(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112368
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】回転軸及び回転軸の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23B 1/00 20060101AFI20240814BHJP
B23B 5/08 20060101ALI20240814BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B23B1/00 Z
B23B5/08
H02K15/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017304
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】坂本 秀
(72)【発明者】
【氏名】松田 瞬
(72)【発明者】
【氏名】松前 太郎
【テーマコード(参考)】
3C045
5H615
【Fターム(参考)】
3C045AA10
3C045CA08
5H615AA01
5H615BB01
5H615PP24
5H615SS08
(57)【要約】
【課題】本発明は、小径軸部に形成された環状溝の底面が滑らかになって、環状溝の底面に応力が集中する箇所ができるのを防止して、強度の低下を防止する回転軸及び回転軸の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、外周にボールベアリング15が嵌合される小径軸部33と、小径軸部33に連なる大径軸部32と、大径軸部32の先端面と小径軸部33との間に形成される円弧状のR部分とを有する回転軸30の加工工程を含む回転軸30の製造方法であって、加工工程は、切削工具Tを軸方向に対して直交する方向から接近させて大径軸部32の先端面に設けられた大径軸部側R部分200aを切削する工程と、切削工具Tを小径軸部33の外周に沿って所定位置まで移動させて、小径軸部33の外周に設けられた小径軸部側R部分200bを切削する工程と、切削工具Tを小径軸部33から径方向に離間させる工程とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に環状の支持部材が設けられる小径軸部と、前記小径軸部に連なって前記小径軸部より外径が大径な大径軸部と、前記大径軸部の前記小径軸部側の先端面と前記小径軸部との間に形成される円弧状のR部分とを有する回転軸の加工工程を含む回転軸の製造方法であって、
前記加工工程は、前記R部分を切削して前記小径軸部の外周に環状溝を形成する工程であり、
前記小径軸部の軸方向に沿って前記大径軸部から前記小径軸部の先端に向かう方向を一方向とすると、
前記加工工程は、
前記回転軸を軸回りに回転させた状態で、前記小径軸部の外周の前記大径軸部側に軸方向に対して直交する方向から切削工具を接近させて、前記R部分における前記大径軸部の前記先端面に設けられた大径軸部側R部分を切削し、前記小径軸部と前記大径軸部との境に前記支持部材を位置決めする段部を形成する第一工程と、
前記切削工具を前記小径軸部の外周に沿って前記段部から所定位置まで前記一方向に移動させて、前記R部分における前記小径軸部の外周に設けられた小径軸部側R部分を切削する第二工程と、
前記切削工具を前記小径軸部の前記所定位置から径方向に離間させる第三工程とを備える
ことを特徴とする回転軸の製造方法。
【請求項2】
外周に環状の支持部材が設けられる小径軸部と、前記小径軸部に連なって前記小径軸部より外径が大径な大径軸部と、前記大径軸部の前記小径軸部側の先端面と前記小径軸部との間に形成される円弧状のR部分とを有する回転軸の加工工程を含む回転軸の製造方法であって、
前記加工工程は、前記R部分を切削して前記小径軸部の外周に環状溝を形成する工程であり、
前記小径軸部の軸方向に沿って前記小径軸部の先端から前記大径軸部に向かう方向を一方向とすると、
前記加工工程は、
前記回転軸を軸回りに回転させた状態で、前記小径軸部の外周の所定位置に対して切削工具を径方向に接近させて、前記小径軸部の前記所定位置を切削する第一工程と、
前記切削工具を前記小径軸部の外周に沿って前記所定位置から前記一方向に移動させて、前記R部分における前記小径軸部の外周に設けられた小径軸部側R部分を切削する第二工程と、
前記切削工具を前記小径軸部の外周の前記大径軸部側から軸方向に対して直交する方向に離間させて、前記R部分における前記大径軸部の前記先端面に設けられた大径軸部側R部分を切削し、前記小径軸部と前記大径軸部との間に前記支持部材を位置決めする段部を形成する第三工程とを備える
ことを特徴とする回転軸の製造方法。
【請求項3】
外周に環状の支持部材が嵌合される小径軸部と、前記小径軸部に連なって前記小径軸部より外径が大径な大径軸部と、前記小径軸部と前記大径軸部との境に形成されて前記支持部材の側面が当接する段部とを有して、前記支持部材によって軸回りに回転可能に支持される回転軸であって、
前記小径軸部は外周に環状溝を有しており、
前記環状溝は、前記段部から前記小径軸部の先端側に向けて徐々に小径となるように湾曲する湾曲面と、前記湾曲面から連続して前記小径軸部の軸方向に沿って延びる直線面と、前記直線面から連続して徐々に大径となるように傾斜するテーパ面とを有し、
前記直線面の外周に螺旋状のツールマークが形成される
ことを特徴とする回転軸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸及び回転軸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、回転軸は、電動モータのロータに使用されており、筒状の電機子であるステータ内に回転自在に挿入されて、ステータとともにケース内に収容されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、回転軸は、大径軸部と、大径軸部の両端にそれぞれ連なって大径軸部よりも小径な小径軸部とが形成され、大径軸部の外周にはロータコアが装着され、ロータコアの外周におけるステータの内周と対向する部分には永久磁石が取付られている。
【0003】
このように、回転軸の外周に永久磁石が取付られて構成されたロータは、ステータにボールベアリングを介して回転可能に収容される。ボールベアリングは、回転軸の小径軸部の大径軸部側に嵌合されており、ロータの円滑な回転を保証している。そして、このように構成された電動モータでは、ステータに通電して回転磁界を発生させることによりロータを回転軸の軸回りに回転駆動できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、回転軸の嵌合部に嵌合されるボールベアリングは、小径軸部と大径軸部との境に形成される段部によって位置決めされている。ところが、
図6に示すように、回転軸100に小径軸部120を設ける場合、小径軸部120を形成する加工の都合により、大径軸部130の先端面と小径軸部120との間には
図6中破線で示すように円弧状のR部分200ができてしまう。
【0006】
そのため、R部分200がある状態で小径軸部120の大径軸部側の外周にボールベアリングを嵌合しようとすると、ボールベアリングの側面がR部分200に乗り上げて、ボールベアリングと大径軸部130の先端面との間に隙間が生じてしまう。そして、このような隙間が生じると、回転軸の両端の小径軸部の外周にそれぞれ嵌合されるボールベアリング間の距離が所定の距離とならないため、ボールベアリングにアキシャル荷重が加わって、ボールベアリングの転がり抵抗が増加し、トルクのロスが増加する恐れがある。
【0007】
この問題を解決するために、従来は小径軸部120の外周に環状溝300を形成する切削加工をして、R部分200を切除することで、小径軸部120と大径軸部130との境にボールベアリングの側面と隙間なく当接してボールベアリングの位置決めをする段部110を設けていた。
【0008】
一般的に、環状溝300は、回転する小径軸部120の外周に切削工具Tを小径軸部120の軸方向に対して直交する径方向から大径軸部130の先端面に沿って接近させて切削する工程と、上記切削工程の後に切削工具Tを径方向に離間させる工程とからなる切削加工によって形成される。
【0009】
ここで、上記切削加工では、切削工具Tの刃先を小径軸部120に対して所定角度で傾けて径方向へ接近させるため、R部分200の軸方向の全長を切削するには、深い環状溝300を形成する必要がある。
【0010】
したがって、環状溝300を切削する切削加工では、深い環状溝300を形成するために、切削工具Tの小径軸部120への切込み量が大きくなる。よって、切削工具Tが回転軸100に接触する接触面積が大きくなり、大きな切削抵抗が生じるため、切削加工中に切削工具Tと回転軸100とにいわゆるビビり振動が生じてしまい環状溝300の底面に面荒れが生じてしまう場合がある。
【0011】
このように環状溝300の底面が面荒れしてしまうと、環状溝300の底面に形状の不連続な箇所ができるため、回転軸100に外部からの振動が加わったときに、環状溝300の底面における形状の不連続な箇所に応力が集中して、回転軸100の強度が低下してしまう恐れがあった。
【0012】
そこで、本発明は、小径軸部の外周に形成された環状溝の底面に応力が集中する箇所ができるのを防止して強度の低下を防止できる回転軸及び回転軸の製造方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決するため、本発明の回転軸の製造方法は、外周に環状の支持部材が設けられる小径軸部に連なって小径軸部より外径が大径な大径軸部と、大径軸部の小径軸部側の先端面と小径軸部との間に形成される円弧状のR部分とを有する回転軸の加工工程を含んでおり、加工工程は、R部分を切削して小径軸部の外周に環状溝を形成する工程であり、小径軸部の軸方向に沿って大径軸部から小径軸部の先端に向かう方向を一方向とすると、加工工程は、回転軸を軸回りに回転させた状態で、小径軸部の外周の大径軸部側に軸方向に対して直交する方向から切削工具を接近させて、R部分における大径軸部の先端面に設けられた大径軸部側R部分を切削し、小径軸部と大径軸部との境に支持部材を位置決めする段部を形成する第一工程と、切削工具を小径軸部の外周に沿って段部から所定位置まで一方向に移動させて、R部分における小径軸部の外周に設けられた小径軸部側R部分を切削する第二工程と、切削工具を小径軸部の所定位置から径方向に離間させる第三工程とを備えることを特徴とする。この方法によると、切削工具を軸方向移動させて環状溝の底面を形成しているため、従来のように、切削工具を小径軸部の外周に径方向に接近させて小径軸部の外周を切削した後に切削工具を径方向へ離間させて環状溝を形成する場合と比較して、切削工具の小径軸部への切込み量を小さくできる。したがって、切削工具の小径軸部に対する接触面積を小さくでき、切削時に生じる切削抵抗も小さくなる。よって、回転軸の加工工程において、切削工具と回転軸とにいわゆるビビり振動が生じるのを防止できる。
【0014】
また、本発明の他の回転軸の製造方法は、外周に環状の支持部材が設けられる小径軸部に連なって小径軸部より外径が大径な大径軸部と、大径軸部の小径軸部側の先端面と小径軸部との間に形成される円弧状のR部分とを有する回転軸の加工工程を含んでおり、加工工程は、R部分を切削して小径軸部の外周に環状溝を形成する工程であり、小径軸部の軸方向に沿って小径軸部の先端から大径軸部に向かう方向を一方向とすると、加工工程は、回転軸を軸回りに回転させた状態で、小径軸部の外周の所定位置に対して切削工具を径方向に接近させて、小径軸部の所定位置を切削する第一工程と、切削工具を小径軸部の外周に沿って所定位置から一方向に移動させて、R部分における小径軸部の外周に設けられた小径軸部側R部分を切削する第二工程と、切削工具を小径軸部の外周の大径軸部側から軸方向に対して直交する方向に離間させて、R部分における大径軸部の先端面に設けられた大径軸部側R部分を切削し、小径軸部と大径軸部との間に支持部材を位置決めする段部を形成する第三工程とを備えることを特徴とする。この方法によると、切削工具を軸方向移動させて環状溝の底面を形成しているため、従来のように、切削工具を小径軸部の外周に径方向に接近させて小径軸部の外周を切削した後に切削工具を径方向へ離間させて環状溝を形成する場合と比較して、切削工具の小径軸部への切込み量を小さくできる。したがって、切削工具の小径軸部に対する接触面積を小さくでき、切削時に生じる切削抵抗も小さくなる。よって、回転軸の加工工程において、切削工具と回転軸とにいわゆるビビり振動が生じるのを防止できる。
【0015】
また、本発明の回転軸は、外周に環状の支持部材が嵌合される小径軸部に連なって小径軸部より外径が大径な大径軸部と、小径軸部と大径軸部との境に形成されて支持部材の側面が当接する段部とを有して、支持部材によって軸回りに回転可能に支持されており、小径軸部は外周に環状溝を有しており、環状溝は、段部から小径軸部の先端側に向けて徐々に小径となるように湾曲する湾曲面と、湾曲面から連続して小径軸部の軸方向に沿って延びる直線面と、直線面から連続して徐々に大径となるように傾斜するテーパ面とを有し、直線面の外周に螺旋状のツールマークが形成されることを特徴とする。ここで、ツールマークは、切削加工時に切削工具を回転する切削対象に押し当てつつ動かしたときに切削対象の表面に残る切削工具の移動跡である。そのため、上記構成のように、環状溝の直線面の外周に螺旋状のツールマークが形成される場合、この直線面は、切削工具を軸方向へ移動させて小径軸部の外周を切削することで形成されることになる。したがって、この構成によれば、環状溝の切削加工時において、従来のように、切削工具を小径軸部の外周に径方向に接近させて小径軸部の外周を切削した後に切削工具を径方向へ離間させて環状溝を形成する場合と比較して、切削工具の小径軸部への切込み量を小さくできるので、切削工具の小径軸部に対する接触面積を小さくでき、切削時に生じる切削抵抗を小さくできる。よって、環状溝の切削加工時において、切削工具と回転軸とにいわゆるビビり振動が生じるのを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の回転軸及び回転軸の製造方法によれば、小径軸部に形成された環状溝の底面が滑らかになるため、環状溝の底面に応力が集中する箇所ができるのを防止して、回転軸の強度の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施の形態の電動モータの縦断面図である。
【
図2】本実施の形態の電動モータの一部を拡大して示す一部拡大図である。
【
図3】本実施の形態の回転軸の嵌合部の第一の加工工程を示す図である。
【
図4】本実施の形態の回転軸の嵌合部に形成された環状溝の拡大平面図である。
【
図5】本実施の形態の回転軸の嵌合部の第二の加工工程を示す図である。
【
図6】従来の回転軸の小径軸部の嵌合部を拡大して示す一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の回転軸30及び回転軸30の製造方法を説明する。本発明の回転軸30は、電動モータMにおけるロータ3に利用されている。回転軸30が適用された電動モータMは、
図1に示すように、ケース1と、ケース1の内周に固定される環状の電機子であるステータ2と、ステータ2内に周方向に回転自在に挿通される回転軸30の外周に永久磁石が取付られて構成されたロータ3とを備え、ステータ2に通電されるとロータ3を回転軸30の軸回りに回転駆動する。
【0019】
以下、本実施の形態の電動モータMの各部について詳細に説明する。ケース1は、有底筒状のケース本体10と、ケース本体10の開口端を閉塞する閉塞部材11とを備える。ケース本体10は、円筒状の筒部10aと、ロータ3の回転軸30の一端(
図1中左端)が挿通される孔10b1を有して環状に形成される底部10bと、筒部10aの一端の外周に設けられて電動モータMの被取付対象(図示せず)に取付可能な取付片10cとを備えている。
【0020】
筒部10aは、筒部10aの開口側に形成される大径筒部10a1と、大径筒部10a1の底部10b側端に連なって大径筒部10a1よりも内径の小さい小径筒部10a2と、大径筒部10a1と小径筒部10a2との境に形成される段差10a3とを有する。
【0021】
そして、大径筒部10a1の内周には、筒部10aの開口側から挿入されて段差10a3に当接する位置に位置決めされてボールベアリング13を保持する環状の保持部材12が取付られている。
【0022】
保持部材12の内周に保持された環状のボールベアリング13は、後述するロータ3の回転軸30の他端(
図1中右端)外周を回転可能に支持して支持部材として機能する。また、保持部材12の内周には、筒部10aの開口側端(
図1中右端)から突出する環状のストッパ部12aが設けられており、ストッパ部12aによってボールベアリング13の
図1中右方向の移動が規制されている。
【0023】
また、ケース本体10は、底部10bの内側面から底部10bの孔10b1の周囲を囲うように突出する筒状のホルダ部14を備えており、ホルダ部14の内周には、後述するロータ3の回転軸30の一端外周を回転可能に支持する支持部材として機能する環状のボールベアリング15が保持されている。
【0024】
また、取付片10cは、
図1に示すように、平板状であって筒部10aの一端(図中左端)の外周から径方向に延びる平板部10c1と、平板部10c1を筒部10aの軸方向に貫通する貫通孔10c2とを備えている。
【0025】
そして、図示しないが、電動モータMを被取付対象に取付する際には、取付片10cの平板部10c1を被取付対象の取付部に当接させた状態で、貫通孔10c2と被取付対象の取付部を貫通する孔にボルトを挿通し、挿通したボルトのボルト軸にナットを螺合して締め付けることで、電動モータMを被取付対象に対して取付できる。
【0026】
なお、筒部10aの一端の外周に設けられる取付片10cの数や位置は特に限定されず、被取付対象の取付部の数や位置等に応じて適宜決定されればよい。また、上述した取付片10cは、例えば、取付片10cは筒部10aの一端の外周にフランジ状に形成されてもよい。
【0027】
ステータ2は、筒部10aの一端側内周に焼き嵌めによって固定されている。また、ステータ2は、複数の環状で薄板状の電磁鋼板を軸方向に積層して構成される略円筒状のステータコア20と、ステータコア20の軸方向の各端部に設けられたインシュレータ21,22と、インシュレータ21,22を介してステータコア20に巻き回された巻線からなるコイル23とを備えている。また、ステータコア20の材質は、磁性体であれば電磁鋼以外であってもよい。なお、上述のステータ2の構造は一例であって、ステータ2の構造は特に限定されない。
【0028】
また、ステータ2の
図1中右端には、バスバーユニット24が設けられている。バスバーユニット24は、絶縁性の材料で形成されたバスバーホルダ24aにインサート成形された導電性の材料で形成された複数のバスバー24bと、バスバー24bに電気的に接続されてバスバーホルダ24aから反ステータ側に突出する突出端子24cとを備える環状の部材である。各バスバー24bはステータ2のコイル23にそれぞれ接続されている。突出端子24cは図示しない電源に接続されている。これにより、ステータ2のコイル23に対して、バスバーユニット24を介して電力を供給できるようになっている。
【0029】
また、図示しないが、ケース1における閉塞部材11と保持部材12との間に形成される空間には、ステータ2のコイル23へ通電して回転磁界を発生させて電動モータMを駆動する制御装置が収容されている。
【0030】
ロータ3は、ケース本体10内であってステータ2の内側に空隙を介して回転可能に配置されている。詳細には、本実施の形態のロータ3は、円柱状の回転軸30と、複数の環状で薄板状の電磁鋼板を軸方向に積層して構成される略筒状であって回転軸30の外周に装着されたロータコア31と、ロータコア31に取付られた永久磁石(図示せず)とを備える。そして、ロータ3は、ステータ2のコイル23への通電によってステータ2に形成される回転磁界により、回転軸30の軸回りに回転する。
【0031】
また、回転軸30は、
図1,
図2に示すように、外周にロータコア31が装着される大径軸部32と、大径軸部32の両端にそれぞれ連なって大径軸部32よりも小径な小径軸部33と、各小径軸部33と大径軸部32との境にそれぞれ形成される段部34とを有している。そして、各小径軸部33の大径軸部32側の端部である各嵌合部35には、それぞれ、保持部材12の内周に保持されたボールベアリング13と、ホルダ部14の内周に保持されたボールベアリング15が嵌合されており、ロータ3の円滑な回転を保証している。
【0032】
また、保持部材12の内周に保持されたボールベアリング13は、保持部材12のストッパ部12aと
図1中右側の小径軸部33と大径軸部32との境に形成される段部34とで挟持されて、軸方向移動が規制されている。他方、ホルダ部14の内周に保持されたボールベアリング15は、ケース本体10の底部10bと
図1中左側の小径軸部33と大径軸部32との境に形成される段部34とで挟持されて、軸方向移動が規制されている。
【0033】
より詳細には、
図2に示すように、小径軸部33の嵌合部35の外周には環状溝36が形成されている。この環状溝36は、小径軸部33を形成する加工上、小径軸部33と大径軸部32の先端面との間に形成される円弧状のR部分200(
図3参照)を切除することで形成される。このような環状溝36を設けることにより、
図2に示すように、ボールベアリング15の側面が段部34に対して隙間無く当接できる。なお、
図2は、
図1中左側の小径軸部33の嵌合部35を拡大して示しているが、
図1中右側の小径軸部33の嵌合部35の外周にも同様の環状溝36が形成されており、ボールベアリング13の側面が段部34に対して隙間無く当接できるようになっている。
【0034】
つづいて、回転軸30の製造工程における小径軸部33の嵌合部35の外周に環状溝36を形成する小径軸部33の加工工程について詳細に説明する。まず、回転軸30を図外の旋盤のチャックに取付て、回転軸30を軸回りに回転させる。このように、回転軸30を回転させた状態で、
図3(A)に示すように、嵌合部35の外周の大径軸部32側端に軸方向に対して直交する方向からバイト等の刃先が角丸三角状の切削工具Tを接近させて、R部分200における大径軸部32の先端面に設けられた大径軸部側R部分200aを切削して小径軸部33と大径軸部32との境に段部34を形成しつつ、切削工具Tの刃先を嵌合部35の外周の大径軸部32側端に押し当てて切削工具Tの刃先形状に沿って湾曲する湾曲面36aを形成する(第一工程)。このように形成された湾曲面36aは、段部34から小径軸部33の先端側に向けて徐々に小径となるように湾曲している。
【0035】
次に、
図3(B)に示すように、刃先を嵌合部35の外周の大径軸部32側端に押し当てた状態の切削工具Tを嵌合部35における段部34から所定位置まで小径軸部33の軸方向に沿って大径軸部32から小径軸部33の先端に向かう一方向(図中左方向)へ徐々に移動させて、R部分200における小径軸部33の外周に設けられた小径軸部側R部分200bを切削して、湾曲面36aから連続して小径軸部33の軸方向に沿って延びる直線面36bを形成する(第二工程)。そして、切削工具Tが嵌合部35の所定位置に到達すると、嵌合部35の外周には直線面36bから連続して切削工具Tの形状に沿って傾斜するテーパ面36cが形成される。このように形成されたテーパ面36cは、直線面36bから連続して徐々に大径となるように傾斜している。なお、上記所定位置は、小径軸部33の外周における円弧状のR部分200よりも小径軸部33の先端側の任意の位置である。
【0036】
最後に、
図3(C)に示すように、切削工具Tを嵌合部35の上記所定位置、すなわち、直線面36bから連続するように斜め方向(図中左斜め上方向)に離間させることで、嵌合部35の大径軸部32側端の外周に環状溝36が形成される(第三工程)。なお、切削工具Tを直線面36bから離間させる方向は、小径軸部33の径方向であればよい。ここで言う径方向には、小径軸部33の軸方向に対して直交する方向だけでなく、斜め方向も含まれる。なお、本実施の形態のテーパ面36cは、嵌合部35の所定位置に到達した切削工具Tを斜め方向に離間させて、刃先形状に沿って形成されてもよい。
【0037】
このようにして形成された環状溝36は、段部34から小径軸部33の先端側に向けて徐々に小径となるように湾曲する湾曲面36aと、湾曲面36aから連続して小径軸部33の軸方向に沿って延びる直線面36bと、直線面36bから連続して徐々に大径となるように傾斜するテーパ面36cとを有する。
【0038】
ここで、従来は、切削工具Tを小径軸部33の嵌合部35の外周に径方向に接近させてR部分200の軸方向の全長を切削した後に切削工具Tを径方向へ離間させて
図2中破線で示す環状溝300を形成していた。このように環状溝300を形成する場合、切削工具Tの刃先を小径軸部33に対して所定角度で傾けて径方向へ接近させるため、小径軸部33を形成する加工時に小径軸部33と大径軸部32の先端面との間に形成される円弧状のR部分200の軸方向の全長を切除するには、切削工具Tの小径軸部33への切込み量を大きくして、環状溝300を深くする必要がある。
【0039】
これに対し、上述したように、切削工具Tを徐々に軸方向移動させて環状溝36の底面である直線面36bを形成すると、本実施の形態の環状溝36と従来の環状溝300の軸方向の幅が同じ場合、切削工具Tの小径軸部33への切込み量を小さくできるので、切削工具Tが小径軸部33の嵌合部35の外周に接触する接触面積が小さくなり、切削時に生じる切削抵抗も小さくなる。
【0040】
したがって、本実施の形態の嵌合部35の加工工程では、切削工具Tの嵌合部35に対する切削抵抗を小さくできるため、切削工具Tと回転軸30とにいわゆるビビり振動が生じるのを防止でき、環状溝36の底面である直線面36bの表面が滑らかになる。よって、回転軸30に対して外部からの振動が加わったときに、環状溝36の底面に応力が集中する箇所ができるのを防止して回転軸30の強度の低下を防止できる。
【0041】
また、本実施の形態の直線面36bの外周には、
図4に示すように、螺旋状のツールマーク37が形成される。ここで、ツールマーク37は、切削加工時に切削工具Tを回転する切削対象に押し当てつつ動かしたときに切削対象の表面に残る切削工具Tの移動跡である。そのため、本実施の形態の嵌合部35の加工工程のように、切削工具Tを徐々に軸方向へ移動させて嵌合部35の外周を切削して直線面36bを形成する場合、直線面36bには、必ず螺旋状のツールマーク37が形成される。なお、このツールマーク37は、微細な模様であるため、ツールマーク37に応力が集中することはほとんどない。
【0042】
また、本実施の形態では、環状溝36の軸方向の両端には、それぞれ、段部34から小径軸部33の先端に向けて徐々に小径となるように湾曲する湾曲面36aと、直線面36bから連続して徐々に大径となるように傾斜するテーパ面36cとが設けられている。そのため、段部34と環状溝36との境の部分の形状変化は湾曲面36aによって滑らかとなり、嵌合部35における環状溝36との境の部分の形状変化はテーパ面36cによって滑らかとなっている。よって、段部34と環状溝36との境の部分と嵌合部35における環状溝36との境の部分に応力が集中するのを防止できる。
【0043】
なお、本実施の形態では、切削工具Tの刃先形状が角丸三角状になっているが、切削工具Tの刃先形状は、特に限定されない。また、湾曲面36aとテーパ面36cは切削工具Tの形状に沿っているため、切削工具Tの刃先形状に応じて、湾曲面36aの曲率半径やテーパ面36cの傾斜角度は変わってもよい。
【0044】
また、環状溝36は、前述した加工工程(以下、「第一の加工工程」と称する。)とは逆方向から小径軸部33の外周を切削する加工工程(以下、「第二の加工工程」と称する。)によって形成されてもよい。以下、第二の加工工程について具体的に説明する。
【0045】
まず、回転軸30を旋盤のチャックに取付て軸回りに回転させた状態で、
図5(A)に示すように、小径軸部33の所定位置の上方向から切削工具Tを斜めに接近させて、嵌合部35におけるR部分200より小径軸部33の先端側の所定位置に切削工具Tの刃先を押し当てて嵌合部35の所定位置を切削する(第一工程)。なお、上記所定位置は、小径軸部33の外周における円弧状のR部分200より小径軸部33の先端側の任意の位置である。
【0046】
また、切削工具Tを嵌合部35に接近させる方向は、小径軸部33の径方向であればよい。ここで言う径方向には、小径軸部33の軸方向に対して直交する方向だけでなく、斜め方向も含まれる。
【0047】
次に、
図5(B)に示すように、切削工具Tを小径軸部33の軸方向に沿って小径軸部33の先端から大径軸部32側に向かう一方向(図中右方向)へ徐々に移動させて、R部分200における小径軸部33の外周に設けられた小径軸部側R部分200bを切削する(第二工程)。
【0048】
最後に、
図5(C)に示すように、切削工具Tを嵌合部35の外周の大径軸部32側から軸方向に対して直交する方向に離間させて、R部分200における大径軸部32の先端面に設けられた大径軸部側R部分200aを切削して小径軸部33と大径軸部32との間に段部34を形成することで、嵌合部35の大径軸部32側の外周に環状溝36が形成される(第三工程)。
【0049】
このような第二の加工工程で形成された環状溝36は、第一の加工工程で形成された環状溝36と同様に、段部34から小径軸部33の先端側に向けて徐々に小径となるように湾曲する湾曲面36aと、湾曲面36aから連続して小径軸部33の軸方向に沿って延びる直線面36bと、直線面36bから連続して徐々に大径となるように傾斜するテーパ面36cとを有する。
【0050】
そして、第二の加工工程においても、環状溝36の底面である直線面36bは、切削工具Tを徐々に軸方向移動させて形成されている。そのため、第一の加工工程と同様に、従来のように、切削工具Tを小径軸部33の嵌合部35の外周に径方向に接近させてR部分200の全長を切削した後に切削工具Tを径方向へ離間させて
図2中破線で示す環状溝300を形成する場合に比べて、切削工具Tの小径軸部33への切込み量を小さくできるので、本実施の形態の環状溝36と従来の環状溝300の軸方向の幅が同じ場合、切削工具Tが小径軸部33の嵌合部35の外周に接触する接触面積が小さくなり、切削時に生じる切削抵抗も小さくなる。
【0051】
よって、第二の加工工程においても、切削工具Tと回転軸30とにいわゆるビビり振動が生じるのを防止でき、環状溝36の底面である直線面36bの表面が滑らかになる。よって、回転軸30に対して外部からの振動が加わったときに、環状溝36の底面に応力が集中する箇所ができるのを防止して回転軸30の強度の低下を防止できる。
【0052】
なお、第二の加工工程においても切削工具Tを徐々に軸方向へ移動させて嵌合部35の外周を切削して直線面36bを形成しているため、第一の加工工程の場合と同様に、直線面36bの外周には、
図4に示すように、螺旋状のツールマーク37が必ず形成される。
【0053】
また、本実施の形態では、上記第一の加工工程又は第二の加工工程により回転軸30の両側の小径軸部33の嵌合部35の外周にそれぞれ環状溝36を形成しているが、一方の嵌合部35の外周に形成される環状溝36のみを第一の加工工程又は第二の加工工程で形成するようにしてもよい。
【0054】
前述したように、本実施の形態の回転軸30の製造方法は、外周に環状の支持部材としてのボールベアリング13,15が設けられる小径軸部33と、小径軸部33に連なって小径軸部33より外径が大径な大径軸部32と、大径軸部32の小径軸部側の先端面と小径軸部33との間に形成される円弧状のR部分200とを有する回転軸30の加工工程を含んでおり、この加工工程は、R部分200を切削して小径軸部33の外周に環状溝36を形成する工程である。
【0055】
そして、小径軸部33の軸方向に沿って大径軸部32から小径軸部33の先端に向かう方向を一方向とすると、回転軸30の加工工程は、回転軸30を軸回りに回転させた状態で、小径軸部33の外周の大径軸部32側に軸方向に対して直交する方向から切削工具Tを接近させて、R部分200における大径軸部32の先端面に設けられた大径軸部側R部分200aを切削し、小径軸部33と大径軸部32との境にボールベアリング13,15を位置決めする段部34を形成する第一工程と、切削工具Tを小径軸部33の外周に沿って段部34から所定位置まで一方向へ移動させて、R部分200における小径軸部33の外周に設けられる小径軸部側R部分200bを切削する第二工程と、切削工具Tを小径軸部33の所定位置から径方向に離間させる第三工程とを備えている。
【0056】
上記方法によれば、切削工具Tを軸方向移動させて環状溝36の底面である直線面36bを形成しているため、従来のように、切削工具Tを小径軸部33の外周に径方向に接近させて小径軸部33の外周を切削した後に切削工具Tを径方向へ離間させて環状溝300を形成する場合と比較して、切削工具Tの小径軸部33への切込み量を小さくできるので、切削工具Tの小径軸部33に対する接触面積を小さくでき、切削時に生じる切削抵抗も小さくなる。したがって、回転軸30の加工工程において、切削工具Tと回転軸30とにいわゆるビビり振動が生じるのを防止でき、環状溝36の底面である直線面36bの表面が滑らかになる。よって、回転軸30に対して外部からの振動が加わったときに、環状溝36の底面に応力が集中する箇所ができるのを防止して回転軸30の強度の低下を防止できる。
【0057】
さらに、従来は小径軸部33の外周に深い環状溝300を形成していたため、回転軸30の強度を確保するために、小径軸部33の径を大きくする必要があった。これに対して、上記方法では、切削工具Tの小径軸部33への切込み量を小さくできるので、環状溝36の深さを浅くできる。よって、小径軸部33の径を大きくする必要がないため、回転軸30を形成する材料コストの低減や回転軸30の軽量化を達成できる。
【0058】
また、回転軸30の製造方法における回転軸30のR部分200を切削して小径軸部33の外周に環状溝36を形成する加工工程は、小径軸部33の軸方向に沿って小径軸部33の先端から大径軸部32に向かう方向を一方向とすると、回転軸30を軸回りに回転させた状態で、小径軸部33の外周の所定位置に対して切削工具Tを径方向に接近させて、小径軸部33の所定位置を切削する第一工程と、切削工具Tを小径軸部33の外周に沿って所定位置から一方向に移動させて、R部分200における小径軸部33の外周に設けられた小径軸部側R部分200bを切削する第二工程と、切削工具Tを小径軸部33の外周の大径軸部32側から軸方向に対して直交する方向に離間させて、R部分200における大径軸部32の先端面に設けられた大径軸部側R部分200aを切削し、小径軸部33と大径軸部32との間にボールベアリング13,15を位置決めする段部34を形成する第三工程とを備えてもよい。
【0059】
上記方法によれば、切削工具Tを軸方向移動させて環状溝36の底面である直線面36bを形成しているため、従来のように、切削工具Tを小径軸部33の外周に径方向に接近させて小径軸部33の外周を切削した後に切削工具Tを径方向へ離間させて環状溝300を形成する場合と比較して、切削工具Tの小径軸部33への切込み量を小さくできるため、切削工具Tの小径軸部33に対する接触面積を小さくでき、切削時に生じる切削抵抗も小さくなる。したがって、回転軸30の加工工程において、切削工具Tと回転軸30とにいわゆるビビり振動が生じるのを防止でき、環状溝36の底面である直線面36bの表面が滑らかになる。よって、回転軸30に対して外部からの振動が加わったときに、環状溝36の底面に応力が集中する箇所ができるのを防止して、回転軸30の強度の低下を防止できる。
【0060】
さらに、従来は小径軸部33の外周に深い環状溝300を形成していたため、回転軸30の強度を確保するために、小径軸部33の径を大きくする必要があった。これに対して、上記方法では、切削工具Tの小径軸部33への切込み量を小さくできるので、環状溝36の深さを浅くできる。よって、小径軸部33の径を大きくする必要がないため、回転軸30を形成する材料コストの低減や回転軸30の軽量化を達成できる。
【0061】
また、本実施の形態の回転軸30は、外周に環状の支持部材としてのボールベアリング13,15が嵌合される小径軸部33と、小径軸部33に連なって小径軸部33より外径が大径な大径軸部32と、小径軸部33と大径軸部32との境に形成されてボールベアリング13,15の側面が当接する段部34とを有して、ボールベアリング13,15によって軸回りに回転可能に支持されており、小径軸部33は外周に環状溝36を有しており、環状溝36は、段部34から小径軸部33の先端側に向けて徐々に小径となるように湾曲する湾曲面36aと、湾曲面36aから連続して小径軸部33の軸方向に沿って延びる直線面36bと、直線面36bから連続して徐々に大径となるように傾斜するテーパ面36cとを有し、直線面36bの外周に螺旋状のツールマーク37が形成されている。
【0062】
ここで、ツールマーク37は、切削加工時に切削工具Tを回転する切削対象に押し当てつつ動かしたときに切削対象の表面に残る切削工具Tの移動跡である。そのため、環状溝36の直線面36bの外周に螺旋状のツールマーク37が形成される場合、この直線面36bは、切削工具Tを軸方向へ移動させて小径軸部33の外周を切削することで形成されることになる。したがって、本実施の形態の回転軸30によれば、環状溝36の切削加工時において、従来のように、切削工具Tを小径軸部33の外周に径方向に接近させて小径軸部33の外周を切削した後に切削工具Tを径方向へ離間させて環状溝300を形成する場合と比較して、切削工具Tの小径軸部33への切込み量を小さくできるため、切削工具Tの小径軸部33に対する接触面積を小さくでき、切削時に生じる切削抵抗も小さくなる。したがって、環状溝36の切削加工時において、切削工具Tと回転軸30とにいわゆるビビり振動が生じるのを防止できる。
【0063】
よって、本実施の形態の回転軸30では、環状溝36の底面である直線面36bの表面が滑らかになるため、回転軸30に対して外部からの振動が加わったときに、環状溝36の底面に応力が集中する箇所ができるのを防止して、回転軸30の強度の低下を防止できる。
【0064】
さらに、従来は小径軸部33の外周に深い環状溝300を形成していたため、回転軸30の強度を確保するために、小径軸部33の径を大きくする必要があった。これに対して、上記構成では、切削工具Tの小径軸部33への切込み量を小さくできるので、環状溝36の深さを浅くできる。よって、小径軸部33の径を大きくする必要がないため、回転軸30を形成する材料コストの低減や回転軸30の軽量化を達成できる。
【0065】
また、本実施の形態の回転軸30は、環状溝36の軸方向の両端に、それぞれ、段部34から小径軸部33の先端側に向けて徐々に小径となるように湾曲する湾曲面36aと、直線面36bから連続して徐々に大径となるように傾斜するテーパ面36cとが設けられている。そのため、段部34と環状溝36との境の部分の形状変化は湾曲面36aによって滑らかとなり、小径軸部33における環状溝36との境の部分の形状変化はテーパ面36cによって滑らかとなっている。よって、段部34と環状溝36との境の部分と小径軸部33における環状溝36との境の部分に応力が集中するのを防止できる。
【0066】
また、本実施の形態では、ボールベアリング13,15を支持部材としているが、支持部材は回転軸30を軸回りに回転可能に支持するものであればよく、支持部材は、例えば、滑り軸受であってもよい。
【0067】
なお、本実施の形態では、回転軸30は、電動モータMのロータ3に利用されているが、電動モータMのロータ3以外に利用されてもよく、例えば、油圧モータや油圧ポンプの駆動軸に利用されてもよい。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
13,15・・・ボールベアリング(支持部材)、30・・・回転軸、32・・・大径軸部、33・・・小径軸部、34・・・段部、36・・・環状溝、36a・・・湾曲面、36b・・・直線面、36c・・・テーパ面、37・・・ツールマーク、200・・・R部分、200a・・・大径軸部側R部分、200b・・・小径軸部側R部分、T・・・切削工具