(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112337
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】磁気トルカ
(51)【国際特許分類】
B64G 1/32 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
B64G1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017222
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】戸丸 智博
(57)【要約】
【課題】比較的簡単な構造で、所望の剛性を確保しつつ磁気トルカの軽量化を実現する。
【解決手段】電磁石2bを有する電磁石部2と、電磁石部2を覆うように折り曲げられた単一の金属板を有する板状部材1とを備え、板状部材1は、電磁石部2を保持する保持部201と、板状部材1を宇宙機に取り付けるための固定部101と、宇宙機から電磁石部2に電力を供給する接続端子1bが取り付けた貫通孔301を有することを特徴とする磁気トルカ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石を有する電磁石部と、
前記電磁石部を覆うように折り曲げられた単一の金属板を有する板状部材と
を備え、
前記板状部材は、
前記電磁石部を保持する保持部と、
前記板状部材を宇宙機に取り付けるための固定部と、
前記宇宙機から前記電磁石部に電力を供給する接続端子が取り付けた貫通孔を有することを特徴とする磁気トルカ。
【請求項2】
前記電磁石部は、その軸方向両端において前記板状部材に対し固定されることを特徴とする請求項1に記載の磁気トルカ。
【請求項3】
前記金属板は、断面がコの字状に折り曲げられた収容部を有し、前記収容部における前記軸方向の両端部においてコの字状の前記断面を塞ぐようにして前記電磁石部が固定されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気トルカ。
【請求項4】
前記板状部材は、前記金属板と、前記金属板が取り付けられるとともに、前記固定部を有する他の金属板からなることを特徴とする請求項3に記載の磁気トルカ。
【請求項5】
前記他の金属板は、前記金属板の前記収容部の開口を塞ぐように前記電磁石部を覆っていることを特徴とする請求項4に記載の磁気トルカ。
【請求項6】
前記板状部材における前記固定部は、前記金属板のコの字状に折り曲げられた部分の端部から延在するフランジ状に開いた取り付け部に設けられた複数の貫通孔であることを特徴とする請求項3に記載の磁気トルカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙機に搭載される磁気トルカに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるような宇宙機に搭載される従来の磁気トルカは、所望の剛性を確保するため、複数の部材により電磁石部を保持していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら宇宙機に搭載される従来の磁気トルカの構造においては、複数の部材を組み合わせて構成しているため、構造が複雑化するだけでなく、質量の増加及び結合の負荷が発生し好ましくなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上を鑑み、本発明に係る磁気トルカは、
電磁石を有する電磁石部と、
前記電磁石部を覆うように折り曲げられた単一の板状部材を有し、
前記板状部材は、
前記電磁石部を保持する保持部と、
前記板状部材を宇宙機に取り付けるための固定部と、
前記宇宙機から前記電磁石部に電力を供給する接続端子が取り付けた貫通孔を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、比較的簡単な構造で、所望の剛性を確保しつつ軽量化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態における磁気トルカの分解斜視図
【
図2】本発明の一実施形態における磁気トルカの外観斜視図
【
図3】本発明の一実施形態における磁気トルカの例の拡大図
【
図4】本発明の一実施形態における磁気トルカの金属板の展開図
【
図5】本発明の一実施形態における磁気トルカの金属板の他の展開図
【
図6】本発明の他の実施形態における磁気トルカの外観斜視図
【
図7】本発明の他の実施形態における磁気トルカの分解斜視図
【
図8】本発明の他の実施形態における磁気トルカの断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第一実施形態)
本発明の実施例に係る宇宙機に搭載される磁気トルカTQについて、
図1から
図5を用いて説明する。
【0009】
図1には本実施形態に係る宇宙機に搭載される磁気トルカTQの分解斜視図を示している。
図1に示すように、本実施形態の磁気トルカTQは、詳細は後述するが、構造部材として曲げ部を有した板状部材1に電磁石部2が接合される。なお、板状部材1は金属板1aと接続端子1bと固定螺子1cから構成されている。
【0010】
金属板1aは一枚の(単一の)板金を
図1に示すようにコの字状に折り曲げて形成されている。コの字状に折り曲げた金属板1aの端部には、フランジ状に開いた取り付け部1dが設けられており、宇宙機に対して螺子固定されるための貫通孔101が磁気トルカTQの軸方向(後述するコイル2aの軸方向)に並設されている。なお、本実施形態においては貫通孔101を取り付け部1dの軸方向全体に亘って設けているが、これに限られず一部のみに設けてもよい。貫通孔101が軸方向に亘り複数並設されることにより、所望の寸法の宇宙機の固定部に対して任意に取り付けることができる。接続端子1bについて詳しくは
図3を用いて後述する。
【0011】
また、電磁石部2は軸部2aとそれに巻回されたコイル2bとで構成されている。軸部2aは軸方向に延びる軸2a1と、その両端に端部2a2を有している。端部2a2はその外径が矩形状に形成されており、
図2に示すように板状部材1のコの字状の部分を塞いでいる。コイル2aは接続端子1bとの接続部を有している。なお、
図1においては、接続端子1bとの接続部は図示を省略している。
【0012】
また、
図2には、本実施形態に係る磁気トルカTQの外観斜視図を示している。
図2に示すように、コの字状に折り曲げられて収容部をなす板状部材1の内部に電磁石部2が収容されている。電磁石部2は
図1に示す金属板1aにおけるコイル2bの軸方向の両端部に設けられた貫通孔201を保持部として利用し螺子固定される。
【0013】
金属板1aは電磁石部2の長手方向に平行に延在する1つの部材で形成され、同一部材で端部2a2を介し電磁石部2を保持するため、結合の損失無く磁気トルカTQの剛性と強度を確保することができ、不図示の宇宙機から受ける荷重伝達に対し電磁石部2を構成する部材の状態変化を低減することで磁気特性を安定させる。
【0014】
また金属板1aは電磁石部2の長手方向に平行な面と直交する垂直方向に面を持つコの字型に形成、換言すると長手方向に平行な複数の面で形成されたコの字型に形成され、電磁石部2の半径方向の曲げモーメント変化に対し直交する面が曲げ方向に対して有効に断面2次モーメントを増加することで全方位に剛性を確保する。
【0015】
また金属板1aは電磁石部2の周囲を囲う多面体とフランジ状に開いた取り付け部1dであることによって各々の面が平面であり電磁石部2の取り付け、接続端子1bの取り付け、宇宙機に対して磁気トルカTQの取り付けの機能を他の部材を必要とせずに実現することができる。
【0016】
このように構成された本実施形態に係る磁気トルカTQは、不図示の宇宙機に対し、取り付け部1dに設けられた貫通孔101に螺子などの固定部材を取り付けることで固定される。さらに、接続端子1bが宇宙機の電装部に接続され、電磁石部2に対して電流が引火されることによって磁界が発生し、宇宙機の姿勢制御に用いられる。
【0017】
ここで、本実施形態の金属板1aは、厚さ方向に貫通する貫通孔101を複数有し宇宙機との接合に用いる箇所以外にも貫通孔101を配置することで磁気トルカTQをより軽量にすることが可能である。また本実施形態の貫通孔101は円形であるが、これに限られず楕円形、矩形としてもよい。
【0018】
また、例えば
図3の拡大図に示すように、板状部材を厚さ方向に貫通する貫通孔301及び螺子孔401を介し、宇宙機からの電力供給を受ける接続端子1bが接合され、この接続端子1bを介して電磁石部2の接続部を宇宙機に結合するように構成されている。また本実施形態では接続端子1bを使用した結合の態様を示しているが、これに限られず宇宙機と電磁石部2を直接結合してもよい。
【0019】
ここで、構造部材として曲げ部を有した板状部材1は、本実施形態ではアルミウム合金の非磁性の金属板1aとしているが、例えば、
図4の金属板1aの展開図に示すように、一枚の板状部材から折り曲げて制作してもよいし、
図5の金属板1aの他の展開図に示すように、分割された複数の金属板1a1~1a5の端部を結合して金属板1aを制作してもよい。他にも削り出し等により一体の構造物として制作してもよい。
【0020】
さらに、
図5における金属板1a1、1a2、1a3、1a4、1a5は、例えば、所望の剛性方向が明確であれば、金属板1aに及ぼされる曲げモーメントに対して断面二次モーメントが優位になるように各々の面の厚さ方向に寸法を変更して組み合わせてもよい。
【0021】
なお、金属板1aを形成する材料は、前述した金属材料に限らず、樹脂部材、または、炭素繊維強化プラスチック、または、非磁性の金属材料でもよいし、異なる複数の材料を組み合わせた複合体で構成してもよい。
【0022】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態について説明する。本実施形態は上述した第一実施形態と多くの構成が同じであり、同じ構成については同じ符号を用いるとともに説明を省略し、その相違点についてのみ説明する。
【0023】
本実施形態においては、
図6の外観斜視図に示すように、第一実施形態における金属板1aのフランジ状に開いた取り付け部1dから貫通孔101を成す部分を削除しフランジ状に開いた取り付け部3bを有する金属板3aを設ける。さらに、取り付け部3bにより結合される第二構造物5を設けている。この第二構造物5は、金属板5aとそれに設けられた貫通孔501を有しており、貫通孔501を利用して磁気トルカTQが宇宙機に対して螺子固定される。このように、本実施形態においては、板状部材として金属板3aと金属板5aとを組み合わせて用いて、電磁石部2の保持と宇宙機への固定、電気接続を実現している。
【0024】
なお、本実施形態においても第一実施形態と同様に貫通孔501を金属板3aの軸方向全体に亘って設けているが、これに限られず一部のみに設けてもよい。貫通孔501が軸方向に亘り複数並設されることにより、所望の寸法の宇宙機の固定部に対して任意に取り付けることができる。
【0025】
図7には本実施形態に係る磁気トルカTQの分解斜視図を示している。
図7に示すように、金属板3aは、フランジ状に開いた取り付け部3bに設けられた貫通孔601を利用し固定螺子3cによって金属板5aに取り付けられる。
【0026】
また、
図8の断面図に示すように電磁石部2の端部2a2を金属板5aの深ざぐり付き貫通孔701を利用して固定螺子5bで取り付けることで固定螺子5の螺子頭部を金属板5内に格納し宇宙機への取り付け面を平面にすることができる。また、電磁石部2は第一実施形態と同様に金属板3aに取り付けてもよい。
【0027】
ここで、本実施形態では金属板3aと金属板5aとを螺子固定しているが、接着及び溶接による結合でもよいし、金属板3aと金属板5aとを一体の構造物として成形してもよい。
【0028】
以上説明したように、本実施形態においては、金属板5aを設けることを特徴としている。電磁石部2を覆う金属板3aを単一の板金をコの字状に折り曲げた1つの部材で形成している点で第一実施形態と共通しており、電磁石部2の半径方向の曲げモーメント変化に対し直交する面が曲げ方向に対して有効に断面2次モーメントを増加することで全方位に剛性を確保することができる。加えて、金属板5aは電磁石部2に対し、コの字状に折り曲げた金属板3aの開口部側を覆っている。これにより、宇宙機から伝達される振動などの荷重伝達の影響を金属板5a自体の剛性によってより低減することが可能となり、磁気トルカTQの磁気特性をより安定化することができる。
【0029】
(他の実施形態)
また、本発明は上述した第一実施形態及び第二実施形態に限定されるものではない。例えば、第一実施形態の曲げ部を有する板状部材1からフランジ状に開いた取り付け部1dを削除し電磁石部2を直接宇宙機に結合することも可能である。
【0030】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 板状部材
101 貫通孔
201 貫通孔
301 貫通孔
401 螺子孔
1a 金属板
1b 接続端子
1c 固定螺子
1d 取り付け部
2 電磁石部
2a 軸部
2a1 軸方向に延びる軸
2a2 端部
2b コイル
3 板状部材
3a 金属板
3b 取り付け部
501 貫通孔
601 貫通孔
4 第二構造物
4a 金属板
4b 固定螺子
701 深ざぐり付き貫通孔