IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トライポッド・デザイン株式会社の特許一覧

特開2024-112330電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール
<>
  • 特開-電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール 図1
  • 特開-電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール 図2
  • 特開-電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール 図3
  • 特開-電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール 図4
  • 特開-電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール 図5
  • 特開-電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール 図6
  • 特開-電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール 図7
  • 特開-電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール 図8
  • 特開-電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール 図9
  • 特開-電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール 図10
  • 特開-電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール 図11
  • 特開-電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール 図12
  • 特開-電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール 図13
  • 特開-電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール 図14
  • 特開-電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール 図15
  • 特開-電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112330
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】電池、電解質シート、セパレーター、及び電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240814BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20240814BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240814BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240814BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240814BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20240814BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0565
H01M10/0562
H01M10/052
H01M50/414
H01M50/463 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101933
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】399131116
【氏名又は名称】トライポッド・デザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 寛崇
(72)【発明者】
【氏名】大野 栄一
【テーマコード(参考)】
5H021
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H021CC02
5H021EE02
5H028AA05
5H028AA06
5H028CC11
5H028EE04
5H028EE06
5H028FF09
5H028HH01
5H028HH10
5H029AJ02
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL16
5H029AM07
5H029AM12
5H029AM16
5H029BJ12
5H029CJ05
5H029DJ04
5H029EJ03
5H029HJ12
5H029HJ20
(57)【要約】
【課題】
充放電後も電解質部のイオン濃度分布が均一に保たれる電池を提供すること、及び高電圧を出力することのできる電池モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】
正極と、電解質部と、負極とが積層して形成された電池であって、正極と電解質部が接する面及び/又は負極と電解質部が接する面に垂直な方向(厚み方向)の電解質部のイオン伝導度σと、正極と電解質部が接する面及び/又は負極と電解質部が接する面に平行な方向(面内方向)の電解質部のイオン伝導度σ||との比σ/σ||が、10以上である、電池。
【選択図】 図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、電解質部と、負極とが積層して形成された電池であって、
正極と電解質部が接する面及び/又は負極と電解質部が接する面に垂直な方向(厚み方向)の電解質部のイオン伝導度σと、正極と電解質部が接する面及び/又は負極と電解質部が接する面に平行な方向(面内方向)の電解質部のイオン伝導度σ||との比σ/σ||が、10以上である、電池。
【請求項2】
電解質部が、低イオン伝導領域と高イオン伝導領域を有するものであり、
高イオン伝導領域が、電解質部の面内方向の少なくとも一部に非連続であり、
高イオン伝導領域の一部又は全部が、電解質部の厚み方向に連続である、
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
電解質部の高イオン伝導領域のイオン伝導度σEHと低イオン伝導領域のイオン伝導度σELの比σEH/σELが、10以上である、
請求項2に記載の電池。
【請求項4】
電解質部の高イオン伝導領域が、固体電解質で形成されており、
電解質部の低イオン伝導領域が、樹脂で形成されている、
請求項2又は3に記載の電池。
【請求項5】
固体電解質が、有機材料と溶媒と電解質を含むゲル電解質である、
請求項4に記載の電池。
【請求項6】
電解質部に含まれる樹脂が、固体電解質粒子を分散して含むものである、
請求項4又は5に記載の電池。
【請求項7】
固体電解質が、電解質部と正極の界面及び電解質部と負極の界面に露出し、正極及び負極と直接接触する、
請求項4~6のいずれかに記載の電池。
【請求項8】
電解質部が、セパレーターを含むものであり、
セパレーターが、少なくとも一部分に樹脂を含むものであり、
低イオン伝導領域が、セパレーター中の樹脂を含む領域であり、
高イオン伝導領域が、セパレーター中の樹脂を含まない領域である、
請求項2~7のいずれかに記載の電池。
【請求項9】
樹脂が、粘着性又は接着性を有するものである、
請求項4~8のいずれかに記載の電池。
【請求項10】
樹脂が、シリコーン樹脂である、
請求項4~9のいずれかに記載の電池。
【請求項11】
樹脂が、セパレーターに、メッシュ状、ストライプ状、ハニカム状、丸孔状、又は角孔状に形成された、
請求項8~10に記載の電池。
【請求項12】
イオン伝導性を有するシート状の部材からなる電解質シートであって、
電解質シートの面に垂直な方向(厚み方向)の電解質シートのイオン伝導度σと、電解質シートの面に平行な方向(面内方向)の電解質シートのイオン伝導度σ||との比σ/σ||が、10以上である、電解質シート。
【請求項13】
電解質シートが、低イオン伝導領域と高イオン伝導領域を有するものであり、
高イオン伝導領域が、電解質シートの面内方向の少なくとも一部に非連続であり、
高イオン伝導領域の一部又は全部が、電解質シートの厚み方向に連続である、
請求項12に記載の電解質シート。
【請求項14】
電解質シートの高イオン伝導領域が、固体電解質で形成されており、
電解質シートの低イオン伝導領域が、樹脂で形成されている、
請求項13に記載の電解質シート。
【請求項15】
固体電解質が、有機材料と溶媒と電解質を含むゲル電解質である、
請求項14に記載の電解質シート。
【請求項16】
電解質シートに含まれる樹脂が、固体電解質粒子を分散して含むものである、
請求項14又は15に記載の電解質シート。
【請求項17】
固体電解質が、電解質シートの表面に露出した、
請求項14~16のいずれかに記載の電解質シート。
【請求項18】
電解質シートが、セパレーターを含むものであり、
セパレーターが、少なくとも一部分に樹脂を含むものであり、
低イオン伝導領域が、セパレーター中の樹脂を含む領域であり、
高イオン伝導領域が、セパレーター中の樹脂を含まない領域である、
請求項13~17のいずれかに記載の電解質シート。
【請求項19】
樹脂が、粘着性又は接着性を有するものである、
請求項14~18のいずれかに記載の電解質シート。
【請求項20】
樹脂が、シリコーン樹脂である、
請求項14~19のいずれかに記載の電解質シート。
【請求項21】
樹脂が、セパレーターに、メッシュ状、ストライプ状、ハニカム状、丸孔状、又は角孔状に形成された、
請求項18~20に記載の電解質シート。
【請求項22】
樹脂が、メッシュ状、ストライプ状、ハニカム状、丸孔状、又は角孔状に形成された、セパレーター。
【請求項23】
請求項1~11のいずれかに記載の電池を2つ以上直列接続して形成された電池モジュールであって、
該電池が、共通の電解質部を有し、電解質部の面内方向に平行な方向に並んで形成された、
電池モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の一部の電池は、正極とセパレーターと負極とを巻回し、電解液を含侵させた構造をしている。電池の充放電特性やサイクル特性の向上、発熱の抑制のためには、対向する位置にある正極活物質と負極活物質の目付量を同一にすること、並びに正極及び負極の全面にわたって目付量が均一であることが重要であると考えられている。
【0003】
特許文献1では、リチウムイオン二次電池用電極の製造方法に関して、集電体の上にバインダーを間欠的に塗工し、その上から活物質を塗工することで目付量のバラツキを抑制できることが開示されている。
【0004】
しかしながら、リチウムイオン二次電池の充放電を繰り返した場合は、電解液中をイオンが移動することでイオン濃度が不均一となる。そして、このイオン濃度のバラツキが原因となり活物質の劣化度合が不均一となるため、電池反応に有効な活物質の量が位置によって不均一となるという問題がある。電池反応に有効な活物質の量が不均一となった場合、充放電容量やサイクル特性が劣化する、内部抵抗が上昇する、充放電反応が局所的に発生することで発熱する等の問題が発生することがある。
【0005】
また、巻回型の電池を一次電池として用いる場合、電解液のイオン濃度にバラツキが生じると、活物質の消費量も不均一となり、放電に伴い内部抵抗が上昇し、高抵抗な放電によって発熱するという問題が発生することがある。
【0006】
電池は、デバイスを駆動するためのエネルギー源としても最も身近なものである。代表的なデバイスと、その駆動電圧を例示すると、例えば、LED(発光ダイオード)の順方向電圧は2V~3V程度、ICの駆動電圧は3.3Vや5V、パーソナルコンピュータの動作電圧は19V程度である。このように、ほとんどのデバイスは2V以上の電圧によって駆動される。
【0007】
一方、代表的な電池として、正極に酸化マンガン、負極に亜鉛、電解液として塩化亜鉛水溶液を用いたマンガン電池が挙げられる。マンガン電池の出力電圧は約1.5Vであり、これ単体では前述するようなデバイスは駆動できない。電池を用いて高電圧を得る方法は多く存在し、代表的なものとして、電池の直列接続、標準電極電位差の大きい電極を用いた電池が挙げられる。
【0008】
直列接続により高電圧を得る方法としては、複数の電池を、電池の外部で配線することで直列接続することが一般的である。例えば、直列接続されるように配線された電池ホルダーに複数の電池を入れる方法、複数の電池を直列接続し、改めて1つのパッケージに封入しプラス極とマイナス極を外部に露出させる方法がある。1.5Vの乾電池を6つ直列接続し、1つのパッケージに封入した9V電池等が広く市販されている。
【0009】
しかしながらこの方法では、各乾電池のパッケージ以外に、それらを外部で接続し一体化させるためのホルダー又はパッケージが必要であり、材料の無駄が多いという問題があった。さらに、一体化させる乾電池と乾電池の間に隙間が生じるため空間利用効率が低いという問題もあった。
【0010】
また、特許文献2では、絶縁性の側壁を有する電気化学エレメントを水平方向に配置し、各電気化学エレメントを直列接続し、1つのパッケージに封入することで高電圧を出力する電池とする構成が開示されている。この方法であれば、複数の電気化学エレメントを電池内部で直列接続できるため、パッケージ材料を減らすことができる。しかしながら、電気化学エレメント同士を側壁により絶縁しなければならず、製造の難易度は非常に高い。
【0011】
また、特許文献3では、集電体の片方の面に正極、もう一方の面に負極を形成した電極を、ゲル電解質部を介して積層することで電気化学エレメント直列接続し、1つのパッケージに封入することで高電圧電池とする構成が開示されている。しかしながら、電極及びゲル電解質部を確実に絶縁するために、高い位置精度でシール材料を配置しなければならず、製造の難易度は非常に高く、その製造装置も市場には流通していない。さらに、シール材料が外部応力によって剥離することが示唆されている。剥離後、電解質部がショートすることで出力電圧が低下する可能性が考えられる。
【0012】
標準電極電位差の大きい電極を用いた電池として、正極にコバルト酸リチウム、負極にカーボン、電解液としてリチウム塩を溶解させた有機溶媒を用いたリチウムイオン電池(LIB)が実用化されている。一般的なLIBの開放電圧は3.6V程度である。また、特許文献4では、開放電圧が4.75Vになる、スピネル系結晶構造を有するリチウム金属複合酸化物を用いたLIBの構成が開示されている。しかしながら、電解質部の電気分解のため4.75V以上の電圧を得ることは不可能である。さらに、電解液として有機溶剤を使用するため、発火・爆発の危険性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2016-100303号公報
【特許文献2】特開2020-24922号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0091771号明細書
【特許文献4】国際公開第2015/083481号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、充放電後も電解質部のイオン濃度分布が均一に保たれる電池を提供すること、及び高電圧を出力することのできる電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、以下の[1]~[23]により、達成される。
[1]正極と、電解質部と、負極とが積層して形成された電池であって、正極と電解質部が接する面及び/又は負極と電解質部が接する面に垂直な方向(厚み方向)の電解質部のイオン伝導度σと、正極と電解質部が接する面及び/又は負極と電解質部が接する面に平行な方向(面内方向)の電解質部のイオン伝導度σ||との比σ/σ||が、10以上である、電池;
[2]電解質部が、低イオン伝導領域と高イオン伝導領域を有するものであり、高イオン伝導領域が、電解質部の面内方向の少なくとも一部に非連続であり、高イオン伝導領域の一部又は全部が、電解質部の厚み方向に連続である、前記[1]に記載の電池;
[3]電解質部の高イオン伝導領域のイオン伝導度σEHと低イオン伝導領域のイオン伝導度σELの比σEH/σELが、10以上である、前記[2]に記載の電池;
[4]電解質部の高イオン伝導領域が、固体電解質で形成されており、電解質部の低イオン伝導領域が、樹脂で形成されている、前記[2]又は[3]に記載の電池;
[5]固体電解質が、有機材料と溶媒と電解質を含むゲル電解質である、前記[4]に記載の電池;
[6]電解質部に含まれる樹脂が、固体電解質粒子を分散して含むものである、前記[4]または[5]に記載の電池;
[7]固体電解質が、電解質部と正極の界面及び電解質部と負極の界面に露出し、正極及び負極と直接接触する、前記[4]~[6]のいずれかに記載の電池;
[8]電解質部が、セパレーターを含むものであり、セパレーターが、少なくとも一部分に樹脂を含むものであり、低イオン伝導領域が、セパレーター中の樹脂を含む領域であり、高イオン伝導領域が、セパレーター中の樹脂を含まない領域である、前記[2]~[7]のいずれかに記載の電池;
[9]樹脂が、粘着性又は接着性を有するものである、前記[4]~[8]のいずれかに記載の電池;
[10]樹脂が、シリコーン樹脂である、前記[4]~[9]のいずれかに記載の電池;
[11]樹脂が、セパレーターに、メッシュ状、ストライプ状、ハニカム状、丸孔状、又は角孔状に形成された、前記[8]~[10]に記載の電池;
[12]イオン伝導性を有するシート状の部材からなる電解質シートであって、電解質シートの面に垂直な方向(厚み方向)の電解質シートのイオン伝導度σと、電解質シートの面に平行な方向(面内方向)の電解質シートのイオン伝導度σ||との比σ/σ||が、10以上である、電解質シート;
[13]電解質シートが、低イオン伝導領域と高イオン伝導領域を有するものであり、高イオン伝導領域が、電解質シートの面内方向の少なくとも一部に非連続であり、高イオン伝導領域の一部又は全部が、電解質シートの厚み方向に連続である、前記[12]に記載の電解質シート;
[14]電解質シートの高イオン伝導領域が、固体電解質で形成されており、電解質シートの低イオン伝導領域が、樹脂で形成されている、前記[13]に記載の電解質シート;
[15]固体電解質が、有機材料と溶媒と電解質を含むゲル電解質である、前記[14]に記載の電解質シート;
[16]電解質シートに含まれる樹脂が、固体電解質粒子を分散して含むものである、
前記[14]又は[15]に記載の電解質シート;
[17]固体電解質が、電解質シートの表面に露出した、前記[14]~[16]のいずれかに記載の電解質シート;
[18]電解質シートが、セパレーターを含むものであり、セパレーターが、少なくとも一部分に樹脂を含むものであり、低イオン伝導領域が、セパレーター中の樹脂を含む領域であり、高イオン伝導領域が、セパレーター中の樹脂を含まない領域である、前記[13]~[17]のいずれかに記載の電解質シート;
[19]樹脂が、粘着性又は接着性を有するものである、前記[14]~[18]のいずれかに記載の電解質シート;
[20]樹脂が、シリコーン樹脂である、前記[14]~[19]のいずれかに記載の電解質シート;
[21]樹脂が、セパレーターに、メッシュ状、ストライプ状、ハニカム状、丸孔状、又は角孔状に形成された、前記[18]~[20]に記載の電解質シート;
[22]樹脂が、メッシュ状、ストライプ状、ハニカム状、丸孔状、又は角孔状に形成された、セパレーター;
[23]前記[1]~[11]のいずれかに記載の電池を2つ以上直列接続して形成された電池モジュールであって、該電池は共通の電解質部を有し、該電池は電解質部の面内方向に平行な方向に並んで形成された、電池モジュール。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態にかかる、電解質部の厚み方向及び面内方向のイオン伝導度を説明するための図である。
図2】本発明の実施の形態にかかる、電池の断面の模式図の一例を表す図である。
図3】本発明の実施の形態にかかる、電池の断面の模式図の一例を表す図である。
図4】本発明の実施の形態にかかる、電池の断面の模式図の一例を表す図である。
図5】本発明の実施の形態にかかる、電池の断面の模式図の一例を表す図である。
図6】本発明の実施の形態にかかる、セパレーターに形成される樹脂のパターンの例を表す図である。
図7】本発明の実施の形態にかかる、電池の作製手順の一例を表す図である。
図8】本発明の実施の形態にかかる、電池の作製手順の一例を表す図である。
図9】本発明の実施の形態にかかる、電解質シートの断面の模式図の一例を表す図である。
図10】本発明の実施の形態にかかる、電解質シートの断面の模式図の一例を表す図である。
図11】本発明の実施の形態にかかる、電池モジュールの断面の模式図の一例を表す図である。
図12】実施例1のセパレーターのパターニングを説明するための図である。
図13】実施例2の電極の配置を説明するための図である。
図14】実施例2の電池の放電特性を示す図である。
図15】比較例2の電池の放電特性を示す図である。
図16】実施例5の電極の配置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について以下詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものでなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0018】
(基本要件)
本実施形態の電池は、正極と、電解質部と、負極とが順次積層して形成された電池であって、正極と電解質部が接する面及び/又は負極と電解質部が接する面に垂直な方向(厚み方向)の電解質部のイオン伝導度σと、正極と電解質部が接する面及び/又は負極と電解質部が接する面に平行な方向(面内方向)の電解質部のイオン伝導度σ||との比σ/σ||が10以上である電池である。このような構成をとることによって、充放電時に生じる電解質部内でのイオンの濃度分布のバラツキを抑制することができ、内部抵抗の上昇の抑制、充放電に伴う発熱の抑制、二次電池の充放電容量の向上、二次電池のサイクル特性の向上などの効果が得られる。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態にかかる、電解質部の厚み方向及び面内方向のイオン伝導度を説明するための図である。図1(a)は、本実施形態の電池の、正極、電解質部、及び負極を含む断面の模式図の一例を表す図である。図1(a)では、正極1と、電解質部2と、負極3とが順次積層されている。正極1、電解質部2及び負極3のそれぞれは、シート状の形状を有している。正極1と電解質部2が接する面と、負極3と電解質部2が接する面の大きさは等しいものとする。また、正極1と電解質部2が接する面と、負極3と電解質部2が接する面は、平行である。
【0020】
図1(a)において厚み方向と示した方向、すなわち、正極1と電解質部2が接する面及び負極3と電解質部2が接する面に垂直な方向の電解質部2のイオン伝導度を、イオン伝導度σとする。
【0021】
図1(a)において、面内方向と示した方向は、正極1と電解質部2が接する面及び負極3と電解質部2が接する面に平行な方向である。電解質部2の面内方向は、電解質部2の断面の模式図においては一方向に定められるが、電解質部2の上面図においては複数存在し、一方向に定めることができない。
【0022】
図1(b)は、電解質部の上面図の一例を表す図である。ここでは、電解質部2の、正極1と接する面を上面とする。図1(b)では、電解質部2は、イオン伝導度が低い領域、すなわち、低イオン伝導領域21と、イオン伝導度が高い領域、すなわち、高イオン伝導領域22を有している。図1(b)において、細かな水玉模様が施されている領域が低イオン伝導領域21であり、模様が施されていない領域が高イオン伝導領域22である。
【0023】
図1(b)の低イオン伝導領域21及び高イオン伝導領域22は、厚み方向に途切れておらず、厚み方向に連続して形成されている。そのため、電解質部2の、負極3と接する面を表す図も、図1(b)と同様の図となる。図1(b)において、面内方向には、例えば、面内方向1と示した方向と、面内方向2と示した方向が存在する。
【0024】
図1(b)の面内方向1と示した方向においては、高イオン伝導領域22が連続しているため、イオンが伝導しやすく、イオン伝導度は高くなる。一方、図1(b)の面内方向2と示した方向においては、低イオン伝導領域21を挟むことで高イオン伝導領域22が非連続となっているため、イオンが伝導しにくく、イオン伝導度は低くなる。
【0025】
上記のように、面内方向の電解質部2のイオン伝導度であっても、その方向によってイオン伝導度が異なる場合は、より低いイオン伝導度を、面内方向の電解質部2のイオン伝導度σ||と定義する。この場合に、最も低いイオン伝導度を、面内方向の電解質部2のイオン伝導度σ||と定義することができる。電解質部2の面内方向のイオン伝導度σ||は、電解質部2の面内方向のうち、低イオン伝導領域21と交差する方向のイオン伝導度であり得る。
【0026】
例えば、図1(b)において、電解質部2の面内方向には、面内方向1と示した方向と面内方向2と示した方向以外にも、面内方向3と示した方向も存在する。図1(b)において面内方向3と示した方向においても、低イオン伝導領域21を挟むことで高イオン伝導領域22が非連続となっているため、イオンが伝導しにくく、イオン伝導度は低くなる。
【0027】
そのため、図1(b)における面内方向の電解質部2のイオン伝導度σ||は、面内方向1と示した方向ではなく、面内方向2と示した方向、又は面内方向3と示した方向のイオン伝導度となる。
【0028】
厚み方向の電解質部2のイオン伝導度σは、電解質部2の高イオン伝導領域22におけるイオン伝導度と略等しく、例えば、図1(a)の厚み方向と示した方向に垂直な2つの面のそれぞれに接触するように、2つの電極を配置し、この電極間でイオン伝導度を測定することにより得られる。
【0029】
また、面内方向の電解質部2のイオン伝導度σ||は、高イオン伝導領域22が非連続となる2点間におけるイオン伝導度と略等しく、例えば、図1(b)の面内方向2と示した方向に垂直な2つの面のそれぞれに接触するように、2つの電極を配置し、この電極間でイオン伝導度を測定する方法、又は、高イオン伝導領域22が非連続となるような、面内方向2と示した方向に離れた位置であって、厚み方向に垂直な面上の位置に、2つの電極を配置し、この電極間でイオン伝導度を測定する方法により得られる。この場合、前記2点のうち、1の点と接している高イオン伝導領域22と、他の点と接している高イオン伝導領域22とが、低イオン伝導領域21により遮られ、非連続となっている。
【0030】
電解質部2のイオン伝導度の比σ/σ||が10以上となるためには、例えば、電解質部2が、低イオン伝導領域21と高イオン伝導領域22を有するものであり、高イオン伝導領域22が、電解質部2の面内方向の少なくとも一部に非連続であり、高イオン伝導領域22の一部又は全部が、電解質部2の厚み方向に連続であることが好ましい。
【0031】
電解質部2において、高イオン伝導領域22は、低イオン伝導領域21によって複数に分けられており、互いに非連続であってもよい。
【0032】
電解質部2のイオン伝導度の比σ/σ||は、10以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、1,000以上であることがさらに好ましい。
【0033】
電解質部2のイオン伝導度の比σ/σ||は、10以上であれば、小電流での充放電時に生じるイオンの濃度分布のバラツキを抑制し、電池反応の位置による均一化及び活物質の劣化を均一化することができる。また、電解質部2のイオン伝導度の比σ/σ||は、100以上であれば、大電流での充放電時に生じるイオンの濃度分布のバラツキを抑制し、電池反応の位置による均一化及び活物質の劣化を均一化することができる。さらに、電解質部2のイオン伝導度の比σ/σ||は、1,000以上であれば、1つのパッケージ内で複数のセルを直列に接続しても高い電圧を得ることができる。
【0034】
また、電解質部2のイオン伝導度の比σ/σ||は、1021以下であることが好ましく、1015以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。
【0035】
電解質部2の厚み方向のイオン伝導度σは、0.01mS/cm以上であることが好ましく、1mS/cm以上であることがより好ましく、10mS/cm以上であることがさらに好ましい。また、電解質部2の厚み方向のイオン伝導度σは、1,000mS/cm以下であることが好ましく、100mS/cm以下であることがより好ましく、50mS/cm以下であることがさらに好ましい。
【0036】
電解質部2の面内方向のイオン伝導度σ||は、1mS/cm以下であることが好ましく、0.1mS/cm以下であることがより好ましく、10-3mS/cm以下であることがさらに好ましい。また、電解質部2の面内方向のイオン伝導度σ||は、10-21mS/cm以上であることが好ましく、10-15mS/cm以上であることがより好ましく、10-9mS/cm以上であることがさらに好ましい。
【0037】
(電解質部)
電解質部2は、イオン伝導性を有する部材からなる。
【0038】
電解質部2の形態としては、特に限定はないが、液体、固体、ゲル及びこれらを組み合わせた形態等を利用できる。
【0039】
電解質部2を構成する材料に特に限定はないが、電解質、固体電解質、溶媒、セパレーター、樹脂、添加剤等を利用できる。
【0040】
電解質部2の厚さは特に限定されない。電解質部2の厚さは、電解質部2の位置によらず同一の厚さであってもよく、電解質部2の位置によって異なる厚さであってもよい。電解質部2の厚さは、例えば、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。電解質部2の厚さは、例えば、1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましく、0.1m以下であることがさらに好ましい。
【0041】
電解質部2は、電解質部2の内部に、イオン伝導度の異なる領域を有するものであってもよい。イオン伝導度の異なる領域のうち、よりイオン伝導度が低い領域を低イオン伝導領域21とし、よりイオン伝導度が高い領域を高イオン伝導領域22とする。つまり、電解質部2は、低イオン伝導領域21と高イオン伝導領域22を有していてもよい。
【0042】
電解質部2の低イオン伝導領域21のイオン伝導度σELは、1mS/cm以下であることが好ましく、0.1mS/cm以下であることがより好ましく、10-3mS/cm以下であることがさらに好ましい。また、電解質部2の低イオン伝導領域21のイオン伝導度σELは、10-21mS/cm以上であることが好ましく、10-15mS/cm以上であることがより好ましく、10-9mS/cm以上であることがさらに好ましい。
【0043】
電解質部2の高イオン伝導領域22のイオン伝導度σEHは、0.01mS/cm以上であることが好ましく、1mS/cm以上であることがより好ましく、10mS/cm以上であることがさらに好ましい。また、電解質部2の高イオン伝導領域22のイオン伝導度σEHは、1,000mS/cm以下であることが好ましく、100mS/cm以下であることがより好ましく、50mS/cm以下であることがさらに好ましい。
【0044】
電解質部2の高イオン伝導領域22のイオン伝導度と電解質部2の低イオン伝導領域21のイオン伝導度との比σEH/σELは、10以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、1,000以上であることがさらに好ましい。
【0045】
イオン伝導度の比σEH/σELは、10以上であれば小電流での充放電時に生じるイオンの濃度分布のバラツキを抑制し、電池反応の位置による均一化及び活物質の劣化を均一化することができる。また、イオン伝導度の比σEH/σELは、100以上であれば大電流での充放電時に生じるイオンの濃度分布のバラツキを抑制し、電池反応の位置による均一化及び活物質の劣化を均一化することができる。さらに、イオン伝導度の比σEH/σELは、1,000以上であれば1つのパッケージ内で複数のセルを直列に接続しても高い電圧を得ることができる。
【0046】
また、電解質部2の高イオン伝導領域22のイオン伝導度と電解質部2の低イオン伝導領域21のイオン伝導度との比σEH/σELは、1021以下であることが好ましく、1015以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。
【0047】
電解質部2が、電解質部2の内部に、イオン伝導度の異なる領域を3つ以上有する場合には、イオン伝導度の比が10以上となるような少なくとも2つの領域が含まれることが好ましい。そして、イオン伝導度の比が10以上となるような少なくとも2つの領域のうち、よりイオン伝導度が低い領域を低イオン伝導領域21とし、よりイオン伝導度が高い領域を高イオン伝導領域22としてもよい。
【0048】
電解質部2の高イオン伝導領域22は、電解質部2の面内方向の少なくとも一部に非連続であってもよい。また、高イオン伝導領域22の一部又は全部が、電解質部2の厚み方向に連続であってもよい。
【0049】
電解質部2において、高イオン伝導領域22は低イオン伝導領域21によって複数に分けられており、互いに非連続であってもよい。
【0050】
図2は、本発明の実施の形態にかかる、電池の断面の模式図の一例を表す図である。図2は、本実施形態の電池の、正極1、電解質部2、及び負極3を含む断面の模式図である。図2では、正極1と、電解質部2と、負極3とが順次積層されている。正極1、電解質部2及び負極3のそれぞれは、シート状の形状を有している。また、正極1と電解質部2が接する面と、負極3と電解質部2が接する面は、平行である。
【0051】
図2の電解質部2は、低イオン伝導領域21と高イオン伝導領域22を有している。図2において、細かな水玉模様が施されている領域が低イオン伝導領域21であり、模様が施されていない領域が高イオン伝導領域22である。高イオン伝導領域22は、電解質部2の厚み方向に途切れておらず、厚み方向に連続である。
【0052】
電解質部2の高イオン伝導領域22が電解質部2の面内方向の少なくとも一部に非連続であることで、電解質部2の面内方向のイオン伝導度が低イオン伝導領域21の伝導度に支配されることとなり、面内方向のイオン伝導度を低くすることができる。また、高イオン伝導領域22の一部又は全部が電解質部2の厚み方向に連続であることで、電解質部2の厚み方向のイオン伝導度が高イオン伝導領域22の伝導度に支配されることとなり、厚み方向のイオン伝導度を高くすることができる。
【0053】
高イオン伝導領域22の一部又は全部が、電解質部2の厚み方向に連続である場合、厚み方向に連続である一つの高イオン伝導領域22の、電極1又は電極3に接する面の面積は、10cm以下であることが好ましく、1cm以下であることがより好ましく、0.01cm以下であることがさらに好ましい。
【0054】
また、高イオン伝導領域22の一部又は全部が、電解質部2の厚み方向に連続である場合、厚み方向に連続である一つの高イオン伝導領域22の、電極1又は電極3に接する面の面積は、10-8cm以上であることが好ましく、10-6cm以上であることがより好ましく、10-4cm以上であることがさらに好ましい。
【0055】
電解質部2の高イオン伝導領域22としては、電解液及び固体電解質を用いることができる。固体電解質は、流動性がないため、充放電反応後のイオン濃度のバラツキが生じにくく好ましい。
【0056】
電解質部2の高イオン伝導領域22として用いる電解液及び固体電解質のイオン伝導度は、0.01mS/cm以上であることが好ましく、1mS/cm以上であることがより好ましく、10mS/cm以上であることがさらに好ましい。また、電解質部2の高イオン伝導領域22として用いる電解液及び固体電解質のイオン伝導度は、1,000mS/cm以下であることが好ましく、100mS/cm以下であることがより好ましく、50mS/cm以下であることがさらに好ましい。
【0057】
電解質部2の低イオン伝導領域21は、加工性の観点から、樹脂で形成されることが好ましい。電解質部2の低イオン伝導領域21として用いる樹脂は、特に限定はないが、イオン伝導度が低いことが好ましい。
【0058】
電解質部2の低イオン伝導領域21として用いる樹脂のイオン伝導度は、1mS/cm以下であることが好ましく、0.1mS/cm以下であることがより好ましく、10-3mS/cm以下であることがさらに好ましい。また、電解質部2の低イオン伝導領域21として用いる樹脂のイオン伝導度は、10-21mS/cm以上であることが好ましく、10-15mS/cm以上であることがより好ましく、10-9mS/cm以上であることがさらに好ましい。
【0059】
電解質部2に含まれる樹脂は、固体電解質粒子を分散して含むものであってもよい。また、電解質部2は、樹脂と、樹脂中に分散した固体電解質粒子から構成されてもよい。固体電解質粒子の粒径に特に限定はないが、電解質部2の厚みと略等しい大きさであれば、固体電解質間の界面抵抗なく正極1と負極3を接続できるため好ましい。
【0060】
或いは、固体電解質粒子の粒径が、電解質部2の厚みよりも小さい場合には、樹脂中に分散した固体電解質粒子は、厚み方向に隣り合う粒子同士が接触し、面内方向に隣り合う粒子同士が接触していないことが好ましい。このような構成をとることで、厚み方向のイオン伝導度を高くし、面内方向のイオン伝導度を低くすることができる。
【0061】
また、固体電解質は、電解質部2と正極1の界面及び電解質部2と負極3の界面に露出し、正極1及び負極3と直接接触することが好ましい。このような構成とすることで、正極1及び負極3と、電解質部2との接触抵抗が小さくなり、電池の内部抵抗を小さくすることができる。
【0062】
図3は、本発明の実施の形態にかかる、電池の断面の模式図の一例を表す図である。図3は、本実施形態の電池の、正極1、電解質部2、及び負極3を含む断面の模式図である。図3では、正極1と、電解質部2と、負極3とが順次積層されている。正極1、電解質部2及び負極3のそれぞれは、シート状の形状を有している。また、正極1と電解質部2が接する面と、負極3と電解質部2が接する面は、平行である。
【0063】
図3では、電解質部2は、樹脂211と固体電解質221を含んでいる。図3において、細かな水玉模様が施されている部分が樹脂211であり、模様が施されていない部分が固体電解質221である。固体電解質221の粒径は、電解質部2の厚みと略等しい大きさである。また、固体電解質221は、電解質部2と正極1の界面及び電解質部2と負極3の界面に露出し、正極1及び負極3と直接接触している。
【0064】
図4は、本発明の実施の形態にかかる、電池の断面の模式図の一例を表す図である。
図4は、本実施形態の電池の、正極1、電解質部2、及び負極3を含む断面の模式図である。図4では、正極1と、電解質部2と、負極3とが順次積層されている。正極1、電解質部2及び負極3のそれぞれは、シート状の形状を有している。また、正極1と電解質部2が接する面と、負極3と電解質部2が接する面は、平行である。
【0065】
図4では、電解質部2は、樹脂211と固体電解質221(固体電解質221a~221f)を含んでいる。図4において、細かな水玉模様が施されている部分が樹脂211であり、模様が施されていない部分が固体電解質221である。
【0066】
固体電解質221の粒径は、電解質部2の厚みよりも小さい。そして、固体電解質221aと221d、221bと221e、及び221cと221fは、厚み方向に隣り合っており、粒子同士が接触している。また、固体電解質221aと221b、221bと221c、221dと221e、及び221eと221fは、面内方向に隣り合っており、粒子同士が接触していない。
【0067】
また、固体電解質221a、221b、及び221cは、電解質部2と正極1の界面に露出し、正極1と直接接触している。そして、固体電解質221d、221e、及び221fは、電解質部2と負極3の界面に露出し、負極3と直接接触している。
【0068】
上記においては、電解質部2の低イオン伝導領域21が樹脂211で形成される態様について記載したが、電解質部2の低イオン伝導領域21は、無機物質を含むものであってもよい。電解質部2の低イオン伝導領域21として用いる無機物質は、特に限定はないが、イオン伝導度が低いことが好ましい。電解質部2の低イオン伝導領域21として用いる無機物質としては、例えば、水ガラス、ガラス、アルミナ、ジルコニア、チタニア等が挙げられる。
【0069】
電解質部2は、セパレーターを含んでいてもよい。そして、セパレーターが、少なくとも一部分に樹脂211を含むものであり、低イオン伝導領域21が、セパレーター中の樹脂211を含む領域であり、高イオン伝導領域22が、セパレーター中の樹脂211を含まない領域であることとしてもよい。セパレーター中の樹脂211を含まない領域には、電解液または固体電解質221が含まれることが好ましい。このような構成とすることで、電解質部2の、厚み方向のイオン伝導度と面内方向のイオン伝導度との比が大きくなる。
【0070】
セパレーターが含む樹脂のイオン伝導度は、1mS/cm以下であることが好ましく、0.1mS/cm以下であることがより好ましく、10-3mS/cm以下であることがさらに好ましい。また、セパレーターが含む樹脂のイオン伝導度は、10-21mS/cm以上であることが好ましく、10-15mS/cm以上であることがより好ましく、10-9mS/cm以上であることがさらに好ましい。
【0071】
図5は、本発明の実施の形態にかかる、電池の断面の模式図の一例を表す図である。
図5は、本実施形態の電池の、正極1、電解質部2、負極3、及びセパレーターを含む断面の模式図である。図5では、正極1と、電解質部2と、負極3とが順次積層されている。正極1、電解質部2及び負極3のそれぞれは、シート状の形状を有している。また、正極1と電解質部2が接する面と、負極3と電解質部2が接する面は、平行である。
【0072】
図5では、電解質部2は、セパレーター230を含んでいる。そして、セパレーター230の一部分には、セパレーター230を貫通するように樹脂211が含まれている。また、セパレーター230の中の樹脂211を含まない領域には、電解液222が含まれている。図5において、細かな水玉模様が施されている部分が樹脂211であり、細かな線模様が施されている部分がセパレーター230である。また、図5の電解質部2の中の、模様が施されていない部分、及び、セパレーター230の中の樹脂211を含まない領域には、電解液222が含まれていることとする。
【0073】
樹脂211は、セパレーター230に、所定の形状で形成されることとしてもよい。セパレーター230に形成される樹脂211のパターンは、特に限定はないが、メッシュ状、ストライプ状、ハニカム状、丸孔状、角孔状等であってよい。これらのパターンによれば、電解質が含まれる高イオン伝導領域22を面内方向へ非連続とすることができ、電解質部2の面内方向のイオン伝導度を低くできるため好ましい。
【0074】
図6は、本発明の実施の形態にかかる、セパレーターに形成される樹脂のパターンの例を表す図である。図6(a)~(e)は、樹脂211が所定の形状で形成された、セパレーター230の上面図である。ここでは、セパレーター230の表面に形成された樹脂211は、セパレーター230の有する空孔を通ってセパレーター230の裏面まで到達することとする。そして、樹脂211が形成されたセパレーター230の表面をセパレーター230の上面図とするが、セパレーター230の裏面図も、上面図と同様の図となる。図6(a)~(e)において、細かな水玉模様が施されている部分が樹脂211であり、模様が施されていない部分がセパレーター230である。
【0075】
図6(a)では、樹脂211は、セパレーター230に、メッシュ状に形成されている。セパレーター230の表面上にメッシュの線の部分が樹脂211で形成されており、メッシュの隙間からセパレーター230が確認できる。
【0076】
図6(b)では、樹脂211は、セパレーター230に、ストライプ状に形成されている。セパレーター230の表面上にストライプの線の部分が樹脂211で形成されており、ストライプの隙間からセパレーター230が確認できる。
【0077】
図6(c)では、樹脂211は、セパレーター230に、ハニカム状に形成されている。セパレーター230の表面上に六角形のハニカムパターンの空隙が生じるように樹脂211が形成されており、ハニカムパターンの隙間からセパレーター230が確認できる。
【0078】
図6(d)では、樹脂211は、セパレーター230に、丸孔状に形成されている。セパレーター230の表面上に丸孔の空隙が生じるように樹脂211が形成されており、丸孔の隙間からセパレーター230が確認できる。
【0079】
図6(e)では、樹脂211は、セパレーター230に、長丸孔状に形成されている。セパレーター230の表面上に長丸孔の空隙が生じるように樹脂211が形成されており、長丸孔の隙間からセパレーター230が確認できる。
【0080】
セパレーター230に樹脂211がストライプ状に形成されている場合、樹脂211の線幅は、0.001mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.5mm以上がさらに好ましい。また、セパレーター230に樹脂211がストライプ状に形成されている場合、樹脂211の線幅は、50mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。
【0081】
セパレーター230に樹脂211がストライプ状に形成されている場合、セパレーター230中の樹脂211が形成されていない部分の線幅は、0.01mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましい。また、セパレーター230に樹脂211がストライプ状に形成されている場合、セパレーター230中の樹脂211が形成されていない部分の線幅は、1,000mm以下が好ましく、100mm以下がより好ましく、50mm以下がさらに好ましい。
【0082】
セパレーター230に樹脂211がストライプ状に形成されている場合、セパレーター230中の樹脂211が形成されていない部分の線幅に対する樹脂211の線幅の比(樹脂211の線幅/セパレーター230中の樹脂211が形成されていない部分の線幅)は、10-6以上が好ましく、10-4以上がより好ましく、0.01以上がさらに好ましい。
【0083】
また、セパレーター230に樹脂211がストライプ状に形成されている場合、セパレーター230中の樹脂211が形成されていない部分の線幅に対する樹脂211の線幅の比(樹脂211の線幅/セパレーター230中の樹脂211が形成されていない部分の線幅)は、10以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.1以下がさらに好ましい。
【0084】
セパレーター230に樹脂211がストライプ状に形成されている場合、セパレーター230を、ストライプに直行する方向であって、セパレーター230の面に垂直な方向に切断した断面における、断面全体の面積に対するセパレーター230中の樹脂211が形成されている部分の面積(セパレーター230中の樹脂211が形成されている部分の面積/断面全体の面積)は、10-6以上が好ましく、0.001以上がより好ましく、0.01以上がさらに好ましい。
【0085】
また、セパレーター230に樹脂211がストライプ状に形成されている場合、セパレーター230を、ストライプに直行する方向であって、セパレーター230の面に垂直な方向に切断した断面における、断面全体の面積に対するセパレーター230中の樹脂211が形成されている部分の面積(セパレーター230中の樹脂211が形成されている部分の面積/断面全体の面積)は、0.9以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.1以下がさらに好ましい。
【0086】
セパレーター230に樹脂211がストライプ状に形成されている場合、セパレーター230を、ストライプに直行する方向であって、セパレーター230の面に垂直な方向に切断した断面における、断面全体の面積に対するセパレーター230中の樹脂211が形成されていない部分の面積(セパレーター230中の樹脂211が形成されていない部分の面積/断面全体の面積)は、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.9以上がさらに好ましい。
【0087】
また、セパレーター230に樹脂211がストライプ状に形成されている場合、セパレーター230を、ストライプに直行する方向であって、セパレーター230の面に垂直な方向に切断した断面における、断面全体の面積に対するセパレーター230中の樹脂211が形成されていない部分の面積(セパレーター230中の樹脂211が形成されていない部分の面積/断面全体の面積)は、0.999999以下が好ましく、0.999以下がより好ましく、0.99以下がさらに好ましい。
【0088】
本実施形態の電池は、例えば、正極1及び負極3に樹脂211を印刷等の手法で形成し、正極1と負極3の間に電解液222又は固体電解質221を挟み込むことで作製することができる。
【0089】
図7は、本発明の実施の形態にかかる、電池の作製手順の一例を表す図である。図7(a)及び(b)は、本実施形態の電池の、正極1及び負極3を含む断面の模式図である。正極1及び負極3の表面上には、樹脂211が形成されている。正極1、及び負極3のそれぞれは、シート状の形状を有している。図7において、細かな水玉模様が施されている部分が樹脂211である。
【0090】
本実施形態の電池は、図7(a)のように、正極1及び負極3の樹脂211を形成した面同士を向かい合わせ、図7(b)のように、正極1と負極3の間に電解液222を挟み込むことで作製することができる。図7において、細かな線模様が施されている部分が電解液222である。正極1と負極3の間に電解液222を挟み込む際には、図示するように正極1及び負極3に形成した樹脂211同士が接触するようにすることが好ましい。
【0091】
また、正極1及び負極3に樹脂211を印刷等の手法で形成し、正極1と負極3の間に、電解液222又は固体電解質221と共にセパレーター230を挟み込んでもよい。この場合においても、正極1と負極3に塗布した樹脂211同士が接着するようにすることで、面内方向のイオン伝導度を下げることができる。
【0092】
図8は、本発明の実施の形態にかかる、電池の作製手順の一例を表す図である。図8(a)及び(b)は、本実施形態の電池の、正極1及び負極3を含む断面の模式図である。正極1及び負極3の表面上には、樹脂211が形成されている。正極1、及び負極3のそれぞれは、シート状の形状を有している。図8において、細かな水玉模様が施されている部分が樹脂211である。
【0093】
本実施形態の電池は、図8(a)のように、シート状のセパレーター230を挟んで、正極1及び負極3の樹脂211を形成した面同士を向かい合わせ、図8(b)のように、正極1と負極3の間に、電解液222を挟み込むことで作製することができる。図8において、細かな線模様が施されている部分が電解液222である。正極1と負極3の間に電解液222を挟み込む際には、図示するように正極1及び負極3に形成した樹脂211同士が接触するようにすることが好ましい。
【0094】
図8では、セパレーター230の一部分には、セパレーター230を貫通するように樹脂211が含まれている。また、セパレーター230の中の樹脂211を含まない領域には、電解液222が含まれている。
【0095】
本実施形態の電池は、正極1と、後述の電解質シートと、負極3とを積層させることでも作製できる。また、本実施形態の電池は、正極1と、樹脂211がパターニングされたセパレーター230と、負極3とを積層させ、電解液222を含侵することによっても作製できる。このとき、電池を加熱またはプレスすることで、樹脂211を他の部材に強く結着させることができる。
【0096】
(電解質シート)
本実施形態の電池は、電解質部2として、イオン伝導性を有するシート状の電解質シートを用いることができる。そして、本実施形態の電池は、正極1と電解質シートと負極3とを積層することで製造することができる。
【0097】
電解質シートは、イオン伝導性を有するシート状の部材からなるものである。電解質シートは、電解質シートの面に垂直な方向(厚み方向)の電解質シートのイオン伝導度σと、電解質シートの面に平行な方向(面内方向)の電解質シートのイオン伝導度σ||との比σ/σ||が、10以上である。このような構成をとることによって、充放電時に生じるイオンの濃度分布のバラツキを抑制することができ、内部抵抗の上昇の抑制、充放電に伴う発熱の抑制、二次電池の充放電容量の向上、二次電池のサイクル特性の向上などの効果が得られる。
【0098】
電解質シートの厚み方向及び面内方向のイオン伝導度の説明については、電解質部2の厚み方向及び面内方向のイオン伝導度の説明の記載を、必要な範囲で採用できる。
【0099】
電解質シートのイオン伝導度の比σ/σ||は、10以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、1,000以上であることがさらに好ましい。
【0100】
電解質シートのイオン伝導度の比σ/σ||は、10以上であれば、小電流での充放電時に生じるイオンの濃度分布のバラツキを抑制し、電池反応の位置による均一化及び活物質の劣化を均一化することができる。また、電解質シートのイオン伝導度の比σ/σ||は、100以上であれば、大電流での充放電時に生じるイオンの濃度分布のバラツキを抑制し、電池反応の位置による均一化及び活物質の劣化を均一化することができる。さらに、電解質シートのイオン伝導度の比σ/σ||は、1,000以上であれば、1つのパッケージ内で複数のセルを直列に接続しても高い電圧を得ることができる。
【0101】
電解質シートのイオン伝導度の比σ/σ||が10以上となるためには、例えば、電解質シートが、低イオン伝導領域21と高イオン伝導領域22を有するものであり、高イオン伝導領域22が、電解質シートの面内方向の少なくとも一部に非連続であり、高イオン伝導領域22の一部又は全部が、電解質シートの厚み方向に連続であることが好ましい。
【0102】
電解質シートにおいて、高イオン伝導領域22は、低イオン伝導領域21によって複数に分けられており、互いに非連続であってもよい。
【0103】
また、電解質シートのイオン伝導度の比σ/σ||は、1021以下であることが好ましく、1015以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。
【0104】
電解質シートの厚み方向のイオン伝導度σは、0.01mS/cm以上であることが好ましく、1mS/cm以上であることがより好ましく、10mS/cm以上であることがさらに好ましい。また、電解質シートの厚み方向のイオン伝導度σは、1,000mS/cm以下であることが好ましく、100mS/cm以下であることがより好ましく、50mS/cm以下であることがさらに好ましい。
【0105】
電解質シートの面内方向のイオン伝導度σ||は、1mS/cm以下であることが好ましく、0.1mS/cm以下であることがより好ましく、10-3mS/cm以下であることがさらに好ましい。また、電解質シートの面内方向のイオン伝導度σ||は、10-21mS/cm以上であることが好ましく、10-15mS/cm以上であることがより好ましく、10-9mS/cm以上であることがさらに好ましい。
【0106】
電解質シートは、電解質シートの内部に、イオン伝導度の異なる領域を有するものであってもよい。イオン伝導度の異なる領域のうち、よりイオン伝導度が低い領域を低イオン伝導領域21とし、よりイオン伝導度が高い領域を高イオン伝導領域22とする。つまり、電解質シートは、低イオン伝導領域21と高イオン伝導領域22を有していてもよい。
【0107】
電解質シートの低イオン伝導領域21のイオン伝導度σELは、1mS/cm以下であることが好ましく、0.1mS/cm以下であることがより好ましく、10-3mS/cm以下であることがさらに好ましい。また、電解質シートの低イオン伝導領域21のイオン伝導度σELは、10-21mS/cm以上であることが好ましく、10-15mS/cm以上であることがより好ましく、10-9mS/cm以上であることがさらに好ましい。
【0108】
電解質シートの高イオン伝導領域22のイオン伝導度σEHは、0.01mS/cm以上であることが好ましく、1mS/cm以上であることがより好ましく、10mS/cm以上であることがさらに好ましい。また、電解質シートの高イオン伝導領域22のイオン伝導度σEHは、1,000mS/cm以下であることが好ましく、100mS/cm以下であることがより好ましく、50mS/cm以下であることがさらに好ましい。
【0109】
電解質シートの高イオン伝導領域22のイオン伝導度と電解質部2の低イオン伝導領域21のイオン伝導度との比σEH/σELは、10以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、1,000以上であることがさらに好ましい。
【0110】
電解質シートの高イオン伝導領域22のイオン伝導度と低イオン伝導領域21のイオン伝導度との比σEH/σELは、10以上であれば小電流での充放電時に生じるイオンの濃度分布のバラツキを抑制し、電池反応の位置による均一化及び活物質の劣化を均一化することができる。また、電解質シートのイオン伝導度の比σEH/σELは、100以上であれば大電流での充放電時に生じるイオンの濃度分布のバラツキを抑制し、電池反応の位置による均一化及び活物質の劣化を均一化することができる。さらに、電解質シートのイオン伝導度の比σEH/σELは、1,000以上であれば1つのパッケージ内で複数のセルを直列に接続しても高い電圧を得ることができる。
【0111】
また、電解質シートの高イオン伝導領域22のイオン伝導度と電解質部2の低イオン伝導領域21のイオン伝導度との比σEH/σELは、1021以下であることが好ましく、1015以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。
【0112】
電解質シートの高イオン伝導領域22は、電解質シートの面内方向に非連続であってもよい。このような構成をとることで、電解質シートの面内方向のイオン伝導度が低イオン伝導領域21の伝導度に支配されることとなり、電解質シートの面内方向のイオン伝導度を低くすることができる。
【0113】
また、電解質シートの高イオン伝導領域22の一部または全部は、厚み方向に連続であってもよい。このような構成をとることによって、電解質シートの厚み方向のイオン伝導度が高イオン伝導領域22の伝導度に支配されることとなり、電解質シートの厚み方向のイオン伝導度を高くすることができる。
【0114】
電解質シートにおいて、高イオン伝導領域22は低イオン伝導領域21によって複数に分けられており、互いに非連続であってもよい。
【0115】
電解質シートの高イオン伝導領域22としては、電解液222及び固体電解質221を用いることができる。固体電解質221は、流動性がないため、充放電反応後のイオン濃度のバラツキが生じにくく好ましい。
【0116】
電解質シートの高イオン伝導領域22として用いる電解液222及び固体電解質221のイオン伝導度は、0.01mS/cm以上であることが好ましく、1mS/cm以上であることがより好ましく、10mS/cm以上であることがさらに好ましい。また、電解質シートの高イオン伝導領域22として用いる電解液222及び固体電解質221のイオン伝導度は、1,000mS/cm以下であることが好ましく、100mS/cm以下であることがより好ましく、50mS/cm以下であることがさらに好ましい。
【0117】
電解質シートの低イオン伝導領域21は、加工性の観点から樹脂211で形成されることが好ましい。電解質シートの低イオン伝導領域21として用いる樹脂211は、特に限定はないが、イオン伝導度が低いことが好ましい。
【0118】
電解質シートの低イオン伝導領域21として用いる樹脂211のイオン伝導度は、1mS/cm以下であることが好ましく、0.1mS/cm以下であることがより好ましく、10-3mS/cm以下であることがさらに好ましい。また、電解質シートの低イオン伝導領域21として用いる樹脂211のイオン伝導度は、10-21mS/cm以上であることが好ましく、10-15mS/cm以上であることがより好ましく、10-9mS/cm以上であることがさらに好ましい。
【0119】
電解質シートに含まれる樹脂211は、固体電解質221の粒子を分散して含むものであってもよい。また、電解質シートは、樹脂211と、樹脂211中に分散した固体電解質221の粒子から構成されてもよい。固体電解質221の粒子の粒径に特に限定はないが、電解質シートの厚みと略等しい大きさであれば、固体電解質221間の界面抵抗なく正極1と負極3を接続できるため好ましい。
【0120】
或いは、固体電解質221の粒子の粒径が、電解質シートの厚みよりも小さい場合には、樹脂211中に分散した固体電解質221の粒子は、厚み方向に隣り合う粒子同士が接触し、面内方向に隣り合う粒子同士が接触していないことが好ましい。このような構成をとることで、厚み方向のイオン伝導度を高くし、面内方向のイオン伝導度を低くすることができる。
【0121】
また、電解質シートは、表面に固体電解質221の粒子が露出していることが好ましい。このような構成とすることで、電解質シートを正極1及び負極3と積層した際に、正極1及び負極3と電解質シートが直接接触し、結果として、正極1及び負極3と電解質シートとの接触抵抗が小さくなり、電池の内部抵抗を小さくすることができる。
【0122】
図9は、本発明の実施の形態にかかる、電解質シートの断面の模式図の一例を表す図である。図9において、電解質シートは、電解質シートの表面に垂直な方向に切断されている。図9では、電解質シート240は、樹脂211と固体電解質221を含んでいる。図9の電解質シート240において、細かな水玉模様が施されている部分が樹脂211であり、模様が施されていない部分が固体電解質221である。
【0123】
図9(a)では、固体電解質221の粒径は、電解質シート240の厚みと略等しい大きさである。また、固体電解質221は、電解質シート240の表面に露出している。
【0124】
図9(b)では、固体電解質221(固体電解質221a~221f)の粒径は、電解質シート240の厚みよりも小さい。そして、固体電解質221aと221d、221bと221e、及び221cと221fは、厚み方向に隣り合っており、粒子同士が接触している。また、固体電解質221aと221b、221bと221c、221dと221e、及び221eと221fは、面内方向に隣り合っており、粒子同士が接触していない。
【0125】
また、固体電解質221a、221b、及び221cは、電解質シート240の表面に露出している。そして、固体電解質221d、221e、及び221fは、電解質シート240の、固体電解質221a、221b、及び221cが露出したと反対の表面に露出している。
【0126】
電解質シート240は、セパレーター230を含んでいてもよい。そして、セパレーター230が、少なくとも一部分に樹脂211を含むものであり、低イオン伝導領域21が、セパレーター230中の樹脂211を含む領域であり、高イオン伝導領域22が、セパレーター230中の樹脂211を含まない領域であることとしてもよい。セパレーター230中の樹脂211を含まない領域には、電解液222又は固体電解質221が含まれることが好ましい。また、樹脂211を含まない領域は、セパレーター230の面内方向の少なくとも一部に非連続であってもよい。このような構成とすることで、電解質シート240の、厚み方向のイオン伝導度と面内方向のイオン伝導度との比が大きくなる。
【0127】
図10は、本発明の実施の形態にかかる、電解質シートの断面の模式図の一例を表す図である。図10において、電解質シート240は、電解質シート240の表面に垂直な方向に切断されている。
【0128】
図10では、電解質シート240は、セパレーター230を含んでいる。そして、セパレーター230の一部分には、セパレーター230を貫通するように樹脂211が含まれている。また、セパレーター230の中の樹脂211を含まない領域には、電解液222が含まれている。図10において、セパレーター230の中の、細かな水玉模様が施されている部分が樹脂211であり、細かな線模様が施されている部分が電解液222である。
【0129】
樹脂211は、セパレーター230に、所定の形状で形成されることとしてもよい。電解質シート240が有するセパレーター230に形成される樹脂211のパターンは、特に限定はないが、メッシュ状、ストライプ状、ハニカム状、丸孔状、角孔状等であってよい。セパレーター230に形成される樹脂211のパターンの例は、図6に示されるものを採用することができる。これらパターンによれば、電解質が含まれる高イオン伝導領域22を面内方向へ非連続とすることができ、電解質シート240の面内方向のイオン伝導度を低くできるため好ましい。
【0130】
電解質シート240は、樹脂211と固体電解質221とを混錬し、押し出して成形する、溶融押出成形法によって作製することができる。また、電解質シート240は、樹脂211と固体電解質221とを溶媒中に溶解・分散させ、ダイから押し出して、支持体上にキャストし、乾燥、剥離して製膜する、溶液キャスト法によっても作製することができる。或いは、電解質シート240は、パターニングされたセパレーター230を電解液222に含侵させることによっても作製できる。
【0131】
電解質シート240はそれ自身が自立したシート状の部材であってもよいし、支持フィルム上に電解質部2が形成された構成をしてもよい。
【0132】
(パターニングされたセパレーター)
本実施形態の電池は、電解質部2として、電解液222を含侵させた、パターニングされたセパレーター230用いることができる。そして、本実施形態の電池は、正極1と、パターニングされたセパレーター230と、負極3とを積層し、電解液222を含侵することによって製造することができる。
【0133】
パターニングされたセパレーター230は、セパレーター230の少なくとも一部分に樹脂211が形成された部材である。パターニングされたセパレーター230中の樹脂211が形成されていない領域は、セパレーター230の面に平行な方向のうち少なくとも一方向に非連続である。このような構成とすることで、パターニングされたセパレーター230を用いた電池の電解質部2は、厚み方向のイオン伝導度と面内方向のイオン伝導度の比が大きくなるため好ましい。
【0134】
樹脂211のイオン伝導度は、1mS/cm以下であることが好ましく、0.1mS/cm以下であることがより好ましく、10-3mS/cm以下であることがさらに好ましい。また、樹脂211のイオン伝導度は、10-21mS/cm以上であることが好ましく、10-15mS/cm以上であることがより好ましく、10-9mS/cm以上であることがさらに好ましい。
【0135】
セパレーター230に形成される樹脂211のパターンとしては特に限定はないが、メッシュ状、ストライプ状、ハニカム状、丸孔状、角孔状等であってよい。セパレーター230に形成される樹脂211のパターンの例は、図6に示されるものを採用することができる。これらパターンによれば、パターニングされたセパレーター230の樹脂211を含まない領域に電解質を含ませた場合に、電解質が含まれる高イオン伝導領域22を面内方向へ非連続とすることができ、電解質シート240の面内方向のイオン伝導度を低くできるため好ましい。
【0136】
パターニングされたセパレーター230は、印刷等の手法によって、セパレーター230に樹脂211を塗布することによって作製できる。セパレーター230は、空孔を有していることが好ましい。そして、セパレーター230の表面上に塗布された樹脂211は、セパレーター230の空孔を通って、セパレーター230の裏面まで到達することが好ましい。
【0137】
(高電圧の電池)
本実施形態の電池は、2つ以上直列に接続することによって、高電圧を出力する電池モジュールを作製することができる。このとき、電池の電解質部2は共通していることが好ましい。電解質部2を共通とすることで、電池ごとに筐体で区切る必要がなくなり、電池モジュールの小型化が可能となる。
【0138】
また、電解質部2を共有している電池は、電解質部2の面内方向に平行な方向に並んで形成されていることが好ましい。面内方向に平行な方向に電池を並べて形成することで、電解質を共通とする2つ以上の電池の正極1と負極3を短絡しても、放電が起こらず、長期保存が可能となる。
【0139】
図11は、本発明の実施の形態にかかる、電池モジュールの断面の模式図の一例を表す図である。図11は、電解質部2を共有する2つの電池が、直列に接続された電池モジュールを示している。図11は、電池モジュールの2つの電池の正極1、電解質部2、及び負極3を含む断面を示している。正極1、電解質部2及び負極3のそれぞれは、シート状の形状を有している。それぞれの正極1と電解質部2が接する面と、負極3と電解質部2が接する面の大きさは等しいものとする。また、それぞれの正極1と電解質部2が接する面と、負極3と電解質部2が接する面は、平行である。
【0140】
図11に示す電池モジュールは、正極1aと電解質部2と負極3aとが順次積層して形成された第一の電池と、正極1bと電解質部2と負極3bとが順次積層して形成された第二の電池を、導電体4を用いて直列に接続することで形成されている。第一の電池及び第二の電池は、共通の電解質部2を有している。また、第一の電池の負極3aと第二の電池の正極1bが、導電体4を用いて直列に接続されている。
【0141】
電解質部2は、低イオン伝導領域21と高イオン伝導領域22を有している。そして、高イオン伝導領域22が、電解質部2の面内方向の少なくとも一部に非連続であり、高イオン伝導領域22の一部又は全部が、電解質シート240の厚み方向に連続である。図11の電解質部2において、細かな水玉模様が施されている部分が低イオン伝導領域21であり、模様が施されていない部分が高イオン伝導領域22である。
【0142】
電池モジュールは、図11に示すように、第一の電池の負極3と、第一の電池と隣接する第二の電池の正極1が、電解質部2の同一の面上に配置されることが好ましい。このような配置であることで、第一の電池と第二の電池を直列に接続することが容易となる。
【0143】
図11では、第一の電池と第二の電池は導電体4を用いて直列に接続されているが、第一の電池と第二の電池を直列に接続する方法は、特に限定されない。例えば、第一の電池の負極3と、第一の電池と隣接する第二の電池の正極1を、溶接等の手段で一体化してもよい。
【0144】
(イオン伝導度の測定方法)
イオン伝導度は交流インピーダンス法等の既知の方法で測定可能である。例えば、LCRメーターを用いて電解質部2の交流抵抗を測定し、イオン伝導経路の距離をイオン伝導経路の断面積と電解質部2の抵抗値で除することで求めた値を用いてもよい。つまり、本発明においては、電気伝導度をイオン伝導度としてもよい。
【0145】
(材料の説明)
(電解質)
電解質は、溶媒中に溶解した際に陽イオンと陰イオンに電離する材料である。電解質の種類に特に制限はない。電解質として、酸、塩基、塩のいずれも用いることができる。
【0146】
酸としては、例えば、ハロゲン化水素(HCl、HBr、HF、HI等)、ハロゲンオキソ酸(次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸等)、HSO、フルオロスルホン酸、HNO、HPO、HBO、スルホン酸(p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等)、カルボン酸(酢酸、乳酸、シュウ酸、クエン酸等)等が例示される。
【0147】
塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物(KOH、NaOH、LiOH等)、アルカリ土類金属水酸化物(Ca(OH)等)NH等が例示される。
【0148】
塩としては、例えば、上記した酸と塩基を反応して生成する物質を用いることができる他、一般的な電池に用いられる電解質(例えば、ZnCl、NHCl、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiB(C、LiCHSO、LiCFSO、LiCl、LiBr、LiN(CFSO等)を用いることができる。
【0149】
(固体電解質)
固体電解質221の材料に特に限定はなく、いずれの固体電解質221を用いることができる。固体電解質221としては、例えば硫化物系固体電解質及び酸化物系固体電解質が挙げられ、好ましくは酸化物系固体電解質である。
【0150】
酸化物系固体電解質は、粒子が十分な高度を有するため正極1と負極3の短絡が生じにくいため好ましい。酸化物系固体電解質としては、例えばγ―LiPO型酸化物、逆蛍石型酸化物、NASICON型酸化物、ペロブスカイト型酸化物、およびガーネット型酸化物が例示される。NASICON型酸化物としては、例えばLi1+xTi2-x(PO(ただしMはAlおよび希土類から選ばれた少なくとも1種の元素、xは0.1~1.9を示す。)、ペロブスカイト型酸化物としては、例えばLa2/3-xLi3xTiO、ガーネット型酸化物としては、例えばLiLaZr12が好ましい。
【0151】
イオン伝導性を高める目的、化学的な安定性を高める目的、および加工性を高める観点から、上記基本結晶構造に対して元素を置換及び/ドープした結晶性酸化物系固体電解質粒子を用いることもできる。好ましくは、NASICON型酸化物としてはLi1.3Al0.3Ti1.7(PO、ガーネット型酸化物としては、LiLaZr12、元素置換体Li6.25Al0.25LaZr12、LiLaZr2-xNb12(0<x<0.95)、およびLiLaZr2-xTa12(0<x0.95)が例示される。
【0152】
固体電解質221として、ゲル電解質を用いることもできる。ゲル電解質とは、有機材料、溶媒、電解質を含むゲル状のイオン伝導体である。
【0153】
有機材料に特に限定はないが、ポリ(エチレンオキサイド)や同架橋体などのエーテル系高分子、ポリ(メタクリレート)エステル系、アクリレート系、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、PVDFやスルホン酸基を有するパーフルオロポリマー等のなどを単独または分子中に共重合若しくは混合して用いることができる。
【0154】
溶媒としては、従来から電池に用いられる溶媒を特に限定はなく用いることができる。溶媒としては、電解質の溶解性の観点から極性溶媒を用いることが好ましい。極性溶媒としては、水、カーボネート系溶媒(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど)γ―ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3-オキソラン等が例示される。
【0155】
電解質としては、従来から電池に用いられる電解質であれば特に限定なく用いることができる。
【0156】
(樹脂)
樹脂211の材料としては特に限定はないが、例えば、天然ゴム、でんぷん、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン―ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸等)、ビニル樹脂(ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等)、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート、ポリベンズイミダゾール、レゾルシノール樹脂、クロロプレンゴム、ニトリルゴムなどを用いることができる。
【0157】
樹脂211としては、粘着性または接着性を有する材料を用いてもよい。粘着性または接着性を有する樹脂211を用いれば、正極1と電解質部2と負極3とを固定することができ、剥離による不具合を抑制することができる。
【0158】
電解質が親水性の場合は、疎水性の樹脂211を用いることが好ましい。疎水性の樹脂211としては、耐熱性、化学的安定性、柔軟性の観点からシリコーン樹脂を用いることが好ましい。また、電解質が疎水性の場合は、親水性の樹脂211を用いることが好ましい。
【0159】
樹脂211のイオン伝導度は、1mS/cm以下であることが好ましく、0.1mS/cm以下であることがより好ましく、10-3mS/cm以下であることがさらに好ましい。
【0160】
樹脂211は、熱硬化性またはUV硬化性を有してもよい。
【0161】
(セパレーター)
セパレーター230には、多孔性の部材を用いることができる。セパレーター230としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系微多孔膜や、ビニロン繊維、ナイロン繊維、マーセル化パルプ、レーヨン繊維、ポリノジック繊維、セルロース繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等を用いた不織布等が例示される。
【0162】
セパレーター230の厚さは、正極1と負極3とを確実に隔離するために1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。また、セパレーター230の厚さは、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0163】
セパレーター230の空孔率は、電池の内部抵抗を低減するために、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。セパレーター230の空孔率は、セパレーター230の強度を高め電池の安全性を確保するために、70%以下であることが好ましく、65%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。
【0164】
セパレーター230の孔径は、イオンの透過性を向上させ内部抵抗を低減するために、0.01μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましく、0.05μm以上であることがさらに好ましい。また、セパレーター230の孔径は、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。
【0165】
(電極)
本実施形態の電池は、正極1となる電極、及び負極3となる電極を有する。電極は、単一の材料から構成されてもよいし、複数の材料を複合化して構成してもよい。電極は、例えば、集電体、電極活物質、バインダー、導電助剤、電解質、溶媒、添加剤等を複合化して構成してもよい。
【0166】
電極の厚さは特に限定されない。各電極の厚さは、同一の厚さであってもよく、それぞれ異なる厚さであってもよい。各電極の厚さは、例えば、0.05μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。各電極の厚さは、例えば、500μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。
【0167】
(集電体)
集電体は、電極活物質が酸化還元反応して生成したキャリアを伝導する役割を有するため、電気抵抗率の小さい材料を用いることが好ましい。集電体の電気抵抗率は、10mΩcm以下であることが好ましく、1mΩcm以下であることがより好ましく、100μΩcm以下であることがさらに好ましい。
【0168】
集電体の電気抵抗は、1kΩ以下であることが好ましく、100Ω以下であることがより好ましく、10Ω以下であることがさらに好ましい。
【0169】
集電体の材料としては、導電性があれば特に限定はなく、例えば炭素系材料、金属材料、導電性セラミックス、導電性プラスチックス等を用いることができる。
【0170】
炭素系材料としては、活性炭、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等)、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン、フラーレンなどが例示される。
【0171】
金属材料としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ニオブ、モリブデン、パラジウム、カドミウム、インジウム、錫、アンチモン、ランタン、タンタル、タングステン、プラチナ、鉛等の金属及びこれら金属の酸化物、窒化物、炭化物、塩、合金などを用いることができる。
【0172】
導電性セラミックスとしては、インジウムースズ酸化物、インジウム―亜鉛酸化物、インジウム―ガリウム―亜鉛酸化物などが例示される。導電性有機物としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、PEDOT等のπ共役分子及びPEDOT/PSS等のπ共役分子とドーパントからなる材料等を用いることができる。
【0173】
集電体は、使用環境においてそれ自体酸化還元しない安定な材料又は安定な被膜を形成する材料であることが好ましく、特に炭素系材料、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン及びこれらの合金であることが好ましい。
【0174】
(導電助剤)
導電助剤は、導電性を有する粉体材料を用いることができる。
【0175】
導電助剤の材料としては、導電性があれば特に限定はなく、例えば炭素系材料、金属材料、導電性セラミックス、導電性プラスチックス等を用いることができる。
【0176】
炭素系材料としては、活性炭、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等)、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン、フラーレンなどが例示される。
【0177】
金属材料としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ニオブ、モリブデン、パラジウム、カドミウム、インジウム、錫、アンチモン、ランタン、タンタル、タングステン、プラチナ、鉛等の金属及びこれら金属の酸化物、窒化物、炭化物、塩、合金などを用いることができる。
【0178】
導電性セラミックスとしては、インジウムースズ酸化物、インジウム―亜鉛酸化物、インジウム―ガリウム―亜鉛酸化物などが例示される。
【0179】
導電性有機物としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、PEDOT等のπ共役分子及びPEDOT/PSS等のπ共役分子とドーパントからなる材料等を用いることができる。
【0180】
導電助剤は、使用環境においてそれ自体酸化還元しない安定な材料又は安定な被膜を形成する材料であることが好ましく、特に炭素系材料、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン及びこれらの合金であることが好ましい。また、これら導電性の材料が、シリカやアクリルビーズ等の粉体材料の表面にコーティングされた材料を用いることもできる。
【0181】
導電助剤の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることがさらに好ましい。また、導電助剤の平均粒子径は、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。
【0182】
導電助剤の形状は、特に限定はなく、球、多面体、円柱、円錐、円筒、角錐、角柱等であってもよい。
【0183】
導電助剤として、導電性繊維を用いることもできる。導電性繊維としては、例えば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、繊維の中に導電性の金属や炭素系材料を分散させた導電性繊維、繊維表面に導電性材料をコーティングした導電性繊維等を用いることができる。
【0184】
(バインダー)
バインダーは、電極活物質、導電助剤、集電体を結着固定することができれば特に限定されない。例えば、でんぷん、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン―ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸等)、ビニル樹脂(ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等)、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネートなどを用いることができる。
【0185】
(正極)
正極においては、電子を消費して還元反応が起こる。従って、正極自体は標準電極電位が大きいことが好ましい。正極の標準電極電位は、―300mV以上であることが好ましく、0V以上であることがより好ましく、+500mV以上であることがさらに好ましい。また、正極の標準電極電位は、3.5V以下であれば有機溶媒系の電解質で利用可能となり、2.5V以下であれば水系電解質で利用可能であり、1.5V以下であれば水をほぼ電気分解することなく利用できる。
【0186】
正極の電気抵抗は、利用時にジュール熱としてエネルギーロスの原因となるため、100kΩcm以下であることが好ましく、10kΩcmであることがより好ましく、1kΩcmであることがさらに好ましい。
【0187】
(正極活物質)
正極において、正極活物質の還元が起こる。
【0188】
正極活物質の標準電極電位は、-300mV以上であることが好ましく、0mV以上であることがより好ましく、+500mV以上であることがさらに好ましい。また、正極活物質の標準電極電位は、3.5V以下であれば有機溶媒系の電解質で利用可能となり、2.5V以下であれば水系電解質で利用可能であり、1.5V以下であれば水をほぼ電気分解することなく利用できる。
【0189】
正極活物質としては、上記標準電極電池を有する材料であれば特に限定されないが、有機材料、無機材料、有機無機複合を用いることができる。具体的な材料は、論文、特許、電気化学便覧等、既報文献に記載の材料の中から適切な標準電極電位を有する物質を選んで用いることができる。
【0190】
特に、水系電解質を用いる場合は、酸化マンガン(MnO、Mn、MnO(OH)、MnO、Mn、MnO、Mn等)、酸化銀(AgO等)、酸素、オゾン、酸化鉛(PbO等)、酸化ニッケル(Ni等)、水酸化ニッケル(Ni(OH)等)、オキシ水酸化ニッケル(NiO(OH)等)、酸化銅(CuO、CuO等)、酸化クロム(CrO、Cr、CrO、CrO等)、酸化鉄(Fe、FeO、Fe等)を用いることができる。
【0191】
また、非水系電解質を用いる場合は、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、カルシウムイオン電池、マグネシウム電池等に使用される正極活物質を用いることができる。具体的には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属とそれ以外の金属(Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Alなど)とで構成される金属酸化物が例示される。
【0192】
(負極)
負極においては、負極活物質が酸化され、電子を放出する。従って、負極には標準電極電位が小さい物質を用いることが好ましい。負極の標準電極電位は、-200mV以下であることが好ましく、-500mV以下であることがより好ましく、-700mV以下であることがさらに好ましい。また、負極の標準電極電位は、-3.5V以上であれば有機溶媒系の電解質で利用可能となり、-2.5V以上であれば水系電解質で利用可能であり、-1.5V以上であれば水をほぼ電気分解することなく利用できる。
【0193】
負極の電気抵抗は、利用時にジュール熱としてエネルギーロスの原因となるため、100kΩcm以下であることが好ましく、10kΩcmであることがより好ましく、1kΩcmであることがさらに好ましい。
【0194】
(負極活物質)
負極では、負極活物質の還元が起こる。
【0195】
負極活物質の標準電極電位は、-200mV以下であることが好ましく、-500mV以下であることがより好ましく、-700mVmV以下であることがさらに好ましい。また、負極活物質の標準電極電位は、-3.5V以上であれば有機溶媒系の電解質で利用可能となり、―2.5V以上であれば水系電解質で利用可能であり、―1.5V以上であれば水をほぼ電気分解することなく利用できる。
【0196】
負極活物質としては、上記標準電極電池を有する材料であれば特に限定されないが、有機材料、無機材料、有機無機複合を用いることができる。具体的な材料は、論文、特許、電気化学便覧等、既報文献に記載の材料の中から適切な標準電極電位を有する物質を選んで用いることができる。
【0197】
特に、水系電解質を用いる場合は、Zn、Pb、Cd、Mg、Al、水素吸蔵合金、メタノール、ヒドラジン、水素、一酸化炭素、ギ酸、アミノカルボン酸系キレート剤(エチレンジアミンテトラ酢酸等)を用いることができる。
【0198】
また、非水系電解質を用いる場合は、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、カルシウムイオン電池、マグネシウム電池等に使用される正極活物質を用いることができる。具体的には、炭素系材料(ハードカーボン、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体、コークス類、炭化ケイ素等)、導電性高分子(ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、PEDOT等)、金属(Li、Sn、Si、Al、Zr、Zn、Mg、Ti等)及びこれらの合金、金属酸化物(酸化チタン、リチウム―チタン酸化物、ケイ素酸化物等)等が例示される。
【実施例0199】
(厚み方向のイオン伝導度の測定)
作成した電解質シート240を挟むように、電解質シート240の表面に2つの電極を配置し、電極間の交流抵抗(測定周波数100kHz)をLCRメーターで測定し、厚み方向のイオン伝導度σを算出した。
【0200】
(面内方向のイオン伝導度の測定)
作成した電解質シート240を挟むように、電解質シート240の面内方向の端部に2つの電極を配置し、電極間の交流抵抗(測定周波数100kHz)をLCRメーターで測定し、面内方向のイオン伝導度を算出した。面内方向のイオン伝導度は、2つの電極の配置によって異なる数値となるが、より低い数値を面内方向のイオン伝導度σ||とした。例えば、図1(b)に示す面内方向1及び面内方向2のイオン伝導度では、低イオン伝導領域21に交差する面内方向2のイオン伝導度の方が低くなるため、面内方向2のイオン伝導度を、面内方向のイオン伝導度σ||とされる。
【0201】
(正極)
実施例に使用する正極を以下のようにして作成した。
【0202】
導電性銅箔テープ(株式会社スリオンテック製、NO.8701)を、熱風循環式オーブンを用いて大気中200℃で2時間加熱することで、銅箔の表面に酸化銅を形成した。この表面に酸化銅が形成された銅箔テープは、表面の酸化銅が正極活物質となり、未酸化の銅箔が集電体となる。銅箔テープの厚さは0.080mmであった。
【0203】
(実施例1)
セパレーター230として幅30mm、長さ250mm、厚さ0.5mm、坪量45gのセルロース紙を用い、樹脂211として二液縮合型型取り用RTVゴム(信越化学工業株式会社製、KE12)を用いた。セパレーター230の表面に、幅1mm、間隔9mmのストライプ状になるよう樹脂211を印刷し、パターニングされたセパレーター230を作製した。セパレーター230の表面に印刷された樹脂211は、セパレーター230の空孔を通り、セパレーター230の裏面に到達していた。このセパレーター230に10%食塩水をしみこませ、実施例1の電解質シート240を作成した。
【0204】
図12は、実施例1のセパレーターのパターニングを説明するための図である。図12には、樹脂211をパターニングしたセパレーター230の上面図が示されている。ここでは、セパレーター230の上面は、セパレーター230の、樹脂211を印刷した面のことを指す。図12において、セパレーター230のうち、細かな水玉模様が施されている部分が樹脂211を含む部分であり、模様が施されていない部分が樹脂211を含まない部分である。
【0205】
図12における、セパレーター230の長手方向の長さ(セパレーター230の長さ)Lが250mmであり、セパレーター230の長手方向に垂直な方向の長さ(セパレーター230の幅)Wが30mmである。
【0206】
図示するように、樹脂211は、セパレーター230の長手方向と垂直な方向にストライプ状に印刷された。また、樹脂211は、上面図におけるセパレーター230の左端にストライプの線が配置されるように印刷された。以下、ストライプの線が配置されている端部を、実施例1のセパレーター230の左端とする。セパレーター230の上面図において、印刷された樹脂211のストライプの線の幅(ストライプの幅)wが1mmであり、隣り合うストライプの線同士の間隔(ストライプの間隔)dが9mmである。セパレーター230上には、25本のストライプが印刷された。
【0207】
実施例1の電解質シート240のイオン伝導度を測定したところ、厚み方向のイオン伝導度σは14mS/cmであり、面内方向のイオン伝導度σ||は8.4×10-4mS/cmであった。すなわち、実施例1の電解質シート240の厚み方向のイオン伝導度σと、面内方向のイオン伝導度σ||との比σ/σ||は、約1.7×10であった。電解質シート240の詳細を、表1に示す。
【0208】
(実施例2)
実施例1の電解質シート240を、左端から80mmの長さに切断し、縦20mm、横25mm、厚さ0.10mmの亜鉛板と、縦20mm、横75mm、厚さ0.080mmの正極1との間に配置し、実施例2の電池を作製した。
【0209】
図13は、実施例2の電極の配置を説明するための図である。図13において、電解質シート240を構成するセパレーター230のうち、細かな水玉模様が施されている部分が樹脂211を含む部分であり、模様が施されていない部分が樹脂211を含まない部分である。
【0210】
図13(a)には、電解質シート240上に負極3として亜鉛板を配置した面における電池の上面図が示されている。図13(a)における、電解質シート240の長手方向の長さ(電解質シート240の長さ)Lが80mmであり、電解質シートの長手方向に垂直な方向の長さ(電解質シート240の幅)Wが30mmである。
【0211】
図示するように、亜鉛板は、電解質シート240の上に、亜鉛板の横の辺が樹脂211のストライプと垂直となり、亜鉛板の縦の辺が樹脂211のストライプと平行となるよう配置された。図13(a)における、亜鉛板のストライプと垂直な方向の長さ(亜鉛板の横の長さ)l23が25mmであり、亜鉛板のストライプと平行な方向の長さ(亜鉛板の縦の長さ)w23が20mmである。
【0212】
また、図示するように、亜鉛板は、電解質シート240の上に、亜鉛板と電解質シート240の上端、及び下端までの距離が等しくなるよう配置された。図13(a)における、亜鉛板と電解質シート240の上端との距離d231が5mm、亜鉛板と電解質シート240の下端との距離d232が5mmであった。また、亜鉛板と電解質シートの左端との距離d233が5mm、亜鉛板と電解質シート240の右端との距離d234が50mmであった。
【0213】
図13(b)には、電解質シート240上に正極を配置した面における電池の上面図が示されている。図示するように、正極1は、電解質シート240の上に、正極1の横の辺が樹脂211のストライプと垂直となり、正極1の縦の辺が樹脂211のストライプと平行となるよう配置された。図13(b)における、正極1のストライプと垂直な方向の長さ(正極1の横の長さ)l21が75mmであり、正極1のストライプと平行な方向の長さ(正極1の縦の長さ)w21が20mmである。
【0214】
また、図示するように、正極1は、電解質シート240の上に、正極1と電解質シート240の上端、及び下端までの距離が等しくなるよう配置された。図13(b)における、正極1と電解質シート240の上端との距離d211が5mm、正極1と電解質シート240の下端との距離d212が5mmであった。
【0215】
また、正極1は、電解質シート240の上に、正極1と電解質シート240の左端、及び右端までの距離が等しくなるよう配置された。図13(b)における、正極1と電解質シート240の左端との距離d213が5mm、正極1と電解質シート240の右端との距離d214が5mmであった。
【0216】
図13(c)には、電解質シート240の長手方向から見た電池の横面図が示されている。図13(c)における、電解質シート240の厚さTが0.5mm、亜鉛板の厚さt23が0.10mm、正極1の厚さt21が0.080mmである。
【0217】
図示するように、亜鉛板と正極1は、電解質シート240を挟んで、電解質シート240の左端に近い方の各電極の端部が揃うように配置されている。
【0218】
この電池に10Ωの抵抗を接続し、放電中の抵抗にかかる電圧を測定した。電圧は、ある時間から急速に低下することが確認された。これは、負極3に対向する位置の正極活物質量が減少し、電流密度が小さくなったためと考えられる。測定した電圧のグラフを図14に示す。
【0219】
放電完了後に電池を分解し、正極1を観察したところ、負極3に対向する位置の正極活物質は消費し尽くされた一方、負極3に対向する位置にない正極活物質は残存していた。このことから、実施例1の電解質シート240を用いることで、対向する位置にある活物質のみが反応する電池を作製できることがわかった。電池の詳細を、表2に示す。
【0220】
(実施例3)
以下に示すようにして、樹脂211としてポリエチレンを用い、固体電解質221としてLATP(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO))を用い、電解質シート240を作製した。
【0221】
粒子径20μmから50μmの範囲に分球したポリエチレン粒子と、粒子径20μmから50μmの範囲に分球したLATP粒子とを擂潰機を用いて混合し、混合粉を調整した。ポリエチレン粒子とLATP粒子の質量比(ポリエチレン粒子:LATP粒子)は、24:76であった。
【0222】
縦210mm、横297mm、厚み1.5mmのガラス板に、耐熱グリース(デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社製)を薄く塗布し、上記混合粉をグリース上に載せ、ガラス板ごと反転させることで、ガラス板上に固定化されていない余剰粒子を除去した。ガラス板上にさらに混合粉を乗せ、反転させ余剰粒子除去する作業を5回繰り返した。
【0223】
混合粉が載ったガラス板を190℃に加熱したホットプレート上に載せ、30分加熱した。その後、冷却し、樹脂211と固体電解質221が一体化した膜をガラス板からはがした。膜に残留したグリースをヘキサンで除去し、実施例3の電解質シート240を得た。電解質シート240の厚さは0.05mmであった。
【0224】
実施例3の電解質シート240のイオン伝導度を測定したところ、厚み方向のイオン伝導度σは0.1mS/cmであり、面内方向のイオン伝導度σ||は1.1×10-4mS/cmであった。すなわち、実施例3の電解質シート240の厚み方向のイオン伝導度σと、面内方向のイオン伝導度σ||との比σ/σ||は、約9.1×10であった。電解質シート240の詳細を、表1に示す。
【0225】
(実施例4)
縦22mm、横80mmの大きさに切った実施例3の電解質シート240を、縦20mm、横25mm、厚さ0.10mmの亜鉛板と縦20mm、横75mm、厚さ0.080mmの正極1との間に配置し、実施例4の電池を作製した。
【0226】
実施例4の電極の配置については、図13の記載を必要な範囲で採用できる。
【0227】
この電池に10Ωの抵抗を接続し、放電中の抵抗にかかる電圧を測定した。電圧は、ある時間から急速に低下することが確認された。これは、負極3に対向する位置の正極活物質量が減少し、電流密度が小さくなったためと考えられる。
【0228】
放電完了後に電池を分解し、正極1を観察したところ、負極3に対抗する位置の正極活物質は消費し尽くされた一方、負極3に対向する位置にない正極活物質は残存していた。このことから、実施例3の電解質シート240を用いることで、対向する位置にある活物質のみが反応する電池を作製できることがわかった。電池の詳細を、表2に示す。
【0229】
(比較例1)
幅30mm、長さ250mm、厚さ0.5mm、坪量45gのセルロース紙に10%食塩水を染み込ませ、比較例1の電解質シート240を作成した。
【0230】
比較例1の電解質シート240のイオン伝導度を測定したところ、厚み方向のイオン伝導度σは23mS/cmであり、面内方向のイオン伝導度σ||は15mS/cmであった。すなわち、比較例1の電解質シート240の厚み方向のイオン伝導度σと、面内方向のイオン伝導度σ||との比σ/σ||は、約1.5であった。電解質シート240の詳細を、表1に示す。
【0231】
(比較例2)
電解質シート240として、比較例1で作成したものを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、比較例2の電池を作製した。
【0232】
この電池に10Ωの抵抗を接続し、放電中の抵抗にかかる電圧を測定した。電圧は、実施例2及び4と同様に、ある時間から急速に低下することが確認されたが、その後、電圧低下は緩やかになった。急速な電圧低下は、負極3と対向する位置の正極活物質量が減少し、電流密度が小さくなったことに由来すると考えられる。その後の緩やかな電圧低下は、負極3に対向する位置の正極活物質が消費し尽くされ、負極3に対向する位置にない正極活物質が消費され始めたことに由来すると考えられる。測定した電圧のグラフを図15に示す。
【0233】
放電完了後に電池を分解し、正極1を観察したところ、負極3に対向する位置の正極活物質及び負極3に対向する位置にない正極活物質ともに消費し尽くされていた。電池の詳細を、表2に示す。
【0234】
【表1】
【0235】
【表2】
【0236】
(実施例5)
実施例1の電解質シート240を、左端から150mmの長さに切断した。切断した電解質シート240の第一面に、亜鉛板と正極1を、10mmの間隔を設けて左から右へ横方向に交互に並ぶように4個配置した。第一面の反対側の第二面には、第一面の亜鉛板と対向する位置に正極1を配置し、第一面の正極1と対向する位置に亜鉛板を配置した。亜鉛板の大きさは縦20mm、横25mm、厚さ0.10mmであり、正極1の大きさは縦20mm、横25mm、厚さ0.080mmであった。
【0237】
電解質シート240の第一面の左端から1番目の電極に、タブ電極として亜鉛板を取り付けた。また、電解質シート240の第一面の左端から4番目の電極に、タブ電極として銅箔を取り付けた。さらに、電解質シート240の第一面の左端から2番目と3番目の電極を、銅箔を取り付けることで短絡した。タブ電極、及び電極を短絡するための銅箔は、はんだ付けによって電極に接続された。
【0238】
電解質シート240の第二面の左端から1番目の電極と2番目の電極を、銅箔を取り付けることで短絡した。また、電解質シート240の第二面の左端から3番目の電極と4番目の電極を、銅箔を取り付けることで短絡した。電極を短絡するための銅箔は、はんだ付けによって電極に接続された。
【0239】
上記のようにタブ電極の取り付け、及び電極の短絡を行ったものを、タブ電極が露出するようにラミネートフィルム間に封止して、実施例5の電池モジュールを作製した。
【0240】
図16は、実施例5の電極の配置を説明するための図である。図16において、電解質シート240を構成するセパレーター230のうち、細かな水玉模様が施されている部分が樹脂211を含む部分であり、模様が施されていない部分が樹脂211を含まない部分である。なお、図16では、電池モジュールのラミネートフィルムは省略した。
【0241】
図16(a)には、電解質シート240の第一面における電池モジュールの上面図が示されている。図16(a)における、電解質シート240の長手方向の長さ(電解質シート240の長さ)Lが150mmであり、電解質シート240の長手方向に垂直な方向の長さ(電解質シート240の幅)Wが30mmである。
【0242】
図示するように、負極3となる亜鉛板及び正極1は、電解質シート240の上に、各電極の横の辺が樹脂211のストライプと垂直となり、各電極の縦の辺が樹脂211のストライプと平行となるよう配置された。配置された電極は、電解質シート240の左端から順に、負極3a、正極1b、負極3c、正極1dである。図16(a)における、各電極のストライプと垂直な方向の長さ(各電極の横の長さ)lが25mmであり、各電極のストライプと平行な方向の長さ(各電極の縦の長さ)wが20mmである。
【0243】
また、図示するように、各電極は、電解質シート240の上に、各電極と電解質シート240の上端、及び下端までの距離が等しくなるよう配置された。図16(a)における、各電極と電解質シート240の上端との距離d51が5mm、各電極と電解質シート240の下端との距離d52が5mmである。
【0244】
さらに、図示するように、各電極は、電解質シート240の上に、電解質シート240の左端、及び右端からの距離、及び電極間の間隔が等しくなるよう配置された。図16(a)における、負極3aと電解質シート240の左端との距離d53が10mm、正極1dと電解質シート240の右端との距離d54が10mm、各電極間の距離d55が10mmであった。
【0245】
電解質シート240の第一面の左端から1番目の電極である負極3aには、亜鉛板からなるタブ電極5aが取り付けられており、電解質シート240の第一面の左端から4番目の電極である正極1dには、銅箔からなるタブ電極5bが取り付けられている。
【0246】
また、電解質シート240の第一面の左端から2番目の電極である正極1bと、3番目の電極である負極3cの電極は、銅箔からなる導電体4aによって短絡されている。
【0247】
図16(b)には、電解質シート240の第二面における電池モジュールの上面図が示されている。
【0248】
図示するように、負極3となる亜鉛板及び正極1は、電解質シート240の上に、各電極の横の辺が樹脂211のストライプと垂直となり、各電極の縦の辺が樹脂211のストライプと平行となるよう配置された。配置された電極は、電解質シート240の左端から順に、正極1a、負極3b、正極1c、負極3dである。電解質シート240第一面と第二面において、それぞれ、負極3aと正極1aが、正極1bと負極3bが、負極3cと正極1cが、正極1dと負極3dが、それぞれ対向する位置に配置されている。
【0249】
図16(b)における、各電極のストライプと垂直な方向の長さ(各電極の横の長さ)lが25mmであり、各電極のストライプと平行な方向の長さ(各電極の縦の長さ)wが20mmである。
【0250】
また、図示するように、各電極は、電解質シート240の上に、各電極と電解質シート240の上端、及び下端までの距離が等しくなるよう配置された。図16(b)における、各電極と電解質シート240の上端との距離d51が5mm、各電極と電解質シート240の下端との距離d52が5mmである。
【0251】
さらに、図示するように、各電極は、電解質シート240の上に、電解質シート240の左端、及び右端からの距離、及び電極間の間隔が等しくなるよう配置された。図16(a)における、負極3aと電解質シート240の左端との距離d53が10mm、正極1dと電解質シート240の右端との距離d54が10mm、各電極間の距離d55が10mmであった。
【0252】
電解質シート240の第二面の左端から1番目の電極である正極1aと、2番目の電極である負極3bの電極は、銅箔からなる導電体4bによって短絡されている。また、電解質シート240の第二面の左端から3番目の電極である正極1cと、4番目の電極である負極3dの電極は、銅箔からなる導電体4cによって短絡されている。
【0253】
図16(c)には、電解質シート240の下端の長手方向から見た電池モジュールの横面図が示されている。図16(c)における、電解質シート240の厚さTが0.5mm、負極3a~3dの厚さt53が0.10mm、正極1a~1dの厚さt51が0.080mmである。
【0254】
図示するように、電解質シート240を挟んで対向する正極1と負極3は、各電極の左端部及び右端部が揃うように配置されている。
【0255】
実施例5の電池モジュールのタブ電極間の開放電圧は、2.7Vであった。実施例5の電池モジュールのタブ電極間の開放電圧は、7日経過後も2.7Vを維持した。電解質シート240の面内方向のイオン伝導度が低いために、電解質シート240の面内で電位分布を形成することができ、高い開放電圧を得られたと考えられる。電池モジュールの詳細を、表3に示す。
【0256】
(実施例6)
縦22mm、横150mmの大きさに切った実施例3の電解質シート240の第一面に、亜鉛板と正極1を、10mmの間隔を設けて左から右へ横方向に交互に並ぶように4個配置した。第一面の反対側の第二面には、第一面の亜鉛板と対向する位置に正極1を配置し、第一面の正極1と対向する位置には亜鉛板を配置した。亜鉛板の大きさは縦20mm、横25mm、厚さ0.10mmであり、正極1の大きさは縦20mm、横25mm、厚さ0.080mmであった。
【0257】
電解質シート240の第一面の左端から1番目の電極に、タブ電極として亜鉛板を取り付けた。また、電解質シート240の第一面の左端から4番目の電極に、タブ電極として銅箔を取り付けた。さらに、電解質シート240の第一面の左端から2番目と3番目の電極を、銅箔を取り付けることで短絡した。タブ電極、及び電極を短絡するための銅箔は、はんだ付けによって電極に接続された。
【0258】
電解質シート240の第二面の左端から1番目の電極と2番目の電極を、銅箔を取り付けることで短絡した。また、電解質シート240の第二面の左端から3番目の電極と4番目の電極を、銅箔を取り付けることで短絡した。電極を短絡するための銅箔は、はんだ付けによって電極に接続された。
【0259】
上記のようにタブ電極の取り付け、及び電極の短絡を行ったものを、タブ電極が露出するようにラミネートフィルム間に封止して、実施例6の電池モジュールを作製した。
【0260】
実施例6の電池モジュールの電極の配置については、図16の記載を必要な範囲で採用できる。
【0261】
実施例6の電池のタブ電極間の開放電圧は、2.7Vであった。タブ電極間の開放電圧は、7日経過後も2.7Vを維持した。電解質シート240の面内方向のイオン伝導度が低いために、電解質シート240の面内で電位分布を形成することができ、高い開放電圧を得られたと考えられる。
【0262】
(比較例3)
電解質シート240として、比較例1で作成したものを用いたこと以外は、実施例5と同様にして比較例3の電池モジュールを作製した。
【0263】
比較例3の電池のタブ電極間の開放電圧は、作成直後には2.0Vであったが、時間経過により速やかに電圧が低下し、1時間後には0.5Vまで電圧が低下した。電池モジュールの詳細を、表3に示す。
【0264】
【表3】
【符号の説明】
【0265】
1 正極
2 電解質部
3 負極
4 導電体
5 タブ電極
21 低イオン伝導領域
22 高イオン伝導領域
211 樹脂
221 固体電解質
222 電解液
230 セパレーター
240 電解質シート

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16