IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ヒューム株式会社の特許一覧 ▶ パシフィックコンサルタンツ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-セグメントの継手構造 図1
  • 特開-セグメントの継手構造 図2
  • 特開-セグメントの継手構造 図3
  • 特開-セグメントの継手構造 図4
  • 特開-セグメントの継手構造 図5
  • 特開-セグメントの継手構造 図6
  • 特開-セグメントの継手構造 図7
  • 特開-セグメントの継手構造 図8
  • 特開-セグメントの継手構造 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112461
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】セグメントの継手構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/04 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
E21D11/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017477
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592090555
【氏名又は名称】パシフィックコンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】大関 宗孝
(72)【発明者】
【氏名】煙山 史
(72)【発明者】
【氏名】浦澤 康治
(72)【発明者】
【氏名】小泉 淳
(72)【発明者】
【氏名】清水 幸範
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155EB02
2D155GC01
2D155GC04
2D155KB08
(57)【要約】
【課題】主にKセグメントとBセグメントとを好適に接合し、且つ、Kセグメントに作用する抜け出し方向の力にも好適に対抗できるセグメントの継手部構造の提供。
【解決手段】このセグメントの継手部構造は、凹部11の底面に基端が支持され、先端側が雌継手部材12内に向けて傾いて延出された片持ちバネ状の抜け出し防止部材13を備え、抜け出し防止部材13の先端が雄側継手部材10の先端面部に形成された係合凹部14と係合され、セグメントリング軸方向で雌側継手部材12と雄側継手部材10とが互いに離脱する方向の相対移動が防止されるようにしている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のセグメントリングを構成する互いに周方向で接合される円弧版状のセグメント間にあって、一方の接合端面より突出した雄継手部材と、他方の接合端面部に形成された凹部内に配置され、前記両セグメントのセグメントリング軸方向の相対移動に合わせて前記セグメントリング軸方向の一端側より内部に前記雄継手部材が挿入される雌継手部材とを備え、
前記雄継手部材を前記凹部に挿入し、前記両セグメントを互いにセグメントリング軸方向に相対移動させることにより、前記雌継手部材と前記雄継手部材とが連結され、前記周方向で隣り合う両セグメントを周方向に離脱不能に接合するようにしたセグメントの継手部構造において、
前記凹部の底面に基端が支持され、先端側が前記雌継手部材内に向けて傾いて延出された片持ちバネ状の抜け出し防止部材を備え、該抜け出し防止部材の先端が前記雄側継手部材の先端面部又は側面部に形成された係合凹部と係合され、セグメントリング軸方向で前記雌側継手部材と前記雄側継手部材とが互いに離脱する方向の相対移動が防止されるようにしたことを特徴としてなるセグメントの継手部構造。
【請求項2】
前記抜け止め防止部材と前記凹部の底面又は前記雌側継手部材の底板との間に前記抜け出し防止部材の先端側を前記雄継手部材側に付勢する付勢部材を備えた請求項1に記載のセグメントの継手構造。
【請求項3】
前記雌側継手部材は、底板と一体に前記凹部の底面に沿って延出した抜け出し防止部材支持部を備え、該抜け出し防止部材支持部に前記抜け出し防止部材の基端部が固定されている請求項1又は2に記載のセグメントの継手構造。
【請求項4】
前記抜け出し防止部材は、基端部が前記セグメントに埋設されたアンカー鉄筋に固定されている請求項1又は2に記載のセグメントの継手構造。
【請求項5】
前記セグメントは、周方向両端にセグメントリング軸方向に傾斜した傾斜面を備え、セグメントリングを構成する一対のセグメント間にセグメントリング軸方向で挿入されるKセグメントである請求項1又は2に記載のセグメントの継手部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの内部覆工に用いられるセグメント間を連結するセグメントの継手構造、特には、Bセグメントと最後に連結されるKセグメントとを連結するセグメントの継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法よるトンネル構築においては、シールド掘削機の後方側で掘削孔の内周面に沿って複数のセグメントを周方向に連結してセグメントリング1,1…を組み立て、このセグメントリング1,1…をシールド掘削機の進行に合わせて順次トンネル軸方向に連設することによりトンネル内に覆工2がなされている。
【0003】
セグメントリング1は、図8に示すように、円弧版状の通常のセグメント(以下、Aセグメントという)3,3…を順次周方向に連設した後、その周方向両端に周方向の一端にセグメント軸方向に傾斜した傾斜面を有するセグメント(以下、Bセグメントという)4,4を接合し、最後に両Bセグメント4,4間にKセグメント(キーセグメント)5を切羽側より組み込むことにより組み立てられる。
【0004】
このKセグメント5とBセグメント4とのセグメント周方向での接合は、ボルトにより接合する構造が一般的であったが、工期短縮やコストの削減、自動組み立てへの対応を目的として、例えば、コーンコネクタ型の継手構造やフック型の継手等が開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
【0005】
従来のセグメントの継手構造では、一方のセグメントの周方向接合部端面より突出させた雄側継手部材と、他方の接合部端面に開口した凹部内に配置された雌側継手部材とを備えたセグメント間継手が用いられ、雄側継手部材を凹部内に挿入し、セグメントをセグメント軸方向に相対的にスライド移動させることにより、雄雌側両継手部材を互いに係合させて両セグメント間を接合させるようになっている。
【0006】
また、各セグメントリング1,1間の接合には、一方の接合端面より突出したピン状の雄側リング継手部材6と、他方の接合端部に埋設された雌側リング継手部材7とからなるリング間継手が用いられ、雄側リング継手部材6を雌側リング継手部材7に挿入することにより雌雄両リング継手部材6,7が係合し、雌雄両リング継手部材6,7の連結によりセグメント軸方向で隣り合う各セグメントを接合させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-019460号公報
【特許文献2】特開2007-056555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、新たなセグメントリングを組み立てる際には、Kセグメント5の切羽側端面を支持していたジャッキが取り外され、それによって、Kセグメント5には、セグメントリング1に周方向で作用する圧縮力によって両Bセグメント4,4の接合端面に押圧されて切羽側へ抜け出す方向の力が作用する。
【0009】
一方、従来のセグメント間継手は、Bセグメント2に対するKセグメント5のスライド移動に伴って雌雄両継手部材が互いに楔状に係合する構造の場合、雌雄両継手部材間の係合強度が高いとその分、Kセグメント5に対するセグメント軸方向の挿入抵抗力が増し、両Bセグメント4,4間への挿入を阻害する虞があることから、雌雄両継手部材をその係合強度が両Bセグメント間にKセグメントを確実に挿入できるように余裕をもって形成していた。
【0010】
従って、従来のセグメント間継手では、その構造上、上述の如き抜け出し方向の力に対抗することができず、その為、抜け出し方向の力によってKセグメント5と既設のセグメントリング1とを連結するリング間継手6,7に多大な負荷が生じる虞があった。
【0011】
一方、上述の如き問題に対し、従来では、図9に示すように、Kセグメント5とセグメント軸方向で隣接する既設のセグメント2との間にタイロッド等の棒材8を架け渡し、この棒材8でKセグメント5に作用する押出し方向の力に対抗させ、新たなセグメントリングの組立て完了後にタイロッド8を取り外す方法も採用されているが、このような方法では、タイロッド等の棒材8を設置及び撤去する作業に多大な手間がかかるという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、主にKセグメントとBセグメントとを好適に接合し、且つ、Kセグメントに作用する抜け出し方向の力にも好適に対抗できるセグメントの継手部構造の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、円環状のセグメントリングを構成する互いに周方向で接合される円弧版状のセグメント間にあって、一方の接合端面より突出した雄継手部材と、他方の接合端面部に形成された凹部内に配置され、前記両セグメントのセグメントリング軸方向の相対移動に合わせて前記セグメントリング軸方向の一端側より内部に前記雄継手部材が挿入される雌継手部材とを備え、前記雄継手部材を前記凹部に挿入し、前記両セグメントを互いにセグメントリング軸方向に相対移動させることにより、前記雌継手部材と前記雄継手部材とが連結され、前記周方向で隣り合う両セグメントを周方向に離脱不能に接合するようにしたセグメントの継手部構造において、前記凹部の底面に基端が支持され、先端側が前記雌継手部材内に向けて傾いて延出された片持ちバネ状の抜け出し防止部材を備え、該抜け出し防止部材の先端が前記雄側継手部材の先端面部又は側面部に形成された係合凹部と係合され、セグメントリング軸方向で前記雌側継手部材と前記雄側継手部材とが互いに離脱する方向の相対移動が防止されるようにしたことにある。
【0014】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記抜け止め防止部材と前記凹部の底面又は前記雌側継手部材の底板との間に前記抜け出し防止部材の先端側を前記雄継手部材側に付勢する付勢部材を備えたことにある。
【0015】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記雌側継手部材は、底板と一体に前記凹部の底面に沿って延出した抜け出し防止部材支持部を備え、該抜け出し防止部材支持部に前記抜け出し防止部材の基端部が固定されていることにある。
【0016】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記抜け出し防止部材は、基端部が前記セグメントに埋設されたアンカー鉄筋に固定されていることにある。
【0017】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記セグメントは、周方向両端にセグメントリング軸方向に傾斜した傾斜面を備え、セグメントリングを構成する一対のセグメント間にセグメントリング軸方向で挿入されるKセグメントであることにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るセグメントの継手構造は、請求項1の構成を具備することによって、セグメントの抜け出し方向に作用する力に対抗することができる。
【0019】
また、本発明において、請求項2の構成を具備することによって、片持ちバネ状の抜け止め防止部材の自由端の固定条件を変更し、座屈拘束によりKセグメントの抜け出し方向の力に対する抜け止め防止部材の許容圧縮力を高めることができる。
【0020】
また、本発明において、請求項3の構成を具備することによって、雌継手部材と抜け出し防止部材とを一体化し、セグメント製作を効率的に行うことができる。
【0021】
また、本発明において、請求項4の構成を具備することによって、抜け出し防止部材をセグメントに強固に固定でき、且つ、抜け出し防止部材と雌継手部材の相対位置関係の微調整をすることができる。
【0022】
また、本発明において、請求項5の構成を具備することによって、セグメントリングに周方向で圧縮力が作用し、Bセグメントの接合端面に押圧されてキーセグメントに抜け出し方向の力が作用した場合に、当該抜け出し方向の力をセグメント間継手部分に分散して対抗させることができ、リング継手の負担を軽減し、また、タイロッド等の棒材が不要となり、工期及びコストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るセグメントの継手構造の実施態様の一例を示すセグメントリングの部分展開図である。
図2】同上のKセグメントの拡大側面図である。
図3】同上のセグメントの継手構造部分を示す図2中のA-A線矢視位置に対応した拡大横断面図である。
図4】同上の雄継手部材を示す拡大横断面図である。
図5】同上の雌継手部材を示す拡大横断面図である。
図6】同上のセグメントの接合作業時の状態を示す拡大横断面図である。
図7】本発明に係るセグメントの継手構造の他の態様を示す拡大横断断面図である。
図8】シールド工法によるトンネル覆工の概要を示す斜視図である。
図9】同上のKセグメント-Bセグメントの関係及びキーセグメントに作用する力の状態を説明するためのセグメントリングの部分展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明に係るセグメントの継手構造の実施態様を図1図6に示した実施例に基づいて説明する。
【0025】
尚、上述の従来例と同様の構成には同一符号を付して説明し、図中符号3はコンクリートにより円弧版状に形成された円弧版状の通常のセグメント(以下、Aセグメントという)、符号4は周方向の一端にセグメント軸方向に傾斜した傾斜面4aを有するセグメント(以下、Bセグメント4という)、符号5はKセグメント5であって、複数のAセグメント3,3…を順次周方向に連設した後、その周方向両端にBセグメント4,4を接合し、この両Bセグメント4,4間にKセグメント5をセグメント軸方向の一方(切羽側)より楔状に組み込むことにより円環状のセグメントリング1が組み立てられるようになっている。
【0026】
また、既設のセグメントリング1の端面にジャッキ反力をとりつつシールド掘削機を進行させた後、ジャッキを収縮させてトンネル軸方向に新たなセグメントリング1を連設することにより順次トンネル内に覆工2がなされている。
【0027】
尚、以下の説明においては、セグメントリング1を基準として、各セグメントのセグメントリング1の周方向をセグメント周方向、セグメントリング1の半径方向をセグメント厚み方向、セグメントリング1の中心軸方向をセグメント軸方向とし、セグメント軸方向の切羽側からKセグメント5がBセグメント4,4間に挿入される方向奥側を前として説明する。
【0028】
Kセグメント5は、コンクリートにより円弧版状に形成されるとともに、そのセグメント周方向両端に互いに接合されるBセグメント4の接合端面4aに整合してセグメント軸方向で傾斜した傾斜面5a,5aを備えている。
【0029】
Bセグメント4とKセグメント5とを接合するセグメントの継手部構造は、図1図3に示すように、互いに接合される一方の接合端面4a(又は5a)より突出した雄継手部材10と、他方の接合端面部5a(又は4a)に形成された凹部11内に配置された雌継手部材12とを備え、両接合端面4a,5aを互いに突き合わせて雄継手部材10を凹部11に挿入し、且つ、両セグメント4,5を互いにセグメント軸方向に相対移動させることにより、Bセグメント4とKセグメント5とのセグメント軸方向の相対移動に合わせて雌雄両継手部材10,12が連結され、Kセグメント5とBセグメント4とをセグメント周方向で接合させるようになっている。
【0030】
また、このセグメントの継手構造は、凹部11の底面に基端が支持され、先端側が雌継手部材12内に向けて傾いて延出された片持ちバネ状の抜け出し防止部材13を備え、抜け出し防止部材13の先端が雄継手部材10の先端面部に形成された係合凹部14と係合され、セグメントリング軸方向で雌継手部材12と雄継手部材10とが互いに離脱する方向の相対移動が防止されるようにしている。
【0031】
本実施例では、図2に示すように、Kセグメント5のセグメント軸方向前方に雌継手部材12、後方に雄継手部材10がそれぞれ配置され、それと対応してBセグメント4のセグメント軸方向前方に雄継手部材10、後方に雌継手部材12が配置され、両セグメントのセグメント軸方向の相対移動によって、雌雄両継手部材が互いに連結方向に相対移動し、雄継手部材10が凹部11を通して雌継手部材12内に挿入されるようになっている。尚、雌雄両継手部材の配置は、本実施例に限定されず、Kセグメント5に雄継手部材10を配置し、Bセグメント4に雌継手部材12を配置してもよく、また、その逆であってもよい。
【0032】
雄継手部材10は、図4に示すように、一端がセグメント5の周方向端部に埋設され、他端が表面をセグメント厚み方向に向けて接合端面より突出した平板状の雄継手部材本体20と、雄継手部材本体20の両表面にセグメント軸方向に向けて突設された雄側係合部21,21とを備えている。
【0033】
雄継手部材本体20は、鋳鉄鋼等をもって矩形平板状に形成され、その長手方向をセグメント周方向に向け、且つ、その表面をセグメント厚み方向に向けて配置され、その状態にて一端側がセグメントの周方向端部に埋設されることにより、他端がその表面をセグメント厚み方向に向けた状態で接合端面より突出している。尚、図中符号22は雄継手部材本体20の表面に先端部が固定された鉄筋である。
【0034】
また、雄継手部材本体20の先端面部には、係合凹部14が形成され、この係合凹部14に片持ちバネ状の抜け出し防止部材13の先端が係合され、セグメントリング軸方向で雌継手部材12と雄継手部材10とが互いに離脱する方向の相対移動が防止されるようになっている。
【0035】
係合凹部14は、雌継手部材12側(雄継手部材10のスライド移動方向前方)に配置された先端当接面14aと、先端当接面14aと直交し、その下端より雄継手部材10のスライド移動方向後方先端側に傾斜した当て止め面14bとによって平面視レ字状に形成されている。
【0036】
雄側係合部21,21は、鋳鉄鋼等の剛性を有する材料もって矩形断面が連続した形状に形成され、雄継手部材本体20表面の接合部端面5aより所定の間隔を隔てた位置に、その長手方向をセグメント軸方向に向けて溶接により強固に固定されている。
【0037】
また、雄側係合部21,21は、雌継手部材12の内側面形状に合わせて雄継手部材10のスライド移動方向前方側が雄継手部材本体20先端側に向けて傾斜した配置となっている。
【0038】
一方、雌継手部材12は、図5に示すように、セグメント5(又は4)の周方向端部に形成された凹部11内の雄継手部材10のスライド移動方向前方に片寄せた位置で固定されている。
【0039】
凹部11は、Kセグメント5のセグメント軸方向前方及びBセグメント4のセグメント軸方向後方にそれぞれ配置され、それぞれ接合端面側及びセグメント軸方向端面側に開口した凹溝状を成している。
【0040】
雌継手部材12は、セグメント厚み方向に互いに間隔をおいて対向した一対の支持板部30,30を有する本体部31と、各支持板部30,30の内側面部に突設された一対の雌側係合部32,32とを備えている。
【0041】
本体部31は、互いに上下に間隔を置いて配置された一対の支持板部30,30と、両支持板部30,30間に架け渡すように配置された底板33と、凹部11閉鎖端側に配置された端板34とを備え、底板33、端板34及び両支持板部30,30により雄奏継手部材10が挿入される側が開口した中空状に形成され、凹部11に端板34、底板33及び両支持板部30,30の外側面が当該凹部11の各内側面と互いに対向させて嵌め込まれている。
【0042】
尚、底板33は、挿入された雄継手部材10の先端面部との間に一定の距離を隔てて配置され、雄継手部材10の先端部と底板33との間に抜け出し防止部材13の先端側が挿し込まれ、且つ、一定量の弾性変形(撓み)が許容される空間が形成されるようになっている。
【0043】
各支持板部30,30の外側には、セグメント軸方向に間隔を置いた平行配置にセグメントに埋設された複数の鉄筋35,35が備えられ、その端部が溶接により支持板部30,30の外側面に固定され、雌継手部材12がアンカー部材35,35を介してセグメント5(又は4)に固定されている。
【0044】
また、本体部31には、底板33と一体に凹部11の底面に沿って凹部11の端部開口側に向けて延出した抜け出し防止部材支持部36を備え、抜け出し防止部材支持部36に抜け出し防止部材13の基端部が固定されている。
【0045】
抜け出し防止部材支持部36は、底板33の端縁より凹部11の底部内側に所定の角度に折り曲げた状態に延出され、凹部11の底面部に配置されている。
【0046】
各雌側係合部32,32は、各支持板部30,30の互いに対向する内側面にそれぞれ突設され、両セグメントの相対スライド移動に伴って両雌側係合部32,32間に雄継手部材本体20が挿入されるとともに、雌側係合部32,32に対し雄側係合部21,21が相対移動し、雌側係合部32,32の内側に雄側係合部21,21が楔状に係合し、Bセグメント4とKセグメント5とが互いに接合端面を引き付け合って突き合わされた状態で両セグメント4,5が周方向で互いに離脱する方向の移動が規制される。
【0047】
抜け出し防止部材13は、SUP6等のバネ鋼によって一定の厚みを有する帯板状に形成され、基端部が抜け出し防止部材支持部36に沿って溶接又はボルト止め等によって固定され、凹部11の底部から雌継手部材12側に向けて斜め方向に延出された片持ち板バネ状を成している。
【0048】
この抜け出し防止部材13は、雄継手部材10のセグメント軸方向側面及び先端面に押圧されて凹部11底側に一定量の撓みを許容し、弾性復帰して係合凹部14と係合でき、且つ、係合後に雄継手部材10を介して受けるKセグメント5が抜け出す方向に作用する力によって座屈しない強度が得られるように長さ、幅、及び厚みが設定されている。
【0049】
また、抜け出し防止部材13と凹部11の底面又は雌継手部材12の底板33との間には、抜け出し防止部材13の先端側を雄継手部材10側に付勢する付勢部材37を備えるようにしてもよい。
【0050】
この付勢部材37には、例えば、円柱状又は球状に形成されたゴム材、コイルスプリング、板バネ等を用いることができ、好ましくは、抜け出し防止部材13の先端部を支持するように配置する。
【0051】
この付勢部材37を用いることによって、片持ちバネ状の抜け出し防止部材13の自由端の固定条件を変更し、座屈拘束によりKセグメント5の抜け出し方向の力に対する抜け出し防止部材13の許容圧縮力を高めることができる。
【0052】
このように構成されたセグメントの継手部構造では、両Bセグメント4,4間にKセグメント5をセグメント軸方向の一方(切羽側)より組み込むと、雌雄両継手部材10,12が相対移動し、セグメント軸方向の端部開口側から凹部11内に雄継手部材10が挿入され、雄継手部材10が一端側より雌継手部材12に挿入される。
【0053】
その際、図6に示すように、雌継手部材12の両雌側係合部32,32間に雄継手部材本体20が挿入されるとともに、雌側係合部32,32に対し雄側係合部21,21が相対移動し、雌側係合部32,32の内側に雄側係合部21,21が楔状に係合し、Bセグメント4とKセグメント5とが互いに接合端面を引き付け合って突き合わされた状態で両セグメントが周方向で互いに離脱する方向の移動が規制される。
【0054】
また、雌雄両継手部材10,12の相対移動が一定量進むと、雄継手部材10の先端部が抜け出し防止部材13と接触し、更に移動が進むと、雄継手部材10に押圧されて片持ちバネ状の抜け出し防止部材13が弾性変形して撓む。
【0055】
そして、雌雄両継手部材10,12の相対移動がさらに進み、雌側係合部32,32の内側に雄側係合部21,21が楔状に係合すると、抜け出し防止部材13が弾性復帰し、先端が係合凹部14に係合する。
【0056】
また、雄側リング継手部材6が既設のセグメントリング1を構成するセグメントの雌側リング継手部材7に挿入され、Kセグメント5が既設セグメントリング1に対してセグメント軸方向端面が互いに突き合わされた状態に接合される。
【0057】
この状態において、Kセグメント5の切羽側端面を支持していたジャッキが取り外され、セグメントリング1に周方向で圧縮力が作用すると、Kセグメント5には、両Bセグメント4の接合端面4a,4aに押圧されて切羽側へ抜け出す方向の力が作用する。
【0058】
その際、抜け出し防止部材13の先端部が雄継手部材10の先端面部に形成された係合凹部14と係合しているので、Kセグメント5に作用する抜け出し方向の力が雄継手部材10を介して抜け出し防止部材13に対する圧縮力として作用し、抜け出し防止部材13がつっかえ棒のような役割を担い抜け出し方向の力に対抗することができる。
【0059】
よって、Kセグメント5に作用する抜け出し方向の力がリング間継手12,13及び抜け出し防止部材13に分散して作用するので、リング間継手12,13の負担が軽減され、好適にKセグメント5の抜け出しを防止することができる。
【0060】
尚、上述の実施例では、底板33と一体に凹部11の底面に沿って延出した抜け出し防止部材支持部36を備え、抜け出し防止部材支持部36に抜け出し防止部材13の基端部が固定されている場合について説明したが、抜け出し防止部材13は、図7に示すように、セグメント5に埋設されたアンカー鉄筋40に固定したものであってもよい。尚、図中符号41は固定用のボルトである。
【0061】
また、雌雄両継手部材の態様は、上述の実施例に限定されず、多様な態様に対応することができる。例えば、雌雄両継手部材は、鋳鉄等によってそれぞれ一体形成されたものであってもよい。
【0062】
また、上述の実施例では、本発明に係るセグメントの継手構造をBセグメント4・Kセグメント5間の接合に適用した例について説明したが、Aセグメント3,3間又はAセグメント3・Bセグメント4間の接合に適用してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 セグメントリング
2 覆工
3 Aセグメント
4 Bセグメント
5 Kセグメント
6 雄側リング継手部材
7 雌側リング継手部材
10 雄継手部材
11 凹部
12 雌継手部材
13 抜け出し防止部材
14 係合凹部
20 雄継手部材本体
21 雄側係合部
22 鉄筋
30 支持板部
31 本体部
32 雌側係合部
33 底板
34 端板
35 鉄筋
36 抜け出し防止部材支持部
37 付勢部材
40 アンカー鉄筋
41 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9