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特開2024-112369過電流保護回路、半導体装置、負荷駆動装置、及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112369
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】過電流保護回路、半導体装置、負荷駆動装置、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/087 20060101AFI20240814BHJP
   H03K 17/08 20060101ALI20240814BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20240814BHJP
   H02H 3/08 20060101ALI20240814BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H02H3/087
H03K17/08 C
H03K17/687 Z
H02H3/08 D
H02H7/00 D
H02H7/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017305
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 克明
(72)【発明者】
【氏名】宅間 徹
【テーマコード(参考)】
5G004
5G053
5J055
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004DA02
5G004DC14
5G004EA01
5G053AA01
5G053BA01
5G053EA09
5G053EC03
5G053FA05
5J055AX32
5J055BX16
5J055CX12
5J055CX28
5J055DX13
5J055DX22
5J055EY01
5J055EY21
5J055EZ03
5J055EZ04
5J055EZ10
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX04
(57)【要約】
【課題】過電流が検出されなくても過電流閾値を切り替えることができる過電流保護回路を提供する。
【解決手段】過電流保護回路(OCP1)は、出力トランジスタ(M1)に流れる電流を監視対象電流とする過電流保護回路であって、判別回路(3)と、制限回路(VS1、R2、AMP1、M3)と、を備える。前記判別回路は、前記出力トランジスタのターンオンが遷移中である第1状態と、前記ターンオンの遷移が完了し前記出力トランジスタがオン状態である第2状態と、を判別する。前記制限回路は、前記監視対象電流が過電流閾値より大きいときに前記監視対象電流を制限し、前記判別回路の判別結果に基づいて、前記第1状態であるときには前記第2状態であるときよりも前記過電流閾値を大きくする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力トランジスタに流れる電流を監視対象電流とするように構成された過電流保護回路であって、
前記出力トランジスタのターンオンが遷移中である第1状態と、前記ターンオンの遷移が完了し前記出力トランジスタがオン状態である第2状態と、を判別するように構成された判別回路と、
前記監視対象電流が過電流閾値より大きいときに前記監視対象電流を制限し、前記判別回路の判別結果に基づいて、前記第1状態であるときには前記第2状態であるときよりも前記過電流閾値を大きくするように構成された制限回路と、
を備える、過電流保護回路。
【請求項2】
前記判別回路は、
前記出力トランジスタを制御する制御信号の前記ターンオン開始タイミングとなるレベル切り替わりから所定の遅延時間だけ遅れてレベルが切り替わる遅延信号を生成し、
前記遅延信号に基づいて、前記第1状態と、前記第2状態と、を判別するように構成されている、請求項1に記載の過電流保護回路。
【請求項3】
前記判別回路は、
ミラー効果により容量値が等価的に増大するように構成されたキャパシタを備え、
前記制御信号を前記容量値に基づいて設定される遅延時間だけ遅延させて前記遅延信号を生成するように構成されている、請求項2に記載の過電流保護回路。
【請求項4】
前記判別回路は、
前記出力トランジスタの出力に基づいて、前記第1状態と、前記第2状態と、を判別するように構成されている、請求項1に記載の過電流保護回路。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の過電流保護回路と、
前記出力トランジスタと、
を備える、半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置と、
前記出力トランジスタに直列に接続される容量性負荷と、
を備える、負荷駆動装置。
【請求項7】
請求項6に記載の負荷駆動装置を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、過電流保護回路、半導体装置、負荷駆動装置、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、車載IPD[intelligent power device]などの半導体装置に関して、これまでに数多くの新技術を提案している(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
また、半導体装置に組み込まれる過電流保護回路の関連技術としては、例えば、特許文献2及び3を挙げることができる。
【0004】
半導体装置が駆動する負荷に流れる電流を過電流保護回路が監視する場合、負荷の種類によって、監視対象電流(負荷電流)の特性が大きく異なる。
【0005】
バルブランプなどの容量性負荷が車載IPDなどの半導体装置によって駆動される場合、容量性負荷の起動時と安定時とで負荷電流が大きく異なる。容量性負荷の起動時には負荷電流はラッシュ電流になり、容量性負荷の安定時には負荷電流はラッシュ電流よりはるかに小さい定常電流になる。
【0006】
容量性負荷を駆動する可能性がある半導体装置に組み込まれる過電流保護回路では、一般的に過電流閾値が容量性負荷のラッシュ電流以上に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2017/187785号
【特許文献2】米国特許第9787180号明細書
【特許文献3】米国特許第9966943号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
過電流閾値が容量性負荷のラッシュ電流以上に設定されると、以下の2つの問題が生じる。
【0009】
過電流閾値が容量性負荷のラッシュ電流以上に設定された半導体装置が、抵抗性負荷又は誘導性負荷を駆動する場合、負荷に流れる電流に対して過電流閾値が大きすぎることになり、半導体装置に外付け接続される別の過電流保護回路(過電流閾値が小さい過電流保護回路)を設けなければ、適切な過電流保護を実現することができない。この不都合が第1の問題である。
【0010】
容量性負荷の安定時に容量性負荷に短絡が発生した場合、過電流閾値が大きいために過電流保護が遅れて大きな短絡電流が流れてしまう。この不都合が第2の問題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書中に開示されている過電流保護回路は、出力トランジスタに流れる電流を監視対象電流とするように構成された過電流保護回路であって、判別回路と、制限回路と、を備える。前記判別回路は、前記出力トランジスタのターンオンが遷移中である第1状態と、前記ターンオンの遷移が完了し前記出力トランジスタがオン状態である第2状態と、を判別するように構成されている。前記制限回路は、前記監視対象電流が過電流閾値より大きいときに前記監視対象電流を制限し、前記判別回路の判別結果に基づいて、前記第1状態であるときには前記第2状態であるときよりも前記過電流閾値を大きくするように構成されている。
【0012】
本明細書中に開示されている半導体装置は、上記構成の過電流保護回路と、前記出力トランジスタと、を備える。
【0013】
本明細書中に開示されている負荷駆動装置は、上記構成の半導体装置と、前記出力トランジスタに直列に接続される容量性負荷と、を備える。
【0014】
本明細書中に開示されている車両は、上記構成の負荷駆動装置を備える。
【発明の効果】
【0015】
本明細書中に開示されている発明によれば、過電流が検出されなくても過電流閾値を切り替えることができる。これにより、上記第1の問題及び上記第2の問題を解決することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1実施形態に係る負荷駆動装置の構成を示す図である。
図2図2は、判別回路の第1構成例を示す図である。
図3図3は、第1構成例の判別回路の各部電圧波形等を示すタイミングチャートである。
図4図4は、判別回路の第2構成例を示す図である。
図5図5は、判別回路の第3構成例を示す図である。
図6図6は、第3構成例の判別回路の各部電圧波形等を示すタイミングチャートである。
図7図7は、第2実施形態に係る負荷駆動装置の構成を示す図である。
図8図8は、車両の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、MOS(Metal Oxide Semiconductor)電界効果トランジスタとは、ゲートの構造が、「導電体または抵抗値が小さいポリシリコン等の半導体からなる層」、「絶縁層」、及び「P型、N型、又は真性の半導体層」の少なくとも3層からなるトランジスタをいう。つまり、MOS電界効果トランジスタのゲートの構造は、金属、酸化物、及び半導体の3層構造に限定されない。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る負荷駆動装置10Aの構成を示す図である。負荷駆動装置10Aは、半導体装置1Aと、例えばバルブランプなどの容量性負荷LD1と、直流電源VS1及びVS2と、を備える。
【0019】
半導体装置1Aは、容量性負荷LD1とグラウンド電位との間を導通/遮断するローサイドスイッチIC(IPDの一種)である。
【0020】
半導体装置1Aは、装置外部との電気的な接続を確立するための手段として、端子T1~T4を備える。
【0021】
端子T1は、容量性負荷LD1の第1端に接続される。容量性負荷LD1の第2端は、直流電源VS1の正極に接続される。端子T2は、グラウンド電位に接続される。端子T3は、入力信号INを受け取る。
【0022】
端子T4は、直流電源VS2の正極に接続される。直流電源VS1及びVS2の各負極は、グラウンド電位に接続される。直流電源VS1は電圧VCCを出力する。直流電源VS2は電圧VDDを出力する。電圧VCCと電圧VDDとは、互いに同じ値の電圧であってもよく、互いに異なる値の電圧であってもよい。端子T4に印加される電圧VDDは、半導体装置1Aの内部において電源電圧として用いられる。
【0023】
半導体装置1Aは、過電流保護回路OCP1と、制御回路2と、抵抗R1と、出力トランジスタM1と、センストランジスタM2と、を備える。出力トランジスタM1及びセンストランジスタM2は、NチャネルのMOS電界効果トランジスタである。
【0024】
制御回路2は、端子T3に接続される。制御回路2は、抵抗R1を介して出力トランジスタM1及びセンストランジスタM2を制御する。制御回路2は、入力信号INがLOWレベルであるときに出力トランジスタM1及びセンストランジスタM2をオフにし、入力信号INがHIGHレベルであるときに出力トランジスタM1及びセンストランジスタM2をオンにする。したがって、入力信号INは、半導体装置1Aの外部から出力トランジスタM1を制御する制御信号である。
【0025】
出力トランジスタM1及びセンストランジスタM2の各ゲートは、抵抗R1を介して制御回路2に接続される。出力トランジスタM1及びセンストランジスタM2の各ドレインは、端子T1に接続される。出力トランジスタM1のソース及びバックゲートは、端子T2に接続される。センストランジスタM2のソース及びバックゲートは、過電流保護回路OCP1に接続される。出力トランジスタM1は、端子T1を介して、容量性負荷LD1に直列接続される。
【0026】
センス電流Is(センストランジスタM2のソース電流)は、出力電流Ip(出力トランジスタM1のソース電流)に比例する。センストランジスタM2のソース面積は出力トランジスタM1のソース面積よりも小さく、センス電流Isは出力電流Ipよりも小さくなる。
【0027】
過電流保護回路OCP1は、センス電流Isを監視することで、出力電流Ipを間接的に監視し、出力トランジスタM1を保護する。
【0028】
過電流保護回路OCP1は、判別回路3と、可変電圧源VS3と、センス抵抗R2と、アンプAMP1と、NチャネルのMOS電界効果トランジスタM3と、を備える。
【0029】
判別回路3は、出力トランジスタM1のターンオンが遷移中である第1状態と、ターンオンの遷移が完了し出力トランジスタM1がオン状態である第2状態と、を判別する。なお、判別回路3の判別結果は誤差を含んでよい。例えば、判別回路3は、第2状態の初期を第1状態と判別してもよく、第1状態の終期を第2状態と判別してもよい。
【0030】
可変電圧源VS3、センス抵抗R2、アンプAMP1、及びMOS電界効果トランジスタM3は、制限回路の一例である。制限回路は、監視対象電流(出力電流Ip)が過電流閾値より大きいときに監視対象電流を制限し、判別回路3の判別結果である判別信号S1に基づいて、第1状態であるときには第2状態であるときよりも過電流閾値を大きくする。
【0031】
可変電圧源VS3は、可変電圧V1を出力する。可変電圧源VS3は、判別信号S1に基づいて可変電圧V1の値を2段階(電圧値VA及びVB)で切り替える。センス抵抗R2は、センス電流Isをセンス電圧Vsに変換する。アンプAMP1は、センス電圧Vsが可変電圧V1を超えないように、センス電圧Vsと可変電圧V1との差に応じてMOS電界効果トランジスタM3を制御する。アンプAMP1の制御によって、センストランジスタM2に流れるセンス電流Is及び出力トランジスタに流れる出力電流Ipが制限されて過電流保護がかかる。
【0032】
(判別回路の第1構成例)
図2は、判別回路3の第1構成例を示す図である。図2において、半導体装置1Aの外部接続状態の図示は省略されている。また、図2では、可変電圧源VS3の構成例も図示されている。
【0033】
第1構成例に係る判別回路3は、PチャネルのMOS電界効果トランジスタP1~P5と、電流源CS1と、NチャネルのMOS電界効果トランジスタN1~N4と、キャパシタC1と、インバータINV1と、を備える。
【0034】
第1構成例に係る判別回路3は、入力信号INの立ち上がりエッジから所定の遅延時間だけ遅れてレベルが切り替わる遅延信号IN_DLY(後述する図3参照)を生成し、遅延信号IN_DLYに基づいて第1状態と第2状態とを判別し、判別結果である判別信号S1を生成する。入力信号INの立ち上がりエッジは、出力トランジスタM1のターンオンが開始するタイミングである。
【0035】
所定の遅延時間は、定電流源CS1から出力される定電流の値と、キャパシタC1の容量値と、MOS電界効果トランジスタN2の閾値電圧Vthとによって決まる。所定の遅延時間は、入力信号INの1周期における第1状態の長さに設定される。これにより、第1構成例に係る判別回路3は、出力トランジスタM1のターンオンが遷移中である第1状態であるときにLOWレベルの判別信号S1を出力し、ターンオンの遷移が完了し出力トランジスタM1がオン状態である第2状態であるときにHIGHレベルの判別信号S1を出力することができる。
【0036】
図2に示す可変電圧源VS3は、定電流源CS2と、抵抗R3及びR4と、NチャネルのMOS電界効果トランジスタM3と、を備える。
【0037】
図2に示す可変電圧源VS3は、判別信号S1がLOWレベルであるときに可変電圧V1の値を電圧値VAにし、判別信号S1がHIGHレベルであるときに可変電圧V1の値を電圧値VBにする。電圧値VAは、電圧値VBより大きい値である。
【0038】
第1構成例に係る判別回路3の概略動作は、以下の通りである。
【0039】
図3は、第1構成例に係る判別回路3の各部電圧波形等を示すタイミングチャートである。図3では、上から順に、入力信号IN、過電流閾値OCTH、出力電流Ip、内部信号(内部電圧)IN_DET、チャージ電圧IN_CRG、遅延信号(遅延電圧)IN_DLY、判別信号(判別電圧)S1、及び可変電圧V1が描写されている。
【0040】
内部信号IN_DETは、第1構成例に係る判別回路3によって生成される信号である。入力信号INがHIGHレベルであるときには内部信号IN_DETもHIGHレベルになり、入力信号INがLOWレベルであるときには内部信号IN_DETもLOWレベルになる。例えば、第1構成例に係る判別回路3に設けられるレベルシフタが、入力信号INから内部信号IN_DETを生成する。
【0041】
また、図3では、端子T1に容量性負荷LD1が接続されている場合の出力電流Ipが点線で描写されており、端子T1に誘導性負荷が接続されている場合の出力電流Ipが実線で描写されている。
【0042】
第1タイミングTM1において、入力信号INがLOWレベルからHIGHレベルに切り替わり、内部信号IN_DETもLOWレベルからHIGHレベルに切り替わる。内部信号IN_DETがLOWレベルからHIGHレベルに切り替わると、MOS電界効果トランジスタN1及びN3がオン状態からオフ状態に切り替わる。これにより、遅延信号IN_DLYはLOWレベルからHIGHレベルに切り替わり、キャパシタC1の充電が開始されチャージ電圧IN_CRGが増加し始める。
【0043】
遅延信号IN_DLYがLOWレベルからHIGHレベルに切り替わることで、判別信号S1がHIGHレベルからLOWレベルに切り替わり、可変電圧V1の値が電圧値VBから電圧値VAに切り替わる。その結果、第1タイミングTM1において、過電流閾値OCTHは閾値THBから閾値THAに切り替わる。
【0044】
チャージ電圧IN_CRGが増加し続け、第2タイミングTM2において、チャージ電圧IN_CRGがMOS電界効果トランジスタN2の閾値電圧を超える。したがって、第2タイミングTM2において、MOS電界効果トランジスタN2はオフ状態からオン状態に切り替わる。これにより、遅延信号IN_DLYはHIGHレベルからLOWレベルに切り替わる。遅延信号IN_DLYがHIGHレベルからLOWレベルに切り替わることで、判別信号S1がLOWレベルからHIGHレベルに切り替わり、可変電圧V1の値が電圧値VAから電圧値VBに切り替わる。その結果、第2タイミングTM2において、過電流閾値OCTHは閾値THAから閾値THBに切り替わる。
【0045】
第3タイミングTM3において、入力信号INがHIGHレベルからLOWレベルに切り替わり、内部信号IN_DETもHIGHレベルからLOWレベルに切り替わる。内部信号IN_DETがHIGHレベルからLOWレベルに切り替わると、MOS電界効果トランジスタN1がオフ状態からオン状態に切り替わる。これにより、キャパシタC1が放電される。
【0046】
第4タイミングTM4において、判別回路3は上述した第1タイミングTM1と同じ動作を行い、第1タイミングTM1以降の動作を繰り返す。
【0047】
第3タイミングTM3から第4タイミングTM4までの期間は、出力トランジスタM1のターンオフが遷移中である第3状態と、ターンオフの遷移が完了し出力トランジスタM1がオフ状態である第4状態と、を含む。
【0048】
第1構成例に係る判別回路3が上述した動作を行うことにより、過電流保護回路OCP1は、過電流を検出しなくても過電流閾値OCTHを切り替えることができる。
【0049】
例えば、過電流の検出をトリガーとして過電流閾値OCTHが切り替わる構成である過電流保護回路は、過電流が検出された後でしか過電流閾値OCTHを小さくすることができないため、上記第1の問題及び上記第2の問題を解決することができない。
【0050】
対して、過電流保護回路OCP1は、過電流を検出しなくても過電流閾値OCTHを切り替えることができる構成であるため、上記第1の問題及び上記第2の問題を解決することが可能となる。
【0051】
(判別回路の第2構成例)
図4は、判別回路3の第2構成例を示す図である。第2構成例に係る判別回路3は、第1構成例に係る判別回路3に定電流源21及びMOS電界効果トランジスタ22~26が追加された構成である。MOS電界効果トランジスタ22、23、及び26は、NチャネルのMOS電界効果トランジスタである。MOS電界効果トランジスタ24及び25は、PチャネルのMOS電界効果トランジスタである。
【0052】
第1構成例に係る判別回路3は、第1タイミングTM1から第2タイミングTM2までの期間が長い場合、キャパシタC1の容量を大きくする必要があり、回路面積の増大及びコストアップが顕著になるおそれがある。
【0053】
対して、第1構成例に係る判別回路3は、ミラー効果によりキャパシタC1の容量値が等価的に増大するため、第1タイミングTM1から第2タイミングTM2までの期間が長い場合でも、回路面積の増大及びコストアップを抑制することができる。
【0054】
(判別回路の第3構成例)
図5は、判別回路3の第3構成例を示す図である。第3構成例に係る判別回路3は、第1構成例に係る判別回路3からMOS電界効果トランジスタN1及びキャパシタC1が取り除かれ高耐圧素子31及びヒステリシスコンパレータ32が追加された構成である。高耐圧素子31としては、例えば図5に示すように高耐圧のNチャネルのMOS電界効果トランジスタを用いることができる。
【0055】
また、図5では図示が省略されているが、第3構成例に係る判別回路3は、基準電圧VREFを生成する基準電圧源を備える。
【0056】
第3構成例に係る判別回路3は、出力トランジスタM1の出力(端子T1に印加される電圧)に基づいて第1状態と前記第2状態とを判別し、判別結果である判別信号S1を生成する。
【0057】
図6は、第3構成例に係る判別回路3の各部電圧波形等を示すタイミングチャートである。図6では、上から順に、入力信号IN、過電流閾値OCTH、出力電流Ip、内部信号(内部電圧)IN_DET、内部信号(内部電圧)OUT_IN、内部信号(内部電圧)IN_DETB、判別信号(判別電圧)S1、及び可変電圧V1が描写されている。
【0058】
内部信号IN_DETは、第3構成例に係る判別回路3によって生成される信号である。入力信号INがHIGHレベルであるときには内部信号IN_DETもHIGHレベルになり、入力信号INがLOWレベルであるときには内部信号IN_DETもLOWレベルになる。例えば、第1構成例に係る判別回路3に設けられるレベルシフタが、入力信号INから内部信号IN_DETを生成する。
【0059】
内部信号OUT_INは、第3構成例に係る判別回路3によって生成される信号である。例えば、第3構成例に係る判別回路3に設けられるレベルシフタが、入力信号INから内部信号IN_DETを生成する。内部信号OUT_INは、端子T1に印加される電圧の変動に応じて変動する。高耐圧素子31が、端子T1に印加される電圧から内部信号OUT_INを生成する。
【0060】
また、図6では、端子T1に容量性負荷LD1が接続されている場合の出力電流Ipが点線で描写されており、端子T1に誘導性負荷が接続されている場合の出力電流Ipが実線で描写されている。
【0061】
第1タイミングTM1において、入力信号INがLOWレベルからHIGHレベルに切り替わり、内部信号IN_DETBもLOWレベルからHIGHレベルに切り替わる。内部信号IN_DETBがLOWレベルからHIGHレベルに切り替わることで、判別信号S1がHIGHレベルからLOWレベルに切り替わり、可変電圧V1の値が電圧値VBから電圧値VAに切り替わる。その結果、第1タイミングTM1において、過電流閾値OCTHは閾値THBから閾値THAに切り替わる。
【0062】
端子T1に印加される電圧の減少に伴い内部信号OUT_INが減少し、第2タイミングTM2において、内部信号OUT_INが基準電圧VREFを下回る。したがって、第2タイミングTM2において、MOS電界効果トランジスタN2はオフ状態からオン状態に切り替わる。これにより、内部信号IN_DETBはHIGHレベルからLOWレベルに切り替わる。内部信号IN_DETBがHIGHレベルからLOWレベルに切り替わることで、判別信号S1がLOWレベルからHIGHレベルに切り替わり、可変電圧V1の値が電圧値VAから電圧値VBに切り替わる。その結果、第2タイミングTM2において、過電流閾値OCTHは閾値THAから閾値THBに切り替わる。
【0063】
第3タイミングTM3において、入力信号INがHIGHレベルからLOWレベルに切り替わり、内部信号IN_DETもHIGHレベルからLOWレベルに切り替わる。内部信号IN_DETがHIGHレベルからLOWレベルに切り替わると、MOS電界効果トランジスタN3がオフ状態からオン状態に切り替わる。これにより、第3タイミングTM3以降において内部信号OUT_INが増加しても内部信号IN_DETBのLOWレベルが維持される。
【0064】
第4タイミングTM4において、判別回路3は上述した第1タイミングTM1と同じ動作を行い、第1タイミングTM1以降の動作を繰り返す。
【0065】
第3タイミングTM3から第4タイミングTM4までの期間は、出力トランジスタM1のターンオフが遷移中である第3状態と、ターンオフの遷移が完了し出力トランジスタM1がオフ状態である第4状態と、を含む。
【0066】
第3構成例に係る判別回路3が上述した動作を行うことにより、過電流保護回路OCP1は、過電流を検出しなくても過電流閾値OCTHを切り替えることができる。
【0067】
<第2実施形態>
図7は、第1実施形態に係る負荷駆動装置10Bの構成を示す図である。負荷駆動装置10Bは、半導体装置1Bと、例えばバルブランプなどの容量性負荷LD1と、直流電源VS1及びVS2と、を備える。
【0068】
半導体装置1Bは、過電流保護回路OCP1の代わりに過電流保護回路OCP2を備え、センストランジスタM2’を備える点で半導体装置1Aと相違し、それ以外の点で半導体装置1Aと同一である。
【0069】
過電流保護回路OCP2は、判別回路3と、第1回路4と、第2回路5と、を備える。本実施形態に係る判別回路3は、第1実施形態に係る判別回路3と同一である。
【0070】
第1回路4及び第2回路5はそれぞれ、過電流保護回路OCP1から判別回路3が取り除かれ、可変電圧源VS3の代わりに定電圧源が設けられた構成である。
【0071】
第1回路4及び第2回路5では、互いに定電圧源から出力される定電圧の値が異なる。第1回路4に設けられる定電圧源から出力される定電圧の値は、電圧値VAである。第2回路5に設けられる定電圧源から出力される定電圧の値は、電圧値VBである。電圧値VAは、電圧値VBより大きい値である。
【0072】
判別回路3から出力される判別信号S1がLOWレベルである場合、第1回路4はアクティブ状態になり、第2回路5はスリープ状態になる。判別回路3から出力される判別信号S1がHIHGHレベルである場合、第1回路4はスリープ状態になり、第2回路5はアクティブ状態になる。
【0073】
このような構成により、過電流保護回路OCP2は、過電流保護回路OCP1と同様の効果を奏する。
【0074】
<車両への適用>
図8は、車両の一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Xは、バッテリから電力供給を受けて動作する種々の負荷駆動装置を搭載している。
【0075】
車両Xには、エンジン車のほか、電動車(BEV[battery electric vehicle]、HEV[hybrid electric vehicle]、PHEV/PHV(plug-in hybrid electric vehicle/plug-in hybrid vehicle]、又は、FCEV/FCV(fuel cell electric vehicle/fuel cell vehicle]などのxEV)も含まれる。
【0076】
車両Xは、例えば先に説明した負荷駆動装置10A又は10Bを搭載することができる。
【0077】
<その他>
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。これまでに説明してきた各種の実施形態は、矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施してもよい。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。
【0078】
例えば、上記実施形態では、ローサイドスイッチICへの適用例を挙げたが、ハイサイドスイッチICにも上記実施形態と同様の回路構成を適用することが可能である。ただし、判別回路3の第3構成例はハイサイドスイッチICに適用することができない。
【0079】
<付記>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0080】
本開示の過電流保護回路(OCP1、OCP2)は、出力トランジスタ(M1)に流れる電流を監視対象電流とするように構成された過電流保護回路であって、前記出力トランジスタのターンオンが遷移中である第1状態と、前記ターンオンの遷移が完了し前記出力トランジスタがオン状態である第2状態と、を判別するように構成された判別回路(3)と、前記監視対象電流が過電流閾値より大きいときに前記監視対象電流を制限し、前記判別回路の判別結果に基づいて、前記第1状態であるときには前記第2状態であるときよりも前記過電流閾値を大きくするように構成された制限回路(VS1、R2、AMP1、M3、4、5)と、を備える構成(第1の構成)である。
【0081】
上記第1の構成の過電流保護回路において、前記判別回路は、前記出力トランジスタを制御する制御信号の前記ターンオン開始タイミングとなるレベル切り替わりから所定の遅延時間だけ遅れてレベルが切り替わる遅延信号を生成し、前記遅延信号に基づいて、前記第1状態と、前記第2状態と、を判別するように構成されている構成(第2の構成)であってもよい。
【0082】
上記第2の構成の過電流保護回路において、前記判別回路は、ミラー効果により容量値が等価的に増大するように構成されたキャパシタを備え、前記制御信号を前記容量値に基づいて設定される遅延時間だけ遅延させて前記遅延信号を生成するように構成されている構成(第3の構成)であってもよい。
【0083】
上記第1の構成の過電流保護回路において、前記判別回路は、前記出力トランジスタの出力に基づいて、前記第1状態と、前記第2状態と、を判別するように構成されている構成(第4の構成)であってもよい。
【0084】
本開示の半導体装置(1A、1B)は、上記第1~第4いずれかの構成の過電流保護回路と、前記出力トランジスタと、を備える構成(第5の構成)である。
【0085】
本開示の負荷駆動装置(10A、10B)は、上記第5の構成の半導体装置と、前記出力トランジスタに直列に接続される容量性負荷と、を備える構成(第6の構成)である。
【0086】
本開示の車両(X)は、上記第6の構成の負荷駆動装置を備える構成(第7の構成)である。
【符号の説明】
【0087】
1A、1B 半導体装置
2 制御回路
3 判別回路
4 第1回路
5 第2回路
10A、10B 負荷駆動装置
31 高耐圧素子
32 ヒステリシスコンパレータ
AMP1 アンプ
C1 キャパシタ
CS1、24、CS2 定電流源
INV1 インバータ
LD1 容量性負荷
M1 出力トランジスタ
M2、M2’ センストランジスタ
M3、N1~N4、P1~P5、22~26 MOS電界効果トランジスタ
OCP1、OCP2 過電流保護回路
R1、R3、R4 抵抗
R2 センス抵抗
T1~T4 端子
VS1、VS2 直流電源
VS3 可変電圧源
X 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8