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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112372
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】製氷機
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/045 20180101AFI20240814BHJP
【FI】
F25C1/045 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017320
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】錦織 由和
(72)【発明者】
【氏名】山本 匡人
(72)【発明者】
【氏名】富永 祐之
(57)【要約】
【課題】水皿の取り外しおよび取り付け作業が容易な製氷機を提供する。
【解決手段】水皿12にネジ止めされる前ネジ部材29は、傾動機構におけるコイルばね31のフック31aが連繋される環状溝部32aが形成された樹脂製の本体32と、本体32にインサートされた金属製のネジ体33と、を備える。ネジ体33は、水皿12に螺挿されるネジ部35aが本体32の後端から突出すると共に、工具が係合可能な係合部34aが形成された頭部34が、本体内に位置している。本体32には、前端側に開口する露出孔32bが、ネジ体33の頭部34まで延在するように設けられ、頭部34の係合部34aは、露出孔32b内に露出している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面を開放可能な箱体の内部に設けられ、製氷部に対して傾動可能な水皿と、該水皿を傾動する傾動機構と、を備える製氷機であって、
前記水皿の前面側に着脱自在にネジ止めされるネジ部材と、
前記傾動機構を構成し、前記ネジ部材に一端部が連繋されて、前記製氷部に対して傾動される前記水皿を、製氷部に接近した閉成位置および製氷部から離間した開放位置に保持するコイルばねと、を備え、
前記ネジ部材は、前記水皿から前方に突出して前記コイルばねの一端部が連繋される連繋部が形成された樹脂製の本体と、該本体にインサートされた金属製のネジ体と、を備え、
該ネジ体は、前記水皿に螺挿されるネジ部が前記本体から後方に突出すると共に、工具が係合可能な係合部が本体の前側を向いて形成され、
前記ネジ体の係合部に、前記本体の側から工具を係合可能に構成した
ことを特徴とする製氷機。
【請求項2】
前記ネジ体は、前記連繋部の形成領域を横切るように前記本体にインサートされて、前記係合部は連繋部より前側に位置している請求項1記載の製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水皿を傾動可能に枢支した製氷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多量の氷塊を製造し得る製氷機が、喫茶店やレストラン等の施設その他の厨房において好適に使用されている。製氷機としては、製氷室(製氷部)に設けた製氷小室に対して該製氷小室の開口を閉成した水皿から製氷水を対応的に噴射供給して氷塊を製造し、生成された氷塊を、製氷室に対して離間する方向に傾動機構によって水皿を傾動することで落下放出するよう構成した、所謂クローズドセルタイプの製氷機構を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示の製氷機では、傾動機構におけるアクチュエータにより回転されるカム部材と、水皿にネジ止めされたネジ部材とをコイルばねにより連繋し、カム部材の回転によって水皿を傾動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-325143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記傾動機構のコイルばねは、その下端部に形成されたフックを、水皿のネジ部材の外周に形成した環状溝部に引っ掛け、該フックがネジ部材から容易に外れることがないようにフックを変形させている。このため、清掃等のメンテナンスに際して水皿を製氷機から取り外す際には、フックが引っ掛けられたままのネジ部材を水皿から取り外し、またメンテナンス後にはフックが引っ掛けられたままのネジ部材を水皿に取り付けている。
【0005】
前記ネジ部材は、水皿に螺挿されるネジ部を、環状溝部が形成された本体の一端から突出した部材であって、六角柱状に形成された本体に係合したモンキーレンチやスパナを用いてネジ部材を回転することで、当該ネジ部材の水皿からの取り外しや取り付けが行われていた。しかし、ネジ部材にコイルばねが引っ掛けられている状態で、該コイルばねと水皿との間に臨む本体に対して側方からモンキーレンチやスパナを係合して、ネジ部材を水皿に対して取り外したり取り付けたりする作業は煩雑であった。また、製氷機の内部における水皿を着脱するための作業スペースは狭く、ネジ部材に対してモンキーレンチやスパナを側方から係合して着脱する作業は、作業効率を低下させて時間が掛かる難点が指摘される。
【0006】
すなわち本発明は、前述した従来技術に内在する前記課題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、水皿の取り外しおよび取り付け作業が容易な製氷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る製氷機は、
前面を開放可能な箱体(10)の内部に設けられ、製氷部(11)に対して傾動可能な水皿(12)と、該水皿(12)を傾動する傾動機構(19)と、を備える製氷機であって、
前記水皿(12)の前面側に着脱自在にネジ止めされるネジ部材(29)と、
前記傾動機構(19)を構成し、前記ネジ部材(29)に一端部(31a)が連繋されて、前記製氷部(11)に対して傾動される前記水皿(12)を、製氷部(11)に接近した閉成位置および製氷部(11)から離間した開放位置に保持するコイルばね(31)と、を備え、
前記ネジ部材(29)は、前記水皿(12)から前方に突出して前記コイルばね(31)の一端部(31a)が連繋される連繋部(32a)が形成された樹脂製の本体(32)と、該本体(32)にインサートされた金属製のネジ体(33)と、を備え、
該ネジ体(33)は、前記水皿(12)に螺挿されるネジ部(35a)が前記本体(32)から後方に突出すると共に、工具が係合可能な係合部(34a)が本体(32)の前側を向いて形成され、
前記ネジ体(33)の係合部(34a)に、前記本体(32)の側から工具を係合可能に構成したことを要旨とする。
請求項1の発明では、本体にインサートされているネジ体の係合部に、本体の前側から工具を係合可能に構成したので、コイルばねが本体の連繋部に連繋されている状態での水皿に対するネジ部材の取り付けおよび取り外し時の作業性を改善でき、メンテナンス等のサービスに掛かる時間を短縮することができる。また、コイルばねの連繋部が形成される本体を樹脂製とすると共に、工具の係合部が形成されるネジ体を金属製としたので、傾動機構によって水皿を傾動させる際のコイルばねと本体との摺動抵抗は小さく、水皿のスムーズな傾動を図ることができ、かつ、工具による係合部の欠けやなめが発生するのを抑制できる。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記ネジ体(33)は、前記連繋部(32a)の形成領域を横切るように前記本体(32)にインサートされて、前記係合部(34a)は連繋部(32a)より前側に位置していることを要旨とする。
請求項2の発明では、本体の内部に、連繋部の形成領域を横切るように金属製のネジ体が存在するので、水皿の傾動時に負荷が加わる連繋部の強度を向上してネジ部材の損傷を防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る製氷機によれば、コイルばねが連繋されている状態でのネジ部材の水皿に対する取り付けおよび取り外しが容易となり、水皿の取り付けおよび取り外し作業を短時間で容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例に係る製氷機の製氷機構を示す概略正面図である。
図2】実施例に係る製氷機を示す概略斜視図である。
図3】実施例に係る製氷機構を一部破断して示す概略側面図である。
図4】実施例に係る製氷機構の要部概略断面図である。
図5】実施例に係るネジ部材の概略正面図である。
図6】別実施例に係るネジ部材の概略斜視図である。
図7】別実施例に係るネジ部材の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る製氷機につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。実施例では、製氷機として、所謂クローズドセルタイプの製氷機構を備えた噴射式自動製氷機を挙げて説明する。また、以下の説明において、図2に示す製氷機の扉が設けられる側を前側として、前後方向を指称し、左右方向とは、図2において製氷機を正面から見た左右方向をいう。
【実施例0012】
図1図2は、実施例の製氷機を示す概略図である。製氷機は、その本体となる箱体10の内部に貯氷室10aが画成されると共に、箱体10の内部上方には、製氷室(製氷部)11、水皿12および製氷水タンク13等からなる製氷機構14が配設されている。具体的には、箱体10の上部に水平に配置した取付部材15の下方に、下向きに開口する多数の製氷小室11aを画成した製氷室11が固定支持される。製氷室11の上面には、冷凍回路を構成する蒸発器17が密着的に蛇行配置され、製氷運転時に冷媒を循環させて製氷室11を強制冷却し、除氷運転時に高温冷媒(ホットガス)を循環させて製氷室11を加温するよう構成される。また、製氷室11の直下に水皿12が配設され、この水皿12の下側に、製氷水を貯留する製氷水タンク13が配設されている。箱体10の前面には、貯氷室10aの前方に対応して取出口10bを開閉する扉16が開閉可能に設けられ、この扉16を開放することで貯氷室10aに貯留した氷塊を、取出口10bから取り出すことができるよう構成される。また、箱体10の前面には、取出口10bより上側に、前記製氷機構14の前方を覆う上前壁部材36が着脱可能に配設されており、該上前壁部材36を取り外すことで、前記水皿12の着脱作業を製氷機の前方から行い得るよう構成される。すなわち、製氷機では、製氷室11や水皿12等が収容される箱体10は、前面が開放可能に構成されている。なお、箱体10の上部には、図示しない天板が着脱自在に配設される。
【0013】
図1に示す如く、前記水皿12は、前記取付部材15の左側に偏った位置に設けられた支持部15aに対して前後方向に延在する支持軸18を介して回動可能に枢支される。水皿12は、板状部材12aの前後および左側が壁部12b,12b,12bにより囲繞されると共に、枢支側とは反対側(右端部側)は開放している。なお、板状部材12aにおける各製氷小室11aと対応する位置には、図示しないが、前記製氷水タンク13内の製氷水を製氷室11の各製氷小室11aへ噴射するための噴射孔および製氷室11へ供給されて氷結に至らなかった製氷水を製氷水タンク13へ戻す戻り孔が夫々開設されている。
【0014】
図1図2に示す如く、前記製氷機構14には、水皿12の枢支側と反対側(右側)に、製氷室11に対して水皿12を開閉(傾動)させるための傾動機構19が設けられている。製氷機構14では、製氷運転において水皿12が、傾動機構19によって製氷室11に接近して該製氷室11の各製氷小室11aの下面を塞いだ閉成位置(製氷位置)に保持され、水皿12に配設された製氷水タンク13の製氷水が、循環ポンプ20により水皿12から蒸発器17によって冷却された各製氷小室11aに対して噴射供給されて、該製氷小室11aに氷塊が生成される。また、製氷機構14では、除氷運転において水皿12が、傾動機構19によって製氷室11から下方へ離間して製氷小室11aからの氷塊の放出を許容する傾斜姿勢となる開放位置(除氷位置)で保持され、蒸発器17によって加熱された製氷小室11aから離脱した氷塊が水皿12の傾斜した上面に案内されて貯氷室10aに落下するよう構成される。
【0015】
図3に示すように、前記取付部材15の下面には、前後方向に所定間隔離間して前支持部材21と後支持部材22とが垂下するように配設され、両支持部材21,22の下端部に設けた軸受部21a,22aにカムシャフト23が回動可能に枢支されている。カムシャフト23における軸方向の両端部に、前カム部材24および後カム部材25が、その基部24a,25aを介して夫々連結されて、両カム部材24,25はカムシャフト23と一体的に回転するよう構成される。取付部材15の前面には、前カム部材24を上方から覆うように、下方に開放するコ字状に形成されたブラケット26が配設される。また、ブラケット26の前面には、ギヤードモータ等のモータ(駆動手段)27が取り付けられ、該モータ27の回転軸27aが、前カム部材24の基部24aに連結されている。すなわち、モータ27を正転または逆転することで、一対のカム部材24,25が一体的に正転方向または逆転方向に回転するよう構成される。そして、前後のカム部材24,25が閉成姿勢から開放方向(実施例では、図1の反時計方向)に回転するにつれて該カム部材24,25の外周面が水皿12の前後の壁部12b,12bを押圧し、前記製氷室11に生成された氷塊と水皿12との氷結を強制的に解除するよう構成される。
【0016】
図3に示す如く、前後のカム部材24,25の基部24a,25aからアーム部24b,25bが径方向に延出するよう形成され、該アーム部24b,25bの先端部に、突部28が夫々前方に向けて突設される。また、前記水皿12の前側の壁部12bに前ネジ部材(ネジ部材)29が突設されると共に、水皿12の後側の壁部12bに後ネジ部材30が突設され、対応する突部28と前ネジ部材29との間、および突部28と後ネジ部材30との間に弾性部材としてのコイルばね31が夫々弾力的に連繋されている。カム部材24,25の閉成姿勢においては、図1図3に示す如く、前記アーム部24b,25bは基部24a,25aに対して上方に延出するように臨み、突部28,28と前後のネジ部材29,30との間に介装されているコイルばね31,31を引き伸ばして、前記水皿12を閉成位置に引き上げて、前記製氷室11を下方から閉成するよう構成される。また、カム部材24,25の開放姿勢(水皿12が開放位置に位置付く除氷姿勢)においては、前記アーム部24b,25bは基部24a,25aに対して斜め下方に延出するように臨み、突部28,28と前後のネジ部材29,30との間に介装されているコイルばね31,31を介して水皿12を、製氷室11から下方に離間して開放する開放位置に懸吊支持するよう構成される。実施例では、カム部材24,25と、モータ27と、コイルばね31,31から傾動機構19が構成される。
【0017】
ここで、実施例における前後のカム部材24,25における水皿12の壁部12b,12bに当接する部位の外形形状は、カム部材24,25が閉成姿勢から開放姿勢へ回転する際に、後カム部材25が水皿12の壁部12bを押し下げる前のタイミングで、前カム部材24が水皿12の壁部12bを押し下げる形状に形成されて、水皿12を捻るようにして製氷室11に生成された氷塊との氷結を解除するよう構成される。このため、製氷室11に生成された氷塊と水皿12との氷結を強制的に解除する際には、後カム部材25より前カム部材24に大きな負荷が加わっている。
【0018】
前記前ネジ部材29は、図4図5に示す如く、樹脂製の本体32と、該本体32にインサートされた金属製のネジ体33と、から構成される。本体32は、ネジ体33をインサート物としたインサート成形によって成形され、ネジ体33と一体化されている。本体32には、外周に環状溝部(連繋部)32aが形成され、該環状溝部32aに、前記コイルばね31の一端に設けたフック(一端部)31aが連繋される。また、ネジ体33は、ドライバー等の工具が係合可能な係合部34aが形成されて本体内に位置する頭部34から後側に延出する軸部35が、本体32の後端から所定長さで後方に突出し、その突出部分は、雄ネジが形成されたネジ部35aとされる。そして、前ネジ部材29は、ネジ部35aを、前記水皿12の前側の壁部12bに形成されたネジ孔12cに螺挿することで、水皿12から本体32が前方に突出する状態で取り付けられるようになっている。
【0019】
前記ネジ体33の頭部34における前端面に、前記係合部34aが本体32の前側を向けて形成されている。実施例の係合部34aは、図5に示す如く、プラスドライバーの先端を受け入れる十字型の凹みとなっているが、マイナスドライバーの先端を受け入れる一字型の凹み、あるいは六角レンチの先端を受け入れる六角形状の凹みであってもよい。
【0020】
図4に示す如く、前記本体32には、前側で開口する露出孔32bが、前記ネジ体33の頭部34まで延在するように形成され、頭部34に形成された係合部34aを、露出孔32b内に露出させるよう構成される。すなわち、本体32にインサートされたネジ体33の係合部34aは、露出孔32bを介して水皿12の前方側に露出している。露出孔32bの直径は、係合部34aよりも大きく設定されて、係合部34aを本体32の前方側に向けて露出すると共に、水皿12の前側からの係合部34aに対する工具のアクセスを可能に構成されている。また、露出孔32bの直径は、頭部34の外径よりも小さく設定されて、頭部34の外周部が本体32で覆われるよう構成される。
【0021】
なお、前記後ネジ部材30は、水皿12の後側の壁部12bに形成されたネジ孔を介して着脱自在にネジ止めされている。また、前記後カム部材25は、前記突部28が着脱自在に配設されており、該突部28を取り外すことで、水皿12と傾動機構19との連繋状態を解除し得るよう構成される。
【0022】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る製氷機の作用について説明する。
【0023】
前記水皿12を製氷機の箱体10から取り外すに際し、前記前ネジ部材29を水皿12から取り外す際には、前記上前壁部材36を箱体10から取り外し、水皿12の前側を露出させる。また、前記傾動機構19によって水皿12を開放位置まで傾動させる。そして、前記前ネジ部材29の露出孔32bに前方からドライバー等の工具を差し込み、前記ネジ体33の頭部34に形成した係合部34aに、工具の先端を係合させる。工具によってネジ体33(および本体32)を所定方向に回転することで前記ネジ部35aが水皿12のネジ孔12cから抜き外され、前記コイルばね31が本体32に連繋されたまま、前ネジ部材29が水皿12から取り外される。そして、前記支持部15aに対する支持軸18の支持状態および後カム部材25と傾動機構19との連繋状態を解除することで、水皿12を箱体10から取り外すことができる。
【0024】
前記水皿12を箱体10に取り付ける際には、前記支持軸18を支持部15aに支持すると共に、後カム部材25と傾動機構19とを連繋状態としたもとで、水皿12の前側の壁部12bに形成したネジ孔12cに前側から前ネジ部材29のネジ部35aの先端を挿入する。そして、前記コイルばね31が連繋されている前記本体32の露出孔32bに前側から工具を差し込み、露出孔32b内に露出する前記係合部34aに工具の先端を係合してネジ体33(および本体32)を回転することで、ネジ部35aがネジ孔12cに螺挿されて、当該前ネジ部材29は水皿12にネジ止めされ、水皿12は箱体10に取り付けられる。
【0025】
実施例の製氷機では、水皿12にネジ止めされる前ネジ部材29は、樹脂製の本体32と一体化されたネジ体33を備え、該ネジ体33の頭部34に形成した係合部34aを、本体32の露出孔32bを介して水皿12の前方側に向けて露出している。従って、本体32の環状溝部32aにコイルばね31のフック31aが連繋されている状態であっても、係合部34aに対する前側からの工具の係合が容易であって、コイルばね31に邪魔されることなく前ネジ部材29の取り付けおよび取り外し作業を短時間で行うことができる。また、コイルばね31のフック31aが連繋される環状溝部32aを設けた本体32を樹脂製としたので、フック31aと本体32との摺動抵抗は小さく、前カム部材24の回転時における前ネジ部材29に対するフック31aの回転がスムーズとなり、傾動機構19による水皿12のスムーズな傾動を図ることができる。また、前ネジ部材29の係合部34aに前側から係合した工具によってネジ体33を回転するだけの簡単な操作で、水皿12に対して前ネジ部材29を取り付けたり取り外したりすることができるので、狭い作業スペースであっても作業効率を向上することができる。
【0026】
ここで、前カム部材24の回転時における前ネジ部材29に対するフック31aの回転をスムーズとするためには、本体32を樹脂製とすることが好ましいことから、該本体32に工具の係合部を設けることが考えられる。しかしながら、樹脂製の係合部では、該係合部に係合した金属製の工具で前ネジ部材29を回転させる際に、樹脂製の係合部の強度不足によって欠けやなめが発生するおそれがある。しかるに、実施例の前ネジ部材29では、工具が係合する係合部34aは、金属製のネジ体33に設けてあるので、工具でネジ体33を回転する際に、係合部34aが欠けたりなめたりするのを抑制できる。すなわち、実施例の前ネジ部材29は、フック31aの回転をスムーズにすると共に、係合部34aの欠けやなめ等の損傷を抑制できる。
【0027】
前記前ネジ部材29に設ける係合部34aの形状を、前記上前壁部材36を箱体10に固定するネジの係合部と同一形状とすることで、同じ工具によって上前壁部材36および前ネジ部材29の取り付けおよび取り外しを行うことができ、複数種類の工具を用意する必要がなくなる。
【0028】
次に、製氷機に用いられるネジ部材の別実施例について説明する。なお、実施例と同じ部材等には同一符号を付すものとする。
【0029】
図6図7に示す別実施例の前ネジ部材(ネジ部材)37は、樹脂製の本体32における前端からネジ体33の頭部34の一部が突出し、該頭部34に設けた前側を向く係合部34aが本体32の前方に露出するよう構成される。別実施例の頭部34は六角柱状に形成されて、該頭部34は、軸方向の半分程度の長さで本体32から突出して、その端面に十字型の係合部34aが形成されている。すなわち、前ネジ部材37は、ネジ体33の頭部34が本体32における環状溝部32aより前側に位置すると共に、該頭部34から後方に延在するネジ体33の軸部35が、環状溝部32aの形成領域を横切って本体内部の略全長に亘って埋め込まれている。
【0030】
別実施例の前ネジ部材37を採用した製氷機は、実施例の製氷機と同じ作用効果を有する。また、別実施例の前ネジ部材37は、本体32の内部に、環状溝部32aの形成領域を横切るように金属製のネジ体33が埋め込まれているので、水皿12の傾動時に負荷が加わる環状溝部32aの強度を向上することができる。殊に、水皿12の傾動時に後カム部材25より大きな負荷が加わる前カム部材24にコイルばね31を介して連繋する前ネジ部材37にも大きな負荷が加わるが、環状溝部32aの強度を向上することで、前ネジ部材37の損傷を防止して使用寿命を延ばすことができる。また、六角柱状の頭部34が本体32から前側に突出しているので、六角孔のボックスが付いたボックスドライバーを使用することができ、工具の先端が係合する係合部34aの欠けやなめの発生をより好適に防ぐことができる。
【0031】
〔変更例〕
本願は、前述した実施例や別実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。また、以下の各変更例を相互に組み合わせた構成を採用することができる。
(1) 別実施例の前ネジ部材では、ネジ体の頭部が本体の端面から突出するようにしたが、頭部に形成した係合部が、環状溝部より前側に位置する構成であれば、例えば本体の前面と頭部の前面とが面一となっていてもよく、該前面に設けた係合部が露出していればよい。
(2) 別実施例の前ネジ部材では、ネジ体の頭部を六角柱状としたが、四角または五角の柱状とする等、多角柱状となっていればよい。
(3) 実施例や別実施例の前ネジ部材では、本体とネジ体とが一体で回転するよう構成したが、本体に対してネジ体が軸方向への移動が規制された状態で回転自在にインサートされ、工具によってネジ体のみを回転して水皿に対する前ネジ部材(ネジ部材)の取り付けおよび取り外しを行う構成を採用することができる。
(4) 製氷機構は、製氷室および水皿を水平向きで配置する構成に限らず、製氷室および水皿を鉛直向きで配置した構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 箱体,11 製氷室(製氷部),12 水皿,19 傾動機構,31 コイルばね
31a フック(一端部),32 本体,32a 環状溝部(連繋部),33 ネジ体
34a 係合部,35a ネジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7