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特開2024-112311大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化加工方法及び装置
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  • 特開-大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化加工方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112311
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化加工方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240813BHJP
   B23H 5/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B23H5/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016903
(22)【出願日】2024-02-07
(31)【優先権主張番号】202310093638.3
(32)【優先日】2023-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】511176469
【氏名又は名称】西安交通大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】楊 旭
(72)【発明者】
【氏名】楊 曉ヂェァ
(72)【発明者】
【氏名】蒋 莊徳
【テーマコード(参考)】
3C059
5F057
【Fターム(参考)】
3C059AA02
3C059AB08
3C059BA28
3C059GA03
3C059GB03
3C059HA01
5F057AA06
5F057AA12
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB09
5F057CA14
5F057DA12
5F057FA39
5F057FA43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】陽極酸化改質及び機械研削により大口径半導体ウェハを薄化する大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化加工方法及び装置を提供する。
【解決手段】研削ツールシステム1、ウェハ固定装置9及び砥石3のドレッシング装置(砥石用ドレッサー11)を備える大口径半導体ウェハ7の電気化学的機械的薄化加工装置であって、研削ツールシステムは、研削基盤2及びカップ型の砥石3を含み、カップ型の砥石が研削基盤に固定され、研削基盤を陰極とし、半導体ウェハを陽極とする。薄化過程において、陰極と陽極とがいずれも電解液5に浸され、半導体ウェハが外部電界の作用によって表面を改質・軟化させるとともに、砥石により改質生成された酸化層及び中間生成物を同時に除去し、電気、化学、機械、力の複数のエネルギーフィールドの複合作用によって半導体ウェハの薄化加工を実現する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削ツールシステム(1)を備え、前記研削ツールシステム(1)が昇降装置に取り付けられ、前記研削ツールシステム(1)の下方にウェハ固定装置(9)が設けられ、前記研削ツールシステム(1)は研削基盤(2)及び砥石(3)を含み、前記砥石(3)が前記研削基盤(2)の下端に固定され、
前記研削基盤(2)が陰極導電性スリップリング(6)に接続され、前記ウェハ固定装置(9)に陽極導電性スリップリング(10)が取り付けられ、薄化時に、前記陽極導電性スリップリング(10)が薄化される半導体ウェハ(7)に接し、
前記陰極導電性スリップリング(6)の外輪が給電装置の負極に接続され、前記陽極導電性スリップリング(10)の外輪が前記給電装置の正極に接続され、薄化過程において、前記研削基盤(2)と薄化される半導体ウェハ(7)とがいずれも電解液(5)に接触することを特徴とする大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化装置。
【請求項2】
前記半導体ウェハ(7)が真空吸着の方式又は接着の方式で前記ウェハ固定装置(9)に固定されることを特徴とする請求項1に記載の大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化装置。
【請求項3】
前記ウェハ固定装置(9)の上部に切り欠きが設けられ、前記切り欠き内に真空吸着固定板(8)が設けられ、前記切り欠きの底部に貫通孔が開設され、前記貫通孔がチューブ及びスイベルジョイントにより真空ポンプに接続され、前記真空吸着固定板(8)が薄化される前記半導体ウェハ(7)をセットするためのものであることを特徴とする請求項2に記載の大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化装置。
【請求項4】
前記給電装置は電気化学ワークステーション(15)であり、前記電気化学ワークステーション(15)は対極が前記陰極導電性スリップリング(6)の外輪に接続され、作用電極が前記陽極導電性スリップリング(10)の外輪に接続されることを特徴とする請求項1に記載の大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化装置。
【請求項5】
前記ウェハ固定装置(9)が前記電解液(5)を貯留するための電解液タンク(4)内に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化装置。
【請求項6】
前記研削ツールシステム(1)の下方に前記砥石(3)をドレッシングするためのドレッシング装置が設けられ、前記ドレッシング装置が前記電解液タンク(4)内に設けられ、前記電解液タンク(4)の下端にスライドブロックが固定され、前記スライドブロックが底板(22)に取り付けられたスライドレールにスライド可能に接続されることを特徴とする請求項5に記載の大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化装置。
【請求項7】
前記電解液タンク(4)の出口が配管により蠕動ポンプ(14)の入力端に接続され、前記蠕動ポンプ(14)の出力端が配管により電解液フィルタ(13)の入力端に接続され、前記電解液フィルタ(13)の出力端が配管により前記電解液タンク(4)の入口に連通されることを特徴とする請求項5に記載の大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化装置。
【請求項8】
前記電解液フィルタ(13)の出力端と前記電解液タンク(4)の入口との間の配管に恒温水槽(12)が設けられることを特徴とする請求項7に記載の大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化装置。
【請求項9】
請求項1に記載の大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化装置による大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化加工方法であって、
前記半導体ウェハ(7)を洗浄して乾燥させるステップS1と、
前記半導体ウェハ(7)の厚さHを測定し、薄化する目標厚さhに基づいて薄化加工除去量H-hを決定するステップS2と、
前記半導体ウェハ(7)を前記ウェハ固定装置(9)に固定するステップS3と、
前記ウェハ固定装置(9)を前記研削ツールシステム(1)の下方に移動させて、前記砥石(3)の底部が前記半導体ウェハ(7)の表面に密着するまで前記研削ツールシステム(1)を下向きに移動させるステップS4と、
前記給電装置により電気化学的な陽極酸化改質パラメータを設定するステップS5と、
薄化加工の除去量及び送り量を設定し、前記研削ツールシステム(1)及び前記ウェハ固定装置(9)の駆動モータを起動するステップS6と、
前記給電装置を起動して、電圧/電流を印加するステップS7と、
薄化加工を行い、前記半導体ウェハ(7)を電界の作用によって電解液と陽極酸化反応させて、前記半導体ウェハの表面に前記半導体ウェハの基材よりも硬度が低い酸化物を生成するとともに、前記砥石(3)と前記半導体ウェハ(7)との相対移動により前記半導体ウェハを目標厚さhに薄化するまで除去するステップS8と、を含むことを特徴とする大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化加工方法。
【請求項10】
前記ステップS5の前に、蠕動ポンプ(14)を起動し、且つ電解液フィルタ装置(13)を作動し、さらに前記電解液の温度を制御する必要がある場合は、恒温水槽(12)を作動してその温度を設定することを特徴とする請求項9に記載の大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハの加工の技術分野に属し、より具体的には、4インチ以上の大口径半導体ウェハに適用される薄化装置及び加工方法であり、半導体ウェハの低損傷かつ高効率な薄化に応用され得る。
【背景技術】
【0002】
電子情報技術の発展に伴い、シリコン(Si)ベースの半導体デバイスは徐々にその物理限界に達しており、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)及びダイヤモンドを代表とするワイドバンドギャップ半導体は高温、高周波、大電力の環境においても高い信頼性で動作でき、低損失・高周波・高エネルギーのパワーデバイスの製造に不可欠な材料である。高性能のパワーデバイスの使用要件を満たすために、ウェハの製造はスライス後に薄化、両面研磨、化学機械研磨(CMP)などの工程を行う必要があり、最終的に極めて滑らかで損傷のない表面が形成される。これらの工程のうち、研削薄化による除去量が最も大きく、且つウェハの厚さ、寸法精度、幾何公差、表面粗さ、表面下損傷に重要な影響を与える。
【0003】
これらのワイドバンドギャップ半導体材料は代表的な高硬脆性材料であり、例えば、炭化ケイ素は硬度がダイヤモンドの硬度よりも低いだけであり、且つ化学的安定性が極めて高く、強酸や強アルカリとほとんど化学反応しないため、その加工が非常に困難になる。現在、炭化ケイ素ウェハの薄化加工段階において、主にダイヤモンド砥石を用いて機械加工の方式で行う。ところが、単純な機械薄化加工方式は効率が低くて砥石の摩耗が大きいため、加工コストが高くなり、また、硬度差を利用する加工原理により、被加工材の表面に深い損傷層を導入することが必然となって、被加工材の電気特性が悪化してしまい、損傷層を除去するための後続の研磨除去量も大幅に増加することとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、砥石の摩耗を低減し、ウェハの損傷層を減少させ、後続の研磨除去量を大幅に減少させる、大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化加工方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化装置は研削ツールシステムを備え、前記研削ツールシステムが昇降装置に取り付けられ、前記研削ツールシステムの下方にウェハ固定装置が設けられ、前記研削ツールシステムは研削基盤及び砥石を含み、前記砥石が前記研削基盤の下端に固定され、
前記研削基盤が陰極導電性スリップリングに接続され、前記ウェハ固定装置に陽極導電性スリップリングが取り付けられ、薄化する時に、前記陽極導電性スリップリングが薄化される前記半導体ウェハに接し、
前記陰極導電性スリップリングの外輪が給電装置の負極に接続され、前記陽極導電性スリップリングの外輪が前記給電装置の正極に接続され、薄化過程において、前記研削基盤と薄化される前記半導体ウェハとがいずれも電解液に接触するように構成される。
【0006】
さらに、前記半導体ウェハが真空吸着の方式又は接着の方式で前記ウェハ固定装置に固定されてもよい。
【0007】
さらに、前記ウェハ固定装置の上部に切り欠きが設けられ、前記切り欠き内に真空吸着固定板が設けられ、前記切り欠きの底部に貫通孔が開設され、前記貫通孔がチューブ及びスイベルジョイントにより真空ポンプに接続され、前記真空吸着固定板が薄化される半導体ウェハを固定するためのものであってもよい。
【0008】
さらに、前記給電装置は電気化学ワークステーションであり、前記電気化学ワークステーションは対極が前記陰極導電性スリップリングの外輪に接続され、作用電極が前記陽極導電性スリップリングの外輪に接続されてもよい。
【0009】
さらに、前記ウェハ固定装置が、前記電解液を置くための電解液タンク内に取り付けられてもよい。
【0010】
さらに、前記研削ツールシステムの下方に前記砥石をドレッシングするためのドレッシング装置が設けられ、前記ドレッシング装置が前記電解液タンク内に設けられ、前記電解液タンクの下端にスライドブロックが固定され、前記スライドブロックが底板に取り付けられたスライドレールにスライド可能に接続されてもよい。
【0011】
さらに、前記電解液タンクの出口が配管により蠕動ポンプの入力端に接続され、前記蠕動ポンプの出力端が配管により電解液フィルタの入力端に接続され、前記電解液フィルタの出力端が配管により電解液タンクの入口に連通されてもよい。
【0012】
さらに、前記電解液フィルタの出力端と前記電解液タンクの入口との間の配管に恒温水槽が設けられてもよい。
【0013】
上記本発明に係る大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化装置による大口径半導体ウェハの電気化学的機械的薄化加工方法は、
前記半導体ウェハを洗浄して乾燥させるステップS1と、
前記半導体ウェハの厚さHを測定し、薄化する目標厚さhに基づいて薄化加工除去量H-hを決定するステップS2と、
前記半導体ウェハを前記ウェハ固定装置に固定するステップS3と、
前記ウェハ固定装置を前記研削ツールシステムの下方に移動して、前記砥石の底部が前記半導体ウェハの表面に接触するまで前記研削ツールシステムを下向きに移動させるステップS4と、
前記給電装置により電気化学的な改質パラメータを設定するステップS5と、
薄化加工の除去量及び送り量を設定し、前記研削ツールシステム及び前記ウェハ固定装置の駆動モータを起動するステップS6と、
前記給電装置を起動して、電圧/電流を印加するステップS7と、
薄化加工を行い、前記半導体ウェハが電界の作用によって電解液と陽極酸化反応して、 半導体ウェハの表面に硬度が前記半導体ウェハの基材よりも低い酸化物を生成するとともに、前記砥石と前記半導体ウェハとの相対移動によりウェハが目標厚さhに薄化されるまで除去するステップS8と、を含む。
【0014】
さらに、前記ステップS5の前に、蠕動ポンプを起動して、前記電解液フィルタ装置を作動させており、さらに電解液の温度を制御する必要がある場合に、恒温水槽を作動してその温度を設定してもよい。
【発明の効果】
【0015】
従来技術と比べて、本発明は少なくとも以下の有益な技術的効果を有する。
【0016】
1)薄化効率が高い。
本発明は薄化時に半導体ウェハを陽極酸化改質により、硬度の極めて高い半導体ウェハを効率的に改質・軟化させることができるとともに、砥石によりウェハ表面基材、酸化改質層及び中間生成物を含むウェハ表面を除去する。陽極酸化と機械研削とが同時に行われるため、ウェハの効率的な薄化が実現され、薄化後の表面粗さ及び損傷層が大幅に低減されるという利点を有する。
【0017】
2)砥石の摩耗が小さく、コストが低減される。
電気化学的な改質によってウェハの表面硬度を低減させ、砥石の研削力を効果的に低減させ、砥石の摩耗を低減することができ、それにより加工コストを削減する。
【0018】
3)強酸、強アルカリ及び強力酸化剤を添加する必要がなく、グリーンで環境に優しい。
加工過程において、外部電界の作用によってウェハ内部の電子と正孔が分離し、正孔がウェハの表面及び電解液の界面へ移動し、正孔が強酸化性を有し、電解液中の水分子と反応して、陽極酸化改質を実現する。強酸、強アルカリ及び強力酸化剤を添加する必要がなく、ウェハのグリーン製造を実現できる。
【0019】
4)加工装置の構造が簡単で、加工方法も実現しやすい。
本加工装置における加工パラメータは研削送り量、研削ツールの回転速度、ウェハの回転速度、ドレッシング装置の回転速度、電解液の種類及び濃度であり、また、ウェハと対極との電位差及び電流密度がいずれも実際の加工状況に応じて調整され、それにより最適な加工効果を実現する。
【0020】
さらに、加工効果を確保するために、カップ型のダイヤモンド砥石を適時にドレッシングする必要があり、ドレッシング装置を水平方向に沿って研削ツールシステムの底部に移動してドレッサーの上面と接触させ、研削ツールシステム及びドレッシング装置の回転により相対移動を発生させ、それによりカップ型のダイヤモンド砥石のオンラインドレッシングを実現する。
【0021】
本方法は機械的な薄化及び電気化学的な陽極酸化改質の方式を用い、研削基盤を陰極とし、半導体ウェハを陽極とする。加工において、陰極と陽極とがいずれも電解液に浸される。半導体ウェハは外部電界の作用によって電解液と陽極酸化反応して表面を改質・軟化させるとともに、ダイヤモンド砥石により生成された酸化層及び中間生成物を同時に除去し、電気、化学、機械、力の複数のエネルギーフィールドの複合作用によって半導体ウェハの薄化加工を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は本発明に係る半導体ウェハの電気化学的機械的薄化装置の概念図である。
図2図2は本発明に係る半導体ウェハの電気化学的機械的薄化方法の原理図である。
図3図3は本発明に係る半導体ウェハの電気化学的機械的薄化装置の立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の目的及び技術案をより明確かつ理解しやすくするために、以下に図面及び実施例を参照しながら本発明をさらに詳細に説明するが、ここに説明される具体的な実施例は単に本発明を解釈するためのものであり、本発明を限定するためのものではない。
【0024】
本発明に係る半導体ウェハの電気化学的機械的薄化加工装置は研削ツールシステム1、電解液タンク4、陰極導電性スリップリング6、ウェハ固定装置9、陽極導電性スリップリング10、恒温水槽12、電解液フィルタ13、蠕動ポンプ14、電気化学ワークステーション15、電動昇降板21、底板22、及び砥石3をドレッシングするためのドレッシング装置を備える。ドレッシング装置がドレッサー11である。
【0025】
研削ツールシステム1は電動昇降板21に固定され、半導体ウェハの薄化加工過程における送り量を調整することができる。
【0026】
研削ツールシステム1は研削中空主軸、研削基盤2及び砥石3を含み、研削中空主軸は研削ツールシステムを貫通し、ベルト及びプーリーを介して第1サーボモータ20により駆動され、回転可能である。砥石3は研削基盤2の下端に固定され、砥石3の下端面の直径が半導体ウェハ7の直径よりも大きく、研削基盤2を陰極とし、加工された半導体ウェハ7を陽極とする。加工過程において、陰極と陽極とがいずれもNaCl、KCl、NaNO、KNO又はNaCOなどの電解液5に浸される。
【0027】
研削基盤2は金属で製造され、陰極板として研削中空主軸の下部に固定され、研削中空主軸を介してプーリー及びベルトにより第1サーボモータ20の出力軸に接続され、前記中空主軸の外側に陰極導電性スリップリング6が設けられ、中空主軸内には一端が研削基盤2に接続されるがもう一端が陰極導電性スリップリング6の内輪に接続されるワイヤが設けられる。陰極導電性スリップリング6の外輪がワイヤにより電気化学ワークステーション15の対極又は直流電源の負極に接続される。
【0028】
外部から印加された負電位は研削基盤2の上方にある陰極導電性スリップリング6の外輪リード、内輪リードを順に通過して研削基盤2に到達することができ、外部から印加された正電位はウェハ固定装置9の下方にある陽極導電性スリップリング10の外輪リード及び内輪リードを順に通過して真空吸着固定板8に接続され、最終的に半導体ウェハ7に導通することができる。研削基盤2(陰極板)に負電位を印加して、半導体ウェハ7に正電位を印加することにより、電位差が形成される。
【0029】
砥石3が研削基盤2の下端に固定され、デジタル制御システムにより駆動され、砥石3が半導体ウェハ7に接触して相対移動を発生させる。研削ツールである砥石3はカップ型のダイヤモンド砥石であることが好ましいが、それに限らず、半導体ウェハの表面を除去してウェハの薄化を実現するために、アルミナ、酸化セリウムなどの性質及び硬度の異なる砥石を選択してもよい。ウェハの表面はウェハ表面基材、酸化改質層及び中間生成物を含む。
【0030】
底板22に2本のスライドレールが固定され、スライドレールにスライドブロックがスライド可能に取り付けられ、スライドブロックに電解液タンク4が固定され、ウェハ固定装置9及びドレッサー11の上部が電解液タンク4内に置かれ、薄化加工時に、前記研削基盤2(陰極板)及び半導体ウェハ7の表面がいずれも電解液5に浸され、電気化学ワークステーション15は対極がワイヤにより導電性スリップリング6の外輪に接続され、作用電極がワイヤにより導電性スリップリング10の外輪に接続され、電気化学ワークステーション15、半導体ウェハ7、電解液5、及び研削基盤2(陰極板)が電気回路を形成する。
【0031】
電気化学ワークステーション15は電源で代替されてもよく、電源で電気化学ワークステーション15を代替する場合、電源装置は負極が導電性スリップリング6の外輪に接続され、正極が導電性スリップリング10の外輪に接続される。
【0032】
前記電解液5は配管で流れることで供給してもよく、半導体ウェハ7と研削基盤2とがいずれも電解液に接触するように確保すればよい。
【0033】
電解液タンク4に電解液5が貯留され、研磨過程において、研削基盤2、ダイヤモンド砥石3及び半導体ウェハ7が電解液に浸され、電解液5が陽極酸化媒体とされるとともに、薄化・研削のための液体環境を提供し、研削ツールシステム1と半導体ウェハ7との相対移動によって研磨による切屑等の不純物が電解液の流れにつれて半導体ウェハ7の表面から離れるようにし、ウェハの表面にすり傷を付けることを防止し、加工面の品質を確保する。該箇所での電解液が流動循環供給の方式を用いてもよい。
【0034】
半導体ウェハ7が真空吸着の方式又は接着の方式でウェハ固定装置9の上面に固定され、第2サーボモータにより駆動され、第2サーボモータがプーリーによりウェハ固定装置の主軸と接続され、半導体ウェハ7がウェハ固定装置9とともに軸方向に回転する。砥石3が研削基盤2(本発明における研削基盤が金属材料である)に固定され、駆動により半導体ウェハに接触して相対移動を発生させる。
【0035】
真空吸着の方式で固定される場合、ウェハ固定装置9の上部に切り欠きが設けられ、切り欠きの中間部分が真空吸着固定板8であり、切り欠きの底部に1つの円形の貫通孔があり、該貫通孔がチューブ及びスイベルジョイントにより真空ポンプに接続され、半導体ウェハ7が真空吸着固定板8の上端に配置され、真空ポンプを作動すれば、半導体ウェハ7の真空吸着固定を実現することができる。
【0036】
真空吸着固定板8は導電性材料で製造され、導電性を有しており、真空吸着固定の条件下で、半導体ウェハ7が真空吸着固定板8と密着して導通され、前記ウェハ固定装置9の中空軸は外部に導電性スリップリング10が設けられ、内部にワイヤが設けられ、ワイヤは一端が真空吸着固定板8に接続され、もう一端が導電性スリップリング10の内輪に接続され、導電性スリップリング10の外輪はワイヤにより電気化学ワークステーション15の作用電極又は直流電源の正極に接続され、それにより最終的に前記電気化学ワークステーション15の作用電極と半導体ウェハ7との接続を実現する。
【0037】
恒温水槽12は電解液5の温度を制御するためのものであり、1本の配管により電解液タンク4の入口に連通し、別の配管により電解液フィルタ13の出力端に接続され、電解液フィルタ13の入力端が蠕動ポンプ14の出力端に接続され、蠕動ポンプ14の入力端が配管により電解液タンク4の出口に連通する。
【0038】
電解液フィルタ13は薄化加工過程において生成された切屑等の不純物を濾過して除去する。蠕動ポンプ14によって電解液中の研磨による残渣の濾過及び電解液の循環を行って、研磨による残渣がウェハの表面にすり傷を付けることを防止するとともに、電解液の再利用を実現することができる。
【0039】
蠕動ポンプ14は電解液の循環のために動力を提供し、且つ電解液の循環速度を調整することができる。
【0040】
砥石用ドレッサー11は装置の水平方向における作業台に位置し、水平方向における移動を行うことができ、前記砥石用ドレッサー11が第3サーボモータの駆動により回転し、スクリューがスライドブロックを駆動してドレッサー11を研削ツールシステム1の下方に移動させる場合に相対移動が発生し、カップ型のダイヤモンド砥石3をトリミングすることができる。
【0041】
研削ツールシステム1は薄化加工装置の上部に位置し、ウェハ固定装置9とドレッシング装置11とが薄化加工装置の下部に並列して設置され、且つ横方向における移動を行うことができ、ウェハの薄化加工と研削ツールのドレッシングとを切り替えることが実現され得る。
【0042】
前記半導体ウェハ7はシリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウムウェハなどである。
【0043】
外部電界は電気化学ワークステーション、直流電源、ポテンショスタット、電池などの1種類又は複数の種類により実現され得る。
【0044】
上記半導体ウェハの電気化学的機械的薄化加工装置による半導体ウェハの電気化学的機械的薄化方法は具体的に以下のステップを含む。
【0045】
S1 半導体ウェハ7を湿式洗浄法で洗浄して、半導体ウェハ7の表面の埃、不純物及び酸化物を除去し、窒素ガンで乾燥させる。
【0046】
S2 ウェハの厚さHを測定し、薄化する目標厚さhに基づいて薄化加工除去量(H-h)を決定する。
【0047】
S3 真空吸着の方式で半導体ウェハ7をウェハ固定装置9の上端に固定する。
【0048】
S4 砥石用ドレッサー11及びウェハ固定装置9の位置するスライドブロックを移動させて、砥石用ドレッサー11を研削ツールシステムの下方に移動させ、砥石3の底部が砥石用ドレッサー11の表面に密着してドレッシング開始位置に到達するまで研削ツールシステム1の位置する電動昇降板21を駆動して下向きに移動させ、ドレッシング量を設定する。
【0049】
S5 研削ツールシステム1及びドレッサー11のそれぞれの駆動モータを起動し、設定されたドレッシング量に基づいてカップ型の砥石3をドレッシングし、ドレッシングが完了した後、駆動モータを停止し、且つ電動昇降板21により研削ツールシステム1を上向きに持ち上げる。
【0050】
S6 砥石用ドレッサー11及びウェハ固定装置9の位置するスライドブロックを移動させて、半導体ウェハ7の加工対象の表面全体が砥石3の正投影範囲内に位置するまでウェハ固定装置9を研削ツールシステム1の下方に移動させ、具体的な位置が半導体ウェハ7及び砥石3の偏心量に対する要件に応じて調整され、カップ型のダイヤモンド砥石3の底部が半導体ウェハ7の表面に密着して薄化加工の開始位置に到達するまで電動昇降板21を駆動して研削ツールシステム1を下向きに移動させる。
【0051】
S7 蠕動ポンプ14を起動し、且つ電解液フィルタ13及び恒温水槽12を作動し、電解液の循環濾過及び温度制御を行う(温度を制御しなくてもよい)。
【0052】
S8 電気化学ワークステーション15により電圧、電流及び時間などを含む電気化学的な陽極酸化改質パラメータを設定する。
【0053】
S9 薄化加工の除去量及び送り量を設定し、研削ツールシステム1及びウェハ固定装置9の駆動モータを起動する。
【0054】
S10 電気化学ワークステーション15を起動して、電圧/電流を印加する。
【0055】
S11 薄化加工を行い、半導体ウェハ7が電界の作用によって電解液5と陽極酸化反応して、半導体ウェハ7の表面に硬度が半導体ウェハの基材よりも低い酸化物を生成し、更に砥石3と半導体ウェハ7との相対移動により所定の位置までに研削して除去し、ウェハを目標厚さhに薄化させる。
【0056】
S12 薄化が完了した後、廃液を吸い取って回収して排出し、真空吸着装置を停止して、薄化されたウェハを取り出す。
【0057】
図2を参照し、本発明の動作原理は、加工前に半導体ウェハ7の表面にワイヤ切断によるより深くかつより大きな損傷19があり、電気化学的な陽極酸化により改質して柔らかい酸化層17を生成し、その後、ダイヤモンド砥粒16で酸化層17を除去することで、半導体ウェハの薄化加工及び損傷層の除去を実現する、ということである。薄化過程において使用されるのがダイヤモンド砥石であるため、ダイヤモンド砥粒の硬度が酸化層よりも高いだけでなく、半導体ウェハ本体よりも高く、従って、ダイヤモンド砥粒が損傷層を除去すると同時に、半導体ウェハ本体も除去することとなって、半導体ウェハの表面に比較的浅い損傷18を与えて、且つこれらの損傷も電界の作用によって電解液と迅速に反応して酸化物17を生成する。
【符号の説明】
【0058】
1 研削ツールシステム
2 研削基盤
3 砥石
4 電解液タンク
5 電解液
6 陰極導電性スリップリング
7 半導体ウェハ
8 真空吸着固定板
9 ウェハ固定装置
10 陽極導電性スリップリング
11 砥石用ドレッサー
12 恒温水槽
13 電解液フィルタ
14 蠕動ポンプ
15 電気化学ワークステーション
16 ダイヤモンド砥粒
17 酸化層
18 浅い損傷層
19 深い損傷層
20 第1サーボモータ
21 電動昇降板
22 底板
図1
図2
図3