(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112470
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】電極構造観察用セル組立体
(51)【国際特許分類】
G01N 23/20025 20180101AFI20240814BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20240814BHJP
【FI】
G01N23/20025
G01N23/046
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017502
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 敦
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001JA08
2G001LA11
2G001PA12
2G001QA02
(57)【要約】
【課題】観察対象であるセルに対して比較的広範囲にX線を効果的に透過させられ、かつ、セル自体の膨張収縮に適切に対処することができる電極構造観察用セル組立体を提供すること。
【解決手段】X線CTでセル3の内部構造を観察するための構造観察用セル組立体1であって、観察対象とするセル3をその両面から挟んで拘束する1対の拘束部材4と、1対の拘束部材(第1拘束部材7、第2拘束部材8)を備え、1対の前記拘束部材4のうちの一方の記拘束部材(第1拘束部材7)は、セル3に対応する部位に他方の拘束部材(第2拘束部材8)より相対的に薄肉のX線被照射部72が形成されている構造観察用セル組立体。その一態様では、X線被照射部72に変位検出領域75が設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線CTでセルの内部構造を観察するための構造観察用セル組立体であって、
観察対象とする前記セルをその両面から挟んで拘束する1対の拘束部材を備え、
1対の前記拘束部材のうちの一方の前記拘束部材は、前記セルに対応する部位に他方の前記拘束部材より相対的に薄肉のX線被照射部が形成されている構造観察用セル組立体。
【請求項2】
前記X線被照射部に変位検出領域が設定されている、請求項1に記載の構造観察用セル組立体。
【請求項3】
当該構造観察用セル組立体は、この構造観察用セル組立体を回転可能に支持する回転支持部材により支持されている請求項1または2に記載の構造観察用セル組立体。
【請求項4】
1対の前記主拘束部材間を締結する2つの締結部材が設けられ、前記2つの締結部材は、前記回転支持部材による当該構造観察用セル組立体の回転における回転軸方向に、前記セルの観察対象部位である電極対向部を挟んで配置された請求項3に記載の構造観察用セル組立体。
【請求項5】
前記セルから導出される正極端子および負極端子が、前記回転支持部材による当該構造観察用セル組立体の回転における回転軸方向に、前記セルの観察対象部位である電極対向部を挟んで配置された請求項3または4に記載の構造観察用セル組立体。
【請求項6】
前記正極端子に接続される正極バスバーおよび前記負極端子に接続される負極バスバーそれぞれを収容するように正極バスバー収容部および負極バスバー収容部が設けられ、前記正極バスバー収容部および負極バスバー収容部は、前記回転支持部材による当該構造観察用セル組立体の回転における回転軸方向に、前記セルの観察対象部位である電極対向部を挟んで配置された請求項5に記載の構造観察用セル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極構造観察用セル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池モジュールの構成要素であるセルは充放電時に膨張収縮を伴う。このため、電極は、厚み方向から拘束した状態で使用されることが多い。このような使用状態を模した形態で電極構造を観察する手法が提案されている。例えば、電極を厚み方向から拘束部材で拘束した状態でSEM(走査顕微鏡)やコンフォーカル光学系によって電極断面を観察する手法である。これらの手法では、膨張収縮量が大きい電極の場合には、観察用に加工した断面から突出方向への電極の膨張を完全に抑えることが困難である。このため、観察結果が実使用時における構造の挙動とは異なってしまうおそれがある。一方、観察用断面の加工が不要であるX線CTでの観察であれば上記のおそれは払拭されるものの、電極を厚み方向から拘束する拘束部材でのX線吸収によりX線CT像の画質が低下する。画質の低下は詳細な観察をする際の障害となる。
【0003】
二次電池のセルを拘束部材で厚み方向から拘束した状態で、このセルに対しX線CTでの観察を行うための電極構造観察用セル組立体として、中央にX線を通過させる孔を設けた円盤状の拘束部材を用いたものを適用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、フローセル内の被測定部材に対しX線を照射して分析を行う測定システムにおいて、フローセルに設定した薄肉部からX線の照射を行うことが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-159311号公報
【特許文献2】特開2019-045295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電極構造観察用セル組立体では、拘束部材である円盤状部材の中央に設けたX線を通過させる孔について、その内周縁部に外方に向けて拡径するテーパー面を設ける態様のものが開示されている。観察対象であるセルに対し、X線を広い角度範囲から入射させることが可能であるとされている。しかしながら、X線を効果的に通過させることが可能な領域は拘束部材の中央の孔の箇所に限られると共に、孔の箇所ではセルを拘束できない。一方、特許文献2の測定システムでは、被測定部材が条件により膨張収縮する性質のものである場合に対する配慮がない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされものであり、観察対象であるセルに対して比較的広範囲にX線を効果的に透過させられ、かつ、セル自体の膨張収縮に適切に対処することができる電極構造観察用セル組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) X線CTでセルの内部構造を観察するための構造観察用セル組立体であって、
観察対象とする前記セルをその両面から挟んで拘束する1対の拘束部材を備え、1対の前記拘束部材のうちの一方の前記拘束部材は、前記セルに対応する部位に他方の前記拘束部材より相対的に薄肉のX線被照射部が形成されている構造観察用セル組立体。
【0008】
(2) 前記X線被照射部に変位検出領域が設定されている、(1)の構造観察用セル組立体。
【0009】
(3) 当該構造観察用セル組立体は、この構造観察用セル組立体を回転可能に支持する回転支持部材により支持されている(1)または(2)の構造観察用セル組立体。
【0010】
(4) 1対の前記主拘束部材間を締結する2つの締結部材が設けられ、前記2つの締結部材は、前記回転支持部材による当該構造観察用セル組立体の回転における回転軸方向に、前記セルの観察対象部位である電極対向部を挟んで配置された(3)の構造観察用セル組立体。
【0011】
(5) 前記セルから導出される正極端子および負極端子が、前記回転支持部材による当該構造観察用セル組立体の回転における回転軸方向に、前記セルの観察対象部位である電極対向部を挟んで配置された(3)または(4)の構造観察用セル組立体。
【0012】
(6) 前記正極端子に接続される正極バスバーおよび前記負極端子に接続される負極バスバーそれぞれを収容するように正極バスバー収容部および負極バスバー収容部が設けられ、前記正極バスバー収容部および負極バスバー収容部は、前記回転支持部材による当該構造観察用セル組立体の回転における回転軸方向に、前記セルの観察対象部位である電極対向部を挟んで配置された(5)の構造観察用セル組立体。
【発明の効果】
【0013】
(1)の構造観察用セル組立体では、一方の拘束部材に設けられた他方の拘束部材より相対的に薄肉のX線被照射部から比較的広範囲にセルにX線照射できるため、適確な構造観察を行うことができる。また、セルの膨張による拘束部材の歪は相対的に薄肉の部分を有する一方の拘束部材側に顕著に遍在する。このためセルの膨張の度合いは、専ら一方の拘束部材側で検出可能である。
【0014】
(2)の構造観察用セル組立体では、セルの膨張による拘束部材の歪が顕著に遍在する一方の拘束部材の変位検出領域でセルの膨張に対応する値を検出できるため、セルの状態に関する高精度な情報を簡単に得ることができる。
【0015】
(3)の構造観察用セル組立体では、観察対象であるセルを種々の角度から観察することができる。
【0016】
(4)の構造観察用セル組立体では、締結部材がセルの観察対象部位である電極対向部から離隔し、X線CTによる観察に影響しない。
【0017】
(5)の構造観察用セル組立体では、正極端子および負極端子がセルの観察対象部位である電極対向部から離隔しているため、正極端子および負極端子に対する操作がX線CTによる観察に影響しない。
【0018】
(6)の構造観察用セル組立体では、正極バスバー収容部および負極バスバー収納がセルの観察対象部位である電極対向部から離隔しているため、正極バスバーおよび負極バスバーに対する操作がX線CTによる観察に影響しない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の構造観察用セル組立体を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1の構造観察用セル組立体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本開示の構造観察用セル組立体1を示す分解斜視図である。
図2は構造観察用セル組立体1の斜視図である。詳細には、
図1には構造観察用セル組立体1の後述する回転支持部材2を除く部分が示されている。なお、以下の説明における上下方向は、図示で見た方向であって、例えば、鉛直方向であるが、これに限られる趣旨ではない。
【0021】
構造観察用セル組立体1は、不図示のX線CTで二次電池モジュールの構成要素であるセルの内部構造を観察するための組立体である。構造観察用セル組立体1は、観察対象とする扁平なセル3をその両面から挟んで拘束する剛体でなる1対の拘束部材4と、1対の拘束部材4とセル3との間にそれぞれ介挿される第1絶縁部材5および第2絶縁部材6を備える。
【0022】
1対の拘束部材4は、セル3の一方の面側に位置する第1拘束部材7と、セル3の他方の面側に位置する第2拘束部材8とで、セル3を挟持して拘束する。この挟持に際して、第1拘束部材7とセル3の一方の面との間に主面が概略矩形で板状の第1絶縁部材5が介挿され、第2拘束部材8とセル3の他方の面との間に主面が概略矩形で板状の第2絶縁部材6が介挿される。第1絶縁部材5は両側縁それぞれから厚み方向に起立した位置規制部5a、5aが形成されている。これらの位置規制部5a、5aで第1絶縁部材5と第1拘束部材7との相対位置が規制される。第2絶縁部材6についても、第1絶縁部材5と同様の位置規制手段が講じられる。
【0023】
第1拘束部材7は、上下両端部側が相対的に厚み寸法が大きい厚肉部71、71を成し、両厚肉部71、71間が相対的に厚み寸法が小さい薄肉部72を有する形状を呈している。不図示のX線CTにおけるX線が、外部から薄肉部72に向けて照射され、薄肉部72を透過してセル3に到る。即ち、薄肉部72がX線被照射部である。一方、第2拘束部材8は、セル3への対向面81がフラットな面であり、対向面81全面が第2絶縁部材6に面接触する。
【0024】
第1拘束部材7における、上側の厚肉部71の上端近傍を厚み方向に貫通するように上側ボルト挿通孔73が形成され、下側の厚肉部71の下端近傍を厚み方向に貫通するように下側ボルト挿通孔74が形成される。一方、第2拘束部材8における上端近傍に、対向面81から第1拘束部材7側に突出した突出部82に、第1拘束部材7側の上側ボルト挿通孔73に対応する上側雌ねじ孔83が形成される。また、第2拘束部材8における下端近傍に、第1拘束部材7側の下側ボルト挿通孔74に対応する下側雌ねじ孔84が形成される。
【0025】
第1拘束部材7と第2拘束部材8とを、第1絶縁部材5および第2絶縁部材6を介してセル3を挟んで上側のボルト9および下側のボルト10により適切な締結力で締結する。これによりセル3を両面から拘束する。この締結に際し、上側ボルト挿通孔73から挿通されたボルト9が上側雌ねじ孔83に羅着され、下側ボルト挿通孔74から挿通されたボルト10が下側雌ねじ孔84に羅着される。
【0026】
第1拘束部材7から第2拘束部材8まで、ボルト9およびボルト10を支障なく挿通するために、次のような構成がとられている。即ち、第1絶縁部材5の上端近傍にボルト9との干渉を回避する凹部11が設けられ、第1絶縁部材5の下端近傍にボルト10との干渉を回避する凹部12が設けられている。また、第2絶縁部材6の上端近傍にボルト9との干渉を回避する凹部13が形成され、第2絶縁部材6の下端近傍にボルト10との干渉を回避する凹部14が形成されている。凹部11および凹部13により、ボルト9を、上側ボルト挿通孔73から上側雌ねじ孔83まで、第1絶縁部材5および第2絶縁部材6と干渉せずに挿通することができる。同様に、凹部12および凹部14により、ボルト10を、下側ボルト挿通孔74から下側雌ねじ孔84まで、第1絶縁部材5および第2絶縁部材6と干渉せずに挿通することができる。
【0027】
第2拘束部材8の下端近傍の短辺中央部位から下方に向けて突出するように突出部材85が設けられる。突出部材85は、下側のボルト10の挿通方向の寸法が第2拘束部材8の厚み寸法よりも大きく、挿通方向と直交する方向の幅寸法が第2拘束部材8の下端の幅よりも狭い概略柱状の部材である。上述した下側雌ねじ孔84は、突出部材85における上方寄りに設けられている。突出部材85における下側雌ねじ孔84が開口している面に、下側雌ねじ孔84から下方に並んで組立体取付用雌ねじ孔86および87が設けられる。即ち、突出部材85の同じ面に、下側雌ねじ孔84、組立体取付用雌ねじ孔86および87が、上述の順に上から下へと並んで設けられる。
【0028】
観察対象となるセル3をその両面から挟んで拘束する1対の拘束部材4と、セル3を拘束部材4で挟む際に介在する第1絶縁部材5および第2絶縁部材6とを含む組立体ASは、上下方向に伸びた円柱状の回転支持部材2の上端側に取り付けられる。この取り付けには、回転支持部材2の上端に上方に突出して設けられた短い角柱状の取付部材15が用いられる。
【0029】
即ち、取付部材15から挿通される2本の組立体取付ボルト16、17の各先端側が、第2拘束部材8の突出部材85に設けられた組立体取付用雌ねじ孔86、87に羅合されて、組立体ASが回転支持部材2に取り付けられる。回転支持部材2は、不図示の回転駆動機構によって自転し、これにより、組立体ASが回転する。組立体ASと回転支持部材2とを含んで、本開示の構造観察用セル組立体1の一つの態様が構成される。
【0030】
ここで、セル3は、セル本体3aの中央部の内部でセパレータシートが正極活物質層および負極活物質層に対向している部分である電極対向部3bが観察対象部位とされる。セル本体3aの上縁に正極端子20が導出され、セル本体3aの下縁に負極端子21が導出されている。正極端子20から正極バスバー22が導出され、負極端子21から負極バスバー23が導出される。これにより、正極端子20および負極端子21は、組立体ASの回転における回転軸方向に、観察対象部位である電極対向部3bのX線の透過部位からそれぞれ離隔して位置する。このため、正極端子20および負極端子21は、X線CTによる観察に影響しない。また、上述したボルト9およびボルト10、ならびに、上側雌ねじ孔83および下側雌ねじ孔84は、組立体ASの回転における回転軸方向に、観察対象部位である電極対向部3bのX線の透過部位からそれぞれ離隔して位置する。即ち、ボルト9およびボルト10、ならびに、上側雌ねじ孔83および下側雌ねじ孔84で締結される部位は、主拘束部材4である第1拘束部材7と第2拘束部材8とを締結するそれぞれボルトと雌ねじのセットである2つの締結部材をなし、この2つの締結部材は、回転支持部材2による組立体ASの回転における回転軸方向に、セル3の観察対象部位である電極対向部3bを挟んで配置される。このため、ボルト9およびボルト10、ならびに、上側雌ねじ孔83および下側雌ねじ孔84は、X線CTによる観察に影響しない。
【0031】
図1のとおり、正極バスバー22は、正極端子20との接続部からセル本体3aの上縁と平行に短く伸び、セル本体3aの側縁に到らずに鉛直上方に屈曲し、所定寸法上方に伸びて自己の上端に到る形状を呈している。また、負極バスバー23は、負極端子21との接続部からセル本体3aの下縁と平行に短く伸び、セル本体3aの側縁に到らずに鉛直下方に屈曲し、所定寸法下方に伸びて自己の下端に到る形状を呈している。
【0032】
第1絶縁部材5の上縁に上方に突出して形成された正極バスバー収容部半体5uと、第2絶縁部材6の上縁に上方に突出して形成された正極バスバー収容部半体6uとが、双方の収容凹所が対向するように合わせられて正極バスバー収容部24が形成される。正極バスバー22の上端近傍部は、正極バスバー収容部24に収容される。
図2のとおり、正極バスバー収容部24は、組立体ASの一側方に向けて解放され、内部の正極バスバー22に対する外部からの電気的入出力操作を許容する窓部24aを有する。
【0033】
第1絶縁部材5の下縁に下方に突出して形成された負極バスバー収容部半体5dと、第2絶縁部材6の下縁に下方に突出して形成された負極バスバー収容部半体6dとが、双方の収容凹所が対向するように合わせられて負極バスバー収容部25が形成される。負極バスバー23の下端近傍部は、負極バスバー収容部25に収容される。
図2のとおり、負極バスバー収容部25は、組立体ASの一側方に向けて解放され、内部の負極バスバー23に対する外部からの電気的入出力操作を許容する窓部25aを有する。
【0034】
上述の窓部24aおよび窓部25aは、いずれも、観察対象部位である電極対向部3bのX線の透過部位からそれぞれ離隔して位置する。視点を転じると、セル3から導出される正極端子20および負極端子21が、回転支持部材2による組立体ASの回転における回転軸方向に、セル3の観察対象部位である電極対向部3bを挟んで配置される。また、正極端子20に接続される正極バスバー22および負極端子21に接続される負極バスバー23それぞれを収容するように正極バスバー収容部24および負極バスバー収容部25が設けられ、正極バスバー収容部24および負極バスバー収容部25は、回転支持部材2による組立体ASの回転における回転軸方向に、セル3の観察対象部位である電極対向部3bを挟んで配置される。これにより、正極バスバー収容部24および正極バスバー収容部24の窓部24aおよび窓部25aから電気的入出力の操作を行いセル3のSOCを変化させて観察を行うに際して、この操作がX線CTによる観察に影響しない。
【0035】
上述したように、セル3をその両面から挟んで拘束する1対の拘束部材4のうちの一方の部材である第1拘束部材7とセル3との間に第1絶縁部材5が介在するが、より詳細には、第1絶縁部材5の中央にセル3の電極対向部3bの外形に対応する開口5bが設けられており、第1拘束部材7と電極対向部3bとは、開口5b内に配される角板状のスペーサー26を介して当接する。また、1対の拘束部材4のうちの他方の部材である第2拘束部材8とセル3との間に第2絶縁部材6が介在するが、より詳細には、電極対向部3bの他方の面に対向するように第2絶縁部材6に形成された凸状部6aが電極対向部3bに当接する。
【0036】
本開示の構造観察用セル組立体1は、上述の構成を有するため、1対の拘束部材4である第1拘束部材7および第2拘束部材8から観察対象とするセル3への拘束力は次のように及ぶ。ボルト9およびボルト10を締結することにより両ボルト9、10に作用する張力が、対向する第1拘束部材7および第2拘束部材8に両者の間隔を狭める向きの力を生じる。
【0037】
この結果、第1拘束部材7によるセル3の一方の面へ向く圧力が第1絶縁部材5の開口5b内に配されるスペーサー26を介して伝搬し、セル3の電極対向部3bの一方の面をその法線方向に押圧・拘束する。同時に、第2拘束部材8のセル3への対向面81によるセル3の他方の面へ向く圧力が、第2絶縁部材6の凸状部6aを介して伝搬し、セル3の電極対向部3bの他方の面をその法線方向に押圧・拘束する。
【0038】
本開示の構造観察用セル組立体1では、第1拘束部材7における上下両端側の両厚肉部71、71間に薄肉部72が形成されている。薄肉部72は、不図示のX線CTからのX線が照射されるX線被照射部である。X線被照射部は薄肉であるため、X線が透過する際の損失が少ない。このため、組立体ASに装着された観察対象とされるセル3の構造観察に際して、回転支持部材2の回転による種々の旋回角度について、X線が効果的にセル3に照射、透過され、適確なデータを収集することができる。
【0039】
ところで、1対の拘束部材4のうち、薄肉部72は、一方の拘束部材である第1拘束部材7側にのみ設けられ、他方の拘束部材である第2拘束部材8側は全体が厚肉の部材である。このため、セル3の膨張で生じる応力に起因する1対の拘束部材4の歪(変位量)は、第1拘束部材7側に遍在して出現する。
【0040】
本開示の構造観察用セル組立体1では、第1拘束部材7の中央部に、変位検出領域75が設定されている。変位検出領域75に歪ゲージを貼付ければ、この歪ゲージによる検出値としてセル3の膨張量に関するデータを得ることができる。セル3の膨張量に関するデータに基づいてセル3における活物質の体積変化を算定できる。
【0041】
第1拘束部材7の変位検出領域75に貼付けた歪ゲージを用いて行う場合には、単一の箇所からセル3の膨張量に対応するデータを取得できるため、歪(変位)の検出手段が組立体ASの旋回の妨げになる度合いを低減できる。なお、歪ゲージを貼付するに替えて、変位検出領域75の法線方向の変位をレーザー変位計で測定しても、セル3の膨張量に対応する同様のデータを得ることができる。
【0042】
本開示の構造観察用セル組立体1によれば、以下の効果を奏する。
【0043】
(1)の構造観察用セル組立体1では、1対の拘束部材4の一方の拘束部材である第1拘束部材7に設けられた、他方の拘束部材である第2拘束部材8よりも相対的に薄肉の薄肉部72に設定されているX線被照射部72から比較的広い入射角の範囲でセル3にX線照射できるため、多くの観察データに依拠して適確な構造観察を行うことができる。また、セル3の膨張による1対の拘束部材4の歪は相対的に薄肉の部分を有する第1拘束部材7側に顕著に遍在する。このためセル3の膨張の度合いは、専ら一方の拘束部材である第1拘束部材7側で検出可能である。
【0044】
(2)の構造観察用セル組立体1では、セル3の膨張による拘束部材の歪が顕著に遍在する第1拘束部材7側の薄肉部(X線被照射部)72における変位検出領域75でセル3の膨張に対応する値を検出できるため、セル3の状態に関する高精度な情報を簡単に得ることができる。
【0045】
(3)の構造観察用セル組立体では、観察対象であるセルを種々の角度から観察することができる。
【0046】
(4)の構造観察用セル組立体1では、締結部材(ボルト9と上側雌ねじ孔83のセット、および、ボルト10と下側雌ねじ孔84のセット)がセル3の観察対象部位である電極対向部3bから離隔し、X線CTによる観察に影響しない。
【0047】
(5)の構造観察用セル組立体では、正極端子20および負極端子21がセル3の観察対象部位である電極対向部3bから離隔しているため、正極端子20および負極端子21に対する操作がX線CTによる観察に影響しない。
【0048】
(6)の構造観察用セル組立体では、正極バスバー収容部24および正極バスバー収容部24がセル3の観察対象部位である電極対向部3bから離隔しているため、正極バスバー22および負極バスバー23に対する操作がX線CTによる観察に影響しない。
【符号の説明】
【0049】
AS…組立体
1…構造観察用セル組立体
2…回転支持部材
3…セル
3a…セル本体
3b…電極対向部
4…拘束部材
5…第1絶縁部材
5d…負極バスバー収容部半体
5u…正極バスバー収容部半体
6…第2絶縁部材
6a…凸状部
6d…負極バスバー収容部半体
6u…正極バスバー収容部半体
7…第1拘束部材
8…第2拘束部材
9、10…ボルト
11、12、13、14…凹部
15…取付部材
16、17…組立体取付ボルト
20…正極端子
21…負極端子
22…正極バスバー
23…負極バスバー
24…正極バスバー収容部
24a…窓部
25…負極バスバー収容部
25a…窓部
26…スペーサー
71…厚肉部
72…薄肉部(X線被照射部)
73…上側ボルト挿通孔
74…下側ボルト挿通孔
75…変位検出領域
81…対向面
82…突出部
83…上側雌ねじ孔
84…下側雌ねじ孔
85…突出部材
86、87…組立体取付用雌ねじ孔