発光部材160の裏面側に、1種類の滑り止め手段を設けてもよいし、複数種類の滑り止め手段を設けてもよい。発光部材160をロープ52に対して滑り難くすることができるので、接続部材180が損傷して発光部材160が発光しなくなることを抑制できる。
【0065】
以上のように、本発明のランヤード10においては、ロープ52におけるフック1が設けられる側の端部に発光部材160が取着され、発光部材160を操作部7に対する操作によって発光させることができるので、比較的暗い状況下や比較的離れた場所からであってもランヤード10におけるフック1の位置や取付状況を視認し易くできる。
【0066】
ここで、発光部材160と、発光部材160をロープ52に取着するための取着手段(面ファスナー155)と、接続コネクタのうち発光部材160の側に設けられる部分(オス端子171)とを組み合わせた発光部品を、交換用の部品として設定することが好ましい。これにより、作業中に発光部材160が破損等しても発光部材160の交換により発光機能を再び利用できる。
【0067】
また、発光部材160と、操作部7と、発光部材160をロープ52に取着するための取着手段(面ファスナー155)とを組み合わせた発光装置80を、交換用又は後付け用の装置として設定することが好ましい。これにより、作業中に発光部材160や操作部7が破損等しても発光装置80の交換により発光機能を再び利用でき、また、発光機能のない既存のフックに発光装置80を後付けして発光機能を付加できる。
【実施例0068】
<実施例2のランヤード210>
次に、上記した実施例1とは別の実施例2について、図4を参照して説明する。図4は実施例2に係るランヤード210を示し、(a)は正面図、(b)は裏面図である。実施例2に係るランヤード210は、上記した実施例1のランヤード10に対し、発光部材160とは異なる形態の発光部材260がロープ52に取着された点において相違している。なお、実施例2のランヤード210は、発光部材6の設置が省略された構成とされている。以下には、上記した実施例1における構成と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略し、上記した実施例1とは異なる構成について説明する。
【0069】
発光部材260は、平紐状の基体261と、基体261の一端側に設けられた端子部262と、基体261に内包されて当該基体261が連続する方向に延びるフレキシブル基板(図示せず)と、当該フレキシブル基板に搭載された発光体121,131とを有する。
【0070】
発光部材260は、実施例1の発光部材160と同様、ロープ52におけるフック1が連結される側の端部に設けられる。発光部材260の端子部262は、操作部7に設けられた端子部(図示せず)に対して着脱可能に構成され、端子部262と操作部7の端子部とを接続することによって、発光部材260(より詳細には、発光体121,131)と操作部7と電気的に接続できる。なお、端子部262の形状をオス端子171(図2(a)参照)と共通にする構成としてもよい。これにより、実施例1の発光部材160と発光部材260とを交換可能にすることができる。
【0071】
基体261は、ポリ塩化ビニル等の弾性変形可能且つ導光性を有する樹脂によって構成される。これにより、発光部材260は、当該基体261にフレキシブル基板と共に内包される発光体121,131から発光された光を外部から視認可能となる。基体261は、乳白色等の半透明に構成され、それによって、実施例1のランヤード10における導光カバー153と同様に光拡散手段として機能する。よって、発光部材260は、発光体121,131の眩しさを抑制可能に構成される。
【0072】
発光部材260は、基体261および当該基体261に内包されるフレキシブル基板の変形によってロープ52の周囲に巻き付けることが可能に構成される。これにより、発光部材260は、ロープ52の周囲に巻き付けられるようにして取着される。このように構成される発光部材260は、ロープ52への取着後に当該ロープ52が撓み等によって変形した場合においてもその変形に応じて変形できる。よって、発光部材260は、実施例1の発光部材160と同様、ロープ52が変形した場合であっても脱落し難い。なお、基体261の裏面側に実施例1の突起91,92やその変形例として説明した滑り止め手段を設ける構成としてもよい。
【0073】
基体261には、針金等の形状保持部材(図示せず)が内包される。ロープ52の周囲に巻き付けられた発光部材260は、当該形状保持部材によってその形状が保持され、それによって、ロープ52から脱落しないよう取着される。よって、当該形状保持部材を内包する基体261は、発光部材260をロープ52に取着するための取着手段として機能する。実施例2の発光装置80は、発光部材260と、操作部7と、前記取着手段としての基体261とから構成される。なお、基体261の裏面側に取着手段として粘着テープを設ける構成としてもよい。
【0074】
発光体121,131は、発光部材260がロープ52の周囲に巻き付けられるようにして取着された場合に、発光体121,131の発光方向が複数の方向となる間隔にしてフレキシブル基板上に配置される。図4に示す例においては、発光体121は、フック1の正面側から手前側へ向けて光を照射可能な位置に配置されるのに対し、発光体131は、フック1の裏面側から奥側へ向けて光を照射可能な位置に配置される場合を例示している。
【0075】
これにより、発光部材260もまた、実施例1の発光部材160と同様、ロープ52が連続する方向に交差する所定の第1方向(図示例においては、フック1に対する手前向き)と、当該第1方向とは異なる第2方向(図示例においては、フック1に対する奥向き)の2方向に向けて発光可能に構成される。なお、発光部材260において発光体121,131の設置間隔を異ならせて、発光体121,131を、2方向より多くの方向に発光可能としてもよい。
【0076】
<実施例3のランヤード310>
次に、上記した実施例1及び実施例2とは別の実施例3について、図5を参照して説明する。図5は実施例3に係るランヤード310を示し、(a)は正面図、(b)は裏面図
、(c)は発光部材360を模式的に示した図である。実施例3に係るランヤード310は、上記した実施例2のランヤード210に対し、発光部材360に操作部362と電源が一体化され、捕縛部材363が設けられ、発光体121の配置間隔を不均一にした場合を例示している。この実施例3の発光部材360には、上記した実施例1及び2において説明した各構成を適宜付加することができ、共通の構成については説明を省略し、上記した実施例1及び2とは異なる特徴的な構成について説明する。また、実施例1又は実施例2の発光部材160,260に対して捕縛部材363又は発光体121の配置間隔を不均一にする構成の少なくともいずれかを付加してもよい。
【0077】
発光部材360は、ロープ52の周囲に巻き付けられる、基体261と同様の平紐状の基体361に発光体121が複数個設けられて構成されている。なお、実施例3の発光装置80は、発光部材360と、前記取着手段としての基体361とから構成される。基体361の裏面側に取着手段として粘着テープを設ける構成としてもよい。また、発光部材360には、操作部362が設けられ、操作部362に対する発光態様の切替操作(例えば、1秒以上の押し操作)を行うことで、発光体121の発光態様が切り替えられる。発光態様の切替は、例えば、発光のオンオフの切り替えでもよく、発光の強さや色等の切り替え操作を含んでもよい。
【0078】
発光部材360の端部には、針金で構成された捕縛部材363が取り付けられている。捕縛部材363は、発光部材360よりも細く形成されて形状変化の自由度が高く、ロープ52の周囲に巻き付き易く構成される。これにより、発光部材360が端部側からロープ52から外れてしまうことを抑制できる。
【0079】
また、発光部材360に設けられる発光体121の間隔は、一定でなく、配置間隔が異なる区間を含むように構成されている。具体的には、配置間隔の長い区間(例えば、50mm)と、それよりも短い区間(例えば、40mm)と、更に短い区間(例えば、35mm)のように、複数の長さ区間を設けて構成されている。これにより、発光部材360をロープ52に取り付けた場合に、たまたま、すべての発光体121が同一方向に向いてしまう状況を回避し易くすることができ、複数方向に向けて発光体121が発光可能な発光部材360とすることができる。
【0080】
<実施例4のランヤード410>
次に、上記した実施例1から3のいずれとも異なる実施例4について、図6を参照して説明する。図6は実施例4に係るランヤード410を示し、(a)は正面図、(b)は裏面図、(c)はランヤード410に取り付けられる発光部材460の正面図、(d)は(c)の発光部材460におけるB-B線で切断した場合における基板付近の切断部端面図である。なお、図6(a)及び図6(b)においては、フック1における上側の一部分を省略している。
【0081】
実施例4に係るランヤード410は、上記した実施例1のランヤード10に対し、操作部462と電源が一体化された発光部材460が設けられた場合を例示している。なお、実施例4における発光部材460の構成に加えて、実施例3の捕縛部材363又は発光体121の配置間隔を不均一にする構成の少なくともいずれかを付加してもよい。
【0082】
発光部材460は、上述した発光体121,131と、操作部462と発光体121とが搭載される基板122と、発光体131が搭載される基板132と、発光部材460の外形を構成するカバー部材235とを有する。なお、発光部材460は、本発明の発光装置80を構成する。
【0083】
操作部462は、操作部362と同様、発光態様を切り替える操作が可能なスイッチに
より構成され、操作部462に対する発光態様の切替操作(例えば、1秒以上の押し操作)を行うことで、発光体121,131の発光態様が切り替えられる。発光態様の切替は、例えば、発光のオンオフの切り替えでもよく、発光の強さや色等の切り替え操作を含んでもよい。
【0084】
カバー部材235は、図6(c)に示すように、正面視において最も左側に位置する接続部235aと、接続部235aに対する右側に隣接する基板配置部235bと、基板配置部235bに対する右側に隣接する中間部235cと、中間部235cに対する右側に隣接する基板配置部235dと、基板配置部235dに対する右側に隣接する接続部235eと、基板配置部235bから上方側に延びるベルト部235fとから構成される。
【0085】
カバー部材235の左右方向に並ぶ各部235a~235eにおいて隣接する各部の境界は、裏面側の方向に折り曲げ可能に構成され、この位置を折り曲げ位置として折り曲げることによって発光部材460を筒状にすることができる。これにより、発光部材460をロープ52の周方向に巻き付けることができる。
【0086】
カバー部材235は、図6(d)に示すように、表層236と、裏層237と、表層236の裏側に積層される拡散シート層238とを有する。これらの各層236~238は、カバー部材235における各部235a~235fの全体に亘って配設される層である。なお、拡散シート層238は、少なくとも基板配置部235b及び基板配置部235dの領域に配設されていればよい。
【0087】
表層236は、ポリ塩化ビニル等の導光性(透光性)を有する樹脂によって構成される。これにより、発光体121,131からの光が表層236から視認可能となる。なお、表層236は、無色透明の層であってもよいし、所定の色(例えば、赤色等)で着色された透光性を有する層であってもよい。表層236を、例えば、周囲への注意を喚起し易い色(赤色や濃いピンク色等)で着色された透光性を有する層とすることによって、発光によって周囲へ注意喚起できる発光部材460を提供することができる。
【0088】
拡散シート層238は、光拡散手段として機能する光拡散シートである。表層236の裏面側に拡散シート層238を積層することによって、実施例1の導光カバー153と同様、発光体121,131がLEDのような指向性の高い光源であっても眩しさを抑制することができる。これにより、発光部材460によって作業中の作業者の目が眩むことを抑制できる。なお、拡散シート層238が表層236の表面側に積層される構成であってもよい。また、拡散シート層238を設けることなく、表層236が、乳白色等の半透明に構成された光拡散性を有する層によって構成される構成であってもよい。
【0089】
裏層237は、例えば、表層236と同様の導光性を有する樹脂によって構成される。裏層237は、必ずしも導光性を有する層である必要はなく、導光性を有さない(不透光性の)層であってもよい。なお、表層236、裏層237及び拡散シート層238は、実施例1における表層151、裏層152及び導光カバー153と同様、いずれも湾曲(屈曲)可能な構成とされる。
【0090】
基板配置部235bには、裏層237と拡散シート層238との間に、ポケット部Pが形成されており、発光体121が搭載された基板122は、当該ポケット部Pに収容される。基板配置部235dにも、裏層237と拡散シート層238との間に、同様のポケット部が形成されており、発光体131が搭載された基板132は、当該ポケット部に収容される。
【0091】
基板122又は基板132の一方は、ボタン電池等の電源175を搭載可能なソケット
が設けられて、電源175を搭載可能に構成されており、基板122,132は、非図示の配線によって接続される。これにより、操作部462に対する操作によって発光体121,131の発光態様を切り替えることができる。発光部材460に設けられる発光体の数(発光体121,131の合計数)としては任意の数を採用できるが、当該発光体の数は、例えば、1のボタン電池を電源とする場合に少なくとも約8時間程度の使用が可能となるような数であることが好ましく、4個以下であることが好ましい。なお、図示例においては、基板122,132に搭載される発光体121,131がそれぞれ2個ずつである場合を例示したが、基板122,132に搭載される発光体121,131の数は同数である必要は必ずしもなく、例えば、基板122に搭載される発光体121が2個であり、基板132に搭載される発光体131が1個であるような構成であってもよい。
【0092】
また、図6(a)及び(b)に示すように、ロープ52への取付状態における発光体121,131の高さ位置(図6(a)及び(b)の上下方向における位置)は、図6(a)に示す正面側が高く、図6(b)に示す裏面側が低い位置となるように異ならせている。これにより、少数の発光体121,131でも、上下方向において長い区間を発光させることができて好ましい。また、一部の発光体121,131(発光部材460の略中間の高さ位置)は、略同一の高さ位置となるように配置されている。これにより、その高さ位置での発光を、拡散シート層238を通じて他の部位より強く光らせることができて好ましい。
【0093】
なお、カバー部材235は、基板122,132が収容されるポケット部以外の領域において、裏層237と拡散シート層238又は表層236との間にウレタン樹脂等によるクッション層が設けられる構成としてもよい。クッション層を設けることで、例えば、発光部材460の落下等による破損を抑制できる。
【0094】
接続部235aの裏面側(すなわち、裏層237側)には、取着手段としての面ファスナー155の一方面(例えば、ループ面)155aが設けられる。接続部235eの表面側(すなわち、表層236側)には、面ファスナー155の他方面(例えば、フック面)155bが設けられる。これにより、カバー部材235の左右方向に並ぶ各部235a~235eにおいて隣接する各部の境界の折り曲げによって、発光部材460をロープ52の周方向に巻き付けた後に、接続部235a,235eに設けた面ファスナー155の一方面155aと他方面155bとを貼り合わせることによって、発光部材460をロープ52の周囲に取り付けることができる。なお、各部235b~235eの少なくとも一部の裏面側に粘着層61を設ける構成であってもよい。
【0095】
ベルト部235fの裏面側の先端側には、両面テープ等の粘着層61が取り付けられる。発光部材460を取り付ける場合には、カバー部材235のベルト部235fを、連結部2bと連動部材4と回動部材5とにより囲まれる領域を表から裏側へ通し、裏側においてベルト部235fの粘着層61をロープ52に取着(貼着)させた後に、ロープ52の周囲を左右方向に並ぶ各部235a~235eによって囲い、接続部235a,235eに設けた面ファスナー155の一方面155aと他方面155bとの貼り合わせを行う。これにより、ベルト部235fが連結部2bによって上方向に支えられるので、発光部材460がロープ52からの脱落することを抑制できる。また、ベルト部235fが滑り止め手段として機能し、発光部材460がロープ52の長手方向に沿った向きに滑ることを抑制できる。
【0096】
なお、本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されず、上記した各効果と同様の効果を奏する別の実施の形態に変更できることは勿論である。
【0097】
例えば、上記の実施の形態においては、導光部材として機能する導光カバー153や基
体261の平面に対して発光体21,31,121,131の光を入射する構成の発光部材160,260を例示したが、導光部材の厚み範囲内に対して発光体21,31,121,131の光を入射して導光部材を光らせる構成としてもよい。例えば、発光部材260において発光体121を端子部262側に設けて、基体261の厚み範囲内に対して光を入射させ、それによって、基体261の全体が発光する構成としてもよい。また、発光部材160,260を構成する発光体の数は5個以上としてもよいが、いずれも4個以下とすることが好ましい。
【0098】
また、上記の実施の形態においては、接続部材180及び端子部262が操作部7に対して着脱可能に構成される場合を例示したが、これに代えて、又は、これに加えて、発光部材160,260に対して着脱可能な接続部材や端子部を設ける構成としてもよい。また、接続部材180及び端子部262が操作部7に対して着脱不能に構成されてもよく、例えば、接続コネクタを省略し、配線172が操作部7の内部に設けられる基板に直接固定される構成としてもよい。
【0099】
また、上記の実施の形態においては、発光部材160,260と操作部7とが別々にロープ52に取り付けられる場合について説明したが、発光部材160,260に操作部7が内蔵されて一体化されるように構成してもよいし、操作部7に、発光部材160,260が一体化されるように構成してもよい。
【0100】
また、上記の実施の形態においては、2つの発光部材160,260と操作部7との合計3箇所が発光可能な構成について例示したが、少なくとも1箇所が発光可能であればよく、一部の発光体や発光部材を省略してもよい。
【0101】
また、上記の実施の形態においては、操作部7と、発光部材160,260とが接続部材8,180を介して接続される場合を例示したが、発光部材160,260のいずれかに操作部7が一体化されてもよく、2つの発光部材160,260に対して操作部7を別々に設けてもよい。また、操作部7に電源が内蔵される構成を例示したが、発光部材160,260のいずれかに電源が内蔵される構成としてもよいし、2つの発光部材160,260に対して電源を別々に設けてもよいし、電源を別の部位に設けてもよい。
【0102】
また、上記の実施の形態においては、発光部材260は、平紐状の基体261をロープ52の周囲に巻き付ける構成としたが、予めロープ52の径に応じた螺旋状に形成される基体261の内周側にロープ52を取り付ける構成としてもよい。また、ロープ52が連続する方向に延びて当該ロープ52の周囲を囲うことが可能な筒状の基体と、当該基体に設けられて外方へ向けて発光可能な発光体とを有する構成の発光部材を、当該筒状の基体においてロープ52が連続する方向に形成されたスリットを介してロープ52に取り付ける構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、高所作業をする作業者に装着が義務付けられている墜落制止用器具のランヤードとして利用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 フック
7 操作部
10,210,310,410 ランヤード
52 ロープ(ロープ部)
80 発光装置
100 墜落制止用器具
110 親綱(取付設備)
155 面ファスナー(取着手段)
160,260,360,460 発光部材
261,361 基体(取着手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項1に記載のランヤード(10,210,310,410)は、墜落制止用器具(100)の一部として取付設備(110)と作業者との間に介在可能に構成されたランヤードであって、
前記取付設備に連結されるフック(1)が一端側に設けられる紐状のロープ部(52)と、
該ロープ部(52)における前記フック(1)が設けられる側の端部に取着される発光部材(160,260,360,460)と、
該発光部材(160,260,360,460)を発光させることが可能な操作部(7,362,462)とを備え
前記発光部材(160,260,360,460)は、前記ロープ部(52)の周囲を囲う筒状に構成され、又は前記ロープ部(52)の周囲に巻き付けられるようにして取着され、前記ロープ部(52)が変形した場合において前記発光部材(160,260,360,460)が変形可能に構成されていることを特徴とするランヤード。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
この請求項1に記載のランヤード(10,210,310,410)によれば、ロープ部(52)に取着された発光部材(160,260,360,460)を操作部(7,362,462)によって発光させることができるので、比較的暗い状況下や比較的離れた場所からであっても当該ランヤードのロープ部(52)の一端側に設けられるフック(1)の位置や取付状況を視認し易くすることができる。
また、ロープ部(52)が撓み等によって変形した場合であっても、発光部材(160,260,360,460)はその変形に応じて変形でき、当該ロープ部(52)の周囲を囲う又は巻き付けられているので脱落し難い。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
請求項に記載のランヤード(10,210,310,410)は、請求項1又は2に記載のランヤード(10,210,310,410)において、前記発光部材(160,260,360,460)の発光態様が複数種類に切り替え操作可能に構成されていることを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
この請求項に記載のランヤード(10,210,310,410)によれば、作業者毎や作業の状況等に対応して異なる発光態様を割り当てることができる。これにより、監督者等が遠くから発光態様の相違によって各作業者や作業の状況等を判別することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
請求項に記載のランヤード用の発光装置(80)は、請求項1又は2に記載の前記発光部材(160,260,360,460)と、前記操作部(7,362,462)と、前記発光部材(160,260,360,460)を前記ロープ部(52)に取着するための取着手段(155,261,361)とを組み合わせたことを特徴とする。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
この請求項に記載のランヤード用の発光装置(80)によれば、発光装置(80)における発光部材(160,260,360,460)を取着手段(155,261,361)によってロープ部(52)に取着できるので、発光装置(80)が破損又は故障した場合に別の発光装置(80)に交換可能とし、また、発光装置(80)のない墜落制止用器具(100)のランヤードに発光機能を付加することができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
墜落制止用器具(100)の一部として取付設備(110)と作業者との間に介在可能に構成されたランヤード(10,210,310,410)であって、
前記取付設備に連結されるフック(1)が一端側に設けられる紐状のロープ部(52)と、
該ロープ部(52)における前記フック(1)が設けられる側の端部に取着される発光部材(160,260,360,460)と、
該発光部材(160,260,360,460)を発光させることが可能な操作部(7,362,462)とを備え
前記発光部材(160,260,360,460)は、前記ロープ部(52)の周囲を囲う筒状に構成され、又は前記ロープ部(52)の周囲に巻き付けられるようにして取着され、前記ロープ部(52)が変形した場合において前記発光部材(160,260,360,460)が変形可能に構成されていることを特徴とするランヤード。
【請求項2】
前記発光部材(160,260,360,460)は、前記ロープ部(52)が連続する方向に交差する所定の第1方向と、当該第1方向とは異なる第2方向とを含む少なくとも2方向に向けて発光可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のランヤード。
【請求項3】
前記発光部材(160,260,360,460)の発光態様が複数種類に切り替え操作可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のランヤード。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の前記発光部材(160,260,360,460)と、前記操作部(7,362,462)と、前記発光部材(160,260,360,460)を前記ロープ部(52)に取着するための取着手段(155,261,361)とを組み合わせたことを特徴とするランヤード用の発光装置。