(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112302
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】燃料電池排ガス装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240813BHJP
H01M 8/04119 20160101ALI20240813BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20240813BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04119
H01M8/04014
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024016243
(22)【出願日】2024-02-06
(31)【優先権主張番号】10 2023 102 864.2
(32)【優先日】2023-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】520050956
【氏名又は名称】プーレム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Purem GmbH
【住所又は居所原語表記】Homburger Strasse 95, 66539 Neunkirchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン ハマー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ヴィンク
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ゲアト ガイザー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック シャーラー
(72)【発明者】
【氏名】タデウシュ-ヨゼフ ユロシェク
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127BA33
5H127BB18
5H127EE24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】燃料電池排ガスから水が凝縮されることにより霧が発生することを抑制する車両用の燃料電池排ガス装置を提供する。
【解決手段】燃料電池排ガス(B
w)を取り込んで、減水された燃料電池排ガス(B
e)を放出するための凝縮器ユニット16であって、この凝縮器ユニット16に供給された含水の燃料電池排ガス(B
w)から凝縮された水(W)を分離するための分離ユニット20を備える、凝縮器ユニット16と、熱交換器ユニット22であって、含水の燃料電池排ガス(B
w)から、減水された燃料電池排ガス(B
e)に熱を伝達するために、凝縮器ユニット16に供給される含水の燃料電池排ガス(B
w)と、凝縮器ユニット16から放出された減水された燃料電池排ガス(B
e)とによって通流可能である、熱交換器ユニット22とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車両用の燃料電池排ガス装置であって、
- 燃料電池(12)から放出された含水の燃料電池排ガス(Bw;Bw1,Bw2)を取り込んで、減水された燃料電池排ガス(Be;Be1,Be2)を放出するための少なくとも1つの凝縮器ユニット(16;16’,16’’)であって、該少なくとも1つの凝縮器ユニット(16;16’,16’’)に供給された前記含水の燃料電池排ガス(Bw;Bw1,Bw2)から凝縮された水(W)を分離するための分離ユニット(20;20’,20’’)を備える、少なくとも1つの凝縮器ユニット(16;16’,16’’)と、
- 少なくとも1つの熱交換器ユニット(22;22’,22’’)であって、前記含水の燃料電池排ガス(Bw;Bw1,Bw2)から、前記減水された燃料電池排ガス(Be;Be1,Be2)に熱を伝達するために、少なくとも1つの凝縮器ユニット(16;16’,16’’)に供給される前記含水の燃料電池排ガス(Bw;Bw1,Bw2)と、少なくとも1つの凝縮器ユニット(16;16’,16’’)から放出された前記減水された燃料電池排ガス(Be;Be1,Be2)とによって通流可能である、少なくとも1つの熱交換器ユニット(22;22’,22’’)と
を備える、燃料電池排ガス装置。
【請求項2】
- 少なくとも2つの凝縮器ユニット(16’,16’’)と少なくとも2つの熱交換器ユニット(22’,22’’)とが設けられており、
- 前記少なくとも2つの熱交換器ユニット(22’,22’’)のうちの第1の熱交換器ユニット(22’)は、前記少なくとも2つの凝縮器ユニット(16’,16’’)のうちの第1の凝縮器ユニット(16’)に供給される前記含水の燃料電池排ガス(Bw1)によって通流可能であり、
- 前記少なくとも2つの熱交換器ユニット(22’,22’’)のうちの第2の熱交換器ユニット(22’’)は、前記少なくとも2つの凝縮器ユニット(16’,16’’)のうちの第2の凝縮器ユニット(16’’)に供給される前記含水の燃料電池排ガス(Bw2)によって通流可能であり、
- 前記第1の熱交換器ユニット(22’)は、前記第1の凝縮器ユニットに供給される前記含水の燃料電池排ガス(Bw1)から、前記第2の凝縮器ユニット(16’’)から放出された前記減水された燃料電池排ガス(Be2)に熱を伝達するために、前記第2の凝縮器ユニット(16’’)から放出された前記減水された燃料電池排ガス(Be2)によって通流可能であり、
- 前記第2の熱交換器ユニット(22’’)は、前記第2の凝縮器ユニット(16’’)に供給される前記含水の燃料電池排ガス(Bw2)から、前記第1の凝縮器ユニット(16’)から放出された前記減水された燃料電池排ガス(Be1)に熱を伝達するために、前記第1の凝縮器ユニット(16’)から放出された前記減水された燃料電池排ガスによって通流可能である
ことを特徴とする、請求項1記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの凝縮器ユニット(16;16’,16’’)は、冷媒(K)によって通流可能かつ/または周流可能であることを特徴とする、請求項1または2記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項4】
前記冷媒(K)は周辺空気を含むことを特徴とする、請求項3記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項5】
前記冷媒(K)は冷却液を含むことを特徴とする、請求項3または4記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの凝縮器ユニット(16;16’,16’’)は、前記冷媒(K)により通流可能な複数の冷媒通路(26)および/または前記冷媒(K)により周流可能な複数の熱伝達フィン(24)を備えることを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項7】
燃料電池(12)と、該燃料電池(12)に割り当てられた、請求項1から6までのいずれか1項記載の燃料電池排ガス装置(14)とを備える、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両において、電気エネルギーを発生させるために作動させられた燃料電池から排出された燃料電池排ガスを周辺に放出することができる燃料電池排ガス装置に関する。
【0002】
燃料電池において電気エネルギーを発生させるためには、燃料電池のアノード領域に水素もしくは水素を含んだガスが供給され、燃料電池のカソード領域に酸素もしくは酸素を含んだガス、例えば空気が供給される。燃料電池のアノード領域のアノード排ガス出口では、燃料電池排ガスとして水素が減じられたガスが放出される。燃料電池のカソード領域のカソード排ガス出口では、燃料電池排ガスとして酸素が減じられたガスが放出される。燃料電池のタイプに応じて、燃料電池のカソード領域で放出される燃料電池排ガスまたは燃料電池のアノード領域で放出される燃料電池排ガスは、比較的大きな割合の水もしくは水蒸気を主に含んでいる。水蒸気が大幅に増加させられた、90~100%の範囲内の相対湿度を有する燃料電池排ガスが、燃料電池排ガス装置を介して周辺に放出されると、特に周辺温度が比較的低い場合、周辺空気に触れた際に燃料電池排ガスの温度が大幅に低下するリスクがある。これによって、燃料電池排ガスから水が凝縮され、ひいては、霧の発生が強まってしまうことがある。このような霧の発生は、視覚的な現象に基づいてのみ不快で望ましくないと感じられることがあり、特に周辺温度が極めて低い場合、車両が静止していると、燃料電池排ガスが周辺に流出している領域で車両の下方の地面に氷の発生が生じるリスクを招いてしまう。
【0003】
本発明の課題は、周辺に放出される燃料電池排ガスにおける霧の発生を実質的に阻止することができる、特に車両用の燃料電池排ガス装置を提供することである。
【0004】
本発明によれば、この課題は、特に車両用の燃料電池排ガス装置であって、
- 燃料電池から放出された含水の燃料電池排ガスを取り込んで、減水された燃料電池排ガスを放出するための少なくとも1つの凝縮器ユニットであって、この少なくとも1つの凝縮器ユニットに供給された含水の燃料電池排ガスから凝縮された水を分離するための分離ユニットを備える、少なくとも1つの凝縮器ユニットと、
- 少なくとも1つの熱交換器ユニットであって、含水の燃料電池排ガスから、減水された燃料電池排ガスに熱を伝達するために、少なくとも1つの凝縮器ユニットに供給される含水の燃料電池排ガスと、少なくとも1つの凝縮器ユニットから放出された減水された燃料電池排ガスとによって通流可能である、少なくとも1つの熱交換器ユニットと
を備える、燃料電池排ガス装置によって解決される。
【0005】
本発明により構成された燃料電池排ガス装置において特定されている、燃料電池から比較的高い温度で放出された含水の燃料電池排ガスと、1つの凝縮器ユニット内で冷却された減水された燃料電池排ガスとの間での熱相互作用によって、一方では、1つの凝縮器ユニットに供給される含水の燃料電池排ガスから熱が奪われ、これによって、下流側に続く1つの凝縮器ユニット内での凝縮のプロセスがアシストされる。他方では、低下させられた温度で1つの凝縮器ユニットから放出された減水された燃料電池排ガスが、この熱相互作用によって加熱され、これによって、燃料電池排ガスの相対湿度が、100%を大幅に下回る値、好適には90%未満の値に低下する。その結果、減水されてはいるものの、完全に水もしくは水蒸気を含んでいないわけではない燃料電池排ガスが周辺空気に触れたときに、燃料電池排ガスの水飽和度が自発的に100%超に上昇することが阻止される。これによって、周辺温度が比較的低い場合でも周辺に放出される燃料電池排ガスによる霧の発生を大幅に減じることができる。
【0006】
燃料電池排ガスを周辺に放出する際の霧の発生をさらに減じる構造のために、
- 少なくとも2つの凝縮器ユニットと少なくとも2つの熱交換器ユニットとが設けられており、
- 少なくとも2つの熱交換器ユニットのうちの第1の熱交換器ユニットは、少なくとも2つの凝縮器ユニットのうちの第1の凝縮器ユニットに供給される含水の燃料電池排ガスによって通流可能であり、
- 少なくとも2つの熱交換器ユニットのうちの第2の熱交換器ユニットは、少なくとも2つの凝縮器ユニットのうちの第2の凝縮器ユニットに供給される含水の燃料電池排ガスによって通流可能であり、
- 第1の熱交換器ユニットは、第1の凝縮器ユニットに供給される含水の燃料電池排ガスから、第2の凝縮器ユニットから放出された減水された燃料電池排ガスに熱を伝達するために、第2の凝縮器ユニットから放出された減水された燃料電池排ガスによって通流可能であり、
- 第2の熱交換器ユニットは、第2の凝縮器ユニットに供給される含水の燃料電池排ガスから、第1の凝縮器ユニットから放出された減水された燃料電池排ガスに熱を伝達するために、第1の凝縮器ユニットから放出された減水された燃料電池排ガスによって通流可能である
ことが提案される。
【0007】
含水の燃料電池排ガスを冷却するために、少なくとも1つの凝縮器ユニットは、冷媒によって通流可能かつ/または周流可能であってよい。
【0008】
この場合、冷媒は周辺空気を含んでよい。代替的または付加的には、冷媒は冷却液を含んでよい。この冷却液は、例えば、冷媒として冷却液を使用する冷媒循環路内で循環してよい。
【0009】
冷媒と、少なくとも1つの凝縮器ユニットを通流する燃料電池排ガスとの間での効率のよい熱相互作用のために、少なくとも1つの凝縮器ユニットは、冷媒により通流可能な複数の冷媒通路および/または冷媒により周流可能な複数の熱伝達フィンを備えることが提案される。
【0010】
本発明は、さらに、燃料電池と、この燃料電池に割り当てられた、本発明により構成された燃料電池排ガス装置とを備える、燃料電池システムに関する。
【0011】
以下に、本発明を添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】燃料電池と燃料電池排ガス装置とを備えた燃料電池システムの原理図である。
【
図2】燃料電池排ガス装置の代替的な構成の原理図である。
【
図3】冷媒を燃料電池排ガス装置用の凝縮器ユニットと熱相互作用させるための種々異なる構成オプションを有する凝縮器ユニットの原理図である。
【0013】
図1には、全体に符号10を付した燃料電池システムが原理図で示してある。例えば車両において電気エネルギーを発生させるために使用される燃料電池システム10は、例えば燃料電池モジュールにより構成された燃料電池12を備えている。この燃料電池12には、作動中、アノード領域の入口(図示せず)で水素もしくは水素を含んだガスが供給され、カソード領域の入口(同じく図示せず)で酸素もしくは酸素を含んだガス、特に空気が供給される。アノード排ガス出口(図示せず)では、水素が減じられたガスが放出される。燃料電池12のカソード領域のカソード排ガス出口では、酸素が減じられたガスが放出される。これら両方の排ガス流またはこれら両方の排ガス流のうちの少なくとも一方は、水もしくは水蒸気を含んだ燃料電池排ガスB
wとして燃料電池システム10の燃料電池排ガス装置14内に放出され、この燃料電池排ガス装置14を介して、以降では水もしくは水蒸気を部分的に含まない減水された燃料電池排ガスB
eが周辺に放出される。
【0014】
燃料電池排ガス装置14は、中央のシステム領域として、全体に符号16を付した凝縮器ユニットを備えている。この凝縮器ユニット16は凝縮器領域18を備えている。この凝縮器領域18では、例えば冷媒Kとの熱相互作用によって、含水の燃料電池排ガスBwが冷却され、これによって、この燃料電池排ガスBwから水Wが凝縮される。凝縮器領域18には、全体に符号20を付した分離ユニットが続いている。この分離ユニットでは、含水の燃料電池排ガスBwから凝縮された水Wが分離され、これによって、減水された燃料電池排ガスBeが凝縮器ユニット16から流出する。凝縮器ユニット16の凝縮器領域18と分離ユニット20とは、構造的に互いに結合されて1つのアセンブリとして、例えば1つの共通のハウジング内に配置されていてもよいし、互いに別個のアセンブリとして流れ方向に連続して配置されていてもよい。
【0015】
凝縮器ユニット16に割り当てられて、熱交換器ユニット22が設けられている。この熱交換器ユニット22は、凝縮器ユニット16の上流側、つまり、流れ方向で燃料電池12と凝縮器ユニット16との間において、燃料電池12から放出されて凝縮器ユニット16に供給される含水の燃料電池排ガスBwによって通流可能である。熱交換器ユニット22は、さらに、凝縮器ユニット16から放出された減水された燃料電池排ガスBeによって通流可能であり、その後、この減水された燃料電池排ガスBeが周辺に放出され、これによって、凝縮器ユニット16に供給される含水の燃料電池排ガスBwと、凝縮器ユニット16から放出された減水された燃料電池排ガスBeとの間で熱相互作用が発生させられる。この場合、効率のよい熱相互作用のために、熱交換器ユニット22は、例えば直交型熱交換器または向流型熱交換器として形成されていてよい。
【0016】
最大100℃の比較的高い温度で燃料電池12から放出された含水の燃料電池排ガスBwは、凝縮器ユニット16において冷媒Kとの熱相互作用によっても冷却される。その結果、凝縮器ユニット16もしくは凝縮器ユニット16の分離ユニット20から流出する減水された燃料電池排ガスBeは、凝縮器ユニット16に供給される含水の燃料電池排ガスBwよりも著しく低い温度を有している。その結果、熱交換器ユニット22内で生じる熱相互作用によって、凝縮器ユニット16に供給される含水の燃料電池排ガスBwが冷却され、凝縮器ユニット16から放出されて周辺に排出される減水された燃料電池排ガスBeが加熱される。
【0017】
含水の燃料電池排ガスBwを凝縮器ユニット16の上流側で、つまり、凝縮器ユニット16への導入前に冷却することによって、含水の燃料電池排ガスBw内に、例えば水蒸気の形態で含まれる水の凝縮が、凝縮器ユニット16内での冷媒Kによる更なる冷却によってアシストされ、これによって、水Wの凝縮および後続の分離のために、凝縮器ユニット16をより効率よく作動させることができる。
【0018】
減水された燃料電池排ガスBeを周辺への放出前に加熱することによって、減水された燃料電池排ガスの相対湿度を、100%を大幅に下回る値に低下させることが達成される。減水された燃料電池排ガスBeが、100%を大幅に下回る相対湿度、例えば90%の範囲内もしくは90%未満の相対湿度で燃料電池排ガス装置14から周辺に流出して、例えば大幅に低い温度を有する周辺空気に触れたときに、相対湿度の自発的な上昇ひいては100%の飽和度の達成もしくは超過が回避される。そして、これによって、水もしくは水蒸気の残量をまだ含んでいる減水された燃料電池排ガスBeが周辺に流出したときに、霧の発生が著しく少なくなる。
【0019】
分離ユニット20で分離された水Wは水タンク内に集められてよく、かつ/または液状の形態で周辺に放出されてよい。代替的または付加的には、水Wまたは水Wの少なくとも一部が、燃料電池12の加湿のために、この燃料電池12に返送され、例えばカソードガスと共にカソード領域に導入されてよい。また、この水Wを車両においてウィンドウワイパ用の洗浄水としてまたは自律走行用のセンサの清浄化のために使用することも可能である。また、この水は、空調装置により熱的に状態調整されて車両内室に導入すべき空気の加湿のために使用されてもよい。
【0020】
図2には、燃料電池排ガス装置14の代替的な構成が示してある。この燃料電池排ガス装置14は、特に、
図1に示した燃料電池12が2つのスタックモジュールを有している場合に使用されてよい。これら2つのスタックモジュールは、それぞれ含水の燃料電池排ガスB
w1;B
w2の流れを発生させる。代替的には、含水の燃料電池排ガスB
w1,B
w2のこれら両方の流れは、例えばただ1つのモジュールにより構成された燃料電池12から放出された含水の燃料電池排ガスB
wの流れを分割することによって発生させられてよい。
【0021】
図2に示した燃料電池排ガス装置14は、それぞれ凝縮器領域18’,18’’と、この凝縮器領域18’,18’’に下流側でそれぞれ続く分離ユニット20’,20’’とを備えた2つの凝縮器ユニット16’,16’’を備えている。第1の凝縮器ユニット16’の上流側では、含水の燃料電池排ガスB
w1が第1の熱交換器ユニット22’を通流する。また、第2の凝縮器ユニット16’’の上流側では、含水の燃料電池排ガスB
w2が第2の熱交換器ユニット22’’を通流する。
【0022】
第1の熱交換器ユニット22’は、さらに、凝縮器ユニット16’’から放出された減水された燃料電池排ガスBe2によって通流される。また、第2の熱交換器ユニット22’’は、第1の凝縮器ユニット16’から放出された減水された燃料電池排ガスBe1によって通流される。
【0023】
図2に示した燃料電池排ガス装置14では、熱相互作用が、第1の凝縮器ユニット16’を通流する燃料電池排ガスと、第2の凝縮器ユニット16’’を通流する燃料電池排ガスとの間で交互に達成される。両方の熱交換器ユニット22’,22’’の各々では、
図1に関連してすでに前述した熱相互作用が生じる。この熱相互作用では、減水された燃料電池排ガスB
e1,B
e2の各々の流れが、それぞれ割り当てられた含水の燃料電池排ガスB
w2,B
w1の流れによって加熱され、その際、この流れが冷却される。この場合にも、周辺に放出される各々の減水された燃料電池排ガスB
e1,B
e2が、その上昇させられた温度に基づき、100%を大幅に下回るように低下させられた相対湿度を有しており、これによって、霧の発生を十分に抑えることができる。
【0024】
付言しておくと、例えば、燃料電池12が2つよりも多くの燃料電池モジュールもしくはスタックを含んでいる場合には、
図2に示したような互いに相互作用する燃料電池排ガス流の数が相応に増加させられてよい。また、例えば、互いに並行に作用する2つの凝縮器ユニットが、これら2つの凝縮器ユニットからそれぞれ放出された減水された燃料電池排ガス流を同一の熱交換器ユニットに導入し、これによって、この熱交換器ユニット内で含水の燃料電池排ガスとの熱相互作用を生じさせることも可能である。
【0025】
図3には、特に冷媒Kと熱相互作用するための、例えば
図1の凝縮器ユニット16または
図2の凝縮器ユニット16’,16’’の構造が原理図で示してある。
図3の左側に示した凝縮器ユニット16の凝縮器領域18の領域では、凝縮器ユニット16、例えば凝縮器ユニット16のハウジングの外面に熱伝達フィン24が設けられており、この熱伝達フィン24を冷媒Kが周流する。この場合、冷媒Kとして、好適には、通常、燃料電池から放出される含水の燃料電池排ガスB
wよりも大幅に低い温度を有する周辺空気が使用される。
【0026】
図3の中間の領域に示した構成変化形態では、凝縮器ユニット16内もしくは凝縮器ユニット16の凝縮器領域18内に複数の冷媒通路26が設けられており、これらの冷媒通路26を通って、例えば同じく周辺空気により提供される冷媒Kが通流することができる。冷媒通路26を、凝縮器領域18に導入された含水の燃料電池排ガスB
wが周流し、これによって、この熱を冷媒Kに放出することができる。
【0027】
図3の右側に示した構成例では、凝縮器領域18内に設けられた冷媒通路26が、冷媒循環路28内で循環する液状の冷媒Kによって通流される。例えば、液状の冷媒Kは、循環路28内で循環する冷媒であってよい。この冷媒は、空調装置の冷媒循環路と同様に液状の凝集状態とガス状の凝集状態との間で変化し、その際、冷媒通路26の領域で熱を吸収し、この熱を、凝縮器領域18の外側に位置する領域で、例えば周辺空気に放出するか、または効率をさらに高めるために、分離ユニット20から流出した減水された燃料電池排ガスB
eに伝達する。
【0028】
特に冷媒Kとして周辺空気を使用する際には、この周辺空気が、凝縮器領域18の通流もしくは周流のために、ブロワによって圧送されてよい。さらに、このような周辺空気による通流もしくは周流のために、凝縮器ユニット16もしくは凝縮器ユニット16の凝縮器領域18が、走行風に基づいてのみ効率のよい空気流が発生させられるように、車両内に位置決めされていると特に有利である。この場合、例えば、凝縮器ユニット16が、車両の前進移動時に、周辺空気を良好に流入させることができる車両のフロント領域に配置されているかまたは周辺空気が擦過する車両のアンダボディ領域内またはアンダボディ領域の下方に配置されていることが特定されていてよい。
【0029】
本発明に係る燃料電池排ガス装置の構造によって、燃料電池排ガス内に含まれる水を分離し、周辺への燃料電池排ガスの流出時の霧の発生を阻止するための、燃料電池排ガス装置の特に効率のよい作動が達成される。この利点は、このような燃料電池排ガス装置を定置のシステムに使用する際にも、車両に使用する際にも利用することができる。1つ以上の熱交換器ユニットにより導入される熱相互作用によって、燃料電池排ガス装置を、可能な作動状況の大きな範囲内、特に周辺温度で効率よく、ほんの僅かな霧の発生にてまたは全く霧の発生なしに作動させることが可能となる。このことは、特に車両に使用する際に有利である。なぜならば、霧の発生によって別の道路使用者に害を与えてしまうことを回避することができるからである。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車両用の燃料電池排ガス装置であって、
- 燃料電池(12)から放出された含水の燃料電池排ガス(Bw;Bw1,Bw2)を取り込んで、減水された燃料電池排ガス(Be;Be1,Be2)を放出するための少なくとも1つの凝縮器ユニット(16;16’,16’’)であって、該少なくとも1つの凝縮器ユニット(16;16’,16’’)に供給された前記含水の燃料電池排ガス(Bw;Bw1,Bw2)から凝縮された水(W)を分離するための分離ユニット(20;20’,20’’)を備える、少なくとも1つの凝縮器ユニット(16;16’,16’’)と、
- 少なくとも1つの熱交換器ユニット(22;22’,22’’)であって、前記含水の燃料電池排ガス(Bw;Bw1,Bw2)から、前記減水された燃料電池排ガス(Be;Be1,Be2)に熱を伝達するために、少なくとも1つの凝縮器ユニット(16;16’,16’’)に供給される前記含水の燃料電池排ガス(Bw;Bw1,Bw2)と、少なくとも1つの凝縮器ユニット(16;16’,16’’)から放出された前記減水された燃料電池排ガス(Be;Be1,Be2)とによって通流可能である、少なくとも1つの熱交換器ユニット(22;22’,22’’)と
を備える、燃料電池排ガス装置。
【請求項2】
- 少なくとも2つの凝縮器ユニット(16’,16’’)と少なくとも2つの熱交換器ユニット(22’,22’’)とが設けられており、
- 前記少なくとも2つの熱交換器ユニット(22’,22’’)のうちの第1の熱交換器ユニット(22’)は、前記少なくとも2つの凝縮器ユニット(16’,16’’)のうちの第1の凝縮器ユニット(16’)に供給される前記含水の燃料電池排ガス(Bw1)によって通流可能であり、
- 前記少なくとも2つの熱交換器ユニット(22’,22’’)のうちの第2の熱交換器ユニット(22’’)は、前記少なくとも2つの凝縮器ユニット(16’,16’’)のうちの第2の凝縮器ユニット(16’’)に供給される前記含水の燃料電池排ガス(Bw2)によって通流可能であり、
- 前記第1の熱交換器ユニット(22’)は、前記第1の凝縮器ユニットに供給される前記含水の燃料電池排ガス(Bw1)から、前記第2の凝縮器ユニット(16’’)から放出された前記減水された燃料電池排ガス(Be2)に熱を伝達するために、前記第2の凝縮器ユニット(16’’)から放出された前記減水された燃料電池排ガス(Be2)によって通流可能であり、
- 前記第2の熱交換器ユニット(22’’)は、前記第2の凝縮器ユニット(16’’)に供給される前記含水の燃料電池排ガス(Bw2)から、前記第1の凝縮器ユニット(16’)から放出された前記減水された燃料電池排ガス(Be1)に熱を伝達するために、前記第1の凝縮器ユニット(16’)から放出された前記減水された燃料電池排ガスによって通流可能である
ことを特徴とする、請求項1記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの凝縮器ユニット(16;16’,16’’)は、冷媒(K)によって通流可能かつ/または周流可能であることを特徴とする、請求項1または2記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項4】
前記冷媒(K)は周辺空気を含むことを特徴とする、請求項3記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項5】
前記冷媒(K)は冷却液を含むことを特徴とする、請求項3記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの凝縮器ユニット(16;16’,16’’)は、前記冷媒(K)により通流可能な複数の冷媒通路(26)および/または前記冷媒(K)により周流可能な複数の熱伝達フィン(24)を備えることを特徴とする、請求項3記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項7】
燃料電池(12)と、該燃料電池(12)に割り当てられた、請求項1または2記載の燃料電池排ガス装置(14)とを備える、燃料電池システム。
【外国語明細書】