(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112435
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの製造方法および蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/627 20210101AFI20240814BHJP
【FI】
H01M50/627
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017427
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】原 尊
(72)【発明者】
【氏名】浅井 真也
【テーマコード(参考)】
5H023
【Fターム(参考)】
5H023AS07
5H023BB01
5H023BB10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電極積層体内部に電解液を良好に注液できる蓄電モジュールの製造方法の提供。
【解決手段】電極積層体と、厚さ方向から見て電極積層体の外縁に沿って配置された樹脂部材と、厚さ方向に直交する第1方向において、一端部が電極積層体の内部に位置し、かつ他端部が樹脂部材の外部に突出した入れ子とを有する積層部材を準備する工程と、積層部材において厚さ方向に延在する側面に注液枠を形成する工程と、注液枠形成工程後に、積層部材から入れ子を上記第1方向に引き抜き、第1方向に延在する貫通孔を形成する工程と、を有する蓄電モジュールの製造方法であって、入れ子は、一端部から他端部側に向かって延在し、かつ、厚さ方向において貫通した切れ目部を有し、切れ目部に樹脂を充填することで、厚さ方向において貫通孔の形状を保持する支柱を形成する工程を有する、蓄電モジュールの製造方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に積層された複数の電極を含む電極積層体と、前記厚さ方向から見て前記電極積層体の外縁に沿って配置された樹脂部材と、前記厚さ方向に直交する第1方向において、一端部が前記電極積層体の内部に位置し、かつ、他端部が前記樹脂部材の外部に突出した入れ子と、を有する積層部材を準備する準備工程と、
前記積層部材において前記厚さ方向に延在する側面に、注液枠を形成する注液枠形成工程と、
前記注液枠形成工程後に、前記積層部材から前記入れ子を前記第1方向に引き抜き、前記第1方向に延在する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
を有する蓄電モジュールの製造方法であって、
前記入れ子は、前記一端部から前記他端部側に向かって延在し、かつ、前記厚さ方向において貫通した切れ目部を有し、
前記蓄電モジュールの製造方法は、前記切れ目部に樹脂を充填することで、前記厚さ方向において前記貫通孔の形状を保持する支柱を形成する支柱形成工程を有する、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記支柱形成工程は、前記注液枠形成工程の前に、前記樹脂部材を加熱し、加熱された前記樹脂部材の一部を前記切れ目部に充填することで、前記支柱を形成する工程である、請求項1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記注液枠形成工程は、前記積層部材における前記入れ子の前記他端部を金型に挿入し、前記樹脂部材および前記金型の間に樹脂を注入する樹脂成形法により前記注液枠を形成する工程であり、
前記切れ目部は、前記厚さ方向から見て、前記樹脂部材より外側に延在し、
前記支柱形成工程は、前記樹脂成形法の際に注入する前記樹脂の一部を前記切れ目部に充填することで、前記支柱を形成する工程である、請求項1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記電極積層体の形状は、前記厚さ方向から見て、四角形であり、
前記四角形における各辺の長さは、それぞれ30cm以上である、請求項1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項5】
電解液および厚さ方向に積層された複数の電極を含む電極積層体と、前記厚さ方向から見て前記電極積層体の外縁に沿って配置された樹脂部材と、有する積層部材と、
前記積層部材において前記厚さ方向に延在する側面に配置された注液枠と、
を有する蓄電モジュールであって、
前記積層部材は、前記厚さ方向に直交する第1方向に延在する貫通孔を有し、
前記蓄電モジュールは、前記貫通孔において、前記貫通孔の形状を保持する支柱を有する、蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電モジュールの製造方法および蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電池の分野において、例えば特許文献1に開示されたような蓄電モジュールの製造方法および蓄電モジュールが知られている。特許文献1は、複数のバイポーラ電極をセパレータを介して積層し、得られた積層体に対して注液口から電解液を注液することで蓄電モジュールを製造する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電モジュールの製造方法においては、電極積層体の外縁に沿って配置された樹脂部材を貫通するように形成された貫通孔を介して電解液を電極積層体内部に注液することが想定される。この際、電極積層体の外縁における集電体および樹脂部材にうねり等の凹凸が存在していた場合、形成した貫通孔が閉塞する恐れがあり、電解液の注液を良好に行えない恐れがある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電極積層体内部に電解液を良好に注液できる蓄電モジュールの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]
厚さ方向に積層された複数の電極を含む電極積層体と、上記厚さ方向から見て上記電極積層体の外縁に沿って配置された樹脂部材と、上記厚さ方向に直交する第1方向において、一端部が上記電極積層体の内部に位置し、かつ、他端部が上記樹脂部材の外部に突出した入れ子と、を有する積層部材を準備する準備工程と、上記積層部材において上記厚さ方向に延在する側面に、注液枠を形成する注液枠形成工程と、上記注液枠形成工程後に、上記積層部材から上記入れ子を上記第1方向に引き抜き、上記第1方向に延在する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、を有する蓄電モジュールの製造方法であって、上記入れ子は、上記一端部から上記他端部側に向かって延在し、かつ、上記厚さ方向において貫通した切れ目部を有し、上記蓄電モジュールの製造方法は、上記切れ目部に樹脂を充填することで、上記厚さ方向において上記貫通孔の形状を保持する支柱を形成する支柱形成工程を有する、蓄電モジュールの製造方法。
【0007】
[2]
上記支柱形成工程は、上記注液枠形成工程の前に、上記樹脂部材を加熱し、加熱された上記樹脂部材の一部を上記切れ目部に充填することで、上記支柱を形成する工程である、[1]に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【0008】
[3]
上記注液枠形成工程は、上記積層部材における上記入れ子の上記他端部を金型に挿入し、上記樹脂部材および上記金型の間に樹脂を注入する樹脂成形法により上記注液枠を形成する工程であり、上記切れ目部は、上記厚さ方向から見て、上記樹脂部材より外側に延在し、
上記支柱形成工程は、上記樹脂成形法の際に注入する上記樹脂の一部を上記切れ目部に充填することで、上記支柱を形成する工程である、[1]または[2]に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【0009】
[4]
上記電極積層体の形状は、上記厚さ方向から見て、四角形であり、上記四角形における各辺の長さは、それぞれ30cm以上である、[1]から[3]までのいずれかに記載の蓄電モジュールの製造方法。
【0010】
[5]
電解液および厚さ方向に積層された複数の電極を含む電極積層体と、上記厚さ方向から見て上記電極積層体の外縁に沿って配置された樹脂部材と、有する積層部材と、上記積層部材において上記厚さ方向に延在する側面に配置された注液枠と、を有する蓄電モジュールであって、上記積層部材は、上記厚さ方向に直交する第1方向に延在する貫通孔を有し、上記蓄電モジュールは、上記貫通孔において、上記貫通孔の形状を保持する支柱を有する、蓄電モジュール。
【発明の効果】
【0011】
本開示においては、効率的に電解液を注液できる蓄電モジュールを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示における蓄電モジュールの製造方法を例示するフロー図である。
【
図2】本開示における課題が解決できるメカニズムを説明する概略断面図である。
【
図3】本開示における積層部材を例示する概略断面図である。
【
図4】本開示における入れ子を例示する概略平面図である。
【
図5】本開示における電極積層体の形成方法を例示する概略断面図(分解図)である。
【
図6】本開示における注液枠形成工程を例示する概略断面図(分解図)である。
【
図7】本開示における注液枠を例示する概略斜視図である。
【
図8】本開示における貫通孔形成工程を例示する概略断面図である。
【
図9】本開示における蓄電モジュールを例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示における実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0014】
A.蓄電モジュールの製造方法
図1は、本開示における蓄電モジュールの製造方法を例示するフロー図である。まず、本開示における蓄電モジュールの製造方法においては、積層部材を準備する(準備工程)。
図3に示すように、積層部材Lは、厚さ方向Zに積層された複数の電極Eを含む電極積層体10と、厚さ方向Zから見て電極積層体10の外縁に沿って配置された樹脂部材20と、厚さ方向Zに直交する第1方向Xにおいて、一端部t1が電極積層体10の内部に位置し、かつ、他端部t2が樹脂部材20の外部に突出した入れ子30と、を有する。
図4に示すように、入れ子30は、一端部t1から他端部t2側に向かって延在し、かつ、厚さ方向Zにおいて貫通した切れ目部31を有している。
【0015】
次いで、
図6(c)に示すように、積層部材Lにおいて厚さ方向Zに延在する側面に、注液枠40を形成する(注液枠形成工程)。そして、
図8(a)に示すように、注液枠形成工程後に、積層部材Lから入れ子30を第1方向Xに引き抜き、第1方向Xに延在する貫通孔H(H1~H3)を形成する(貫通孔形成工程)。
【0016】
また、本開示における蓄電モジュールの製造方法においては、上記切れ目部に樹脂を充填することで、上記厚さ方向において上記貫通孔の形状を保持する支柱を形成する支柱形成工程を有する。支柱形成工程の詳細については後述する。
【0017】
本開示によれば、厚さ方向において上記貫通孔の形状を保持する支柱を形成するため、貫通孔が閉塞することを抑制することができる。その結果、効率的に電解液を注液できる。
【0018】
図2を用いて本開示における課題が解決できるメカニズムを説明する。
図2(a)および(b)は、電極積層体の一部分を厚さ方向に見た概略断面図である。
図2(c)は、
図2(b)を第1方向Xから見た概略断面図である。上述のように、電極積層体の外縁に沿って配置された樹脂部材を貫通するように形成された貫通孔を介して、電解液を電極積層体内部に注液することが想定される。その場合、
図2(a)に示すように、電極積層体の集電体1および樹脂部材20にうねり等の凹凸が存在していた場合、貫通孔Hが閉塞し、電解液を電極積層体内部(紙面左側)に注入することが困難、または、注液効率が低下する恐れがある。特に、電極積層体のサイズが大きくなるほどうねりが生じやすくなり、貫通孔が閉塞しやすくなると推測される。これに対して、本開示においては、
図2(b)および(c)に示すように、貫通孔Hにおいて、貫通孔Hの形状を保持する支柱Pを形成するため、貫通孔Hの閉塞を抑制することができる。その結果、電極積層体の内部に、効率的に電解液を注液できる。
【0019】
1.準備工程
本開示における準備工程は、積層部材を準備する工程である。積層部材は、電極積層体と、樹脂部材と、入れ子と、を有する。
【0020】
(1)電極積層体
図3に示すように、積層部材Lにおける電極積層体10は、厚さ方向Zに積層された複数の電極Eを含む。電極は、集電体と、上記集電体の少なくとも一方の面上に配置された電極層(正極活物質層または負極活物質層)とを有する。
図3に示すように、電極Eは、集電体1と、集電体1の一方の面上に配置された正極活物質層2と、集電体1の他方の面上に配置された負極活物質層3と、を有するバイポーラ電極(BP)であってもよい。
図3に示す電極積層体10は、電極Eとして、バイポーラ電極BP1、バイポーラ電極BP2、正極側端部電極CA、および、負極側端部電極ANを有する。正極側端部電極CAは、集電体1と、集電体1の一方の面上に配置された正極活物質層2と、を有する。負極側端部電極ANは、集電体1と、集電体1の一方の面上に配置された負極活物質層3と、を有する。また、本開示における電極積層体は、厚さ方向Zに積層された複数の電極Eを含むものであれば特に限定されず、バイポーラ電極を有しなくてもよい。
【0021】
また、
図3に示すように、電極積層体10は、発電単位U(U1~U3)を備える。発電単位Uは、正極活物質層2と、負極活物質層3と、正極活物質層2および負極活物質層3の間に配置されたセパレータ4と、を有する。正極活物質層2、負極活物質層3およびセパレータ4には、また、本開示における電極積層体は、発電単位を1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。
【0022】
1つの発電単位は、2つのバイポーラ電極を用いて構成されていてもよい。
図3において、電極積層体10は、厚さ方向Zにおいて、バイポーラ電極BP1およびバイポーラ電極BP2を有する。隣り合うバイポーラ電極BP1およびバイポーラ電極BP2の間に、セパレータ4が配置されている。発電単位U2は、バイポーラ電極BP2における正極活物質層2bと、バイポーラ電極BP1における負極活物質層3aと、それらの間に配置されたセパレータ4と、から構成されている。一方、発電単位U1は、バイポーラ電極BP1における正極活物質層2aと、負極側端部電極ANにおける負極活物質層3と、それらの間に配置されたセパレータ4と、から構成されている。また、発電単位U3は、バイポーラ電極BP2における負極活物質層3bと、正極側端部電極CAにおける正極活物質層2と、それらの間に配置されたセパレータ4と、から構成されている。
【0023】
なお、特に図示しないが、電極積層体の内部であり、かつ、電極層が形成されていない集電箔の部分(未塗工部)において、厚さ方向に電極積層体を支持する支柱(第2支柱)が配置されていてもよい。
【0024】
本開示における電極積層体の平面視形状(厚さ方向から見た形状)は、特に限定されないが、例えば、正方形、長方形等の四角形が挙げられる。電極積層体の平面視形状における1辺の長さは、例えば30cm以上であり、50cm以上であってもよく、100cm以上であってもよい。一方、上記1辺の長さは、例えば200cm以下である。
【0025】
電極積層体における各部材の材料については、「B.蓄電モジュール」において説明する。
【0026】
(2)樹脂部材
図3に示すように、本開示における樹脂部材20は、厚さ方向Zから見て電極積層体10の外縁に沿って配置されている。
図3に示すように、樹脂部材20は、通常、電極積層体10の側面に配置される。電極積層体の側面とは、電極積層体において厚さ方向に延在する面をいう。また、電極積層体の側面は、通常、厚さ方向に対向する、電極積層体の頂面(一方の主面)、および、電極積層体の底面(他方の主面)を結ぶ面である。
【0027】
厚さ方向から見て、樹脂部材は電極積層体における集電体およびセパレータの外縁に沿って、枠状に配置されていることが好ましい。樹脂部材は、樹脂を含有する部材である。上記樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が挙げられる。中でも、オレフィン系樹脂が好ましい。
【0028】
(3)入れ子
図3に示すように、本開示における入れ子30は、厚さ方向Zに直交する第1方向Xにおいて、一端部t1が電極積層体10の内部に位置し、かつ、他端部t2が樹脂部材20の外部に突出している。
【0029】
ここで、電極積層体の内部とは、厚さ方向から見た場合に、樹脂部材の側面のうち、電極積層体10側の側面(
図4における内側面SS1)を基準として、電極積層体10の中央側の領域をいう。樹脂部材20の外部とは、厚さ方向Zから見た場合に、樹脂部材20の側面のうち、電極積層体10とは反対側の側面(外側面SS2)を基準として、電極積層体10の中央とは反対側の領域をいう。また、入れ子30の延在方向(一端部t1および他端部t2を結ぶ方向)は、第1方向Xと平行であることが好ましい。平行とは、2つの方向のなす角度が30°以下であることをいう。
【0030】
図4は、電極積層体における入れ子を、厚さ方向から見た概略平面図である。
図4に示すように、本開示における入れ子30は、一端部t1から他端部t2側に向かって延在し、かつ、厚さ方向Zにおいて貫通した切れ目部31を有する。入れ子における切れ目部の数は、1であってもよく、2以上であってもよい。後者の場合、切れ目の数は、例えば2以上、5以下である。なお、切れ目部の数は、通常、後述する支柱の数と一致する。
【0031】
また、
図4に示すように、第1方向において切れ目部の端(切れ目部の底)をt3とした場合、積層部材において切れ目部の端t3は、樹脂部材20の外側面SS2の位置よりも入れ子30の他端部t2側に位置していてもよい。一方、積層部材において切れ目部の端t3は、樹脂部材20の外側面SS2の位置と一致していてもよく、外側面SS2の位置よりも入れ子の一端部t1側に位置していてもよい。
【0032】
入れ子における切れ目部の平面視形状(厚さ方向から見た形状)は特に限定されないが、例えば、長方形等の四角形が挙げられる。切れ目部の幅(厚さ方向から見て第1方向と直交する第2方向の長さ)は特に限定されない。例えば入れ子の幅に対する切れ目部の幅は、例えば、0.3以上、0.5以下である。また、切れ目部の奥行(厚さ方向から見て第1方向の長さ)は特に限定されない。入れ子の奥行に対する切れ目部の奥行の割合は、例えば、0.5以上、0.9以下である。
【0033】
入れ子の厚さ(厚さ方向における長さ)、入れ子の幅(第2方向における長さ)および入れ子の奥行(第1方向における長さ)は特に限定されず、蓄電モジュールのサイズに応じて適宜調整することができる。入れ子の厚さは、例えば0.1mm以上、0.3mm以下である。入れ子の幅は、例えば、20mm以上、40mm以下である。入れ子の奥行は、例えば、30mm以上、50mm以下である。
【0034】
(4)積層部材
図5は、準備工程を例示する概略断面図(分解図)である。まず、
図5に示すように、上述したバイポーラ電極BP1およびバイポーラ電極BP2を準備する。バイポーラ電極BP1およびバイポーラ電極BP2は、それぞれ、集電体1の外縁に沿って配置された、樹脂部材形成用の枠部材5aおよび5bを有する。次に、バイポーラ電極BP1における負極活物質層3aと、バイポーラ電極BP2における正極活物質層2bとを、セパレータ4を介して、対向させる。この際、セパレータ4の外縁の少なくとも一部が、枠部材5aおよび枠部材5bの間に配置される。また、
図5に示すように、バイポーラ電極BP1における枠部材5aと、バイポーラ電極BP2における枠部材5bとの間に、入れ子30および枠部材(スペーサ)5cを配置する。次に、特に図示しないが、正極側端部電極CAおよび負極側端部電極ANも積層する。その後、積層された複数の枠部材を溶着することで、上述した樹脂部材20が形成される。このようにして、
図3に示すような積層部材を準備することができる。
【0035】
2.注液枠形成工程
本開示における注液枠形成工程は、上記積層部材において上記厚さ方向に延在する側面に、注液枠を形成する工程である。なお、積層部材において厚さ方向に延在する側面とは、上述した樹脂部材の外側面と同義である。
【0036】
注液枠形成工程は、例えば、予め準備した枠状部材を積層部材の側面に溶着させて注液枠を形成する工程であってもよい。
【0037】
一方、注液枠形成工程は、上記積層部材における上記入れ子の上記他端部を金型に挿入し、上記樹脂部材および上記金型の間に樹脂を注入する樹脂成形法により上記注液枠を形成する工程であってもよい。樹脂としては、上述した熱可塑性樹脂を挙げることができる
【0038】
図6を用いて、樹脂成形法により注液枠を形成する工程について説明する。例えば、
図6(a)、(b)に示すように、積層部材Lの側面(樹脂部材20の外側面SS2)と金型Mの凹部が形成された面とが対向するように、金型Mの中にインサート品である積層部材Lを配置する。これにより、積層部材Lにおける入れ子30の他端部t2が金型Mに挿入される。なお、金型Mの凹部は、入れ子20が挿入される部位である。次に、積層部材Lおよび金型Mの間に樹脂を供給する。そして、
図6(c)に示すように、金型Mを除去することで、積層部材Lの側面に注液枠40を形成することができる。
【0039】
図7は、注液枠を例示する概略斜視図である。
図7に示すように、注液枠40は、複数複数の注液口41を有する。注液口は、後述する貫通孔形成工程において入れ子を引き抜くことで、貫通孔と連通する。
【0040】
3.貫通孔形成工程
図8は本開示における貫通孔形成工程を例示する概略断面図である。
図8(a)は、支柱を有さない面における断面図であり、
図8(b)は、
図8(a)における貫通孔H1部分を拡大した図であり、
図8(c)は、支柱を有さない面における断面図である。
図8(a)に示すように、貫通孔形成工程は、注液枠形成工程後に、積層部材Lから入れ子30を第1方向Xに引き抜き、第1方向Xに延在する貫通孔H(H1~H3)を形成する工程である。また、
図8(b)に示すように、貫通孔Hは、通常、頂部Haおよび底部Hbを有する。また、
図8(c)に示すように、入れ子30を引き抜くことで、貫通孔Hに支柱Pを配置することができる。支柱の形成方法については後述する。
【0041】
4.支柱形成工程
本開示における支柱形成工程は、上記切れ目部に樹脂を充填することで、上記厚さ方向において上記貫通孔の形状を保持する支柱を形成する工程である。
【0042】
貫通孔については上述のとおりである。支柱は貫通孔の形状を保持するため、
図2(c)、
図8(b)および(c)に示すように、貫通孔の頂部Haおよび底部Hbに連結されるように形成することが好ましい。
【0043】
支柱形成工程は、上記注液枠形成工程の前に、上記樹脂部材を加熱し、加熱された上記樹脂部材の一部を上記切れ目部に充填することで、上記支柱を形成する工程であってもよい。例えば、
図5に示したように、準備工程において、積層された複数の枠部材を溶着することで樹脂部材を形成する場合、溶着の際に溶けた枠部材の樹脂の一部を切れ目部に流入させて充填する。その結果、入れ子の切れ込み部に樹脂部材と連結した支柱を形成できる。上記貫通孔形成工程において、入れ子を引き抜いた際、支柱が貫通孔に残存する。これにより、貫通孔において貫通孔の頂部および底部に連結された支柱が得られる。
【0044】
一方、上記注液枠形成工程が、上述した樹脂成形法により上記注液枠を形成する工程である場合、支柱形成工程は、上記樹脂成形法の際に注入する上記樹脂の一部を上記切れ目部に充填することで、上記支柱を形成する工程であってもよい。つまり、支柱形成工程は注液枠形成工程と並行して行われる工程であってもよい。また、この場合、
図4に示すように、入れ子の切れ目部は、厚さ方向から見て、樹脂部材より外側に延在している、つまり、切れ目部の端t3は、樹脂部材20の外側面SS2の位置よりも入れ子30の他端部t2側に位置していることが好ましい。樹脂部材と切れ目部の隙間から、切れ目部に樹脂を充填することができるからである。
【0045】
なお、本開示とは異なる実施態様であるが、支柱は、積層部材から引き抜いた際に一部が貫通孔に残存するように設計された入れ子を用いることでも形成することができる。また、支柱は、貫通孔を形成した後に、貫通孔に支柱となる部材を挿入して形成することもできる。
【0046】
貫通孔における支柱の数は1であってもよく、2以上であってもよい。後者の場合、支柱の数は、例えば2以上、5以下である。また、上記第1方向において支柱の一端をP1とし、他端をP2とした場合、一端P1は、上記樹脂部材の内側面SS1よりも積層部材内部に位置していてもよい。また、他端をP2は、上記樹脂部材の内側面SS1よりも積層部材の外側に位置していてもよい。
【0047】
5.その他の工程
(1)注液工程
本開示における蓄電モジュールの製造方法は、上記貫通孔を介して、上記電極積層体の内部に電解液を注液する、注液工程を有していてもよい。その結果、電極層(正極活物質層および負極活物質層層)、およびセパレータには、それぞれ、電解液が含浸される。電解液の注液方法は、特に限定されず、例えば、注液装置を用いた公知の方法が用いられる。
【0048】
(2)封止工程
また、本開示における蓄電モジュールの製造方法は、上記注液工程の後に、上記注液口を封止する、封止工程を有していてもよい。封止工程は、減圧雰囲気で行うことが好ましい。注液口の封止方法は、特に限定されない。
【0049】
6.蓄電モジュール
上述した工程で製造される蓄電モジュールについては、「B.蓄電モジュール」で説明する。
【0050】
B.蓄電モジュール
図9は、本開示における蓄電モジュールを例示する概略断面図である。
図9に示す蓄電モジュール100は、電解液(不図示)および厚さ方向Zに積層された複数の電極Eを含む電極積層体10と、厚さ方向Zから見て電極積層体10の外縁に沿って配置された樹脂部材20と、有する積層部材Lと、積層部材Lにおいて厚さ方向Zに延在する側面に配置された注液枠40と、を有する。また、蓄電モジュール100において積層部材Lは、厚さ方向Zに直交する第1方向Xに延在する貫通孔(不図示)を有している。また、蓄電モジュール100は、厚さ方向Zにおいて貫通孔(不図示)の形状を保持する支柱Pを有する。
【0051】
上述のように電極は、集電体と、上記集電体の少なくとも一方の面上に配置された電極層(正極活物質層または負極活物質層)とを有する。集電体は、正極集電体であってもよく、負極集電体であってもよい。集電体の材料としては、例えば、Al、SUS、Ni、Cu等の金属が挙げられる。
【0052】
正極活物質層は少なくとも正極活物質を含有する。正極活物質としては、典型的には、酸化物活物質が挙げられる。酸化物活物質としては、例えば、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiVO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等の岩塩層状型活物質、LiMn2O4、Li(Ni0.5Mn1.5)O4等のスピネル型活物質、LiFePO4、LiMnPO4、LiNiPO4、LiCuPO4等のオリビン型活物質が挙げられる。
【0053】
負極活物質層は少なくとも負極活物質を含有する。負極活物質としては、例えば、カーボン活物質、酸化物活物質および金属活物質を挙げることができる。カーボン活物質としては、例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボンおよびソフトカーボン等を挙げることができる。酸化物活物質としては、例えば、NB2O5、Li4Ti5O12およびSiOを挙げることができる。金属活物質としては、例えば、In、Al、SiおよびSnを挙げることができる。
【0054】
また、電極積層体は電解液を含有するため、電極層は通常電解質(電解液)を含有する。電解液は、非水溶媒と支持塩とを含有する。非水溶媒としては、カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を挙げることができる。支持塩としては、例えば、LiPF6等のリチウム塩を挙げることができる。導電材としては、例えば、炭素材料、金属粒子、導電性ポリマーが挙げられる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック(AB)およびケッチェンブラック(KB)等の粒子状炭素材料;炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)およびカーボンナノファイバー(CNF)等の繊維状炭素材料が挙げられる。
【0055】
また、電極層は、必要に応じて、導電材およびバインダーの少なくとも一つを含有していてもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニリデンフロライド(PVDF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素含有バインダー、ブタジエンゴム等のゴム系バインダーおよびアクリル系バインダーが挙げられる。
【0056】
樹脂部材、注液枠、貫通孔および支柱については、「A.蓄電モジュールの製造方法」に記載したとおりである。また、
図9に示すように、蓄電モジュールは、注液口を封止する封止材50を有していてもよい。
【0057】
本開示における蓄電モジュールの種類としては、例えばLiイオン電池が挙げられる。また、本開示における蓄電モジュールの用途は、特に限定されないが、例えば、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車または電気自動車の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における蓄電モジュールは、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0058】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0059】
1 …集電体
2 …正極活物質層
3 …負極活物質層
4 …セパレータ
E …電極
U …発電単位
10 …電極積層体
20 …樹脂部材
30 …入れ子
L …積層部材
40 …注液枠
41 …注液口
H… 貫通孔
P… 支柱
100 …蓄電モジュール