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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112439
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】患部撮影装置および診療システム
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20240814BHJP
   A61G 15/10 20060101ALI20240814BHJP
   A61G 15/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61C19/00 Z
A61G15/10
A61G15/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017439
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】390011121
【氏名又は名称】株式会社モリタ東京製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100113310
【弁理士】
【氏名又は名称】水戸 洋介
(72)【発明者】
【氏名】船木 耕太朗
(72)【発明者】
【氏名】宮本 幸治
(72)【発明者】
【氏名】吉川 智和
(72)【発明者】
【氏名】釜口 昌平
【テーマコード(参考)】
4C052
4C341
【Fターム(参考)】
4C052LL07
4C052LL09
4C052NN01
4C052NN15
4C341MP02
4C341MP05
4C341MQ02
4C341MS18
(57)【要約】
【課題】患部撮影装置がカメラの撮影位置を視認可能とする手段を有しない場合と比較して、患部の撮影を容易にする。
【解決手段】患部撮影装置は、患部を撮影するとともに患部に対して位置を変えられるように取り付けられるカメラの周囲に設けられる筐体と、カメラのレンズの周囲の取付部に取り付けられ、患部に対してカメラの位置を変えた場合であってもカメラの撮影位置をユーザに視認可能とするための光を照射するポインタと、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患部を撮影するとともに当該患部に対して位置を変えられるように取り付けられるカメラの周囲に設けられる筐体と、
前記カメラのレンズの周囲の取付部に取り付けられ、前記患部に対して前記カメラの位置を変えた場合であっても当該カメラの撮影位置をユーザに視認可能とするための光を照射するポインタと、
を有する患部撮影装置。
【請求項2】
前記ポインタは、
前記カメラによる撮影の一方向に伸びる光を照射する第1のポインタと、
前記カメラによる撮影の前記一方向に伸びる光に対して交差する方向に伸びる光を照射する第2のポインタと、を有し、
前記一方向に伸びる光と前記交差する方向に伸びる光との交点は、前記患部に対して前記カメラの位置を変えた場合であっても、前記撮影位置の中心に位置する
ことを特徴とする、請求項1記載の患部撮影装置。
【請求項3】
前記第1のポインタは、前記一方向として、前記カメラによる撮影の水平方向に伸びる光を照射し、
前記第2のポインタは、前記一方向に伸びる光に対して交差する垂直方向に伸びる光を照射する
ことを特徴とする、請求項2記載の患部撮影装置。
【請求項4】
前記ポインタは、ライン幅を狭めた発光ダイオードまたはレーザポインタであることを特徴とする、請求項1記載の患部撮影装置。
【請求項5】
前記患部に対して位置を変えられるように前記筐体に取り付けられる前記カメラと連動して設けられ、当該患部を照射するライトを更に備え、
前記ポインタがオンされると前記ライトがオフされる
ことを特徴とする、請求項1記載の患部撮影装置。
【請求項6】
患部を撮影して診療のための画像を生成する患部撮影装置と、
前記患部撮影装置を患者の上方にて移動可能に支持する支持構造と、を備え、
前記患部撮影装置は、
前記患部を撮影するとともに、前記支持構造により当該患部に対して位置を変えられるように設けられるカメラと、
前記カメラのレンズの周囲の取付部に取り付けられ、前記患部に対して前記カメラの位置を変えた場合であっても当該カメラの撮影位置をユーザに視認可能とするための光を照射するポインタと、
を有する診療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患部撮影装置および診療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所望の光パターンを生成する無影灯と、無影灯の一部であるように統合され、無影灯が光パターンを生成するように構成されている位置を主として撮影するように向けられた光学カメラとを有する歯科治療ユニットについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-509889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯科等の医療機関における診療に際しては、患者への説明や経過記録等のために、診療の対象となる患部の撮影が行われる。患部を撮影する患部撮影装置において、患部に対するカメラの位置を変えられるように構成した場合、ユーザがカメラの撮影位置を視認できないと、患部が撮影位置にあるかを判断することが難しく、患部の撮影が困難となる。
本発明は、患部撮影装置がカメラの撮影位置を視認可能とする手段を有しない場合と比較して、患部の撮影を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が適用される患部撮影装置は、患部を撮影するとともに当該患部に対して位置を変えられるように取り付けられるカメラの周囲に設けられる筐体と、前記カメラのレンズの周囲の取付部に取り付けられ、前記患部に対して前記カメラの位置を変えた場合であっても当該カメラの撮影位置をユーザに視認可能とするための光を照射するポインタと、を有する。
ここで、前記ポインタは、前記カメラによる撮影の一方向に伸びる光を照射する第1のポインタと、前記カメラによる撮影の前記一方向に伸びる光に対して交差する方向に伸びる光を照射する第2のポインタと、を有し、前記一方向に伸びる光と前記交差する方向に伸びる光との交点は、前記患部に対して前記カメラの位置を変えた場合であっても、前記撮影位置の中心に位置することとしても良い。
また、前記第1のポインタは、前記一方向として、前記カメラによる撮影の水平方向に伸びる光を照射し、前記第2のポインタは、前記一方向に伸びる光に対して交差する垂直方向に伸びる光を照射することとしても良い。
さらに、前記ポインタは、ライン幅を狭めた発光ダイオードまたはラインレーザであることとしても良い。
さらにまた、前記患部に対して位置を変えられるように前記筐体に取り付けられる前記カメラと連動して設けられ、当該患部を照射するライトを更に備え、前記ポインタがオンされると前記ライトがオフされることとしても良い。
【0006】
他の観点から捉えると、本発明が適用される診療システムは、患部を撮影して診療のための画像を生成する患部撮影装置と、前記患部撮影装置を患者の上方にて移動可能に支持する支持構造と、を備え、前記患部撮影装置は、前記患部を撮影するとともに、前記支持構造により当該患部に対して位置を変えられるように設けられるカメラと、前記カメラのレンズの周囲の取付部に取り付けられ、前記患部に対して前記カメラの位置を変えた場合であっても当該カメラの撮影位置をユーザに視認可能とするための光を照射するポインタと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の患部撮影装置等によれば、撮影位置を視認可能とする手段を有しない場合と比較して、患部の撮影が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態に係る診療システムの全体構成の一例を示す図である。
図2】本実施の形態が適用される患部撮影装置の正面図である。
図3】患部撮影装置におけるカメラの撮影位置を説明する図である。
図4】ラインレーザが照射するガイド光について説明する図であり、(A)は患部撮影装置を水平方向から見た概略図、(B)は患部撮影装置を垂直方向から見た概略図である。
図5】ガイド光による撮影位置の視覚化について説明する図であり、撮影位置と、ガイド光とのz方向に直交する断面に相当する図である。
図6】患部撮影装置の変形例について説明する図であり、(A)は略楕円状のガイド光を照射する場合の例、(B)は対角方向に伸びるガイド光を照射する場合の例である。
図7】第2の実施の形態が適用される患部撮影装置について説明する図であり、(A)は患部撮影装置の第1の状態を示す図、(B)は患部撮影装置の第2の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書では、第1の実施の形態、第2の実施の形態、および変形例や応用例等について説明するが、これらを纏めて「本発明の実施の形態」と呼ぶ場合がある。
以下では、本発明の実施の形態が適用される患部撮影装置が、歯科において、医師やアシスタント(以降「医師等」と呼ぶ。)が患者の口腔内を診療するための診療システムに組み込まれ、口腔内の患部の撮影に利用される場合を例にして説明する。医師等は患部撮影装置を利用するユーザの一例である。
【0010】
<第1の実施の形態>
<診療システム100の全体構成>
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る診療システム100の全体構成の一例を示す図である。
診療システム100は、患者の口腔内の患部を撮影するための患部撮影装置1と、患者を下方から支える診療台7と、患部撮影装置1を患者の上方に支持する支持構造8とを備えている。その他、診療システム100は、患者がうがい等に用いるための水を供給する供給装置91と、診療用器具(いわゆるインスツルメント)を保持するためのインスツルメントホルダ92と、医師等が利用する作業台93とを備えている。
【0011】
診療台7は、基台71と座面72との他に、患者の背中を支える背もたれ73と、脚部を支えるレッグレスト74と、頭部を支えるヘッドレスト75とを備えている。
座面72は、基台71により昇降され、床面からの高さを調整することが可能である。
また、背もたれ73は、一端が座面72に取り付けられ、この一端を中心にして、座面72に対する角度が調整可能である。同様に、レッグレスト74は、一端が座面72に取り付けられ、角度が調整可能である。
さらに、ヘッドレスト75は、一端が背もたれ73に取り付けられ、この一端を中心にして、背もたれ73に対する角度が調整可能である。
【0012】
支持構造8は、一端が例えば供給装置91の上面に固定されており、他端の取付部83に取り付けられた患部撮影装置1を患者の上方にて移動可能に支持する。
図1に示すように、支持構造8は、複数の軸部81とコネクタ82とを備える。軸部81同士の間はコネクタ82で接続されており、角度の調整が可能となっている。また、他端側の軸部81と取付部83との間がコネクタ82で接続されており、角度の調整が可能となっている。
【0013】
そして、診療システム100では、軸部81同士の角度および軸部81と取付部83との角度を調整することによって、患部撮影装置1の位置の調整が可能となっている。
より具体的には、医師等が患部撮影装置1を所望の位置へ引っ張る/押し込むことによって移動させると、軸部81同士の角度および軸部81と取付部83との角度が適宜調整され、患部撮影装置1が移動後の位置にて支持される。
なお、支持構造8は、患部撮影装置1,2(図7を用いて後述)を移動可能に支持するものであれば良く、軸部81およびコネクタ82によるものに限定されない。スライドレールやワイヤリール等の各種の機構を採用しても良い。
【0014】
このように、診療システム100では、座面72の高さや背もたれ73、ヘッドレスト75の角度、および患部撮影装置1の位置を調整することによって、患部撮影装置1と患者の口腔内の患部との位置関係が変えられるようになっている。
付言すると、この位置関係の変化により、患者の口腔内の患部に対して、患部撮影装置1のカメラ40(図2を用いて後述)の位置を変えられるようになっている。
【0015】
なお、患部撮影装置1による患部の撮影は、患部撮影装置1と患者の口腔との間の距離が予め定められた距離範囲内となる状態で行われる。この予め定められた距離範囲は、診療システム100の各部分の角度や位置の調整代、カメラ40の画角や撮影倍率等に応じて定められる。予め定められた距離範囲は例えば、400~700mmである。
【0016】
その他、診療システム100は、操作パネルやスイッチ、コントローラ等、医師等による操作入力を受け付けるための入力機器(不図示)を備える。
そして、診療システム100では、入力機器が受け付けた操作入力に応じ、患部撮影装置1による患部の撮影、患部撮影装置1が備えるラインレーザ11,12やライト50(図2を用いて後述)のオン/オフの切り替え等の指示を受け付ける。
【0017】
<患部撮影装置1>
図2は、第1の実施の形態が適用される患部撮影装置1の正面図である。なお、図2における紙面の右側を+x方向、紙面の上側を+y方向、紙面の表(手前)側を+z方向とする。また、患部撮影装置1の「正面」とは、患部の撮影に際し患部と対向する面である。
図2に示すように、第1の実施の形態が適用される患部撮影装置1は、患部を照射するためのライト50と、患部を撮影するためのカメラ40と、カメラ40の周囲に設けられる筐体20と、略直線状に伸びる光を照射するラインレーザ11,12とを備える。
その他、医師等が患部撮影装置1の位置の調整に際し把持するハンドル30が設けられている。
【0018】
筐体20は、カメラ40の周囲に設けられ、患部撮影装置1の本体部分を構成する。
図2に示すように、筐体20は略楕円の環形状を有し、環形状の内縁201にカメラ40が取り付けられている。なお、筐体20の形状は限定されるものではなく、環形状でなくても良い。また、カメラ40を取り付ける位置も限定されない。
筐体20の内部には、先述した操作入力に応じてライト50やラインレーザ11,12のオン/オフ、カメラ40による撮影を制御する制御部が設けられている。また、各部に電力を供給するための配線等が設けられている。
【0019】
ライト50は、医師による診療やカメラ40による撮影等の際に、患部を照射する照明である。ライト50は例えば、筐体20の正面(+z方向の面)に配置され、+z方向に光を出射することで、対向する患部を照射する。
ライト50の個数や配置は限定されず、診療や撮影を行う上で必要な明るさおよび照射範囲が確保できれば良い。図2の例では、12個のライト50が、カメラ40の周囲を取り囲むように略楕円の環状に配置されている。
付言すると、12個のライト50は、各々が様々な角度から光を照射することにより、照射範囲内に影を生じ難くする、いわゆる無影効果を有する。
【0020】
カメラ40は、医師等により撮影の操作が行われたことに応じて、患部の撮影を行い、患部の診察のための画像データを生成する。
より具体的には、カメラ40は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子と、取り込んだ光を撮像素子上に結像させる撮像レンズ41とを含んで構成される。そして、カメラ40は、撮影の操作が行われたタイミングで撮影位置(図3を用いて後述)から取り込んだ光に対応する画像データを生成する。これにより、カメラ40による撮影位置にある患部の撮影が行われる。
なお、撮像素子はカメラ40の内部に配置されているため図示していない。また、撮像レンズ41は複数個のレンズの組み合わせにより構成される場合がある。
【0021】
その他、患部撮影装置1は、ライト50とは異なる他の照明を有していても良い。図2の例における患部撮影装置1は、カメラ40の撮像レンズ41の周りに、6個の近接照明42を有している。なお、近接照明42の数や配置は一例であり、限定されない。
近接照明42は、いわゆる口腔内規格写真の撮影等、患部撮影装置1と患者の口腔との間の距離が極端に小さい状態(「近接状態」と呼ぶ場合がある。)での撮影を行う際に、ライト50を補助する照明として用いられる。図2の例のようにライト50が環状に配置されている場合、近接状態では、ライト50の光の拡がり角の都合により、照射範囲の中央部の照度が外周部の照度よりも小さくなる。この結果、撮影に望ましい照度を確保できない恐れがある。そこで、図2に示す患部撮影装置1では、ライト50の照射範囲の中央部を照射可能な近接照明42を設け、近接状態においても撮影に望ましい照度を確保できるようにしている。
【0022】
図3は、患部撮影装置1におけるカメラ40の撮影位置400を説明する図である。図2に対応して、図3における紙面の右側が+x方向、紙面の上側が+y方向、紙面の表(手前)側が+z方向である。
図3において、破線の領域はカメラ40の撮影位置400、実線の領域はライト50の照射範囲200をそれぞれ示している。また、一点鎖線は撮像レンズ41の光軸402を示し、黒点はある距離における撮影位置400の中心401を示している。なお、光軸402は撮像レンズ41の中心から+z方向にz軸に沿って伸びているが、便宜上、-y方向に傾けて記載している。このことに対応して、撮影位置400をカメラ40に対して-y方向にずらして記載している。ライト50による照射範囲200についても同様である。
【0023】
カメラ40は、撮像レンズ41の光軸402を中心として、水平方向(図3における±x方向)の画角および垂直方向(±y方向)の画角を有し、この画角に対応する(画角から定まる)領域を撮影位置400として撮影を行う。
図3に示すように、撮影位置400は、z方向に直交する断面において略矩形状であり、この矩形は患部撮影装置1から離れる(図3における+z方向)ほど大きくなる。言い換えると、撮影位置400は、患部撮影装置1側に頂点を有する略四角錐状に広がっている。
そして、撮影位置400の中心401は、撮像レンズ41の光軸402に一致する。
【0024】
また、患部撮影装置1では、ライト50による照射範囲200が、患部撮影装置1の正面から+z方向にz軸に沿って延びている。そして、照射範囲200は、ある距離における断面が撮影位置400の断面よりも大きくなるように広がっている。したがって、患部撮影装置1では、患部撮影装置1と患部との距離によらず、撮影に際し明るさを確保することができる。
なお、図3においては、照射範囲200の断面が略矩形状である例を示したが、断面形状は限定されるものではない。また、断面の大きさが撮影位置400の断面より小さくなるように構成しても構わない。
【0025】
その他、カメラ40は、いわゆる光学ズームやデジタルズーム等による拡大または縮小の機能を有していても良い。拡大または縮小を行った場合であっても、撮影位置400の中心401は略変化しないので、拡大または縮小を行う前の場合と同様に撮影位置400を視認可能である。
また、カメラ40は、診療のための画像データとして、静止画だけでなく動画を生成可能としても良い。
【0026】
<ラインレーザ11,12>
再び図2を参照して説明すると、ラインレーザ11,12は、z方向に直交する断面において略直線状に伸びる光を照射する。ラインレーザ11,12は例えば、半導体レーザ等のレーザ光源と、ロッドレンズやシリンドリカルレンズ、パウエルレンズ等の光学素子とを用いて構成される。
詳細は図5を用いて後述するが、ラインレーザ11,12は、各々が照射する光によってカメラ40の撮影位置400を視認可能とする。以下では、撮影位置400を視認可能とする(案内する)光を「ガイド光」と呼ぶ場合がある。
【0027】
図2に示すように、ラインレーザ11,12は、カメラ40の撮像レンズ41の周辺に設けられた取付部21,22に取り付けられている。より具体的には、ラインレーザ11は筐体20の+y方向の側面に設けられた取付部21に取り付けられ、ラインレーザ12は筐体20の+x方向の側面に設けられた取付部22に取り付けられている。
患部撮影装置1において取付部21,22を設ける箇所は限定されるものではなく、筐体20の別の位置に設けたり、カメラ40に設けたりしても良い。つまり、ラインレーザ11,12は、筐体20と一体的に設けられるだけでなく、カメラ40と一体的に設けられることとしても良い。
【0028】
なお、ラインレーザ11,12をカメラ40と一体的に設ける場合には、取付部21,22を、撮像レンズ41の周囲に撮像レンズ41と近接するように設けると良い。例えば図2において、隣接する近接照明42同士の間に取付部21,22を設け、ラインレーザ11,12を取り付けると良い。このように配置することで、ガイド光により撮影位置400(図3参照)が視認可能となるように、ラインレーザ11,12を調整することが容易になる。また、図2の例のように筐体20の側面から突出する形で取付部21,22を設ける場合に比べ、患部撮影装置1全体の大きさおよび重量を抑制し易くなる他、患部撮影装置1全体の形状が制限され難くなる。
【0029】
<ガイド光110,120>
図4は、ラインレーザ11,12が照射するガイド光110,120について説明する図であり、(A)は患部撮影装置1を水平方向(+x方向)から見た概略図、(B)は患部撮影装置1を垂直方向(+y方向)から見た概略図である。
ラインレーザ11が照射するガイド光110は、図4(A)に示すように、垂直方向(±y方向)に拡がり角111を有する一方で、図4(B)に示すように、水平方向(±x方向)には略拡がり角を有しない。したがって、ガイド光110のz方向に直交する断面は垂直方向(±y方向)に伸びる略直線状である。
【0030】
ガイド光110は、図4(B)に示すように、カメラ40の光軸402に沿うようにして照射される。したがって、図4(A)から明らかなように、ガイド光110のz方向に直交する断面は、撮影位置400の垂直方向に伸びる略直線状であり、少なくとも予め定められた距離範囲内において、撮影位置400の中心401を通る。
【0031】
また、ラインレーザ12が照射するガイド光120は、図4(A)に示すように、垂直方向(±y方向)には略拡がり角を有しない一方で、図4(B)に示すように、水平方向(±x方向)に拡がり角121を有している。したがって、ガイド光120のz方向に直交する断面は水平方向(図2における±x方向)に伸びる略直線状である。
【0032】
ガイド光120は、図4(A)に示すように、カメラ40の光軸402に沿うようにして照射される。したがって、図4(B)から明らかなように、ガイド光120のz方向に直交する断面は、撮影位置400の水平方向に伸びる略直線状であり、少なくとも予め定められた距離範囲内において、撮影位置400の中心401を通る。
【0033】
図5は、ガイド光110,120による撮影位置400の視覚化について説明する図であり、撮影位置400と、ガイド光110,120とのz方向に直交する断面に相当する。
図示するように、ガイド光110,120は、少なくとも予め定められた距離範囲内において、交点101を有する。
そして、z方向に直交する断面において、垂直方向に伸びる略直線状のガイド光110と、水平方向に伸びるガイド光120とは、何れも撮影位置400の中心401を通るため、ガイド光110,120の交点101は、常に中心401に位置することとなる。
【0034】
図1を用いて説明したように、診療システム100では、患部撮影装置1と患者の口腔内の患部との位置関係が変えられるようになっている。つまり、患部に対するカメラ40の位置が変えられるようになっている。
そして、図3を用いて説明したように、撮影位置400はカメラ40の画角により定まるため、患部に対するカメラ40の位置が変わると、撮影位置400が変化する。したがって、患部撮影装置1により患部の撮影を行う際には、撮影位置400と患部との位置を合わせ、撮影位置400内に患部を位置させる必要がある。
【0035】
図4,5を用いて説明したように、患部撮影装置1では、ラインレーザ11,12の照射するガイド光110,120の交点101が、常に撮影位置400の中心401に位置する。
つまり、患部撮影装置1と患者の口腔内の患部との位置関係が変化し、患部に対するカメラ40の位置が変わった場合であっても、撮影位置400の中心401がガイド光110,120の交点101によって視認可能となっている。
【0036】
ここで、ラインレーザ11,12は、撮影位置をユーザに視認可能とするためのガイド光110,120を照射するポインタの一例である。
より詳しくは、ラインレーザ11は、カメラ40による撮影の一方向に伸びるガイド光110を照射する第1のポインタの一例であり、垂直方向に伸びるガイド光110を照射可能である。また、ラインレーザ12は、カメラ40による撮影の一方向と交差する方向に伸びるガイド光120を照射する第2のポインタの一例であり、水平方向に伸びるガイド光120を照射可能である。
【0037】
ここで、ラインレーザ11,12に代えて、断面形状が点や十字となるポインタを1つのみ使用することも考えられる。しかしながら、患部とカメラ40との位置関係が変化した場合であってもポインタの光と中心401とが一致した状態を保つようにするためには、ポインタの光軸をカメラ40の光軸402に沿わせる必要がある。つまり、光軸402上にポインタを設ける必要がある。そして、このポインタが撮影時にも光軸402上にあると、患部の撮影の妨げになってしまう。
これに対し、第1の実施の形態では、複数のガイド光の交点を光軸402に沿わせているため、光軸402上にポインタを設ける必要がない。そして、複数のガイド光の交点で中心401を示すことで、患部とカメラ40との位置関係が変化した場合であっても、ガイド光の交点と中心401とが略一致した状態を保つことができる。
【0038】
なお、ラインレーザ11,12の光量を大きくし過ぎることは、いわゆるアイセーフティの観点から好ましくない。したがって、ラインレーザ11,12の光量は例えば、ライト50の光量よりも小さくなるように調整される。
しかしながら、ラインレーザ11,12の光量を小さくすると、ラインレーザ11,12とライト50とを同時にオンにした場合に、ガイド光110,120の視認が困難になる恐れがある。したがって、患部撮影装置1では、ラインレーザ11,12がオンされるとライト50がオフされるようになっている。反対に、ラインレーザ11,12がオフされるとライト50がオンされるようになっている。
【0039】
また、図2を用いて説明した近接照明42が設けられる場合には、近接照明42の光量をラインレーザ11,12の光量よりも小さくし、近接照明42がオンされた際のガイド光110,120の視認性の低下を抑制することが良い。
加えて、ラインレーザ11,12がオンされライト50がオフされることに伴い、近接照明42がオンされるようにすると良い。言い換えると、ラインレーザ11,12と近接照明42とを連動させると良い。これにより、ライト50をオフとした場合であっても、近接照明42によって口腔内の観察に必要な照度が確保される。
【0040】
ところで、カメラ40による撮影は、画像データにガイド光110,120が映り込まないように、ラインレーザ11,12がオフの状態で行われると良い。
したがって、ラインレーザ11,12をオフとするための操作入力がなくとも、撮影の操作が行われたことに応じて自動的にラインレーザ11,12がオフとなる構成としても良い。つまり、ラインレーザ11,12のオフと撮影との操作入力が共通化されるようにしても良い。
【0041】
このように、患部撮影装置1における各種機能のオン/オフを連動させる、または、複数の機能に対応する操作入力を共通化することで、操作入力の手間を削減できるだけでなく、入力機器への接触を減らすことができるため、衛生の観点からも望ましい。
なお、ラインレーザ11,12とライト50と近接照明42とについて、オン/オフを連動させるか否かは、医師等の操作入力に基づいて、個別に切り替え可能としても良い。また、ラインレーザ11,12のオフと撮影との操作入力を共通化するか否かを、切り替え可能としても良い。
【0042】
<ガイド光の変形例>
図5の例では、z方向に直交する断面が垂直方向に伸びる略直線状のガイド光110と、水平方向に伸びる略直線状のガイド光120とが直交し、その交点101が撮影位置400の中心401に位置することとした。
ガイド光の態様は限定されるものではなく、カメラ40の撮影位置400を視認可能とするものであれば良い。
図6は、患部撮影装置1の変形例について説明する図であり、(A)は略楕円状のガイド光130,140を照射する場合の例、(B)は対角方向に伸びるガイド光150,160を照射する場合の例である。
【0043】
図6(A)の変形例では、撮影位置400の垂直方向に伸びるガイド光130と、水平方向に伸びるガイド光140とが、略楕円状である点で、図5の例とは相違する。
しかしながら、ガイド光130,140の形状を変化させた場合であっても、垂直方向に伸びるガイド光130と水平方向に伸びるガイド光140との交点102が撮影位置400の中心401に位置していれば、撮影位置400を視認可能である。
【0044】
図6(B)の変形例では、2つのガイド光150,160が、撮影位置400の2つの対角方向に伸びている点で、図5の例とは相違する。
しかしながら、ガイド光150,160が対角方向に伸びている場合であっても、2つのガイド光150,160の交点103が撮影位置400の中心401に位置していれば、撮影位置400を視認可能である。
このように、ガイド光の伸びる方向は、垂直方向および水平方向に限定されず、ガイド光の交差する角度も垂直に限定されない。
【0045】
また、上記した第1の実施の形態および変形例では、2つのガイド光の交点により撮影位置400を視認可能な構成としたが、ガイド光の個数は限定されるものではなく、3つ以上のガイド光の交点により撮影位置400を視認可能な構成としても良い。
【0046】
さらに、上記した第1の実施の形態および変形例においては、ポインタの一例として、ラインレーザを用いることとした。しかしながら、ポインタの種類は限定されるものではなく、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等を用いて構成しても良い。
ただし、LEDは拡散性が高い光源であるため、そのままでは直線状や楕円状のような、ガイド光に好ましい形状とすることは難しい。したがって、ポインタとしては、マスクやレンズ等の光学素子を利用して、ライン幅を狭めたLEDを用いると良い。なお、LEDのライン幅を狭めるとは、LEDが出射する光の一方向の拡がり角を、一方向に直交する他方向の拡がり角よりも小さくすることを指す。
【0047】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
先述したように、ポインタを1つのみ用いる場合、撮影時にもポインタがカメラ40の光軸402上にあると、撮影の妨げになってしまう。そこで、第2の実施の形態が適用される患部撮影装置は、ポインタが光軸402上に位置する第1の状態と、ポインタが光軸402上に位置しない第2の状態と、を切り替え可能に構成される。
図7は、第2の実施の形態が適用される患部撮影装置2について説明する図であり、(A)は患部撮影装置2の第1の状態を示す図、(B)は患部撮影装置2の第2の状態を示す図である。なお何れも、図4(A)における患部撮影装置1と同様に、患部撮影装置2を水平方向(+x方向)から見た概略図である。
【0048】
第2の実施の形態が適用される患部撮影装置2は、第1の実施の形態が適用される患部撮影装置1(図2参照)のラインレーザ11,12および取付部21,22に代えて、レーザポインタ17および取付部27を1つ備えている。その他の構成は患部撮影装置1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
レーザポインタ17はポインタの一例であり、ガイド光170を出射する。なお、出射するガイド光170の断面の形状は限定されないが、点や十字のように、中心401に対応する「点」を表現できる形状とすると良い。また、レーザではなくLED等の光源を用いても良いが、「点」を表現するためには、各種の光学素子を用いて拡がり角を小さくする(狭める)ことが好ましい。
【0049】
取付部27は、撮像レンズ41の周囲にレーザポインタ17を取り付ける部分であり、患部撮影装置2の第1の状態と第2の状態とを切り替える切り替え手段を備える。切り替え手段は、光軸402上の位置P1(図7(A)参照)と光軸402上でない位置P2(図7(B)参照)との間における、レーザポインタ17の移動を可能とする。
切り替え手段の構成は限定されるものではなく、回転機構や直動機構、伸縮機構等、各種の機構により、レーザポインタ17の位置の移動を可能とするものであれば良い。
【0050】
図7(A)に示すように、第1の状態ではレーザポインタ17が位置P1にあり、レーザポインタ17がオンされると、ガイド光170が光軸402に沿って出射される。つまり、位置P1は、レーザポインタ17の光軸と撮像レンズ41の光軸402とが略一致する位置である。このような第1の状態においては、患部とカメラ40との位置関係によらず、ガイド光170が中心401を示し続ける。したがって、患部に対するカメラ40の位置が変化した場合であっても撮影位置400を視認可能となる。
【0051】
他方、図7(B)に示すように、第2の状態ではレーザポインタ17が光軸402上から外れた位置P2にある。このような第2の状態においては、撮像レンズ41から見てレーザポインタ17と中心401とが被らないので、レーザポインタ17は撮影の妨げとならない。
なお、第2の状態におけるレーザポインタ17の位置は、光軸402上でなければ良く、限定されない。ただし、位置P2のように撮像レンズ41の画角から外れた位置にすることで、画像データへのレーザポインタ17の映り込みを完全に防ぐことができる。
【0052】
第1の状態と第2の状態との切り替えは、医師等による明示的な操作入力に基づいて行われる他、レーザポインタ17のオン/オフに伴って自動的に行われるようにしても良い。より具体的には、患部撮影装置2の制御部は、レーザポインタ17がオンされると第1の状態となり、レーザポインタ17がオフされると第2の状態となるように、取付部27の切り替え手段を制御可能としても良い。
【0053】
その他、レーザポインタ17の光量は、第1の実施の形態におけるラインレーザ11,12と同様に、ライト50の光量よりも小さくなるように調整されると良い。この場合、ガイド光170の視認性を確保するため、レーザポインタ17がオンされるとライト50がオフされ、レーザポインタ17がオフされるとライト50がオンされるように構成すると良い。
また、第1の実施の形態と同様に、レーザポインタ17と近接照明42とのオン/オフを連動させたり、レーザポインタ17のオフと撮影との操作入力を共通化したりしても良い。
【0054】
<その他>
以上、本発明の実施の形態について、患者の口腔内の患部を対象とする場合を例に説明したが、患部の箇所は限定されるものではなく、例えば耳鼻や目元、皮膚のような他の箇所を対象としても良い。また、犬や猫のような人間以外の動物を対象としても良い。
なお、図1では、患者の口腔内の患部を対象とする診療システム100を例示したが、診療システムの構成は対象に合わせて適宜変更して良い。
【0055】
本発明を実施する形態は、上記した例に限られるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。言い換えると、特許請求の範囲およびその趣旨から逸脱することなく、多様な変更が可能なことが理解される。
各構成の一部を省略したり、各構成に対して他の機能を付加したりしても良い。また、説明した複数の構成例について、一の構成例に含まれる構成と他の構成例に含まれる構成とを入れ替えたり、一の構成例に含まれる構成を他の構成例に付加したりしても構わない。
【符号の説明】
【0056】
1,2…患部撮影装置、8…支持構造、11,12…ラインレーザ、17…レーザポインタ、20…筐体、21,22,27…取付部、40…カメラ、50…ライト、110,120,130,140,150,160,170…ガイド光、100…診療システム、200…照射範囲、400…撮影位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7