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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112484
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ツバメの巣含有飲食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20240814BHJP
   A23L 33/16 20160101ALI20240814BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240814BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20240814BHJP
   A23L 33/165 20160101ALI20240814BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/16
A23L2/00 F
A23L2/38 N
A23L33/165
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017527
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】ニッタヤ タヌパプランサン
(72)【発明者】
【氏名】ソムルディー ソンティップ
(72)【発明者】
【氏名】ガーンシニー ルートジャルーンパイサーン
(72)【発明者】
【氏名】松林 秀貴
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018MD04
4B018MD05
4B018MD69
4B018ME14
4B117LC02
4B117LC04
4B117LE03
4B117LE10
4B117LK01
4B117LK17
4B117LL02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】良好なテクスチャーを有する、新たなツバメの巣含有飲食品組成物を提供する。
【解決手段】本発明の一態様によれば、ツバメの巣と溶液を含有する飲食品組成物であって、前記溶液が、0.0001重量%超、かつ、0.2重量%未満の量の亜鉛と、0.00007重量%超、かつ、0.2重量%未満のカルシウムを含む、飲食品組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツバメの巣と溶液を含有する飲食品組成物であって、前記溶液が、
0.0001重量%超、かつ、0.2重量%未満の量の亜鉛と、
0.00007重量%超、かつ、0.2重量%未満の量のカルシウムを含む、飲食品組成物。
【請求項2】
前記溶液中の亜鉛の含有量が、0.0002~0.15重量%である、請求項1に記載の飲食品組成物。
【請求項3】
前記溶液中の亜鉛の含有量が、0.002~0.1重量%である、請求項1に記載の飲食品組成物。
【請求項4】
前記溶液中のカルシウムの含有量が、0.0001~0.19重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲食品組成物。
【請求項5】
前記溶液中のカルシウムの含有量が、0.0005~0.15重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲食品組成物。
【請求項6】
ツバメの巣の含有量が、食品組成物の総重量に対して0.01~10重量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の飲食品組成物。
【請求項7】
甘味料をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の飲食品組成物。
【請求項8】
ツバメの巣と溶液を含有する飲食品組成物であって、添加された亜鉛化合物またはその塩もしくはキレート化合物由来の亜鉛の前記溶液中の量が、0.0001重量%超、かつ、0.2重量%未満であり、
添加されたカルシウム化合物またはその塩もしくはキレート化合物由来のカルシウムのの前記溶液中の量が、0.00007重量%超、かつ、0.2重量%未満である、飲食品組成物。
【請求項9】
ツバメの巣と溶液を含有する飲食品組成物であって、前記溶液が、
0.0005重量%超、かつ、1.0重量%未満の量の亜鉛ビスグリシネートキレートと、
0.0005重量%超、かつ、1.5重量%未満の量のL-乳酸カルシウム五水和物を含む、飲食品組成物。
【請求項10】
レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料、清涼飲料、ゼリー状飲料、粉末飲料または機能性飲料である、請求項1~9のいずれか一項に記載の飲食品組成物。
【請求項11】
容器詰めされている、請求項1~10のいずれか一項に記載の飲食品組成物。
【請求項12】
前記ツバメの巣がアナツバメの巣である、請求項1~11のいずれか一項に記載の飲食品組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の飲食品組成物の製造方法であって、
溶媒と、亜鉛化合物またはその塩もしくはキレート化合物と、カルシウム化合物またはその塩もしくはキレート化合物と、ツバメの巣とを混合すること
を含む、製造方法。
【請求項14】
ツバメの巣のテクスチャー改善方法であって、
0.0001重量%超、かつ、0.2重量%未満の量の亜鉛と、
0.00007重量%超、かつ、0.2重量%未満の量のカルシウムを含む溶液にツバメの巣を添加することを含む、方法。
【請求項15】
ツバメの巣のテクスチャー改善方法であって、
0.002重量%超、かつ、0.015重量%未満の量の亜鉛を含む溶液にツバメの巣を添加することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツバメの巣を含有する飲食品組成物およびその製造方法等に関する。本発明はさらにツバメの巣のテクスチャー改善方法等にも関する。
【背景技術】
【0002】
食用のツバメの巣(Bird’s nest)は、主にウミツバメ科のツバメの唾液を固めて作ったものであり、特に中華料理において高級食材として知られている。ツバメの巣は、タンパク質、必須アミノ酸、炭水化物およびミネラルなどの栄養成分に富み、健康に良いことが知られているため、健康食品等にも用いられている。このような背景から、これまで様々なツバメの巣配合飲食品が開発されてきた。
【0003】
例えば、中国特許出願公開第108095076号(特許文献1)には、阿膠、百合および黒クコの実などの種々の原料を含むツバメの巣配合乾燥粉末が開示されている。また、中国特許出願公開第107712876号(特許文献2)には、特殊な製造方法で得た純粋なツバメの巣を含む食品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第108095076号
【特許文献1】中国特許出願公開第107712876号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような状況の下、新たなツバメの巣含有飲食品組成物の開発が待たれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが検討したところ、ツバメの巣を含有する飲食品組成物が亜鉛とカルシウムを所定量含有することで、良好なテクスチャーを有するツバメの巣を含む飲食品組成物を得ることができることを知得した。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0007】
本発明には、例えば、以下の態様の発明が含まれる。
[1]
ツバメの巣と溶液を含有する飲食品組成物であって、前記溶液が、
0.0001重量%超、かつ、0.2重量%未満の量の亜鉛と、
0.00007重量%超、かつ、0.2重量%未満の量のカルシウムを含む、飲食品組成物。
[2]
前記溶液中の亜鉛の含有量が、0.0002~0.15重量%である、[1]に記載の飲食品組成物。
[3]
前記溶液中の亜鉛の含有量が、0.002~0.1重量%である、[1]に記載の飲食品組成物。
[4]
前記溶液中のカルシウムの含有量が、0.0001~0.19重量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の飲食品組成物。
[5]
前記溶液中のカルシウムの含有量が、0.0005~0.15重量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の飲食品組成物。
[6]
ツバメの巣の含有量が、食品組成物の総重量に対して0.01~10重量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の飲食品組成物。
[7]
甘味料をさらに含む、[1]~[6]のいずれかに記載の飲食品組成物。
[8]
ツバメの巣と溶液を含有する飲食品組成物であって、添加された亜鉛化合物またはその塩もしくはキレート化合物由来の亜鉛の前記溶液中の量が、0.0001重量%超、かつ、0.2重量%未満であり、
添加されたカルシウム化合物またはその塩もしくはキレート化合物由来のカルシウムのの前記溶液中の量が、0.00007重量%超、かつ、0.2重量%未満である、飲食品組成物。
[9]
ツバメの巣と溶液を含有する飲食品組成物であって、前記溶液が、
0.0005重量%超、かつ、1.0重量%未満の量の亜鉛ビスグリシネートキレートと、
0.0005重量%超、かつ、1.5重量%未満の量のL-乳酸カルシウム五水和物を含む、飲食品組成物。
[10]
レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料、清涼飲料、ゼリー状飲料、粉末飲料または機能性飲料である、[1]~[9]のいずれかに記載の飲食品組成物。
[11]
容器詰めされている、[1]~[10]のいずれかに記載の飲食品組成物。
[12]
前記ツバメの巣がアナツバメの巣である、[1]~[11]のいずれかに記載の飲食品組成物。
[13]
[1]~[12]のいずれかに記載の飲食品組成物の製造方法であって、
溶媒と、亜鉛化合物またはその塩もしくはキレート化合物と、カルシウム化合物またはその塩もしくはキレート化合物と、ツバメの巣とを混合すること
を含む、製造方法。
[14]
ツバメの巣のテクスチャー改善方法であって、
0.0001重量%超、かつ、0.2重量%未満の量の亜鉛と、
0.00007重量%超、かつ、0.2重量%未満の量のカルシウムを含む溶液にツバメの巣を添加することを含む、方法。
[15]
ツバメの巣のテクスチャー改善方法であって、
0.002重量%超、かつ、0.015重量%未満の量の亜鉛を含む溶液にツバメの巣を添加することを含む、方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、良好なテクスチャーを有するツバメの巣含有飲食品組成物を提供することができる。また、本発明の他の態様によれば、ツバメの巣のテクスチャー改善方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施をすることができる。
なお、本明細書において引用した全ての文献、および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。
【0010】
1.ツバメの巣を含有する飲食品組成物
本発明は、一側面として、ツバメの巣と、所定量の亜鉛とカルシウムを含む飲食品組成物(以下、「本発明の飲食品組成物」ともいう)を提供する。
本発明の一態様によれば、ツバメの巣と溶液を含有する飲食品組成物であって、前記溶液が、
0.0001重量%超、かつ、0.2重量%未満の量の亜鉛と、
0.00007重量%超、かつ、0.2重量%未満の量のカルシウムを含む、飲食品組成物が提供される。
【0011】
本発明の他の一態様によれば、ツバメの巣を含有する飲食品組成物であって、飲食品組成物の総重量に対して
0.2~2重量%の量のツバメの巣と、
0.001~0.01重量%の量の亜鉛と、
0.005~0.09重量%の量のカルシウムを含む、飲食品組成物が提供される。
【0012】
本発明のさらに他の一態様によれば、ツバメの巣と溶液を含有する飲食品組成物であって、添加された亜鉛化合物またはその塩もしくはキレート化合物由来の亜鉛の前記溶液中の量が、0.0001重量%超、かつ、0.2重量%未満であり、
添加されたカルシウム化合物またはその塩もしくはキレート化合物由来のカルシウムのの前記溶液中の量が、0.00007重量%超、かつ、0.2重量%未満である、飲食品組成物が提供される。本明細書において、添加された亜鉛化合物またはその塩もしくはキレート化合物由来の亜鉛の前記溶液中の量とは、ツバメの巣由来の亜鉛以外の亜鉛の量を意味する。添加されたカルシウム化合物またはその塩もしくはキレート化合物由来のカルシウムの前記溶液中の量についても同様である。
【0013】
本発明のさらに他の一態様によれば、ツバメの巣と溶液を含有する飲食品組成物であって、前記溶液が、
0.0005重量%超、かつ、1.0重量%未満の量の亜鉛ビスグリシネートキレートと、
0.0005重量%超、かつ、1.5重量%未満の量のL-乳酸カルシウム五水和物を含む、飲食品組成物が提供される。
【0014】
本発明に使用するツバメの巣は、食用のツバメの巣であれば特に限定されないが、主にアナツバメの唾液を固めて作ったものである。ツバメの巣の主な成分はタンパク質であり、糖タンパク質を多く含む。ツバメの巣としては、アマツバメ目アマツバメ科アナツバメの巣が好ましい。
【0015】
ツバメの巣は天然のものでも養殖のものでもよい。天然のものは洞窟にツバメが作った巣を利用する。養殖のものは人工的な建造物の中でツバメが作った巣を利用する。また、ツバメの巣には白いツバメの巣と黒いツバメの巣があることが知られているが、どちらを用いてもよい。白いツバメの巣は最も品質が高く、ほぼ唾液のみから作られており、供給量が限られている。黒いツバメの巣にはツバメの羽毛が多く含まれている。ツバメの巣としては、乾燥ツバメの巣を使用することができる。乾燥ツバメの巣は、市販のものを用いてもよく、採取したツバメの巣を処理した上で使用してもよい。ツバメの巣は、一般的に次のような工程で処理をした上で使用することができる:1)ツバメの巣を採取し、2)得られたツバメの巣を煮沸して軟化させ、3)水で洗浄し、4)不純物を取り除き、5)乾燥させ、6)再度不純物を取り除く。
【0016】
ツバメの巣の含有量は、特に限定されないが、例えば、飲食品組成物の総重量に対して0.01~10重量%である。本発明のいくつかの態様において、ツバメの巣の含有量は、飲食品組成物の総重量に対して、好ましくは0.02~8重量%、より好ましくは0.05~5重量%、さらにより好ましくは0.1~3重量%である。このような範囲とすることで、触感をしっかり楽しめるため好ましい。あるいは、飲食品組成物の総重量に対して、0.01~8重量%、0.01~6重量%、0.01~4重量%、0.01~2重量%、0.01~1重量%、0.02~10重量%、0.05~10重量%、0.1~10重量%、0.2~10重量%、0.5~10重量%、1~10重量%、2~10重量%または5~10重量%であってもよい。ここで、飲食品組成物の総重量とは、ツバメの巣と、亜鉛成分と、カルシウム成分と、溶媒(例えば、水またはアルコール)および任意の他の成分との合計重量である。任意の他の成分としては、後述の甘味料や香料などが挙げられる。ツバメの巣の含有量は例えばタンパク質を燃焼法によって測定することや、N-アセチルノイラミン酸の含有量をHPLCによって測定することで算出することができる。あるいは、ツバメの巣の添加量が判明している場合は、原料の添加量から算出してもよい。
【0017】
本発明のいくつかの態様において、飲食品組成物に含まれる亜鉛の含有量は、飲食品組成物に含まれる溶液(または液体組成物)中の含有量として定義される。本発明のいくつかの態様において、溶液中の亜鉛の含有量は、0.0001重量%超、かつ、0.2重量%未満であり、好ましくは0.0002~0.15重量%であり、より好ましくは0.002~0.1重量%であり、さらに好ましくは0.005~0.08重量%である。このような範囲とすることで、良好なテクスチャーを有するツバメの巣を含む飲食品組成物が得られる点で好ましい。あるいは、溶液中の亜鉛の含有量は、0.0002~0.08重量%、0.002~0.08重量%、0.005~0.08重量%、0.01~0.08重量%、0.015~0.08重量%、0.02~0.08重量%、0.01~0.06重量%、0.01~0.05重量%、0.01~0.04重量%、0.01~0.03重量%、0.01~0.02重量%、または0.01~0.01重量%であってもよい。ここで、溶液中の含有量とは、飲食品組成物中の不溶性固形分(例えば、ツバメの巣)を除いた溶液中に含まれる成分の量である。例えば、溶液(例えば水溶液)中の含有量とは、溶媒ならびに溶媒に溶解している亜鉛、カルシウム、および任意の他の成分(甘味料等)の合計重量に対する重量割合である。任意の他の成分としては、溶媒に溶解すれば特に限定されないが、後述の甘味料や香料などが挙げられる。亜鉛の含有量は例えばICP発光分光分析装置(Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectrometer: ICP-OES)によって測定することができる。あるいは、亜鉛含有原料の添加量が判明している場合は、原料の添加量から算出してもよい。なお、亜鉛が化合物として添加されている場合には、化合物全体の重量ではなく、亜鉛自体の量を基準とする。一般的にツバメの巣自体には亜鉛はあまり含まれておらず、その含有量はICP-OESによって確認することができる。
【0018】
本発明のいくつかの態様において、飲食品組成物に含まれる亜鉛の含有量は、添加された亜鉛化合物またはその塩もしくはキレート化合物由来の亜鉛の溶液中の量として定義される。本発明のいくつかの態様において、溶液中の亜鉛の含有量は、0.0001重量%超、かつ、0.2重量%未満であり、好ましくは0.0002~0.15重量%であり、より好ましくは0.002~0.1重量%であり、さらに好ましくは0.005~0.08重量%である。このような範囲とすることで、良好なテクスチャーを有するツバメの巣を含む飲食品組成物が得られる点で好ましい。あるいは、溶液中の亜鉛の含有量は、0.0002~0.08重量%、0.002~0.08重量%、0.005~0.08重量%、0.01~0.08重量%、0.015~0.08重量%、0.02~0.08重量%、0.01~0.06重量%、0.01~0.05重量%、0.01~0.04重量%、0.01~0.03重量%、0.01~0.02重量%、または0.01~0.01重量%であってもよい。亜鉛の含有量は、添加した亜鉛化合物またはその塩もしくはキレート化合物の量から算出することができる。
【0019】
本発明のいくつかの態様において、飲食品組成物に含まれる亜鉛の含有量は、飲食品組成物の総重量に対する含有量として定義される。本発明のいくつかの態様において、飲食品組成物の総重量に対する亜鉛の含有量は、0.001~0.01重量%であり、好ましくは0.002~0.009重量%であり、より好ましくは0.005~0.009重量%である。ここで、飲食品組成物の総重量に対する含有量とは、飲食品組成物中の不溶性固形分(例えば、ツバメの巣)と溶液の合計量を基準とした含有量である。例えば、飲食品組成物の総重量に対する含有量とは、不溶性固形分、溶媒ならびに溶媒に溶解している亜鉛、カルシウム、および任意の他の成分(甘味料等)の合計重量に対する重量割合である。任意の他の成分としては、溶媒に溶解すれば特に限定されないが、後述の甘味料や香料などが挙げられる。亜鉛の含有量は例えばICP発光分光分析装置(ICP-OES)によって測定することができる。あるいは、亜鉛含有原料の添加量が判明している場合は、原料の添加量から算出してもよい。なお、亜鉛が化合物として添加されている場合には、化合物全体の重量ではなく、亜鉛自体の量を基準とする。
【0020】
亜鉛は、食品に添加可能な形態の亜鉛含有組成物、亜鉛化合物またはその塩もしくはキレート化合物由来のものであれば特に限定されないが、例えば、亜鉛ビスグリシネートキレート等の亜鉛アミノ酸キレート、グルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、亜鉛酵母およびカキ抽出物などを用いることができる。その中でも、亜鉛アミノ酸キレートおよびグルコン酸亜鉛が好ましく、人体への吸収性の高さから亜鉛ビスグリシネートキレートが特に好ましい。亜鉛ビスグリシネートキレートは下記の構造を有する化合物である。
【化1】
【0021】
本発明のいくつかの態様における飲食品組成物は、0.0005重量%超、かつ、1.0重量%未満の量の亜鉛ビスグリシネートキレートを含む。亜鉛ビスグリシネートキレートの含有量は、好ましくは0.001~0.5重量%であり、より好ましくは0.002~0.3重量%であり、さらにより好ましくは0.005~0.2重量%である。亜鉛ビスグリシネートキレートの含有量は飲食品組成物への添加量から求めることができる。亜鉛ビスグリシネートキレートは、飲食品組成物中で解離していてもよい。
【0022】
本発明のいくつかの態様において、飲食品組成物に含まれるカルシウムの含有量は、飲食品組成物に含まれる溶液中の含有量として定義される。本発明のいくつかの態様において、溶液中のカルシウムの含有量は、0.00007重量%超、かつ、0.2重量%未満であり、好ましくは0.0001~0.19重量%であり、より好ましくは0.0005~0.15重量%であり、さらに好ましくは0.001~0.1重量%である。このような範囲とすることで、良好なテクスチャーを有するツバメの巣を含む飲食品組成物が得られる点で好ましい。あるいは、溶液中のカルシウムの含有量は、0.0001~0.15重量%、0.0001~0.1重量%、0.0001~0.08重量%、0.0001~0.06重量%、0.0001~0.04重量%、0.0001~0.02重量%、0.0001~0.01重量%、0.0002~0.15重量%、0.0004~0.15重量%、0.0006~0.15重量%、0.0008~0.15重量%、0.001~0.15重量%または0.002~0.15重量%であってもよい。ここで、溶液中の含有量とは、上記の亜鉛における溶液中の含有量と同じである。カルシウムの含有量は例えばICP発光分光分析装置(ICP-OES)によって測定することができる。あるいは、カルシウム含有原料の添加量が判明している場合は、原料の添加量から算出してもよい。なお、カルシウムが化合物として添加されている場合には、化合物全体の重量ではなく、カルシウム自体の量を基準とする。一般的にツバメの巣自体にもカルシウムが含まれており、その含有量はICP-OESによって測定することができる。
【0023】
本発明のいくつかの態様において、飲食品組成物に含まれるカルシウムの含有量は、飲食品組成物の総重量に対する含有量として定義される。本発明のいくつかの態様において、飲食品組成物の総重量に対するカルシウムの含有量は、0.005~0.09重量%であり、好ましくは0.008~0.085重量%であり、より好ましくは0.01~0.08重量%である。ここで、飲食品組成物の総重量に対する含有量とは、上記の亜鉛における飲食品組成物の総重量に対する含有量と同様である。カルシウムの含有量は例えばICP発光分光分析装置(ICP-OES)によって測定することができる。あるいは、カルシウム含有原料の添加量が判明している場合は、原料の添加量から算出してもよい。なお、カルシウムが化合物として添加されている場合には、化合物全体の重量ではなく、カルシウム自体の量を基準とする。
【0024】
本発明のいくつかの態様において、飲食品組成物に含まれるカルシウムの含有量は、添加されたカルシウム化合物またはその塩もしくはキレート化合物由来のカルシウムの溶液中の量として定義される。本発明のいくつかの態様において、溶液中のカルシウムの含有量は、0.0001重量%超、かつ、0.2重量%未満であり、好ましくは0.0002~0.15重量%であり、より好ましくは0.002~0.1重量%であり、さらに好ましくは0.005~0.08重量%である。このような範囲とすることで、良好なテクスチャーを有するツバメの巣を含む飲食品組成物が得られる点で好ましい。あるいは、溶液中のカルシウムの含有量は、0.0001~0.15重量%、0.0001~0.1重量%、0.0001~0.08重量%、0.0001~0.06重量%、0.0001~0.04重量%、0.0001~0.02重量%、0.0001~0.01重量%、0.0002~0.15重量%、0.0004~0.15重量%、0.0006~0.15重量%、0.0008~0.15重量%、0.001~0.15重量%または0.002~0.15重量%であってもよい。カルシウムの含有量は、添加したカルシウム化合物またはその塩もしくはキレート化合物の量から算出することができる。
【0025】
カルシウムは、食品に添加可能な形態のカルシウム含有組成物、カルシウム化合物またはその塩もしくはキレート化合物由来のものであれば特に限定されないが、例えば、乳酸カルシウム(L-乳酸カルシウム五水和物など)、塩化カルシウムおよび乳清カルシウムなどを用いることができる。その中でも、安定化剤としての機能を有し、かつ、オフフレーバーをもたらさないことから、L-乳酸カルシウム五水和物が好ましい。乳酸カルシウムは後述の安定化剤として添加したものであってもよい。L-乳酸カルシウム五水和物は下記の構造を有する化合物である。
【化2】
【0026】
本発明のいくつかの態様における飲食品組成物は、0.0005重量%超、かつ、1.5重量%未満のL-乳酸カルシウム五水和物を含む。L-乳酸カルシウム五水和物の含有量は、好ましくは0.001~1重量%であり、より好ましくは0.005~0.9重量%であり、さらにより好ましくは0.01~0.8重量%である。L-乳酸カルシウム五水和物の含有量は飲食品組成物への添加量から求めることができる。L-乳酸カルシウム五水和物は、飲食品組成物中で解離していてもよい。
【0027】
本発明のいくつかの態様の飲食品組成物は、甘味料をさらに含む。甘味料は特に限定されないが、ロックシュガー(氷砂糖)、キシリトール、スクロース、グルコース、ステビア甘味料(レバウジオシドA、レバウジオシドDおよびレバウジオシドMなど)および果糖ぶどう糖液糖などから選択される1種以上を含むことができる。甘味料の含有量は特に限定されないが、飲食品組成物全体の甘味強度が5~15以内(例えば、8~12)であることが好ましい。本明細書において、「甘味強度」は物質の呈する甘味の強さを意味する。本明細書において甘味強度はスクロース当量(Sucrose Equivalent Value: SEV)で表し得る。飲食品組成物に含まれる甘味料の濃度(w/v%(飲料の場合はw/w%と同視し得る))に、その甘味料の甘味度を乗じて得られる数値が本発明の飲食品組成物の甘味強度となる。例えば、本明細書において、単位濃度Brix1当たりにスクロースの呈する甘味強度を1と定めた場合、スクロースの甘味度は1であり、ブドウ糖(グルコース)の甘味度は約0.6~約0.7(中心値約0.65)であり、甘味度にブドウ糖の濃度Brix値を乗じて得られる数値がブドウ糖溶液の甘味強度となる。したがって、ブドウ糖の濃度がBrix1.5の場合、ブドウ糖溶液の甘味強度は0.65×1.5=0.975となる。スクロースの甘味度1に対する他の甘味料の甘味度の相対比は、公知の砂糖甘味換算表等から求めることができる。例えば、スクロースの甘味度を1とすると、ロックシュガー(氷砂糖)は約1、キシリトールは約1、グルコースは約0.6~約0.7、フルクトースは約1.3~約1.7、マルトースは約0.4、フラクトオリゴ糖は約0.6、マルトオリゴ糖は約0.3、イソマルトオリゴ糖は約0.4~約0.5、ガラクトオリゴ糖は約0.7、乳糖は約0.2~0.3、プシコースは約0.7、アロースは約0.8、タガトースは約0.9、果糖ぶどう糖液糖は約0.75である。
【0028】
本発明に用いる溶媒は、飲用できるものであれば特に限定されないが、例えば水やアルコール(エタノール)またはその混合物が挙げられる。水は、特に限定されないが、例えば水道水、炭酸水、イオン交換水、精製水および純水から選択される水を使用してもよい。水の含有量も特に限定されないが、例えば、飲食品組成物の総重量に対して、80~98重量%、85~95重量%または87~93重量%程度であってもよい。
【0029】
本発明のいくつかの態様の飲食品組成物は、安定化剤をさらに含む。安定化剤は特に限定されないが、例えば、ゲランガム、乳酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、ペクチンおよびカラギーナンなどから選択される1種以上を含むことができる。
【0030】
本発明のいくつかの態様の飲食品組成物は、香料をさらに含む。香料を含むことで、様々なフレーバーの飲食品組成物を提供することができる。香料は特に限定されないが、例えば、バニリン、パンダン(Pandanus amaryllifolius)の葉、ココナッツ、ジャスミン、オレンジ、柚子および綿菓子のフレーバーなどから選択される1種以上を含むことができる。ツバメの巣特有のにおいを低減することができることから、パンダンの葉のフレーバーが好ましい。
【0031】
本発明のいくつかの態様の飲食品組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、他の任意の成分、例えば、アミノ酸、酸味料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤など、を含んでいてもよい。
【0032】
本発明の飲食品組成物に含まれる可溶性固形分量(Brix)は、特に限定されないが、例えば、5~10、7~18または9~12程度であってもよい。可溶性固形分量は糖度計(屈折計)を用いて測定することができる。
【0033】
本発明の飲食品組成物は食品であっても飲料であってもよいが、好ましくは飲料である。本発明のいくつかの態様における飲食品組成物は、レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料、清涼飲料、ゼリー状飲料、粉末飲料または機能性飲料である。飲料はゲル化していてもよい。
【0034】
pHは、特に限定されないが、例えば、6~10または7~9であってもよい。本発明の飲食品組成物のpHはpHメーターで測定することができる。
【0035】
本発明のいくつかの態様による飲食品組成物は、含有するツバメの巣が良好なテクスチャーを有する。本明細書において、「テクスチャー」とはツバメの巣の食感を意味し、主に硬さや軟らかさで評価される。食感は、口に入れた際に硬過ぎず、かつ軟らか過ぎない心地よい食感が望ましい。テクスチャーは基本的にヒトによる官能評価によって評価されるが、レオメータ―を用いて粘弾性に基づいて評価してもよい。本明細書において良好なテクスチャーとは、後述の実施例における評価結果が2.5点以上のものを意味し、点数が高いほど好ましい。
【0036】
本発明の飲食品組成物は、容器詰めされていてもよい。例えば、本発明の飲食品組成物は、加熱殺菌をされ、容器に詰められた状態の容器詰食品または容器詰飲料であってもよい。容器としては、特に限定されず、例えば、PETボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶などを挙げることができる。加熱殺菌を行う場合、その種類は特に限定されず、例えばUHT殺菌及びレトルト殺菌等の通常の手法を用いて行うことができる。加熱殺菌工程の温度は特に限定されないが、例えば65~130℃、好ましくは85~125℃で、10~40分である。ただし、上記の条件と同等の殺菌価が得られれば適当な温度で数秒、例えば5~30秒での殺菌でも問題はない。
【0037】
2.ツバメの巣を含有する飲食品組成物の製造方法
本発明は、一側面として、ツバメの巣を含有する飲食品組成物の製造方法(以下、「本発明の飲食品組成物の製造方法」ともいう)を提供する。
【0038】
本発明の一態様によれば、上記の本発明の飲食品組成物を製造する方法であって、溶媒(例えば、水)と、亜鉛化合物またはその塩もしくはキレート化合物(以下、「亜鉛化合物等」ともいう)と、カルシウム化合物またはその塩もしくはキレート化合物(以下、「カルシウム化合物等」ともいう)と、ツバメの巣とを混合することを含む製造方法が提供される。
【0039】
溶媒と、亜鉛化合物等と、カルシウム化合物等と、ツバメの巣の混合順序は特に限定されず、1)溶媒にツバメの巣を添加した後に、そこに亜鉛化合物等とカルシウム化合物等を添加して混合してもよく、2)溶媒に亜鉛化合物等とカルシウム化合物等を溶解させた後に、ツバメの巣を添加して混合してもよく、3)事前に亜鉛化合物等とカルシウム化合物等とを混合した上でツバメの巣と共に溶媒と混合してもよい。
【0040】
本発明の他の一態様によれば、
溶媒に亜鉛化合物またはその塩もしくはキレート化合物を添加して亜鉛含有溶液を調製すること、
溶媒にカルシウム化合物またはその塩もしくはキレート化合物を添加してカルシウム含有溶液を調製すること、および
前記亜鉛含有溶液と前記カルシウム含有溶液をツバメの巣と混合すること
を含む、製造方法が提供される。
【0041】
亜鉛含有溶液とカルシウム含有溶液は別々に調製してもよく、亜鉛含有溶液にカルシウム化合物またはその塩もしくはキレート化合物を添加するか、カルシウム含有溶液に亜鉛化合物またはその塩もしくはキレート化合物を添加することで同時に調製してもよい。
【0042】
亜鉛化合物またはその塩もしくはキレート化合物は「1.ツバメの巣を含有する飲食品組成物」の項に記載のものを用いることができる。その添加量も、ツバメの巣を含有する飲食品組成物について上記した範囲となるように添加することができる。
【0043】
カルシウム化合物またはその塩もしくはキレート化合物は「1.ツバメの巣を含有する飲食品組成物」の項に記載のものを用いることができる。その添加量も、ツバメの巣を含有する飲食品組成物について上記した範囲となるように添加することができる。
【0044】
本発明のさらに他の一態様によれば、
溶媒に甘味料を溶解して甘味料溶液を得ること、
前記甘味料溶液にカルシウム含有安定化剤と亜鉛化合物またはその塩もしくはキレート化合物を添加し混合溶液を得ること
前記混合溶液にツバメの巣を添加すること
を含む製造方法が提供される。
【0045】
甘味料としては、「1.ツバメの巣を含有する飲食品組成物」の項に記載のものを用いることができる。その添加量も、ツバメの巣を含有する飲食品組成物について上記した範囲となるように添加することができる。
【0046】
カルシウム含有安定化剤としては、乳酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、ペクチンおよびカラギーナンなどから選択される1種以上を用いることができる。
【0047】
本発明のいくつかの態様によれば、溶媒と、亜鉛化合物等と、カルシウム化合物等と、ツバメの巣とを混合した後に、殺菌工程やゲル化工程などを含んでいてもよい。殺菌工程は、例えば、65~130℃、好ましくは85~125℃で、10~40分である。ただし、上記の条件と同等の殺菌価が得られれば適当な温度で数秒、例えば5~30秒での殺菌でも問題はない。ゲル化工程は、製品がゲル化していればその工程の条件は特に限定されないが、例えば、定温(例えば20℃)で約3~5日静置することで行ってもよい。
【0048】
3.ツバメの巣のテクスチャー改善方法
本発明は、一側面として、ツバメの巣のテクスチャー改善方法(以下、「本発明のテクスチャー改善方法」ともいう)を提供する。
【0049】
本発明の一態様によれば、ツバメの巣のテクスチャー改善方法であって、
0.0001重量%超、かつ、0.2重量%未満の量の亜鉛と、
0.00007重量%超、かつ、0.2重量%未満の量のカルシウムを含む溶液にツバメの巣を添加することを含む、方法が提供される。
【0050】
上記の亜鉛とカルシウムを含む溶液は、「1.ツバメの巣を含有する飲食品組成物」の項に記載の溶媒と、亜鉛化合物等と、カルシウム化合物等とを用いることで調製することができる。亜鉛含有量は、好ましくは0.0002~0.15重量%であり、より好ましくは0.002~0.1重量%であり、さらに好ましくは0.005~0.08重量%である。カルシウム含有量は、好ましくは0.0001~0.19重量%であり、より好ましくは0.0005~0.15重量%であり、さらに好ましくは0.001~0.1重量%である。
【0051】
本発明の他の一態様によれば、ツバメの巣のテクスチャー改善方法であって、
0.002重量%超、かつ、0.015重量%未満の亜鉛を含む溶液にツバメの巣を添加することを含む、方法が提供される。亜鉛を含む溶液は、「1.ツバメの巣を含有する飲食品組成物」の項に記載の溶媒と、亜鉛化合物等とを用いることで調製することができる。亜鉛含有量は、好ましくは0.00025~0.012重量%であり、より好ましくは0.003~0.01重量%であり、さらに好ましくは0.003~0.008重量%である。この範囲であれば、カルシウムを用いずに亜鉛のみでツバメの巣のテクスチャーを改善し得る点で好ましい。
【0052】
本発明のいくつかの態様において、溶液に添加するツバメの巣の量は、特に限定されないが、例えば、溶液とツバメの巣の合計重量に対して、好ましくは0.02~8重量%、より好ましくは0.05~5重量%、さらにより好ましくは0.1~3重量%である。このような範囲とすることで、触感をしっかり楽しめるため好ましい。
【0053】
本発明のいくつかの態様において、溶液にツバメの巣を添加した後に、加熱処理(温水混合処理を含む)や殺菌処理を加えてもよい。加熱処理を行うことで、乾燥ツバメの巣の吸水を促進し得る。
【0054】
[本発明の例示的な態様]
以下に本発明の例示的な態様を示すが、本発明は下記の態様に制限されるものではない。
本発明の一態様によれば、
ツバメの巣と溶液を含有する飲食品組成物であって、前記溶液が、
0.002~0.1重量%の量の亜鉛と、
0.001~0.1重量%の量のカルシウムを含む、飲食品組成物が提供される。
【0055】
本発明の一態様によれば、
ツバメの巣と溶液を含有する飲食品組成物であって、
前記飲食品組成物の総重量に対して0.01~10重量%、好ましくは0.02~8重量%、より好ましくは0.05~5重量%、さらにより好ましくは0.1~3重量%のアナツバメの巣を含み、
前記溶液が、
0.002~0.1重量%の量の亜鉛と、
0.001~0.1重量%の量のカルシウムを含む、飲食品組成物が提供される。
【0056】
本発明の一態様によれば、
ツバメの巣のテクスチャー改善方法であって、
0.002~0.1重量%の量の亜鉛と、
0.001~0.1重量%の量のカルシウムを含む溶液にアナツバメの巣を添加することを含む、方法が提供される。
【0057】
本明細書において、「約」との文言は、主体が「約」に続く数値の±25%、±10%、±5%、±3%、±2%または±1%の範囲に存在することを意味する。例えば「約10」は、7.5~12.5の範囲を意味する。また、本明細書において、「重量%」は「質量%」と同視し得る。
【実施例0058】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0059】
[実施例1]ツバメの巣、亜鉛およびカルシウムを含む種々の飲食品組成物の調製
飲食品組成物サンプルA1~A28、B1~B28およびC1~C28を、以下の表1~3に示す組成にしたがってツバメの巣(BN)(Jing Tai Hong社製のツバメの巣(cave nest) ならびにJing Tai Hong社およびGolden Star社製のツバメの巣(house nest)、「食用ツバメの巣(edible bird’s nest)」を使用)、亜鉛ビスグリシネートキレート(Balchem社製、「Zinc Bisglycinate Chelate」)、L-乳酸カルシウム五水和物(Corbion社製、「PURACAL(登録商標) PP/FCC」)および水を用いて調製した。サンプルA1、B1およびC1はそれぞれ12個作成し、その他のサンプルについてはそれぞれ6個作成した。サンプルA1~A28はツバメの巣を0.2wt%含み、サンプルB1~B28はツバメの巣を1.1wt%含み、サンプルC1~C28はツバメの巣を2wt%それぞれ含む。サンプルA系、B系およびC系は、ツバメの巣の含有量が異なる以外は同様の組成である。各サンプルにおける亜鉛の量は亜鉛ビスグリシネートキレートに含まれる含有量から算出した。また、各サンプルに含まれるカルシウムの量はL-乳酸カルシウム五水和物に含まれるカルシウムの量から算出した。サンプル調製に際して、70mlのガラス容器に水を入れ、そこに所定量のツバメの巣、亜鉛ビスグリシネートキレートおよびL-乳酸カルシウム五水和物を添加した。得られた溶液を121℃で15分間殺菌した後、サンプルの入った容器を20℃で1~3日静置してサンプルとした。A1のサンプルに含まれる亜鉛とカルシウムの量をマイクロ波によって分解した後にICP-OESで分析したところ、A1のサンプルの飲食品組成物(ツバメの巣および溶液の合計)に含まれる亜鉛の量は50.43mg/kgであり、カルシウムの量は0.012g/100gであった。この値と添加した亜鉛ビスグリシネートキレートとL-乳酸カルシウム五水和物由来の亜鉛およびカルシウムの量に基づき、今回の実施例に用いたツバメの巣に含まれる亜鉛の含有量を0.10重量%、カルシウムの含有量を3.51重量%とそれぞれ算出した。この値から算出すると、サンプルA1は、飲食品組成物の総重量に対して0.0050重量%の亜鉛と0.0122重量%のカルシウムを含む。同様に、サンプルB1は、飲食品組成物の総重量に対して0.0060重量%の亜鉛と0.0447重量%のカルシウムを含み、サンプルC1は、飲食品組成物の総重量に対して0.0068重量%の亜鉛と0.0753重量%のカルシウムを含む。

【表1】
【表2】
【表3】
【0060】
[実施例2]官能評価
実施例1で得られたサンプルA1~A28、B1~B28およびC1~C28の官能評価を次の手順で行った。各サンプルを専門パネリスト3名が以下の基準に基づいて評価した。試験を行う前に、パネリスト同士で十分に上記評価基準についてすり合せを行った。結果を表4~6にまとめる。表4~6に示す結果は3名の専門パネリストによる評点の平均点である。Zn量の多いサンプルでは、硬いテクスチャーが得られ、歯ごたえがよい一方で、Zn量の少ないサンプルでは軟らかいテクスチャーが得られた。また、Ca量の多いサンプルでは、硬く弾力のあるテクスチャーが得られた一方で、Ca量の少ないサンプルでは軟らかいテクスチャーが得られた。したがって、官能評価基準においては、軟らか過ぎるものと硬すぎるものの評点を1か2とした。

[官能評価基準]
5点: [非常に良い]テクスチャーが最適である
4点: [良い]若干軟らかいか、若干硬いテクスチャーである
3点: [許容可能]軟らかいか、硬いかであるが許容可能な範囲である
2点: [良くない]軟らか過ぎるか、硬過ぎるかで許容できない
1点: [悪い]非常に軟らかいか、非常に硬いかで許容できない
【0061】

【表4】
【表5】
【表6】
【0062】
[実施例3]異なる亜鉛化合物を用いた飲む食品組成物の調製
亜鉛化合物として、亜鉛ビスグリシネートキレートの代わりにグルコン酸亜鉛を用いた以外は実施例1と同様の方法で、飲食品組成物サンプルA1’、A4’、A5’、B1’、B4’、B5’、C1’、C4’およびC5’を、以下の表7に示す組成にしたがって作成した。サンプルの調製には、ツバメの巣(BN)(Jing Tai Hong社製のツバメの巣(cave nest)、Jing Tai Hong社およびGolden Star社製のツバメの巣(house nest)、「食用ツバメの巣(edible bird’s nest)」)、グルコン酸亜鉛(Corbion社製、「Zinc Bisglycinate Chelate」)、L-乳酸カルシウム五水和物(Corbion社製、「GLUCONAL(登録商標) Zn-P」)および水を用いて調製した。サンプルA’系はツバメの巣を0.2wt%含み、サンプルB’系はツバメの巣を1.1wt%含み、サンプルC’系はツバメの巣を2wt%それぞれ含む。サンプルA’系、B’系およびC’系は、ツバメの巣の含有量が異なる以外は同様の組成である。各サンプルにおける亜鉛の量はグルコン酸亜鉛に含まれる含有量から算出した。サンプル調製に際して、70mlのガラス容器に水を入れ、そこに所定量のツバメの巣、グルコン酸亜鉛およびL-乳酸カルシウム五水和物を添加した。得られた溶液を121℃で15分間殺菌した後、サンプルの入った容器を20℃で1~3日静置してサンプルとした。
【0063】
【表7】
【0064】
[実施例4]官能評価
実施例3で得られたサンプルA1’、A4’、A5’、B1’、B4’、B5’、C1’、C4’およびC5’の官能評価を実施例2と同じ手順で行った。結果を表8にまとめる。表8に示す結果は3名の専門パネリストによる評点の平均点である。
【表8】