(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112397
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】車両の駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20240814BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20240814BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W50/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017368
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴村 和哉
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA21
3D241BA57
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC11
3D241CC17
3D241CE02
(57)【要約】
【課題】リモート駐車の実行中に車両ドアを開放できない位置で車両が停止した場合に、車両の移動の手間や時間を削減できる駐車支援装置を提供する。
【解決手段】駐車支援装置20は、車両10の移動中に目標駐車位置へ駐車できないと判定した場合、車両10を停止させるとともに車両10が停止した位置において車両10の周辺に車両ドア11を開放できるスペースが存在するかを判定し、当該スペースが存在しないと判定した場合、携帯端末300の操作者に対して車両ドアを開放できる位置への車両の移動を提案する処理を行い、提案を受け入れる操作があった場合には車両10を所定の方向に走行させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末から無線通信により受信する走行指令信号に応じて車両を自動走行させることにより目標駐車位置に前記車両を駐車することができる駐車支援装置であって、
前記車両の自動走行中に前記目標駐車位置へ駐車できないと判定した場合に前記車両を停止させ、前記車両が停止した位置において前記車両の周辺に前記車両に設けられる車両ドアを開放できるスペースが存在するかを判定し、前記スペースが存在しないと判定した場合に前記スペースが存在する位置への前記車両の移動を提案することを報知する処理を行い、前記提案を受け入れる信号を検出した場合には、前記携帯端末から無線通信により受信する走行指令信号に応じて前記車両を所定の方向に走行させる、
駐車支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駐車支援装置であって、
前記提案を受け入れる信号を検出した場合には、前記車両を、前記車両の停止の直前の走行方向とは反対方向に直進させる、
駐車支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の駐車支援装置であって、
前記車両が停止した位置において前記スペースが存在するか否かを判定し、すべての乗降用の車両ドアについて前記スペースが存在しないと判定した場合、前記携帯端末の操作者に対して前記スペースが存在する位置への前記車両の移動を提案する処理を行う、
駐車支援装置。
【請求項4】
請求項1に記載の駐車支援装置であって、
前記提案を受け入れる信号を検出した場合には、前記走行指令信号に応じて前記車両を所定の方向に走行させながら前記車両ドアを開放できるスペースが存在するかを判定し、前記スペースが存在すると判定した場合に前記車両を停止させる、
駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車支援装置は、車両が駐車スロット(parking slot)に駐車されるように車両の運転操作の少なくとも一部または全部を実行する駐車支援制御を実行可能に構成される。なお、駐車スロットは、1台の車両の駐車が想定されるスペースである。このような駐車支援装置に関連し、標準規格であるISO20900(Partially automated parking systems : PAPS)やISO16787(Assisted parking systems :APS)には、車両の駐車にかかわる車両制御について規定されている。
【0003】
駐車支援装置は、運転者の車外における端末装置の操作により車両を自動走行させて駐車スロットに移動させる駐車支援制御、すなわち遠隔駐車制御の実行中に、駐車スロットに車両を駐車できないなどの理由により遠隔駐車制御を中止することがある。この場合、運転者は乗車して車両を運転することにより車両を移動させる。しかしながら、停止した車両の周辺にドアを開くことができるスペースが存在しないと、運転者は乗車できない(または乗車が困難である)。また、運転者が車両に乗車できたとしても、中止した遠隔駐車制御を再開するためには、運転者は遠隔駐車制御を開始する操作を再度行わなければならない。
【0004】
特許文献1に開示される駐車支援装置は、車両の自動走行経路内または自動走行経路の周辺に物体が存在する場合、自動走行を中断するとともに駐車支援制御を継続させるか否かについて運転者に判断させる制御を行う。しかしながら、特許文献1には、自動走行が継続できるときに一時的に自動走行が中断した場合の制御について開示されているものの、自動走行を継続きない場合の制御は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上述した課題に対処するためになされたものである。すなわち、本発明の目的の1つは、自動走行を継続できないために遠隔駐車制御が中止された場合であっても、その後の車両の移動のための操作が容易な駐車支援装置を提供することである。
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る駐車支援装置は、携帯端末から無線通信により受信する走行指令信号に応じて車両を自動走行させることにより目標駐車位置に前記車両を駐車することができる駐車支援装置であって、前記車両の自動走行中に前記目標駐車位置へ駐車できないと判定した場合に前記車両を停止させ、前記車両が停止した位置において前記車両の周辺に前記車両に設けられる車両ドアを開放できるスペースが存在するかを判定し、前記スペースが存在しないと判定した場合に前記スペースが存在する位置への前記車両の移動を提案することを報知する処理を行い、前記提案を受け入れる信号を検出した場合には、前記携帯端末から受信する走行指令信号に応じて前記車両を所定の方向に走行させる。
【0008】
本発明によれば、遠隔駐車制御により車両を目標駐車位置に駐車できず、且つ、車両ドアを開放するスペースが存在しない位置にて車両が停車した場合には、運転者は、駐車支援装置が報知する提案を受け入れることにより、乗車できる位置に車両を移動させることができる。また、運転者は、車両を移動させるために遠隔駐車制御を再開させる操作を行わなくてよいから、車両の移動のための操作の手間や時間の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、車両および駐車支援装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2(a)は遠隔操作画像の例を示す図であり、
図2(b)は第一終了画像の例を示す図である。
【
図3】
図3(a)は中止画像の例を示す図であり、
図3(b)は提案画像の例を示す図であり、
図3(c)は第二終了画像の例を示す図である。
【
図4】
図4は、駐車ECUのCPUが実行する処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、端末ECUのCPUが実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(装置構成)
図1は、車両10の構成例を示す図である。駐車支援装置20は、自動運転機能を備える車両10に搭載される。駐車支援装置20は、駐車ECU201、PVM(パノラミックビューモニタ)・ECU202、駆動ECU203、SBW(シフトバイワイヤ)・ECU204、ブレーキECU205、EPS(エレクトリックパワーステアリング)・ECU206、NAVI207(ナビゲーション装置)、開始スイッチ210、および周辺センサ(ソナーセンサ212およびカメラ212)を備える。
【0011】
なお、ECUは、エレクトロニックコントロールユニット(Electronic control Unit)の略である。各ECUは、CPU、ROM、RAM、及びI/Fを含むマイクロコンピュータを主要構成として備える制御装置である。各ECUは、CPUがROMに格納されているコンピュータプログラムを読み出し、RAMに展開して実行することにより、所定の制御を実現できるように構成される。また、各ECUは、CAN(Controller Area Network)などを介して互いに信号を送受信可能に接続される。
【0012】
駐車ECU201は、自動駐車制御および遠隔駐車制御を含む駐車支援制御を実行可能に構成される。自動駐車制御には、車両10の走行用の駆動力を発生する駆動装置240、車両10を制動する制動装置241、および車両10の進行方向を変える転舵装置242の少なくとも1つを、運転者の操作によらずに制御することにより、駐車目標位置として設定された駐車スロットに車両10を駐車する制御が含まれる。従って、駆動装置240、制動装置241、転舵装置242の全ての制御を運転者の操作によらずに実行する制御も自動駐車制御であり、例えば転舵装置242のみの制御を運転者の操作によらずに実行する制御も自動駐車制御である。また、遠隔駐車制御は、車両10に搭載されている装置以外の装置、例えば車両10の操作者が所有する携帯端末の操作に応じて、駆動装置240、制動装置241、転舵装置242の全てを制御して車両10を駐車スロットに駐車する制御である。
【0013】
開始スイッチ210は、乗員が駐車支援装置20に対して駐車支援制御に含まれる後述する所定の処理および制御の実行を指示する際に操作されるスイッチである。駐車ECU201は、開始スイッチ210が操作されたことを検出できる。
【0014】
周辺センサは、車両10の周辺の情報(以下、「周辺情報」と記すことがある)を取得するためのセンサである。周辺情報は、車両10の周辺領域(車両10の位置から所定の距離の範囲内)に存在する物体(立体物)についての情報、車両10の周辺領域の路面上の表示(区画線など)についての情報、および駐車スロットについての情報を含む。また、物体についての情報は、車両10と物体との間の距離、車両10から見た物体の方向を含む。物体は、例えば、他の車両、歩行者および自転車などの移動物、並びにガードレール、縁石、車止めおよびフェンスなどの固定物を表す。駐車スロットについての情報は、駐車スロットの形状および寸法を示す情報を含む。周辺センサには、複数のソナーセンサ211および複数のカメラ212(なお、
図1では簡略化のため1つのソナーセンサ211および1つのカメラ212を示す)が含まれる。
【0015】
各ソナーセンサ211は、超音波を間欠的に車両10の周辺領域に放射し、車両10の周辺領域に存在する物体で反射した超音波(反射波)を受信するように構成される。なお、複数のソナーセンサ211には、少なくとも車両ドア11の外表面から物体までの距離を検出可能なソナーセンサが含まれる。各カメラ212は、車両10の周辺領域を撮影して画像データを生成するデジタルカメラである。各カメラ212は、生成した画像データをPVM・ECU202に送信する。なお、複数のカメラ212は、車両10の全方向の周辺領域を撮影することができるように配置される。
【0016】
PVM・ECU202は、各カメラ212から取得した画像データに対して画像処理を施すことにより周辺情報を取得する。例えば、PVM・ECU202は、車両10の周辺領域に存在する設置物(パイロンなど)や建築物(壁やフェンスなど)、移動物(通行人や他の車両など)や、路面に表示されている駐車枠線などの大きさや形状や車両10に対する位置などを取得する。また、PVM・ECU202は、検出された立体物が、歩行者や自転車のような移動物であるか、壁やフェンスのような固定物であるか否かを解析(判定)する。すなわち、PVM・ECU202は、車両10の周辺領域に存在する移動物を検出できる。
【0017】
NAVI207は、NAVI・ECU222、車内表示装置223および無線通信装置224を備える。車内表示装置223は、各種情報を表示すると共に運転者が各種指示を入力可能なタッチパネル式の表示装置である。無線通信装置224は、後述する携帯端末300と無線通信可能に構成される。例えば、無線通信装置224は、Bluetooth規格(「Bluetooth」はブルートゥース エスアイジー,インコーポレイテッドの登録商標)に準拠した無線通信が可能に構成される。
【0018】
駐車ECU201は、NAVI・ECU222を介して車内表示装置223に各種の画像を表示させることができるとともに、車内表示装置223に対する操作(タップなど)を検出できる。
【0019】
駆動ECU204は、駆動アクチュエータ214を駆動することにより駆動力源215を制御するように構成される。SBW・ECU204は、SBWアクチュエータ216を制御することによりトランスミッション217のシフトレンジを変更できるように構成される。また、駆動ECU204は車速センサ213に接続されており、車速センサ213により検出された車速を取得できる。ブレーキECU205は、ブレーキアクチュエータ218を制御することにより、ブレーキ機構219による車両10の制動力を制御するように構成される。EPS・ECU206は、転舵モータドライバ220の制御により転舵モータ221を駆動することで、車両10の舵角を変更できる。
【0020】
携帯端末300(携帯可能な端末装置)は、端末ECU301、無線通信装置302、および端末表示装置303を備える。携帯端末300の端末ECU301には、車両10を遠隔操作するためのアプリケーション(以下、「操作アプリ」と記す)が予めインストールされている。無線通信装置302は、携帯端末300が車両10の外部に存在する状態で駐車支援装置20の無線通信装置224と無線通信可能に構成される。無線通信装置302には、Bluetooth規格に準拠する無線通信装置が適用される。端末表示装置303は、各種情報を表示可能であるとともに運転者が各種指示を入力可能なタッチパネル式の表示装置である。端末ECU301は、端末表示装置303に各種の画像を表示させることができるとともに、端末表示装置303の画面に対する操作(タップやスワイプなど)を検出できる。携帯端末300には、例えばスマートフォンが適用される。
【0021】
次に、駐車支援制御の内容について説明する。駐車ECU201は、車両10の走行中に所定の条件(以下、「探索条件」と記す)が成立すると、駐車支援制御に含まれる処理である「車両10を駐車可能な駐車スロットを探索する処理」(以下、「探索処理」と記す)を開始する。例えば、駐車ECU201は、車両10の走行中に車速が所定の車速以下(例えば、10km/h以下)になった場合に探索条件が成立したと判定する。なお、探索処理には、従来公知の方法が適用できる(例えば、特開2021-62736号公報や、特開2021-62715号公報を参照)。
【0022】
駐車ECU201は、探索処理により車両10を駐車可能な駐車スロットを検出できた場合、その後に開始スイッチ210への操作を検出すると、車両10を駐車する駐車スロットを確定する処理(車両10を駐車する駐車スロットを運転者に確定させる処理、ということもできる)、および遠隔駐車制御により車両10を駐車するか否かを運転者に決定させる処理を実行する。なお、本実施形態における遠隔駐車制御は、車両10の外部における携帯端末300の操作に応じて、車両10を駐車スロットに駐車する制御である。駐車ECU201は、車両10を駐車する目標駐車位置である駐車スロットを確定すると、現在の車両10の位置から駐車スロットに車両10を移動させるための車両10の誘導経路を演算するとともに、車両10を誘導経路に沿って自動運転により駐車スロットに移動(走行)させるための操舵角パターンおよび速度パターンを演算する。なお、誘導経路、操舵角パターンおよび速度パターンの演算方法には公知の方法が適用できる(例えば、特開2015-3565号公報参照)。
【0023】
駐車ECU201は、車両10の誘導経路、操舵角パターンおよび速度パターンの演算が完了すると、「運転者に対して降車および携帯端末300でのリモート駐車を行うアプリの起動を促すメッセージ」を含む画像を車内表示装置223に表示させる。そして、駐車ECU201は、駆動ECU203に、第一遠隔制御を開始させる(なお、「駐車ECU201は、駆動ECU203と協働して第一遠隔制御を開始する」、ということもできる)。第一遠隔制御は遠隔駐車制御であり、駐車ECU201により演算された誘導経路に沿って駐車スロットに向けて車両10を自動走行させる制御(自動運転する制御)である。
【0024】
携帯端末300は、運転者の操作により操作アプリが起動し、駐車支援装置20と通信可能になると、端末表示装置303に、
図2(a)に示す遠隔操作画像500を表示する。遠隔操作画像500には、運転者がスワイプする領域を示す画像であるスワイプ領域画像501が含まれる。そして、携帯端末300は、スワイプ領域画像501に対するスワイプが検出されている間、車両10の自動走行を指令する信号(以下、「走行指令信号」と記す)を無線通信によりNAVI207に送信する。
【0025】
駆動ECU203、SBW・ECU204、およびブレーキECU205は、NAVI207が走行指令信号を受信している間、演算された操舵角パターンおよび速度パターンで車両10が自動走行するように、協調して、駆動力源、SBWアクチュエータ216、およびブレーキアクチュエータ218を制御する。これにより、運転者が携帯端末300の遠隔操作画像500のスワイプ画像をスワイプしている間、車両10は駐車スロットに向けて自動走行する。
【0026】
駐車ECU201は、車両10が駐車スロット内の所定の駐車位置に到達すると、車両10を停止させるとともに、車両10が駐車スロットに到達したことを示す信号である第一終了信号を、携帯端末300に無線送信する。携帯端末300は、第一終了信号を受信すると、
図2(b)に示す第一終了画像510を端末表示装置303に表示する。第一終了画像510は、駐車が完了したことを報知するための画像である。その後、駐車ECU201は駐車支援制御を終了し、携帯端末300は操作アプリを終了する。
【0027】
駐車ECU201およびPVM・ECU202は、第一遠隔制御の実行により車両10が駐車スロットへ向かって自動走行している間も、誘導経路上および駐車スロットならびにそれらの近傍に、車両10の移動および駐車の障害となる物体が存在するか否かの判定を継続する。また、PVM・ECU202は、カメラ212から取得した画像データに基づいて、誘導経路上および駐車スロット内ならびにそれらの近傍に、物体が存在するか否かを判定するとともに、物体が存在する場合には当該物体の種類(歩行者や自転車などの移動物であるか、パイロンなどの可搬物であるか、撤去不可能な固定物であるか)を特定する、という処理を継続する。また、PVM・ECU202は、駐車スロットが車両10を駐車可能な形状および寸法を備えるか否かの判定を継続する。
【0028】
そして、車両10の自動走行中に、駐車スロットに車両10を駐車できないことが判明することがある。そこで、駐車ECU201は、第一遠隔制御の準備が完了してから車両10が駐車スロットに到達するまでの間、車両10を駐車スロットに駐車できないことを示す条件(以下、中止条件と記す)が成立したか否かの判定を継続的に実行する。そして、駐車ECU201は、中止条件が成立した場合、中止条件の成立を示す中止信号を携帯端末300に送信する。携帯端末300は、中止信号を受信すると、遠隔操作画像500を消去し、
図3(a)に示す中止画像520を表示する。中止画像520は、自動駐車制御の中止を報知するための画像である。
【0029】
中止条件は、本来的に目標駐車位置として確定された駐車スロットに車両10を駐車できないことが判明した場合に成立する条件である。具体的には、中止条件は、車両10の外部に居る運転者または乗員が車両10を駐車スロットに駐車できない状態を解消できない場合や、車両10を駐車スロットに駐車できない状態の解消の見込みが不明な場合に成立する。より具体的には、「駐車スロットが車両10を駐車可能な寸法および形状を備えないことが判明した場合」、「駐車スロットは車両10を駐車可能な寸法および形状を備えるが、当該駐車スロットに撤去できない物体が存在する場合(換言すると、当該物体が移動物または可搬物であるかが不明である場合)」に中止条件が成立する。
【0030】
駐車ECU201は、中止条件が成立した場合には車両10の走行を停止させる。車両10の走行が停止した際に、車両10の側方に近接する物体(例えば、他の車両や壁などの建築物)が存在すると、運転者は車両ドア11を開放できないため乗車でなきない(または、乗車が困難である)。そこで、本実施形態では、駐車ECU201は、車両10の走行を停止させた際に車両ドア11を開放できない場合には、車両ドア11を開放可能な位置に車両10を移動させるための処理および制御を実行する。
【0031】
具体的には、駐車ECU201は、中止条件の成立に起因して車両10の走行を停止させた場合、各車両ドア11の外表面から所定の距離以内(換言すると、車両ドア11が開閉する際の当該車両ドア11の移動軌跡上)に前記のような物体が存在するか否かを判定する。そして、駐車ECU201は、前記のような物体が存在すると判定した場合、運転者が乗車できる程度に車両ドア11を開放できるスペースが存在しないと判断し、車両ドア11を開放できないと判定する。なお、駐車ECU201は、すべての人員乗降用の車両ドア11について、開放可能であるか否かを判定する。車両10が荷物用の車両ドア(例えばバックドア)を備える場合には、当該荷物用の車両ドアを除く。そして、駐車ECU201は、すべての人員乗降用の車両ドア11が開放可能ではないと判定した場合、車両ドア11を開放可能であることを示すドア開放可能条件が成立していないと判定し、そのことを示すドア開放不可信号を、携帯端末300に送信する。
【0032】
携帯端末300は、ドア開放不可信号を受信すると、端末表示装置303に
図3(a)に示す中止画像520を所定の時間(例えば3秒間)にわたって表示し、その後、中止画像520を消去して
図3(b)に示す提案画像530を表示する。提案画像530には、「車両ドア11を開放可能な位置への車両10の移動を提案するメッセージ」(メッセージ画像531)と、運転者がこの提案を受け入れる際にタップする画像である受入スイッチ画像532と、運転者がこの提案を受け入れない際にタップする画像である拒否スイッチ画像533とが含まれる。メッセージ画像531により、車両ドア11を開放可能な位置、すなわち運転者が乗車できる程度に車両ドア11を開放できるスペースが存在する位置への車両11の移動の提案が運転者に報知される。
【0033】
携帯端末300は、受入スイッチ画像532へのタップを検出すると、そのことを示す信号である受入信号を、NAVI207に送信する。そして、携帯端末300は、この場合、提案画像530を消去し、遠隔操作画像500を表示する。一方、携帯端末300は、拒否スイッチ画像533へのタップを検出すると、そのことを示す信号である拒否信号を、NAVI207に送信する。そしてこの場合、携帯端末300は操作アプリを終了する。駐車ECU201は、NAVI207が拒否信号を受信した場合には、駐車支援制御を終了する。
【0034】
駐車ECU201は、NAVI207が受入信号を受信した場合、HV・ECU203に第二遠隔制御を開始させる(なお、「駐車ECU201は、HV・ECU203などと協働して第二遠隔制御を開始する」、ということもできる)。第二遠隔制御は、駐車支援制御に含まれる制御であり、携帯端末300から走行指令信号を受信している間に車両10を自動走行させる制御である。ただし、第二遠隔制御においては、演算した操舵角パターンおよび速度パターンを使用せず、車両10を停止直前の進行方向とは反対方向に直進させる。例えば、駐車ECU201は、車両10が後退している間(後退駐車している間)に中止条件の成立により車両10を停止した場合、車両10を真直ぐに前進させる。
【0035】
駐車ECU201は、第二遠隔制御の実行により車両10を自動走行させながら、ドア開放可能条件が成立するか否か、すなわち車両ドア11を開放することができるスペースが存在するか否かを判断する。そして、駐車ECU201は、車両10を自動走行(直進)させている間にドア開放可能条件が成立したと判定すると、HV・ECU203に車両10の走行を停止させるとともに、ドア開放可能条件が成立したことを示す信号であるドア開放可能信号を、携帯端末300に送信する。携帯端末300は、ドア開放可能信号を受信すると、遠隔操作画像500を消去し、
図3(c)に示す第二終了画像540を表示する。第二終了画像540は、車両10が車両ドア11を開放可能な位置に到達したことを報知するための画像である。そして、駐車ECU201は駐車支援制御を終了し、携帯端末300は操作アプリを終了する。
【0036】
なお、中止条件の成立に起因して車両10が停止した位置においてドア開放可能条件が成立している場合、車外の運転者は乗車可能である。このためこの場合には、駐車ECU201は、中止信号およびドア開放可能信号を携帯端末300に送信し、その後、駐車支援制御を終了する。携帯端末300は、中止信号およびドア開放可能信号を受信すると、端末表示装置303に
図3(a)に示す中止画像を表示し、その後、操作アプリを終了する。
【0037】
なお、駐車ECU201は、一時的な原因または運転者等により解消可能な原因により車両を駐車スロットに向けて走行させることができない場合には、中止条件が成立したとは判定せず、中断条件が成立したと判定する。例えば、駐車ECU201は、誘導経路上および駐車スロット内に車両10の走行および駐車の障害となる物体を検出した場合であっても、駐車スロットが車両10を駐車可能な寸法および形状を備え、かつ、当該物体が移動物(例えば歩行者や自転車など)または可搬物(例えばパイロンなど)であれば、中止条件が成立したと判定せず、中断条件が成立したと判定する。
【0038】
駐車ECU201は、走行指令信号を受信している間に中断条件が成立場合、車両10の走行を一時的に中断する。そして、駐車ECU201は、中断条件が成立しなくなった場合、端末表示装置303へのスワイプに応じて車両10を走行させる制御を再開する。すなわち、駐車ECU201は、中断条件が成立した場合には、車両10の走行を一時的に中断するが、駐車支援制御を終了せずに継続する。
【0039】
ここで、駐車ECU201が実行する処理について説明する。
図4は、上記した駐車支援制御を実現するために、駐車ECU201のCPU(以下の説明では、単に「CPU」と記す)が実行する処理の例を示すフローチャートである。CPUは、車両10の停止中に開始スイッチ210への操作を検出し、その後、車両10を駐車する駐車スロットを確定し、駐車スロットまでの車両10の誘導経路の演算、並びに、演算した誘導経路に沿って車両10を走行させるための操舵角パターンおよび速度パターンの演算を完了すると、
図4に示す一連の処理を開始する。
【0040】
ステップS101において、CPUは、HV・ECU203に第一遠隔制御を開始(すでに開始している場合には継続)させる。具体的には、CPUは、NAVI207を介して携帯端末300から走行指令信号を受信している間、HV・ECU203に車両10を目標駐車位置に向けて車両10を走行させる。そして、CPUは、処理をステップS102に進める。
【0041】
ステップS102において、CPUは、中止条件が成立したか否かを判定する。CPUは、中止条件が成立していない場合には、処理をステップS103に進め、中止条件が成立した場合には、処理をステップS105に進める。
【0042】
ステップS103において、CPUは、第一終了条件が成立したか否かを判定する。CPUは、第一終了条件が成立していない場合には、処理をステップS101に戻し、第一終了条件が成立した場合には、処理をステップS104に進める。
【0043】
ステップS104において、CPUは、HV・ECU203に車両10の走行を停止させるとともに、第一終了信号を携帯端末300に送信する。そして、CPUは、一連の処理を終了する。
【0044】
ステップS105において、CPUは、ドア開放可能条件が成立しているか否かを判定する。そして、CPUは、ドア開放可能条件が成立している場合、処理をステップS106に進め、ドア開放可能条件が成立していない場合、処理をステップS108に進める。
【0045】
ステップS106において、CPUは、中止信号およびドア開放可能信号を、携帯端末300に送信する。そして、CPUは、一連の処理を終了する。
【0046】
ステップS108において、CPUは、中止信号およびドア開放不可信号を、携帯端末300に送信する。そして、CPUは、処理をステップS108に進める。
【0047】
ステップS108において、CPUは、受入信号と拒否信号受信とのいずれを受信したかを判定する。CPUは、受入信号を受信した場合には処理をステップS109に進め、拒否信号を受信した場合にはCPUは一連の処理を終了する。
【0048】
ステップS109において、CPUは、HV・ECU203に第二遠隔制御を開始(開始済みである場合には継続)させる。そして、CPUは処理をステップS110に進める。
【0049】
ステップS110において、CPUは、ドア開放可能条件が成立したか否かを判定する。CPUは、ドア開放可能条件が成立していないと判定した場合、処理をステップS109に戻す。CPUは、ドア開放可能条件が成立したと判定した場合、処理をステップS111に進める。
【0050】
ステップS111において、CPUは、HV・ECU203に車両10の走行を停止させるとともに、第二終了信号を送信する。その後、CPUは、一連の処理を終了する。
【0051】
次に、携帯端末300の端末ECU301のCPU(以下、単にCPUと記すことがある)が実行する処理について説明する。
図5は、携帯端末300のCPUが実行する処理の例を示すフローチャートである。CPUは、操作アプリを起動すると、
図5に示す一連の処理を開始する。
【0052】
ステップS201において、CPUは、端末表示装置303に遠隔操作画像500を表示するとともに、スワイプ領域画像501に対するスワイプを受付ける。そして、CPUは、スワイプ領域画像501に対するスワイプを検出している間、NAVI207への走行指令信号の送信を継続する。そして、ステップS202に処理を進める。
【0053】
ステップS202において、CPUは、NAVI207から中止信号を受信したか否かを判定する。CPUは、中止信号を受信していない場合、処理をステップS203に進め、中止信号を受信した場合、処理をステップS205に進める。
【0054】
ステップS203において、CPUは、NAVI207から第一終了信号を受信したか否かを判定する。CPUは、第一終了信号を受信していない場合、処理をステップS201に戻し、第一終了信号を受信した場合、処理をステップS204に進める。
【0055】
ステップS204において、CPUは、遠隔操作画像500を消去し、第一終了画像510を表示する。その後、CPUは、操作アプリを終了する。
【0056】
ステップS205において、CPUは、ドア開放可能信号とドア開放不可信号とのいずれを受信したかを判定する。CPUは、ドア開放可能信号を受信した場合、処理をステップS206に進め、ドア開放不可信号を受信した場合、処理をステップS207に進める。
【0057】
ステップS206において、CPUは、遠隔操作画像500を消去し、中止画像520を表示する。その後、CPUは、アプリを終了する。
【0058】
ステップS207において、CPUは、遠隔操作画像500を消去し、中止画像520を表示する。そして、中止画像520の表示を所定の時間にわたって継続した後、中止画像520を消去して提案画像530を表示するとともに、提案画像530に含まれる受入スイッチ画像532と拒否スイッチ画像533に対する操作の受付を開始する。そして、CPUは処理をステップS208に進める。
【0059】
ステップS208において、CPUは、受入スイッチ画像532と拒否スイッチ画像533とのいずれかに対するタップがあったか否かを判定する。CPUは、拒否スイッチ画像533に対するタップを検出した場合、操作アプリを終了し、受入スイッチ画像532に対するタップを検出した場合、処理をステップS209に進める。
【0060】
ステップS209において、CPUは、提案画像530を消去し、遠隔操作画像500を表示する。そして、CPUは、スワイプ領域画像501に対するスワイプを検出している間、走行指令信号をNAVI207に継続的に無線送信する。そして、CPUは、処理をステップS210に進める。
【0061】
ステップS210において、CPUは、第二終了信号を受信したか否かを判定する。CPUは、第二終了信号を受信していない場合、処理をステップS209に戻し、第二終了信号を受信した場合、処理をステップS211に進める。
【0062】
ステップS211において、CPUは、遠隔操作画像500を消去し、第二終了画像540を表示する。その後、CPUは一連の処理を終了する。そして、CPUは操作アプリを終了する。
【0063】
以上のように、駐車支援装置20は、第一遠隔制御の実行による車両10の自動走行中に中止条件が成立したと判定した場合、車両10の走行を停止する。そして、駐車支援装置20は、車両10が停止した位置において車両10の周辺に車両ドア11を開放できるスペースが存在するか、すなわち車両ドア11を開放可能であるかを判定する。車両ドア11を開放可能である場合、駐車支援装置200は駐車支援制御を終了する。この場合、車外において携帯端末300を操作していた運転者は、車両ドア11を開放して車両10に搭乗できるから、車両10を運転して移動させることができる。
【0064】
一方、駐車支援装置20は、車両10が停止した位置において車両ドア11を開放できない(すなわち車両ドア11を開放できるスペースが存在しない)と判定した場合、端末表示装置303に車両10の移動を提案するための提案画像530を表示する処理を行う。そして、駐車支援装置20は、この提案を受け入れる信号(受入信号)を検出した場合、携帯端末300から受信する走行指令信号に応じて車両10を直進走行させる。なお、この場合、車両10を駐車スロットに向けて走行させることができないから、駐車支援装置20は、中止条件の成立の直前の進行方向とは反対方向に車両10を直進走行させる。そして、駐車支援装置20は、車両10が「車両ドア11を開放できる位置」に到達した場合、車両10を停止させるとともに駐車支援制御を終了する。これにより、車外の運転者は車両10に搭乗できるから、車両10を運転して移動させることができる。
【0065】
なお、車両10を駐車スロットに駐車できない場合であっても駐車支援制御は中止(終了)しないから、運転者は、再度駐車支援制御を開始する操作を行うことなく、車両10を移動させることができる。このため、車両10の移動のための操作の手間や時間の削減を図ることができる。すなわち、駐車支援装置20による自動駐車制御を実行するにあたっての利便性を向上することができる。
【0066】
また、駐車支援装置20は、車両10を停止の直前の進行方向とは反対方向に走行させる。これにより、車両10を「ドア開放可能条件の成立を阻害する物体」から遠ざける方向に移動させることができる。また、車両10を直進させることにより、短距離の走行で車両ドア11を開放できるスペースが存在する位置に車両を移動させやすい。したがって、車両10を短時間で乗車できる位置に移動させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、駐車ECU201は、すべての車両ドア11について開放できない場合、ドア開放可能条件が成立しないと判定する。このような構成であると、乗車可能な車両ドア11が存在する場合には、運転者は、提案に対して応答する操作をしなくても、当該車両ドア11から直ちに乗車して車両を運転できる。
【0068】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定解釈されるべきではない。例えば、駐車ECU201は、少なくとも運転席の車両ドア11が開放可能でない場合には、それ以外の車両ドア11が開放可能であったとしても、ドア開放可能条件が成立していないと判定してもよい。また、駐車支援装置10は、第一遠隔制御が開始された時点における車両10の位置に向けて車両を移動させてもよい。
【0069】
また、本開示の技術は、標準規格であるISO20900(Partially automated parking systems : PAPS)やISO16787(Assisted parking systems : APS)に準拠する技術への適用が可能な技術である。
【符号の説明】
【0070】
10…車両、11…車両ドア、20…駐車支援装置、300…携帯端末、530…提案画像