(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011239
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】アドレス識別システム
(51)【国際特許分類】
G06F 13/14 20060101AFI20240118BHJP
G06F 13/37 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G06F13/14 320F
G06F13/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113084
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 信一郎
(57)【要約】
【課題】回路を追加することなく、デイジーチェーン通信におけるスレーブ機器の接続順を識別する。
【解決手段】電源111は、第1信号線131に電力を供給する。第1ポート122は、ケーブル103の第1信号線131に接続されて電力が供給される。複数のスレーブ機器102a、102b、102cの各々のADコンバータ121の第2ポート123には、供給された電力の電圧測定結果が、自装置の識別情報とともに出力される。演算回路112は、第2信号線132により識別情報とともにループバックされた電圧測定値の大小を基に、複数のスレーブ機器102a、102b、102cの接続順を識別する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ機器と、
複数のスレーブ機器と、
前記マスタ機器に前記複数のスレーブ機器をデイジーチェーン接続するケーブルと
を備え、
前記複数のスレーブ機器の各々は、前記ケーブルの第1信号線に接続されて電力が供給されるポート有するADコンバータを備え、自装置に接続する前記ケーブルの第2信号線に、前記ポートにおける電力の電圧測定結果を自装置の識別情報とともに出力し、
前記マスタ機器は、前記第1信号線に電力を供給する電源、および前記第2信号線で前記識別情報とともにループバックされた電圧測定値の大小を基に、前記複数のスレーブ機器の接続順を識別する演算回路を備える
ことを特徴とするアドレス識別システム。
【請求項2】
請求項1記載のアドレス識別システムにおいて、
前記演算回路は、前記電圧測定値から、隣り合って接続されているスレーブ機器間の前記第1信号線の抵抗値を算出し、算出した抵抗値から前記ケーブルの長さを求める
ことを特徴とするアドレス識別システム。
【請求項3】
請求項1記載のアドレス識別システムにおいて、
前記ADコンバータは、前記第1信号線に接続される第1ポート、および前記ケーブルの第3信号線に接続される第2ポートを備え、
前記電源は、前記第1信号線と前記第3信号線とに接続していることを特徴とするアドレス識別システム。
【請求項4】
請求項1記載のアドレス識別システムにおいて、
前記ADコンバータは、前記第1信号線に接続されて電力が供給される第1ポート、および前記ケーブルの前記第2信号線に接続される第2ポートを備え、
前記電源は、前記第1信号線と前記第2信号線とに接続していることを特徴とするアドレス識別システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のアドレス識別システムにおいて、
前記ケーブルによりRS485規格のシリアル通信が行われることを特徴とするアドレス識別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デイジーチェーン通信におけるアドレス識別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルシステムで用いられるような建物内の機器(空調機器など)の機器間通信において、RS485を用いたデイジーチェーン通信が用いられることが多い。RS485通信は、差動信号のためノイズに強く、同一の通信線上で最大32台の子機まで利用することが可能であり、半二重通信で、送信と受信とを同一の通信線で共用でき、また、高いリアルタイム性を有しているため、産業用ネットワークとして最も多く用いられている。
【0003】
RS485を用いたデイジーチェーン通信を用いる場合、一台のマスタ機器に対し、複数台のスレーブ機器を数珠つなぎとする構成となる。例えば、N台のスレーブ機器をユニークに識別して通信を行うために、N台のスレーブ機器には、1~Nの機器識別アドレスが割り振られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-244516号公報
【特許文献2】特開2001-024643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このアドレス付番の手段に関しては様々な方法が考えられるが、回路的に言えば数珠つなぎの構成になっているため、一般的な構成では「物理的にどのスレーブ機器が何番目にいるか」という識別は、ハードウエア的にもソフトウエア的にも簡単には実施できない。例えば、特許文献1,特許文献2では、ハードウエア的に上述した識別を実施しているが、これらは物理的に回路を切り分けるなど回路の追加が必要であり、コスト増や製品サイズが大きくなるという課題がある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、回路を追加することなく、デイジーチェーン通信におけるスレーブ機器の接続順が識別できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアドレス識別システムは、マスタ機器と、複数のスレーブ機器と、マスタ機器に複数のスレーブ機器をデイジーチェーン接続するケーブルとを備え、複数のスレーブ機器の各々は、ケーブルの第1信号線に接続されて電力が供給されるポート有するADコンバータを備え、自装置に接続するケーブルの第2信号線に、ポートに供給された電力の電圧測定結果を自装置の識別情報とともに出力し、マスタ機器は、第1信号線に電力を供給する電源、および第2信号線で識別情報とともにループバックされた電圧測定値の大小を基に、複数のスレーブ機器の接続順を識別する演算回路を備える。
【0008】
上記アドレス識別システムの一構成例において、演算回路は、電圧測定値から、隣り合って接続されているスレーブ機器間の第1信号線の抵抗値を算出し、算出した抵抗値からケーブルの長さを求める。
【0009】
上記アドレス識別システムの一構成例において、ADコンバータは、第1信号線に接続される第1ポート、およびケーブルの第3信号線に接続される第2ポートを備え、電源は、第1信号線と第3信号線とに接続している。
【0010】
上記アドレス識別システムの一構成例において、ADコンバータは、第1信号線に接続されて電力が供給される第1ポート、およびケーブルの第2信号線に接続される第2ポートを備え、電源は、第1信号線と第2信号線とに接続していることを特徴とするアドレス識別システム。
【0011】
上記アドレス識別システムの一構成例において、ケーブルによりRS485規格のシリアル通信が行われる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、各スレーブ機器より識別情報とともにループバックされたADコンバータによる電圧測定値の大小を基に、複数のスレーブ機器の接続順を識別するので、回路を追加することなく、デイジーチェーン通信におけるスレーブ機器の接続順が識別できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係るアドレス識別システムの構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態1に係るアドレス識別システムの一部構成を示す構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態3に係るアドレス識別システムの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係るアドレス識別システムについて説明する。
【0015】
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態1に係るアドレス識別システムについて
図1を参照して説明する。このアドレス識別システムは、マスタ機器101と、複数のスレーブ機器102a、102b、102cと、マスタ機器101に複数のスレーブ機器102a、102b、102cをデイジーチェーン接続する複数のケーブル103とを備える。ケーブル103により、例えば、RS485規格のシリアル通信が行われる。
【0016】
複数のスレーブ機器102a、102b、102cの各々は、ADコンバータ121を備える。ADコンバータ121は、第1ポート122と第2ポート123とを備え、第1ポート122に供給される電力の電圧を測定する機能を備える。
【0017】
スレーブ機器102a、102b、102cの各々は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)201と主記憶装置202と外部記憶装置203などを備えたコンピュータ機器であり、主記憶装置に展開されたプログラムによりCPU201が動作することで、スレーブ機器における各機能が実現される。また、接続装置204が、信号線231により1対1で、他のスレーブ機器との間の制御信号のやりとりを行う。
【0018】
ADコンバータ121は、上述したCPUに一般に備えられており、供給される(到達する)電力の電圧が測定可能であり、通常、スレーブ機器の本来の機能を実現する上で未使用のポートが2つある。この未使用のポートを利用する。第1ポート122は、ケーブル103の第1信号線131に接続されて電力が供給される。
【0019】
この例では、複数のスレーブ機器102a、102b、102cの各々のADコンバータ121は、第1ポート122でデイジーチェーン接続され、末端のスレーブ機器102cで終端され、第2ポート123でループバック接続される。第2ポート123には、ケーブル103の第3信号線133が接続している。また、第1信号線131と第3信号線133とは、末端のスレーブ機器102cにおいて終端抵抗104を介して接続される。
【0020】
実施の形態1において、複数のスレーブ機器の各々は、自装置に接続するケーブル103の第2信号線132に、第1ポート122における電力の電圧測定結果を自装置の識別情報とともに出力する。また、この例では、第2ポート123における電力の電圧測定結果も出力する。
【0021】
マスタ機器101は、電源111と演算回路112とを備える。電源111は、第1信号線131に電力を供給する。電源111は、例えば、定電圧源とすることができる。また、電源111は、定電流源とすることができる。この例では、電源111は、第1信号線131と第3信号線133とに接続している。
【0022】
演算回路112は、第2信号線132に接続し、第2信号線132で識別情報とともにループバックされた電圧測定値の大小を基に、複数のスレーブ機器102a、102b、102cの接続順を識別する。また、演算回路112は、電圧測定値から、隣り合って接続されているスレーブ機器102a、102b、102c間の第1信号線131の抵抗値を算出し、算出した抵抗値からケーブル103の長さを求める。また、この例では、第2ポート123における電圧測定値の大小も用い、隣り合って接続されているスレーブ機器102a、102b、102c間の第3信号線133の抵抗値も算出し、ケーブル103の長さの算出に用いる。
【0023】
マスタ機器101の電源111から定電圧源(定電流源でも可)を第1信号線131で供給すると、第1信号線131の抵抗成分により、経路がスレーブ機器102a、スレーブ機器102b、・・・、スレーブ機器102cと進むにつれて電圧は降下していく。この電圧の降下の状態を、スレーブ機器102a、102b、102cの各々のADコンバータ121で測定する。演算回路112は、測定された電圧値を、各スレーブ機器102a、102b、102c間で比較することにより、接続順番を識別する。
【0024】
また、この例では、第3信号線133が電源111に接続しており、第3信号線133の抵抗成分により、ループバックの経路がスレーブ機器102c、・・・、スレーブ機器102b、スレーブ機器102aと進むにつれて電圧は降下していく。この電圧の降下の状態も、スレーブ機器102a、102b、102cの各々のADコンバータ121で測定される。これらの測定結果も用い、演算回路112は、各スレーブ機器102a、102b、102c間で比較することにより、接続順番を識別する。
【0025】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係るアドレス識別システムについて
図3を参照して説明する。このアドレス識別システムは、マスタ機器301と、複数のスレーブ機器302a、302b、302cと、マスタ機器301に複数のスレーブ機器302a、302b、302cをデイジーチェーン接続する複数のケーブル303とを備える。ケーブル303により、例えば、RS485規格のシリアル通信が行われる。
【0026】
複数のスレーブ機器302a、302b、302cの各々は、ADコンバータ321を備える。ADコンバータ321は、第1ポート322と第2ポート323とを備え、第1ポート322,第2ポート323に供給される電力の電圧を測定する機能を備える。
【0027】
スレーブ機器302a、302b、302cの各々は、
図2を用いて説明したように、CPU201と主記憶装置302と外部記憶装置203などを備えたコンピュータ機器であり、主記憶装置に展開されたプログラムによりCPU201が動作することで、スレーブ機器における各機能が実現される。また、接続装置204が、信号線231により1対1で、他のスレーブ機器との間の制御信号のやりとりを行う。
【0028】
ADコンバータ321は、上述したCPUに一般に備えられており、供給される電力の電圧が測定可能であり、通常、スレーブ機器の本来の機能を実現する上で未使用のポートが2つある。この未使用のポートを第1ポート322と第2ポート323として利用する。
【0029】
第1ポート322は、ケーブル303の第1信号線331に接続されて電力が供給される。複数のスレーブ機器302a、302b、302cの各々のADコンバータ321は、第1ポート322でデイジーチェーン接続され、末端のスレーブ機器302cで終端され、第2ポート323でループバック接続される。第2ポート323には、ケーブル303の第2信号線332に接続されて第1ポート322に供給された電力の電圧測定結果が、自装置の識別情報とともに出力される。また、第1信号線331と第2信号線332とは、末端のスレーブ機器302cにおいて終端抵抗304を介して接続される。
【0030】
マスタ機器301は、電源311と演算回路312とを備える。電源311は、第1信号線331に電力を供給する。電源311は、例えば、定電圧源とすることができる。また、電源311は、定電流源とすることができる。
【0031】
演算回路312は、第2ポート323を介して識別情報とともにループバックされた電圧測定値の大小を基に、複数のスレーブ機器302a、302b、302cの接続順を識別する。また、演算回路312は、電圧測定値から、隣り合って接続されているスレーブ機器302a、302b、302c間の第1信号線331の抵抗値を算出し、算出した抵抗値からケーブル303の長さを求める。
【0032】
マスタ機器301の電源311から定電圧源(定電流源でも可)を第1信号線331で供給すると、第1信号線331の抵抗成分により、経路がスレーブ機器302a、スレーブ機器302b、・・・、スレーブ機器302cと進むにつれて電圧は降下していく。この電圧の降下の状態を、スレーブ機器302a、302b、302cの各々のADコンバータ321で測定する。演算回路312は、測定された電圧値を、各スレーブ機器302a、302b、302c間で比較することにより、接続順番を識別する。
【0033】
以上に説明したように、本発明によれば、各スレーブ機器より識別情報とともにループバックされたADコンバータによる電圧測定値の大小を基に、複数のスレーブ機器の接続順を識別するので、回路を追加することなく、デイジーチェーン通信におけるスレーブ機器の接続順が識別できるようになる。本発明によれば、システム内の使用されていないリソースの活用により、大きな回路追加なく、複数のスレーブ機器の接続順番を識別することができる。
【0034】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されるが、以下には限られない。
【0035】
[付記1]
マスタ機器と、
複数のスレーブ機器と、
前記マスタ機器に前記複数のスレーブ機器をデイジーチェーン接続するケーブルと
を備え、
前記複数のスレーブ機器の各々は、前記ケーブルの第1信号線に接続されて電力が供給されるポート有するADコンバータを備え、自装置に接続する前記ケーブルの第2信号線に、前記ポートにおける電力の電圧測定結果を自装置の識別情報とともに出力し、
前記マスタ機器は、前記第1信号線に電力を供給する電源、および前記第2信号線で前記識別情報とともにループバックされた電圧測定値の大小を基に、前記複数のスレーブ機器の接続順を識別する演算回路を備える
ことを特徴とするアドレス識別システム。
【0036】
[付記2]
付記1記載のアドレス識別システムにおいて、
前記演算回路は、前記電圧測定値から、隣り合って接続されているスレーブ機器間の前記第1信号線の抵抗値を算出し、算出した抵抗値から前記ケーブルの長さを求める
ことを特徴とするアドレス識別システム。
【0037】
[付記3]
付記1記載のアドレス識別システムにおいて、
前記ADコンバータは、前記第1信号線に接続される第1ポート、および前記ケーブルの第3信号線に接続される第2ポートを備え、
前記電源は、前記第1信号線と前記第3信号線とに接続していることを特徴とするアドレス識別システム。
【0038】
[付記4]
付記1~3のいずれか1項に記載のアドレス識別システムにおいて、
前記ADコンバータは、前記第1信号線に接続されて電力が供給される第1ポート、および前記ケーブルの前記第2信号線に接続される第2ポートを備え、
前記電源は、前記第1信号線と前記第2信号線とに接続していることを特徴とするアドレス識別システム。
【0039】
[付記5]
付記1~4のいずれか1項に記載のアドレス識別システムにおいて、
前記ケーブルによりRS485規格のシリアル通信が行われることを特徴とするアドレス識別システム。
【0040】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0041】
101…マスタ機器、102a,102b,102c…スレーブ機器、103…ケーブル、104…終端抵抗、111…電源、112…演算回路、121…ADコンバータ、122…第1ポート、123…第2ポート、131…第1信号線、132…第2信号線、133…第3信号線。