(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112431
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】車両用内装トリム固定構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20240814BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20240814BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20240814BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B60J5/00 501B
F16B19/00 B
F16B5/06 Q
F16B5/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017421
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】大野 晋
【テーマコード(参考)】
3D023
3J001
3J036
【Fターム(参考)】
3D023BB08
3D023BC01
3D023BD15
3D023BE17
3D023BE36
3J001FA03
3J001GA06
3J001GC09
3J001HA02
3J001JC03
3J001JD02
3J001JD33
3J001KA05
3J001KA12
3J001KB01
3J036AA06
3J036BB03
3J036GA03
(57)【要約】
【課題】車体パネルを覆う2つの内装トリム同士をクリップ固定する箇所と、一方の内装トリムを車体パネルにクリップ固定する箇所とを近接させる。
【解決手段】バックドアパネル106の車内側は2つの内装トリムすなわちワイパカバー102とバックドアトリム104とで覆われている。固定部材120は、バックドアパネル106に固定された第1クリップ122が取り付けられた第1天板124およびそこから車内側に延びている第1脚部126を含む第1櫓120Aと、第1脚部126を支持する第2天板134およびそこから車内側に延びてワイパカバー102に到達している第2脚部136を含む第2櫓120Bとを有する。第2天板134はワイパカバー102とバックドアトリム104とを固定する第2クリップを覆っている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の車体パネルと、
前記車体パネルの車内側を覆う第1内装トリムと、
前記第1内装トリムの車内側に一部が重なった状態で該第1内装トリムとともに前記車体パネルの車内側を覆う第2内装トリムと、
前記車体パネルと前記第1内装トリムとを固定する固定部材とを備える車両用内装トリム固定構造において、
前記固定部材は、
前記車体パネルに固定された第1クリップが取り付けられた第1天板および該第1天板から車内側に延びている1つ以上の第1脚部を含む第1櫓と、
前記第1櫓の第1脚部を支持する第2天板であって前記第1内装トリムと前記第2内装トリムとを固定する第2クリップを覆っている第2天板および該第2天板から車内側に延びて前記第1内装トリムに到達している1つ以上の第2脚部を含む第2櫓とを有することを特徴とする車両用内装トリム固定構造。
【請求項2】
前記固定部材はさらに、前記第2櫓の第2天板から車外側に延びて前記第1クリップを支持する複数のクリップ支持部を有し、
前記複数のクリップ支持部は、前記第1クリップの軸線を両側から挟むように配置された第1クリップ支持部および第2クリップ支持部を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用内装トリム固定構造。
【請求項3】
前記固定部材はさらに、前記第2櫓の第2天板から車内側に延びて前記第1内装トリムに到達している補強リブを有し、
前記補強リブは、前記第1クリップの軸線を基準として前記第2クリップの軸線とは反対側に配置されていて、さらに、車内側から車外側に向かって見たときに前記クリップ支持部の1つに重なっていることを特徴とする請求項2に記載の車両用内装トリム固定構造。
【請求項4】
前記車体パネルはバックドアパネルであり、
前記第1内装トリムは、車内の乗員からワイパを隠蔽するワイパカバーであり、
前記第2内装トリムは、前記ワイパカバーの下側に位置するバックドアトリムであることを特徴とする請求項3に記載の車両用内装トリム固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装トリム固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載の車両に見られるように、車体の一部であるバックドアを構成するインナパネルの車内側は、樹脂製のバックドアトリム(内装トリム)によって覆われている。このバックドアトリムの上部を、単にバックドアの車内側を覆う内装トリムではなく、例えば車内の乗員からワイパを隠蔽するワイパカバーとして用いたいという要請がある。
【0003】
しかしバックドアトリムの上部をワイパカバーとすることは、バックドアトリムの形状が複雑化してしまうことから、高い成形技術が必要となる。かかる複雑な形状の、しかも大型の樹脂部品を一体成形すれば、寸法誤差が生じやすいし、成形した樹脂部品を組み付ける作業も容易ではなくなってしまう。よって、一体のバックドアトリムにワイパカバーを兼務させるのは得策ではない。
【0004】
そこで、バックドアトリムとは別にワイパカバーを成形し、これら2つの内装トリムでバックドアの車内側を覆う方法が考えられる。
【0005】
その場合、内装トリム同士(バックドアトリムおよびワイパカバー)をクリップ固定するとともに、一方の内装トリムを車体(バックドアパネル)に固定することも必要となる。バックドアトリムは平板に近い形状を有するため、これをワイパカバーにクリップ固定する場合の固定方向は同一となる。このように同一の固定方向でクリップ固定する場合、固定箇所が少ないと、バックドアトリムがワイパカバーから外れてしまうおそれがあるため、多くのクリップ固定箇所が必要となる。
【0006】
その結果、(1)バックドアパネルとワイパカバーとの固定箇所、(2)ワイパカバーとバックドアトリムの固定箇所が近接する可能性が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
クリップは、密着した2つの部材を貫通することで2つの部材を互いに固定するが、そのとき、クリップの両端は、それぞれの部材の表面に突出することとなる。しかし、かかるクリップの近傍で、2つの部材のうちいずれかに、別のクリップを用いて第3の部材を固定することは困難である。2つの部材は1つ目のクリップによって既に密着固定されていて、両者の間には別のクリップの端部が入り込む余地が無いためである。よって、他のクリップは、最初のクリップから離間して配置しなければならないというレイアウト上の制約が生じる。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑み、車体パネルを覆う2つの内装トリム同士をクリップ固定する箇所と、一方の内装トリムを車体パネルにクリップ固定する箇所とを近接させることが可能な車両用内装トリム固定構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、所定の車体パネルと、車体パネルの車内側を覆う第1内装トリムと、第1内装トリムの車内側に一部が重なった状態で第1内装トリムとともに車体パネルの車内側を覆う第2内装トリムと、車体パネルと第1内装トリムとを固定する固定部材とを備える車両用内装トリム固定構造において、固定部材は、車体パネルに固定された第1クリップが取り付けられた第1天板および第1天板から車内側に延びている1つ以上の第1脚部を含む第1櫓と、第1櫓の第1脚部を支持する第2天板であって第1内装トリムと第2内装トリムとを固定する第2クリップを覆っている第2天板および第2天板から車内側に延びて第1内装トリムに到達している1つ以上の第2脚部を含む第2櫓とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車体パネルを覆う2つの内装トリム同士をクリップ固定する箇所と、一方の内装トリムを車体パネルにクリップ固定する箇所とを近接させることが可能な車両用内装トリム固定構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による車両用内装トリム固定構造の実施例を適用した車両のバックドアの斜視図である。
【
図2】
図1のワイパカバーおよびバックドアトリムを取り外したバックドアの斜視図である。
【
図3】
図1のワイパカバーおよびバックドアトリムのみを車両後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態は、所定の車体パネルと、車体パネルの車内側を覆う第1内装トリムと、第1内装トリムの車内側に一部が重なった状態で第1内装トリムとともに車体パネルの車内側を覆う第2内装トリムと、車体パネルと第1内装トリムとを固定する固定部材とを備える車両用内装トリム固定構造において、固定部材は、車体パネルに固定された第1クリップが取り付けられた第1天板および第1天板から車内側に延びている1つ以上の第1脚部を含む第1櫓と、第1櫓の第1脚部を支持する第2天板であって第1内装トリムと第2内装トリムとを固定する第2クリップを覆っている第2天板および第2天板から車内側に延びて第1内装トリムに到達している1つ以上の第2脚部を含む第2櫓とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、第1クリップの車内側の端部と、第2クリップの車外側の端部とを、それぞれ、第1櫓・第2櫓の有する空間に突出させることができる。そのため、第1クリップと第2クリップとを近接して配置することができる。例えば、車内側から車外側に向かって見たときに両クリップが重なるほど両クリップが互いに近接していても、各クリップの端部は別の空間に突出しているから、両クリップは干渉することなく、それぞれの固定機能を発揮することができる。すなわち第1クリップと第2クリップにはレイアウト上の制限は生じない。
【0015】
また本発明によれば、第1櫓・第2櫓を有する固定部材が第1クリップ・第2クリップに対する補強リブの役割を果たす。そのため、従来であれば第1クリップ・第2クリップが挿通されている貫通孔の周辺にフランジやリブといった補強材を設ける必要があったところ、そのような補強材は不要である。
【0016】
上記の固定部材はさらに、第2櫓の第2天板から車外側に延びて第1クリップを支持する複数のクリップ支持部を有し、複数のクリップ支持部は、第1クリップの軸線を両側から挟むように配置された第1クリップ支持部および第2クリップ支持部を含むとよい。
【0017】
上記構成によれば、第1クリップが第1天板に設けられた切り欠きから挿し込まれて第1天板の貫通孔に取り付けられる構成とした場合、複数のクリップ支持部は、第1クリップを第1天板に取り付ける際のガイドとなる。なおクリップ支持部の数が1つであればガイドとはなりにくいので、複数が望ましい。また複数のクリップ支持部を設けることにより、固定部材全体の剛性が補強される効果もある。さらに、第1クリップの軸線を両側から挟むように配置された第1クリップ支持部および第2クリップ支持部は第1クリップを安定的に支持するため、車体パネルと第1内装トリムとの固定がより堅固になる。
【0018】
上記の固定部材はさらに、第2櫓の第2天板から車内側に延びて第1内装トリムに到達している補強リブを有し、補強リブは、第1クリップの軸線を基準として第2クリップの軸線とは反対側に配置されていて、さらに、車内側から車外側に向かって見たときにクリップ支持部の1つに重なっているとよい。
【0019】
かかる構成によれば、上記の補強リブは、固定部材の第2櫓を補強し、クリップ支持部の1つと重なることで第1櫓も補強する。これにより固定部材は、車内側または車外側から作用する力に対して潰れることなく、より高い剛性を有することとなる。
【0020】
上記の車体パネルはバックドアパネルとしてよく、第1内装トリムは、車内の乗員からワイパを隠蔽するワイパカバーとしてよく、第2内装トリムは、ワイパカバーの下側に位置するバックドアトリムとしてよい。
【0021】
バックドアトリムは平板に近い形状を有するため、これをワイパカバーにクリップ固定する場合のクリップ固定方向は同一となる。このように同一方向に固定する場合、固定箇所が少ないと、バックドアトリムは外れてしまうおそれがあるため、多くのクリップ固定箇所が必要となる。しかし本発明によれば、車体パネルとワイパカバーとを固定する第1クリップと、バックドアトリムとワイパカバーとを固定する第2クリップとの位置が近接しても、既に述べたように、問題なく両者が共存可能となる。すなわち固定箇所のレイアウト性が向上する。
【実施例0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
図1は、本発明による車両用内装トリム固定構造の実施例を適用した車両のバックドアの斜視図である。
図1その他のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で示す。
【0024】
(ワイパカバーとバックドアトリム)
図1は車内側から見たバックドア100を示している。バックドア100の車内側は樹脂製のワイパカバー(第1内装トリム)102で覆われていて、これは、車内の乗員からワイパ(図示省略)を隠蔽する役割を果たす。バックドア100の車内側はまた、ワイパカバー102の下側に位置する樹脂製のバックドアトリム(第2内装トリム)104でも覆われている。
図1に示すように、バックドアトリム104の上縁は、ワイパカバー102の車内側に重なっている。
【0025】
図2は
図1のワイパカバー102およびバックドアトリム104を取り外したバックドア100の斜視図である。
図2に示すように、ワイパカバー102およびバックドアトリム104が覆っているのは金属製のバックドアパネル(車体パネル)106である。
【0026】
図1のバックドアトリム104は平板に近い形状を有するため、これをワイパカバー102にクリップ固定する場合のクリップ固定方向は、車両前後方向という同一の方向となる。このように同一方向のクリップ固定を行う場合、固定箇所を多く設けないと、バックドアトリム104はワイパカバー102から外れてしまうおそれがある。そこで
図1に示すように、バックドアトリム104の上縁に沿った多くのクリップ固定箇所(貫通孔)が必要となる。
図1では代表して2つの貫通孔にのみ符号108、110を付与している。
【0027】
図3は
図1のワイパカバー102およびバックドアトリム104のみを車両後方から見た斜視図である。ワイパカバー102およびバックドアトリム104の後側には実際には
図2のバックドアパネル106が配置されているが、
図3では図示の便宜上、省略している。
図3に示すように、バックドアトリム104は平板に近い形状を有するが、ワイパカバー102はリブ等を備えた複雑な形状を有する。
【0028】
(固定部材)
図3に示すように、ワイパカバー102には固定部材120が一体成形されていて、これは、バックドアパネル106(
図2)とワイパカバー102とを固定する部材である。
【0029】
図4は
図3の固定部材120の拡大図であり、
図5は
図4の固定部材120の詳細を示す図である。
図5(a)は
図4の固定部材120のA-A断面図であり、
図5(b)は
図5(a)の第1クリップ122および第2クリップ132を第1クリップ122の軸線Rに平行な矢印Bの方向から見た矢視図である。
図5(b)では第1クリップ122の車内側の端部122Bと第2クリップ132の車内側の端部132Bだけを模式的に示し、それら以外の要素は図示省略している。
【0030】
図5(a)では固定部材120の形状を明示するため、固定部材120に斜線を施している。
図3に示した通り、ワイパカバー102には固定部材120と同様の構造の他の固定部材も一体成形されているが、本文では、代表して固定部材120の構造について説明する。
【0031】
図4および
図5(a)に示すように、固定部材120は、第1櫓120Aおよび第2櫓120Bを有するという2段構造になっている。第1櫓120Aは、バックドアパネル106(
図5(a)。
図4では図示省略)に固定された第1クリップ122が取り付けられた第1天板124と、第1天板124から車内側(車両前方)に延びている第1脚部126とを含む。第1脚部126は、第1天板124の下に第1空間128が形成されるよう、第1天板124の縁から車内側に延びている。第1脚部126は、本実施例では第1天板124の縁に沿って連続しているが、複数の脚部に分かれていてもよい。
【0032】
第2櫓120Bは、第1櫓120Aの第1脚部126を支持する第2天板134と、第2天板134から車内側に延びてワイパカバー102に到達している第2脚部136とを含む。
図5(a)に示すように、第2天板134は第1天板124より面積が大きく、ワイパカバー102とバックドアトリム104とを固定する第2クリップ132を覆っている。第2脚部136は、第2天板134の下に第2空間138が形成されるよう、第2天板134の縁から車内側に延びている。第2脚部136は、本実施例では第2天板134の縁に沿って連続しているが、複数の脚部に分かれていてもよい。
【0033】
図4では第1クリップ122は、固定部材120の形状を分かりやすく示すため、便宜上、二点鎖線で仮想的に示している。
図5(a)に示すように、第1クリップ122の先端122Aは洋梨のような形状を有していて、これがバックドアパネル106に挿通されることにより、バックドアパネル106に固定される。
【0034】
図5(a)に示すように、第2クリップ132は、互いに密着したワイパカバー102およびバックドアトリム104を貫通してそれらを互いに固定している。そして第2クリップ132の両端132A、132Bが、ワイパカバー102およびバックドアトリム104の表面にそれぞれ突出することとなる。このように、2つの部材をクリップ固定する場合、密着した2つの部材の表面にクリップの両端が突出する。
【0035】
しかし、かかる第2クリップ132の近傍で、何らの工夫も無く、ワイパカバー102に第1クリップ122を用いてバックドアパネル106を固定することは困難である。ワイパカバー102とバックドアトリム104とは第2クリップ132の近傍で密着していて両者の間に間隙は無く、第1クリップ122の端部が入り込めないためである。よって、従来であれば、第1クリップ122は、第2クリップ132から離間して配置しなければならないというレイアウト上の制約が生じていた。
【0036】
かかる制約を解決するのが
図5(a)に示す本実施例における2段構造の固定部材120である。本実施例によれば、第1クリップ122の車内側の端部122Bと、第2クリップ132の車外側の端部132Aとを、それぞれ、第1櫓120A・第2櫓120Bの有する第1空間128・第2空間138に突出させることができる。そのため、第1クリップ122と第2クリップ132とを
図5(a)に示すように近接して配置することができる。
【0037】
本実施例では、
図5(b)に示すように、車内側から車外側に向かって見たときに、第1・第2クリップ122、132の車内側の端部122B、132Bは、互いの一部が重なるほど近接している。ただし既に述べたように、第1・第2クリップ122、132の端部122B、132Aが第1空間128、第2空間138という別の空間に突出しているため、第1・第2クリップ122、132は互いに干渉することなく、それぞれの固定機能を発揮することができる。すなわち第1クリップ122と第2クリップ132には、レイアウト上の制約は生じない。
【0038】
また本実施例によれば、一体成形されている第1櫓120A・第2櫓120Bを有する固定部材120が第1クリップ122・第2クリップ132に対する補強リブの役割を果たす。そのため、従来であれば貫通孔108の周辺にフランジやリブといった補強材を設ける必要があったところ、そのような補強材を必要としない。また固定部材120は樹脂製であることから軽量であり、複雑な形状であるがワイパカバー102に一体成形可能であることから部品点数も増加しない。
【0039】
本文では、バックドア100(バックドアパネル106)に、その内装トリムであるワイパカバー102およびバックドアトリム104を固定する実施例を用いて、本発明に係る車両用内装トリム固定構造説明している。しかしバックドアに限らず、車体を構成するいかなる車体パネルに内装トリムを固定する場合にも、本発明を適用してよい。
【0040】
(第1クリップの切り欠き)
図4に示すように、第1クリップ122の第1天板124の縁のうち、第1脚部126が設けられていず第1天板124の下の第1空間128が露出している範囲に、切り欠き140が形成されている。さらに第1天板124の中央には貫通孔であるクリップ孔142が形成されている。第1クリップ122は、この切り欠き140を介してスライドすることにより、第1天板124に設けられたクリップ孔142に着脱可能になっている。
【0041】
(クリップ支持部)
図4および
図5(a)に示すように、固定部材120はさらに、第2櫓120Bの第2天板134から車外側(車両後方)に延びて第1クリップ122を支持するクリップ支持部150、152を有する。
図5(a)に示すように、クリップ支持部150、152は、第1クリップ122の軸線Rを左右両側から挟むように配置されている。
【0042】
上記構成により、第1クリップ122を第1天板124に設けられた切り欠き140を通して第1天板124のクリップ孔142に取り付ける際、クリップ支持部150、152を、第1クリップ122のガイドとすることができる。なおクリップ支持部の数が1つであればガイドとはなりにくいので、本実施例のクリップ支持部150、152のように複数設けることが望ましい。
【0043】
また複数のクリップ支持部150、152を設けることにより、固定部材120全体の剛性が補強される効果も得られる。さらに、第1クリップ122の軸線Rを左右両側から挟むように配置されたクリップ支持部150、152は、第1クリップ122を安定的に支持するため、バックドアパネル106とワイパカバー102との固定がより堅固になる。
【0044】
(補強リブ)
図4および
図5(a)に示すように、固定部材120はさらに、第2櫓120Bの第2天板134から車内側(車両前方)に延びてワイパカバー102に到達している補強リブ160を有する。補強リブ160は、第1クリップ122の軸線Rを基準として第2クリップ132の軸線Sとは反対側に配置されている。さらに、
図5(a)から明らかなように、固定部材120を車両前後方向から見たとき、補強リブ160は、一方のクリップ支持部152に重なっている。
【0045】
かかる構成によれば、補強リブ160は、固定部材120の第2櫓120Bを補強し、クリップ支持部152と重なることで第1櫓120Aをも補強する。これにより固定部材120は、車両前後方向から作用する力に対して潰れることなく、より高い剛性を有することとなる。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0047】
また本発明は、特許請求の範囲の従属関係に関わらず、請求項および実施例に記載の発明同士を自由に組み合わせて実施することができるものである。