(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112348
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】生体情報計測装置、電子時計、生体情報計測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20240814BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20240814BHJP
G01K 13/20 20210101ALI20240814BHJP
【FI】
A61B5/01 100
A61B5/02 G
G01K13/20 331
A61B5/02 310C
A61B5/02 310F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017255
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 竜義
(72)【発明者】
【氏名】三宅 毅
【テーマコード(参考)】
4C017
4C117
【Fターム(参考)】
4C017AA10
4C017AA16
4C017AB02
4C017AC26
4C017AC40
4C017BB12
4C017BC11
4C017FF05
4C117XA01
4C117XB01
4C117XC13
4C117XD15
4C117XE13
4C117XE23
4C117XG52
4C117XJ13
4C117XJ48
4C117XP03
(57)【要約】
【課題】容易にユーザが計測の精度を知得することのできる生体情報計測装置、電子時計、生体情報計測方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】生体情報計測装置は、生体情報に係る計測を行う計測部(30)と、計測に係る生体表面と自機の温度との温度差を検出する第1のペルチェ素子(31)と、報知動作部と、マイコン(10)と、を備える。マイコン(10)は、温度差に基づいて生体情報に係る計測結果の適否を判別し、報知動作部により適否に係る情報を報知させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報に係る計測を行う計測部と、
前記計測に係る生体表面と自機の温度との温度差を検出する第1の熱電素子と、
報知動作部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記温度差に基づいて前記生体情報に係る計測結果の適否を判別し、前記報知動作部により前記適否に係る情報を報知させる
生体情報計測装置。
【請求項2】
表示部を備え、
前記制御部は、前記計測結果が適切であると判別した場合には、前記表示部により前記計測結果を表示させ、前記計測結果が適切とはいえないと判別した場合には、前記表示部により前記計測結果を表示させない
請求項1記載の生体情報計測装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記計測結果に基づいて、前記計測結果が適切になるまでの所要時間を見積もり、前記表示部により前記所要時間に応じた表示を行わせる、請求項2記載の生体情報計測装置。
【請求項4】
前記計測部は、前記生体表面の温度を計測可能な温度計測部を有する、請求項1記載の生体情報計測装置。
【請求項5】
第2の熱電素子を備え、
前記制御部は、前記計測結果に基づいて、前記温度差を減少させる方向に前記第2の熱電素子を動作させる
請求項1記載の生体情報計測装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記計測結果の変化状況に基づいて、自機のユーザへの装着状態に係る異常を判別する、請求項1記載の生体情報計測装置。
【請求項7】
前記計測部は、脈拍計測部を有し、
前記制御部は、前記計測結果が適切とはいえないと判別された場合には、前記脈拍計測部の動作強度を高める
請求項1記載の生体情報計測装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1の熱電素子の出力電位を取得し、前記出力電位の絶対値が基準電位未満であると判別された場合には計測精度が高いと判定し、前記出力電位の絶対値が前記基準電位以上であると判別された場合には計測精度が低いと判定する請求項2記載の生体情報計測装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の生体情報計測装置と、
現在時刻を表示可能な表示部と、
を備え、
前記制御部は、前記現在時刻を計数して前記表示部により当該現在時刻を表示させる
電子時計。
【請求項10】
生体情報に係る計測を行う計測部と、前記計測に係る生体表面と自機の温度との温度差を検出する第1の熱電素子と、を用いた生体情報計測方法であって、
前記温度差に基づいて前記生体情報に係る計測結果の適否を判別し、前記適否に係る情報を報知する
生体情報計測方法。
【請求項11】
コンピュータを、
生体情報に係る計測を行う計測部から計測結果を取得し、
前記計測に係る生体表面と自機の温度との温度差の検出結果を第1の熱電素子から取得し、
前記温度差に基づいて前記生体情報に係る計測結果の適否を判別し、前記適否に係る情報を報知動作部により報知させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体情報計測装置、電子時計、生体情報計測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腕などの身体に装着して、生体表面温度や脈拍などの生体情報を計測する生体情報計測装置がある。しかしながら、手首などの露出されやすい末端部は、外部環境の影響を受けやすい。周囲の温度と体温との差が大きい場合、特に、このような条件で生体情報計測装置が装着された直後には、生体表面温度が周囲の温度に大きく影響される。
【0003】
このため、特許文献1では、生体表面温度が周囲の温度に大きく影響されるのを抑制するために、体表との接触面に沿ってペルチェ素子を有し、当該ペルチェ素子の動作により低温の生体表面を加温する技術が開示されている。このような技術により、体表が適切な温度にまで加温されたタイミング以降では、生体表面温度が適正に計測可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記技術では、計測のどのタイミングから適正な計測が望めるかが分からないという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、容易にユーザが計測の精度を知得することのできる生体情報計測装置、電子時計、生体情報計測方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
生体情報に係る計測を行う計測部と、
前記計測に係る生体表面と自機の温度との温度差を検出する第1の熱電素子と、
報知動作部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記温度差に基づいて前記生体情報に係る計測結果の適否を判別し、前記報知動作部により前記適否に係る情報を報知させる
生体情報計測装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、容易にユーザが計測の精度を知得することのできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の生体情報計測装置である電子時計について説明する図である。
【
図2】電子時計の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】計測制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図6】計測制御処理の制御手順の他の例を示すフローチャートである。
【
図7】適切な精度が得られていない場合の他の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の生体情報計測装置である電子時計1について説明する図である。
図1(a)は、電子時計1の平面図である。
図1(b)は、電子時計1の底面側の断面構造を模式的に示す図である。
【0011】
電子時計1は、文字盤3と、文字盤3上を回転する指針21~23と、デジタル表示部15と、筐体2と、筐体2の側面に位置するりゅうずC1及び押しボタンスイッチB1、B2などを備える。
【0012】
筐体2は、上下が開放された円筒状の部材であり、内部に電子時計1の各種動作に係る構成を収容する。筐体2は、例えば、金属部材、硬質樹脂、セラミック材などである。すなわち、筐体2は、内部の構造を衝撃から守る剛体構造を有していればよい。
【0013】
文字盤3、指針21~23及びデジタル表示部15は、筐体2の内部に位置し、当該筐体2の上端側から視認可能となっている。文字盤3上には、時刻などを示すための目盛(時字を含む)が位置しており、指針21~23が指し示す時刻などをユーザが容易に知得可能としている。
【0014】
指針21は秒針であり、指針22は分針であり、指針23は時針である。これら指針21~23は、時刻の表示に用いられるほか、他の内容の表示、例えば、アラーム設定時刻、ストップウォッチ計数時間、タイマ残時間、計測部30(
図2参照)の計測結果の表示や計測状態のステータス表示などに用いられてもよい。指針21~23及び文字盤3が本実施形態の指針表示部20を構成する。
【0015】
デジタル表示部15は、ここでは、文字盤3の6時方向に位置してデジタル表示を行う。デジタル表示部15は、例えば、液晶表示画面や有機EL(Electro-Luminescent)表示画面にデジタル表示を行う。デジタル表示では、数字、文字、記号、標識などに加えて、簡単な図やグラフなどの表示が可能であってもよい。
【0016】
りゅうずC1は、回転操作、引き出し操作や押し戻し操作を受け付けて、これらの操作内容に応じた操作信号を出力する。押しボタンスイッチB1、B2は、それぞれ押下操作を受け付けて、当該押下操作を示す操作信号を出力する。
【0017】
指針21~23及びデジタル表示部15の上面は、可視光を透過する透明な風防ガラスで覆われている。
【0018】
図1(b)に示すように、筐体2の底面側は、筐体2と嵌合される裏蓋4により封止される。特には限られないが、裏蓋4は、凹部及び孔部を有する。略中央に位置する孔部の内部には、脈拍計測を行う脈拍センサ36(脈拍計測部)が位置している。脈拍センサ36は、ある波長の光、例えば緑色光を出射する発光部36Lと、発光部36Lから出射されて生体に照射された緑色光のうち生体で反射された反射光を検出する受光部36Pと、を有する。脈拍センサ36は、孔部にはめ込まれた可視光を透過する光透過性のカバーガラス41Cで覆われている。発光部36L及び/若しくは受光部36Pの側面に沿って又は間には、発光部36Lの出射光が受光部36Pに直接入射しないように遮蔽部材が位置していてもよい。発光部36Lの発光制御及び受光部36Pによる検出光量に基づく脈拍の計測などを行う図示略の制御部は、発光部36L及び受光部36Pと電気的に接続されて筐体2の内部に位置している。
【0019】
また、裏蓋4の凹部には、温度センサ37(温度計測部)が位置している。温度センサ37は、凹部の底面に沿って位置しており、裏蓋4越しに外部の接触面、すなわち、ユーザの腕(手首)などの温度を計測可能である。あるいは、温度センサ37は、孔部内に位置し、孔部の底面側開口が封止部材により封止されていてもよい。封止部材は、光透過性である必要はないが、熱容量が小さくかつ熱伝導性が高い材料で形成されていることが好ましい。温度センサ37は、裏蓋4を貫通又は迂回して外側に温度計測面が位置していてもよい。
【0020】
また、裏蓋4の脈拍センサ36が位置する孔部の周囲に位置する孔部には、第1のペルチェ素子31(第1の熱電素子)と、第2のペルチェ素子34(第2の熱電素子)と、がそれぞれ位置している。第1のペルチェ素子31及び第2のペルチェ素子34は、熱伝導性のよい薄膜層42Cで保護されていてもよい。薄膜層42Cは、光透過性である必要はない。
なお、温度センサ37と第1のペルチェ素子31とは、共通の孔部内に位置していてもよい。さらに、脈拍センサ36も温度センサ37及び/又は第1のペルチェ素子31と共通の孔部内に位置していてもよい。
【0021】
図2は、電子時計1の機能構成を示すブロック図である。
電子時計1は、マイコン10と、操作受付部14と、デジタル表示部15と、駆動回路16と、指針表示部20と、第1のペルチェ素子31と、調整回路32と、ADC33(アナログデジタル変換回路)と、第2のペルチェ素子34と、切り替えスイッチ35と、脈拍センサ36と、温度センサ37などを備える。
【0022】
マイコン10は、電子時計1の動作を統括制御する各種処理動作を行う制御部である。本実施形態のコンピュータであるマイコン10は、CPU11(Central Processing Unit)と、RAM12(Random Access Memory)と、を有する。CPU11は、各種演算処理を行うプロセッサである。RAM12は、CPU11に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。
【0023】
マイコン10は、図示略のクロック信号の入力に基づいて、現在日時(現在時刻及び日付)を計数する。なお、電子時計1は、RTC(Real Time Clock)を保持していてもよい。電子時計1の不使用やバッテリ容量の不足などによりマイコン10の動作が停止される場合でも、RTCが現在時刻を計数し、マイコン10が起動した際に当該マイコン10がRTCから現在時刻情報を取得してもよい。
【0024】
記憶部13は、不揮発性のメモリであり、例えば、フラッシュメモリである。記憶部13は、プログラム131や各種設定データなどを記憶する。記憶部13は、基幹プログラムや初期設定などを記憶するROM(Read Only Memory)を含んでいてもよい。
【0025】
操作受付部14は、外部からの入力操作を受け付けて受け付けた内容に応じた入力信号をマイコン10へ送信する。操作受付部14は、上記のりゅうずC1及び押しボタンスイッチB1、B2を含む。
【0026】
デジタル表示部15は、上記のように液晶表示画面や有機ELディスプレイなどの表示画面を有し、マイコン10の制御に従って表示画面に対する表示動作を行う。
【0027】
駆動回路16は、マイコン10の制御に基づいて、指針表示部20に対し、指針21~23による表示位置(指し示す位置)への移動に係る駆動信号を出力する。
【0028】
指針表示部20は、上述の指針21~23に加え、これら指針21~23を回転動作させる歯車列である輪列機構と、当該輪列機構を定められた角度ずつ回転動作させるステッピングモータなどを有する。ステッピングモータは、駆動回路16の駆動信号に応じて予め定められた角度ずつ回転する。この角度の回転が輪列機構により各指針の1回当たりの回転角度に変換されて指針21~23に伝えられる。
デジタル表示部15及び指針表示部20は、本実施形態の表示部に含まれる。表示部は、本実施形態の報知動作部に含まれ得る。
【0029】
第1のペルチェ素子31及び第2のペルチェ素子34は、それぞれ両端間の温度差と電圧との間で変換する熱電素子である。第1のペルチェ素子31は、電子時計1(自機)の内側(内部)の温度と裏蓋4に対向した(接した)面(接触面)との温度差に応じた電気信号(電圧)を出力することで、当該温度差を検出することができる。
【0030】
一方で、第2のペルチェ素子34は、両端間に電圧を印加可能に電気的に接続されている。第2のペルチェ素子34は、印加された電圧に応じて発熱動作又は吸熱動作する。
【0031】
調整回路32は、第1のペルチェ素子31の出力電圧を適切な範囲の値に変換する。ADC33は、調整回路32から出力された電圧をデジタル値に変換してマイコン10へ出力する。
【0032】
図3は、調整回路32の処理の例を説明する図である。
例えば、(a)のように、
図2に示す調整回路32は、規定された範囲よりも高い入力電圧を当該規定された範囲の上限値Vtに変換し、規定された範囲未満の入力電圧を当該規定された範囲の下限値Vbに変換する(例えば、コンパレータなどを利用)。また、(b)のように、調整回路32は、入力電圧を規定された倍率で変圧(増幅又は減少)させてもよい(増幅回路、アンプ)。規定された範囲や倍率は、
図2に示すADC33のダイナミックレンジ(ビット数)の範囲に応じて定められてもよい。また、ADC33が符号なしデジタル値を出力する場合には、調整回路32は、入力電圧を絶対値に変換したり(c:例えば整流回路など)、あるいは、下限値(負の値)がゼロになり、接地電圧が中央の値になるようにオフセット電圧を加算したり(d:例えば昇圧回路など)してもよい。
【0033】
図2の説明に戻り、切り替えスイッチ35は、マイコン10の制御に基づいて、第2のペルチェ素子34への印加電圧の向きを切り替える。これに応じて、第2のペルチェ素子34の発熱動作と吸熱動作とが切り替えられる。
【0034】
脈拍センサ36は、手首の血流の変動から脈拍数を計測してマイコン10へ出力する。脈拍センサ36は、発光部36Lの出射光が血管を通過すると、血流量に応じて吸収量が変化する。生体内で反射された光量の変動を受光部36Pにより検出することで、血流量の変動に対応する脈動の周期が特定される。脈拍数は、ある期間、例えば、10~15秒間の平均値などであってもよい。特に限られないが、上記のようにここでは発光部36Lは、緑色光を出射する。受光部36Pは、例えば、フォトダイオードである。脈拍センサ36は、脈拍数に加えて酸素飽和度SpO2などを計測可能であってもよい。
【0035】
温度センサ37は、接触面、すなわち生体表面の温度(皮膚温度)を計測して計測値をマイコン10へ出力することができる。温度センサ37は、例えば、サーミスタなどであってもよい。
脈拍センサ36及び温度センサ37が本実施形態の計測部30に含まれ、生体情報に係る計測を行う。
【0036】
その他、電子時計1は、報知動作を行う報知動作部に含まれ得るLED(Light Emitting Diode)ランプ、ビープ音発生機構、振動発生機構などを有していてもよい。
【0037】
次に、皮膚温度の温度計測動作について説明する。上記のように、温度センサ37は、皮膚温度がある程度安定していないと正確なデータを取得することができない。しかし温度センサ37自体は、通常なんらかの値を出力するので、妥当な温度が計測、出力されているのかがユーザには容易に分からない。
【0038】
電子時計1では、第1のペルチェ素子31により電子時計1の内部と外側、すなわち裏蓋4が接触する生体(ユーザの手首)との温度差を出力する。電子時計1では、この温度差に基づいて温度センサ37の計測温度の妥当性(適否)を判別する。
【0039】
一般的に、電子時計1を腕に装着した直後には、腕と裏蓋4(計測面)との間に温度差があり、正確な温度計測ができない。特に冬などに体温と周囲との温度差が大きくなると、ユーザの皮膚温度も大きく低下し得る。このような場合には、皮膚温度が裏蓋4の温度に十分に接近するまでは、正しい温度計測が行われない。このような温度差が第1のペルチェ素子31により検出された場合に、電子時計1では、デジタル表示部15、指針表示部20やその他の報知動作部などにより計測精度が低く、計測結果が不正確である可能性が高い旨(適否に係る情報、適切とはいえない又は言い難い)の報知動作が行われる。
【0040】
また、腕が冷えている場合、血管が細くなるなどで、正確な脈拍の計測が難しくなる。その結果、上記温度差が大きい場合(特に腕の温度が低い場合)には、皮膚温度だけではなく脈拍の計測についても計測結果が不正確である可能性が高くなる。したがって、この場合にも上記報知動作が行われてもよい。
【0041】
図1では、デジタル表示部15により、皮膚温度(℃)と脈拍数(bpm;beat per minute)が表示されている。また、デジタル表示部15は、併せて計測、算出値の精度(QUALITY)について、低精度(LOW)な計測状態であることを示している。このように、精度情報が併せて示されることで、ユーザがおかしな計測値を正しい値であるとの誤認を生じにくくする。なお、このとき、デジタル表示部15がカラー表示を行うことができる場合には、通常とは異なる色で精度を表示することで、ユーザが気づきやすくしてもよい。
【0042】
図4は、電子時計1で実行される計測制御処理のマイコン10のCPU11による制御手順を示すフローチャートである。本実施形態の生体情報計測処理である計測制御処理は、温度センサ37及び第1のペルチェ素子31が動作して皮膚温度の計測動作が行われている間継続的に行われる。
【0043】
マイコン10(CPU11)は、計測部である、脈拍センサ36及び/又は温度センサ37の動作を開始させて、計測結果を取得する(ステップS101)。マイコン10は、第1のペルチェ素子31の出力電位Vpを取得する(ステップS102)。上記のように、マイコン10は、出力電圧が調整回路32により調整されてADC33によりデジタルデータに変換された結果を取得する。ここでは、ADC33により出力データは、符号ありの数値データである。
【0044】
マイコン10は、出力電位Vpが基準電位Vth未満であるか否かを判別する(ステップS103)。出力電位Vpの絶対値が基準電位Vth未満であると判別された場合には(ステップS103で“YES”)、温度差が小さいと判断し、マイコン10は、計測精度が高いと判定して計測精度を「高」に設定する(ステップS104)。それから、マイコン10の処理は、ステップS106へ移行する。
【0045】
出力電位Vpの絶対値が基準電位Vth未満ではない(基準電位Vth以上である)と判別された場合には(ステップS103で“NO”)、温度差が大きいと判断し、マイコン10は、計測精度が低いと判定して計測精度を「低」に設定する(ステップS105)。それから、マイコン10の処理は、ステップS106へ移行する。
【0046】
ステップS106の処理へ移行すると、マイコン10は、計測部による計測結果及び精度を出力する(ステップS106)。マイコン10は、例えば、上記のようにデジタル表示部15にこれら計測結果及び精度を表示させるための表示制御情報を当該デジタル表示部15へ出力する。また、マイコン10は、これら計測結果及び精度を記憶部13へ出力して計測履歴データに追加記憶させる。
【0047】
マイコン10は、計測を終了する命令が取得されたか否かを判別する(ステップS107)。計測を終了する命令が取得されていないと判別された場合には(ステップS107で“NO”)、マイコン10の処理は、ステップS101へ戻る。なお、処理を戻す際に、マイコン10は、予め定められた計測間隔の間待機してもよい。
【0048】
計測を終了する命令が取得されたと判別された場合には(ステップS107で“YES”)、マイコン10は、精度判定制御処理を終了する。
【0049】
図5は、精度の表示に係る他の例を示す図である。
図5(a)に示すように、温度差が小さく精度が高いと判別された場合には、例えば、精度について「HIGH」と表示される。
【0050】
図5(b)に示すように、温度差が大きく精度が低い(計測結果が適切とはいえない)と判別された場合には、計測結果を表示させないこととしてもよい。ここでは、横線により計測結果が非表示であることが示されている。また、これとともに、精度の高低ではなく、デジタル表示部15により「計測できません」というような表示が行われてもよい。
【0051】
図6は、計測制御処理の制御手順の他の例を示すフローチャートである。
この計測制御処理では、皮膚温度とともに脈拍計測も行われる場合の制御の例が示されている。
【0052】
この計測制御処理は、上記実施形態の計測制御処理に対して、ステップS111~S114の処理が追加されている。その他の処理は、両計測制御処理の間で同一であるので、同一の処理内容には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0053】
ステップS105の処理で計測精度が「低」(計測結果が適切とはいえない)に設定された場合には、マイコン10(CPU11)は、脈拍センサ36における発光部36Lの発光強度(動作強度)を高レベルとする(ステップS111)。マイコン10は、第2のペルチェ素子34に電圧を印加して動作させ、温度差の大小に応じた発熱又は吸熱動作を行う(ステップS112)。すなわち、腕(手首)の側の温度の方が低い場合には、マイコン10は、第2のペルチェ素子34に発熱動作を行わせる。腕の側の温度の方が高い場合には、マイコン10は、切り替えスイッチ35の動作により、第2のペルチェ素子34に吸熱動作を行わせることもできる。これらにより、第1のペルチェ素子31の外部接触面の温度を、当該第1のペルチェ素子31の出力電圧、すなわち自機の温度と外部温度(皮膚温度)との温度差が減少する方向へ(減らす方へ)、より迅速に変化させる。それから、マイコン10の処理は、ステップS106へ移行する。
【0054】
一方、ステップS104の処理で計測精度が「高」に設定されると、マイコン10(CPU11)は、脈拍センサ36の発光部36Lによる発光強度を通常レベルとする(ステップS113)。マイコン10は、第2のペルチェ素子34の動作を停止させる(ステップS114)。それから、マイコン10の処理は、ステップS106へ移行する。
【0055】
図7は、適切な精度が得られていない場合の他の表示例を示す図である。
図7(a)に示すように、計測温度の上昇度合などに応じて、高精度の範囲(適切といえる状態)に入るまでの残り時間(所要時間)を推定して表示させてもよい。第1のペルチェ素子31における温度差が小さくなっていくと、徐々に計測温度の変化が小さくなり、ある値に漸近するようになると想定される。この傾向を算出することで、残り時間が概算され得る。
【0056】
また、
図7(b)に示すように、計測温度の上昇(低下)が著しく遅い場合、及び全く上昇(低下)しない場合といった計測結果の変化状況に基づいて、デジタル表示部15により電子時計1(自機)の被装着状態の異常を考慮した表示を行わせてもよい。このような装着異常の判定には、脈拍センサ36による脈拍計測の可否なども併せて考慮されてもよい。
【0057】
以上のように、本実施形態の生体情報計測装置としての電子時計1は、生体情報に係る計測を行う計測部30と、計測に係る生体表面と自機(電子時計1)の温度との温度差を検出する第1のペルチェ素子31と、デジタル表示部15を含む報知動作部と、制御部としてのマイコン10と、を備える。マイコン10は、検出された温度差に基づいて生体情報に係る計測結果の適否を判別し、報知動作部によりこの適否に係る情報を報知させる。
このように、計測対象の生体の表面(ユーザの手首)の温度のずれ具合を第1のペルチェ素子31で検出することで、温度センサ37などの計測部30の計測結果が適切であるか否か(適切とはいえないか)を判別する。したがって、ユーザが手首の冷えた状況などで電子時計1を取り付けた直後など、適切に計測を行うことが難しい状況を容易に判別し、ユーザに報知することができる。よって、この電子時計1によれば、容易にユーザが適正な計測状態を知得することができる。
【0058】
また、電子時計1は、表示部(デジタル表示部15及び指針表示部20など)を備える。マイコン10は、計測結果が適切であると判別した場合には、表示部により計測結果を表示させ、計測結果が適切とはいえないと判別した場合には、表示部により計測結果を表示させない。
このように、電子時計1は、精度の低い計測結果を表示させないこととしてもよい。したがって、ユーザが精度の低い計測結果に影響されにくくすることができる。
【0059】
また、マイコン10は、計測結果に基づいて、当該計測結果が適切になるまでの所要時間を見積もり、表示部により所要時間に応じた表示を行わせてもよい。いつ適切な計測結果が得られるのか分からないままユーザに待機させるのは、ユーザに不要な忍耐を強いることになる。したがって、電子時計1は、適切な計測結果が得られるまでの所要時間の見積もりを表示させることで、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0060】
また、計測部30は、生体表面の温度(皮膚温度)を計測可能な温度センサ37を有していてもよい。この電子時計1は、外部環境などに応じて冷えた場合などの温度のずれの発生が容易に検出可能であり、これに応じた適切とはいえない計測結果をユーザが容易に知得可能である。
【0061】
また、電子時計1は、第2のペルチェ素子34を備える。マイコン10は、計測部30の計測結果に基づいて、第1のペルチェ素子31の出力を減らす方向に第2のペルチェ素子34を動作させ、加熱または吸熱させてもよい。
これにより、電子時計1は、ユーザの生体表面が著しく冷えている状況などを早期に緩和して、より短時間で適切な計測結果が得られるようにサポートすることができる。
【0062】
また、マイコン10は、計測結果の変化状況に基づいて、自機(電子時計1)のユーザへの装着状態に係る異常を判別してもよい。計測を継続しているにもかかわらず、不適切な計測結果が継続するような場合には、電子時計1の不正確な装着又は非装着状態が疑われる。このような場合には装着状態に係る報知動作を行うことで、ユーザに適切な装着を促すことができる。したがって、ユーザが計測するつもりであるのに計測ができていない状況や、計測するつもりがないのに計測動作が継続される状況の発生、継続を低減させることができる。
【0063】
また、計測部30は、脈拍センサ36を有していてもよい。マイコン10は、計測結果が適切とはいえないと判別された場合には、脈拍センサ36の動作強度を高める。ここでは、反射光を用いた脈拍センサ36において、発光部36Lの発光強度を強めることで、捉えにくい反射光をより確実に検出して、脈拍計測の精度を向上させることができる。
【0064】
また、マイコン10は、第1のペルチェ素子31の出力電位を取得し、この出力電位の絶対値が基準電位未満であると判別された場合には計測精度が高いと判定し、出力電位の絶対値が基準電位以上であると判別された場合には計測精度が低いと判定する。
このように、電子時計1は、単純に出力電位と基準電位との比較で精度の高低を判定し、これに応じて計測結果の適否を判別するので、容易な処理で簡便に計測精度を判定することができる。
【0065】
また、生体情報計測装置である電子時計1は、現在時刻を表示可能な表示部として指針表示部20を備える。マイコン10は、現在時刻を計数して表示部により当該現在時刻を表示させる。
このように、現在時刻を表示可能な電子時計1の計測部が計測する生体情報について、その計測結果の適否が容易に得られるので、日常的に適切な生体情報をユーザが知得することができる。
【0066】
また、生体情報に係る計測を行う計測部30と、計測に係る生体表面と自身の温度との温度差を検出する第1のペルチェ素子31と、を用いた本実施形態の生体情報計測方法は、得られた温度差に基づいて生体情報に係る計測結果の適否を判別し、判別された適否に係る情報を報知する。
このような生体情報計測方法によれば、簡便な処理でユーザがより容易に適切とはいえない生体情報に係る計測結果であるか否かを知得することができる。したがって、ユーザが計測結果の評価を行ったり、あるいは、適切な計測結果が得られるまで待機したり、適切な計測結果を速やかに得るための何らかの行動を取ったりすることができる。
【0067】
また、本実施形態のプログラム131は、コンピュータを、生体情報に係る計測を行う計測部30から計測結果を取得し、計測に係る生体表面と自身の温度との温度差の検出結果を第1のペルチェ素子31から取得し、取得した温度差に基づいて生体情報に係る計測結果の適否を判別し、適否に係る情報を報知動作部により報知させる手段として動作させることができる。
このように、ソフトウェア制御により、生体情報計測に係る出力処理とともに温度差に応じた計測結果の適否に係る情報をユーザが容易に得ることができるので、ユーザが容易に適切な計測結果を得るための処理動作のコストや必要な装置サイズなどを低減させることができる。
【0068】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、精度が高低を問わず精度を示す表示を行ったが、これに限られない。精度が低い場合にのみ警告する報知動作が行われ、精度が高い場合には、単純に計測結果のみが表示されることで、精度に問題がないとユーザが知得可能であってもよい。
【0069】
また、上記実施の形態では、皮膚温度の計測と脈拍計測とを生体情報計測の例として挙げたが、これに限られない。皮膚温度のずれが計測結果に悪影響を及ぼす計測内容について適用可能である。
【0070】
また、上記実施の形態では、具体的に精度が十分に上昇するまでの所要時間を表示することとしたが、表示内容は所用時間に限られない。例えば、進捗バーなどで図示することにより、精度の上昇度合を表示させてもよい。
【0071】
また、精度の表示は、高低だけではなくてもよい。3段階以上での表示がなされてもよい。この場合、「高低」の表示ではなく、表示色などにより精度が区分されてもよい。
【0072】
また、上記実施の形態では、デジタル表示部15により皮膚温度や脈拍などの表示を行ったが、これに限られない。これらの計測結果の表示が指針表示部20によりなされてもよい。この場合、電子時計1は、指針21~23に加えてより多くの指針を有していてもよい。指針は、文字盤3の略中央を共通の回転軸とするものではなくてもよい。追加の指針には、文字盤3上の一部の範囲で回転動作する小針が含まれていてもよい。
【0073】
また、精度に係る報知動作は、表示部により行われるものに限られない。LEDランプや振動などにより低精度である旨の報知動作が行われてもよい。また、複数の報知動作が併用されてもよい。
【0074】
また、電子時計1は、第2のペルチェ素子34を備えていなくてもよい。また、電子時計1が第2のペルチェ素子34を備えている場合であっても、電力消費量などに応じて動作時間が制限されてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態では、電子時計1が第1のペルチェ素子31及び計測部30などを備えるものとして説明したが、これに限られない。専用の生体情報計測装置であってもよいし、その他の機能を主たる対象とする電子機器であってもよい。
【0076】
また、以上の説明では、本発明の生体情報の計測制御に係るプログラム131を記憶するコンピュータ読み取り可能な媒体としてフラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどからなる記憶部13を例に挙げて説明したが、これらに限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、MRAMなどの他の不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、CD-ROM、DVDディスクなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0077】
1 電子時計
2 筐体
3 文字盤
4 裏蓋
10 マイコン(制御部)
11 CPU
12 RAM
13 記憶部
131 プログラム
14 操作受付部
15 デジタル表示部
16 駆動回路
20 指針表示部
21 指針
30 計測部
31 第1のペルチェ素子(第1の熱電素子)
32 調整回路
33 ADC
34 第2のペルチェ素子(第2の熱電素子)
35 切り替えスイッチ
36 脈拍センサ(計測部)
36L 発光部
36P 受光部
37 温度センサ(計測部)
41C カバーガラス
42C 薄膜層
B1、B2 押しボタンスイッチ
C1 りゅうず