(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112480
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】エネルギー利用システム
(51)【国際特許分類】
F25J 1/00 20060101AFI20240814BHJP
F28F 1/12 20060101ALI20240814BHJP
F28F 21/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
F25J1/00 D
F28F1/12 G
F28F21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017517
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】谷口 洋
【テーマコード(参考)】
4D047
【Fターム(参考)】
4D047AA08
4D047AB00
4D047CA06
(57)【要約】
【課題】エネルギー効率を向上させることができるエネルギー利用システムを提供する。
【解決手段】エネルギー利用システムは、液化水素と第1気体とを熱交換させ、液体水素を気化するとともに、液体水素の冷熱によって第1気体を液化させて液化ガスを生成する液化装置と、液化装置で第1気体と熱交換を行った後の水素ガスと、内部に封入された作動流体とを熱交換させ、水素ガスを昇温するとともに、水素ガスの冷熱によって冷却される熱機関と、を備え、液化装置は、第1気体との熱交換によって、水素ガスを作動流体の沸点以上まで昇温させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化水素と第1気体とを熱交換させ、液体水素を気化するとともに、液体水素の冷熱によって前記第1気体を液化させて液化ガスを生成する液化装置と、
前記液化装置で前記第1気体と熱交換を行った後の水素ガスと、内部に封入された作動流体とを熱交換させ、水素ガスを昇温するとともに、水素ガスの冷熱によって冷却される熱機関と、
を備え、
前記液化装置は、前記第1気体との熱交換によって、水素ガスを前記作動流体の沸点以上まで昇温させる、エネルギー利用システム。
【請求項2】
前記第1気体および前記作動流体は、ともに空気であり、
前記液化装置は、液化水素と空気とを熱交換させて液化空気を生成する、請求項1に記載のエネルギー利用システム。
【請求項3】
前記熱機関で前記作動流体と熱交換を行った後の水素ガスを燃焼して駆動する水素ガスタービン発電システムをさらに備え、
前記熱機関は、水素ガスの冷熱に加えて前記水素ガスタービン発電システムの排熱を利用する、請求項1又は2に記載のエネルギー利用システム。
【請求項4】
前記液化装置で生成された液化ガスを貯留するタンクと、
前記タンクに貯留された液化ガスによって駆動するタービン発電機と、
をさらに備える、請求項1又は2に記載のエネルギー利用システム。
【請求項5】
前記熱機関は、前記作動流体に熱交換を行わせる領域に、グラフェンにより形成されたフィン構造体を有する、請求項1又は2に記載のエネルギー利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エネルギー利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素社会の実現に向けて液化水素を積極的に利用する動きがある。液化水素を利用する施設として、例えば特許文献1に記載の水素供給ステーションが挙げられる。この水素供給ステーションは、液体水素の冷熱を利用して二酸化炭素ガスを効果的に処理する。
【0003】
また、液化水素は、ガスタービンの駆動にも利用される。この場合、液化水素は、ガスタービンで燃焼される。ただし、液化水素を燃焼させるためには、極低温(融点が約-259℃、沸点が約―253℃)の液化水素を昇温し、気化させる必要がある。液化水素を気化させるため、液化水素を大気や海水と熱交させる方法が取られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液化水素を大気や海水と熱交換させる場合、多量の冷熱が排出されており、エネルギー効率が悪いことが課題とされていた。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、エネルギー効率を向上させることができるエネルギー利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るエネルギー利用システムは、液化水素と第1気体とを熱交換させ、液体水素を気化するとともに、液体水素の冷熱によって前記第1気体を液化させて液化ガスを生成する液化装置と、前記液化装置で前記第1気体と熱交換を行った後の水素ガスと、内部に封入された作動流体とを熱交換させ、水素ガスを昇温するとともに、水素ガスの冷熱によって冷却される熱機関と、を備え、前記液化装置は、前記第1気体との熱交換によって、水素ガスを前記作動流体の沸点以上まで昇温させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示のエネルギー利用システムによれば、エネルギー効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係るエネルギー利用システムの全体構成図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る冷熱利用設備の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(エネルギー利用システムの構成)
以下、本開示の実施形態に係るエネルギー利用システム100について、
図1、
図2を参照して説明する。
図1に示すようにエネルギー利用システム100は、供給源1と、液化水素基地2と、水素ガスタービン発電システム3と、蒸気タービン発電システム15と、圧縮機4と、フレアスタック5と、リターンガスブロワ6とを備える。エネルギー利用システム100の各構成は、配管Lによって接続され、1つのサイクルが形成されている。配管Lには、液管L1とガス管L2とがある。
【0011】
(供給源)
供給源1は、例えば液化水素A1を運搬する液水運搬船1aである。液水運搬船1aは、例えば後述する液化水素基地2の近くの湾口等に停泊される。液水運搬船1aは、例えば海外でLNG(Liquefied Natural Gas)を利用して生成された液化水素A1を貯留して運搬する。
【0012】
(液化水素基地)
液化水素基地2は、液水タンク7と、昇圧ポンプ8と、冷熱利用設備9とを備える。
液水タンク7は、供給源1と液管L1によって接続されている。液水タンク7には、供給源1から供給された液化水素A1が貯留される。液水タンク7は、液管L1によって昇圧ポンプ8に接続されている。
【0013】
昇圧ポンプ8は、液水タンク7から供給された液化水素A1を昇圧する。昇圧ポンプ8は、液管L1によって冷熱利用設備9に接続されている。昇圧ポンプ8で昇圧された液化水素A1は、融点付近の約―253℃まで昇温されている。
【0014】
(冷熱利用設備)
冷熱利用設備9は、液化水素A1を気化して水素ガスA2を生成するとともに、その際に生じる液化水素A1の冷熱を利用するものである。冷熱利用設備9の構成の詳細については、後述する。
【0015】
(水素ガスタービン発電システム)
水素ガスタービン発電システム3は、ガス管L2によって冷熱利用設備9と接続されている。水素ガスタービン発電システム3は、水素ガスタービン3aと、発電機3bとを備える。水素ガスタービン3aは、冷熱利用設備9で生成された水素ガスA2を燃焼して駆動する。発電機3bは、水素ガスタービン3aの駆動力によって駆動し、発電する。
【0016】
水素ガスタービン発電システム3からは、多量の熱が排熱される。水素ガスタービン3aで生じた排熱(約500℃から600℃)は、後述するタービン発電機13や、水素ガスタービン3aの下流側に設けられた蒸気タービン発電システム15で利用される。
【0017】
蒸気タービン発電システム15は、蒸気タービン15aと、発電機15bとを備える。蒸気タービン15aは、水素ガスタービン3aの排熱を利用して駆動する。発電機15bは、蒸気タービン15aの駆動力によって駆動し、発電する。蒸気タービン発電システム15の排熱は、後述する熱機関21で利用される。
【0018】
上述した冷熱利用設備9で生成された水素ガスA2の一部は、ガス管L2によって供給源1に戻される。以下では、供給源1に水素ガスA2や燃焼ガスの一部を戻すガス管L2を、リターン管L3と称する。このリターン管L3には、例えば上流側から順に圧縮機4と、フレアスタック5と、リターンガスブロワ6とが配置されている。圧縮機4は、リターン管L3を流れる水素ガスA2を昇圧する。フレアスタック5は、リターン管L3を流れる余剰ガスを燃焼して無害化し、大気中に放出する。リターンガスブロワ6は、液化水素基地2内から供給源1に水素ガスA2を送り、供給源1の気相領域の圧力低下を抑制する。
図示の例では、リターン管L3は、フレアスタック5とリターンガスブロワ6との間で別のガス管L2によって液水タンク7の気相領域と接続されている。リターン管L3に配置されるこれら各種機器、設備はあくまでも一例である。
【0019】
(冷熱利用設備の構成)
続いて、主に
図2を参照して冷熱利用設備9の構成について説明する。
冷熱利用設備9は、供給源1から供給される液化水素A1の冷熱を段階的にカスケード利用する。本実施形態の冷熱利用設備9は、第1設備10と、第2設備20とを備えた2段構成となっている。
【0020】
(第1設備)
第1設備10は、供給源1から供給される液化水素A1の冷熱を利用する。本実施形態の場合、第1設備10は、液化水素A1の-253℃から-180℃までの第1温度域の冷熱を利用する。第1設備10は、液化装置11と、タンク12と、タービン発電機13とを備える。
【0021】
(液化装置)
液化装置11は、昇圧ポンプ8で昇圧された液化水素A1が供給される。液化装置11に供給される液化水素A1の温度は、沸点付近の約-253℃である。また、液化装置11には、外部から第1気体A3が供給される。液化装置11は、液化水素A1と第1気体A3とを熱交換させ、液体水素を気化する。液化装置11は、第1気体A3との熱交換によって、水素ガスA2を後述する作動流体A5の沸点以上まで昇温させる。本実施形態の場合、液化装置11によって液化水素A1は、-180℃程度まで昇温される。これにより、液化水素A1が気化して水素ガスA2が生じる。
【0022】
一方で、液化装置11は、液体水素の冷熱によって第1気体A3を液化させて液化ガスA4を生成する。本実施形態では、第1気体A3は空気であり、液化装置11は、液化水素A1と空気とを熱交換させて液化空気を生成する。液化装置11は、大気から第1気体A3として空気を取り込み、外部から供給される駆動電力によって液化空気を生成する。本実施形態の液化装置11は、一般的な工業用空気液化装置である。
液化装置11は、液管L1によってタンク12に接続されている。
【0023】
(タンク)
タンク12は、液化装置11で生成された液化ガスA4を貯留する。タンク12は、いわゆる断熱タンクであり、生成された液化ガスA4を液相の状態で貯留することができる。タンク12は、タービン発電機13と接されている。
【0024】
(タービン発電機)
タービン発電機13には、タンク12から液化ガスA4が供給される。タービン発電機13は、タンク12に貯留された液化ガスA4によって駆動する。また、タービン発電機13は、水素ガスタービン発電システム3に接続されており、水素ガスタービン発電システム3の排熱を利用することができる。本実施形態では、タービン発電機13は、液化ガスA4を水素ガスタービン発電システム3の排熱を利用して温めて、その際に生じる膨張圧力によって駆動する。タービン発電機13の駆動に利用された液化ガスA4は気体となり、大気中に排気される。
上述した第1設備10の下流側には、第2設備20が設けられている。
【0025】
(第2設備)
第2設備20は、第1設備10で利用された後の冷熱をさらに利用する。本実施形態の場合、第2設備20は、液化水素A1の-180℃から大気温度付近(例えば0℃)までの第2温度域の冷熱を利用する。第2設備20は、熱機関21と、再生熱交換器22とを備える。
【0026】
(熱機関)
熱機関21は、ガス管L2によって液化装置11と接続されている。熱機関21の内部には、作動流体A5が封入されている。本実施形態では、作動流体A5は空気であり、熱機関21は、液化装置11で第1気体A3と熱交換を行った後の水素ガスA2と、作動流体A5とを熱交換させ、水素ガスA2を昇温する。本実施形態の場合、熱機関21によって、水素ガスA2は0℃付近まで昇温される。
【0027】
一方で、熱機関21は、水素ガスA2の冷熱によって冷却される。すなわち、水素ガスA2を熱機関21の冷却に利用する。これにより、熱機関21内に封入された作動流体A5が冷却される。また、熱機関21は、水素ガスA2の冷熱に加えて、蒸気タービン発電システム15を介して水素ガスタービン発電システム3の排熱を利用する。
【0028】
本実施形態の熱機関21は、スターリングエンジン21aである。熱機関21は、冷却部23と、加熱部24と、フィン構造体25と、動作部26とを有する。
【0029】
(冷却部)
冷却部23は、ガス管L2によって液化装置11と接続されている。冷却部23には、液化装置11から水素ガスA2が供給される。冷却部23は、冷却室23aと、冷却ピストン23bとを有する。冷却室23aは、冷却ピストン23bによって蓋をされ、内部に作動流体A5が封入されている。冷却部23は、冷却室23a内の作動流体A5と水素ガスA2とで熱交換を行い、水素ガスA2の冷熱により作動流体A5を冷却する。これにより、冷却室23a内の作動流体A5が凝縮し、冷却ピストン23bが移動する。
【0030】
(加熱部)
加熱部24は、蒸気タービン発電システム15と接続されている。加熱部24には、蒸気タービン発電システム15から排熱が供給される。蒸気タービン発電システム15は、水素ガスタービン3aの排熱によって駆動する蒸気タービン15aの排熱(約200℃)を加熱部24に供給する。すなわち、本実施形態では、加熱部24は、蒸気タービン発電システム15を介して、水素ガスタービン発電システム3の排熱を利用することになる。加熱部24は、加熱室24aと、加熱ピストン24bとを有する。加熱室24aは、加熱ピストン24bによって蓋をされ、内部に作動流体A5が封入されている。加熱部24は、蒸気タービン発電システム15からの排熱により加熱室24a内の作動流体A5を加熱する。これにより、加熱室24a内の作動流体A5が膨張し、加熱ピストン24bが移動する。また、加熱室24aは冷却室23aと接続され、作動流体A5は、冷却室23aと加熱室24aとの間で流動することができる。この作動流体A5の流動により、冷却ピストン23bと加熱ピストン24bとが動き、熱機関21が駆動する。
【0031】
(フィン構造体)
フィン構造体25は、熱機関21の作動流体A5に熱交換を行わせる領域に設けられている。フィン構造体25は、熱機関21の熱交換を行う表面積(以下、この表面積を伝熱面積と称する。)を増大し、熱機関21の伝熱性能を向上させる。フィン構造体25は、グラフェンにより形成されている。
本実施形態では、フィン構造体25は、冷却部23と加熱部24とにそれぞれ設けられている。冷却部23のフィン構造体25を冷却側フィン構造体25aと称し、加熱部24のフィン構造体25を加熱側フィン構造体25bと称する。
【0032】
冷却側フィン構造体25aは、冷却室23aの外面に設けられている。冷却側フィン構造体25aには、液化装置11から供給される水素ガスA2が供給される。冷却側フィン構造体25aによって、水素ガスA2と冷却室23a内の作動流体A5との熱交換が促進される。
【0033】
加熱側フィン構造体25bは、加熱室24aの外面に設けられている。加熱側フィン構造体25bには、蒸気タービン発電システム15の排熱を含むガスが供給される。加熱側フィン構造体25bによって、これらのガスと加熱室24a内の作動流体A5との熱交換が促進される。
【0034】
(動作部)
動作部26は、冷却部23及び加熱部24内の作動流体A5の凝縮・膨張によって作動する。本実施形態の動作部26は発電機である。動作部26は、冷却部23の冷却ピストン23bと、加熱部24の加熱ピストン24bに接続されており、冷却ピストン23bと加熱ピストン24bとが連動することにより動作し、その動力によって発電する。
【0035】
上述した熱機関21は、冷却部23でガス管L2を介して水素ガスタービン発電システム3と接続されている。熱機関21で作動流体A5と熱交換を行った後の水素ガスA2(約0℃)が、水素ガスタービン発電システム3に向けて送られる。さらに、熱機関21と水素ガスタービン発電システム3との間には、再生熱交換器22が設けられている。
【0036】
(再生熱交換器)
再生熱交換器22は、水素ガスA2を大気温度程度まで昇温させる。再生熱交換器22で昇温された水素ガスA2は、水素ガスタービン発電システム3に送られ、水素ガスタービン発電システム3の駆動に利用される。
【0037】
(作用効果)
上記構成のエネルギー利用システム100は、以下の作用効果を奏する。
【0038】
本実施形態では、エネルギー利用システム100は、液化装置11と、熱機関21と、を備える。液化装置11は、液化水素A1と第1気体A3とを熱交換させ、液体水素を気化するとともに、液体水素の冷熱によって第1気体A3を液化させて液化ガスA4を生成する。熱機関21は、液化装置11で第1気体A3と熱交換を行った後の水素ガスA2と、内部に封入された作動流体A5とを熱交換させ、水素ガスA2を昇温するとともに、水素ガスA2の冷熱によって冷却される。さらに、液化装置11は、第1気体A3との熱交換によって、水素ガスA2を作動流体A5の沸点以上まで昇温させる。
【0039】
これにより、エネルギー利用システム100は、液化水素A1の冷熱を段階的にカスケード利用して、液化ガスA4を生成するとともに、熱機関21を駆動することができる。よって、液化水素A1の冷熱を効率良く利用し、エネルギー効率を向上させることができる。
【0040】
例えば本実施形態のように熱機関21が、作動流体A5が内部に封入されたスターリングエンジン21aの場合、作動流体A5(本実施形態の場合は空気)が凝縮して熱機関21の駆動が妨げられることを回避しなければならない。すなわち、空気の融点以下となり、熱機関21が凍結してしまうことを回避しなければならない。このような事情から、空気の冷却に利用される水素ガスA2の温度は、空気の沸点以上に限られる。空気の主成分である酸素と窒素の沸点は、それぞれ約-183℃、-196℃であるため、空気の沸点は、-196℃から-183℃の間にある。本実施形態では、液化装置11によって水素ガスA2が空気の沸点以上の-180℃に昇温されるため、熱機関21に供給された水素ガスA2が熱機関21の空気を凝縮させ熱機関21の駆動を妨げることがない。このように、本実施形態によれば、熱機関21の駆動を妨げることなく、液化水素A1の冷熱を効率良く利用することができる。
【0041】
本実施形態では、第1気体A3および作動流体A5は、ともに空気であり、液化装置11は、液化水素A1と空気とを熱交換させて液化空気を生成する。
【0042】
空気は、入手容易な空気である。このため、本実施形態によれば、エネルギー利用システム100にかかるコストを削減することができる。加えて、液化装置11にて生成される液化ガスA4は、液化空気である。ここで従来のように深冷分離より液化空気を生成する場合、大電力が必要となるが、本実施形態では、本来排気される液化水素A1の冷熱を利用して液化空気を生成することができるため、深冷分離に係る電力代が不要となる。
【0043】
また、生成された液化空気には様々な用途がある。例えば液化空気は、外部に売却することも可能であり、精製して原料ガスとして利用することも可能である。例えば、生成した液化空気を液体酸素と液体窒素に分離して産業利用することもできる。また、液化空気は、液化空気ロケット推進へ利用することも可能である。このように、生成した液化空気を利用することにより、全体としてコストを削減することができる。
【0044】
本実施形態では、エネルギー利用システム100は、熱機関21で作動流体A5と熱交換を行った後の水素ガスA2を燃焼して駆動する水素ガスタービン発電システム3をさらに備える。熱機関21は、水素ガスA2の冷熱に加えて水素ガスタービン発電システム3の排熱を利用する。
【0045】
このように、本実施形態によれば、熱機関21は、本来廃棄されるはずの水素ガスタービン発電システム3の排熱を利用して駆動することができる。これにより、エネルギー効率をより一層向上させることができる。
さらに、本実施形態では、熱機関21は、蒸気タービン発電システム15を介して水素ガスタービン発電システム3の排熱を利用する。これにより、水素ガスタービン3aの排熱(約500℃から600℃)を蒸気タービン15aの駆動に利用してから、蒸気タービン15aの排熱(約200℃)として、熱機関21に導くことができる。これにより、水素ガスタービン発電システム3の排熱を、熱機関21の駆動に適した温度まで下げてから熱機関21に導くことができる。したがって、水素ガスタービン発電システム3の排熱を、蒸気タービン発電システム15と熱機関21との2段階で利用することができ、エネルギー効率を向上させることができる。
また、約200℃の排熱は、本実施形態のような熱機関21における低温側水素に対する高温側熱源として有効であるので、熱機関21を効率良く駆動することができる。
【0046】
本実施形態では、エネルギー利用システム100は、タンク12と、タービン発電機13と、をさらに備える。タンク12は、液化装置11で生成された液化ガスA4を貯留する。タービン発電機13は、タンク12に貯留された液化ガスA4によって駆動する。
【0047】
これにより、タンク12に貯留された液化ガスA4を利用して発電することができる。このため、発電量が変動した際(例えば太陽光発電において、日照時間が短く発電量が減少した場合等)に、発電量を補うことができる。よって、エネルギー効率をより一層向上させることができる。
【0048】
本実施形態では、熱機関21は、作動流体A5に熱交換を行わせる領域に、グラフェンにより形成されたフィン構造体25を有する。
【0049】
グラフェンは、鉄等の金属と比較して、熱伝導率が高い。このため、本実施形態よれば、熱機関21の伝熱性能を向上させることができる。よって、エネルギー効率をより一層向上させることができる。
【0050】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では熱機関21がスターリングエンジン21aであるとしたが、これに限るものではない。熱機関21は、例えばブレイトンサイクルを利用した機関であってもよい。
【0051】
なお、上記実施形態では第1気体A3及び作動流体A5がともに空気であるとしたが、これに限るものではない。第1気体A3及び作動流体A5は、酸素や窒素、ネオンであってもよい。また。第1気体A3と作動流体A5とは、全く同一である必要はない。
【0052】
なお、上記実施形態では冷熱利用設備9が第1設備10と第2設備20とを備えた2段構成である場合について説明したが、これに限られない。冷熱利用設備9は、3段以上に構成されていてもよい。また例えば、第1設備10をさらに複数段に分けてもよく、第2設備20をさらに複数段に分けてもよい。
【0053】
なお、上記実施形態では、水素ガスタービン発電システム3よりも下流側に蒸気タービン発電システム15が設けられている場合について説明したが、蒸気タービン発電システム15は必ずしも設けられていなくてもよい。この場合、水素ガスタービン発電システム3の排熱(約500℃から600℃)は、熱機関21に直接供給される。
【0054】
<付記>
各実施形態に記載のエネルギー利用システム100は、例えば以下のように把握される。
【0055】
(1)第1の態様に係るエネルギー利用システム100は、液化水素A1と第1気体A3とを熱交換させ、液体水素を気化するとともに、液体水素の冷熱によって前記第1気体A3を液化させて液化ガスA4を生成する液化装置11と、前記液化装置11で前記第1気体A3と熱交換を行った後の水素ガスA2と、内部に封入された作動流体A5とを熱交換させ、水素ガスA2を昇温するとともに、水素ガスA2の冷熱によって冷却される熱機関21と、を備え、前記液化装置11は、前記第1気体A3との熱交換によって、水素ガスA2を前記作動流体A5の沸点以上まで昇温させる。
【0056】
これにより、エネルギー利用システム100は、液化水素A1の冷熱を段階的にカスケード利用して、液化ガスA4を生成するとともに、熱機関21を駆動することができる。
【0057】
(2)第2の態様のエネルギー利用システム100は、(1)の態様に係るエネルギー利用システム100であって、前記第1気体A3および前記作動流体A5は、ともに空気であり、前記液化装置11は、液化水素A1と空気とを熱交換させて液化空気を生成してもよい。
【0058】
空気は、入手容易な空気である。このため、本態様によれば、エネルギー利用システム100にかかるコストを削減することができる。加えて、液化装置11にて生成される液化ガスA4は、液化空気である。液化空気は、外部に売却することも可能であり、精製して原料ガスとして利用することも可能である。このため、生成した液化空気を利用することにより、全体としてコストを削減することができる。
【0059】
(3)第3の態様のエネルギー利用システム100は、(1)又は(2)の態様に係るエネルギー利用システム100であって、前記熱機関21で前記作動流体A5と熱交換を行った後の水素ガスA2を燃焼して駆動する水素ガスタービン発電システム3をさらに備え、前記熱機関21は、水素ガスA2の冷熱に加えて前記水素ガスタービン発電システム3の排熱を利用してもよい。
【0060】
これにより、エネルギー効率をより一層向上させることができる。
【0061】
(4)第4の態様のエネルギー利用システム100は、(1)から(3)のいずれか1つの態様に係るエネルギー利用システム100であって、前記液化装置11で生成された液化ガスA4を貯留するタンク12と、前記タンク12に貯留された液化ガスA4によって駆動するタービン発電機13と、をさらに備えてもよい。
【0062】
これにより、タンク12に貯留された液化ガスA4を利用して発電することができる。このため、発電量が変動した場合に、発電量を補うことができる。
【0063】
(5)第5の態様のエネルギー利用システム100は、(1)から(4)のいずれか1つの態様に係るエネルギー利用システム100であって、前記熱機関21は、前記作動流体A5に熱交換を行わせる領域に、グラフェンにより形成されたフィン構造体25を有してもよい。
【0064】
グラフェンは、鉄等の金属と比較して、熱伝導率が高い。このため、本態様よれば、熱機関21の伝熱性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0065】
1…供給源、1a…液水運搬船、2…液化水素基地、3…水素ガスタービン発電システム、3a…水素ガスタービン、3b…発電機、4…圧縮機、5…フレアスタック、6…リターンガスブロワ、7…液水タンク、8…昇圧ポンプ、9…冷熱利用設備、10…第1設備、11…液化装置、12…タンク、13…タービン発電機、15…蒸気タービン発電システム、15a…蒸気タービン、15b…発電機、20…第2設備、21…熱機関、21a…スターリングエンジン、22…再生熱交換器、23…冷却部、23a…冷却室、23b…冷却ピストン、24…加熱部、24a…加熱室、24b…加熱ピストン、25…フィン構造体、25a…冷却側フィン構造体、25b…加熱側フィン構造体、26…動作部、100…エネルギー利用システム、A1…液化水素、A2…水素ガス、A3…第1気体、A4…液化ガス、A5…作動流体、L…配管、L1…液管、L2…ガス管、L3…リターン管