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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112416
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1368 20060101AFI20240814BHJP
   G02F 1/1345 20060101ALI20240814BHJP
   G09F 9/35 20060101ALI20240814BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G02F1/1368
G02F1/1345
G09F9/35
G09F9/30 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017395
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】尾関 芳孝
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 靖尚
【テーマコード(参考)】
2H092
2H192
5C094
【Fターム(参考)】
2H092GA14
2H092GA29
2H092GA43
2H092GA59
2H092HA04
2H092JA25
2H092JA26
2H092JA46
2H092JB56
2H092JB79
2H092KA08
2H092KA19
2H092PA01
2H092PA02
2H092PA03
2H092PA09
2H092QA09
2H192AA24
2H192BB12
2H192BB53
2H192BC31
2H192CB02
2H192CB05
2H192CB08
2H192CB37
2H192CC72
2H192EA03
2H192EA22
2H192EA43
2H192EA62
2H192FA65
2H192FA73
2H192FB02
2H192JA33
5C094AA02
5C094BA03
5C094BA43
5C094CA19
5C094FB02
5C094FB14
5C094FB15
5C094HA01
5C094HA08
(57)【要約】
【課題】表示品質が高く、酸化物半導体を有するトランジスタを画素回路に備える液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】表示装置は、基板、および基板上の複数の画素を備える。複数の画素の少なくとも一つは、駆動トランジスタ、および駆動トランジスタと電気的に接続される液晶素子を含む。液晶素子は、画素電極、電極間絶縁膜、共通電極、無機絶縁膜、の第1の配向膜、液晶層、および第2の配向膜を有する。電極間絶縁膜は、画素電極上に位置する。共通電極は、電極間絶縁膜上に位置し、画素電極と重なるスリットを有する。無機絶縁膜は、共通電極上に位置する。第1の配向膜は、無機絶縁膜上に位置する。液晶層は、第1の配向膜上に位置する。第2の配向膜は、液晶層上に位置する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、および
前記基板上の複数の画素を備え、
前記複数の画素の少なくとも一つは、
酸化物半導体を含む駆動トランジスタ、および
前記駆動トランジスタに電気的に接続される液晶素子を含み、
前記液晶素子は、
画素電極、
前記画素電極上の電極間絶縁膜、
前記電極間絶縁膜上に位置し、前記画素電極と重なるスリットを有する共通電極、
前記共通電極上の無機絶縁膜、
前記無機絶縁膜上の第1の配向膜、
前記第1の配向膜上の液晶層、および
前記液晶層上の第2の配向膜を有する、液晶表示装置。
【請求項2】
前記無機絶縁膜は、ケイ素含有無機化合物を含む、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記ケイ素含有無機化合物は、窒化ケイ素、酸化ケイ素、窒化酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素から選択される、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記無機絶縁膜は、前記スリットにおいて前記電極間絶縁膜と接する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記無機絶縁膜は、前記画素電極と重なる開口を有する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記電極間絶縁膜と前記第1の配向膜は、前記開口において互いに接する、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記複数の画素の各々において、前記共通電極は、前記電極間絶縁膜と前記無機絶縁膜によって封止される、請求項5に記載の表示装置。
【請求項8】
前記複数の画素が配置される表示領域の外側に端子をさらに含み、
前記端子は、
前記駆動トランジスタのソース電極と同層である配線、および
前記配線上に位置する前記無機絶縁膜を有し、
前記無機絶縁膜は、前記配線を露出する第3の開口を有する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記端子は、
前記配線上に位置し、前記配線と電気的に接続され、前記駆動トランジスタのドレイン電極と同一層内に存在する保護電極、および
前記保護電極上に位置し、前記共通電極と同層である接続電極をさらに有し、
前記接続電極は、前記第3の開口において前記無機絶縁膜から露出する、請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記駆動トランジスタは、
ゲート電極、
前記ゲート電極と重なり、前記酸化物半導体を含む半導体膜、
前記ゲート電極と前記半導体膜の間のゲート絶縁膜、
前記ゲート電極と前記半導体膜を覆う層間絶縁膜、および
前記半導体膜と電気的に接続し、前記層間絶縁膜に設けられるスルーホールを介して前記半導体膜と電気的に接続されるドレイン電極を有し、
前記層間絶縁膜は、前記基板の端部において前記無機絶縁膜から露出する、請求項1に記載の表示装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸化物、特にインジウムやガリウムなどの13族元素の酸化物に半導体特性が見出され、これを契機に精力的な研究開発が進められている。例えば、特許文献1に開示されているように、酸化物半導体を有するトランジスタが組み込まれた半導体デバイス、およびこれを利用する表示装置も開発されるに至っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-254950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、新規な構造を有する表示装置を提供することを課題の一つとする。例えば、本発明の実施形態の一つは、表示品質が高く、酸化物半導体を有するトランジスタを画素回路に備える液晶表示装置を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、表示装置である。この表示装置は、基板、および基板上の複数の画素を備える。複数の画素の少なくとも一つは、駆動トランジスタ、および駆動トランジスタと電気的に接続される液晶素子を含む。液晶素子は、画素電極、電極間絶縁膜、共通電極、無機絶縁膜、の第1の配向膜、液晶層、および第2の配向膜を有する。電極間絶縁膜は、画素電極上に位置する。共通電極は、電極間絶縁膜上に位置し、画素電極と重なるスリットを有する。無機絶縁膜は、共通電極上に位置する。第1の配向膜は、無機絶縁膜上に位置する。液晶層は、第1の配向膜上に位置する。第2の配向膜は、液晶層上に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態の一つに係る表示装置の模式的展開斜視図。
図2】本発明の実施形態の一つに係る表示装置の模式的上面図。
図3】本発明の実施形態の一つに係る表示装置の模式的端面図。
図4】本発明の実施形態の一つに係る表示装置の模式的端面図。
図5】本発明の実施形態の一つに係る表示装置の模式的端面図。
図6A】本発明の実施形態の一つに係る表示装置の模式的上面図。
図6B】本発明の実施形態の一つに係る表示装置の模式的端面図。
図7】本発明の実施形態の一つに係る表示装置の模式的端面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の各実施形態について、図面などを参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0008】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0009】
本明細書および請求項において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0010】
本明細書および請求項において、「ある構造体が他の構造体から露出する」という表現は、ある構造体の一部が他の構造体によって覆われていない態様を意味し、この他の構造体によって覆われていない部分は、さらに別の構造体によって覆われる態様も含む。また、この表現で表される態様は、ある構造体が他の構造体と接していない態様も含む。
【0011】
本発明の実施形態において、複数の構成が同一の工程で同時に形成された場合、これらは同一の層構造、同一の材料、同一の組成を有する。したがって、これら複数の構成は同層であると定義する。
【0012】
1.表示装置の全体構成
本発明の実施形態の一つである表示装置100の模式的展開斜視図を図1に示す。表示装置100は液晶表示装置であり、種々の電子デバイスの表示装置として機能することができる。例えば、仮想現実(VR)ゴーグルなどの超小型表示装置、スマートフォンやタブレットなどの携帯型通信端末に使用される中小型表示装置、デスクトップ型コンピュータに接続されるモニタやテレビなどの中大型表示装置、あるいはデジタルサイネージなどの大型表示装置として表示装置100を利用することができる。
【0013】
表示装置100は、アレイ基板102と対向基板104を備え、これらの間にパターニングされた種々の絶縁膜、半導体膜、導電膜が積層される。これらの絶縁膜、半導体膜、導電膜を適宜組み合わせることにより、複数の画素120の画素回路が構成される。複数の画素120が設けられる領域は表示領域DRと呼ばれる。表示領域DRを囲む領域は額縁領域FRと呼ばれ、額縁領域FRには、パターニングされた種々の絶縁膜、半導体膜、導電膜によって画素120を制御するための走査線駆動回路106の他、種々の端子(パッド)が構成される。端子としては、例えば、信号線駆動回路を内蔵したICチップ(図示しない)を接続するためのCOG接続パッド108、対向基板104上に設けられる帯電防止膜(図1では示されない)に電位を供給するためのGND接続パッド112、表示装置100を検査するための検査パッド114、表示装置100を駆動するための駆動信号を供給するためのFOGパッド110などが挙げられる。なお、信号線駆動回路の全体または一部をアレイ基板102上に形成してもよい。FOGパッド110には、フレキシブル印刷回路(FPC)基板を介し、図示しない外部回路が接続される。
【0014】
対向基板104は、複数の画素120や走査線駆動回路106を覆い、端子を露出するようにアレイ基板102上に設けられ、図1では示されないシール材によってアレイ基板102に固定される。
【0015】
駆動信号に基づいて走査線駆動回路106と信号線駆動回路が画素120を制御するための制御信号(ゲート信号や映像信号、初期化信号など)を生成し、この制御信号が画素120に供給される。制御信号に従って画素120を動作することで、図示しないバックライトからの光の階調が画素120単位で制御され、その結果、表示領域DRに映像を表示することができる。なお、表示装置100の外形や表示領域DRの形状は四角形に限られず、多角形状、角部をラウンドさせた多角形状、円形状、楕円形状など、表示装置100が搭載される電子デバイスが要求する任意の形状を有することができる。以下、表示装置100の各構成について詳述する。
【0016】
2.基板と対向基板
アレイ基板102と対向基板104は、表示装置100に対して物理的強度を提供するとともに、表示装置100としての機能を発現するための画素120や走査線駆動回路106などの種々の構成を配置するための面を提供する。アレイ基板102と対向基板104は、バックライトからの光、すなわち可視光を透過するように構成され、例えばガラス、石英、あるいはポリイミドやポリアミド、ポリカーボネートなどの高分子を含む。アレイ基板102および/または対向基板104は、可撓性を有してもよい。
【0017】
3.画素
表示領域DRを構成する画素120の模式的上面図を図2に、図2の鎖線A-A´に沿った端面の模式図を図3に示す。画素120の配列に制約はなく、ストライプ配列やペンタイル配列、S-ストライプ配列、ダイアモンドペンタイル配列などの種々の配列を採用することができる。
【0018】
各画素120には、液晶素子150、および液晶素子150と電気的に接続され、制御信号に基づいて液晶素子150を制御する画素回路が設けられる。制御信号は、走査線駆動回路106から延伸する走査線136、および信号線駆動回路から延伸する信号線144を介して供給される(図2参照。)。走査線136と信号線144の配置に特段の制約はなく、公知の配置を適宜適用することができる。例えば図2に示すように、複数の走査線136をほぼ平行に配置し、屈曲構造を有する複数の信号線144を走査線136と交差するように配置してもよい。図示しないが、屈曲構造を持たず、直線状に延伸する信号線144を配置してもよい。
【0019】
(1)画素回路
画素回路は、少なくとも一または複数のトランジスタを備えるとともに、一または複数の容量素子をさらに備えても構わない。図3には、画素回路の構成として、液晶素子150と電気的に接続され、かつ、映像信号に対応する電位を液晶素子150に供給する駆動トランジスタ130が示されている。駆動トランジスタ130は、後述する走査線駆動回路106を構成する回路トランジスタ190と異なり、酸化物半導体を含む半導体膜132を有する。具体的には、駆動トランジスタ130は、半導体膜132、半導体膜132と重なり、走査線136を構成するゲート電極136a、半導体膜132とゲート電極136aの間に配置されるゲート絶縁膜134、半導体膜132とゲート電極136aを覆う第2の層間絶縁膜138と第3の層間絶縁膜140、第3の層間絶縁膜140からゲート絶縁膜134までを貫通して形成されるスルーホールを介して半導体膜132と電気的に接続されるドレイン電極142、および、第2の層間絶縁膜138およびゲート絶縁膜134を貫通して形成されるスルーホールを介して半導体膜132と電気的に接続されるソース電極144aを含む。ソース電極144aは信号線144を兼ねる。図3に示す駆動トランジスタ130は、所謂トップゲート型のトランジスタであるが、駆動トランジスタ130は、ボトムゲート型のトランジスタでもよく、半導体膜132の上下の両方にゲート電極を有してもよい。なお、各画素回路に複数のトランジスタが設けられる場合、駆動トランジスタ130以外のトランジスタの半導体膜は、酸化物半導体を含んでもよく、あるいはケイ素を含んでもよい。
【0020】
また、任意の構成として、表示装置100は、各画素回路の下に遮光膜122を有してもよい。本実施形態の遮光膜122は、アレイ基板102上に設けられて駆動トランジスタ130と重なる。遮光膜122を配置することで、アレイ基板下方に設けられるバックライト(図示省略)からの光が駆動トランジスタ130に入射されることを防ぐことができる。この結果、光による駆動トランジスタ130の特性変化や劣化を防止することができる。遮光膜122は、例えばモリブデンやクロム、ニッケル、ハフニウム、タングステン、チタン、銅、アルミニウムなどの金属、またはこれらの合金を含む単層膜或いは複層膜として形成することができる。
【0021】
半導体膜132を構成する酸化物半導体は、インジウムやガリウムなどの第13族元素の酸化物から選択することができる。酸化物半導体は異なる複数の第13族元素を含有してもよく、一例としてインジウム-ガリウム酸化物(IGO)が例示される。酸化物半導体はさらに12族元素を含んでもよい。12族元素を含む典型的な酸化物半導体としては、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO)が挙げられる。半導体膜132はその他の元素を含むこともでき、スズなどの14族元素、チタンやジリコニウムなどの4族元素を含んでもよい。
【0022】
走査線136や信号線144、ドレイン電極142なども、例えばモリブデンやクロム、タングステン、チタン、銅、アルミニウム、ハフニウム、ニッケルなどの金属、またはこれらの合金を含むように構成される。走査線136や信号線144は、これら合金または単体の金属層の単層または複層により構成されていても構わない。ゲート絶縁膜134、第2の層間絶縁膜138、第3の層間絶縁膜140の各々は、無機化合物を含む単層膜または複層膜として構成することができる。無機化合物としては、窒化ケイ素や酸化ケイ素、窒化酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素などのケイ素含有無機化合物が典型的な例として例示される。あるいは、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化アルミニウムなどのアルミニウム含有無機化合物を上記無機化合物として用いてもよい。
【0023】
ドレイン電極142や第3の層間絶縁膜140上には、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂などの高分子を含む平坦化膜146が設けられる。平坦化膜146は、画素回路に起因する凹凸を緩和し、比較的平坦な上面を与えことができるため、このような平坦な面上に液晶素子150を設けることが可能となる。
【0024】
(2)液晶素子
液晶素子150は透過型の液晶素子であり、図3に示すように、基本的な構成として、画素電極152、画素電極152上の電極間絶縁膜162、電極間絶縁膜162上の共通電極154、共通電極上154上の無機絶縁膜180、無機絶縁膜180上の第1の配向膜156、第1の配向膜156上の液晶層158、液晶層158上の第2の配向膜160、および液晶層158の厚さを維持するためのスペーサ164を有する。図3から理解されるように、液晶素子150は、所謂FFS(Fringe Field Switching)方式の液晶素子であり、液晶層158内にあってホモジニアス配向された液晶分子の向きを横方向の電界を加ることによって変化させ、液晶分子の向きの変化の度合いに応じて階調制御が行われる。
【0025】
画素電極152は、平坦化膜146に設けられるスルーホールを介して駆動トランジスタ130のドレイン電極142と電気的に接続される。これにより、映像信号に対応する電位は、信号線144と駆動トランジスタ130を介して画素電極152に供給される。なお、表示装置100は、所謂反転駆動方式で駆動される。このため、映像信号に対応する電位は、共通電極154に印加される定電位を基準としてフレームごとに極性が反転する。
【0026】
また、画素電極152は、バックライトからの光を透過させるため、可視光を透過する。したがって、画素電極152は、例えばインジウム-スズ酸化物(ITO)やインジウム-亜鉛酸化物(IZO)などの透光性導電性酸化物を含む。図2に示すように、画素電極152は画素120ごとに設けられる。画素電極152は、図2に示すように、信号線144に沿って屈曲形状を有してもよく、図示しないが、屈曲構造を持たない矩形形状を有してもよい。
【0027】
電極間絶縁膜162は、画素電極152と共通電極154を絶縁する。電極間絶縁膜162は、例えばケイ素含有無機化合物またはアルミニウム含有無機化合物を含む単層膜または複層膜にて構成される。なお、電極間絶縁膜162を介して画素電極152と容量電極(図示しない)とを対向させることで各画素回路内に保持容量を形成してもよい。
【0028】
共通電極154は、電極間絶縁膜162を介して画素電極152と対向する。ここで、共通電極154は、複数または全ての画素120に亘って設けられる。すなわち、共通電極154は、複数または全ての画素120に共有される。共通電極154も可視光を透過するよう、ITOやIZOなどの透光性導電性酸化物を含む。さらに、図2に示すように、共通電極154は、画素電極152と重なるスリット154aを有しており、画素電極152や電極間絶縁膜162がスリット154aから露出する。各画素120に設けられるスリット154aの数に制約はない。したがって、各画素120においてスリット154aは一本でも複数本でもよい。また、スリット154aの長手方向は、走査線136と直交してもよく、あるいは図2に示すように、走査線136(または、信号線144に沿った画素120の配列方向)に対して傾いてもよい。例えば、スリット154aの長手方向は、走査線136が延伸する方向から75°以上90°未満の角度で傾いてもよい。上述したように、共通電極154には、所定の定電位が供給される。共通電極154に印加される電位は、接地電位(0V)でもよいが、共通電極154、電極間絶縁膜162、画素電極152によって形成される容量など、画素120内の種々の寄生容量の影響を考慮し、接地電位に対して負の電位でもよい。例えば、共通電極154に印加される電位は、-1.0V以上-0.1V以下、典型的には-0.5Vでもよい。
【0029】
共通電極154を覆う無機絶縁膜180は、上述したケイ素含有無機化合物を含む単層膜または複層膜で構成される。共通電極154のスリット154aにおいて、無機絶縁膜180は電極間絶縁膜162と接する。すなわち、無機絶縁膜180は、スリット154aの周縁部をも覆う。無機絶縁膜180の厚さは、ゲート絶縁膜134や第2の層間絶縁膜138、第3の層間絶縁膜140、第1の配向膜156、第2の配向膜160の厚さよりも小さく設定することができる。例えば、ゲート絶縁膜134の厚さは80nm以上120nm以下の範囲、第2の層間絶縁膜138と第3の層間絶縁膜140の厚さを300nm以上500nm以下の範囲で設定し、無機絶縁膜180の厚さを20nm以上70nm以下の範囲で設定してもよい。この範囲の厚さ(例えば50nmの厚さ)を無機絶縁膜180において採用することで、無機絶縁膜180は他の絶縁膜と比して著しく薄いものとなり、これによって、無機絶縁膜180がバックライトからの光を吸収してしまうことを可及的に抑制し、かつ、第1の配向膜156と共通電極間154の間の電荷移動を防止する。その結果、共通電極154の電位の意図しないシフト(Vcomシフト)を防止することができる。無機絶縁膜180によるVcomシフトの防止については後述する。
【0030】
無機絶縁膜180は、各画素120内において電極間絶縁膜162または画素電極152の全体を覆う必要は無く、例えば図4に示すように、共通電極154のスリット154a(図2参照。)と重なる開口180aを有してもよい。この場合、電極間絶縁膜162と第1の配向膜156は、開口180aにおいて互いに接する。ただし、Vcomシフトを防止するため、図4に示すように、各画素120において、共通電極154のスリット154aの周縁部の全体を覆うように開口180aを設け、共通電極154を電極間絶縁膜162と無機絶縁膜180で封止することが好ましい。
【0031】
第1の配向膜156と第2の配向膜160は、液晶層158を構成する液晶分子の配向方向を制御するために設けられ、いずれもポリイミドやポリエステルなどの高分子を含む。第1の配向膜156と第2の配向膜160は、インクジェット法やスピンコート法、印刷法、ディップコーティング法などの湿式成膜法を利用することで形成され、その表面はラビング処理される。あるいは、第1の配向膜156と第2の配向膜160は、光配向処理によって形成されてもよい。各画素120内において後述する遮光膜166と重ならない領域では、第1の配向膜156と第2の配向膜160の厚さは、例えば70nm以上90nm以下であり、無機絶縁膜180よりも大きな厚さで形成される。第1の配向膜156と第2の配向膜160は、液晶分子を配向する方向が互いに平行になるように設けられる。
【0032】
スペーサ164は、アクリル樹脂などの樹脂を含み、例えば隣接する画素120の間に設けられる。図3に示すスペーサ164は、無機絶縁膜180上に固定されて第1の配向膜156で覆われるが、例えば球状のスペーサを液晶層158中に分散することで液晶層158の厚さを維持してもよい。この場合、スペーサは、第1の配向膜156と第2の配向膜160の間に配置される。
【0033】
(3)その他の構成
表示装置100は、任意の構成として補助配線148を有してもよい。補助配線148は、共通電極154内での電圧降下を抑制するため、共通電極154に接触して設けられ、例えばアルミニウムやチタン、タングステン、モリブデン、銅、ニッケル、タンタルなどの金属またはこれらの合金を含む単層膜または複層膜により形成される。図3に示す例では、補助配線148は共通電極154の直下に設けられるが、補助配線148は共通電極154の直上に配置してもよい。補助配線148が設けられる位置に制約はないが、好ましくは、図3に示すように、液晶層158によって階調が制御された光を遮蔽しないよう、遮光膜122、平坦化膜146に設けられるスルーホール、または駆動トランジスタ130と重なり、走査線136や信号線144と平行に配置される。
【0034】
対向基板104には、液晶素子150を透過する光の一部を吸収して色情報を与えるカラーフィルタ168や、不要な光を遮蔽する遮光膜(ブラックマトリクス)166が設けられる。カラーフィルタ168は、隣接する画素120において吸収特性が異なるように設けられる。遮光膜166は、黒色またはそれに準じる色の顔料を含む樹脂で構成することができ、遮光膜122や平坦化膜146のスルーホール、駆動トランジスタ130などと重なるように配置することが好ましい。カラーフィルタ168を通過する光を透過させつつ不要な光を遮蔽するため、遮光膜166は、隣接する画素120間を覆うように設けられる。したがって、遮光膜166は複数の画素120と重なる複数の開口を有する膜として形成される。
【0035】
さらに、任意の構成として、カラーフィルタ168や遮光膜166を覆うオーバーコート170を対向基板104に設けてもよい。オーバーコート170もケイ素含有無機化合物を含む一つまたは複数の膜で構成してもよく、あるいはアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミドなどの高分子を含むように形成してもよい。オーバーコート170を設けることで、対向基板104やカラーフィルタ168、遮光膜166などに含まれる不純物が液晶素子150まで浸透してしまうことを抑制することができるとともに、カラーフィルタ168や遮光膜166によって形成される凹凸を緩和して比較的平坦な面を与えることができる。このため、オーバーコート170上に平坦な第2の配向膜160を形成することができる。
【0036】
さらに、任意の構成として、表示装置100は対向基板104上に導電性を有する帯電防止膜174を備えてもよい。帯電防止膜174もITOやIZOなどの透光性導電性酸化物を含む。帯電防止膜174は、図示しない引回し配線により、GND接続パッド112に電気的に接続される。帯電防止膜174を設けることで、外部電界を遮蔽し、液晶素子150がその影響を受けてしまうことを防止することができる。
【0037】
4.額縁領域の構造
(1)表示装置端部の構造
上述したように、額縁領域FRには、走査線駆動回路106が設けられる。額縁領域FRの端面の模式図を図5に示す。図5に示すように、額縁領域FRに設けられるシール材172によってアレイ基板102と対向基板104が互いに固定され、アレイ基板102、対向基板104、およびシール材172によって形成される空間に液晶層158が封止される。
【0038】
走査線駆動回路106は、複数の回路トランジスタ190や図示しない容量素子が適宜接続されることで構成される。回路トランジスタ190の構成も任意に決定でき、例えば図5に示すように、ゲート電極192、ゲート電極192と重なる半導体膜194、ゲート電極192と半導体膜194の間のゲート絶縁膜124、ゲート電極192と半導体膜194を覆う第1の層間絶縁膜126、および第1の層間絶縁膜126とゲート絶縁膜134に設けられるスルーホールを介して半導体膜194と電気的に接続される一対の端子196、198などによって構成される。一対の端子196、198は、第2の層間絶縁膜138に設けられるスルーホールにおいて配線200と電気的に接続されてもよい。回路トランジスタ190の半導体膜194は、ケイ素を含むように構成することができ、これにより、高速駆動可能な走査線駆動回路106を構成することができる。ゲート絶縁膜124や第1の層間絶縁膜126は、上述したケイ素含有無機化合物またはアルミニウム含有無機化合物を用いて形成すればよい。また、ゲート電極192や一対の端子196、198、配線200も、アルミニウムやチタン、タングステン、モリブデン、銅、ニッケル、タンタルなどの金属またはこれらの合金を含むように形成すればよい。
【0039】
図示しないが、マザーガラスと呼ばれる一対の大型基板をそれぞれアレイ基板102と対向基板104として用いて複数の表示装置100が同時に形成され、その後、当該大型基板を個片に分断することで各表示装置100が得られる。ここで、分断線(スクライブラインともいう)上に位置することとなる各表示装置100の端部では、分断を容易にするため、平坦化膜146やその上に設けられる構成(電極間絶縁膜162、無機絶縁膜180、第1の配向膜156、シール材172など)は、分断線と重ならないようにパターニングされる。これにより、表示装置100の周縁部では第3の層間絶縁膜140が露出している。したがって、例えば平坦化膜146の側面やシール材172の側面は、アレイ基板102や対向基板104、第1の層間絶縁膜126、第2の層間絶縁膜138、第3の層間絶縁膜140の側面よりも内側(表示領域DR側)に位置する。
【0040】
(2)端子の構造
上述したように、額縁領域FRには、走査線駆動回路106に加え、COG接続パッド108、GND接続パッド112、検査パッド114、FOGパッド110を含む種々の端子も形成され、これらの端子を介して駆動信号の供給や他の構成(例えば、帯電防止膜や検査用の外部回路)との電気的接続が行われる。このため、各端子においては、電気的接続を確保するため、無機絶縁膜180に開口が設けられる。具体的な例として、FOGパッド110の模式的上面図を図6Aに、図6Aの鎖線B-B´に沿った端面の模式図を図6Bに示す。
【0041】
これらの図に示すように、FOGパッド110は、駆動信号を信号線駆動回路に供給するための配線210を有する。配線210は、ソース電極144aを構成する信号線144と同層である。ソース電極144aの端部は第3の層間絶縁膜140によって覆われ、第3の層間絶縁膜140から露出した部分と接するように、第3の層間絶縁膜140上に保護電極212が設けられる。保護電極212は、ドレイン電極142と同層であり、ITOやIZOなどの透光性導電性酸化物を含む。このため、保護電極212を形成することで、配線210形成後のプロセスにおいて配線210の表面の酸化を防止することができ、接触抵抗の増大を防止することができる。
【0042】
保護電極212上には、保護電極212の端部を覆い、保護電極212の一部を露出するように平坦化膜146が設けられる。平坦化膜146は配線210と保護電極212と重なる開口を有し、この開口を介し、画素電極152と同層である第1の接続電極214が保護電極212と電気的に接続される。同様に、第1の接続電極214の端部を覆い、第1の接続電極214の一部を露出するように電極間絶縁膜162が設けられる。電極間絶縁膜162も第1の接続電極214を露出する開口を有し、この開口を介し、共通電極154と同層である第2の接続電極216が第1の接続電極214と電気的に接続される。また、無機絶縁膜180は、第1の接続電極214の端部を覆い、配線210、保護電極212、第1の接続電極214、および第2の接続電極216と重なる開口180bを有するように形成される。このため、開口180bから第2の接続電極216の一部が露出し、この露出した部分において電気的接続が行われる。
【0043】
なお、図7に示すように、FOGパッド110の周辺には平坦化膜146を設けず、第3の層間絶縁膜140と配線210に接する保護電極212を第3の層間絶縁膜140上に設けてもよい。保護電極212上には、第1の接続電極214、電極間絶縁膜162、第2の接続電極216、無機絶縁膜180が順次形成され、無機絶縁膜180の開口180bにおいて電気的接続が行われる。
【0044】
5.Vcomシフトの防止
上述したように、表示装置100はFFS方式の透過型液晶表示装置であり、画素単位で液晶層158内の液晶分子の配向を制御することにより、バックライトから出射されて液晶層を通過する光の階調が画素単位で制御される。このため、表示装置100の駆動時には常に第1の配向膜156や第2の配向膜160、カラーフィルタ168、遮光膜166などがバックライトからの光に曝され、その結果、これらの膜には光励起によってホールと電子が発生する。ここで、無機絶縁膜180を配置しない表示装置にあっては、第1の配向膜156は共通電極154と接するが、この状態で駆動トランジスタ130をオンにすると、共通電極154から第1の配向膜156に電子が注入される。これにより、第1の配向膜156内では再結合によってホールが一部消失して電子リッチな状態となり、第1の配向膜156内の電荷バランスが崩れる。
【0045】
その後、所定期間経過後に駆動トランジスタ130がオフ状態となる。ここで、例えば駆動トランジスタのオフ電流が比較的大きい場合には、オフ状態であっても画素電極152や半導体膜132を介して一部の電荷が移動するため、第1の配向膜156における電荷バランスは速やかに回復する。しかしながら、本実施形態のように酸化物半導体を半導体膜132に含む駆動トランジスタ130のオフ電流は極めて低く、無視できる程度である。このため、第1の配向膜156における電荷バランスの回復は遅く、電荷のアンバランスな状態が維持される。このような現象が発生すると、駆動トランジスタ130がオンとなる度に電荷の偏りが蓄積し、これが他の層の分極を助長してしまうことが想定し得る。例えば、電荷の偏りが対向基板104側の遮光膜166の分極にまで影響を及ぼし、遮光膜166の分極がさらにアレイ基板102側の共通電極の電位シフト(Vcomシフト)を促してしまうことが想定し得る。この現象は、特に誘電率の高い遮光膜166が存在する場合に顕著となりやすい。このようなVcomシフトはフリッカー発生の原因となるため、表示品質が低下する。
【0046】
これに対し、本発明の実施形態の一つに係る表示装置100では、共通電極154と第1の配向膜156との間に無機絶縁膜180が設けられるため、駆動トランジスタ130がオン状態になっても共通電極154から第1の配向膜156への電子注入が生じない。このため、駆動トランジスタ130のオフ電流は無視できる程度であるにも関わらず、第1の配向膜156での再結合が抑制され、結果としてVcomシフトが抑制される。したがって、本発明の実施形態を適用することで、フリッカーの発生が抑制された表示品質が高い液晶表示装置を提供することができる。
【0047】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0048】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0049】
100:表示装置、102:アレイ基板、104:対向基板、106:走査線駆動回路、108:COG接続パッド、110:FOGパッド、112:GND接続パッド、114:検査パッド、120:画素、122:遮光膜、124:ゲート絶縁膜、126:第1の層間絶縁膜、130:駆動トランジスタ、132:半導体膜、134:ゲート絶縁膜、136:走査線、136a:ゲート電極、138:第2の層間絶縁膜、140:第3の層間絶縁膜、142:ドレイン電極、144:信号線、144a:ソース電極、146:平坦化膜、148:補助配線、150:液晶素子、152:画素電極、154:共通電極、154a:スリット、156:第1の配向膜、158:液晶層、160:第2の配向膜、162:電極間絶縁膜、164:スペーサ、166:遮光膜、168:カラーフィルタ、170:オーバーコート、172:シール材、174:帯電防止膜、180:無機絶縁膜、180a:開口、180b:開口、190:回路トランジスタ、192:ゲート電極、194:半導体膜、196:端子、198:端子、200:配線、210:配線、212:保護電極、214:第1の接続電極、216:第2の接続電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7