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特開2024-11233有機溶剤用流体制御弁及び有機溶剤用流体制御弁の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011233
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】有機溶剤用流体制御弁及び有機溶剤用流体制御弁の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 3/02 20060101AFI20240118BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20240118BHJP
   F16K 7/17 20060101ALI20240118BHJP
   F16K 7/12 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F16J3/02 C
B29C65/02
F16J3/02 A
F16K7/17 A
F16K7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113068
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000101514
【氏名又は名称】アドバンス電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 起美仁
【テーマコード(参考)】
3J045
4F211
【Fターム(参考)】
3J045AA05
3J045AA20
3J045CA10
3J045CA15
3J045CA20
3J045DA05
3J045EA10
4F211AA16
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH13
4F211AK05
4F211AP05
4F211AP06
4F211AR02
4F211AR06
4F211TA01
4F211TC08
4F211TD11
4F211TN02
4F211TW15
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性に優れて発塵量を減らすことができる架橋PTFEを用い、流路側ボディを流れる有機溶剤がダイアフラムの外周部とダイアフラム固定部との間に浸透することがなく、また、ダイアフラムの外周部とダイアフラム固定部とが摺動しないため発塵を無くすことができる有機溶剤用流体制御弁及び有機溶剤用流体制御弁の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の有機溶剤用流体制御弁1、2は、架橋PTFEで形成したダイアフラム60の外周部63が、PFAで形成した流路側ボディ10のダイアフラム固定部14に隙間なく溶着されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路側ボディと駆動側ボディとを有し、
前記流路側ボディは、被制御流体が流入する流入流路と、前記被制御流体が流出する流出流路と、前記流入流路と前記流出流路との間に位置する弁座と、前記弁座の外周に位置するダイアフラム固定部とを内部に形成し、
前記駆動側ボディは、ピストンを配置するピストン用筒状空間を内部に形成し、
前記ピストンの一端には弁体が配置され、
前記ピストン用筒状空間の一端には、前記弁座に対向する位置に開口部を形成し、
前記開口部にダイアフラムが配置され、
前記ピストン用筒状空間と前記弁座とは前記ダイアフラムによって仕切られ、
前記弁体の前記弁座側に前記ダイアフラムが配置される
有機溶剤用流体制御弁であって、
架橋PTFEで形成した前記ダイアフラムの外周部が、PFAで形成した前記流路側ボディの前記ダイアフラム固定部に隙間なく溶着されている
ことを特徴とする有機溶剤用流体制御弁。
【請求項2】
前記弁体と前記ダイアフラムとが架橋PTFEで一体に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の有機溶剤用流体制御弁。
【請求項3】
前記弁体を、PFA又はPTFEからなるフッ素系樹脂で形成し、
前記ダイアフラムの中心部が前記弁体に溶着されている
ことを特徴とする請求項1に記載の有機溶剤用流体制御弁。
【請求項4】
前記弁体が当接する前記弁座の弁座側当接部に、架橋PTFEからなる環状のシール部材が溶着されている
ことを特徴とする請求項1に記載の有機溶剤用流体制御弁。
【請求項5】
前記シール部材は、PFAフィルムの一方の面に架橋PTFEシートを積層して構成され、
前記PFAフィルムが前記弁座側当接部に溶着されている
ことを特徴とする請求項4に記載の有機溶剤用流体制御弁。
【請求項6】
前記弁座側当接部に溶着する前記シール部材に環状突起を形成し、
前記環状突起は、前記PFAフィルムの厚みを異ならせることで形成され、
前記架橋PTFEシートの厚みを一定とした
ことを特徴とする請求項5に記載の有機溶剤用流体制御弁。
【請求項7】
前記ダイアフラムは、PFAフィルムの一方の面に架橋PTFEシートを積層して構成され、
前記PFAフィルムが前記弁体に溶着されている
ことを特徴とする請求項3に記載の有機溶剤用流体制御弁。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の有機溶剤用流体制御弁の製造方法であって、
前記ダイアフラム固定部に前記ダイアフラムを溶着する溶着工程では、
前記ダイアフラム固定部に前記ダイアフラムを載置し、
抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロックを、前記ダイアフラム側から押し当てる
ことを特徴とする有機溶剤用流体制御弁の製造方法。
【請求項9】
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の有機溶剤用流体制御弁の製造方法であって、
前記シール部材を成形するシール部材成形工程では、
PFAフィルムと架橋PTFEシートとを重ねて拡散接合する拡散接合工程と、
前記拡散接合工程で拡散接合した前記PFAフィルムと前記架橋PTFEシートとの積層シートを、環状に型抜きする型抜き工程と
を有する
ことを特徴とする有機溶剤用流体制御弁の製造方法。
【請求項10】
請求項6に記載の有機溶剤用流体制御弁の製造方法であって、
前記シール部材を成形するシール部材成形工程では、
前記PFAフィルムと前記架橋PTFEシートとを重ねて拡散接合する拡散接合工程と、
前記拡散接合工程で拡散接合した前記PFAフィルムと前記架橋PTFEシートとの積層シートを加熱成形して前記環状突起を形成する成形工程と、
前記成形工程で成形された前記積層シートを、環状に型抜きする型抜き工程と
を有する
ことを特徴とする有機溶剤用流体制御弁の製造方法。
【請求項11】
前記溶着工程では、前記ヒーティングブロックの単位時間当たりの変位量が小さくなるタイミングで加熱を停止する
ことを特徴とする請求項8に記載の有機溶剤用流体制御弁の製造方法。
【請求項12】
前記溶着工程では、前記ヒーティングブロックの単位時間当たりの変位量がマイナスになるタイミングで加熱を停止する
ことを特徴とする請求項8に記載の有機溶剤用流体制御弁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に強酸や強アルカリなどの腐食性の高い薬液を使用することが多いシリコンウェハプロセスでの洗浄、剥離工程で使用される有機溶剤用流体制御弁及び有機溶剤用流体制御弁の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PTFEやPFAと同等の耐腐食性と清浄度を有し、耐摩耗性に優れた材料として、架橋PTFEがある。
架橋PTFEは、放射線照射で切断された炭素C-フッ素F結合のうちの炭素原子が、同様に生じた他の分子と結合して炭素C-結合としているため、耐摩耗性は優れるが、反面、耐屈曲性は低いという特性がある。
耐屈曲性はバルブの弁座と弁体のシール部からの発塵量を減らす作用がある。耐屈曲性が低いと制御バルブのダイアフラムから発塵してしまう。
一般的に半導体製造の生産性から制御バルブには小型化と低圧力損失が求められる。
それは制御バルブのダイアフラムの変形を大きくすることに繋がり、耐屈曲性が低い材料ではバルブ動作によりクラックが発生し、それに伴い発塵が起きてしまうからである。
当然、クラックの発生はダイアフラムの破断要因となる。製品の寿命も短くなるため、小型化と低圧力損失が求められる制御バルブのポペットダイアフラムには架橋PTFEは採用されなかった。
バルブの弁座やボディーに関しては、架橋により流動性が低下するため、例えば300mm角のシート材は製造できなかった。
丸棒はラム押出成形により製造できるがサイズに限界があり、必要なサイズが得られないため、採用に至らなかった。
仮に弁体もしくは弁座の片方に架橋PTFEを採用しても、架橋PTFEが相手材のPTFEやPFAを削ってしまうため発塵量を下げる効果はなかった。
特許文献1には、インサート成形により第1フッ素系樹脂材料と第2フッ素系樹脂材料とを接合する技術が記載されている。
また、特許文献2には、赤外線光のレーザーで弁体部材を溶着し、溶着した材料結合体を削り出すことで結合体を形成する技術が記載されている。
また、特許文献3には、グランドシール部をレーザー光で溶融して接着する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/221877号
【特許文献2】特開2020-200840号公報
【特許文献3】特開2012-17753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の通りフッ素系樹脂材料同士のインサート成形では接合部での接着力が弱く(特許文献1の段落番号[0004])、液体制御弁製造の部品洗浄工程で使用される界面活性剤が、部品にある隙間に浸透し、半導体製造使用時に界面活性剤に含まれる有機物が溶出することがある。近年では微細化によりそのような有機物の汚染も問題視されるようになっている。
また、特許文献2では、インサート成形に比較すると接合強度は上がるが、切削できない部材には利用できない。
また、特許文献3では、溶着によるためにシール性は高いが、円環状の溶着部の内周側ではダイアフラムのフランジ部とハウジングとの間には隙間が生じ、この隙間に溶剤が浸透する。また、ダイアフラムのフランジ部とハウジングとの間に隙間が生じるために、バルブの動作によって、ダイアフラムとハウジングとが摺れて発塵してしまう。このような隙間を無くすためには、円環状の溶着部を弁室外周に位置させればよいが、弁室内をレーザー光で溶かしてしまう弊害を考慮すると、円環状の溶着部を弁室外周に位置させることはできない。
【0005】
そこで本発明は、耐摩耗性に優れて発塵量を減らすことができる架橋PTFEを用い、流路側ボディを流れる有機溶剤がダイアフラムの外周部とダイアフラム固定部との間に浸透することがなく、また、ダイアフラムの外周部とダイアフラム固定部とが摺動しないため発塵を無くすことができる有機溶剤用流体制御弁及び有機溶剤用流体制御弁の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の有機溶剤用流体制御弁1、2は、流路側ボディ10と駆動側ボディ20とを有し、前記流路側ボディ10は、被制御流体が流入する流入流路11と、前記被制御流体が流出する流出流路12と、前記流入流路11と前記流出流路12との間に位置する弁座13と、前記弁座13の外周に位置するダイアフラム固定部14とを内部に形成し、前記駆動側ボディ20は、ピストン30を配置するピストン用筒状空間21を内部に形成し、前記ピストン30の一端には弁体40が配置され、前記ピストン用筒状空間21の一端には、前記弁座13に対向する位置に開口部21xを形成し、前記開口部21xにダイアフラム60が配置され、前記ピストン用筒状空間21と前記弁座13とは前記ダイアフラム60によって仕切られ、前記弁体40の前記弁座13側に前記ダイアフラム60が配置される有機溶剤用流体制御弁1、2であって、架橋PTFEで形成した前記ダイアフラム60の外周部63が、PFAで形成した前記流路側ボディ10の前記ダイアフラム固定部14に隙間なく溶着されていることを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の有機溶剤用流体制御弁1、2において、前記弁体40と前記ダイアフラム60とが架橋PTFEで一体に形成されていることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の有機溶剤用流体制御弁1、2において、前記弁体40を、PFA又はPTFEからなるフッ素系樹脂で形成し、前記ダイアフラム60の中心部61が前記弁体40に溶着されていることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1に記載の有機溶剤用流体制御弁1、2において、前記弁体40が当接する前記弁座13の弁座側当接部13aに、架橋PTFEからなる環状のシール部材80が溶着されていることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の有機溶剤用流体制御弁1、2において、前記シール部材80は、PFAフィルム80xの一方の面に架橋PTFEシート80yを積層して構成され、前記PFAフィルム80xが前記弁座側当接部13aに溶着されていることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項5に記載の有機溶剤用流体制御弁1、2において、前記弁座側当接部13aに溶着する前記シール部材80に環状突起80aを形成し、前記環状突起80aは、前記PFAフィルム80xの厚みを異ならせることで形成され、前記架橋PTFEシート80yの厚みを一定としたことを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項3に記載の有機溶剤用流体制御弁1、2において、前記ダイアフラム60は、PFAフィルム80xの一方の面に架橋PTFEシート80yを積層して構成され、前記PFAフィルム80xが前記弁体40に溶着されていることを特徴とする。
請求項8記載の本発明の有機溶剤用流体制御弁1、2の製造方法は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の有機溶剤用流体制御弁1、2の製造方法であって、前記ダイアフラム固定部14に前記ダイアフラム60を溶着する溶着工程では、前記ダイアフラム固定部14に前記ダイアフラム60を載置し、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック100を、前記ダイアフラム60側から押し当てることを特徴とする。
請求項9記載の本発明の有機溶剤用流体制御弁1、2の製造方法は、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の有機溶剤用流体制御弁1、2の製造方法であって、前記シール部材80を成形するシール部材成形工程では、PFAフィルム80xと架橋PTFEシート80yとを重ねて拡散接合する拡散接合工程と、前記拡散接合工程で拡散接合した前記PFAフィルム80xと前記架橋PTFEシート80yとの積層シートを、環状に型抜きする型抜き工程とを有することを特徴とする。
請求項10記載の本発明の有機溶剤用流体制御弁1、2の製造方法は、請求項6に記載の有機溶剤用流体制御弁1、2の製造方法であって、前記シール部材80を成形するシール部材成形工程では、前記PFAフィルム80xと前記架橋PTFEシート80yとを重ねて拡散接合する拡散接合工程と、前記拡散接合工程で拡散接合した前記PFAフィルム80xと前記架橋PTFEシート80yとの積層シートを加熱成形して前記環状突起80aを形成する成形工程と、前記成形工程で成形された前記積層シートを、環状に型抜きする型抜き工程とを有することを特徴とする。
請求項11記載の本発明は、請求項8に記載の有機溶剤用流体制御弁1、2の製造方法において、前記溶着工程では、前記ヒーティングブロック100の単位時間当たりの変位量が小さくなるタイミングで加熱を停止することを特徴とする。
請求項12記載の本発明は、請求項68記載の有機溶剤用流体制御弁1、2の製造方法において、前記溶着工程では、前記ヒーティングブロック100の単位時間当たりの変位量がマイナスになるタイミングで加熱を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の有機溶剤用流体制御弁によれば、耐摩耗性に優れて発塵量を減らすことができる架橋PTFEで形成したダイアフラムの外周部をダイアフラム固定部に隙間なく溶着することで、流路側ボディを流れる有機溶剤がダイアフラムの外周部とダイアフラム固定部との間に浸透することがなく、また、ダイアフラムの外周部とダイアフラム固定部とが摺動しないため発塵を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施例による有機溶剤用流体制御弁を示す断面図
図2】同有機溶剤用流体制御弁の弁閉状態を示す断面図
図3】本発明の第1の実施例による有機溶剤用流体制御弁に適した環状のシール部材の構成と製造工程とを示す端面図
図4】本発明の第2の実施例による有機溶剤用流体制御弁を示す断面図
図5】本発明の第2の実施例による有機溶剤用流体制御弁に適したダイアフラムの構成と製造工程とを示す端面図
図6】本発明の有機溶剤用流体制御弁の製造方法における、ダイアフラム固定部にダイアフラムを溶着する溶着工程に用いる装置を示す構成図
図7図3(b)に示す溶融による成形工程を示す構成図
図8図6に示す溶着工程における加熱の終了タイミングを示すグラフ
図9図6に示す溶着工程における他の加熱の終了タイミングを示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による有機溶剤用流体制御弁は、架橋PTFEで形成したダイアフラムの外周部が、PFAで形成した流路側ボディのダイアフラム固定部に隙間なく溶着されている。
本実施の形態によれば、耐摩耗性に優れて発塵量を減らすことができる架橋PTFEで形成したダイアフラムの外周部をダイアフラム固定部に隙間なく溶着することで、流路側ボディを流れる有機溶剤がダイアフラムの外周部とダイアフラム固定部との間に浸透することがなく、また、ダイアフラムの外周部とダイアフラム固定部とが摺動しないため発塵を無くすことができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による有機溶剤用流体制御弁において、弁体とダイアフラムとが架橋PTFEで一体に形成されている。
本実施の形態によれば、弁体とダイアフラムとを架橋PTFEで一体に形成することで、弁体とダイアフラムとの間での摩耗が発生せず、発塵量を減らすことができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による有機溶剤用流体制御弁において、弁体を、PFA又はPTFEからなるフッ素系樹脂で形成し、ダイアフラムの中心部が弁体に溶着されている。
本実施の形態によれば、架橋PTFEで形成するダイアフラムを弁体に溶着することで、弁体とダイアフラムとの間での摩耗が発生しない。また、弁体にはPFA又はPTFEからなるフッ素系樹脂を用いることで、架橋PTFEとの間で高分子の絡みによる摩擦接合の強度を越える接合強度を得ることができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1の実施の形態による有機溶剤用流体制御弁において、弁体が当接する弁座の弁座側当接部に、架橋PTFEからなる環状のシール部材が溶着されている。
本実施の形態によれば、架橋PTFEからなる環状のシール部材を溶着することで、弁体と弁座との接触部だけに、耐摩耗性に優れて発塵量を減らすことができる架橋PTFEを用いることができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による有機溶剤用流体制御弁において、シール部材は、PFAフィルムの一方の面に架橋PTFEシートを積層して構成され、PFAフィルムが弁座側当接部に溶着されている。
本実施の形態によれば、シール部材をPFAフィルムと架橋PTFEシートとによって薄いシート状に構成することで、メルトフローレートのばらつきが生じにくく、形状を維持して溶着でき、均質な接合強度を得ることができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第5の実施の形態による有機溶剤用流体制御弁において、弁座側当接部に溶着するシール部材に環状突起を形成し、環状突起は、PFAフィルムの厚みを異ならせることで形成され、架橋PTFEシートの厚みを一定としたものである。
本実施の形態によれば、シール部材に環状突起を形成することで、弁体と弁座との接触面積を少なくできるために発塵量を減らすことができ、形状加工がし難い架橋PTFEは厚み一定のシートとし、PFAフィルムの厚みを異ならせることによって環状突起を形成することで、環状突起を容易に形成できる。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第3の実施の形態による有機溶剤用流体制御弁において、ダイアフラムは、PFAフィルムの一方の面に架橋PTFEシートを積層して構成され、PFAフィルムが弁体に溶着されている。
本実施の形態によれば、ダイアフラムをPFAフィルムと架橋PTFEシートとによって薄いシート状に構成することで、メルトフローレートのばらつきが生じにくく、形状を維持して溶着でき、均質な接合強度を得ることができる。
【0016】
本発明の第8の実施の形態は、第1から第7のいずれかの実施の形態による有機溶剤用流体制御弁の製造方法において、ダイアフラム固定部にダイアフラムを溶着する溶着工程では、ダイアフラム固定部にダイアフラムを載置し、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロックを、ダイアフラム側から押し当てるものである。
本実施の形態によれば、架橋PTFEからなるダイアフラム側からヒーティングブロックによって直接加熱することで、架橋PTFEは軟化又は半溶解され、またPFAからなるダイアフラム固定部は、ダイアフラムからの加熱によって、ダイアフラムとの接触界面が加熱されて溶解されるため、強固な溶着を行える。また、架橋PTFEをダイアフラムとし、ヒーティングブロックを抵抗加熱で直接加熱することで、接触界面での温度制御を容易に行え、溶融面温度応答性の高い温度制御を実現できる。
【0017】
本発明の第9の実施の形態は、第4から第6のいずれかの実施の形態による有機溶剤用流体制御弁の製造方法において、シール部材を成形するシール部材成形工程では、PFAフィルムと架橋PTFEシートとを重ねて拡散接合する拡散接合工程と、拡散接合工程で拡散接合したPFAフィルムと架橋PTFEシートとの積層シートを、環状に型抜きする型抜き工程とを有するものである。
本実施の形態によれば、形状加工がし難い架橋PTFEを用いて、シール部材を形成することができる。
【0018】
本発明の第10の実施の形態は、第6の実施の形態による有機溶剤用流体制御弁の製造方法において、シール部材を成形するシール部材成形工程では、PFAフィルムと架橋PTFEシートとを重ねて拡散接合する拡散接合工程と、拡散接合工程で拡散接合したPFAフィルムと架橋PTFEシートとの積層シートを加熱成形して環状突起を形成する成形工程と、成形工程で成形された積層シートを、環状に型抜きする型抜き工程とを有するものである。
本実施の形態によれば、形状加工がし難い架橋PTFEを用いて、シール部材に環状突起を形成することができる。
【0019】
本発明の第11の実施の形態は、第8の実施の形態による有機溶剤用流体制御弁の製造方法において、溶着工程では、ヒーティングブロックの単位時間当たりの変位量が小さくなるタイミングで加熱を停止するものである。
本実施の形態によれば、ダイアフラム固定部が熱膨張しダイアフラムが溶融することでダイアフラムの高さが変化するため、ヒーティングブロックの単位時間当たりの変位量から、ヒーティングブロックの加熱停止のタイミングを決定することができる。そして、流路側ボディの容積が大きい場合には、ダイアフラムの溶着が完了した後にも熱膨張が継続するため、ヒーティングブロックの単位時間当たりの変位量が小さくなるタイミングで加熱を停止することで、ダイアフラムとダイアフラム固定部との溶着状態を一定に制御することができる。
【0020】
本発明の第12の実施の形態は、第8の実施の形態による有機溶剤用流体制御弁の製造方法において、溶着工程では、ヒーティングブロックの単位時間当たりの変位量がマイナスになるタイミングで加熱を停止するものである。
本実施の形態によれば、ダイアフラム固定部が熱膨張しダイアフラムが溶融することでダイアフラムの高さが変化するため、ヒーティングブロックの単位時間当たりの変位量から、ヒーティングブロックの加熱停止のタイミングを決定することができる。そして、流路側ボディの容積が小さい場合には、弁体側当接部又は弁座側当接部が熱膨張することによってヒーティングブロックが上方に移動した後に、熱膨張が飽和してダイアフラムの溶融によってヒーティングブロックが下方に移動するため、ヒーティングブロックの単位時間当たりの変位量がマイナスになるタイミングで加熱を停止することで、ダイアフラムとダイアフラム固定部との溶着状態を一定に制御することができる。
【実施例0021】
以下本発明の実施例による有機溶剤用流体制御弁について説明する。
図1は本発明の第1の実施例による有機溶剤用流体制御弁の弁開状態を示す断面図、図2は同有機溶剤用流体制御弁の弁閉状態を示す断面図である。
【0022】
本実施例による有機溶剤用流体制御弁1は、流路側ボディ10と、駆動側ボディ20とを有している。
流路側ボディ10は、被制御流体が流入する流入流路11と、被制御流体が流出する流出流路12と、流入流路11と流出流路12との間に位置する弁座13と、弁座13の外周に位置するダイアフラム固定部14とを内部に形成する。ダイアフラム固定部14は、弁座13を有する弁室の外周から立ち上がって形成される段差面である。
駆動側ボディ20は、ピストン30を配置するピストン用筒状空間21を内部に形成する。
【0023】
ピストン30の一端には弁体40が配置される。
弁体40の弁座13側にはダイアフラム60が配置され、弁体40はダイアフラム60を介して弁座13に当接する。
弁座13の弁体40側の端部は、弁体40が当接する弁座側当接部13aとなっている。
ピストン用筒状空間21には、ピストン30を付勢するピストン付勢手段50を有している。ピストン付勢手段50は、弁体40が弁座13に当接する方向にピストン30を付勢する。
ピストン30には、ピストン拡大部31を形成している。ピストン付勢手段50は、ピストン拡大部31を押圧することで、ピストン30を付勢する。ピストン付勢手段50には例えばコイルばねを用いることができる。
ピストン用筒状空間21の一端には、弁座13に対向する位置に開口部21xを形成している。
ダイアフラム60は、この開口部21xに配置され、ピストン用筒状空間21と弁座13とはダイアフラム60によって仕切られる。ダイアフラム60は、ダイアフラム60の外周部63が、流路側ボディ10の外周に位置するダイアフラム固定部14に溶着される。ダイアフラム60の外周部63が、ダイアフラム固定部14に溶着された状態では、ダイアフラム60の外周部63とダイアフラム固定部14との間には隙間はなく、ダイアフラム固定部14の全面に外周部63が溶着されている。
また、外周部63のピストン30側にはダイアフラム押え70が配置されている。なお、ダイアフラム押え70を設けなくてもよい。
【0024】
ダイアフラム60は、ピストン30の一端側で、弁体40の弁座13側に配置される。ピストン30の一端に弁体40が配置され、弁体40はダイアフラム60の中心に位置する。
本実施例では、弁体40とダイアフラム60とは、同一材料によって一体に成形されたものである。
ダイアフラム60は、ピストン30の移動に伴い変形する。
ダイアフラム60は、弁体40を構成してピストン30に繋がる中心部61と、中心部61の外周に形成される膜部62と、膜部62の外周に形成される外周部63とを有する。ダイアフラム60は、中心部61の中央部でピストン30と繋がり、膜部62が主に変形する。
【0025】
本実施例による有機溶剤用流体制御弁1は、流路側ボディ10を、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)で形成し、弁体40を一体に形成するダイアフラム60を、架橋PTFE(四フッ化エチレン樹脂)で形成している。
また、弁座側当接部13aには、架橋PTFEからなる環状のシール部材80が溶着されている。
【0026】
駆動側ボディ20には、エアー流通路22、23を形成している。エアー流通路22は、ダイアフラム60とピストン拡大部31との間のピストン用筒状空間21aに連通し、エアー流通路23は、ピストン付勢手段50が配置されるピストン用筒状空間21bに連通している。
【0027】
図1は、弁体40が全開状態を示している。
エアー流通路22からガスをピストン用筒状空間21aに供給することで、ピストン付勢手段50の付勢に対向する方向に圧力をピストン30に加える。従って、ピストン30は、弁体40を弁座13から離間させる方向に移動する。
弁体40が弁座13から離間することで、被制御流体が流入流路11から流入し、ダイアフラム60には被制御流体の圧力が加わる。ピストン用筒状空間21bのガスは、エアー流通路23から排出される。
また、弁体40を全開状態から閉状態とするには、ピストン用筒状空間21aにあるガスを、エアー流通路22から排出する。ガスをピストン用筒状空間21aから排出することで、ピストン用筒状空間21aの圧力は低下し、ピストン30はピストン付勢手段50の付勢によって弁座13に近接する方向に移動する。ピストン用筒状空間21bには、エアー流通路23からガスが吸入される。
図2に示すように、弁体40が閉状態では、ピストン付勢手段50の付勢によって弁体40が弁座13に当接するが、弁体40を構成する中心部61と弁座側当接部13aのシール部材80とが当接する。
【0028】
本実施例によれば、耐摩耗性に優れて発塵量を減らすことができる架橋PTFEで形成したダイアフラム60の外周部63をダイアフラム固定部14に隙間なく溶着することで、流路側ボディ10を流れる有機溶剤がダイアフラム60の外周部63とダイアフラム固定部14との間に浸透することがなく、また、ダイアフラム60の外周部63とダイアフラム固定部14とが摺動しないため発塵を無くすことができる。
また、本実施例によれば、弁体40とダイアフラム60とを架橋PTFEで一体に形成することで、弁体40とダイアフラム60との間での摩耗が発生せず、発塵量を減らすことができる。
また、本実施例によれば、弁体40を一体に形成するダイアフラム60と、弁座側当接部13aに溶着するシール部材80とを架橋PTFEで形成することで、弁体40と弁座13との接触部だけに、耐摩耗性に優れて発塵量を減らすことができる架橋PTFEを用いることができ、弁座13やダイアフラム固定部14を形成する流路側ボディ10にはPFAを用いることで、高分子の絡みによる摩擦接合の強度を越える接合強度を得ることができる。
【0029】
図3は本発明の第1の実施例による有機溶剤用流体制御弁に適した環状のシール部材の構成と製造工程とを示す端面図であり、図3(a)は拡散接合工程、図3(b)は溶融による成形工程、図3(c)は型抜き工程を示している。
環状のシール部材80は、PFAフィルム80xの一方の面に架橋PTFEシート80yを積層して構成される。PFAフィルム80xの厚さは0.3mm~0.6mm、架橋PTFEシート80yの厚さは0.05mm~0.3mmが好ましい。
図3(a)に示すように、PFAフィルム80xと架橋PTFEシート80yとを積層して拡散接合する。
そして、図3(b)に示すように、抵抗加熱によってPFAフィルム80xを溶融してヒーティングブロックにより成形する。この成形によってPFAフィルム80xの厚みを異ならせて環状突起80aを形成する。加熱温度を架橋PTFEの溶融温度以下とすることで、架橋PTFEシート80yは、厚みは一定でPFAフィルム80xの表面に沿って変形する。
その後に、図3(c)に示すように、型抜きによって環状のシール部材80とする。
PFAフィルム80xを弁座側当接部13aに溶着することで、環状のシール部材80は、弁座13に溶着する。
【0030】
このように、シール部材80を成形するシール部材成形工程では、PFAフィルム80xと架橋PTFEシート80yとを重ねて拡散接合する拡散接合工程と、拡散接合工程で拡散接合したPFAフィルム80xと架橋PTFEシート80yとの積層シートを加熱成形して環状突起80aを形成する成形工程と、成形工程で成形された積層シートを、環状に型抜きする型抜き工程とを有することで、形状加工がし難い架橋PTFEを用いて、シール部材80に環状突起80aを形成することができる。
また、シール部材80をPFAフィルム80xと架橋PTFEシート80yとによって、薄いシート状に構成することで、メルトフローレートのばらつきが生じにくく、形状を維持して溶着でき、均質な接合強度を得ることができる。
また、形状加工がし難い架橋PTFEは厚み一定のシートとし、PFAフィルム80xの厚みを異ならせることによって環状突起80aを形成することで、環状突起80aを容易に形成できる。
【0031】
図4は本発明の第2の実施例による有機溶剤用流体制御弁を示す断面図である。第1の実施例による有機溶剤用流体制御弁と同一構成部材には同一符号を付して説明を省略する。
本実施例による有機溶剤用流体制御弁2では、弁体40を、PFA又はPTFEからなるフッ素系樹脂で形成し、ダイアフラム60の中心部61を弁体40に溶着している。
このように、本実施例によれば、架橋PTFEで形成するダイアフラム60を弁体40に溶着することで、弁体40とダイアフラム60との間での摩耗が発生しない。また、弁体40にはPFA又はPTFEからなるフッ素系樹脂を用いることで、架橋PTFEとの間で高分子の絡みによる摩擦接合の強度を越える接合強度を得ることができる。
【0032】
図5は本発明の第2の実施例による有機溶剤用流体制御弁に適したダイアフラムの構成と製造工程とを示す端面図であり、図5(a)は拡散接合工程、図5(b)は型抜き工程を示している。
円状のダイアフラム60は、PFAフィルム60xの一方の面に架橋PTFEシート60yを積層して構成される。
図5(a)に示すように、PFAフィルム60xと架橋PTFEシート60yとを積層して拡散接合する。
そして、図5(b)に示すように、型抜きによって円状のダイアフラム60とする。
PFAフィルム60xを弁体40に溶着することで、円状のダイアフラム60の中心部61は、弁体40に溶着する。
【0033】
このように、ダイアフラム成形工程では、PFAフィルム60xと架橋PTFEシート60yとを重ねて拡散接合する拡散接合工程と、拡散接合工程で拡散接合したPFAフィルム60xと架橋PTFEシート60yとの積層シートを、円状に型抜きする型抜き工程とを有することで、形状加工がし難い架橋PTFEを用いて、ダイアフラム60を形成することができる。
また、円状のダイアフラム60をPFAフィルム60xと架橋PTFEシート60yとによって、薄いシート状に構成することで、メルトフローレートのばらつきが生じにくく、形状を維持して溶着でき、均質な接合強度を得ることができる。
【0034】
図6は本発明の有機溶剤用流体制御弁の製造方法における、ダイアフラム固定部にダイアフラムを溶着する溶着工程に用いる装置を示す構成図である。
ヒーティングブロック100には、ヒーターケーブル101が接続され、ヒーターケーブル101から電力が供給され、ヒーティングブロック100の端部100aは抵抗加熱によって直接加熱される。
ヒーティングブロック100は、可動ブロック102に取り付けられている。可動ブロック102には、溶着圧力調整用ウエイト103と可動ブロック引上げ用シリンダー104が取り付けられている。可動ブロック引上げ用シリンダー104は、固定プレート105に取り付けられ、固定プレート105は支柱106によって支持されている。
可動ブロック102は、溶着圧力調整用ウエイト103によって押し下げられ、可動ブロック引上げ用シリンダー104によって引き上げられる。
ヒーティングブロック100の端部100aには、端部100aの温度を検出する温度センサー107が設けられている。また、固定プレート105には可動ブロック102の変位を検出する変位センサー108が設けられている。
ダイアフラム固定部14にダイアフラム60を溶着する溶着工程では、ダイアフラム固定部14にダイアフラム60を載置し、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック100を、ダイアフラム60側から押し当てる。
架橋PTFEからなるダイアフラム60側からヒーティングブロック100によって直接加熱することで、架橋PTFEは軟化又は半溶解され、またPFAからなるダイアフラム固定部14は、ダイアフラム60からの加熱によって、ダイアフラム60との接触界面が加熱されて溶解されるため、強固な溶着を行える。また、ダイアフラム60を架橋PTFEとし、ヒーティングブロック100を抵抗加熱で直接加熱することで、接触界面での温度制御を容易に行え、溶融面温度応答性の高い温度制御を実現できる。
【0035】
図7図3(b)に示す溶融による成形工程を示す構成図である。なお、図7の成形工程に用いる装置構成は図6に示す構成と同一であるため、同一符号を付して説明を省略する。
図7に示す装置では、ヒーティングブロック100の端部100bに、環状突起80aを形成するための、環状凹部が形状されている。
治具上に、PFAフィルム80xと架橋PTFEシート80yとの積層シートを載置し、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック100を、架橋PTFEシート80y側から押し当てる。
このようにして、図3(b)に示す環状突起80aを形成することができる。
【0036】
図8図6に示す溶着工程における加熱の終了タイミングを示すグラフである。
図8では、縦軸が温度センサー107で検出されるヒーティングブロック100の温度、及び変位センサー108で検出されるヒーティングブロック100の変位量であり、横軸が時間である。
図6に示す溶着工程では、ダイアフラム固定部14にダイアフラム60の外周部63を溶着するものであり、ダイアフラム固定部14は流路側ボディ10に形成されているため、容積が大きく熱膨張が継続する。ダイアフラム固定部14の外周部63が加熱されることで、流路側ボディ10が熱膨張して外周部63の位置は高くなり、一方で外周部63が溶融することで外周部63の上面は低くなる。
すなわち、流路側ボディ10のように容積が大きい場合には、外周部63の溶着が完了した後にも熱膨張が継続するため、変位センサー108で検出される変位は増加しつづけるが、変位センサー108で検出される単位時間当たりの変位量は、外周部63の溶融によって小さくなる。
従って、ヒーティングブロック100の単位時間当たりの変位量が小さくなるタイミングで加熱を停止することで、外周部63とダイアフラム固定部14との溶着状態を一定に制御することができる。
このように、ダイアフラム固定部14が熱膨張し外周部63が溶融することで外周部63の高さが変化するため、ヒーティングブロック100の単位時間当たりの変位量から、ヒーティングブロック100の加熱停止のタイミングを決定することができる。
加熱を停止した後には、エアー吹付けによりヒーティングブロック100を冷却する。冷却は自然冷却でもよい。
【0037】
図9図6に示す溶着工程における他の加熱の終了タイミングを示すグラフである。
図9では、縦軸が温度センサー107で検出されるヒーティングブロック100の温度、及び変位センサー108で検出されるヒーティングブロック100の変位量であり、横軸が時間である。
本実施例は、流路側ボディ10の容積が小さく熱膨張が飽和する場合に適している。
すなわち、流路側ボディ10の容積が小さい場合には、ダイアフラム固定部14が加熱され、流路側ボディ10が熱膨張することによってヒーティングブロック100が上方に移動した後に、熱膨張が飽和して外周部63の溶融によってヒーティングブロック100が下方に移動する。
従って、ヒーティングブロック100の単位時間当たりの変位量がマイナスになるタイミングで加熱を停止することで、外周部63とダイアフラム固定部14との溶着状態を一定に制御することができる。
このように、ダイアフラム固定部14が熱膨張しダイアフラム60の外周部63が溶融することで外周部63の高さが変化するため、ヒーティングブロック100の単位時間当たりの変位量から、ヒーティングブロック100の加熱停止のタイミングを決定することができる。
加熱を停止した後には、エアー吹付けによりヒーティングブロック100を冷却する。冷却は自然冷却でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、特に半導体製造分野におけるシリコンウェハプロセスの洗浄や剥離工程において用いられる有機溶剤用流体制御弁に適している。
【符号の説明】
【0039】
1、2 有機溶剤用流体制御弁
10 流路側ボディ
11 流入流路
12 流出流路
13 弁座
13a 弁座側当接部
14 ダイアフラム固定部
20 駆動側ボディ
21、21a、21b ピストン用筒状空間
21x 開口部
22、23 エアー流通路
30 ピストン
31 ピストン拡大部
40 弁体
50 ピストン付勢手段
60 ダイアフラム
60x PFAフィルム
60y 架橋PTFEシート
61 中心部
62 膜部
63 外周部
70 ダイアフラム押え
80 シール部材
80a 環状突起
80x PFAフィルム
80y 架橋PTFEシート
100 ヒーティングブロック
101 ヒーターケーブル
100a、100b 端部
102 可動ブロック
103 溶着圧力調整用ウエイト
104 可動ブロック引上げ用シリンダー
105 固定プレート
106 支柱
107 温度センサー
108 変位センサー

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9