(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112340
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】熱膨張性不織布およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 3/16 20060101AFI20240814BHJP
D04H 1/728 20120101ALI20240814BHJP
【FI】
D04H3/16
D04H1/728
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017237
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】島 嗣典
(72)【発明者】
【氏名】江草 史典
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA13
4L047AA19
4L047AA25
4L047AA29
4L047AB02
4L047AB03
4L047AB09
4L047BA08
4L047CB04
4L047CB08
4L047CB10
(57)【要約】
【課題】 通気性を有するとともに、高温の空気により素早く膨張するような、熱膨張性不織布を提供する。
【解決手段】 熱膨張性不織布1は、熱膨張性を有する機能性粒子4,4が一体化された合成樹脂製の長繊維を含む。前記長繊維は、複数の大径部2,2と小径部3,3とを交互に並べて数珠つなぎにしたように、繊維の長手方向に径が変化している。小径部3は、前記合成樹脂により形成されたモノフィラメントである。大径部2には、前記機能性粒子4,4が含まれている。小径部3の繊維径は、大径部2に含まれる機能性粒子4の径以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張性を有する機能性粒子が一体化された合成樹脂製の長繊維を含む熱膨張性不織布であって、
前記長繊維は、複数の大径部と小径部とを交互に並べて数珠つなぎにしたように、繊維の長手方向に径が変化しており、
前記小径部は、前記合成樹脂により形成されたモノフィラメントであり、
前記大径部には、前記機能性粒子が含まれており、
前記小径部の繊維径は、前記大径部に含まれる前記機能性粒子の径以下である、
熱膨張性不織布。
【請求項2】
前記機能性粒子が亜リン酸水素アルミニウムの粒子である
請求項1に記載の熱膨張性不織布。
【請求項3】
前記大径部はひも状もしくは団子状であり、
前記機能性粒子は、膜状もしくは網状もしくは繊維の束状になった前記合成樹脂によって包まれて、または、前記合成樹脂により接着されて、前記大径部に一体化されている、
請求項1または請求項2に記載の熱膨張性不織布。
【請求項4】
前記小径部の繊維径が、前記機能性粒子の直径の1/100以上である
請求項1に記載の熱膨張性不織布。
【請求項5】
前記小径部の繊維径が、100ナノメートル以上10マイクロメートル以下であり、前記機能性粒子の直径が300ナノメートル以上200マイクロメートル以下である、
請求項4に記載の熱膨張性不織布。
【請求項6】
請求項1に記載の熱膨張性不織布を製造する方法であって、
前記合成樹脂を加熱して溶融もしくは溶剤により溶解して液状化して、液状化した合成樹脂中に前記機能性粒子を分散させる第1の工程、
第1の工程に引き続き、前記機能性粒子が分散した液状の合成樹脂を、メルトブロー法もしくはエレクトロスピニング法により紡糸して長繊維としながら、不織布とする第2の工程、
を含む熱膨張性不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性を有する機能性粒子を含む熱膨張性不織布、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱膨張性黒鉛など、熱膨張性を有する機能性粒子は、高温にさらされたりして熱を受けると膨張する。この熱膨張性を利用して、通気性等を調整することが試みられている。例えば、建物の天井パネルに穴をあけておいて、通常時には、気流が抜けることを許容する構造としながら、火災等により周囲が高温になった際には、穴をふさぐか小さくするかして、天井パネルの通気性を制限することが試みられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、防火軒天井パネルにおいて、通気穴に円筒状のプラスチック複合体をはめ込み、プラスチック複合体に熱膨張性黒鉛を含ませる技術が開示されており、火災等により周囲が高温になると、プラスチック複合体(熱膨張性の部材)に含まれる熱膨張性黒鉛が膨張して、通気穴がふさがれて、通気が制限されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるような従来の熱膨張性の部材において通気性を調整しようとする場合には、以下のような問題を生じやすかった。
まず、特許文献1に開示されるような従来の熱膨張性の部材は、素材としては通気性を有していないため、成形して部材とする際には、何らかの穴や空気通路を成形により作り出す必要があった。特許文献1の技術では、貫通穴を有する円筒状に部材が成形される。これら穴は通常1ミリメートルから数センチメートルの大きさであるが、穴が大きいと、通路が閉塞するのに時間がかかる。
【0006】
また、従来技術では、熱膨張性黒鉛がプラスチック複合材に練りこまれるようにして含まれているため、熱膨張性黒鉛の膨張が不均一で遅いものとなりがちである。すなわち、プラスチック複合材の周囲に高温の空気が到達しても、プラスチック複合材は、表面から徐々に熱せられるため、表面よりも奥の部分では温度上昇が遅くなる。そのため、プラスチック複合材の奥の部分はなかなか膨張開始温度に達せず、膨張がおくれる。しかも、プラスチック複合材の表面部分が熱せられて膨張すると、表面部分のみが膨張し、その膨張した部分が断熱層のように働いて、かえってプラスチック複合材の奥の部分が熱せられるのを妨げ、膨張を遅らせてしまう。
【0007】
本発明の目的は、通気性を有するとともに、高温の空気により素早く膨張するような、熱膨張性不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、鋭意検討の結果、長繊維を含むように不織布を構成し、長繊維に大径部と小径部を数珠つなぎ状に設けるとともに、熱膨張性の機能性粒子を大径部に含ませるようにしつつ、大径部の機能性粒子の径よりも小径部の繊維径を小さくした熱膨張性不織布にすると、上記課題が解決することを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、熱膨張性を有する機能性粒子が一体化された合成樹脂製の長繊維を含む熱膨張性不織布であって、前記長繊維は、複数の大径部と小径部とを交互に並べて数珠つなぎにしたように、繊維の長手方向に径が変化しており、前記小径部は、前記合成樹脂により形成されたモノフィラメントであり、前記大径部には、前記機能性粒子が含まれており、前記小径部の繊維径は、前記大径部に含まれる前記機能性粒子の径以下である、熱膨張性不織布である(第1発明)。
【0010】
第1発明において、好ましくは、機能性粒子が亜リン酸水素アルミニウムの粒子である(第2発明)。また、第1発明もしくは第2発明において、好ましくは、前記大径部はひも状もしくは団子状であり、前記機能性粒子は、膜状もしくは網状もしくは繊維の束状になった前記合成樹脂によって包まれて、または、前記合成樹脂により接着されて、前記大径部に一体化されている(第3発明)。
また、第1発明において、好ましくは、前記小径部の繊維径が、前記機能性粒子の直径の1/100以上である(第4発明)。さらに、第4発明において、好ましくは、前記小径部の繊維径が、100ナノメートル以上10マイクロメートル以下であり、前記機能性粒子の直径が300ナノメートル以上200マイクロメートル以下である(第5発明)。
【0011】
また、本発明は、第1発明の熱膨張性不織布を製造する方法であって、前記合成樹脂を加熱して溶融もしくは溶剤により溶解して液状化して、液状化した合成樹脂中に前記機能性粒子を分散させる第1の工程、第1の工程に引き続き、前記機能性粒子が分散した液状の合成樹脂を、メルトブロー法もしくはエレクトロスピニング法により紡糸して長繊維としながら、不織布とする第2の工程、を含む熱膨張性不織布の製造方法である(第6発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱膨張性不織布(第1発明)によれば、大径部と小径部を有する長繊維を含んで熱膨張性不織布が構成されており、不織布が通気性を有している。本発明の熱膨張性不織布は、不織布の内部を気流が通過するような配置や構成で使用することができる。
また、第1発明の熱膨張性不織布は、高温の空気により素早く膨張する。すなわち、熱膨張性不織布に通気性があるので、高温の空気が到達した際には、高温の空気が不織布内部に侵入しやすく、不織布を抜けやすい。これにより、不織布全体が高温の空気により熱せられやすくなる。長繊維の大径部に含まれる熱膨張性の機能性粒子は、繊維の周囲の高温空気により急速に熱せられて膨張する。これにより、熱膨張性不織布は、高温の空気により素早く膨張する。
例えば、天井パネルの通気穴を覆うように、第1発明の熱膨張性不織布を配置しておけば、高温の空気が通気穴を通過する際に、穴に配置された熱膨張性不織布が素早く膨張して熱膨張性不織布の通気性が制限され、パネルの通気穴をふさぐことができる。
【0013】
さらに、第2発明の熱膨張性不織布のようにすれば、火災時のような高温の空気に対しても確実に膨張する。また、さらに、第3発明の熱膨張性不織布のようにすれば、機能性粒子を覆う合成樹脂の層が非常に薄いものとなり、高温の空気により、熱膨張性の機能性粒子が素早く温められるようになって、より素早く不織布が膨張する。
また、さらに、第4発明や第5発明の熱膨張性不織布のようにすれば、通気性がより良好となり、高温の空気によって、より素早く熱膨張性不織布を膨張させることができる。
【0014】
また、第6発明の熱膨張性不織布の製造方法によれば、第1発明の熱膨張性不織布を効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の熱膨張性不織布の構造を示す模式図である。
【
図2】大径部及び小径部の構造を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態の熱膨張性不織布の実施例の構造を示す顕微鏡写真である。
【
図4】機能性不織布の実施例2の構造を示す顕微鏡写真である。
【
図5】機能性不織布の実施例3の構造を示す顕微鏡写真である。
【
図6】第1実施形態の熱膨張性不織布の使用形態の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照しながら、熱膨張性を有する機能性粒子を長繊維に一体化した熱膨張性不織布の発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0017】
第1実施形態の熱膨張性不織布1は、熱膨張性を有する機能性粒子4,4が一体化された合成樹脂製の長繊維を含む熱膨張性不織布である。ここで長繊維とは、不織布を構成する繊維における短繊維と対比される長い繊維のことである。長繊維はフィラメント・ヤーンとも呼ばれる。短繊維がステープル・ファイバーなどと呼ばれ、その長さがおおむね数mmから数十cmであるのに対し、長繊維は、短くカットされていない繊維である。長繊維は、典型的にはメルトブロー法やエレクトロスビニング法やスパンボンド法により紡糸されて、そのまま積み重ねられて不織布化される、なお、熱膨張性不織布1は、長繊維のみで構成される必要はなく、短繊維を含んでいてもよく、長繊維と短繊維とが絡み合うように混紡されていてもよい。
【0018】
必須ではないが、好ましくは、熱膨張性不織布1に対する機能性粒子4,4の配合量は、10~500g/平方メートル程度である。
【0019】
また、熱膨張性不織布は、単層であってもよいが、複数の不織布層やフィルム、シート、織布等が積層された積層不織布であってもよい。また、熱膨張性不織布は、織布やメッシュ素材の上に長繊維が不織布化された層が積層された複合不織布であってもよい。機能性粒子が一体化された合成樹脂製の長繊維は、いずれかの不織布層のみに含まれていてもよい。
【0020】
また、熱膨張性不織布1に含まれる長繊維のすべてが、機能性粒子が一体化された合成樹脂製の長繊維であってもよいが、熱膨張性不織布1は、他の長繊維、例えば、機能性粒子が一体化されていない長繊維を含んでいてもよい。
必須ではないが、本実施形態の熱膨張性不織布1は、機能性粒子が一体化された合成樹脂製の長繊維をエレクトロスピニング法により不織布化した、単層の熱膨張性不織布である。
【0021】
図1に、第1実施形態の熱膨張性不織布1を模式的に示す。また、
図3は第1実施形態の熱膨張性不織布の実施例の顕微鏡写真である。なお、
図1では、小径部3,3を一本の実線で表現している。
熱膨張性不織布1に含まれる長繊維は、複数の大径部2,2と小径部3,3とが交互に並ぶよう、繊維の長手方向に径が変化している。いわば、長繊維は大径部2,2と小径部3,3とが数珠つなぎになったような構成をした繊維である。
【0022】
長繊維の小径部3,3は、前記合成樹脂により形成されたモノフィラメントである。合成樹脂は繊維化できるものであれば特に限定されないが、メルトブロー法やエレクトロスピニング法による長繊維の製造に適した合成樹脂であることが好ましい。また、合成樹脂は、後述する機能性粒子に接着するような樹脂であることが好ましい。好ましくは、長繊維の原料となる合成樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂や塩化ビニル樹脂などが使用できる。
【0023】
小径部3,3となるモノフィラメントは、前記した合成樹脂のみで構成されていてもよいが、他の配合材料、例えば、強化材や増量材などの小径部の直径よりも径が小さい粒子や、合成樹脂の特性を改善する薬剤等を含んでいてもよい。
【0024】
必須ではないが、小径部3,3の繊維径は、好ましくは、100ナノメートル以上10マイクロメートル以下である。小径部3,3の繊維径は、特に好ましくは、500ナノメートル以上3マイクロメートル以下である。ここで、繊維径とは、繊維の延在方向に直交する方向に測った繊維の直径のことであり、熱膨張性不織布1の顕微鏡写真を撮影し、写真上で小径部の繊維径を測定して求める。好ましくは、10か所ないし20か所の小径部で繊維径を測定し、それらを平均したものを小径部の繊維径として扱う。
【0025】
大径部2,2には、熱膨張性の機能性粒子4,4が含まれている。必須ではないが、大径部2,2の少なくとも一部は、機能性粒子4,4の複数が、前記合成樹脂により、ひも状もしくは団子状に固められて形成されている。ここで、ひも状とは、大径部の形状に関し、繊維の延在方向の長さが繊維の延在方向に直交する方向の長さよりも大きい、好ましくは3倍以上であることを意味する。また、団子状とは、大径部の形状に関し、繊維の延在方向の長さが繊維の延在方向に直交する方向の長さと同程度、好ましくは1/2以上2倍以下であることを意味する。なお、長繊維には、機能性粒子を含まない大径部や機能性粒子1つのみを含む大径部が存在していてもよい。
【0026】
大径部2,2の径は、小径部3,3の繊維径よりも大きい。大径部の径とは、繊維の延在方向に直交する方向で測った直径のことである。好ましくは、10か所ないし20か所の大径部で直径を測定し、それらを平均したものを大径部の径として扱う。必須ではないが、好ましくは、大径部2,2の径は150ナノメートル以上300マイクロメートル以下である。特に好ましくは、大径部2,2の径は1マイクロメートル以上50マイクロメートル以下である。また、好ましくは、大径部2,2の径は、小径部3,3の繊維径の3倍~20倍であり、特に好ましくは、4倍から10倍である。
【0027】
図2に大径部2,2及び小径部3,3の構造を模式的に示す。大径部2には、複数の熱膨張性の機能性粒子4,4が含まれている。図示した形態において、これら機能性粒子4,4は、小径部を構成する合成樹脂と同じ合成樹脂により包まれて、あるいは接着されて、ひも状もしくは団子状に固められている。大径部2,2では、合成樹脂によって機能性粒子4,4が互いに接着されていてもよいし、あるいは、フィルム状もしくは網状となった合成樹脂によって機能性粒子4,4が包まれていてもよい。大径部2,2では、繊維の径方向に機能性粒子が1つだけ存在していてもよいが、繊維の径方向に機能性粒子が複数存在していてもよい。大径部2,2の端部では、大径部に含まれる合成樹脂がそのまま小径部3,3のモノフィラメントになっていくよう、大径部2と小径部3とが連続している。
【0028】
大径部2,2に含まれる機能性粒子は、熱膨張性を有する。すなわち、本実施形態の熱膨張性不織布1では、熱膨張性を有する粒子が機能性粒子として使用されている。熱膨張性を有する粒子としては、例えば、熱膨張性マイクロカプセルや熱膨張性黒鉛や亜リン酸アルミニウムなどが例示される。熱膨張性を有する亜リン酸アルミニウムの粒子として、例えば、太平化学産業株式会社の「APA-100」等が例示される。亜リン酸アルミニウム粒子の中でも、特に、亜リン酸水素アルミニウム粒子(太平化学産業株式会社の「NSF」等)が好ましく使用できる。これら粒子は、所定の温度に熱せられると膨張する性質を有している。大径部2,2に熱膨張性を有する粒子を含ませると、熱膨張性不織布が熱せられた際に、大径部2,2が膨張して不織布の空隙部を小さく、狭くするよう変化し、不織布の通気性が小さくなる変化が生じる。
【0029】
小径部3,3の繊維径Dsは、大径部2,2に含まれる前記機能性粒子4,4の直径Dp以下である。小径部3,3の繊維径Dsと前記機能性粒子4,4の直径Dpが、実質的に同じであってもよい。なお、本発明における前記機能性粒子4,4の直径Dpとは、体積平均径のことである。大径部に含まれる前記機能性粒子4,4の直径Dpは、典型的には、300ナノメートル以上200マイクロメートル以下である。また、必須ではないが、好ましくは、小径部3,3の繊維径Dsが、前記機能性粒子4,4の直径Dpの1/100以上である。
【0030】
上記第1実施形態の熱膨張性不織布1の製造方法の例を説明する。上記熱膨張性不織布1は、メルトブロー法もしくはエレクトロスピニング法を応用して製造することができる。
【0031】
まず、第1の工程として、液状化させた合成樹脂と熱膨張性の機能性粒子が混合される。合成樹脂は、加熱して溶融させることにより、もしくは溶剤により溶解することにより、液状化される。液状化した合成樹脂中に機能性粒子が混合され、分散させられる。機能性粒子をあらかじめ合成樹脂に練りこんでおいて、それを加熱し溶融させて、機能性粒子が分散した液状の合成樹脂を得てもよいし、合成樹脂を溶剤等によって溶解させて液状化してから機能性粒子を混合し分散させてもよい。
【0032】
本実施形態においては、ポリウレタン樹脂を溶剤によって溶解して液状化し、そこに機能性粒子4,4として亜リン酸水素アルミニウムの粉末(太平化学産業株式会社製、NSF、体積平均径5マイクロメートル)を混合し、攪拌して分散させた。
【0033】
次に、第2の工程として、第1の工程に引き続き、前記機能性粒子4,4が分散した液状の合成樹脂を、メルトブロー法もしくはエレクトロスピニング法により紡糸して長繊維としながら、堆積させて不織布とする。
【0034】
紡糸ノズルから送り出された液状の合成樹脂は、遠心力や重力、静電気力等によって引き延ばされて細い繊維状になる。この細い繊維が、上記長繊維の小径部3,3となる。この時、機能性粒子4,4が液状の合成樹脂とともにノズルから送り出されると、機能性粒子4,4が集まった部分は、ひも状もしくは団子状に固まって大径部2,2となりつつ、余剰の合成樹脂が引き延ばされて小径部3,3ができていき、大径部2,2と小径部3,3が交互に数珠つなぎとなった長繊維が連続してできる。できた長繊維は、溶剤が揮発したり温度が下がったりして固化しながら、紡糸装置の基台上に堆積して、熱膨張性不織布1が製造される。
【0035】
実施例では、亜リン水素酸アルミニウムである「NSF」(平均粒子径5マイクロメートル)を機能性粒子として用いて、大径部2,2の直径がおよそ2~10マイクロメートル(平均径6マイクロメートル)で、小径部3,3の直径がおよそ0.5~1.5マイクロメートル(平均径0.9マイクロメートル)であるような熱膨張性不織布1が得られた。得られた熱膨張性不織布1に対する機能性粒子4,4の配合量は、おおむね100g/平方メートルであった。長繊維をたくさん積層するようにすれば、熱膨張性不織布1における単位面積当たりの機能性粒子4,4の配合量をもっと多くすることもできる。また、
図3に実施例の熱膨張性不織布の顕微鏡写真を示す。
図3では、繊維の形態がよくわかるように、不織布の厚み方向のごく一部の層のみを撮影している。
図4,
図5も同様である。
【0036】
機能性粒子の配合量や、液状の合成樹脂の粘度や送り出し速度、ノズル径、静電気の印加電圧、ノズルから基台までの距離、雰囲気温度等を調整することにより、大径部2,2と小径部3,3の大きさや長さ、直径、両者の比率等を調整することができる。
【0037】
メルトブロー法もしくはエレクトロスピニング法を利用して上記熱膨張性不織布1を製造すると、紡糸される際に、大径部となる部分から小径部となる部分へと合成樹脂が吸い出されるので、大径部に残る合成樹脂が少なくなる。これにより、大径部において機能性樹脂を覆う合成樹脂の被膜が薄くなったり網状になったりする。機能性粒子が粒子表面での物質交換や吸着、反応等を行いうるものである場合には、合成樹脂の被膜が薄くなったり網状になることにより、機能性粒子の熱膨張性や他の機能がより効果的に発揮されるようになり、好ましい。
【0038】
図6には、第1実施形態の熱膨張性不織布1の使用形態の例を、断面図で模式的に示す。筒状の通気通路9に対し、第1実施形態の熱膨張性不織布1が取りつけられている。通気通路9は左端と右端で開口しており、白抜き矢印で図示したように、左端から流れ込んだ空気が通気通路9を通って右端から流れ出ていくよう構成されている。
【0039】
熱膨張性不織布1は、通気通路9の内部空間を左端側と右端側に間仕切りするように設けられている。好ましくは、本実施形態のように、気流の流れ方向に対し斜めに熱膨張性不織布1が設けられ、熱膨張性不織布1の面積が通路の断面積よりも大きくされる。通気通路9の左端から流れ込んだ空気は、通気性を有する熱膨張性不織布1を通過して、通気通路9の右端から流れ出ていく。
必須ではないが、好ましくは、熱膨張性不織布1の下流側に、金属メッシュなどのサポート部材を設けてもよい。
【0040】
本使用形態において、通常時には、熱膨張性不織布1の通気性が維持され、通気通路9は気流を流す通気通路として機能する。一方、気流の上流側で火災が発生するなどして、高温の、熱膨張性粒子の膨張開始温度よりも高い温度の空気が通気通路9に流れ込んでくると、高温の気流により、熱膨張性不織布1に含まれる熱膨張性の機能性粒子が膨張し、熱膨張性不織布1の通気性が制限される。これにより、通気通路9を気流が流れにくくなり、下流側に高温の気流が流れ出ていくことが抑制あるいは阻止される。
【0041】
上記実施形態の熱膨張性不織布1の作用および効果について説明する。
特許文献1のような従来の熱膨張性部材においては、部材の材料そのものには通気性がなく、通気性が必要な場合には、成形等により通気穴を形成してやる必要があった。一方、本発明の熱膨張性不織布1によれば、大径部と小径部を有する長繊維を含んで熱膨張性不織布が構成されており、不織布は通気性を有している。したがって、上述した
図6の使用形態のように、本発明の熱膨張性不織布は、不織布の内部を気流が通過するような配置や構成で使用することができる。
【0042】
また、特許文献1のような従来の熱膨張性部材においては、熱膨張性材料が樹脂に埋入するように練りこまれており、従来の熱膨張性部材では、部材の表面から加熱されて膨張していくため、部材全体を均一に膨張させることは難しく、従来の熱膨張性部材では、部材の表面から内部に熱が伝わるのに時間がかかり、膨張が遅かった。特に、部材の表面だけが膨張してしまうと、膨張した部分が一種の断熱層のように働いて、部材の奥の部分の膨張が妨げられやすかった。
【0043】
上記実施形態の熱膨張性不織布1においては、大径部2,2と小径部3,3が交互にならんだ長繊維が形成されて、熱膨張性の機能性粒子4,4は長繊維の大径部2,2に含まれていて、熱膨張性不織布1がそのような長繊維を含むように構成されている。
また、熱膨張性不織布1に含まれる長繊維が、複数の大径部2,2と小径部3,3とが交互に並ぶよう、繊維の長手方向に径が変化しているため、繊維同士が重なり合う際には、大径部2,2同士が接触する部分や、大径部2と小径部3が接触する部分ができる。このような部分ができると、長繊維が積み重ねられて不織布化される際に、厚み方向に隙間を生じさせることになる。そのため、上記熱膨張性不織布1では、小径部3の繊維径を細くしても、長繊維の重なりが平面状につぶれてしまい不織布が薄板状になって通気性が低下してしまうことが抑制される。すなわち、熱膨張性不織布1に含まれる長繊維が、複数の大径部と小径部とが交互に並ぶよう、繊維の長手方向に径が変化していることにより、長繊維の重なり合いが3次元的な厚みを有する立体的な構造となり、通気性の低下を抑制できる。そして、熱膨張性不織布1では、小径部3,3の繊維径は、大径部に含まれる前記機能性粒子4,4の直径以下であるため、小径部の繊維が、不織布の繊維間の隙間を小さくしてしまうことが抑制され、不織布の通気性が低くなってしまうことを抑制できる。
【0044】
そのため、上記実施形態の熱膨張性不織布1は、高温の空気により素早く膨張する。すなわち、熱膨張性不織布に通気性があるので、高温の空気が到達した際には、高温の空気が不織布内部に侵入しやすく、不織布を抜けていきやすくなる。これにより、不織布全体が高温の空気により熱せられやすくなる。長繊維の大径部に含まれる熱膨張性の機能性粒子は、繊維の周囲の高温の空気により急速に熱せられて膨張する。これにより、熱膨張性不織布は、高温の空気により素早く膨張できる。
【0045】
また、必須ではないが、特に、上記実施形態の熱膨張性不織布1のように、機能性粒子が亜リン酸水素アルミニウムの粒子である場合には、機能性粒子の膨張が素早いうえに、膨張した機能性粒子の耐火性も良好であって、火炎等にさらされても膨張状態を維持できるため、火災の際に火炎等を遮断するような用途にも使用することができる。
【0046】
また、必須ではないが、特に上記実施形態の熱膨張性不織布1のように、熱膨張性の機能性粒子4,4が合成樹脂によりひも状もしくは団子状に固められて大径部2,2となって長繊維と一体化されている場合には、機能性粒子の配合量を増加させても、不織布の通気性低下が抑制可能である。機能性粒子の配合量が増えると、熱膨張性不織布1の中の空間における大径部2,2の占める割合が増えることになるが、大径部2,2がひも状もしくは団子状となっていると、大径部同士が接触してもその周囲に空間が残されることになり、繊維間の隙間がふさがれることが抑制される。このような熱膨張性不織布1では、機能性粒子の配合量を増加させても、不織布の通気性低下が抑制可能であり、高温の空気により素早く膨張できる。そして、高温の空気が不織布を通過するように加熱した場合には、不織布の内部からも均一に膨張させることができる。
【0047】
そして、上記実施形態の熱膨張性不織布1のように、機能性粒子は、膜状もしくは網状もしくは繊維の束状になった前記合成樹脂によって包まれて、または、前記合成樹脂により接着されて、前記大径部に一体化されている場合には、機能性粒子の大部分が長繊維大径部の表面付近に配置されやすくなるとともに、機能性粒子と外気の間を隔てる合成樹脂がごく薄いものとなる。そのため、高温の空気により、熱膨張性の機能性粒子は速やかに熱せられて、膨張することとなり、熱膨張性不織布1の膨張が特に素早いものとなる。
【0048】
また、上記実施形態の熱膨張性不織布1では、長繊維の大径部2,2に機能性粒子4,4が含まれているので、長繊維を積み重ねていくだけで、ほぼ均一に機能性粒子4,4を分散させることができる。すなわち、不織布の厚み方向全体にわたって機能性粒子4,4を均一に分散させて含ませることができる。このような機能性不織布1に、熱風を通過させて加熱すれば、熱膨張性不織布を均一に膨張させることができる。
【0049】
また、熱膨張性不織布1では、高温の空気にさらされて熱膨張性の機能性粒子が膨張すると、大径部2,2が膨張して、繊維と繊維の間の空間が小さくなる。この作用により、熱膨張性不織布1では、熱を受けると、不織布の通気性を低くなるように変化させることができる。例えば、天井パネルの通気穴に、熱膨張性不織布1を配置しておけば、通常時(空気の温度が低い時)は通気穴により通気をおこないつつ、火災発生などにより高温の空気が通気穴を通過する際には、穴に配置された熱膨張性不織布が均一かつ素早く膨張して、パネルの通気穴をふさいで、穴の通気性を制限することができる。すなわち、通気穴や通気経路の部分に熱膨張性不織布1を利用すれば、通常時は通気させつつ、火災発生時など高温の空気を止めたい際には、通気性を制限したり、通気性をなくしたりして、高温の空気が熱膨張性不織布から先に行かないようにすることができる。
図6に示した通気通路における使用形態でも同様の作用を奏する。
【0050】
また、さらに、熱膨張性不織布1のように、小径部3,3の繊維径が、熱膨張性の機能性粒子4,4の直径の1/100以上であるようにした場合には、大径部と小径部がバラバラになってしまうことが抑制され、大径部2,2の存在により長繊維の重なり具合に隙間が生じやすくなり、熱膨張性不織布の通気性がより良好となる。したがって、高温の空気によって、より素早く、より均一に熱膨張性不織布を膨張させることができる。
【0051】
また、さらに、熱膨張性不織布1のように、小径部の繊維径が、100ナノメートル以上10マイクロメートル以下であり、前記機能性粒子の直径が300ナノメートル以上200マイクロメートル以下であるようにした場合には、長繊維の大径部と大径部の間の隙間を小径部がふさいでしまうことが抑制され、熱膨張性不織布の通気性がより良好となる。したがって、高温の空気によって、より素早く、より均一に熱膨張性不織布を膨張させることができる。
【0052】
また、上記したような、前記合成樹脂を加熱して溶融もしくは溶剤により溶解して液状化して、液状化した合成樹脂中に前記機能性粒子を分散させる第1の工程、および、第1の工程に引き続き、前記機能性粒子が分散した液状の合成樹脂を、メルトブロー法もしくはエレクトロスピニング法により紡糸して長繊維としながら、不織布とする第2の工程を含むような熱膨張性不織布の製造方法によれば、第1発明の熱膨張性不織布を効率的に製造できる。
【0053】
また、メルトブロー法もしくはエレクトロスピニング法を利用して熱膨張性不織布1を製造すると、紡糸の際に、大径部2,2となるべき部分から合成樹脂が吸い出されるように小径部3,3が形成されていくので、大径部2,2に残る合成樹脂が少なくなり、大径部2,2において熱膨張性の機能性粒子4,4を覆う合成樹脂の膜が薄くなったり、網状になったりする。このことは、熱膨張性をより素早く発揮しやすくする。例えば、熱膨張性の機能性粒子4,4を覆う合成樹脂の膜が薄くなれば、高温の気流に接した際に、より素早く機能性粒子が膨張することになる。
【0054】
また、特に、合成樹脂を溶剤によって溶解して液状化するとともに、エレクトロスピニング法によって長繊維を防止するようにした場合には、比較的低温で紡糸することができるので、膨張開始温度が低い熱膨張性の機能性粒子(例えば熱膨張性マイクロカプセルなど)であっても、不織布の製造工程で機能性粒子を膨張させてしまうことなく、熱膨張性不織布に効率的に一体化できる。
【0055】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0056】
例えば、上記実施形態の説明では、熱膨張性不織布1に含まれる長繊維が交絡する部分で、長繊維同士が単に接触しているものとして説明したが、交絡する部分で長繊維同士が結合していてもよい。例えば、長繊維が交絡する部位で、大径部2,2同士ががくっついていてもよいし、見かけ上、一つの大径部に3つ以上(好ましくは4つ以上)の小径部3,3がつながっていてもよい。このような構造となると、大径部2,2の間を小径部3,3がネットワーク状に接続するようになって、熱膨張性不織布1の立体的な構造が維持されやすくなり、通気性もよい。
【0057】
以下に製造条件等を変えて製造した熱膨張性不織布1の他の実施例を示す。
図4は、製造条件等を変えて製造した、実施例2の熱膨張性不織布の構造を示す顕微鏡写真である。上記した実施例と比べ、長繊維が全体に太くなるように、製造条件を調整した。合成樹脂が熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)である点や、機能性粒子が「NSF」(平均粒子径5マイクロメートル)である点、およびエレクトロスピニング法により製造する点は、上記した実施例と同じである。
【0058】
実施例2の熱膨張性不織布では、大径部2,2の直径がおよそ2~15マイクロメートル(平均径8マイクロメートル)で、小径部3,3の直径がおよそ0.5~1.8マイクロメートル(平均径1.0マイクロメートル)であった。また、実施例2の不織布では、大径部から3つ以上の小径部が分岐するように伸びている部分も見られる。
【0059】
図5は、製造条件等を変えて製造した、実施例3の熱膨張性不織布の構造を示す顕微鏡写真である。上記した実施例と比べ、機能性粒子の配合量を少なくしたうえで、製造条件を調整した。合成樹脂が熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)である点や、機能性粒子が「NSF」(平均粒子径5マイクロメートル)である点、およびエレクトロスピニング法により製造する点は、上記した実施例と同じである。
【0060】
実施例3の熱膨張性不織布では、大径部2,2の直径がおよそ3~8マイクロメートル(平均径5マイクロメートル)で、小径部3,3の直径がおよそ0.3~1.0マイクロメートル(平均径0.6マイクロメートル)であった。また、実施例3の不織布でも、大径部から3つ以上の小径部が分岐するように伸びている部分が見られる。
【0061】
実施例、実施例2,実施例3の熱膨張性不織布は、いずれも適度な通気性を有するとともに、熱風(約800℃)にさらされた際に、機能性粒子が膨張して熱膨張性不織布が膨張し、ほぼ通気性のない断熱層を形成した。
【0062】
また、上記実施形態の説明では、熱膨張性の機能性粒子を含む単層の熱膨張性不織布を例示したが、熱膨張性不織布は、機能性粒子を含まない層を有する複層の熱膨張性不織布であってもよい。例えば、アラミド繊維製のメッシュ素材を、サポート層として、上記した熱膨張性不織布に積層した、2層構造の熱膨張性不織布としてもよい。
【0063】
サポート層は、熱膨張性不織布の機械的性質を高めるのに有効である。特に、サポート層を、アラミド繊維や金属繊維など、熱膨張性不織布の長繊維の材料である合成樹脂よりも耐熱性の高い材料で構成された繊維によって構成しておくと、高温にさらされて機能性粒子が膨張する際に、長繊維による機能性粒子の拘束が解かれやすくなることを抑制できる。サポート層を設ける場合には、想定される気流の下流側にサポート層を設けることが特に好ましい。
【0064】
上記実施形態の説明においては、機能性粒子が熱膨張性を有することを説明したが、機能性粒子が有する機能は熱膨張性に限定されない。例えば、機能性粒子は、熱膨張性のほかに、保水性、吸水性を有する粒子であってもよい。この場合は、不織布の吸水性を高めたり、吸収した水分を気化させることにより冷却効果を生じさせたりすることもできる。
【0065】
また、機能性粒子は、熱膨張性のほかに、消臭、脱臭機能を有する粒子であってもよい。このような機能性粒子を含む熱膨張性不織布は消臭、脱臭用途にも使用できる。また、機能性粒子として、香料を含ませた粒子を用いると、熱膨張性不織布に芳香機能を持たせることができる。
【0066】
また、機能性粒子は、熱膨張性のほかに、発熱性、吸熱性を有する粒子であってもよい。また、機能性粒子は、熱膨張性のほかに、伝熱性や導電性を有する粒子であってもよい。また、機能性粒子は、熱膨張性のほかに、熱膨張性不織布が使用される環境に存在する化学物質と反応する機能や、反応を促進する触媒機能を有する粒子であってもよい。
また、機能性粒子は、熱膨張性のほかに、光吸収、低反射、蛍光性、反射性、屈折性などの光学的機能を有する粒子であってもよい。
【0067】
また、熱膨張性を有する機能性粒子と、熱膨張性を有さずに他の機能を有する機能性粒子とを併用して、上記熱膨張性不織布とすることもできる。
【0068】
また、熱膨張性不織布の具体的用途としては、上記実施形態では、建築物の天井パネルの通気穴や通気通路内に配置されて、火災の際などに膨張して通気穴の通気性を低下させる用途について説明したが、用途はこれに限定されない。例えば、建築物のドアや窓サッシ、枠体などの耐火性能が求められる構造部材において、火炎の貫通や部材の焼失、損傷等を防ぎたい箇所に上記熱膨張性不織布を配置して、部材の耐火特性を高めてもよい。
【0069】
また、例えば、モータやインバータなどの電気部品や配線・ケーブル類、制御回路などの電子回路や集積基盤、および、パワートランジスタやコンデンサ、2次電池などの電気系部品、素子に対し、冷却風を送って回路や部品を冷却することがあるが、この時の冷却風の通風路に、上記実施形態のような熱膨張性不織布を配置すれば、通常時には通風により冷却を行うことができる。さらに、システムの他の箇所で火災が発生した場合などに高温の空気が冷却対象物に送られてしまうことや、冷却対象物が異常発熱した場合などに高温の空気が冷却対象物から送り出されてしまうことを抑制でき、システムのロバスト性を高めることもできる。
【0070】
また、上記した熱膨張性不織布に熱風をあてると膨張するので、膨張させた熱膨張性不織布を断熱材として使用することもできる。このような断熱材は軽量であり、断熱性に富んでいる。
【0071】
また、上記熱膨張性不織布は、上記実施形態で例示したような、熱膨張性不織布の用途以外の他の技術分野にも応用できる。例えば、消臭性を有する機能性粒子を一体化させた熱膨張性不織布を、居室内の消臭用途等に使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
熱膨張性不織布は、高温の空気に接した際に膨張し、通気性を制限することができて、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0073】
1 熱膨張性不織布
2 大径部
3 小径部
4 機能性粒子