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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112479
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】蓄圧器ラック
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/08 20060101AFI20240814BHJP
   F17C 13/08 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B65D90/08 G
F17C13/08 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017516
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】593166462
【氏名又は名称】サムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】三島 慎一
【テーマコード(参考)】
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E170AA30
3E170AB30
3E170DA01
3E170KA01
3E170KB02
3E170KB04
3E170KB05
3E170KC03
3E170VA20
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB13
3E172BD05
3E172DA90
3E172KA03
(57)【要約】
【課題】効率よく製造することができる蓄圧器ラックを提供する。
【解決手段】圧縮ガスを充填可能な蓄圧器が収容される筐体を有する蓄圧器ラックであって、前記筐体は、水平方向に互いに間隔をあけて配置される複数の支柱と、上下方向に互いに間隔をあけて配置される複数の梁と、外側面において前記各支柱及び前記各梁で囲まれる領域を塞ぐ複数の側面板と、前記側面板を固定する複数の固定手段とを備えており、前記固定手段は、前記支柱又は前記梁のいずれかに形成される貫通孔と、ボルト頭を有するボルトと、プッシュナットと、ナットとを備えており、前記ボルトは、ボルト軸が前記筐体の外側に向けて突出するように前記貫通孔に配置され、前記プッシュナットと前記ボルト頭との間で前記支柱又は前記梁を挟持して固定されており、前記側面板は、前記ボルト軸が挿通可能な挿通孔を備えており、前記挿通孔に挿通される前記ボルト軸に前記ナットを螺合して締結固定されることを特徴とする蓄圧器ラック。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ガスを充填可能な蓄圧器が収容される筐体を有する蓄圧器ラックであって、
前記筐体は、水平方向に互いに間隔をあけて配置される複数の支柱と、上下方向に互いに間隔をあけて配置される複数の梁と、外側面において前記各支柱及び前記各梁で囲まれる領域を塞ぐ複数の側面板と、前記側面板を固定する複数の固定手段とを備えており、
前記固定手段は、前記支柱又は前記梁のいずれかに形成される貫通孔と、ボルト頭を有するボルトと、プッシュナットと、ナットとを備えており、
前記ボルトは、ボルト軸が前記筐体の外側に向けて突出するように前記貫通孔に配置され、前記プッシュナットと前記ボルト頭との間で前記支柱又は前記梁を挟持して固定されており、
前記側面板は、前記ボルト軸が挿通可能な挿通孔を備えており、前記挿通孔に挿通される前記ボルト軸に前記ナットを螺合して締結固定されることを特徴とする蓄圧器ラック。
【請求項2】
前記プッシュナットが配置される前記貫通孔の一方の開口部側に、前記プッシュナットが収容可能な座繰り部が前記側面板に形成されることを特徴とする請求項1に記載の蓄圧器ラック。
【請求項3】
前記ボルトは、半ネジボルトであり、前記プッシュナットは、雄ネジ部が形成されていない前記半ネジボルトの軸部にカシメられて固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄圧器ラック。
【請求項4】
前記半ネジボルトの雄ネジ部が形成されていない軸部の外径は、雄ネジ部が形成されている軸部の外径よりも太く形成されていることを特徴とする請求項3に記載の蓄圧器ラック。
【請求項5】
前記プッシュナットと前記ボルト頭との間で前記支柱又は前記梁を挟持して固定される前記半ネジボルトの雄ネジ部が形成されていない軸部は、前記支柱又は前記梁の外表面側に突出していることを特徴とする請求項3に記載の蓄圧器ラック。
【請求項6】
前記支柱又は前記梁の外表面側に突出する前記半ネジボルトの雄ネジ部が形成されていない軸部は、前記側面板の挿通孔の内周面を支持可能な長さに構成されることを特徴とする請求項5に記載の蓄圧器ラック。
【請求項7】
前記側面板と前記ナットとの間にはシリコンゴム製のワッシャーが配置されており、
前記ナット及び該ナットから突出する前記ボルトの先端部を被覆するカバー体を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄圧器ラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄圧器ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素ガスを燃料電池車に補給するための施設である水素ステーションが知られている。一般に、水素ステーションは、水素ガスを燃料電池車のタンクに補給するディスペンサと、ディスペンサに水素ガスを供給する圧縮機と、水素ガスを貯蔵する蓄圧器とを備えている。
【0003】
水素ステーションの一部を構成する蓄圧器は、例えば、図13に示すような蓄圧器ラック100の内部に収容されて配置される。蓄圧器ラック100は、水平方向に互いに間隔をあけて配置される複数の支柱と、上下方向に互いに間隔をあけて配置される複数の梁とにより構成される筐体を備えており、この筐体の外表面には、各支柱及び各梁で囲まれる領域を塞ぐ複数の側面板101が固定手段102により固定されている。側面板101を支柱又は梁に固定する固定手段102は、図14(a)(b)に示すような構成を有しており、具体的には、支柱104又は梁105にボルト挿通用の貫通孔106を設けるとともに、筐体の内側における貫通孔106の開口部にナット107を貫通孔106と同軸に溶接により固定し、側面板101に形成される挿通孔101aを介して挿入し、ナット107とボルト108との間で側面板101を挟み込んでボルト108を締め付けることにより側面板101を固定できるように構成される。
【0004】
ここで、蓄圧器ラック100は、防錆や美観の向上のため塗装が施されるが、塗装に際しては、塗料の付着性を向上させるために支柱及び梁により構成される骨組構造に対してブラスト処理を行った後、塗料が塗布される。また、側面板101に対しても別途ブラスト処理及び塗料の塗布が行われ、塗装完了後に図13に示すように側面板101が支柱又は梁上に取り付けられる。なお、固定手段102の一部を構成するナット107は、ブラスト処理を実施する前段階において貫通孔106の開口部に溶接固定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の固定手段は、側面板を強固に取り付けることができるものではあるが、以下のような問題があった。すなわち、支柱又は梁を構成する材料と、支柱又は梁に溶接固定されるナットの材料とが異なる場合、溶接部に錆が発生しやすいという問題があった。また、ブラスト処理を実施することにより、ショット材(細かい砂や鋼製・鋳鉄製の小球等)がナットの雌ネジ部に衝突し該雌ネジ部が損傷してしまうという問題や、塗装時の塗料が雌ネジ部に入り込んでしまうという問題があった。ブラスト処理時のナットの雌ネジ部の損傷や塗料の入り込みについては、図15に示すように、いわゆる捨てボルト109をナット107に螺合させた状態でブラスト処理を行うことにより解消されると考えられたが、このような方策を採用しても、ブラスト処理時に、ショット材がナット107と捨てボルト109との間に入り込んでしまい、また、塗装時に塗料がナット107と捨てボルト109との間に入り込んでしまい、ナット107の雌ネジ部損傷や塗料の入り込みが解消されないという問題があった。
【0006】
また、支柱又は梁に溶接固定されるナットの雌ネジ部にブラスト処理によって損傷が発生したり、塗料が付着してしまうと、雌ネジ部に対してタップ処理を施して雌ネジ部を補修する必要がある。一般的には側面板の四隅において固定手段によって該側面板を支持固定するため、側面板の枚数が多くなると固定手段の数が増加し、補修対象となるナットの数も増加してしまう。また、ナット全数に対して雌ネジ部の損傷の有無、塗料の入り込みの有無について検査を行う必要もあり効率よく蓄圧器ラックを製造することが難しいという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題を解決すべくなされたものであり、効率よく製造することができる蓄圧器ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、圧縮ガスを充填可能な蓄圧器が収容される筐体を有する蓄圧器ラックであって、前記筐体は、水平方向に互いに間隔をあけて配置される複数の支柱と、上下方向に互いに間隔をあけて配置される複数の梁と、外側面において前記各支柱及び前記各梁で囲まれる領域を塞ぐ複数の側面板と、前記側面板を固定する複数の固定手段とを備えており、前記固定手段は、前記支柱又は前記梁のいずれかに形成される貫通孔と、ボルト頭を有するボルトと、プッシュナットと、ナットとを備えており、前記ボルトは、ボルト軸が前記筐体の外側に向けて突出するように前記貫通孔に配置され、前記プッシュナットと前記ボルト頭との間で前記支柱又は前記梁を挟持して固定されており、前記側面板は、前記ボルト軸が挿通可能な挿通孔を備えており、前記挿通孔に挿通される前記ボルト軸に前記ナットを螺合して締結固定されることを特徴とする蓄圧器ラックにより達成される。
【0009】
また、上記蓄圧器ラックにおいて、前記プッシュナットが配置される前記貫通孔の一方の開口部側に、前記プッシュナットが収容可能な座繰り部が前記側面板に形成されることが好ましい。
【0010】
また、前記ボルトは、半ネジボルトであり、前記プッシュナットは、雄ネジ部が形成されていない前記半ネジボルトの軸部にカシメられて固定されることが好ましい。
【0011】
また、前記半ネジボルトの雄ネジ部が形成されていない軸部の外径は、雄ネジ部が形成されている軸部の外径よりも太く形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記プッシュナットと前記ボルト頭との間で前記支柱又は前記梁を挟持して固定される前記半ネジボルトの雄ネジ部が形成されていない軸部は、前記支柱又は前記梁の外表面側に突出していることが好ましい。
【0013】
また、前記支柱又は前記梁の外表面側に突出する前記半ネジボルトの雄ネジ部が形成されていない軸部は、前記側面板の挿通孔の内周面を支持可能な長さに構成されることが好ましい。
【0014】
また、前記側面板と前記ナットとの間にはシリコンゴム製のワッシャーが配置されており、前記ナット及び該ナットから突出する前記ボルトの先端部を被覆するカバー体を更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、効率よく製造することができる蓄圧器ラックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る蓄圧器ラックが有する支柱・梁構造の正面図である。
図2図1に係る蓄圧器ラックの支柱・梁構造の背面図である。
図3】(a)は、図1に係る蓄圧器ラックの支柱・梁構造の左側面図であり、(b)は、図1に係る蓄圧器ラックの支柱・梁構造の右側面図であり、(c)は、上面図である。
図4】蓄圧器ラックの要部拡大図である。
図5】(a)(b)共に、蓄圧器ラックに蓄圧器を収容した状態を示す説明図である。
図6】側面板を固定する固定手段を説明するための説明図である。
図7】側面板を固定する固定手段を説明するための説明図である。
図8図6に係る固定手段を用いた場合の側面板の固定状況を説明するための説明図である。
図9】側面板を固定する固定手段の他の変形例を説明するための説明図である。
図10図9に係る固定手段を用いた場合の効果を説明するための説明図である。
図11】(a)~(c)いずれも側面板を固定する固定手段の変形例を説明するための説明図である。
図12】側面板を固定する固定手段の他の変形例を説明するための説明図である。
図13】従来から知られている蓄圧器ラックに係る斜視図である。
図14】従来から知られている蓄圧器ラックが有する側面板を固定する固定手段を説明するための説明図である。
図15図14に係る溶接固定されるナットに捨てボルトを挿入した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る蓄圧器ラックについて添付図面を参照して説明する。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。
【0018】
本発明に係る蓄圧器ラックは、例えば、水素ガスを燃料電池車に補給するための施設である水素ステーションにおいて、水素ガス貯蔵用の蓄圧器を内部に収容する収容体であり、背景技術の説明にて示した図13の斜視図に示すような構造を備えている。より具体的に説明すると、図1図3に示すように、水平方向に互いに間隔をあけて配置される複数の支柱1と、上下方向に互いに間隔をあけて配置される複数の梁2とを組み合わせた骨組みにより構成される筐体3を備えている。また、筐体3の下部には台板があり、この台板上に各支柱1が立設するようにして構成されている。台板と各支柱1とは、溶接によって、或いは、ボルト62・ナット64等の締結部材によって一体化されている。また、同様に、支柱1と梁2とは、溶接によって、或いは、ボルト62・ナット64等の締結部材によって一体化されている。支柱1及び梁2は、H形鋼、I型鋼、T形鋼等の鋼材を好ましく用いることができる。筐体3の上方開口部分には、天井部4が配置されており、雨水等が筐体3内部に進入しないように構成されている。なお、筐体3側面の上部と天井部4との間には通風を良好にするための開口部Zが形成されている。ここで、図1は、蓄圧器ラックの支柱・梁構造の正面図であり、図2は、その背面図である。また、図3(a)は、図1に係る蓄圧器ラックの支柱・梁構造の左側面図であり、図3(b)は、右側面図であり、図3(c)は、上面図である。
【0019】
また、筐体3は、図4の要部拡大図に示すように、その外側面において、各支柱1及び各梁2で囲まれる領域を塞ぐ複数の側面板5と、各側面板5を固定する複数の固定手段6とを備えて構成されている。筐体3側面は十分な強度を持った構造とし、筐体3内部で圧力が急上昇した場合に損傷することなく圧力を上方に逃がすことができるようにするため、筐体3側面に配置される側面板5は、例えば厚みが6mm以上の鋼板製のパネルにより構成される。このような構成の筐体3(蓄圧器ラック100)の内部には、例えば、図5の説明図に示すように上下方向に並列配置した複数の蓄圧器7が収容される。
【0020】
本発明に係る蓄圧器ラック1が備える固定手段6は、図6に示すように、支柱1又は梁2のいずれかに形成される貫通孔61と、ボルト頭62aを有するボルト62と、プッシュナット63と、ナット64とを備えている。なお、図6においては、ワッシャー65を更に備える構成を示している。ボルト62は、ボルト軸の先端側が筐体3の外側に向けて突出するように貫通孔61に配置される。貫通孔61に挿入されて配置されたボルト62は、筐体3の外側からボルト軸に挿入されるプッシュナット63により、図7に示すように支柱1又は梁2上に固定される。換言すると、ボルト62は、プッシュナット63とボルト頭62aとの間で支柱1又は梁2を挟持した状態で固定される。
【0021】
各支柱1及び各梁2で囲まれる領域に設置固定される側面板5は、ボルト軸が挿通可能な挿通孔5aを備えており、当該挿通孔5aに、図7のようにプッシュナット63とボルト頭62aとの間で支柱1又は梁2を挟持した状態で固定されるボルト62のボルト軸を挿通させて、その後、ボルト軸にナット64を螺合して締結することにより、図8に示すように、側面板5は筐体3の外側面上に固定される。ここで、プッシュナット63とは、軸に一定方向から挿入することにより、内径側の爪が軸の外径をとらえ所定位置に固定するナット64であり、ボルト頭62aとの間で支柱1又は梁2を挟持した状態でボルト62を固定できるものであればその具体的構造については問わない。また、側面板5の平面視形状は特に限定されないが、通常、平面視矩形状の形態を有しており、その四隅にボルト軸が挿通可能な挿通孔5aが形成される。
【0022】
また、固定手段6の一部を構成するボルト62は、半ネジボルトであることが好ましい。半ネジボルトとは、ボルトのボルト軸(首下部分)の先端から半分ほどに雄ネジ部が形成されており、ボルト軸のボルト頭側の所定領域には雄ネジ部が形成されていないボルトをいう。プッシュナット63とボルト頭62aとの間で支柱1又は梁2を挟持して固定される半ネジボルト62において、雄ネジ部が形成されていない軸部62bが、支柱1又は梁2の表面よりも外側に突出しており、上述のプッシュナット63は、雄ネジ部が形成されていない半ネジボルト62の軸部62bにカシメられて固定されている。なお、ボルト62をプッシュナット63により簡便確実に固定する観点からは、ボルト62は半ネジボルト62であることが好ましいが、いわゆる全ネジボルト62を使用してもよい。
【0023】
また、半ネジボルト62の雄ネジ部が形成されていない軸部62bの外径d1は、雄ネジ部が形成されている軸部62cの外径d2よりも太く形成されていることが好ましい。また、図9に示すように、プッシュナット63とボルト頭62aとの間で支柱1又は梁2を挟持して固定される半ネジボルト62において、支柱1又は梁2の外表面よりも外側に突出している雄ネジ部が形成されていない軸部62bの突出寸法L1を、側面板5の厚み寸法L2(挿通孔5aの長さ寸法に対応)よりも大きい寸法として構成し、雄ネジ部が形成されていない軸部62bが、側面板5の挿通孔5aの内周面を支持可能となるように設定されることが好ましい。
【0024】
本発明に係る蓄圧器ラック1は、上述のように、支柱1又は梁2のいずれかに形成される貫通孔61と、該貫通孔61に挿入されるボルト62と、ボルト62を固定するプッシュナット63と、側面板5を固定するナット64とを備えて構成されているため、従来のように支柱1又は梁2にナット64を溶接する必要が無く、極めて簡便に側面板5を筐体3の外側面上に設置固定して効率よく蓄圧器ラック1を製造することが可能となる。
【0025】
また、溶接部が存在しない構造として固定手段6を構成できるため、従来のように溶接部に錆が発生してしまうといった問題が発生することを防止できる。また、従来のようにナットの溶接部に錆が発生してしまうと、錆の進行状況によっては、新しいナットを再度溶接し直す必要が生じるが、この溶接保守作業は、火気を使用するものであり、また、蓄圧器ラック1が設置される水素ステーションで実施しなければならず、安全性の面から水素ステーションの運用に多大な影響を与えてしまうが、本発明に係る固定手段6の場合には、溶接部を有しない固定手段6構造であるため、仮に固定手段6構造に錆が発生したとしても、ボルト62やプッシュナット63、ナット64を取り外して交換するだけの簡便な保守作業となるため、火気を使用することもなく、水素ステーションの運用に多大な影響を与えることはない。また、ボルト62はプッシュナット63によって支柱1又は梁2に固定されているので、例えば、ハンマーなどの工具でボルト62の先端部を叩いてボルト62を筐体3の内側に移動させるだけで簡単にボルト62を取り外すことが可能であり、ボルト62の交換等の保守作業を極めて簡便に行うことができる。なお、このようなボルト62交換等の保守作業は、水素ステーションスタッフであっても行うことができるため、蓄圧器ラック1のメーカーに保守作業を依頼してメーカスタッフを派遣してもらう必要がなく、保守作業の大幅な負荷軽減化を図ることもできる。
【0026】
また、本発明に係る固定手段6を採用する場合、固定手段6におけるボルト62が挿入される貫通孔61を支柱1又は梁2のいずれかに形成した後、ブラスト処理や塗装処理を行い、その後に、ボルト62、プッシュナット63、ナット64により側面板5を所定位置に取り付けることになるため、固定手段6を構成するボルト62やナット64に、ブラスト処理による損傷が発生したり、塗料が付着してしまうという問題が発生せず、従来のように、損傷や塗料が付着したナットの雌ネジ部に対してタップ処理を施して補修する必要が無く、極めて効率よく蓄圧器ラック1を製造することが可能となる。
【0027】
また、本発明に係る固定手段6の場合、ボルト62は、図7に示すように支柱1又は梁2の外側に向けて突出した状態でプッシュナット63により固定されるため、側面板5設置作業に際して、側面板5の挿通孔5aにボルト62の軸部を挿入し該側面板5をボルト軸部に引っ掛けて吊った状態として一旦仮置きすることが可能となる。このような仮置きができるため、側面板5の設置作業をより簡便に行うことができ、蓄圧器ラック1の製造を効率よく行うことができる。なお、図14に示すような従来の固定手段102の場合には、側面板101の挿通孔101aをナット107の穴に位置合わせした状態でボルト108を挿入していく必要があるため、側面板101を支持して挿通孔101aの位置合わせを行う作業者、及び、ボルト108を挿入して螺合する作業者というように側面板101の設置作業に複数の作業者を要していたが、本発明に係る固定手段6の場合、上述のように、側面板5をボルト軸部に引っ掛けるようにして一旦仮置きすることが可能となるため、一人の作業者によって側面板5の設置作業を行うことができ、蓄圧器ラック1の製造を効率よく行うことができる。
【0028】
また、蓄圧器ラック1の内部の点検やメンテナンスを行う際には、ナット64を取り外して側面板5の一部または全部を取り外す必要が生じるが、このような場合でも、ナット64を取り外した状態では、各側面板5は、ボルト軸部に吊られた状態で筐体3の外側面上に存在するため、極めて簡便にかつ安全に側面板5の取り外し作業を行うことが可能となる。なお、図14に示す従来の固定手段102の場合には、一の側面板101におけるボルト108全てを取り外してしまうと側面板101が落下してしまうため、側面板101を取り外す作業においても、側面板101を支持する作業者、及び、ボルト108を取り外す作業者というように側面板101の取り外し作業に複数の作業者を要することになるが、本発明に係る固定手段6の場合、上述のように、側面板5はボルト軸部に吊られた状態となるため、一人の作業者によって側面板5の取り外し作業を行うことが可能となる。
【0029】
また、上述のように、半ネジボルト62の雄ネジ部が形成されていない軸部62bの外径d1が、雄ネジ部が形成されている軸部62cの外径d2よりも太く形成することにより、使用するプッシュナット63に関して、その内径が、半ネジボルト62の雄ネジ部が形成されていない軸部62bの外径に適合するものを選択することによって、ボルト軸にプッシュナット63を挿入する際に、半ネジボルト62の雄ネジ部が形成されている軸部62cとの間で干渉が発生することを防止することができ、プッシュナット63をより一層簡便に所定のボルト軸上に設置して、支柱1又は梁2上にボルト62を固定することができ、蓄圧器ラック1の製造効率を向上させることができる。また、ハンマーなどの工具で半ネジボルト62の先端部を叩いて該ボルト62を筐体3の内側に移動させて、プッシュナット63との係合を解除して半ネジボルト62を取り外す場合、取り外された半ネジボルト62の雄ネジ部分は、プッシュナット63との干渉によって損傷を生じないため、再利用可能であり、保守作業のコストを抑えることができる。
【0030】
また、上述のように、プッシュナット63とボルト頭62aとの間で支柱1又は梁2を挟持して固定される半ネジボルト62において、支柱1又は梁2の外表面よりも外側に突出している雄ネジ部が形成されていない軸部62bが、側面板5の挿通孔5aの内周面を支持可能となるように構成することにより、図10に示すように、側面板5の挿通孔5aにボルト軸部に挿入し、側面板5をボルト軸部上に仮置きした際に、雄ネジ部が形成されていない軸部62b上に側面板5を引っ掛けるようにして載置することができる。これにより、ボルト62における雄ネジ部が、側面板5の挿通孔5aと接触しないようにして側面板5を取り付けることができるため、側面板5の挿通孔5aとの接触に起因する雄ネジ部の損傷を確実に防止することが可能となる。その結果、ボルト62とプッシュナット63との締結状態を解除してボルト62を交換する、或いは、ボルト62の雄ネジ部に対するタップ処理を行うといった作業が不要となり、より一層効率よく蓄圧器ラック1を製造することが可能となる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態に係る蓄圧器ラック1について説明したが、その具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、図11(a)に示すように、プッシュナット63が配置される貫通孔61の一方の開口部側に、プッシュナット63が収容可能な座繰り部66を支柱1又は梁2に形成するよう構成してもよい。このような座繰り部66を備えることにより、図11(b)に示すように、側面板5の一方面(筐体内部側を向く面)が、支柱1又は梁2の表面に当接した状態で側面板5が設置固定されるため、設置時の安定性が向上する。また、側面板5の一方面(筐体内部側を向く面)にプッシュナット63との接触による傷が生じることも防止でき、当該傷を起点に側面板5に錆が発生することを防止することができる。また、側面板5とプッシュナット63とが直接的に接触しないため、プッシュナット63に損傷が発生することを効果的に抑制することが可能となる。
【0032】
また、座繰り部66を設ける場合であっても、ボルト62として半ネジボルトを使用する場合には、該半ネジボルト62の雄ネジ部が形成されていない軸部62bの外径は、雄ネジ部が形成されている軸部62cの外径よりも太く形成することが好ましい。また、図11(c)に示すように、支柱1又は梁2の外表面よりも外側に突出している雄ネジ部が形成されていない軸部62bは、側面板5の挿通孔5aの内周面を支持可能となるように構成することが好ましい。
【0033】
また、図12に示すように、固定手段6が、側面板5とナット64との間に配置されるシリコンゴム製のワッシャー67を備え、更に、ナット64及び該ナット64から突出するボルト62の先端部を被覆するカバー体68を備えるように構成してもよい。このような構成を採用することにより雨水等の水が、側面板5の挿通孔5aや、ボルト62やナット64との螺合部分等に進入することが防止され、固定手段6に錆が発生することを効果的に抑制することができる。また、カバー体68を設けることにより、雨水等の水が進入することを防止できることに加え、ボルト62における雄ネジ部に損傷が生じることを効果的に防止することができる。
【0034】
また、上記実施形態において、蓄圧器ラック1に収容される蓄圧器として、水素ステーションにおいて使用される水素ガス貯蔵用の蓄圧器を例示しているが、蓄圧器に貯蔵される圧縮ガスとしては、水素に限定されるものではなく、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス等種々の圧縮ガスであってもよい。
【0035】
また、上記実施形態において、側面板5の外表面に把手(図示せず)を設けるように構成してもよい。把手を設けることにより、筐体3の外側面に側面板5を設置する作業や、筐体3の外側面から側面板5を取り外す作業をより一層簡便に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
100 蓄圧器ラック
1 支柱
2 梁
3 筐体
5 側面板
5a 挿通孔
6 固定手段
61 貫通孔
62 ボルト
62a ボルト頭
62b 雄ネジ部が形成されていない軸部
62c 雄ネジ部が形成されている軸部
63 プッシュナット
64 ナット
66 座繰り部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
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図15