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特開2024-112456速硬性グラウト組成物及び速硬性グラウト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112456
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】速硬性グラウト組成物及び速硬性グラウト
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20240814BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20240814BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20240814BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B22/08 Z
C04B22/14 B
C04B22/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017465
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】朝見 誠
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 幹太
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB05
4G112PB08
4G112PB11
(57)【要約】
【課題】低温環境下から高温環境下においてもグラウト材としての良好な流動性を有し、作業性に必要な可使時間を確保し、且つ、速硬性及び短時間の強度発現性に優れる速硬性グラウト組成物及び速硬性グラウトを提供すること。
【解決手段】セメント、カルシウムアルミネート類及び石膏類からなる結合材と、炭酸リチウム及び炭酸ナトリウムを含む少なくとも2種類のアルカリ金属炭酸塩と、細骨材と、を含み、炭酸リチウムの平均粒子径が7~85μmであり、炭酸ナトリウムの平均粒子径が12~100μmである、速硬性グラウト組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、カルシウムアルミネート類及び石膏類からなる結合材と、炭酸リチウム及び炭酸ナトリウムを含む少なくとも2種類のアルカリ金属炭酸塩と、細骨材と、を含み、
前記炭酸リチウムの平均粒子径が7~85μmであり、
前記炭酸ナトリウムの平均粒子径が12~100μmである、速硬性グラウト組成物。
【請求項2】
前記アルカリ金属炭酸塩の合計の含有量が、前記結合材100質量部に対し、0.3~1.5質量部である、請求項1に記載の速硬性グラウト組成物。
【請求項3】
減水剤を更に含む、請求項1又は2に記載の速硬性グラウト組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の速硬性グラウト組成物と、水と、を含み、
前記水の含有量が、前記結合材100質量部に対し、32~42質量部である、速硬性グラウト。
【請求項5】
土木学会基準「PCグラウトの流動性試験方法(案)」JSCE-F531:2018に準拠して測定するJ14ロートの流下時間が4~10秒である、請求項4に記載の速硬性グラウト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速硬性グラウト組成物及び速硬性グラウトに関する。
【背景技術】
【0002】
土木構造物や建築構造物の構築又は補修、或いは機械の設置等において、流動性の高いセメント系グラウト材が用いられている。中でも緊急補修及び補強工事のために施工時間が限られている場合は、硬化速度が速く、且つ、短時間で所望の強度を確保できる速硬性グラウト材が広く用いられている。
【0003】
速硬性グラウト材としては、特定の速硬性水硬性材料を用いる特許文献1に記載の発明や、特定のブレーン比表面積を有する速硬材を用いた特許文献2に記載の発明が知られている。
【0004】
また、特許文献3では、速硬成分に加え、短時間強度発現性や流動性および可使時間を確保するためにアルカリ炭酸塩を使用したモルタルが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-191332号公報
【特許文献2】特開2001-294469号公報
【特許文献3】特開2005-263614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グラウト材は低温環境下から高温環境下において強度だけでなく十分な作業性を確保できる可使時間を有することが求められている。しかしながら、速硬性を向上させるための速硬成分によっては温度依存性が高く、低温環境下から高温環境下まで幅広い温度条件において流動性、作業性及び圧縮強度といった性能を両立することが困難であった。
【0007】
したがって、本発明は、低温環境下から高温環境下においてもグラウト材としての良好な流動性を有し、作業性に必要な可使時間を確保し、且つ、速硬性及び短時間の強度発現性に優れる速硬性グラウト組成物及び速硬性グラウトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題について本発明者が鋭意検討した結果、炭酸リチウム及び炭酸ナトリウムが特定の平均粒子径であることにより、良好な流動性、可使時間を有しつつ、速硬性であり硬化時の強度発現性にも優れる速硬性グラウト組成物及び速硬性グラウトが得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]セメント、カルシウムアルミネート類及び石膏類からなる結合材と、炭酸リチウム及び炭酸ナトリウムを含む少なくとも2種類のアルカリ金属炭酸塩と、細骨材と、を含み、炭酸リチウムの平均粒子径が7~85μmであり、炭酸ナトリウムの平均粒子径が12~100μmである、速硬性グラウト組成物。
[2]アルカリ金属炭酸塩の合計の含有量が、結合材100質量部に対し、0.3~1.5質量部である、[1]に記載の速硬性グラウト組成物。
[3]減水剤を更に含む、[1]又は[2]に記載の速硬性グラウト組成物。
[4][1]又は[2]に記載の速硬性グラウト組成物と、水と、を含み、水の含有量が、結合材100質量部に対し、32~42質量部である、速硬性グラウト。
[5]土木学会基準「PCグラウトの流動性試験方法(案)」JSCE-F531:2018に準拠して測定するJ14ロートの流下時間が4~10秒である、[4]に記載の速硬性グラウト。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低温環境下から高温環境下においてもグラウト材としての良好な流動性を有し、作業性に必要な可使時間を確保し、且つ、速硬性及び短時間の強度発現性に優れる速硬性グラウト組成物及び速硬性グラウトを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本実施形態の速硬性グラウト組成物は、セメント、カルシウムアルミネート類及び石膏類からなる結合材と、炭酸リチウム及び炭酸ナトリウムを含む少なくとも2種類のアルカリ金属炭酸塩と、細骨材と、を含む。
【0013】
セメントは、種々のものを使用することができ、例えば、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント;高炉スラグ、フライアッシュ又はシリカフュームを含む混合セメント;エコセメント等が挙げられる。セメントとしては、初期の強度発現性及び流動性の向上を両立しやすいという観点から、普通ポルトランドセメント又は早強ポルトランドセメントが好ましい。セメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0014】
セメントの含有量は、結合材100質量部に対し、30~80質量部であることが好ましく、35~70質量部であることがより好ましく、38~60質量部であることが更に好ましく、40~55質量部であることが特に好ましい。セメントの含有量が上記範囲内であれば、良好な流動性が得られ易く且つ初期の強度発現性に優れやすい。
【0015】
カルシウムアルミネート類は、CaOをC、AlをA、NaOをN、及びFeをFとして表したとき、CA、CA、C12、CA、又はCA等と表示される鉱物組成を有するカルシウムアルミネート、CAF等と表示されるカルシウムアルミノフェライト、カルシウムアルミネートにハロゲンが固溶又は置換したC・CaFやC11・CaF等と表示されるカルシウムフルオロアルミネートを含むカルシウムハロアルミネート、CNAやC等と表示されるカルシウムナトリウムアルミネート、カルシウムリチウムアルミネート、アルミナセメント、並びにC・CaSO等と表示されるカルシウムサルホアルミネートを総称するものである。このカルシウムアルミネート類は、結晶質のもの、非結晶質のもの、非晶質及び結晶質が混在したもののいずれも使用可能である。カルシウムアルミネート類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。カルシウムアルミネート類の粉末度は、初期強度発現性をより向上させるという観点から、ブレーン比表面積で3000cm/g以上であることが好ましく、5000cm/g以上であることがより好ましい。また、カルシウムアルミネート類の粉末度は、ブレーン比表面積で8000cm/g以下であることが好ましい。
【0016】
カルシウムアルミネート類の含有量は、結合材100質量部に対し、10~45質量部であることが好ましく、15~40質量部であることがより好ましく、20~35質量部であることが更に好ましく、25~32質量部であることが特に好ましい。カルシウムアルミネート類の含有量が上記範囲内であれば、速硬性と可使時間の両立及び初期の強度発現性に優れやすい。
【0017】
石膏類としては、例えば、無水石膏、半水石膏、二水石膏が挙げられる。石膏類としては、強度発現性を更に向上させるという観点から、無水石膏が好ましい。石膏類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0018】
石膏類のブレーン比表面積は3000~10000cm/gである。石膏類のブレーン比表面積が上記範囲外であると、より高い初期の強度発現性が得られない。石膏類のブレーン比表面積は、速硬性及びより高い初期の強度発現性が得られやすいという観点から、3000~9000cm/gであることが好ましく、5000~9000cm/gであることがより好ましく、5000~8000cm/gであることが更に好ましい。
【0019】
石膏類の含有量は、結合材100質量部に対し、無水物換算で5~30質量部であることが好ましく、10~28質量部であることがより好ましく、12~25質量部であることが更に好ましい。石膏類の含有量が上記範囲内であれば、良好な流動性や可使時間を確保し易く且つ速硬性及び初期の強度発現性に優れやすい。
【0020】
アルカリ金属炭酸塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩であればよく、炭酸リチウム及び炭酸ナトリウムを含む少なくとも2種類が含まれる。
【0021】
アルカリ金属炭酸塩の合計の含有量は、結合材100質量部に対し、0.3~1.5質量部であることが好ましく、0.3~1.2質量部であることがより好ましく、0.5~1質量部であることが更に好ましい。アルカリ金属炭酸塩の合計の含有量が上記範囲内であれば、低温環境下から高温環境下において可使時間を確保しやすく、強度発現性も一層向上する。
【0022】
炭酸リチウムの平均粒子径は7~85μmである。炭酸リチウムの平均粒子径が上記範囲外であると、特に低温環境下における流動性、可使時間、初期の強度発現性が低下する。流動性、可使時間、強度発現性を両立しやすいという観点から、炭酸リチウムの平均粒子径は、7.5~70μmであることが好ましく、8~50μmであることがより好ましく、10~30μmであることが更に好ましい。
炭酸リチウムの含有量は、低温環境下から高温環境下において可使時間と強度発現性を両立しやすいという観点から、結合材100質量部に対し、0.15~1.2質量部であることが好ましく、0.15~1質量部であることがより好ましく、0.25~0.5質量部であることが更に好ましい。
【0023】
炭酸ナトリウムの平均粒子径は12~100μmである。炭酸ナトリウムの平均粒子径が上記範囲外であると、低温及び高温環境下における可使時間が低下する。低温環境下から高温環境下において十分な可使時間が得られやすいという観点から、炭酸ナトリウムの平均粒子径は、20~90μmであることが好ましく、25~80μmであることがより好ましく、35~70μmであることが更に好ましい。
【0024】
炭酸ナトリウムの含有量は、結合材100質量部に対し、低温環境下から高温環境下において可使時間と強度発現性を両立しやすいという観点から、結合材100質量部に対し、0.15~1.2質量部であることが好ましく、0.15~1質量部であることがより好ましく、0.25~0.5質量部であることが更に好ましい。
【0025】
本明細書において、「平均粒子径」は、レーザー回折・散乱法で測定されるメジアン径のことを指す。例えば、マイクロトラック粒子径分布装置(MT3300EX II、マイクロトラック・ベル株式会社製)で測定したメジアン径等が挙げられる。
【0026】
細骨材としては、例えば、川砂、珪砂、砕砂、寒水石、石灰石砂、スラグ骨材等が挙げられる。細骨材は、これらの中から、微細な粉や粗い骨材を含まない粒度に調整した珪砂、石灰石砂等を用いることが好ましい。細骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。細骨材は、通常用いられる粒径5mm以下のもの(5mmふるい通過分)を使用するのが好ましい。
【0027】
細骨材の粒度は特に限定されるものではなく、必要とする細骨材の粒度の範囲内で調整することができる。細骨材は、JIS A 1102:2014「骨材のふるい分け試験方法」により規定される粗粒率からその粒度を考慮することができる。モルタルとした時により良好な流動性が得られやすく、ブリーディングを抑制しやすいという観点から、細骨材の粗粒率は、1~4であることが好ましく、1.5~3.8であることがより好ましく、2~3.5であることが最も好ましい。
【0028】
細骨材の含有量は、結合材100質量部に対し、50~250質量部であることが好ましく、60~180質量部であることがより好ましく、80~150質量部であることが更により好ましい。細骨材の含有量が上記範囲内であれば、より良好な流動性を確保しつつ、短時間での強度発現性がより一層優れたものとなる。
【0029】
本実施形態の速硬性グラウト組成物は減水剤を含んでもよい。減水剤は、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤及び流動化剤を含む。このような減水剤としては、JIS A 6204:2011「コンクリート用化学混和剤」に規定される減水剤が挙げられる。減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、メラミン系減水剤が挙げられる。これらの中では、ナフタレンスルホン酸系減水剤が好ましい。減水剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0030】
減水剤の含有量は、結合材100質量部に対し、固形分換算で0.01~3質量部であることが好ましく、0.05~2質量部であることがより好ましく、0.1~1質量部であることが更に好ましい。減水剤の含有量が上記範囲内であれば、モルタルとした際により良好な流動性が得られやすく、圧縮強度も向上しやすい。
【0031】
本実施形態の速硬性グラウト組成物は凝結遅延剤を含有してもよい。凝結遅延剤としては、例えば、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸又はその塩;ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、リン酸塩、アルカリ金属重炭酸塩等の無機塩;糖類が挙げられる。これらの中でも、クエン酸、クエン酸塩、酒石酸及び酒石酸塩が好ましい。凝結遅延剤は、粉体であってもよく、液状体(例えば、水溶液、エマルジョン、懸濁液の形態)であってもよい。凝結遅延剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0032】
凝結遅延剤の含有量は、結合材100質量部に対し、0.01~1質量部であることが好ましく、0.03~0.8質量部であることがより好ましく、0.05~0.5質量部であることが更に好ましい。凝結遅延剤の含有量が上記範囲内であれば、可使時間を更に確保しやすく、初期強度発現性が低下しにくい。
【0033】
本実施形態の速硬性グラウト組成物は発泡剤を含有してもよい。発泡剤は特に限定されず、例えば水と混練後に気体を発生する物質であればよい。発泡剤としては、アルミニウムや亜鉛等の両性金属の粉末、過酸化物質等が挙げられる。発泡剤としては、効果的に発泡し、膨張作用をより一層発揮することができるという観点から、過酸化物質が好ましい。
【0034】
発泡剤の含有量は、結合材100質量部に対して0.01~0.2質量部であることが好ましく、0.03~0.18質量部であることがより好ましく、0.05~0.15質量部であることが更に好ましい。発泡剤の含有量が上記範囲内であれば、速硬性グラウト充填後の沈下減少を防止しやすく、過度な膨張による強度低下を起こしにくい。
【0035】
本実施形態の速硬性グラウト組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で各種混和剤(材)を配合してもよい。混和剤(材)としては、例えば、膨張材、セメント用ポリマー、消泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤、繊維、高炉スラグ微粉末、石粉、土鉱物粉末、スラグ粉末、フライアッシュ、シリカフューム、無機質フィラー、火山灰等が挙げられる。
【0036】
本実施形態の速硬性グラウト組成物を製造する方法は、特に限定されず、例えば、V型混合機や可傾式コンクリートミキサー等の重力式ミキサー、ヘンシェル式ミキサー、噴射型ミキサー、リボンミキサー、パドルミキサー等のミキサーにより混合することで製造することができる。
【0037】
本実施形態の速硬性グラウト組成物は、水と混合して速硬性グラウトとして調製することができ、その水の含有量は用途に応じて適宜調整すればよい。水の含有量は、結合材100質量部に対し、32~42質量部であることが好ましく、34~40質量部であることがより好ましく、36~40質量部であることが更に好ましい。水の含有量が上記範囲内であれば、より流動性を確保しやすく、材料分離の発生、及び初期強度発現性の低下を抑制しやすい。
【0038】
本実施形態の速硬性グラウトの調製は、通常の速硬性グラウト組成物と同様の混練器具を使用することができ、特に限定されるものではない。混練器具としては、例えば、モルタルミキサー、グラウトミキサー、ハンドミキサー、傾胴ミキサー、二軸ミキサー等が挙げられる。
【0039】
本実施形態の速硬性グラウトは、土木学会基準「PCグラウトの流動性試験方法(案)」JSCE-F531:2018に準拠して測定するJ14ロートの流下時間が4~10秒であることが好ましく、4~8秒であることがより好ましく、4~7秒であることが更に好ましい。速硬性グラウトの流下時間が上記範囲内であれば、より狭い間隙等に流し込みが可能となる。
【0040】
本実施形態の速硬性グラウト組成物及び速硬性グラウトによれば、低温環境下から高温環境下において流動性、可使時間、初期から長期の強度発現性を両立することができる。したがって、本実施形態の速硬性グラウト組成物及び速硬性グラウトは、通常の補修作業等に加え、素早い施工が求められている道路や鉄道等の構造物の補修工事、狭い隙間等への間隙充填工事等にも好適に用いることができる。
【実施例0041】
以下、本発明の実施例に基づいて説明するが、本発明がこれらに限定されるものではな
い。
【0042】
[材料]
・セメント
普通ポルトランドセメント
早強ポルトランドセメント
・カルシウムアルミネート類:アルミナセメント(CaO/Al2O3のモル比:1.4、ガラス化率:40%、ブレーン比表面積:5000cm/g)
・石膏類:無水石膏:ブレーン比表面積7000cm/g
・炭酸リチウム
炭酸リチウムA:調製品、平均粒子径6μm
炭酸リチウムB:調製品、平均粒子径9μm
炭酸リチウムC:調製品、平均粒子径15μm
炭酸リチウムD:調製品、平均粒子径32μm
炭酸リチウムD:調製品、平均粒子径90μm
・炭酸ナトリウム
炭酸ナトリウムA:調製品、平均粒子径10μm
炭酸ナトリウムB:調製品、平均粒子径30μm
炭酸ナトリウムC:調製品、平均粒子径65μm
・細骨材:珪砂(粗粒率:2.40)
・減水剤:ナフタレンスルホン酸系高性能減水剤
・凝結遅延剤:クエン酸
・発泡剤:過炭酸ナトリウム
【0043】
[炭酸リチウム及び炭酸ナトリウムの調製方法]
炭酸リチウム及び炭酸ナトリウムは、市販の試薬を所定の平均粒子径になるまでディスクミルで粉砕して調製した。平均粒子径は、マイクロトラック粒子径分布装置(MT3300EX II、マイクロトラック・ベル株式会社製)にて測定した。
【0044】
[速硬性グラウト組成物の配合設計]
各種材料を表1及び表2に示す量とし、セメント、カルシウムアルミネート類及び石膏類からな
る結合材100質量部に対して、細骨材を100質量部、減水剤を0.2質量部、凝結遅延剤を0.1質量部、発泡剤0.1質量部として配合設計した。
【0045】
[速硬性グラウトの作製]
表1に示す環境温度下において、10Lの円筒容器に配合設計した速硬性グラウト組成物と水を添加し、ハンドミキサーで90秒混練して速硬性グラウトを約3L作製した。水は結合材100質量部に対し、38質量部の割合で添加した。
【0046】
[評価方法]
下記の評価方法にて、各種速硬性グラウトの評価を行った。各試験は表1及び表2に記載の温度で行った。結果を表1に示す。
・J漏斗流下値の測定
土木学会基準JSCE-F 541-2013「充填モルタルの流動性試験方法」に準拠し、J14漏斗流下時間を測定した。
・可使時間
練上がり後の速硬性グラウトを、500mLの容器に入れ、練上がり直後から一定時間毎に別の500mLの容器に移し替える作業を実施した。この際、速硬性グラウトの流動性がなくなるまで(別の500mL容器に速硬性グラウト材が落ちなくなるまで)の時間を可使時間とした。
・圧縮強度
土木学会基準JSCE-G 505-2018「円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法(案)」に準じて、各材齢におけるグラウト硬化体の圧縮強度を測定した。供試体の寸法は、直径50mm、高さ100mmとした。養生は各環境温度にて材齢24時間後まで型枠のまま湿潤養生とした。24時間後に型枠を脱枠し、以降所定材齢まで各環境温度にて水中養生とした。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
実施例の速硬性グラウトは良好な流動性と可使時間を有しながら、高い圧縮強度を示した。一方、炭酸リチウム若しくは炭酸ナトリウムを含まない、又はこれらのアルカリ金属炭酸塩の平均粒子径が所定の範囲を外れた比較例の速硬性グラウトでは、流動性や可使時間を確保できないものや圧縮強度が十分でないものだった。