(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112394
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】浴室システム
(51)【国際特許分類】
A47K 4/00 20060101AFI20240814BHJP
A47K 3/00 20060101ALI20240814BHJP
F24H 9/16 20220101ALI20240814BHJP
【FI】
A47K4/00
A47K3/00 Q
A47K3/00 D
F24H9/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017364
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】市丸 秀仁
(72)【発明者】
【氏名】弘中 睦己
【テーマコード(参考)】
2D132
【Fターム(参考)】
2D132GA00
(57)【要約】
【課題】浴槽の排水口の回りなどに対する除菌作用を優れたものにすることを容易かつ適切に図ることが可能な浴室システムを提供する。
【解決手段】底部に設けられている排水口11aを開閉自在な排水栓6が設けられている浴槽10と、この浴槽10に湯水流通用の配管部5を介して接続され、かつ浴槽10への湯張り動作が可能な給湯装置WHと、配管部5を介して浴槽10に除菌水を供給して浴槽10内に吐水させる除菌水吐水運転を可能とする除菌水生成装置4と、を備えている、浴室システムSYであって、排水栓6は、前記除菌水吐水運転中において、栓開度が全開と全閉との間にある中間開度に設定され、および/または前記栓開度が変化するように制御される構成とされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に設けられている排水口を開閉自在な排水栓が設けられている浴槽と、
この浴槽に湯水流通用の配管部を介して接続され、かつ前記浴槽への湯張り動作が可能な給湯装置と、
前記配管部を介して前記浴槽に除菌水を供給して前記浴槽内に吐水させる除菌水吐水運転を可能とする除菌水生成装置と、
を備えている、浴室システムであって、
前記排水栓は、前記除菌水吐水運転中において、栓開度が全開と全閉との間にある中間開度に設定され、および/または前記栓開度が変化するように制御される構成とされていることを特徴とする、浴室システム。
【請求項2】
請求項1に記載の浴室システムであって、
前記排水栓は、前記除菌水吐水運転の開始時または開始前の少なくとも一方の時期において、栓開度が全開または中間開度にあるように構成されている、浴室システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の浴室システムであって、
前記排水栓は、前記除菌水吐水運転の全期間中または前記除菌水吐水運転が開始された後の所定期間内は、栓開度が中間開度に設定され、かつ前記除菌水吐水運転の終了時または前記所定期間の経過時には、全開に設定されるように構成されている、浴室システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の浴室システムであって、
前記排水栓は、前記除菌水吐水運転が開始された後に、栓開度が全閉または中間開度に一時的に設定され、かつその後は時間の経過とともに栓開度を増加させていくように構成されている、浴室システム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の浴室システムであって、
前記排水栓は、前記除菌水吐水運転中において、栓開度が互いに相違する第1の中間開度および第2の中間開度の一方に、周期的に交互に切り替え設定されるように構成されている、浴室システム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の浴室システムであって、
前記排水栓は、前記除菌水吐水運転中において、栓開度が中間開度に設定されるように構成され、かつこの中間開度は、操作手段を利用して増減変更可能とされている、浴室システム。
【請求項7】
請求項1または2に記載の浴室システムであって、
前記給湯装置は、前記配管部の管内洗浄を目的として前記配管部に湯水を流す配管洗浄運転が可能であり、
前記除菌水吐水運転が行なわれる場合には、これに先立ち、前記配管洗浄運転が行なわれ、かつこの配管洗浄運転を終了した後に前記除菌水吐水運転が開始されるように構成されている、浴室システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室システムとしては、オゾン水などの除菌水を生成可能な除菌水生成装置を備えたものがある。このような浴室システムにおいては、除菌水生成装置によって生成された除菌水を、給湯装置から浴槽への湯水供給用の配管部を介して浴槽に供給して吐水させる除菌水吐水運転が可能とされている(たとえば、特許文献1,2を参照)。
前記した除菌水吐水運転が行なわれると、除菌水による除菌作用により、ヌメリ防止効果などが得られ、衛生的な浴室システムを構築する上で好ましいものとなる。
【0003】
しかしながら、従来においては、次に述べるように、改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、たとえば
図8に示すように、浴槽10のアダプタ10aから浴槽10内に除菌水を吐水させる場合に、浴槽10の底部の排水口11aに設けられている排水栓6eは全開状態とされるのが一般的と考えられる。ところが、このような構成によれば、排水口11aに到達した除菌水は、即座に排水口11aに流れ込むため、排水口11aに向かう除菌水の流れは、アダプタ10aと排水口11aとを結ぶ方向の流れのみとなる。これでは、排水口11aの全周囲に除菌水を効果的に作用させることができず、除菌処理が不十分となる虞がある。
【0005】
これを解消する手段としては、特許文献2に記載されている手段がある。この手段においては、除菌水吐水運転時には、排水栓を全閉状態とし、除菌水を浴槽に溜めていく。次いで、除菌水が所定量吐水されると、その際に排水栓を全開状態に切り替えて、浴槽から外部に除菌水を排出させる。このような構成によれば、除菌水を浴槽に溜めるため、排水口の全周囲に除菌水を作用させることが可能である。
ところが、このような手段によれば、次のような不具合が生じる。
第1に、除菌水吐水運転が開始されるときに、浴槽の排水栓が全閉状態に設定されるため、その際に浴槽内に湯水が残存していると、この残存湯水は浴槽外部に排水されず、この残存湯水と除菌水とが混合されることとなる。これでは、除菌水の希釈化を生じ、除菌作用が低下する。
第2に、浴槽に溜められた除菌水を浴槽外部に排水させるときには、排水栓が全開状態に設定されるため、浴槽外部の排水経路(一般的には排水トラップが設けられている排水経路)を除菌水が通過する際の流速はかなり速い。浴槽外部の排水経路に対する除菌作用を強めるには、除菌水の流速を遅めにし、前記排水経路の各部に除菌水をゆっくりと時間を掛けて作用させることが好ましいが、特許文献2においては、そのようなことが実現される構成とはなっていない。前記排水経路の除菌が不十分であると、雑菌類の増殖により、ヌメリや不快な臭いが発生しやい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4822127号公報
【特許文献2】特開2009-172079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、浴槽の排水口の回り
などに対する除菌作用を優れたものにすることを容易かつ適切に図ることが可能な浴室システムを提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供される浴室システムは、底部に設けられている排水口を開閉自在な排水栓が設けられている浴槽と、この浴槽に湯水流通用の配管部を介して接続され、かつ前記浴槽への湯張り動作が可能な給湯装置と、前記配管部を介して前記浴槽に除菌水を供給して前記浴槽内に吐水させる除菌水吐水運転を可能とする除菌水生成装置と、を備えている、浴室システムであって、前記排水栓は、前記除菌水吐水運転中において、栓開度が全開と全閉との間にある中間開度に設定され、および/または前記栓開度が変化するように制御される構成とされていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、除菌水吐水運転中においては、前記排水栓が全開維持状態や全閉維持状態になることは回避され、浴槽内に吐水された除菌水の一部が、浴槽内に溜められつつ、他の一部が排水口を通過して浴槽外部に排水される状況を生じさせることが可能である。浴槽内に溜められる除菌水は、排水口の周囲に作用させることができるため、排水口の周囲に対する除菌作用を高めることが可能である。
また、除菌水が排水口を通過して浴槽外部に排水される際の除菌水の流量(単位時間当たり)は少なくなり、流速は遅くなる。したがって、浴槽外部の排水経路に対して除菌水が作用する時間を長めにし、この排水経路に対する除菌作用をも効果的に高めることが可能である。その結果、排水経路での雑菌類の増殖を抑制し、ヌメリや不快な臭いの発生を防止することができる。
さらに、本発明によれば、除菌水吐水運転の開始時において、排水栓を全閉状態とする必要はない。このため、除菌水吐水運転の開始時に、仮に、浴槽内に残存湯水が存在する場合であっても、この残存湯水を排水口から浴槽外部に排水させるように除菌水吐水運転を行なうことが可能である。したがって、除菌水が多くの残存湯水と混合されて希釈される不具合も適切に回避することが可能である。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記排水栓は、前記除菌水吐水運転の開始時または開始前の少なくとも一方の時期において、栓開度が全開または中間開度にあるように構成されている。
【0012】
このような構成によれば、除菌水吐水運転の開始時または開始前において、浴槽内に存在する残存湯水を、排水口から浴槽外部に排水させることが可能である。したがって、残存湯水に除菌水が混合されることにより除菌水が希釈されることを抑制することが一層確実に実現される。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記排水栓は、前記除菌水吐水運転の全期間中または前記除菌水吐水運転が開始された後の所定期間内は、栓開度が中間開度に設定され、かつ前記除菌水吐水運転の終了時または前記所定期間の経過時には、全開に設定されるように構成されている。
【0014】
このような構成によれば、除菌水吐水運転の全期間中、または所定期間中は、除菌水の一部を排水口から浴槽外部に排水させつつ、他の一部を浴槽内の排水口の回りに溜めることが可能であり、本発明が意図する作用が適切に得られる。また、除菌水吐水運転の終了時または前記所定期間の経過時には、排水栓が全開とされるため、浴槽内に溜められた除菌水を迅速に外部へ排水することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記排水栓は、前記除菌水吐水運転が開始された後に、栓開度が全閉または中間開度に一時的に設定され、かつその後は時間の経過とともに栓開度を増加させていくように構成されている。
【0016】
このような構成によれば、本発明が意図する作用が適切に得られることに加え、次のような効果が得られる。
すなわち、前記構成とは異なり、排水栓の栓開度を一定に維持させると、その栓開度の設定に誤差を生じ、本来目標とする栓開度とは相違する栓開度となった場合に、本発明が意図する作用が十分に得られなくなる虞がある。これに対し、前記構成によれば、栓開度は一定に維持されておらず、前記虞を無くし、または少なくすることが可能である。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記排水栓は、前記除菌水吐水運転中において、栓開度が互いに相違する第1の中間開度および第2の中間開度の一方に、周期的に交互に切り替え設定されるように構成されている。
【0018】
このような構成によれば、本発明が意図する作用が適切に得られることに加え、次のような効果が得られる。
すなわち、先に述べたように、排水栓の栓開度を一定に維持させると、栓開度の設定に誤差を生じた場合に、本発明が意図する作用が十分に得られなくなる虞がある。これに対し、前記構成によれば、栓開度は第1の中間開度と第2の中間開度の一方に交互に切り替えられ、栓開度に適当な幅をもつこととなる。このため、前記虞をなくし、または少なくすることが可能である。
【0019】
本発明において、好ましくは、前記排水栓は、前記除菌水吐水運転中において、栓開度が中間開度に設定されるように構成され、かつこの中間開度は、操作手段を利用して増減変更可能とされている。
【0020】
このような構成によれば、排水栓の中間開度を、浴室システムの各部の実際の仕様に応じて、本発明が意図する作用を得るのに最適な栓開度に設定することが可能となる。
【0021】
本発明において、好ましくは、前記給湯装置は、前記配管部の管内洗浄を目的として前記配管部に湯水を流す配管洗浄運転が可能であり、前記除菌水吐水運転が行なわれる場合には、これに先立ち、前記配管洗浄運転が行なわれ、かつこの配管洗浄運転を終了した後に前記除菌水吐水運転が開始されるように構成されている。
【0022】
このような構成によれば、除菌水吐水運転に先立ち、配管洗浄運転が行なわれるため、浴室システムの衛生状態を良好にする上で一層好ましいものとなる。また、配管部の洗浄目的に除菌水を用いる必要はなくなるため、除菌水の消費量を少なくし、ランニングコストを低減することも可能である。
【0023】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る浴室システムの一例を示す概略説明図である。
【
図2】
図1に示す浴室システムにおいて実行される動作制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図2に示した動作制御手順に対応するタイムチャートである。
【
図4】
図1に示す浴室システムにおける作用の一例を示す概略平面図である。
【
図5】除菌水吐水運転時における排水栓の栓開度の制御の例を示すタイムチャートである。
【
図6】除菌水吐水運転時における排水栓の栓開度の制御の他の例を示すタイムチャートである。
【
図7】除菌水吐水運転時における排水栓の栓開度の制御の他の例を示すタイムチャートである。
【
図8】従来技術における作用の例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
図8に示す部位と同一部位については、同一符号を付している。
【0026】
図1に示す浴室システムSYは、浴室1の浴槽10に外部配管部5a,5bを介して配管接続された給湯装置WH、およびこの給湯装置WHに設けられた除菌水生成装置4を具備している。
【0027】
浴槽10の底部には、排水栓6により開閉自在な排水口11aが設けられている。排水栓6は、駆動ユニット60の駆動によって昇降自在である。より具体的には、駆動ユニット60は、ワイヤWを介して排水栓6と連結されており、ワイヤWの繰り出しおよび引き戻しの往復動作を行なうためのモータM、およびこのモータMの駆動軸をワイヤWの前記往復動作に変換する機構部(不図示)を備えている。ワイヤWの繰り出しにより、排水栓6は上昇して排水口11aは開状態(全開)となる。これとは反対に、ワイヤWの引き戻しにより、排水栓6は下降して排水口11aは閉状態(全閉)となる。
モータMは、たとえばステッピングモータであり、このモータMの駆動軸の回転角度を制御することにより、排水栓6の栓開度は、全開および全閉の他、これらの間である所望の中間開度に設定可能である。
【0028】
排水口11aには、浴槽10の湯水を外部に排出するための排水経路12が繋がっている。この排水経路12は、浴室1の床下などに設置された排水トラップ12b、この排水トラップ12bの上流側と排水口11aとを接続する排水管12a、およびこの排水トラップ12bの下流側に接続された排水管12cを含んでいる。浴室1の出入り口1aと浴槽10との間には、洗い場14および排水口11bがあり、洗い場14の湯水は、排水口11bから排水トラップ12bに流れ込む。
【0029】
給湯装置WHは、たとえば瞬間式ガス給湯装置であり、各部の動作制御やデータ処理を実行する制御部7を備えており、給湯栓29への一般給湯機能を有している他、浴槽10への湯張り運転、および風呂追い焚き運転が可能である。また、後述する配管洗浄運転、および除菌水吐水運転も可能である。
図1において、符号90は、給湯装置WHの外装ケースである。
【0030】
給湯装置WHにおける一般給湯は、入水口20aから入水路2aに流入した湯水が熱交換器25aに送られてバーナ26aにより加熱されてから、内部出湯路2bおよび外部出湯路2cを流通して給湯栓29に供給される態様で行なわれる。
浴槽10への湯張り運転は、風呂用出湯路50に設けられた開閉弁V1が開状態とされ、熱交換器25aを通過して加熱された湯水が、風呂用出湯路50から湯水循環配管部5に流れ込む態様で行なわれる。湯水循環配管部5は、浴槽10のアダプタ10aに接続された外部配管部5a,5b、およびこれらに接続された給湯装置WHの内部配管部5c,5dを備えている。内部配管部5c,5dには、風呂追い焚き用の熱交換器25bが接続されている。風呂用出湯路50から湯水循環配管部5に流れ込んだ湯水は、内部配管部5c,5dおよび外部配管部5b側と、外部配管部5a側とに分岐し、いわゆる両搬送の態
様で浴槽10に流れ込む。
風呂追い焚き運転は、循環ポンプP1が駆動オンとされ、浴槽10の湯水が湯水循環配管部5を介して熱交換器25bに送り込まれ、バーナ26bによって加熱されてから浴槽10に戻される態様で行なわれる。
【0031】
給湯装置WHの配管洗浄運転は、主に湯水循環配管部5の管内洗浄を目的として行なわれるものであり、湯水循環配管部5は、本発明でいう「配管部」の具体例に相当する。この配管洗浄運転は、浴槽10への湯張り動作と同様に、開閉弁V1を開状態として行なわれる。すなわち、熱交換器25aを通過して加熱された湯水が、風呂用出湯路50および湯水循環配管部5を通過して浴槽10に流れ込む。この配管洗浄運転中は、浴槽10の排水栓6は全開状態にある。配管洗浄運転は、所定時間行なわれた時点、あるいは浴槽10への湯水供給量が所定量に達した時点で終了する。
【0032】
給湯装置WHの除菌水吐水運転は、除菌水生成装置4を利用して生成された除菌水を、風呂用出湯路50および湯水循環配管部5を介して浴槽10に供給し、吐水させるものである。除菌水の作用により、ヌメリなどの微生物汚れの発生を抑制することが可能である。除菌水生成装置4は、たとえばオゾン水生成装置であり、風呂用出湯路50の途中箇所に設けられており、三方弁V2を切り替えることにより、除菌水生成装置4を通過する経路と通過しない経路とに切替え可能である。
【0033】
オゾン水生成装置としては、従来既知の構成のものを用いることが可能である。たとえば、電極を利用した水の電解により生成する方式のもの、あるいは空気からオゾンガスを生成し、かつこれを水に溶解させる方式のものなどがあるが、いずれの方式であってもよい。除菌水生成装置4がオンにされ、かつ開閉弁V1および三方弁V2が切替えられることにより、除菌水(オゾン水)が湯水循環配管部5に供給され、浴槽10内にアダプタ10aから吐水される。
【0034】
本実施形態においては、除菌水吐水運転中は、浴槽10の排水栓6が所定の中間開度に設定されるが、その詳細について後述する。除菌水吐水運転の終了タイミングは、たとえば運転時間が所定時間に達した時点、あるいは浴槽10への除菌水供給量が所定量に達した時点である。
【0035】
給湯装置WHの制御部7は、マイクロコンピュータなどを用いて構成されており、浴室用および台所用のリモコン7A,7Bが通信接続されている。これらのリモコン7A,7Bには、複数の操作スイッチ72や、画像表示が可能な表示部73などが設けられている。制御部7は、リモコン7A,7Bを利用したスイッチ操作などに対応し、給湯装置WHの各部の動作制御、各種のデータ処理、排水栓6の開閉制御を含む開度変更制御などを行ない、浴室システムSYの全体の動作を制御可能である。
この浴室システムSYにおける配管洗浄運転および除菌水吐水運転も、制御部7の制御により実行可能である。
【0036】
次に、前記した浴室システムSYの作用について説明する。併せて、浴室システムSYにおける動作処理手順の例について、
図2に示すフローチャート、およびこれに対応する
図3のタイムチャートを参照しつつ説明する。
【0037】
まず、初期状態として、入浴が終了し、浴槽10に湯水が溜められている場合について説明する。このような状態において、リモコン7A,7Bの操作部72が利用され、浴槽10の湯水を外部に排水する旨の操作が行なわれると、排水栓6が開状態(全開)に設定され、浴槽10の湯水が排水口11aから排水される(S11:YES,S12)。
【0038】
次いで、給湯装置WHによる配管洗浄運転が行なわれる(S13)。配管洗浄運転は、排水栓6が先に開状態(全開)とされたときから適当な時間(浴槽10の湯水の排出が完了すると考えられて予め定められた時間)が経過した時点で開始される。この配管洗浄運転においては、既述したように、湯水が給湯装置WHの風呂用出湯路50および湯水循環配管部5を通過して浴槽10に流れ込むため、これらの部分の洗浄が行なわれる。その際、排水栓6は、全開状態のままである。
【0039】
前記した配管洗浄運転が終了した後には、除菌水吐水運転が行なわれる(S14)。好ましくは、その際、適当なインターバルの期間(
図3を参照)が設けられ、この期間が終了してから除菌水吐水運転が開始される。前記インターバルの期間においても、排水栓6は全開状態にある。前記インターバルの期間においては、浴槽10に流れ込んでいる配管洗浄用の湯水が浴槽10の外部に排水される。したがって、前記インターバルの期間が設けられていることにより、除菌水吐水運転開始時に、浴槽10内に多くの残水が存在しない状況とし、除菌水の希釈が抑制される。ただし、インターバルの期間は、省略することが可能である。
【0040】
図3によく表われているように、除菌水吐水運転が開始されると、排水栓6は、所定の中間開度に設定されて、この設定状態に維持される。その後は、除菌水吐水運転が終了する時点で、全開状態に戻される。排水栓6が中間開度に設定されることにより、除菌水吐水運転中においては、アダプタ10aから浴槽10内に吐水された除菌水の一部は、浴槽10内に溜められつつ、他の一部が排水口11aを通過して浴槽10の外部に排水される状況を生じさせることが可能である。
図4に示すように、浴槽10内に溜められる除菌水は、排水口11aの周囲全周に効率よく作用させることができるため、
図8に示した従来技術とは異なり、排水口11aの周囲に対する除菌作用を高めることが可能である。
【0041】
前記除菌水吐水運転中において、排水口11aから排水経路12に流れ込む除菌水の流量(単位時間当たり)は、少なくなり、流速は遅くなる。したがって、排水経路12に対して除菌水を作用する時間を長めにとり、排水経路12に対する除菌作用を効果的に高めることも可能である。排水経路12に対する除菌が不十分であると、雑菌類が増殖し、ヌメリや不快な臭いを発生する虞があるが、本実施形態によれば、そのような虞を適切に解消することが可能である。
【0042】
除菌水吐水運転の開始時において、排水栓6は中間開度に設定され、全閉状態にはされていない。このため、除菌水吐水運転の開始時に、仮に、浴槽10内に残存湯水が存在したとしても、この残存湯水を排水口11aに流れ込ませることができる。したがって、除菌水が多くの残存湯水と混合されて希釈される不具合も適切に回避される。本実施形態においては、
図3を参照して説明したインターバルの期間が設けられ、除菌水吐水運転の開始前に、浴槽10内から残存湯水が排水されることの促進が図られている。このため、残存湯水によって除菌水が希釈されることは、より徹底して防止される。
【0043】
なお、排水栓6の中間開度は、前記したように全開と全閉との間の栓開度であるが、より厳密には、アダプタ10aから浴槽10内への除菌水の吐水流量Qa(単位時間当たり)と比較して、排水口11aの排水栓6の設置箇所における除菌水通過流量Qb(単位時間当たり)の方が、少量になり得る開度である。中間開度は、浴室システムSYの標準的な仕様や、使用条件などを考慮し、給湯装置WHのメーカなどが適宜に決定することが可能である。
【0044】
好ましくは、中間開度は、リモコン7A,7Bの操作部72を利用して、変更可能な構成とされる。この場合、操作部72は、本発明でいう操作手段に相当する。ただし、操作部72以外の操作手段を別途設けることにより、中間開度を変更可能とすることも可能で
ある。浴室システムSYで利用される湯水(水道水)の水圧・流量などは、浴室システムSYの設置場所などによって相違する場合があるため、そのような事情を考慮し、中間開度を変更可能としておけば、より好ましいものとなる。
図5~
図7を参照して後述する実施形態の中間開度などについても、適宜に変更できるように構成することが望まれる。
【0045】
図5~
図7は、本発明の他の実施形態を示しており、以下に説明する。
【0046】
図5に示す実施形態においては、除菌水吐水運転が開始された後の所定期間Pa内は、排水栓6が中間開度に設定されている。ただし、排水栓6は、所定期間Paの経過時には、全開に設定されており、所定期間Paよりも後の期間Pbは、除菌水吐水運転中であるものの、全開状態に設定されている。
図3においては、除菌水吐水運転の全期間中にわたって排水栓6を中間開度に設定したが、
図5に示す本実施形態では、そのような構成とはされていない。ただし、この
図5に示す実施形態であっても、排水栓6が中間開度に設定されていることにより、本発明が意図する作用が得られる。また、排水栓6が早期に全開状態とされるため、除菌水吐水運転の終了後に、浴槽10内に除菌水が残存する状態を早期に解消することが可能である。
【0047】
図6に示す実施形態においては、排水栓6は、除菌水吐水運転が開始された後に、全閉または中間開度に一時的に設定されている。ただし、その後は時間の経過とともに、排水栓6の栓開度が増加するように制御されている。
図7に示す実施形態においては、排水栓6の栓開度として、第1の中間開度および第2の中間開度があり、除菌水吐水運転中においては、それら第1の中間開度および第2の中間開度の一方に、周期的に交互に切り替え設定されるように制御されている。
【0048】
これら
図6および
図7のいずれの実施形態においても、本発明が意図する作用が適切に得られる。また、これらの実施形態とは異なり、排水栓6の栓開度を一定に維持させる場合、栓開度の設定に比較的大きな誤差を生じると、本発明が意図する作用が適切に得られなくなる虞がある。これに対し、
図6および
図7の実施形態によれば、栓開度は一定に維持されていないため、前記した虞を無くし、または少なくすることが可能である。
【0049】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る浴室システムの各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0050】
排水栓の具体的な制御動作は、上述した実施形態以外の内容とすることが可能である。本発明においては、要は、除菌水吐水運転中において、排水栓は、栓開度が全開と全閉との間にある中間開度に設定され、および/または栓開度が変化するように制御されればよい。このことにより、除菌水吐水運転中における排水栓の全開状態維持および全閉状態維持が回避される。
図7においては、排水栓6の栓開度が中間開度に維持されたまま増減変化しているが、これとは異なり、たとえば排水栓6の全開および全閉の一方に、周期的に交互に切り替え設定される構成とすることもできる。
本発明でいう中間開度の具体的な開度(%などの数値)は限定されない。
【0051】
除菌水吐水運転および配管洗浄運転のそれぞれの具体的な内容も、上述した実施形態に限定されない。
除菌水吐水運転で用いられる除菌水は、要は、除菌作用を有する湯水であればよく、オゾン水に限らず、遊離塩素、抗菌性金属を含む液体、有機塩素系、有機リン酸系、その他のアルコール系消毒液などを用いることも可能である。したがって、除菌水生成装置は、オゾン水生成装置に限定されない。
除菌水生成装置は、除菌水を給湯装置から配管部を介して浴槽に供給して吐水させる除
菌水吐水運転を可能とすればよく、給湯装置とは別個に(分離して)設けられた構成とすることも可能である。
【0052】
上述の実施形態においては、浴槽の湯水を外部に排水させた後に、配管洗浄運転を経て除菌水吐水運転が行なわれる場合を一例として説明したが、除菌水吐水運転は、そのような状況とは異なる状況で行なわれる構成とされていてもよい。たとえば、浴槽の湯水を外部に排水させた後に、配管洗浄運転が行なわれることなく、除菌水吐水運転が行なわれる構成とすることも可能である。また、浴槽への湯張り運転を行なう場合に、これに先だって、除菌水吐水運転が行なわれる構成とすることも可能である。勿論、特定のスイッチ操作が行なわれるなどして、除菌水吐水運転がそれ単独で行なわれる構成とすることも可能である。
給湯装置としては、ガス給湯装置などの瞬間式給湯装置に代えて、たとえば貯湯式給湯装置を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0053】
SY 浴室システム
WH 給湯装置
1 浴室
10 浴槽
11a 排水口
12 排水経路
4 除菌水生成装置
5 湯水循環配管部(配管部)
6 排水栓
7 制御部