(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112455
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】液体比率の測定方法それを用いた吹付材料の品質管理方法
(51)【国際特許分類】
B28C 7/02 20060101AFI20240814BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20240814BHJP
E04G 21/02 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
B28C7/02
G01N33/38
E04G21/02 103B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017464
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武田 昌也
(72)【発明者】
【氏名】高山 浩平
【テーマコード(参考)】
2E172
4G056
【Fターム(参考)】
2E172DC01
2E172DC08
2E172DC11
4G056AA08
4G056CA02
4G056CB01
4G056CB15
4G056CB19
4G056CB21
4G056CB34
4G056CB36
4G056CE04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リバウンドの発生が少なく、簡便に施工現場において使用できる液体比率の測定方法及びそれを用いた吹付材料の品質管理方法を提供すること。
【解決手段】固形材料を圧送して供給する固形材料供給部及び液体ポンプから液体材料を圧送して供給する液体材料供給部を圧送方向に対してこの順で備え、圧送しながら固形材料に液体材料を添加混合して吹付材料を吐出する吐出装置を用いた吹付材料の製造方法において、下記式を用いる吹付材料の液体比率の測定方法。
(式)
吹付材料吐出量:吹付材料注入口及び空気排出口を有する蓋を備える円筒状の貯蔵容器に、吹付材料を一定の吐出時間吹き付けて回収し、回収した吹付材料の質量
液体量:吐出時間において液体材料ポンプから圧送された液体の質量
固形分量:吹付材料吐出量-液体量
吹付材料の液体比率(質量%)=(液体量/固形分量)×100
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形材料を圧送して供給する固形材料供給部及び液体ポンプから液体材料を圧送して供給する液体材料供給部を圧送方向に対してこの順で備え、圧送しながら前記固形材料に前記液体材料を添加混合して吹付材料を吐出する吐出装置を用いた吹付材料の製造方法において、下記式を用いる前記吹付材料の液体比率の測定方法。
(式)
吹付材料吐出量:吹付材料注入口及び空気排出口を有する蓋を備える円筒状の貯蔵容器に、前記吹付材料を一定の吐出時間吹き付けて回収し、回収した前記吹付材料の質量
液体量:前記吐出時間において前記液体材料ポンプから圧送された液体の質量
固形分量:前記吹付材料吐出量-前記液体量
吹付材料の液体比率(質量%)=(前記液体量/前記固形分量)×100
【請求項2】
前記吹付材料注入口から噴射される前記吹付材料の噴射角が0~90度である、請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記吹付材料注入口から噴射される前記吹付材料の噴射方向が30~130度である、請求項1又は2に記載の測定方法。
【請求項4】
前記吹付材料注入口までの距離割合が10~80%である、請求項1又は2に記載の測定方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の測定方法により算出した前記吹付材料の液体比率に基づき、前記液体材料吐出量を調整する、吹付材料の品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体比率の測定方法それを用いた吹付材料の品質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の補修・耐火施工には、セメントモルタルやロックウールが施工されることが多い。その施工方法は用途や規模に応じて様々であり、左官工法や吹付工法等が知られている。
【0003】
左官工法は、練混ぜたモルタル等を直接構造物に充填、塗り付ける工法である。左官工法は、手軽である点や作業するのに必要なスペースが小さい点が利点であるが、大断面を補修する際には時間がかかるなど欠点もある。一方吹付工法は、練混ぜたモルタル等を圧縮空気にて吹き付ける工法で大断面を短時間で補修できるが、様々な機械が必要であり、練混ぜプラントの設置等の欠点がある。
【0004】
吹付工法の中には、固形材料と液体材料を別々に調整して吹付ノズル(施工部位)まで圧縮空気にて圧送を行いノズル内で瞬時に練り混ぜたモルタルを吹き付ける乾式吹付工法がある(例えば、特許文献1)。この乾式吹付工法は、練混ぜプラントから離れた場所にモルタルを打設できることが長所として挙げられるため、暗渠、水路、トンネル、交通制限のかかる道路等の特殊作業環境において利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、吹付工法において品質管理のために液体比率(固形成分に対する液体の割合)を測定することがある。吹付材料の液体比率の測定方法として、電子レンジ等を用いて乾燥重量を測定する方法や、フレキシブルコンテナバッグ等に回収して液体ポンプ等の排出量から簡易的に算出する方法等が挙げられる。しかしながら、電子レンジ等の電子機器を施工場所に持ち込むことは容易ではなく、またフレキシブルコンテナバッグ等への回収もリバウンド等が生じるおそれがあり作業環境の面で改善点があった。
【0007】
したがって、本発明は、リバウンドの発生が少なく、簡便に施工現場において使用できる液体比率の測定方法及びそれを用いた吹付材料の品質管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが上記課題について鋭意検討した結果、特定の構造を持つ貯蔵容器に吹付材料を回収することで、リバウンドもなく現場で液体比率の測定を行えることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]固形材料を圧送して供給する固形材料供給部及び液体ポンプから液体材料を圧送して供給する液体材料供給部を圧送方向に対してこの順で備え、圧送しながら固形材料に液体材料を添加混合して吹付材料を吐出する吐出装置を用いた吹付材料の製造方法において、下記式を用いる吹付材料の液体比率の測定方法。
(式)
吹付材料吐出量:吹付材料注入口及び空気排出口を有する蓋を備える円筒状の貯蔵容器に、吹付材料を一定の吐出時間吹き付けて回収し、回収した吹付材料の質量
液体量:吐出時間において液体材料ポンプから圧送された液体の質量
固形分量:吹付材料吐出量-液体量
吹付材料の液体比率(質量%)=(液体量/固形分量)×100
[2]吹付材料注入口から噴射される吹付材料の噴射角が0~90度である、[1]に記載の測定方法。
[3]吹付材料注入口から噴射される吹付材料の噴射方向が30~130度である、[1]又は[2]に記載の測定方法。
[4]吹付材料注入口までの距離割合が10~80%である、[1]又は[2]に記載の測定方法。
[5][1]又は[2]に記載の測定方法により算出した吹付材料の液体比率に基づき、液体材料吐出量を調整する、吹付材料の品質管理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リバウンドの発生が少なく、簡便に施工現場において使用できる液体比率の測定方法及びそれを用いた吹付材料の品質管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明に係る吐出装置及び貯蔵容器の一実施形態を示す模式図である。
【
図2】
図2(a)、(b)及び(c)は、本発明に係る貯蔵容器の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は本発明に係る貯蔵容器の一実施形態を示す模式図であり、(a)は側面から見た図であり、(b)は上面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を適宜参照しながら本発明の一実施形態について説明する。各図は模式図であり、各構成要素の大きさ等は図面に示されたものに限定されるものではない。
【0013】
(吹付材料の液体比率の測定方法)
本実施形態の液体比率の測定方法は、固形材料を圧送して供給する固形材料供給部10及び液体ポンプ70から液体材料を圧送して供給する液体材料供給部20を圧送方向に対してこの順で備え、圧送しながら固形材料に液体材料を添加混合して吹付材料を吐出する吐出装置30を用いた吹付材料の製造方法において、下記式を用いる。
(式)
吹付材料吐出量:吹付材料注入口41及び空気排出口42を有する蓋43を備える円筒状の貯蔵容器40に、吹付材料を一定の吐出時間吹き付けて回収し、回収した吹付材料の質量
液体量:吐出時間において液体材料ポンプ70から圧送された液体の質量
固形分量:吹付材料吐出量-液体量
吹付材料の液体比率(質量%)=(液体量/固形分量)×100
【0014】
吹付材料の吐出量は、一定の吐出時間吹き付けた吹付材料を上述した貯蔵容器40で回収してその質量を測定する。貯蔵容器40を用いることにより、小型であっても、排出される吹付材料と空気を適切に分離でき、リバウンドも少なくすることができる。吐出時間は、測定に必要な吹付材料が回収できる時間であれば特に限定されるものではない。
【0015】
液体量は、吹付材料の吐出時間と同じ時間液体材料ポンプから圧送された液体の流量を流量計等から測定し、その流量から比重を考慮して質量を算出する。液体材料がスラリー等の固形成分を含む場合、スラリー等の水粉体比等からそこに含まれる液体のみの質量を算出して液体量とする。
【0016】
固形分量は、吹付材料吐出量と液体量との差を求めることで算出することができる。固形分とは、吹付材料中に含まれる固形材料の質量と、液体材料がスラリー等の固形成分を含む場合にはその固形成分の質量とを合計したものを指す。
【0017】
算出した液体量と固形分量から吹付材料における液体比率を測定することができる。
【0018】
(吐出装置を用いた吹付材料の製造方法)
図1は、本発明に係る吐出装置及び貯蔵容器の一実施形態を示す模式図である。
吐出装置30は、固形材料供給部10と液体材料供給部20とが少なくとも備えられていればよい。例えば、
図1に示す本実施形態に係る吐出装置30は固形材料を圧送するためのエアーコンプレッサー50、固形材料供給部10、材料輸送ホース60、液体材料を圧送するためのポンプ70、及び液体材料を材料輸送ホース60内に供給する液体材料供給部20を備える。
【0019】
固形材料供給部10は、吹付材料を供給する機材であればよく、例えば、モルタル吹付機、コンクリート吹付機、乾式吹付機、ロックウール吹付機が挙げられる。固形材料は用途に応じて適宜調整すればよく、例えば、セメント、骨材等を配合したセメント系材料、ロックウール、セメント・ロックウール混綿等の耐火材料、発泡ウレタン等の被覆材料が挙げられる。固形材料供給部10はコンプレッサー50等の圧送手段が接続されており、空気圧送によって固形材料が液体材料供給部20を備える材料輸送ホース60に送られる。
【0020】
材料輸送ホース60は耐圧ホースであれば特に限定されない。材料輸送ホース60は、液体材料供給部20を備え、貯蔵容器40へと接続される。材料輸送ホース60の長さは、施工箇所までの距離に応じて適宜調整することができ、例えば、20~200mであってもよく、50~100mであってもよい。液体材料供給部20の設置位置は材料輸送ホース60の貯蔵容器40側末端から0.2~1.5mであることが好ましく、0.3~1.0mであることがより好ましい。材料輸送ホース60における液体材料供給部20の設置位置が上記範囲内であれば、固形材料を長距離輸送した場合であっても、材料輸送ホース60内に固形材料が付着しにくく、建設材料を連続して調製しやすい。
【0021】
液体材料供給部材20は固形材料に液体を添加できるものであればよく、例えば、シャワーリング、ウォーターリング、O-リングと呼ばれる環の中心方向に液体が供給される環状部材、材料輸送ホース60内部に設置され、固形材料と同軸方向に吐出する吐出管、吹付ノズル80の外周から液体材料を固形材料と混合されるように吐出するリング状ウォーターガンが挙げられる。液体材料供給部材20には、液体材料がポンプ70から液体材料供給ホースを介して供給される。供給される液体材料は特に限定されるものではなく、例えば、水であってもよく、ポリマーや他の添加剤を含む水溶液であってもよく、セメントスラリーであってもよい。
【0022】
液体材料供給部材20から供給する液体材料の供給量は、使用目的、使用材料等の条件に応じて適宜調整することができる。固形材料がセメント系材料の場合、液体材料の供給量は、例えば、固形材料100質量部に対して2~40質量部であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましく、10~20質量部であることが更に好ましい。
【0023】
吐出装置30において、固形材料と液体材料が混合されて吹付材料が調製され、吹付ノズル80等を経て施工現場で吹付材料として使用される。
【0024】
(吹付材料の吐出量計測用の貯蔵容器)
上述した吐出装置30等の吹付装置を用いる際、吹付材料の液体比率を測定するために貯蔵容器40を使用する。
【0025】
吐出装置30において、固形材料と液体材料が混合されて吹付材料が調製され、吹付ノズル80等を経て吹付材料が貯蔵容器40へと供給される。
【0026】
貯蔵容器40は、吹付材料注入口41及び空気排出口42を有する蓋43を備える円筒状の容器である。
図2(a)、(b)及び(c)は、本発明に係る貯蔵容器の一実施形態を示す模式断面図である。本明細書において、「円筒状」とは底面及び上面が円形又は楕円形であり、底面及び上面の面積が同じである円柱状のものや底面及び上面の面積が異なる円錐台状も含まれる。貯蔵容器40は円筒状であることから、吹付材料が内壁に沿って吐出されるため内壁への吹付材料が付着しにくいため材料分離抵抗性がよく、また吹付材料と空気が分離しやすいため空気排出口から空気が適切に排出されてリバウンドも少なくなる。
【0027】
貯蔵容器40の大きさは特に限定されるものではなく、製造する建設材料の容量や施工場所の広さ等に応じて適宜決定することができる。貯蔵容器40の大きさとしては、持ち運びができるため施工箇所の汎用性に優れるという観点から、例えば、直径20~100cm、高さ30~100cmとすることができる。
【0028】
吹付材料注入口41は、吐出される吹付材料を注入することができる孔が蓋43に空いていればよい。吹付材料注入口41は、例えば、
図2(a)及び(b)のように吹付ノズル80を差し込むことで吹付材料の噴射角及び噴射方向を調整する孔でもよく、
図2(c)のように塩化ビニル等の管で吹付材料の噴射角及び噴射方向を予め調整した孔でもよい。吹付材料注入口41の大きさは特に限定されるものではなく、貯蔵容器40の大きさや差し込む吹付ノズル80の大きさ等に応じて適宜決定することができ、例えば、3~15cmとすることができる。
【0029】
図3は本発明に係る貯蔵容器の一実施形態を示す模式図であり、(a)は側面から見た図であり、(b)は上面から見た図である。吹付材料注入口41から吹付材料を注入する際には吹付材料の噴射角α、噴射方向β及び吹付材料注入口までの距離割合γを調整することができる。
【0030】
噴射角αは貯蔵容器40を側面から見た際に吹付材料が吐出される角度である。
図3(a)に示されるように、吹付材料注入口41の中心点Pを通り貯蔵容器40の底面に向かって垂直に引いた線を噴射角αの0度基準線とし、0度基準線から吹付材料の吐出方向の角度を噴射角αとする。噴射角αは吹付材料注入口41に差し込む吹付ノズル80の角度を調整することによって制御することができる。
図2(c)のように吹付材料注入口41が管等により固定化されている場合は、0度基準線に対するその管の吐出口方向の角度を噴射角αとすることができる。吐出角αは、内壁への付着等による材料分離を起こしにくく、リバウンドが一層生じにくいという観点から、0~90度であることが好ましく、30~90度であることがより好ましく、60~90度であることが更に好ましい。
【0031】
噴射方向βは貯蔵容器40を上面から見た際に吹付材料が吐出される角度である。
図3(b)に示されるように、貯蔵容器40の中心点Qから吹付材料注入口41の中心点Pを通り貯蔵容器40の側面に向かって引いた線を噴射方向βの0度基準線とし、0度基準線から吹付材料の吐出方向の角度を噴射方向βとする。噴射方向βは吹付材料注入口41に差し込む吹付ノズル80の角度を調整することによって制御することができる。
図2(c)のように吹付材料注入口41が管等により固定化されている場合は、0度基準線に対するその管の吐出口方向の角度を噴射方向βとすることができる。噴射方向βは、内壁への付着等による材料分離を起こしにくく、リバウンドが一層生じにくいという観点から、30~130度であることが好ましく、60~140度であることがより好ましく、80~110度であることが更に好ましい。
【0032】
吹付材料注入口までの距離割合γは、噴射方向βの0度基準線が貯蔵容器40の側面と接する点を接点Rとしたとき、線QRの長さに対する線PRの長さの割合(%、([線PRの長さ]/[線QRの長さ])x100)である。すなわち、距離割合γは貯蔵容器40の側面から貯蔵容器40の中心に向かってどの程度の位置にあるのかを示している。距離割合γは、内壁への付着等による材料分離を起こしにくく、リバウンドが一層生じにくいという観点から、10~80%であることが好ましく、15~75%であることがより好ましく、20~60%であることが更に好ましい。
【0033】
空気排出口42は、吐出される吹付材料と共に圧送されてくる空気を排出することができる孔が蓋43に空いていればよい。空気排出口42は蓋43に開けられた孔であってもよく、菅等で空気の排出方向を固定化したものであってもよい。空気排出口42は、吐出された吹付材料が貯蔵容器40にぶつかり跳ね返るリバウンドが貯蔵容器40外に更に出にくくなるという観点から、管が接続されていることが好ましく、L字型の管が接続されていることがより好ましい。空気排出口42の大きさは特に限定されるものではなく、貯蔵容器40の大きさ等に応じて適宜決定することができ、例えば、5~15cmとすることができる。空気排出口の位置は特に限定されるものではなく、リバウンドが一層少なく、圧送空気のみを排出しやすいという観点から、蓋43の中心付近にあることが好ましい。
【0034】
(吹付材料の品質管理方法)
上記測定方法により算出した吹付材料の液体比率に基づき、液体材料吐出量を調整することで吹付材料の品質管理を行うことができる。品質管理方法としては必要とする品質が得られるように適宜固形材料や液体材料の吐出量を調整すればよい。品質管理方法としては、例えば、液体比率が低い場合は液体材料の流量を上げる又は固形材料の吐出量を下げる、液体比率が高い場合は液体材料の流量を下げる又は固形材料の吐出量を上げる、という方法が挙げられる。
【0035】
本実施形態の液体比率の測定方法によれば、電子機器等の設備が不要で比較的小型な貯蔵容器により、リバウンドの発生も抑制できる。そのため、適宜測定した液体比率に基づき、固形材料や液体材料の吐出量を調整することで吹付材料の品質の管理も行うことができる。このような測定方法及び品質管理方法は、通常の施工現場に加え、閉所や高所といった作業環境が限定されている現場において好適に用いることができる。
【実施例0036】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは
ない。各試験は20℃環境下にて行った。
【0037】
[材料]
左官材;市販断面修復補修用ポリマーセメントモルタル(セメント/細骨材比1:2)
グラウト材;市販無収縮モルタル(セメント/細骨材比1:1)
吹付けロックウール;市販ロックウール粒状綿
【0038】
各種モルタル及び吹付けロックウールは下記の方法により製造した。
[モルタル製造]
エアーコンプレッサを介して乾式モルタル吹付機アリバ237を用い、プレミックスモルタル10kgを耐圧ホースで20m空気圧送した。プレミックスモルタル100質量部に対してグラウト材では17~20質量部、左官材では11~14質量部の水を一軸偏心ネジポンプで圧送した。プレミックスモルタルの空気圧送ホ-スの途中に設置した液体材料供給部から添加混合してモルタルを調製した。
[吹付けロックウール製造]
ブロアーを介してロックウール吹付機を用いロックウール粒状綿を吹付ガン先まで空気搬送した。所定の濃度のセメントスラリー(セメント:水=1:2又は1:2.25)のをスラリーポンプを用い、吹付ガン先まで圧送した。吹付ガン先で吐出されるロックウール粒状綿にセメントスラリーをまぶす様にロックウール粒状綿:セメント=60±5:40±5の割合となるようにガン先に設置されたノズルチップで噴霧されるよう調製した。調製して得られた吹付けロックウールを貯蔵容器に30秒間回収した。
【0039】
[貯蔵容器の検討]
貯蔵容器は、直径10cmのL字型空気排出口と直径5cmの吹付材料注入口を有する蓋を備える、直径30cmx高さ40cmの円筒状のものを用いた。噴射角及び噴射方向は表1に示す。
【0040】
貯蔵容器に関する評価方法は下記のとおりである。
・取得安定性
貯蔵容器に1分間吹付材料の圧送を行いその際に貯蔵容器の空気排出孔から出てくる粉塵及びリバウンドの量を評価した。
◎:空気排出孔からリバウンドが発生しない。
〇:空気排出孔からわずかにリバウンドが発生した。
△:空気排出孔から吹付量に対して1割程度のリバウンドが発生した。
×:空気排出孔から吹付量に対して3割程度のリバウンドが発生した。
・分離抵抗性
得られた吹付材料を目視で観察し分離抵抗性を評価した。
◎:装置内壁に固形成分(セメントペースト及び骨材、ロックウール等)が若干付着しており、吹付材料が分離していない。
〇:装置内壁に固形成分が付着しており、吹付材料が分離していない。
△:装置内壁に固形成分が付着しており、吹付材料が分離している。
×:装置内壁に固形成分が付着しており、吹付材料が分離し、水が浮いている。
【0041】
【0042】
実施例の吹付材料はいずれもリバウンドの発生が少なく、材料分離も少なかった。特にNo.3-2-1、3-2-2、3-3-1及び3-3-2の貯蔵容器は、貯蔵容器の空気排出孔からリバウンドが発生せず、材料の分離も見られず特に良好な結果となった。このため、液体比率の測定にはNo.3-2-2の貯蔵容器を用いた。
【0043】
[液体比率の測定方法]
吹付モルタルについて下記に示す方法で液体比率を測定した。表中の水量及び測定水量は固形材料に対する割合であり、水量は吹付材料調製における理論値であり、測定水量は算出した実測値である。
・測定方法1:貯蔵容器での測定方法
貯蔵容器へ吹付し吐出された吹付材料(モルタル及び吹付けロックウール)の質量を測定した。その後下記に示す式に従い吹付材料の水粉体比を算出した。吐出時間は60秒とした。
(式)
吹付材料吐出量:吹付材料注入口及び空気排出口を有する蓋を備える円筒状の貯蔵容器に、吹付材料を一定の吐出時間吹き付けて回収し、回収した吹付材料の質量
液体量:吐出時間において液体材料ポンプから圧送された液体の質量
固形分量:吹付材料吐出量-液体量
吹付材料の液体比率(質量%)=(液体量/固形分量)×100
・測定方法2:電子レンジでの測定方法
測定方法1の貯蔵容器に回収しモルタル50gの質量を測定した。回収したモルタルを電子レンジを用いてモルタルの質量変化が無くなるまで加熱し(500W、1分間x10回)、加熱後のモルタルの質量を測定した。加熱前のモルタルの重量に対する加熱前後のモルタルの質量差の割合を算出し、算出された割合をモルタルの液体比率(質量%)とした。
・測定方法3:フレキシブルコンテナバッグでの測定方法
貯蔵容器をフレキシブルコンテナバッグに変更したこと以外は、測定方法1と同様の方法にて行った。
【0044】
[フレッシュ性状の測定]
回収したモルタルについて下記に示す試験を行い、同一性状のモルタルが回収できていることを確認した。液体比率の測定結果を表2~4に示す。参考例として吹付ではなく各種ミキサにて練り混ぜたモルタルの試験結果を表5に示す。
・流動性試験
JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」のセメントペースト容器(フローコーン)にモルタルを充填し、容器引き上げ後のテーブルフロー値(0打フロー値、15打フロー値)を測定した。
・単位容積質量試験
JIS A 1171:2016「ポリマーセメントモルタルの試験方法」6.3単位容積質量試験に準拠して、単位容積質量を測定した。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
回収したモルタル及び吹付けロックウールは、貯蔵容器を用いた測定方法でもその他の測定方法と同様に正確な液体比率を算出することができた。また、実施例の測定方法は電源等の特別な装置もいらず、リバウンド等の発生も少なく、非常に簡便に測定することができた。
10・・・固形材料供給部、20・・・液状材料供給部、30・・・吐出装置、40・・・貯蔵容器、41・・・吹付材料注入口、42・・・空気排出口、43・・・蓋、50・・・エアーコンプレッサー、60・・・材料輸送ホース、70・・・液体ポンプ、80・・・吹付ノズル、α・・・噴射角、β・・・噴射方向、γ・・・吹付材料注入口までの距離割合、P・・・吹付材料注入口の中心点、Q・・・貯蔵容器の中心点、R・・・接点。