(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112364
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】複合電子部品
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240814BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K1/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017292
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】露谷 和俊
(72)【発明者】
【氏名】石川 直之
【テーマコード(参考)】
4E351
5E316
【Fターム(参考)】
4E351AA01
4E351BB09
4E351BB15
4E351BB24
4E351BB26
4E351BB33
4E351BB35
4E351BB49
4E351CC06
4E351CC07
4E351DD04
4E351GG20
5E316AA04
5E316AA12
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5E316BB02
5E316BB04
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5E316FF07
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5E316FF45
5E316GG17
5E316GG23
5E316GG28
5E316HH11
5E316JJ27
(57)【要約】
【課題】絶縁層に電子部品が埋め込まれた構造を有する複合電子部品において、電子部品と絶縁層の密着性を高める。
【解決手段】第1の配線構造体と第2の配線構造体の間に位置する絶縁層12と、絶縁層12に埋め込まれたESD保護部品2とを備える。絶縁層12は、絶縁層12A,12Bを含む。絶縁層12Bはバインダー樹脂とフィラーの混合物からなる。ESD保護部品2は、絶縁層12Bの表面S2と接する主面2Bと、絶縁層12Aの表面S1と接する裏面2Aと、側面2Cとを有する。表面S1と側面2Cによって構成される角部Cには、バインダー樹脂と同じ樹脂材料からなる密着層15のフィレットが形成されている。これにより、ESD保護部品2と絶縁層12の密着性が高められる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の配線構造体と、
前記第1の配線構造体と前記第2の配線構造体の間に位置する絶縁層と、
前記絶縁層に埋め込まれた電子部品と、を備え、
前記絶縁層は、第1の表面を有する第1の絶縁層と、一部が前記第1の表面と接する第2の表面を有する第2の絶縁層とを含み、
前記第2の絶縁層は、少なくともバインダー樹脂とフィラーを含む混合物により形成され、
前記電子部品は、前記第2の絶縁層により覆われる主面と、前記主面の反対側に位置し、前記第1の絶縁層の前記第1の表面と接する裏面と、前記主面と前記裏面の間を連接する側面とを有し、
前記第1の絶縁層の前記第1の表面と前記電子部品の前記側面によって構成される角部には、前記第2の絶縁層に含まれる前記バインダー樹脂と同じ樹脂材料からなる密着層のフィレットが形成されている、複合電子部品。
【請求項2】
前記密着層は、前記第2の絶縁層に含まれる前記バインダー樹脂と同じ樹脂材料と、前記第2の絶縁層に含まれる前記フィラーとを含む混合物からなり、
前記第2の絶縁層における前記フィラーの含有密度は、前記密着層における前記フィラーの含有密度よりも高く、前記第2の絶縁層は前記密着層よりも熱膨張係数が低い、
請求項1に記載の複合電子部品。
【請求項3】
前記第1の絶縁層は、少なくともバインダー樹脂とフィラーを含む混合物により形成され、
前記第1の絶縁層における前記フィラーの含有密度は、前記密着層における前記フィラーの含有密度よりも高く、前記第1の絶縁層は前記密着層よりも熱膨張係数が低い、
請求項2に記載の複合電子部品。
【請求項4】
前記第1の絶縁層に含まれる前記バインダー樹脂と、前記第2の絶縁層に含まれる前記バインダー樹脂と、前記密着層に含まれる前記バインダー樹脂とが、互いに同じ樹脂材料である、
請求項3に記載の複合電子部品。
【請求項5】
前記第1の絶縁層に含まれる前記フィラーと、前記第2の絶縁層に含まれる前記フィラーと、前記密着層に含まれる前記フィラーとが、互いに同じ無機材料である、
請求項4に記載の複合電子部品。
【請求項6】
前記第2の絶縁層は前記第1の絶縁層よりも熱膨張係数が低い、請求項3に記載の複合電子部品。
【請求項7】
前記第2の絶縁層と接する前記密着層の表面は、凹面形状を有する、請求項1に記載の複合電子部品。
【請求項8】
前記密着層は、前記電子部品の前記側面の全体を覆う、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の複合電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は複合電子部品に関し、特に、電子部品が埋め込まれた絶縁層を備える複合電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、絶縁層に電子部品が埋め込まれた構造を有するプリント配線板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたプリント配線板おいては、電子部品と絶縁層の密着性が不足するおそれがあった。
【0005】
本開示においては、絶縁層に電子部品が埋め込まれた構造を有する複合電子部品において、電子部品と絶縁層の密着性を高める技術について説明される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面による複合電子部品は、第1及び第2の配線構造体と、第1の配線構造体と第2の配線構造体の間に位置する絶縁層と、絶縁層に埋め込まれた電子部品とを備え、絶縁層は、第1の表面を有する第1の絶縁層と、一部が第1の表面と接する第2の表面を有する第2の絶縁層とを含み、第2の絶縁層は、少なくともバインダー樹脂とフィラーを含む混合物により形成され、電子部品は、第2の絶縁層により覆われる主面と、主面の反対側に位置し、第1の絶縁層の第1の表面と接する裏面と、主面と裏面の間を連接する側面とを有し、第1の絶縁層の第1の表面と電子部品の側面によって構成される角部には、第2の絶縁層に含まれるバインダー樹脂と同じ樹脂材料からなる密着層のフィレットが形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、絶縁層に電子部品が埋め込まれた構造を有する複合電子部品において、電子部品と絶縁層の密着性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示に係る技術の一実施形態による複合電子部品1の外観を示す略斜視図である。
【
図3】
図3は、複合電子部品1の略分解斜視図である。
【
図4】
図4は、導体層C4に設けられた導体パターンの形状を示す略平面図である。
【
図5】
図5は、導体層C3に設けられた導体パターンの形状を示す略平面図である。
【
図6】
図6は、導体層C2に設けられた導体パターンの形状を示す略平面図である。
【
図7】
図7は、ESD保護部品2が埋め込まれた層の略平面図である。
【
図8】
図8は、導体層C1に設けられた導体パターンの形状を示す略平面図である。
【
図9】
図9は、導体層C0に設けられた導体パターンの形状を示す略平面図である。
【
図11】
図11は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【
図12】
図12は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【
図13】
図13は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【
図14】
図14は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【
図15】
図15は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【
図16】
図16は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【
図17】
図17は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【
図18】
図18は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【
図19】
図19は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【
図20】
図20は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【
図21】
図21は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【
図22】
図22は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【
図23】
図23は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る技術の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本開示に係る技術の一実施形態による複合電子部品1の外観を示す略斜視図である。
【0011】
本実施形態による複合電子部品1は表面実装型のチップ部品であり、
図1に示すように、素体10と、素体10の表面にアレイ状に配列された複数の外部端子とを備えている。複数の外部端子は、8つの信号端子20~27及び2つのグランド端子28,29からなる。
【0012】
【0013】
図2に示すように、素体10は、樹脂などからなる絶縁層11~14がこの順に積層された構造を有している。このうち、絶縁層11は絶縁層12の一方の表面12a側に設けられ、絶縁層13,14は絶縁層12の他方の表面12b側に設けられている。絶縁層12の一方の表面12aと絶縁層11の間には、導体層C1が形成される。絶縁層11の表面には、導体層C0が形成される。導体層C0はソルダーレジスト31によって覆われる。絶縁層11及びその両面に配置された導体層C0,C1は、第1の配線構造体を構成する。導体層C0,C1は、それぞれ絶縁層11,12に埋め込まれている。これにより、導体層C0が絶縁層11の表面から突出するように設けられている場合と比べて、第1の配線構造体の最表面の平坦性が高められることから、ソルダーレジスト31の厚さを薄くしても、十分な絶縁特性を確保することが可能となる。
図2に示す例では、第1の配線構造体に1層の絶縁層11が含まれているが、第1の配線構造体に含まれる絶縁層の層数については特に限定されない。
【0014】
絶縁層12の他方の表面12bと絶縁層13の間には、導体層C2が形成される。導体層C2は絶縁層13によって覆われる。絶縁層13の表面には、導体層C3が形成される。導体層C3は絶縁層14によって覆われる。絶縁層14の表面には、導体層C4が形成される。導体層C4はソルダーレジスト32によって覆われる。絶縁層13,14及びこれらの両面に配置された導体層C2~C4は、第2の配線構造体を構成する。導体層C2,C3は、それぞれ絶縁層13,14に埋め込まれている。これに対し、導体層C4は、絶縁層14の表面から突出している。
図2に示す例では、第2の配線構造体に2層の絶縁層13,14が含まれているが、第2の配線構造体に含まれる絶縁層の層数については特に限定されない。
【0015】
絶縁層11~14は、いずれも表裏に導体層が存在する層間膜であり、その意味においてソルダーレジスト31,32は絶縁層に該当しない。したがって、最表層に位置する絶縁層は、絶縁層11,14である。
図2に示す例では、ソルダーレジスト31は、絶縁層11の最表層の全面を覆っている。これにより、
図2に示す例では、導体層C0は、露出することなくソルダーレジスト31で覆われる。これに対し、ソルダーレジスト32には部分的に開口が設けられており、開口から露出する導体層C4の一部が外部端子として用いられる。
【0016】
絶縁層12にはESD保護部品2が埋め込まれている。ESD保護部品2は半導体基板によって構成されるため、絶縁層11~14とは熱膨張係数が異なっている。
図2に示す例においては、ESD保護部品2が積層方向における略中央部に埋め込まれ、その両側に絶縁層11,13,14が設けられていることから、積層方向における対称性を厚みの調整により調整する自由度が高く、温度変化に起因する複合電子部品1全体の反りが発生しにくい。
【0017】
絶縁層12は、絶縁層12A,12Bが積層された構造を有している。絶縁層12Aは、絶縁層12の一方の表面12aの反対側に位置する表面S1を有し、絶縁層12Bは絶縁層12の他方の表面12bの反対側に位置する表面S2を有している。そして、絶縁層12Aと絶縁層12Bは、表面S1,S2が互いに向かい合い、一部が接するように積層されている。絶縁層12Aと絶縁層12Bの間には、ESD保護部品2が埋め込まれている。これにより、絶縁層12Bの表面S2は、ESD保護部品2の形状に沿った段差形状を有している。絶縁層12A,12Bは、少なくともバインダー樹脂とフィラーを含む混合物により形成される。絶縁層12Aと絶縁層12Bは、互いに同じ材料からなるものであっても構わない。フィラーの種類については特に限定されないが、シリカなど熱膨張係数の小さい無機材料を用いることができる。
【0018】
ESD保護部品2は、端子電極80~83を含む複数の端子電極が設けられた主面2Bと、主面2Bの反対側に位置する裏面2Aと、主面2Bと裏面2Aを連接する側面2Cを有している。
図2に示す例の場合、側面2Cは、主面2B及び裏面2Aに対して垂直に形成されている。なお、ESD保護部品2の形状はこれに限定されず、例えば、
図2の略断面図において略台形形状であってもよく、若干角が丸められた長方形(rounded rectangle)でもよい。そして、ESD保護部品2は、裏面2Aが絶縁層12Aの表面S1と接し、主面2Bが絶縁層12Bの表面S2と接するよう、絶縁層12に埋め込まれている。ESD保護部品2の側面2Cの少なくとも一部と絶縁層12Bの間には、密着層15が形成されている。密着層15は、絶縁層12Aに含まれるバインダー樹脂と絶縁層12Bに含まれるバインダー樹脂の少なくとも一方と同じ樹脂材料を含む。密着層15に含まれるバインダー樹脂は、絶縁層12Aに含まれるバインダー樹脂及び絶縁層12Bに含まれるバインダー樹脂の両方と同じ樹脂材料であっても構わない。
【0019】
密着層15は、ESD保護部品2と絶縁層12の密着性を高める役割を果たし、絶縁層12Aの表面S1とESD保護部品2の側面2Cによって構成される角部Cには、密着層15のフィレットが形成されている。これにより、ボイドが生じやすい角部Cが密着層15によって充填される。また、絶縁層12Bと接する密着層15の表面が凹面形状であることから、適切なボリュームの絶縁層12Bを確保しつつ、絶縁層12Bと密着層15の接触面積を拡大することができる。
【0020】
密着層15には、フィラーが含まれていても構わないし、フィラーが含まれていなくても構わない。密着層15にフィラーが含まれている場合、密着層15に含まれるフィラーは、絶縁層12Aに含まれるフィラー及び絶縁層12Bに含まれるフィラーの両方と同じ材料であっても構わない。また、密着層15にフィラーが含まれている場合、密着層15におけるフィラーの含有密度を絶縁層12A,12Bにおけるフィラーの含有密度よりも低くすることにより、密着層15の密着性を確保することができる。密着層15の密着性は、フィラーの含有密度が低いほど高められる。これに対し、絶縁層12A,12Bは密着層15よりもフィラーの含有密度が高いことから、密着層15よりも熱膨張係数が低く、これにより反りの発生を抑制することができる。絶縁層12Aの熱膨張係数と絶縁層12Bの熱膨張係数は同じであっても構わないが、よりボリュームの大きい絶縁層12Bの熱膨張係数を絶縁層12Aの熱膨張係数よりも低くすれば、反りの発生をより効果的に抑制することが可能となる。
【0021】
また、
図2に示す例では、ESD保護部品2の側面2Cの全面が密着層15で覆われており、これによってESD保護部品2と絶縁層12の密着性がより高められている。しかしながら、本開示に係る技術はこれに限定されるものではない。例えば、ESD保護部品2の側面2Cの少なくとも一部が密着層15で覆われていればよい。ESD保護部品2と絶縁層12の十分な密着性を確保するためには、例えば、ESD保護部品2の側面2Cの面積の半分以上を密着層15で覆っても構わない。
【0022】
なお、ESD保護部品2の水平方向における幅(複合電子部品1の各層に平行な方向の長さ)は、厚み(複合電子部品1の積層方向における高さ)よりも大きい。場合によっては、ESD保護部品2の幅は、厚みよりも10倍程度大きいこともある。このため、熱膨張による影響は、積層方向よりも、水平方向(複合電子部品1の各層に平行な方向)の方が大きい。密着層15をESD保護部品2の側面2Cに設ける場合、例えば、密着層15をESD保護部品2の主面2Bや裏面2Aに設ける場合よりも効果的に熱膨張による影響を低減できる。また、
図2に例示するように、絶縁層12A,12B及びESD保護部品2の三つの部材が接する角部Cに密着層15を設けることで、より効果的に密着性を改善し、熱膨張による影響を低減できる。
【0023】
また、絶縁層12Bに比してフィラーが比較的少ない密着層15によりESD保護部品2の全体を覆うと、密着層15を介さず絶縁層によりESD保護部品2の全体を覆う場合よりも、機械強度が低下する可能性がある。例えば、ESD保護部品2の主面2Bや裏面2Aには密着層15を設けず、角部Cまたは角部Cを含む側面2Cに密着層15を形成することで、適切な機械強度と、密着性と実現することができる。
【0024】
【0025】
図3に示すように、複合電子部品1にはコイルパターン41~48が埋め込まれている。このうち、コイルパターン41,42は導体層C3に配置され、コイルパターン43,44は導体層C2に配置され、コイルパターン45,46は導体層C1に配置され、コイルパターン47,48は導体層C0に配置される。コイルパターン41,43は絶縁層13を介して平面視で互いに重なっており、コイルパターン42,44は絶縁層13を介して平面視で互いに重なっている。また、コイルパターン45,47は絶縁層11を介して平面視で互いに重なっており、コイルパターン46,48は絶縁層11を介して平面視で互いに重なっている。
【0026】
図4~
図6、
図8及び
図9は、それぞれ導体層C4、C3、C2、C1及びC0に設けられた導体パターンの形状を示す略平面図である。また、
図7は、ESD保護部品2が埋め込まれた層の略平面図である。
【0027】
図4に示すように、導体層C4には、導体パターン50~59及びグランドパターンGPが設けられている。導体パターン50~57のうちソルダーレジスト32から露出する部分は表面処理され、それぞれ信号端子20~27として用いられる。導体パターン58,59のうちソルダーレジスト32から露出する部分は表面処理され、それぞれグランド端子28,29として用いられる。また、導体パターン58,59は、グランドパターンGPを介して互いに接続されている。グランドパターンGPは直線的に延在する導体パターンであり、その幅は導体パターン58,59の幅よりも狭い。このように、グランドパターンGPと信号端子20~27及び導体パターン58,59は、互いに同じ導体層C4に配置されていることから、グランドパターンGPを設けるための専用の導体層を追加する必要はない。
【0028】
図5に示すように、導体層C3には、コイルパターン41,42と導体パターン60,61,63~66が設けられている。コイルパターン41の外周端は、ビア導体102を介して導体パターン52に接続されている。コイルパターン42の外周端は、ビア導体107を介して導体パターン57に接続されている。また、導体パターン60,61,63~66は、絶縁層14に設けられたビア導体100,101,103~106を介して、それぞれ導体パターン50,51,53~56に接続されている。コイルパターン41とコイルパターン42は、ギャップG1を介して隣り合っている。導体層C3においては、ギャップG1にグランドパターンなどが設けられておらず、コイルパターン41とコイルパターン42は、絶縁層14を介して直接隣り合っている。
【0029】
図6に示すように、導体層C2には、コイルパターン43,44と導体パターン70~76が設けられている。コイルパターン43の外周端は、ビア導体113を介して導体パターン63に接続されている。コイルパターン44の外周端は、ビア導体116を介して導体パターン66に接続されている。また、導体パターン70~74は、ビア導体110,111,114,115,118を介して、それぞれ導体パターン60,61,64,65,68に接続されている。導体パターン75,76は、ビア導体112,117を介して、それぞれコイルパターン41,42の内周端に接続されている。コイルパターン43とコイルパターン44は、ギャップG1を介して隣り合っている。導体層C2においては、ギャップG1にグランドパターンなどが設けられておらず、コイルパターン43とコイルパターン44は、絶縁層13を介して直接隣り合っている。
【0030】
コイルパターン41~44は、いずれも導体パターンが約4ターン巻回された構成を有している。そして、コイルパターン41とコイルパターン43は積層方向に重なり、そのパターン形状は外周端及び内周端の位置を除いてほぼ一致している。同様に、コイルパターン42とコイルパターン44は積層方向に重なり、そのパターン形状は外周端及び内周端の位置を除いてほぼ一致している。さらに、コイルパターン41とコイルパターン42のパターン形状は平面視で対称形であり、コイルパターン43とコイルパターン44のパターン形状は平面視で対称形である。
【0031】
図7に示すように、ESD保護部品2の表面には、端子電極80~87が設けられている。端子電極80~83は、絶縁層12に設けられたビア導体120~123を介して、それぞれ導体パターン70~73に接続される。また、端子電極84~87は、絶縁層12に設けられたビア導体124~127を介して、導体パターン74に共通に接続される。
【0032】
図8に示すように、導体層C1には、コイルパターン45,46と導体パターン91,93,94,97が設けられている。コイルパターン45の外周端は、ビア導体130を介して導体パターン70に接続される。コイルパターン46の外周端は、ビア導体135を介して導体パターン73に接続される。コイルパターン45の内周端は、ビア導体132を介して導体パターン75に接続される。コイルパターン46の内周端は、ビア導体136を介して導体パターン76に接続される。また、導体パターン91,94は、ビア導体131,134を介して、それぞれ導体パターン71,72に接続される。さらに、導体パターン93,97は、ビア導体133,137を介して、それぞれコイルパターン43,44の内周端に接続される。コイルパターン45とコイルパターン46は、ギャップG2を介して隣り合っている。導体層C1においては、ギャップG2にグランドパターンなどが設けられておらず、コイルパターン45とコイルパターン46は、絶縁層12を介して直接隣り合っている。
【0033】
図9に示すように、導体層C0には、コイルパターン47,48が設けられている。コイルパターン47の外周端及び内周端は、ビア導体141,143を介して、それぞれ導体パターン91,93に接続されている。コイルパターン48の外周端及び内周端は、ビア導体144,147を介して、それぞれ導体パターン94,97に接続されている。コイルパターン47とコイルパターン48は、ギャップG2を介して隣り合っている。導体層C0においては、ギャップG2にグランドパターンなどが設けられておらず、コイルパターン47とコイルパターン48は、絶縁層11を介して直接隣り合っている。
【0034】
コイルパターン45~48は、いずれも導体パターンが約5ターン巻回された構成を有している。そして、コイルパターン45とコイルパターン47は積層方向に重なり、そのパターン形状は外周端及び内周端の位置を除いてほぼ一致している。同様に、コイルパターン46とコイルパターン48は積層方向に重なり、そのパターン形状は外周端及び内周端の位置を除いてほぼ一致している。さらに、コイルパターン45とコイルパターン46のパターン形状は平面視で対称形であり、コイルパターン47とコイルパターン48のパターン形状は平面視で対称形である。
【0035】
図10は、本実施形態による複合電子部品1の等価回路図である。
【0036】
図10に示す複合電子部品1においては、信号端子20,22間にコイルパターン45,41が直列に接続され、信号端子21,23間にコイルパターン47,43が直列に接続され、信号端子24,26間にコイルパターン48,44が直列に接続され、信号端子25,27間にコイルパターン46,42が直列に接続される。そして、コイルパターン41,43が磁気結合することによってコモンモードフィルタCMF1が構成され、コイルパターン42,44が磁気結合することによってコモンモードフィルタCMF2が構成され、コイルパターン45,47が磁気結合することによってコモンモードフィルタCMF3が構成され、コイルパターン46,48が磁気結合することによってコモンモードフィルタCMF4が構成される。さらに、信号端子20,21,24,25とグランド端子28,29の間には、ESD保護部品2に集積された保護素子が挿入される。これにより、
図10に示す複合電子部品1は、ESD保護機能付きのコモンモードフィルタのアレイを構成する。グランド端子29は、グランドパターンGPを介してESD保護部品2に接続される。
【0037】
このように、本実施形態による複合電子部品1は、絶縁層12内にESD保護部品2が単に埋め込まれているのではなく、絶縁層12Aの表面S1とESD保護部品2の側面2Cによって構成される角部Cに密着層15のフィレットが形成されていることから、ESD保護部品2と絶縁層12の密着性が高められ、角部Cにおけるボイドの発生を抑制することが可能となる。このため、ボイドやESD保護部品2の剥離などに起因して、第1の配線構造体に含まれるコモンモードフィルタCMF3,CMF4の特性や、第2の配線構造体に含まれるコモンモードフィルタCMF1,CMF2の特性が変化することがなく、製品の信頼性が高められる。
【0038】
次に、本実施形態による複合電子部品1の製造方法について説明する。
【0039】
図11~
図23は、本実施形態による複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【0040】
まず、キャリア付き銅箔200を用意し、その表面にレジストパターン201を形成する(
図11)。キャリア付き銅箔200は、2層の銅箔の間に剥離層が設けられた構造を有している。レジストパターン201は、導体層C0のネガパターンである。この状態で、電解メッキを行い、レジストパターン201を除去することによって導体層C0を形成する(
図12)。次に、導体層C0が埋め込まれるよう、キャリア付き銅箔200の表面に絶縁層11を形成する(
図13)。これにより、導体層C0に位置する導体パターンは、側面及び上面が絶縁層11によって覆われた状態となる。
【0041】
次に、ビア導体を形成すべき箇所にビア202を形成することによって導体層C0の一部を露出させた後、無電解メッキによって絶縁層11の表面にシード層203を形成する(
図14)。次に、シード層203の表面にレジストパターン204を形成した後、電解メッキを行うことによって導体層C1を形成する(
図15)。次に、レジストパターン204を除去した後(
図16)、導体層C1が埋め込まれるよう、絶縁層11の表面に絶縁層12Aを形成し、その表面にESD保護部品2を搭載する(
図17)。これにより、導体層C1に位置する導体パターンは、側面及び上面が絶縁層12Aによって覆われた状態となる。
【0042】
次に、半硬化状態であるシート状の絶縁層12Bを用意し、ESD保護部品2を覆うよう、絶縁層12Aの表面S1上に絶縁層12Bを載置する(
図18)。この時点では、ESD保護部品2の側面2Cと絶縁層12Bの間には隙間16が生じる。このように隙間16が生じている状態で絶縁層12Bを直ちに硬化させると、隙間16が完全には埋まらないか、或いは、隙間16が完全に埋まった場合であっても、ESD保護部品2の側面2Cと絶縁層12Bが直接接するため、絶縁層12Bに含まれるフィラーによって両者間の密着性が不足するおそれがある。このため、密着層15のフィラーが形成されるよう、絶縁層12Bの硬化条件を調整する。
【0043】
具体的には、シート状の絶縁層12Bをラミネートした後、減圧条件下で徐々に加熱温度を高めることによって、隙間16を縮小させるとともに、絶縁層12Bに含まれるバインダー樹脂を隙間16に滲出させる。滲出したバインダー樹脂は、密着層15を構成する。この時、隙間16が密着層15によって完全に埋まる前にバインダー樹脂が硬化しないよう、硬化温度未満の状態を保つ必要がある。そして、密着層15によって隙間16が埋め込まれるのに十分な時間が経過した後、絶縁層12Bを加圧しながら熱硬化させる。これにより、ESD保護部品2が絶縁層12A,12Bからなる絶縁層12に埋め込まれるとともに、絶縁層12Aの表面S1とESD保護部品2の側面2Cによって構成される角部Cには、密着層15のフィレットが形成される(
図19)。
【0044】
絶縁層12Bから隙間16にバインダー樹脂が滲出すると、初期状態に比べ、絶縁層12Bにおけるフィラーの含有密度が僅かに高まり、熱膨張係数がより低くなる。これに対し、絶縁層12Aについては、ESD保護部品2を埋め込む前後においてフィラーの含有密度は実質的に変化しない。このため、絶縁層12Aと絶縁層12Bが互いに同じ材料からなるものである場合、最終的な熱膨張係数は、絶縁層12Aよりも絶縁層12Bの方が僅かに低くなる。
【0045】
次に、
図14~
図16を用いて説明したプロセスを繰り返すことにより、絶縁層12の表面に導体層C2を形成した後、導体層C2が埋め込まれるよう、絶縁層12の表面に絶縁層13を形成する(
図20)。このプロセスを繰り返すことにより、絶縁層13の表面に導体層C3を形成した後、導体層C3が埋め込まれるよう、絶縁層13の表面に絶縁層14を形成する(
図21)。次に、絶縁層14の表面に導体層C4を形成した後、キャリア付き銅箔200に設けられた剥離層を介して銅箔の1層を剥離し(
図22)、キャリア付き銅箔200の残った銅箔をエッチングにより除去する(
図23)。このエッチングにより、導体層C4の形成に用いたシード層も除去される。そして、絶縁層11,14の最表面にそれぞれソルダーレジスト31,32を形成した後、表面処理により信号端子21~27及びグランド端子28,29を形成すれば、複合電子部品1が完成する。
【0046】
このように、複合電子部品1の製造プロセスにおいては、シート状の絶縁層12Bをラミネートした後、絶縁層12Bに含まれるバインダー樹脂が隙間16に滲出するよう、減圧条件下でゆるやかに加熱していることから、密着層15によって隙間16を埋めることが可能となる。
【0047】
以上、本開示に係る技術の実施形態について説明したが、本開示に係る技術は、上記の実施形態に限定されることなく、その主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示に係る技術の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0048】
例えば、上記実施形態では、絶縁層12にESD保護部品2を埋め込んでいるが、絶縁層12に埋め込む電子部品がこれに限定されるものではない。
【0049】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0050】
本開示の一側面による複合電子部品は、第1及び第2の配線構造体と、第1の配線構造体と第2の配線構造体の間に位置する絶縁層と、絶縁層に埋め込まれた電子部品とを備え、絶縁層は、第1の表面を有する第1の絶縁層と、一部が第1の表面と接する第2の表面を有する第2の絶縁層とを含み、第2の絶縁層は、少なくともバインダー樹脂とフィラーを含む混合物により形成され、電子部品は、第2の絶縁層により覆われる主面と、主面の反対側に位置し、第1の絶縁層の第1の表面と接する裏面と、主面と裏面の間を連接する側面とを有し、第1の絶縁層の第1の表面と電子部品の側面によって構成される角部には、第2の絶縁層に含まれるバインダー樹脂と同じ樹脂材料からなる密着層のフィレットが形成されている。これによれば、電子部品と絶縁層の密着性が高められる。
【0051】
上記の複合電子部品において、密着層は、第2の絶縁層に含まれるバインダー樹脂と同じ樹脂材料と、第2の絶縁層に含まれるフィラーとを含む混合物からなり、第2の絶縁層におけるフィラーの含有密度は、密着層におけるフィラーの含有密度よりも高く、第2の絶縁層は密着層よりも熱膨張係数が低くても構わない。これによれば、密着層の密着性が高められるとともに、基板全体の反りを抑制することが可能となる。
【0052】
上記の複合電子部品において、第1の絶縁層は少なくともバインダー樹脂とフィラーを含む混合物により形成され、第1の絶縁層におけるフィラーの含有密度は、密着層におけるフィラーの含有密度よりも高く、第1の絶縁層は密着層よりも熱膨張係数が低くても構わない。これによれば、密着層の密着性が高められるとともに、基板全体の反りをいっそう抑制することが可能となる。
【0053】
上記の複合電子部品において、第1の絶縁層に含まれるバインダー樹脂と、第2の絶縁層に含まれるバインダー樹脂と、密着層に含まれるバインダー樹脂とが、互いに同じ樹脂材料であっても構わない。これによれば、第1及び第2の絶縁層と密着層の密着性が高められる。
【0054】
上記の複合電子部品において、第1の絶縁層に含まれるフィラーと、第2の絶縁層に含まれるフィラーと、密着層に含まれるフィラーとが、互いに同じ無機材料であっても構わない。これによれば、材料コストが低減される。
【0055】
上記の複合電子部品において、第2の絶縁層は第1の絶縁層よりも熱膨張係数が低くても構わない。これによれば、第2の絶縁層が第1の絶縁層よりも厚い場合において、基板全体の反りをよりいっそう抑制することが可能となる。
【0056】
上記の複合電子部品において、第2の絶縁層と接する密着層の表面は、凹面形状を有していても構わない。これによれば、第2の絶縁層のボリュームを十分に確保しつつ、第2の絶縁層と密着層の接触面積を拡大することができる。
【0057】
上記の複合電子部品において、密着層は、電子部品の側面の全体を覆っても構わない。これによれば、電子部品と絶縁層の密着性がよりいっそう高められる。
【符号の説明】
【0058】
1 複合電子部品
2 ESD保護部品(電子部品)
2A 裏面
2B 主面
2C 側面
10 素体
11~14,12A,12B 絶縁層
12a,12b 絶縁層の表面
20~27 信号端子
28,29 グランド端子
31,32 ソルダーレジスト
41~48 コイルパターン
50~59 導体パターン
60,61,63~66,68 導体パターン
70~76 導体パターン
80~87 端子電極
91,93,94,97 導体パターン
100~107,110~118,120~127,130~137,141,143,144,147 ビア導体
200 キャリア付き銅箔
201 レジストパターン
202 ビア
203 シード層
204 レジストパターン
C 角部
C0~C4 導体層
CMF1~CMF4 コモンモードフィルタ
G1,G2 ギャップ
GP グランドパターン
S1,S2 表面