(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112465
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】深紫外線照射装置、照射制御方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/20 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
A61L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017485
(22)【出願日】2023-02-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、環境省、革新的な省CO2型感染症対策技術等の実用化加速のための実証事業「電気集塵と深紫外線LEDによるハイブリッド式空間浮遊ウイルス不活化装置の実証」委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 伸
(72)【発明者】
【氏名】浅田 規
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH05
4C180HH19
4C180KK04
4C180KK10
4C180LL04
4C180LL11
4C180MM08
(57)【要約】
【課題】ネットワークに接続しなくても消費電力を抑制して不活化効果を奏すること。
【解決手段】本発明は、ダクトを通過する空気に深紫外線を照射する深紫外線照射装置であって、病原体の流行時期データ、及び、前記病原体の不活化受光量データを記憶するメモリ部と、前記流行時期データに基づいた病原体の流行時期に、該病原体の前記不活化受光量データに基づいて、深紫外LEDの出力制御を行う受光量制御部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクトを通過する空気に深紫外線を照射する深紫外線照射装置であって、
病原体の流行時期データ、及び、前記病原体の不活化受光量データを記憶するメモリ部と、
前記流行時期データに基づいた病原体の流行時期に、該病原体の前記不活化受光量データに基づいて、深紫外LEDの出力制御を行う受光量制御部と、
を有する深紫外線照射装置。
【請求項2】
前記流行時期データにより複数の病原体の流行時期が重複していると判断された場合、前記受光量制御部は、複数の病原体のうち最も大きい前記不活化受光量データに基づいて、深紫外LEDの出力制御を行う請求項1に記載の深紫外線照射装置。
【請求項3】
前記深紫外線照射装置が設置されている場所に関する情報の入力を受け付ける操作受付部を有し、
前記受光量制御部は、前記場所に関する情報に応じて、前記流行時期データにおける病原体の流行時期を変更し、
前記受光量制御部は、変更後の前記流行時期データに基づいた病原体の流行時期に、該病原体の前記不活化受光量データに基づいて、深紫外LEDの出力制御を行う請求項1又は2に記載の深紫外線照射装置。
【請求項4】
前記深紫外線照射装置が設置されている位置情報を取得する位置情報取得部を有し、
前記受光量制御部は、前記位置情報に応じて、前記流行時期データにおける病原体の流行時期を変更し、
前記受光量制御部は、変更後の前記流行時期データに基づいた病原体の流行時期に、該病原体の前記不活化受光量データに基づいて、深紫外LEDの出力制御を行う請求項1又は2に記載の深紫外線照射装置。
【請求項5】
前記受光量制御部が、前記病原体の前記不活化受光量データに基づいて、前記深紫外LEDの出力制御を行う場合、
前記深紫外LEDの出力を小さくする補正部を有し、
前記補正部が前記深紫外LEDの出力を小さくした分だけ、空気の流量を低減する請求項1に記載の深紫外線照射装置。
【請求項6】
前記補正部は、前記深紫外LEDの照射時間に対し定められた標準的な第1の残照射量よりも、現在までに照射した照射量に基づく第2の残照射量の方が小さい場合、
前記第2の残照射量に対する前記第1の残照射量の比率を、前記病原体の前記不活化受光量データに基づいた前記深紫外LEDの出力に乗じる請求項5に記載の深紫外線照射装置。
【請求項7】
前記受光量制御部は、前記病原体が冬期に流行する病原体の場合、気温が低い地域ほど前記流行時期を前にずらし、
前記病原体が夏期に流行する病原体の場合、気温が高い地域ほど前記流行時期を前にずらす請求項3に記載の深紫外線照射装置。
【請求項8】
前記流行時期データにより複数の病原体の流行時期が重複していると判断された場合、ユーザーが指定した流行レベルが高い病原体名の前記不活化受光量データに基づいて、深紫外LEDの出力制御を行う請求項1に記載の深紫外線照射装置。
【請求項9】
前記受光量制御部がどの病原体の前記不活化受光量データに基づいて、深紫外LEDの出力制御を行っているかを表示する表示部を有する請求項8に記載の深紫外線照射装置。
【請求項10】
ダクトを通過する空気に深紫外線を照射する深紫外線照射装置が行う照射制御方法であって、
病原体の流行時期データ、及び、前記病原体の不活化受光量データを記憶する
メモリ部に記憶されている病原体の流行時期データを取得する処理と、
前記メモリ部に記憶されている前記病原体の不活化受光量データを取得する処理と、
前記流行時期データに基づいた病原体の流行時期に、該病原体の前記不活化受光量データに基づいて、深紫外LEDの出力制御を行う処理と、
を実行する照射制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深紫外線照射装置、及び照射制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
深紫外線(概ね100~280[nm]の光)は他の紫外線と比較し高い不活化効果があることが知られている。深紫外線はLEDにより照射できるが、深紫外LEDの発光効率は現在数%にとどまっている。近年、深紫外LEDは空気清浄機などの深紫外線照射装置に採用されてきたが、発光効率が低いため不活化効果を得ようとすると、深紫外LEDの照射により消費電力量が増大する場合がある。
【0003】
一方、ノロウイルスやインフルエンザウイルスなど人間が罹患する病原体は、流行する時期がほぼきまっているものがある。また、病原体の種類によって、深紫外LEDによる不活化受光量は異なっている。
【0004】
ネットワーク上から取得した情報に応じて、装置を稼働する技術が考案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、花粉情報やインフルエンザ流行情報などをネットワークから取得し、空気清浄機を稼働する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、深紫外線照射装置をネットワークに接続する必要があり、コスト増となっていた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、ネットワークに接続しなくても消費電力を抑制して不活化効果を奏する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、ダクトを通過する空気に深紫外線を照射する深紫外線照射装置であって、病原体の流行時期データ、及び、前記病原体の不活化受光量データを記憶するメモリ部と、前記流行時期データに基づいた病原体の流行時期に、該病原体の前記不活化受光量データに基づいて、深紫外LEDの出力制御を行う受光量制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
ネットワークに接続しなくても消費電力を抑制して不活化効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】空気清浄機の動作又は処理の概略を説明する図である。
【
図2】一実施形態の空気清浄機の一例を示す図である。
【
図3】一実施形態における空気清浄機の内部構造の一例を示す図である。
【
図4】ダクトの内部構造の別の構成例を部分的に示す斜視図である。
【
図5】空気清浄機のハードウェア構成例を示す図である。
【
図6】制御部の機能をブロックに分けて説明する機能ブロック図の一例である。
【
図7】メモリ部に記憶されている流行時期データの一例を示す図である。
【
図8】メモリ部に記憶されている不活化受光量データの一例を示す図である。
【
図9】深紫外LEDの出力の補正方法を説明する図である。
【
図10】制御部が流行時期データと不活化受光量データに応じて深紫外LEDを照射する制御を説明するフローチャート図の一例である。
【
図11】補正部が深紫外LEDの出力を補正する処理を説明するフローチャート図の一例である。
【
図12】表示部が表示する深紫外線の照射に関する画面例を示す図である。
【
図13】空気清浄機のハードウェア構成例を示す図である。
【
図14】制御部の機能をブロックに分けて説明する機能ブロック図の一例である。
【
図15】制御部が流行時期データと不活化受光量データに応じて深紫外LEDを照射する制御を説明するフローチャート図の一例である。
【
図16】制御部の機能をブロックに分けて説明する機能ブロック図の一例である。
【
図17】空気清浄機の設置時に空気清浄機が行う処理を説明するフローチャート図である。
【
図18】深紫外LEDの照射制御を説明するフローチャート図の一例である。
【
図19】表示部が表示する深紫外線の照射に関する画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、深紫外線の照射制御方法について図面を参照しながら説明する。
【0012】
<空気清浄機の動作の概略>
深紫外LEDの発光効率は現在数%しかなく、電力のほとんどが熱になっており非常に効率が悪い。また、深紫外LEDの出力の切り替えをユーザーが手動で行おうとしても、切り替え後の効果が目に見えないため、一番弱くしてしまいウイルスが不活化されなかったり、一番強くして電気代が高くなったりするおそれがある。
【0013】
年間で流行する季節性のウイルスの種類とウイルスの不活化受光量はほぼわかっているため、本実施形態の空気清浄機はカレンダー機能を有し、各ウイルスの流行時期に各ウイルスの不活化受光量で深紫外LEDを照射する。本実施形態の空気清浄機は、流行する可能性があるウイルスの流行時期データと不活化受光量を有している。空気清浄機は、カレンダーによる現在の日付と流行時期データを比較し、現在、流行しているウイルスを不活化させるために必要な不活化受光量で深紫外LEDを照射する。
【0014】
図1は、本実施形態の空気清浄機100の動作又は処理の概略を説明する図である。空気清浄機100にはカレンダー機能が搭載されているので、空気清浄機100は現在の年月日及び時刻を保持している。また、空気清浄機100は、ウイルスの流行時期データを保持している。
図1の例では、ウイルスAが10月と11月に流行しやすく、ウイルスBが11月~2月に流行しやすい。
【0015】
また、空気清浄機100は、ウイルスごとに不活化受光量が登録された不活化受光量データを有している。不活化受光量とは、ウイルスを不活化するために必要な深紫外LEDの積算照射量である。例えば、ウイルスAの不活化受光量はA[mJ/cm2]であり、ウイルスBの不活化受光量はB[mJ/cm2]である。
【0016】
本実施形態の空気清浄機100は、現在の日付がどのウイルスの流行時期に含まれるかを判断し、該ウイルスの不活化受光量で深紫外LEDを照射する。仮に、同時期に複数のウイルスが流行している場合、空気清浄機100は複数のウイルスを不活性にする不活化受光量のうち高い方の不活化受光量で深紫外LEDを照射する。
【0017】
こうすることで、流行性のウイルスに適した深紫外LEDを照射することができ、ウイルスの罹患を抑制しながら、年間を通じて消費電力を低減することが可能となる。
【0018】
<用語について>
空気清浄機100とは、空気中に浮遊する塵埃、カビ、花粉、ハウスダスト、ウイルス等を除去するための機器である。エアクリーナーともいう。空気清浄機100は、外部から取り込んだ空気をフィルターに通過させ外部に送り出す(循環させる)ためのファン、大きなちりやほこりを収集するプレフィルター、細かいほこりを収集する集じんフィルター、及び、活性炭によって臭気を吸着させる脱臭フィルターなどを並べた構成を有している。深紫外LEDは、空気の流路に1つ以上配置されていればよい。
【0019】
単体の空気清浄機100でなく、例えば空調機、送風機、換気扇等に空気清浄機100が内蔵されていてもよい。また、空気清浄機100の機能がない装置に本実施形態の深紫外LEDが内蔵されていてもよい。深紫外LEDは空気の循環する装置であれば適用可能である。
【0020】
不活化とは、微生物などの病原体を熱、紫外線、薬剤などで死滅させる(感染性を失わせる)ことをいう。不活化には細菌を死滅させることも含む。
【0021】
病原体とは、生物に寄生して病気を起こさせる原生動物、細菌、及びウイルスなどをいう。
【実施例0022】
<構成例>
図2は、一実施形態の空気清浄機100の一例を示す図である。
図2に示す空気清浄機100は、空気を清浄化するための機器である。空気清浄機100又は空気清浄機100のうち深紫外線を照射する構造は深紫外線照射装置の一例である。空気清浄機100は、空気を清浄化するための装置類を収納する筐体10を備える。筐体10は、空気清浄機100の外部の空気を吸い込む吸い込み口11と、筐体10内の装置類により清浄化された空気を空気清浄機100の外部に吹き出す吹き出し口12とを有する。
【0023】
図2に示す例では、吸い込み口11は、筐体10の一方の端部(例えば、下部)に設けられ、吹き出し口12は、筐体10の他方の端部(例えば、上部)に設けられる。吸い込み口11及び吹き出し口12の各々の位置は、これに限られず、他の箇所でもよい。吸い込み口11及び吹き出し口12の各々の設置数は、一つでも複数でもよい。
【0024】
空気清浄機100は、ダクト20、排出装置60及び制御装置80を備える。ダクト20は、電気集塵部40及び露光部70を有する。なお、
図2に示す各構成要素の位置関係は、単なる一例であり、ウイルスを不活化又は細菌を不活化させる所望の効果を奏すれば、これに限定されない。
【0025】
ダクト20は、吸い込み口11と吹き出し口12との間に介在し、吸い込み口11から吹き出し口12に空気を流す導管である。
図2に示す例では、ダクト20は、筐体10の内部に存在する流路である。ダクト20は、例えば、吸い込み口11から吹き出し口12まで接続され、吸い込み口11から流入する空気を吹き出し口12に向けて流す。
【0026】
電気集塵部40は、ダクト20に吸い込まれる空気(以下、"空気A"とも称する)に含まれる微粒子を帯電させ、帯電した微粒子を静電力によって捕集する部位である。微粒子とは、ウイルス又は細菌であるが、ウイルス又は細菌を含む塵埃などの微小物質でもよい。微粒子には、微小粒子状物質(PM2.5)が含まれてもよい。PM2.5とは、空気中に浮遊する粒子のうち、大きさが2.5μm以下の粒子をいう。
【0027】
電気集塵部40は、帯電部30及び捕集部50を有する。帯電部30は、空気Aに含まれる微粒子を帯電させる部位である。帯電部30は、例えば、空気Aに含まれる微粒子をコロナ放電によって帯電させる。
【0028】
捕集部50は、帯電部30を通過した空気Aから、帯電した微粒子を静電力により捕集する部位である。捕集部50は、例えば10nm以上100μm以下の大きさの微粒子を捕集する能力を有する場合、30nm程度の小さなウイルス、100nm程度の新型コロナウイルス(COVID-19)、又は数μmのウイルス飛沫や病原性細菌を捕集できる。なお、捕集部50が捕集可能な微粒子の大きさは、特に制限されない。
【0029】
露光部70は、後述の光源71,72から照射される深紫外線を空気Aに当てることで、空気Aに含まれるウイルスを不活化又は空気Aに含まれる細菌を不活化させる部位である。
【0030】
排出装置60は、ダクト20内から吹き出し口12に空気Aを排出する。排出装置60は、空気清浄機100の外部の空気を吸い込み口11からダクト20内に導入し、捕集部50及び露光部70を通過した空気Aを吹き出し口12に排出する。排出装置60は、例えば、ファン及びモータを有し、ファンをモータによって回転させることで、空気Aを吹き出し口12に排出する。
【0031】
制御装置80は、ユーザーからの操作指示内容に応じて、帯電部30の帯電動作、捕集部50の捕集動作及び排出装置60の排出動作を作動又は停止させる。制御装置80の機能は、メモリに記憶されたプログラムによってCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが動作することにより実現される。制御装置80の機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって実現されてもよい。
【0032】
捕集部50は、所望の捕集機能を満たせば、その配置位置は、特に限定されない。
図2に示す例では、捕集部50は、帯電部30と吹き出し口12との間で、帯電した微粒子を空気Aから静電力により捕集する。これにより、帯電部30において帯電した微粒子が捕集部50に供給されやすくなるので、帯電した微粒子の捕集能力が向上する。排出装置60が帯電部30と吹き出し口12との間に介在する場合、捕集部50は、帯電部30と排出装置60との間で、帯電した微粒子を空気Aから静電力により捕集するのが好ましい。これにより、帯電した微粒子の捕集能力が向上する。
【0033】
排出装置60は、所望の排出機能を満たせば、その配置位置は、特に限定されない。
図2に示す例では、排出装置60は、捕集部50と吹き出し口12との間に配置されている。空気Aに含まれる微粒子は、捕集部50において捕集されるので、排出装置60が捕集部50と吹き出し口12との間に配置されることで、排出装置60が汚れた空気Aで汚染し難くなる。その結果、例えば、排出装置60の交換や洗浄などのメンテナンスにおける安全性が向上する。
【0034】
空気清浄機100は、空気Aに含まれるオゾン(コロナ放電によって生成されたオゾンを含んでよい)をろ過するフィルター90を、捕集部50と吹き出し口12との間に備えてもよい。これにより、吹き出し口12から吹き出す空気に含まれるオゾンの濃度を低減する効果が高まる。排出装置60が捕集部50と吹き出し口12との間に介在する場合、フィルター90は、排出装置60と吹き出し口12との間に介在するのが好ましい。これにより、吹き出し口12から吹き出す空気に含まれるオゾンの濃度を低減する効果が高まる。フィルター90の触媒として、例えば、酸化マンガンを使用することで、オゾン濃度の低減効果は向上する。
【0035】
図3は、一実施形態における空気清浄機100の内部構造の一例を示す図である。なお、
図3では、内部構造の視認性を高めるため、便宜上、いくつかの部材の図示が省略されている。
【0036】
空気清浄機100は、ダクト20内の空気Aの流れ方向13における下流側から上流側に向けて、ダクト20内に紫外線を照射する光源を備える。流れ方向13は、ダクト20が延びる方向でもよい。
図3には、複数の光源71,72が例示されているが、光源の個数は、一つでも三つ以上でもよい。また、空気清浄機100の排出装置60は、ダクト20内から吹き出し口12に空気Aを排出するファンを備える。
図3には、複数のファン61,62が例示されているが、ファンの個数は、一つでも三つ以上でもよい。
【0037】
光源71,72及びファン61,62は、空気Aの流れ方向13に交わる平面(
図3の場合、流れ方向13に直交する平板25)に並べて配置されている。光源71,72及びファン61,62がそのような平面に並べて配置されることで、光源とファンが流れ方向13に配列された不図示の形態に比べて、光源71,72からダクト20内に向けて照射される紫外線は、ファン61,62に遮られ難くなる。よって、光源の個数が比較的少なくても、空気Aに含まれるウイルス又は細菌を不活化させる効果が向上する。
【0038】
なお、光源又はファンが並べて配置される平面は、流れ方向13に対して傾斜した平面でもよい。例えば、傾斜したスペーサが、光源又はファンと取り付け平面との間に介在することで、光源又はファンが並べて配置される平面は、流れ方向13に対して傾斜してもよい。
【0039】
図3に示す例では、光源71,72は、方形状の平板25の一方の対角に位置し、ファン61,62は、方形状の平板25の他方の対角に位置する。これにより、ダクト20内の空気Aの流動性が向上し、光源71,72からの紫外線が空気Aに均一に照射されやすくなるので、空気Aに含まれるウイルス又は空気Aに含まれる細菌を不活化させる効果が向上する。また、光源71,72は、流れ方向13での視点で見ると、ファン61,62と重なっていない。
【0040】
図3に示す例では、光源71,72は、平板25に形成された貫通孔を通して、ダクト20内に向けて紫外線を照射することで、露光部70内において、空気Aに含まれるウイルス又は空気Aに含まれる細菌を不活化させる。なお、光源71,72は、ダクト20(好ましくは、露光部70)内にあっても、空気Aに含まれるウイルス又は空気Aに含まれる細菌を不活化させることができる。
【0041】
図3に示す例では、ファン61,62は、平板25に形成された貫通孔を通して、ダクト20の露光部70内から吹き出し口12に空気Aを排出する。なお、ファン61,62は、ダクト20(好ましくは、露光部70)内にあってもよい。
【0042】
図4(a)は、ダクトの内部構造の別の構成例を部分的に示す斜視図である。
図4(a)では、ファン61,62に対して流れ方向13の上流側に空隙を挟んで配置された光源73が、ダクト20内に配置されている。これにより、光源73からダクト20内に照射される紫外線が遮られ難くなり、光源73からダクト20内に照射される紫外線の偏りは抑制される。よって、空気Aに含まれるウイルス又は空気Aに含まれる細菌を不活化させる効果が向上する。
【0043】
図4(a)に示す例では、光源73は、板28に対して流れ方向13の上流側に配置され、板28の上流側に面する主面に配置されている。これにより、空気清浄機100は、光源73からダクト20内に向けて紫外線を均一に照射できる。また、光源73とファン61,62との間に空隙が生じるように、板28は不図示の支持部により支持されている。これにより、光源73とファン61,62との間の距離が拡大するので、ファン61,62から有害な紫外線が漏れ難くなる。一又は複数の支柱24は、板28及び光源73をダクト20内で支持する支持部の一例である。板28は、ファン61,62に対して上流側に配置されているので、ファン61,62に向かう空気を迂回させる。板28は、ファン61,62との間に空隙を空けて配置され、板28を迂回した空気A又は板28に形成されたスリット75を通過した空気Aは、ファン61,62を介して排出される。また、光源73は、スリット75を通過する空気Aによって冷却されるので、ファン61,62を送風と冷却に兼用できる。
【0044】
このように、板28は、ダクト20内の空気Aが光源73に対して流れ方向13の上流側に流れるように配置されている。これにより、光源73から出力される紫外線が空気Aに照射されやすくなるので、空気Aに含まれるウイルス又は空気Aに含まれる細菌を不活化させる効果が向上する。
【0045】
板28は、ダクト20内の空気Aが通過する一又は複数のスリット75を有する。スリット75は、ダクト20内の空気Aが通過する貫通孔の一例である。スリット75のような貫通孔を板28が設けられることで、空気清浄機100は、板28による空気Aの遮りを抑制でき、空気Aの圧力損失を抑制できる。スリット75は、隣り合う光源73の間に配置される。光源73は、スリット75に平行に配置されている。
【0046】
図4(b)は、ダクト20の内部構造の別の構成例を示す斜視図である。
図4(b)では、空気清浄機100は、ダクト20を流れる流体に向かって光源73から 紫外線を照射し、流体の殺菌又は細菌及びウイルスの不活化を行う。光源73は、例えば、ダクト20を流れる流体に対向するように、上下方向及び左右方向に平行に配置される。
【0047】
光源73は、ダクト20の流体が流れる方向(後向き)と略反対方向(前向き)に紫外線を照射するように、板28上に取り付けられる。板28は、光源73を支持する。板28は、平板形状を有し、流体の流れる方向の下流側(図中の後側)から光源73を支持するように設けられる。板28には、例えば、光源73を作動させるための電源回路等が実装される。
放熱部材35は、光源73から発生する熱エネルギを外部、具体的には、ダクト20を流れる流体に放熱する。放熱部材35は、例えば、アルミニウムや銅等の熱伝導性が相対的に高い材料で構成される。これにより、光源73で発生する熱エネルギを放熱部材35に効率的に伝導させることができる。放熱部材35は、ベース部35aと、フィン部35bとを含む。
【0048】
ベース部35aは、板28に対して相対的に大きな熱容量を有し、板28を通じて光源73から放熱部材35への熱伝導を促進させる。ベース部35aは、例えば、前後方向に沿って見た正面視で、板28と略同じ矩形状を有し、板28よりも十分に大きい前後方向の厚みを有する。
フィン部35bは、ダクト20の流体に接触する表面積を相対的に大きくし、ダクト20を流れる流体への放熱を促進させる。フィン部35bは、例えば、ベース部35aから後方に延び出す(突出する)平板形状を有する。
通流部36は、ダクト20の流体を空気清浄機100の上流側から下流側に向けて通流させる。これにより、ダクト20の流体は、空気清浄機100に堰き止められることなく、空気清浄機100の下流側に向けて流れることができる。例えば、
図4(b)に示すように、通流部36は、板28及びベース部35aを前後方向に貫通する貫通孔である。
【0049】
<ハードウェア構成例>
図5は、空気清浄機100のハードウェア構成例を示す図である。なお、
図5では本実施形態の説明に関して主要な構成部を示すものであり、空気清浄機100は、
図5に示す以外の機能を有していてもよい。
【0050】
空気清浄機100は、電源スイッチ101、電源部102、LED制御部103、深紫外LED部104、制御部105、メモリ部106、時計部107、テンキー部108、及び、表示部109を有している。このうち、制御部105、メモリ部106、時計部107、テンキー部108、及び、表示部109は
図2に示した制御装置80に収納される。
【0051】
電源スイッチ101は、コンセントから供給される電力を電源部102に接続するか否かを切り替えるオルタネートスイッチである。電源スイッチ101は例えば電源オンと電源オフが別々のスイッチでもよい。
【0052】
電源部102は、LED用電源102Aと制御用電源102Bを有している。LED用電源102Aと制御用電源102Bはそれぞれ交流を直流に変換すると共に、それぞれに適切な電圧に降圧する。電源部102がLED用電源102Aと制御用電源102Bに分かれていることで、制御部105と深紫外LED部104が安定動作できる。LED用電源102Aと制御用電源102Bは一体でもよい。
【0053】
LED制御部103は、深紫外LED部104の照射開始と停止を行うと共に、照射時には、制御部105から指示された不活化受光量(出力)で深紫外LED部104が深紫外線を照射するように制御する。LED制御部103は、例えばパルス信号のデューティー比で深紫外LEDの出力を0~100%の間で制御できる。あるいは、LED制御部103は、例えばアナログの電流値や電圧値にて深紫外LEDの出力を指示してもよい。
【0054】
深紫外LED部104は、出力制御が可能な深紫外線を照射するLEDである。深紫外LED部104は深紫外線を照射できれば、高圧水銀ランプ等のランプでもよい。
【0055】
制御部105は、いわゆるマイコン、SoC(システム・オン・チップ)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はAISC(「Application Specific Integrated Circuit」などのコンピュータである。制御部105は、CPU、RAM、ROM、I/F等を有し、CPUがプログラムを実行することで本実施形態の機能を実現してもよいし、回路モジュール等の組み合わせで本実施形態の機能を実現してもよい。
【0056】
メモリ部106は、NVRAM(Non Volatile Random Access Memory)であり、各ウイルスの流行時期データを記憶している。また、メモリ部106は、各ウイルスの不活化受光量データを記憶している。これらの詳細については、
図7,
図8にて説明する。
【0057】
時計部107は、カレンダー機能や時計機能を有する、例えばRTC(Real Time Clock)である。時計部107は、クロック源から時刻・年月日などのデジタルデータを生成して出力する専用のICである。時計部107がソフトウエアにより実現されてもよい。
【0058】
テンキー部108は、初期設定時にユーザーが入力する0~9やアルファベットの入力部である。テンキー部108はハードキーでもよいし、タッチパネルに表示されるソフトキーでもよい。
【0059】
表示部109は、例えば液晶ディスプレイや、数字のみが表示可能なLCD(Liquid Crystal Display)である。表示部109は、現在の時刻、動作状況、清掃や部品交換などのアラート等を表示する。
【0060】
<機能について>
続いて、
図6を参照して空気清浄機100が有する深紫外LEDの出力に関する機能について説明する。
図6は、制御部105の機能をブロックに分けて説明する機能ブロック図の一例である。制御部105は、日付取得部121、流行時期データ取得部122、判断部123、受光量制御部124、及び補正部125を有している。制御部105が有するこれら各機能は、制御部105がプログラムに含まれる命令を実行するか、又は、IC回路が信号を処理することで実現される機能又は手段である。
【0061】
日付取得部121は、空気清浄機100の電源オン時(空気清浄機100の起動時)及び定期的に時計部107から現在の日付を取得する。本実施形態では、日付の切り替わりを契機に深紫外線の照射制御も切り替える。日付が変わったか否かは時計部107を監視することで検出される。
【0062】
流行時期データ取得部122は、空気清浄機100の電源オン時(空気清浄機100の起動時)及び日付が変わったタイミングに、メモリ部106から全てのウイルスの流行時期データを取得する。
【0063】
判断部123は、現在の日付が1つ以上のウイルスの流行時期データ106aに該当するか否かを判断する。すなわち、判断部123は、ウイルスの流行時期が○月○日から×月×日である場合に、現在の日付がこの範囲に入るかを判断する。
【0064】
補正部125は、深紫外LEDの耐用年数が所定以上になるように、深紫外LEDの出力の補正を行う。また、補正部125は、深紫外LEDの出力を補正した分だけ、空気の流量を補正する。補正の詳細は後述する。
【0065】
受光量制御部124は、現在の日付が1つ以上のウイルスの流行時期データ106aに該当すると判断された場合、不活化受光量データ106bをメモリ部106から取得して、LED制御部103に対し、ウイルスを不活化させるための不活化受光量による深紫外の照射を要求する。受光量制御部124は、現在の日付が1つ以上のウイルスの流行時期データ106aに該当しない場合、LED制御部103に対し、標準の出力(例えば30%程度)による深紫外の照射を要求する。
【0066】
<<流行時期データ>>
図7は、メモリ部106に記憶されている流行時期データ106aの一例を示す。
図7では一例として、病原体名と各病原体の流行時期が示されている。病原体名は、インフルエンザ、プール熱(アデノウイルス)、おやふくかぜ(ムンブスウイルス)、及び、ノロウイルスやロタウイルスである。
図7の流行時期データ106aは北半球に出荷される空気清浄機100用であり、南半球に出荷される空気清浄機100には南半球用の流行時期データ106aが用意される。
【0067】
各ウイルスの流行時期は、エンドユーザーが変更できてもよい。また、新たにウイルスとその流行時期をエンドユーザーが登録できてもよい。
【0068】
図7に示すウイルス以外に、チクングニアウイルス、クリミア-コンゴ出血熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ウエストナイルウイルス、ロスリバーウイルス、ジカウイルス、又は、跳躍病ウイルスなどの流行時期が、流行時期データ106aに記憶されていてもよい。
【0069】
<<不活化受光量データ>>
図8は、メモリ部106に記憶されている不活化受光量データ106bの一例を示す。
図8では一例として、
図7に示した各ウイルスの学名、和名、及び、深紫外LEDの不活化受光量が対応付けて示されている。不活化受光量は積算照射量なので深紫外LEDの実際の出力は照射時間(露光部70を空気Aが通過するために必要な時間)で割った値である。
【0070】
例えば露光部70を空気Aが通過するために必要な時間がt秒である場合、空気が深紫外LEDを受光する受光量は以下のようになる。
受光量[mJ/cm
2]=t[sec]×照度[mW/cm
2]
したがって、ウイルスを不活化するために必要な深紫外LEDの出力(照度)は、
図8の不活化受光量をt秒で割った値である。露光部70を空気Aが通過するために必要な時間であるt秒は、流量(風速)により一意に定まる。
【0071】
<深紫外LEDの耐用年数に応じた補正について>
続いて、
図9を参照して、深紫外LEDの耐用年数に応じた出力の補正について説明する。
図9は、深紫外LEDの出力の補正方法を説明する図である。まず、新品の状態で深紫外LEDが寿命となると想定される照射量をP
1[mW/cm
2・h]とする。P
1は深紫外LEDのメーカーの仕様書などで決まっており、P
1=100%×L[h]と表せる。Lは100%の出力で照射した場合の仕様上の耐用年数(時間換算値)である。
【0072】
また、空気清浄機100には、保証期間やメンテナンス費用などを考慮の上で決定される、満たすべき耐用年数が想定されている。
図9では、実際の照射時間に対し、残っているべき残照射量Sが斜めの線で示される。残照射量S(第1の残照射量の一例)は予め設定されているものとする。残照射量Sについて補足する。深紫外LEDの出力は、標準で例えば30%、流行時期では例えば100%(従来の技術)から不活化受光量(本実施形態)まで様々であるので、年間を通じて変動するだけでなく、ユーザーが出力を手動調整することもできる。よって、実際に空気清浄機が照射した深紫外線の照射量は機器によって変わりうる。このため、残照射量Sは平均的な使い方の場合に必要とされる耐用年数でP
1がゼロになるように、照射時間(出力は問わない)に比例して減少する直線である。
【0073】
一方、補正部125は、過去の実際の累計照射時間T[h]と実際の出力W[mW/ cm2] を積算することで、すでに消費した消費済み照射量PT[mW/cm2・h]が求められる。したがって、この時点の残照射量P2(第2の残照射量の一例)はP2=P1-PTである。
【0074】
累計照射時間T[h]における残照射量P2が、残照射量ST未満の場合、空気清浄機100が想定する耐用年数まで深紫外LEDを出力できないおそれがある。そこで、補正部125は、残照射量P2<残照射量STの場合、残照射量P2に対する残照射量Sの比率だけ、深紫外LEDの出力を小さくする。この制御により、補正部125は、予め定められた深紫外LEDの耐用年数を維持するよう、深紫外LEDの出力を小さくできる。
補正後の出力[%]=補正前の出力×P2/ST
ここで、補正前の出力は、ウイルスが流行していない状態の標準値で30%、ウイルスが流行している状態では不活化受光量である。
【0075】
なお、補正部125は、深紫外LEDの出力が小さくなる分だけ、空気Aが露光部70を通過する時間が長くなるように、空気の流量(風速)を小さくする。すなわち、ファンを回転させるモータの回転速度を深紫外LEDの出力が小さくなる分だけ小さくする。これにより、深紫外LEDの出力が小さくなっても、露光時間が長くなり、空気清浄機100が不活化受光量の深紫外LEDを照射できる。
【0076】
このように、流行時期データ106aと不活化受光量データ106bを用いることで、消費電力を低減して深紫外LEDの耐用年数を延ばすだけでなく、所定の期間の耐用年数を満たすように出力を補正することで深紫外LED出力を更に伸ばすことができる。
【0077】
<動作又は処理>
次に、
図10を参照して、深紫外LEDの照射制御について説明する。
図10は、制御部105が流行時期データ106aと不活化受光量データ106bに応じて深紫外LEDを照射する制御を説明するフローチャート図である。なお、
図10では、空気清浄機100が24時間、稼働しているとして説明する。
【0078】
日付取得部121は、時計部107から定期的に日付を取得しており、例えば24時になると日付が切り替わったことを検出する(S1)。
【0079】
日付が変わった場合、流行時期データ取得部122は、メモリ部106から流行時期データ106aを取得する。そして、判断部123が、本日が流行時期に合致するか否か判断する(S2)。
【0080】
ステップS2の判断がNoの場合、受光量制御部124は、深紫外LEDの標準の設定値をメモリ部106から取得する(S3)。
【0081】
ステップS2の判断がYesの場合、受光量制御部124は、メモリ部106から流行しているウイルスの不活化受光量データ106bを取得する(S4)。なお、受光量制御部124は、複数のウイルスの流行時期が重複している場合、複数のウイルスの不活化受光量のうち最も大きい不活化受光量を取得する。
【0082】
受光量制御部124は、ステップS3又はS4で取得した深紫外LEDの出力値を、LED制御部103に設定する(S5)。この出力は、露光部70を空気Aが通過する時間で不活化受光量を割った値である。
【0083】
<<補正部の処理>>
図11は、補正部125が深紫外LEDの出力を補正する処理を説明するフローチャート図である。
図11の処理は、ウイルスの流行時期か否かに関わらず実行されてもよい、ウイルスの流行時期にのみ(ステップS2でYesの場合)実行されてもよい。
【0084】
まず、補正部125は、現在の残照射量Sをメモリ部106等から取得する(S11)。メモリ部106には
図9で示した残照射量Sが記録されている。補正部125は、累積している照射時間に対する残照射量S
Tを読み出す。
【0085】
補正部125は、現在の消費済み照射量PTを取得し、メモリ部106に保存済みのP1からPTを減じることで残照射量P2を算出する(S12)。現在の消費済み照射量PTは例えば1時間ごとに更新された値がメモリ部106に保存されている。
【0086】
補正部125は、残照射量P2が残照射量ST未満か判断する(S13)。ステップS13の判断がNoの場合、補正部125は深紫外LEDの出力を補正しない。
【0087】
ステップS13の判断がYesの場合、補正部125は深紫外LEDの出力を、残照射量P2に対する残照射量Sの比率を乗じて小さくする(S14)。なお、補正部125は、深紫外LEDの出力を小さくした分か又はそれ以上、空気の流量を小さくする。また、補正部125は深紫外LEDの出力を、上記比率より小さくしてもよい。こうすることで、一時的に深紫外LEDの出力が大きく低下するが、短時間で残照射量P2が残照射量ST以上に戻る。比率に対応する流量よりどのくらいまで流量を小さくできるかは、空気清浄機100が排気する空気の流量をどこまで遅くしてよいかにより決定されている。
【0088】
<表示部の表示例>
図12は、表示部109が表示する深紫外線の照射に関する画面例である。
図12には「深紫外線の照射状況」と称して、「現在、流行中のインフルエンザウイルスを不活化する光量で深紫外を照射しています。」というメッセージ201、OKボタン202、及び、照射停止ボタン203が表示されている。ユーザーはメッセージ201を見ることで、現在、どのようなウイルスに対応した深紫外線の照射が行われているかを把握できる。ユーザーがOKボタン202を押下すると、空気清浄機100は、引き続き、インフルエンザウイルスの不活化受光量に応じた出力で深紫外線を照射する。ユーザーが照射停止ボタン203を押下すると、空気清浄機100は標準の出力で深紫外線を照射する。こうすることで、インフルエンザウイルスがほとんど流行していない場合は、更に消費電力を低減し、深紫外LEDの耐用年数を延ばすことができる。
【0089】
<主な効果>
以上説明したように、本実施形態の空気清浄機100は、流行性のウイルスに適した深紫外LEDを照射することができ、ウイルスの罹患を抑制しながら、年間を通じて消費電力を低減することが可能となる。また、標準的な残照射量STと現在の消費済み照射量PTに応じて、深紫外LEDの出力を補正するので、更に、消費電力を抑制しながら耐用年数を延ばすことができる。
本実施例では、空気清浄機100の設置地域に応じてウイルスの流行時期を補正する空気清浄機100について説明する。日本は南北に長い形状を有しているので、地域によってウイルスの流行時期がずれる。そこで、空気清浄機100にGPSが搭載される場合に、空気清浄機100が設置地域を特定し、地域に応じて流行時期を補正する。
地域判断部127はGPS部111が検出する位置情報を例えば4つの地域のいずれかに分類する。4つの地域は、例えば北部、東部、西部、南部である。4つの地域に分類することは一例に過ぎず、5つ以上に分類してもよい。
本実施例の流行時期データ取得部122は、設置場所が4つの地域のいずれであるか応じて、各ウイルスの流行時期を流行時期データ106aに対してずらす。例えば、気温が低い地域はインフルエンザウイルスが早期に流行するため流行時期を早め、気温が高い地域はインフルエンザウイルスが遅れて流行するため、流行時期を遅らせる。
北部:1週間早める
東部:元のまま
西部:1週間遅らせる
南部:2週間遅らせる
この例は、冬期に流行するウイルスに対応するための例なので、夏期に流行するウイルスについて、流行時期データ取得部122は、気温が低い地域の流行時期を遅らせ、気温が高い地域の流行時期を早める。
北部:1週間遅らせる
東部:元のまま
西部:1週間早める
南部:2週間早める
このように、流行時期データ取得部122は、ウイルスが冬期に流行するウイルスの場合、気温が低い地域ほど流行時期を前にずらし、ウイルスが夏期に流行するウイルスの場合、気温が高い地域ほど前記流行時期を前にずらす。これにより、ウイルスが冬期に流行するか、夏期に流行するかによって、流行時期を調整できる。
ステップS22において、位置情報取得部126はGPS部111が検出した位置情報を取得し、地域判断部127は位置情報に基づいて設置場所を4つの地域のいずれかに分類する(S22)。
そして、流行時期データ取得部122は、4つの地域のいずれかに応じて、流行時期データ106aに指示されたウイルスの流行時期を変更する(S23)。変更の際、流行時期データ取得部122は、ウイルスが冬期に流行するか、夏期に流行するかを考慮する。