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特開2024-112413光学基板及び固体撮像素子パッケージ
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  • 特開-光学基板及び固体撮像素子パッケージ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112413
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】光学基板及び固体撮像素子パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017389
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】沓水 真琴
(72)【発明者】
【氏名】武田 莉奈
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA05
4M118AB01
4M118BA14
4M118CA01
4M118FA06
4M118GB01
4M118HA02
4M118HA07
4M118HA11
4M118HA25
4M118HA30
(57)【要約】
【課題】固体撮像素子パッケージの撮影画像のノイズを少なくできる光学基板を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る光学基板30は、透明基板31と、着色剤を含む光硬化性樹脂組成物から形成され、前記透明基板の一方の主面に積層され、内側空間を画定する枠状の壁体32と、を備え、前記壁体32の内周面321のスキューネスSskが、負の値である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
着色剤を含む光硬化性樹脂組成物から形成され、前記透明基板の一方の主面に積層され、内側空間を画定する枠状の壁体と、
を備え、
前記壁体の内周面のスキューネスSskが、負の値である、光学基板。
【請求項2】
前記壁体の内周面の算術平均粗さRaが、50nm以上3000nm以下である、請求項1に記載の光学基板。
【請求項3】
前記着色剤の含有率が、5質量%以下である、請求項1又は2に記載の光学基板。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光学基板と、
前記透明基板を通して前記内側空間に入射する光の像を撮影する固体撮像素子と、
を備える、固体撮像素子パッケージ。
【請求項5】
前記壁体と前記固体撮像素子の機能部との最短距離が、800μm以下である、請求項4に記載の固体撮像素子パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学基板及び固体撮像素子パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を実装した基板に固体撮像素子を取り囲む壁体(フレーム)を接着し、壁体の開口をガラス板等の透明基板で覆った固体撮像素子パッケージが広く利用されている(例えば特許文献1参照)。このような固体撮像素子パッケージにおいて、壁体は、固体撮像素子に対する明基板の相対位置を定めると共に、固体撮像素子に意図しない光が入射することを抑制することによりフレア、ゴーストといった撮影画像のノイズを低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-296453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体撮像素子パッケージの小型化及び高精細化に対する要求は日々高まっており、壁体にも高い精度が求められる。そこで、透明基板上に直接壁体を形成した光学基板を用意し、光学基板の壁体を、固体撮像素子又は固体撮像素子が実装された実装基板に接着することが考えられる。透明基板上に小型で高精度に樹脂を成形する方法としては、フォトリソグラフィー技術が知られている。しかしながら、上述のように光の入射を制限できる壁体を形成するためには遮光性を有する材料を使用する必要があるため、光による現像(選択的な樹脂の硬化又は可溶化)ができない。また、顔料の含有量を大きくすると、現像時に除去すべき開口部分に顔料が残留して画像ノイズを生成するという問題も生じる。このような実情に鑑みて、本発明は、固体撮像素子パッケージの撮影画像のノイズを少なくできる光学基板及び撮影画像のノイズが少ない固体撮像素子パッケージを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る光学基板は、透明基板と、着色剤を含む光硬化性樹脂組成物から形成され、前記透明基板の一方の主面に積層され、内側空間を画定する枠状の壁体と、を備え、前記壁体の内周面のスキューネスSskが、負の値である。
【0006】
上述の光学基板において、前記壁体の内周面の算術平均粗さRaは50nm以上3000nm以下であってもよい。
【0007】
上述の光学基板において、前記着色剤の含有率は5質量%以下であってもよい。
【0008】
本発明の一態様に係る固体撮像素子パッケージは、上述の光学基板と、前記透明基板を通して前記内側空間に入射する光の像を撮影する固体撮像素子と、を備える。
【0009】
上述の固体撮像素子パッケージにおいて、前記壁体と前記固体撮像素子の機能部との最短距離が、800μm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、固体撮像素子パッケージの撮影画像のノイズを少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る固体撮像素子パッケージの断面図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る固体撮像素子パッケージの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明をする。なお、後から説明する実施形態において、先に説明した実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略することがある。また、図面は特徴が分かりやすいよう、比率の変更、細部の省略等がなされている。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る固体撮像素子パッケージ1の断面図である。固体撮像素子パッケージ1は、実装基板10と、実装基板10に実装される固体撮像素子20と、実装基板10に接着され、固体撮像素子20を覆う光学基板30と、を備える。
【0014】
実装基板10は、固体撮像素子20及び壁体32を支持する構造部材である。このため、実装基板10は、十分な剛性を有する材料から形成される。実装基板10は、単なる支持体であってもよいが、固体撮像素子20に電力を供給し、固体撮像素子20から信号を取り出す回路が形成された回路基板であることが好ましい。本実施形態において、実装基板10は、固体撮像素子20と電気的に接続するための電極101を含む回路を有する。
【0015】
実装基板10としては、例えばポリイミド、ポリエステル、セラミック、エポキシ、ビスマレイミドトリアジン、フェノール樹脂等の有機物や、紙やガラス繊維不織布などに前記の有機物を含侵させて加熱硬化させた構造物、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、窒化ケイ素などのセラミック、金属基板などが挙げられる。この中で好ましいものとしてはガラスエポキシ基板、セラミック基板が挙げられる。これら絶縁基板の表面又は内部に、金属配線パターンや金属バンプを有する回路を形成することができる。
【0016】
固体撮像素子20は、実装基板10の光学基板30に対向する側に実装される。固体撮像素子20は、光学基板30に対向する面に形成され、撮像を行う機能部21と、電気的接続を行うための接続部22と、を有する。固体撮像素子20は、機能部21の撮像面が実装基板10の主面と平行になるよう、つまり光軸が実装基板10の法線方向と平行になるよう実装される。固体撮像素子20としては、例えばCMOSイメージセンサ等の2次元撮像素子が用いられ得る。機能部21としては、例えばCMOSイメージセンサ等の2次元撮像素子構造が形成され得る。接続部22は、固体撮像素子20を実装基板10等に電気的に接続するための電極221等が配設される領域である。接続部22は、本実施形態のように、機能部21の外側に設けられ得る。また、接続部22は、機能部21と反対側の面、つまり実装基板10に対向する面に設けられてもよい。本実施形態において、固体撮像素子20の電極221と実装基板10の電極101は、ワイヤ222によって電気的に接続されている。
【0017】
光学基板30は、実装基板10との間に固体撮像素子20を封止する密閉空間を形成する。光学基板30は、それ自体が本発明に係る光学基板の一実施形態である。光学基板30は、透明基板31と、透明基板31の一方の主面に積層され、固体撮像素子20を収容する内側空間を画定する枠状の壁体32と、を備える。つまり、固体撮像素子パッケージ1において、固体撮像素子20は、透明基板31を通して内側空間に入射する光の像を撮影する。
【0018】
透明基板31は、透明な板材である。透明基板31は、ガラスやサファイヤなどの透明セラミック、アクリル樹脂やポリカーボネート等の透明プラスチックから形成され得、信頼性の観点から透明セラミックから形成されることが好ましく、汎用性の観点からガラスから形成されることがより好ましい。透明基板31を形成するガラスの種類は特に限定されないが、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
【0019】
壁体32は、着色剤を含む光硬化性樹脂組成物から形成される。壁体32を光硬化性樹脂組成物から形成することによって、例えば、フォトリソグラフィー技術等により、均一な厚みで正確な平面形状を有する壁体32を形成できる。光硬化性樹脂組成物は、例えばエポキシ基、アクリル基等の反応基を有する樹脂成分と、光重合開始剤とを含む。また、光硬化性樹脂組成物に含まれる着色剤としては、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。耐熱性及び着色性の観点からは、着色剤として顔料を用いることが好ましい。黒色の着色パターンを形成する場合は、着色剤として黒色顔料を用いることが好ましい。また、黒色パターン以外の着色パターンとして、赤色パターン、黄色パターン、青色パターン等が挙げられる。
【0020】
顔料としては、可視光領域の波長を広く吸収するものが好ましい。可視光領域の波長を広く吸収する顔料のうち、黒色有機顔料としては、アントラキノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、アゾ系黒色顔料、ラクタム系黒色顔料等が挙げられる。これらの中でも遮光性に優れることから、ペリレン系黒色顔料、ラクタム系黒色顔料が好ましい。黒色無機顔料としては、カーボンブラック、黒色低次酸窒化チタン等が挙げられる。その他の無機顔料の例としては、カーボンブラック、複合金属酸化物顔料、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸鉛、黄色鉛、ベンガラ、群青、紺青、酸化クロム、アンチモン白、硫化亜鉛、亜鉛、マンガン紫、コバルト紫、炭酸マグネシウム等が挙げられる。染料としては、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物、ペリノン系化合物、フタロシアニン系化合物、カルボニウム系化合物、インジゴイド系化合物等が挙げられる。黒色パターン以外の着色パターンを得るために用いられる顔料としては、赤、橙、黄、緑、青、紫、シアニン、マゼンダ等の有彩色の顔料が挙げられる。
【0021】
有彩色の顔料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.)ピグメントイエロー1、10、83等;C.I.ピグメントオレンジ2、5、13等;C.I.ピグメントレッド1、2、3等;C.I.ピグメントグリーン7、10、36等;C.I.ピグメントブルー1、2、15等が挙げられる。これらの顔料は、単独で用いることもでき、種々組み合わせて用いることもできる。
【0022】
壁体32を形成する光硬化性樹脂組成物における着色剤の含有率の下限としては、0.2質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、0.8質量%が特に好ましい。一方、壁体32を形成する光硬化性樹脂組成物における着色剤の含有率の上限としては、5質量%が好ましく、4質量%がより好ましく、3質量%が特に好ましい。着色剤の含有率を前記下限以上とすることにより、壁体32の光透過率を小さくできるので、効果的にフレアやゴーストを抑制できる。また、着色剤の含有率を前記上限以下とすることにより、光硬化性樹脂組成物の内部まで露光して正確な形状の壁体32を形成できると共に、光を照射しなかった領域の光硬化性樹脂組成物を除去した後に透明基板31の表面に着色剤が残留することを抑制できる。
【0023】
壁体32と固体撮像素子20の機能部21と最短距離の下限としては、100μmが好ましい。一方、壁体32と機能部21の最短距離の上限としては、800μmが好ましく、600μmがより好ましい。壁体32と機能部21の最短距離を前記下限以上とすることによって、壁体32の接着時に接着剤等を誤って機能部21に付着させることを防止できる。また、壁体32と機能部21の最短距離を前記上限以下とすることにより、機能部21に斜めに入射し得る意図しない光を遮断することができる。
【0024】
壁体32は、少なくとも内側空間に露出する内周面321に、光を散乱させる凹凸構造が形成される。凹凸構造を有する内周面321は、光を拡散することにより、固体撮像素子20の機能部21に入射する意図しない光の強度を低減し、S/N比を大きくすることで、認知可能なフレアやゴーストを抑制する。特に、壁体32は、上述のように着色剤の含有率を低くしても、内周面321において透過光を散乱させるため、画像ノイズを十分に抑制できる。また、内周面321は、例えば斜めに透光開口421に入射した光等、固体撮像素子パッケージ1の内側空間に入射した意図しない光が反射して壁体32に入射する場合に、壁体32で再反射して固体撮像素子20の機能部21に入射し得る光を拡散することによっても、画像ノイズを抑制する。また、壁体32の内周面321は、斜めに入射した光の反射をさらに低減できるよう、透明基板31側の内径が小さくなるようなテーパ状又はドーム状に形成されてもよい。
【0025】
内周面321の凹凸構造は、例えば壁体32を半硬化状態(Bステージ)とした状態で、表面に凹凸を形成した金型を押し当てるエンボス加工によって形成することができる。また、内周面321を形成した半硬化状態の壁体32に実装基板10を密着させた状態で壁体32を硬化すれば、接着剤を用いることなく実装基板10に光学基板30を接着できる。
【0026】
内周面321のスキューネスSsk(ISO-25178)は、負の値とされる。これにより、効率的に正反射を低減し、フレアやゴーストを効果的に抑制できる。スキューネス(Ssk)は、凹凸表面の平均面を基準とした高さ分布の対称性を示す。スキューネスSskが0である場合は、高さ分布が上下に対称(山と谷が同程度、平均面に対して対称)となる。一方、スキューネスSskが負の値である場合は、細かい谷が多い表面となり(平均面に対して上側に偏っている)、スキューネスSskが正の値である場合は、細かい山が多い表面となる(平均面に対して下側に偏っている)。このため、光拡散面422をスキューネスSskが負の値である谷が多い構造とすることによって、光拡散面422に入射してきた光が、谷部で反射を繰り返し、反射の度に減衰するだけでなく、多方向に分散するよう反射して正反射を低減させることができるので、ゴーストやフレアを抑制することができる。内周面321のスキューネスSskの下限としては、-0.80が好ましく、-0.70がより好ましい、一方、内周面321のスキューネスSskの上限としては、-0.10が好ましく、-0.20がより好ましい。スキューネスSskを前記下限以上とすることにより、凹凸を微細化することが容易となるため、より効率的にフレアやゴーストを抑制できる。また、スキューネスSskを前記上限以下とすることにより、正反射を効果的に抑制できるので、確実にフレアやゴーストを抑制できる。
【0027】
内周面321の算術平均粗さRa(JIS-B0601)の下限としては、50nmが好ましく、100nmがより好ましく、200nmがさらに好ましい。一方、内周面321の算術平均粗さRaの上限としては、3000nmが好ましく、2600nmがより好ましく、2000nmがさらに好ましく、1000nmが特に好ましい。内周面321の算術平均粗さRaを前記下限以上とすることにより、正反射をより効果的に抑制できるので、より効率的にフレアやゴーストを抑制できる。また、内周面321の算術平均粗さRaを前記上限以下とすることにより、製造が比較的容易となるので製造コストを抑制できる。
【0028】
内周面321の粗さ曲線要素の平均長さRSm(JIS-B0601)の下限としては、100nmが好ましく、200nmがより好ましく、300nmがさらに好ましい。一方、内周面321の粗さ曲線要素の平均長さRSmの上限としては、20000nmが好ましく、10000nmがより好ましく8000nmがさらに好ましい。内周面321の粗さ曲線要素の平均長さRSmを前記下限以上とすることにより、製造が比較的容易となるので製造コストを抑制できる。また、内周面321の粗さ曲線要素の平均長さRSmを前記上限以下とすることにより、正反射をより効果的に抑制できるので、より効率的にフレアやゴーストを抑制できる。
【0029】
以上の構成を備える固体撮像素子パッケージ1は、例えばフォトリソグラフィー等により透明基板31への残渣なく壁体32を形成できる程度まで着色剤の含有率を低減しても、内周面321によりフレアやゴーストを抑制できる光学基板30を備えるため、ノイズが少ない高品質な画像を撮影できる。
【0030】
[第2実施形態]
図2は、本発明のより好ましい実施形態である第2実施形態に係る固体撮像素子パッケージ1Aの断面図である。固体撮像素子パッケージ1Aは、実装基板10と、実装基板10に実装される固体撮像素子20Aと、固体撮像素子20Aに接着される光学基板30と、実装基板10上の固体撮像素子20A及び光学基板30の外側を封止する封止材40と、を備える。
【0031】
固体撮像素子20Aは、撮像を行う機能部21と、電気的接続を行うための接続部22と、機能部21と接続部22の間に壁体32が接着されるマージン部23と、を有する。
【0032】
封止材40は、実装基板10上の固体撮像素子20A及び光学基板30の外側を封止することにより、光学基板30が外部の物体により固体撮像素子20Aから引き剥がされることを防止する。また、封止材40は、ワイヤ222を保護し、実装基板10と固体撮像素子20Aとの電気的接続を担保する。
【0033】
封止材40としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましく、強靭性や耐熱性の観点からエポキシ樹脂が特に好ましい。また、封止材40は、機能部21に意図しない光が入射することを防止できるよう、着色剤又は光拡散材を含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。また、封止材40は、形成を容易にするために、硬化前においてチクソ性を有するようシリカ等の充填剤を含有してもよい。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。例として、本発明に係る固体撮像素子パッケージは、全体及び光学基板の平面寸法が固体撮像素子と略等しいいわゆるChip Size Packageであってもよい。また、機能部が略全面に形成された固体撮像素子が実装される実装基板に壁体を接着してもよい。
【実施例0035】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
図2の構造を有する固体撮像素子パッケージの試作品を試作し、その性能を評価した。具体的には、壁体を形成する光硬化性樹脂組成物を調製し、ガラス基板上に塗工してフォトリソグラフィーにより半硬化状態の壁体を形成した。この半硬化状態の壁体の内周に多様な形状の凹凸を有する型を押し当てるエンボス加工によって、各種の光学基板を作成した。これらの光学基板を固体撮像素子が実装された実装基板に接着することにより、固体撮像素子パッケージの試作品1~13を試作した。なお、試作品13は、エンボス加工を行う代わりに、ガラス基板上に十分な遮光性を有する遮光膜を形成してから壁体を形成した。なお、壁体と固体撮像素子の機能部との最短距離は、700μmとした。
【0037】
試作品1,3~13の光硬化性樹脂組成物の調製は、先ず、40gジアリルイソシアヌレートとジアリルモノメチルイソシアヌレート29gと1,4-ジオキサン264gとの混合物に、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(ユミコアプレシャスメタルズ・ジャパン社製「Pt-VTSC-3X」、白金を3質量%含有する溶液)143μLを加えて溶液S1を得た。また、別途、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン88gをトルエン176gに溶解させて溶液S2を得た。
【0038】
そして、酸素を3体積%含有する窒素雰囲気下、溶液S2を温度105℃に加熱した状態で、溶液S2に溶液S1を3時間かけて滴下し、滴下終了後、温度105℃に保持しつつ30分間攪拌して、溶液S3を得た。また、別途、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン62gをトルエン62gに溶解させて溶液S4を得た。そして、酸素を3体積%含有する窒素雰囲気下、溶液S3を温度105℃に加熱した状態で、溶液S3に溶液S4を1時間かけて滴下し、滴下終了後、温度105℃に保持しつつ30分間攪拌して、溶液S5を得た。
【0039】
溶液S5を冷却した後、溶液S5から溶媒(トルエン、キシレン及び1,4-ジオキサン)を減圧留去し、固形分を得た。次いで、得られた固形分100質量部に、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート49質量部と、エポキシモノマー(3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:ダイセル社製「セロキサイド2021P」15質量部と、スルホニウム塩系光カチオン重合開始剤(サンアプロ社製「CPI-210S」)1質量部と、黒色有機顔料(「NPFT-70565」)(配合量は表1参照)と、を加えて、壁体を形成する光硬化性樹脂組成物を得た。なお、黒色有機顔料を2質量部配合した場合の光硬化性樹脂組成物の波長600nmでの光透過率は4%であった。
【0040】
試作品2の光硬化性樹脂組成物の調製は、先ず、ジアリルイソシアヌレート40gとジアリルモノメチルイソシアヌレート4.8gと直鎖状ポリシロキサン化合物(Gelest社製「DMS-V31」、重量平均分子量28000)2.2gと1,4-ジオキサン240gとを混合した混合物に、白金-ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(ユミコアプレシャスメタルズ・ジャパン社製の白金を3重量%含有する溶液「Pt-VTSC-3X」)95.5μLを加えて溶液S1を得た。また、別途、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン58.8gをトルエン117.6gに溶解させて溶液S2を得た。
【0041】
そして、酸素を3体積%含有する窒素雰囲気下、溶液S2を温度105℃に加熱した状態で、溶液S2に溶液S1を3時間かけて滴下し、滴下終了後、温度105℃に保持しつつ30分間攪拌して、溶液S3を得た。
【0042】
また、別途、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン41.17gをトルエン41.17gに溶解させて溶液S4を得た。そして、酸素を3体積%含有する窒素雰囲気下、溶液S3を温度105℃に加熱した状態で、溶液S3に、溶液S4を1時間かけて滴下し、滴下終了後、温度105℃に保持しつつ30分間攪拌して、溶液S5を得た。
【0043】
次いで、溶液S5を冷却した後、溶液S5から溶媒(トルエン、キシレン及び1,4-ジオキサン)を減圧留去し、固形分を得た。次いで、得られた固形分100質量部に、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート49質量部と、エポキシモノマー(3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:ダイセル社製「セロキサイド2021P」15質量部と、スルホニウム塩系光カチオン重合開始剤(サンアプロ社製「CPI-210S」)1質量部と、黒色有機顔料(「NPFT-70565」)2質量部(表1参照)と、を加えて、壁体を形成する光硬化性樹脂組成物を得た。
【0044】
ガラス基板上に形成した壁体の内周面の算術平均粗さRa(評価長さ:20μm)及びスキューネスSskは、オリンパス社製の3D測定レーザー顕微鏡「LEXT-OLS5100」を用いて測定した。なお、スキューネスSskは、測定箇所(20μm×20μmの正方形領域)を無作為に10箇所選択し、選択した測定箇所のスキューネスSskの測定値の平均値とした(表1参照)。
【0045】
また、固体撮像素子パッケージの性能は、透光開口の内部の透明基板上の残渣数と、撮影した画像のゴースト指数とで評価した。残渣数は、オリンパス社製の3D測定レーザー顕微鏡「LEXT-OLS4000」を用いて、透明基板の1mm角の範囲を観察し、10μm以上の残渣・異物が10個以上あった場合をD,6~9個をC、3~5個をB、2個以下の場合をAとした。ゴースト指数は、壺坂電機社製のゴーストフレア評価システム「GCS-2T」を用いて、所定の閾値(光源の明るさに対して1億分の1)を超えた異常画素数を求めた後、異常画素数を全画素数で除した値(異常画素数/全画素数)のエンボス加工を行っていない試作品3に対する百分率として算出した(表1参照)。
【0046】
【表1】
【0047】
以上のように、算術平均粗さRaを50nm以上3000nm以下とすることや、スキューネスSskを負の値とすることにより、比較的少量の顔料を添加するだけで十分にゴースト指数を小さくすることができるので、光路内の残渣を抑制でき、画像品質を向上できることが確認できた。
【符号の説明】
【0048】
1,1A 固体撮像素子パッケージ
10 実装基板
20,20A 固体撮像素子
21 機能部
22 接続部
23 マージン部
30 光学基板
31 透明基板
32 壁体
321 内周面
40 封止材
図1
図2