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特開2024-112490ツール固定用ねじ、および、摩擦撹拌接合用工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112490
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ツール固定用ねじ、および、摩擦撹拌接合用工具
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20240814BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B23K20/12 344
F16B35/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017537
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】523194617
【氏名又は名称】NTKカッティングツールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】宮田 英次
(72)【発明者】
【氏名】原 康
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167BG04
(57)【要約】
【課題】 摩擦撹拌接合用ツールをツールホルダに対して固定するツール固定用ねじにおいて、摩擦撹拌接合の作業性を向上する技術を提供する。
【解決手段】 摩擦撹拌接合用ツールを保持するツールホルダのねじ穴に嵌められ、ツールホルダが有する孔に挿入される摩擦撹拌接合用ツールをツールホルダに対して固定するツール固定用ねじは、側面に雄ねじが形成されている軸部を備え、軸部の中心軸を含む断面において、軸部の先端面と側面とを接続する先端角面の外形線は、曲線をなしている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦撹拌接合用ツールを保持するツールホルダのねじ穴に嵌められ、前記ツールホルダが有する孔に挿入される前記摩擦撹拌接合用ツールを前記ツールホルダに対して固定するツール固定用ねじであって、
側面に雄ねじが形成されている軸部を備え、
前記軸部の中心軸を含む断面において、前記軸部の先端面と前記側面とを接続する先端角面の外形線は、曲線をなしている、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
【請求項2】
請求項1に記載のツール固定用ねじであって、
前記断面において、
前記先端面の外形線は、直線をなし、
前記先端角面の外形線は、長さ0.1mmごとの接線の傾きの変化量が0度より大きく10度以下となるように、前記先端面の外形線とつながっている、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のツール固定用ねじであって、
前記断面において、前記先端角面の外形線は、前記先端面から前記側面に向かうにしたがって、曲率が変化する、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のツール固定用ねじであって、
前記断面において、前記先端角面の外形線は、円弧、楕円弧、放物線、または、双曲線のいずれかの一部の形状と同じ形状を有している、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のツール固定用ねじであって、
前記ツール固定用ねじは、20℃から500℃までの温度範囲における平均熱膨張係数が10ppm/K以上の材料から形成されている、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のツール固定用ねじであって、
前記断面において外形線が曲線をなす前記先端角面は、前記先端面の全周にわたって形成されている、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
【請求項7】
摩擦撹拌接合用工具であって、
請求項1または請求項2に記載のツール固定用ねじと、
複数の被加工部材を当接させた部分を撹拌し、複数の前記被加工部材どうしを接合させる前記摩擦撹拌接合用ツールと、
前記摩擦撹拌接合用ツールが挿入されている前記孔と、前記固定用ねじと嵌め合わされている前記ねじ穴と、を有する前記ツールホルダと、を備える、
ことを特徴とする摩擦撹拌接合用工具。
【請求項8】
請求項7に記載の摩擦撹拌接合用工具であって、
前記ツールホルダの平均熱膨張係数と前記摩擦撹拌接合用ツールの平均熱膨張係数との差は、20℃から500℃までの温度範囲において、5ppm/K以上である、
ことを特徴とする摩擦撹拌接合用工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツール固定用ねじ、および、摩擦撹拌接合用工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、部材同士の当接部分を摩擦熱によって軟化させつつ撹拌することで部材を接合する摩擦撹拌接合用工具が知られている(例えば、特許文献1,2)。一般的に、摩擦撹拌接合用工具は、部材同士の当接部分に押し付けられる摩擦撹拌接合用ツールと、摩擦撹拌接合用ツールを保持するツールホルダと、ツールホルダ内に挿入される摩擦撹拌接合用ツールに接触し、ツールホルダに対して摩擦撹拌接合用ツールを固定するツール固定用ねじと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-268667号公報
【特許文献2】特開2013-103251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、摩擦撹拌接合用工具を用いて部材を接合するとき、摩擦撹拌接合用工具は高温になりやすいため、摩擦撹拌接合用ツールとツールホルダとには、熱膨張差によって隙間が生じる。摩擦撹拌接合用ツールとツールホルダとの間に隙間が生じると、摩擦撹拌接合用ツールがツールホルダの内部で回転し、ツール固定用ねじにおける摩擦撹拌接合用ツールと接する位置が、先端面から、先端面と側面との間の角部にずれる場合がある。ツール固定用ねじと摩擦撹拌接合用ツールとが接する位置がずれたまま、常温に戻ると、摩擦撹拌接合用ツールとツールホルダとの熱膨張差に起因する応力がツール固定用ねじの角部に集中するため、摩擦撹拌接合用ツールにツール固定用ねじが食い込み、ツール固定用ねじを取り外しづらくなるおそれがある。このため、摩擦撹拌接合用ツールの交換に手間がかかり、摩擦撹拌接合の作業性が低下する。
【0005】
本発明は、摩擦撹拌接合用ツールをツールホルダに対して固定するツール固定用ねじにおいて、摩擦撹拌接合の作業性を向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、摩擦撹拌接合用ツールを保持するツールホルダのねじ穴に嵌められ、前記ツールホルダが有する孔に挿入される前記摩擦撹拌接合用ツールを前記ツールホルダに対して固定するツール固定用ねじが提供される。この固定用ねじは、側面に雄ねじが形成されている軸部を備え、前記軸部の中心軸を含む断面において、前記軸部の先端面と前記側面とを接続する先端角面の外形線は、曲線をなしている。
【0008】
この構成によれば、摩擦撹拌接合用ツールをツールホルダに対して固定するツール固定用ねじは、軸部の中心軸を含む断面において、軸部の先端面と側面とを接続する先端角面の外形線が曲線をなしている。これにより、摩擦撹拌接合用ツールとツールホルダとの熱膨張差によって摩擦撹拌接合用ツールがツールホルダに対して回転し、摩擦撹拌接合用ツールがツール固定用ねじの先端角面に接触しても、摩擦撹拌接合用ツールに固定用ねじが食い込みにくくなる。したがって、ツール固定用ねじによる摩擦撹拌接合用ツールの固定を容易に解除することができるため、摩擦撹拌接合用ツールの交換が容易になり、摩擦撹拌接合の作業性を向上することができる。
【0009】
(2)上記形態のツール固定用ねじにおいて、前記断面において、前記先端面の外形線は、直線をなし、前記先端角面の外形線は、長さ0.1mmごとの接線の傾きの変化量が0度より大きく10度以下となるように、前記先端面の外形線とつながっていてもよい。この構成によれば、先端面と先端角面とは比較的滑らかに接続されるため、摩擦撹拌接合用ツールに固定用ねじがさらに食い込みにくくなる。したがって、ツール固定用ねじによる摩擦撹拌接合用ツールの固定を容易に解除することができるため、作業性を向上することができる。
【0010】
(3)上記形態のツール固定用ねじにおいて、前記断面において、前記先端角面の外形線は、前記先端面から前記側面に向かうにしたがって、曲率が変化してもよい。この構成によれば、例えば、先端角面のうち、摩擦撹拌接合用ツールと接触しやすい部分の曲率を小さくすることで、ツール固定用ねじを摩擦撹拌接合用ツールにさらに食い込みにくくすることができる。したがって、ツール固定用ねじによる摩擦撹拌接合用ツールの固定を容易に解除することができるため、作業性を向上することができる。
【0011】
(4)上記形態のツール固定用ねじにおいて、前記断面において、前記先端角面の外形線は、円弧、楕円弧、放物線、または、双曲線のいずれかの一部の形状と同じ形状を有していてもよい。この構成によれば、円弧、楕円弧、双曲線、および、放物線のそれぞれは、滑らかな曲線を有しており、断面における先端角面の外形線の形状をこれらの形状と同じ形状にすることで、ツール固定用ねじを摩擦撹拌接合用ツールにさらに食い込みにくくすることができる。したがって、ツール固定用ねじによる摩擦撹拌接合用ツールの固定を容易に解除することができるため、作業性を向上することができる。
【0012】
(5)上記形態のツール固定用ねじにおいて、前記ツール固定用ねじは、20℃から500℃までの温度範囲における平均熱膨張係数が10ppm/K以上の材料から形成されていてもよい。この構成によれば、摩擦撹拌接合での使用において、摩擦撹拌接合用ツールとツールホルダとの熱膨張差によって摩擦撹拌接合用ツールとツールホルダとの間に隙間が生じても、ツール固定用ねじもツールホルダの内側に向かって膨張し、摩擦撹拌接合用ツールとツール固定用ねじとの間に隙間が生じにくくなる。これにより、摩擦撹拌接合用ツールとツール固定用ねじとの接触位置がずれにくくなるため、固定用ねじが摩擦撹拌接合用ツールに食い込みにくくなる。したがって、ツール固定用ねじによる摩擦撹拌接合用ツールの固定を容易に解除することができるため、摩擦撹拌接合用ツールの交換が容易になり、作業性を向上することができる。
【0013】
(6)上記形態のツール固定用ねじにおいて、前記断面において外形線が曲線をなす前記先端角面は、前記先端面の全周にわたって形成されていてもよい。この構成によれば、ツール固定用ねじは、ツール固定用ねじのねじ込みの深さに影響されることなく、先端角面のいずれもが摩擦撹拌接合用ツールに接触しても、摩擦撹拌接合用ツールに食い込みにくくなる。したがって、ツール固定用ねじによる摩擦撹拌接合用ツールの固定を容易に解除することができるため、作業性を向上することができる。
【0014】
(7)本発明の別の形態によれば、摩擦撹拌接合用工具が提供される。この摩擦撹拌接合用工具は、上記形態のツール固定用ねじと、複数の被加工部材を当接させた部分を撹拌し、複数の前記被加工部材どうしを接合させる前記摩擦撹拌接合用ツールと、前記摩擦撹拌接合用ツールが挿入されている前記孔と、前記固定用ねじと嵌め合わされている前記ねじ穴と、を有する前記ツールホルダと、を備える。この構成によれば、ツールホルダにおいて、摩擦撹拌接合用ツールの移動を規制するツール固定用ねじは、熱膨張差により発生する隙間によって摩擦撹拌接合用ツールとツール固定用ねじの先端角面とが接触しても、摩擦撹拌接合用ツールに食い込みにくい。これにより、ツール固定用ねじによる摩擦撹拌接合用ツールの固定を容易に解除することができるため、作業性を向上することができる。
【0015】
(8)上記形態の摩擦撹拌接合用工具において、前記ツールホルダの平均熱膨張係数と前記摩擦撹拌接合用ツールの平均熱膨張係数との差は、20℃から500℃までの温度範囲において、5ppm/K以上であってもよい。この構成によれば、20℃から500℃までの温度範囲において、ツールホルダの平均熱膨張係数と摩擦撹拌接合用ツールの平均熱膨張係数との差は比較的大きいため、熱膨張差により発生する隙間も大きくなるが、上述の構成によれば、摩擦撹拌接合用ツールとツール固定用ねじの先端角面とが接触しても、摩擦撹拌接合用ツールに固定用ねじが食い込みにくい。したがって、ツール固定用ねじによる摩擦撹拌接合用ツールの固定を容易に解除することができるため、作業性を向上することができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、固定用ねじを備えるツールホルダ、固定用ねじを備える装置やシステム、これら装置およびシステムの制御方法、これら装置およびシステムを用いて摩擦撹拌接合を行う装置やシステム等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の摩擦撹拌接合用工具の概略模式図である。
図2】第1実施形態のツール固定用ねじの概略模式図である。
図3】第1実施形態のツール固定用ねじの断面図である。
図4】第1実施形態のツール固定用ねじの平面図である。
図5】第1実施形態の摩擦撹拌接合用工具の使用例を説明する図である。
図6】第1実施形態のツール固定用ねじの効果を説明する第1の図である。
図7】第1実施形態のツール固定用ねじの効果を説明する第2の図である。
図8】比較例のツール固定用ねじの概略模式図である。
図9】第2実施形態のツール固定用ねじの断面図である。
図10】第3実施形態のツール固定用ねじの断面図である。
図11】第4実施形態のツール固定用ねじの断面図である。
図12】第5実施形態のツール固定用ねじの断面図である。
図13】第6実施形態のツール固定用ねじの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の摩擦撹拌接合用工具の概略模式図である。本実施形態の摩擦撹拌接合用工具1は、ツールホルダ10と、ツール固定用ねじ20と、摩擦撹拌接合用ツール30と、を備える。摩擦撹拌接合用工具1は、複数の被加工部材の当接部分を摩擦熱によって軟化させるとともに、撹拌することで、被加工部材同士を接合する。
【0019】
ツールホルダ10は、内側に、摩擦撹拌接合用ツール30が挿入される孔11が形成された筒形状の外形を有している。ツールホルダ10は、円板形状の底部12と、底部12に接続する円筒部13と、を有する。本実施形態では、ツールホルダ10は、金属から形成されている。円筒部13には、ツールホルダ10の外周部と孔11とを連通するねじ穴13aが形成されている。ツールホルダ10は、摩擦撹拌接合用ツール30を保持する。
【0020】
ツール固定用ねじ20は、六角穴付き止めねじであって、いわゆる、ホーロセット、または、イモネジと言われるものである。ツール固定用ねじ20は、ツールホルダ10のねじ穴13aに嵌められ、ツールホルダ10が有する孔11に挿入されている摩擦撹拌接合用ツール30をツールホルダ10に対して固定する。
【0021】
図2は、本実施形態のツール固定用ねじ20の概略模式図である。ツール固定用ねじ20は、略円柱形状の部材であって、20℃から500℃までの温度範囲における平均熱膨張係数が10ppm/K以上の材料、例えば、ハステロイ、または、鉄から形成されている。ツール固定用ねじ20は、側面20aに雄ねじ21が形成されている軸部22を備える。軸部22は、略円柱状に形成されており、軸部22の後端部23には、六角穴23aが形成されている。六角穴23aには、ツール固定用ねじ20を回転させるための道具、例えば、六角レンチの先端を挿入可能である。軸部22の先端部24には、平面状の先端面20bが形成されている。先端面20bと側面20aとは、曲面を有する先端角面20cによって接続されている。ツール固定用ねじ20がツールホルダ10のねじ穴13aに嵌められるとき、軸部22の先端部24側をねじ穴13aに挿入し、六角穴23aに嵌めた六角レンチによってツール固定用ねじ20を回転させる。これにより、ねじ穴13aのねじ溝(図示せず)に沿ってツール固定用ねじ20がツールホルダ10の内側に向かって移動する。
【0022】
図3は、本実施形態のツール固定用ねじ20の断面図である。図3は、軸部22の中心軸C22を含む断面図を示している。図3に示すツール固定用ねじ20の断面図では、側面20aの外形線L20aと先端面20bの外形線L20bとのそれぞれは、直線をなしている。ツール固定用ねじ20では、図3に示すように、軸部22の中心軸C22を含む断面において、軸部22の先端面20bと側面20aとを接続する先端角面20cの外形線L20cは、曲線をなしている。具体的には、図3に示すように、ツール固定用ねじ20の内側から外側に向かって膨らむ形状を有する曲線であって、本実施形態では、先端角面20cの外形線L20cは、中心角が90度の円弧の形状をなしている(図3に示す仮想円V1参照)。これにより、先端角面20cの外形線L20cは、中心軸C22に垂直な先端面20bの外形線L20bと、中心軸C22に平行な側面20aの外形線L20aとのそれぞれと滑らかに接続している。特に、先端角面20cの外形線L20cは、長さ0.1mmごとの接線の傾きの変化量が0度より大きく10度以下となるように、先端面20bの外形線L20aとつながっている。
【0023】
図4は、ツール固定用ねじ20の平面図である。図4には、中心軸C22の方向に沿って、ツール固定用ねじ20を先端部24側から見たときの模式図を示している。図4には、便宜的に、先端面20bと先端角面20cとの境界を示す二点鎖線B1を示している。図4に示すように、ツール固定用ねじ20では、先端角面20cは、先端面20bの全周にわたって形成されている。
【0024】
摩擦撹拌接合用ツール30は、略円柱形状を有しており、例えば、窒化珪素セラミックス、または、サイアロンから形成されている。これにより、ツールホルダ10の平均熱膨張係数と摩擦撹拌接合用ツール30の平均熱膨張係数との差は、20℃から500℃までの温度範囲において、5ppm/K以上となる。
【0025】
摩擦撹拌接合用ツール30は、突起部31と、軸部32とを備える。突起部31は、図1に示すように、軸部32に接続する側から離れるにしたがって、外径が小さくなるように形成されている。軸部32は、略円柱形状を有しており、ツールホルダ10の孔11に挿入可能な大きさを有している。軸部32の側面32aには、ツール固定用ねじ20の先端面20bと接触する平面状の当接面32bが形成されている。
【0026】
図5は、本実施形態の摩擦撹拌接合用工具1の使用例を説明する図である。図5は、融点が1000℃以上の金属からなる複数の被加工部材M1を摩擦撹拌接合によって接合している状態を示している。摩擦撹拌接合用工具1を用いて、複数の被加工部材M1を接合するとき、ツールホルダ10に支持された摩擦撹拌接合用ツール30の突起部31を、複数の被加工部材M1を当接させた部分pM1に押し当て、摩擦撹拌接合用工具1を回転させる。これにより、突起部31が押し当てられた部分pM1は、摩擦熱によって軟化し、撹拌される。回転する摩擦撹拌接合用工具1を複数の被加工部材M1を当接させた部分pM1に沿って移動させることで、軟化し撹拌された部分が冷えて固まり、複数の被加工部材M1どうしが接合する。
【0027】
図6は、本実施形態のツール固定用ねじ20の効果を説明する第1の図である。次に、本実施形態のツール固定用ねじ20の効果について説明する。摩擦撹拌接合用工具1を使用する際、摩擦撹拌接合用ツール30の軸部32をツールホルダ10の孔11に挿入し、ねじ穴13aに嵌められるツール固定用ねじ20を用いて、摩擦撹拌接合用ツール30をツールホルダ10に対して固定する。具体的には、図6に示すように、ツール固定用ねじ20の先端面20bが摩擦撹拌接合用ツール30の当接面32bに接触するように、ツール固定用ねじ20をねじ穴13aに嵌めることで、摩擦撹拌接合用ツール30は、ツールホルダ10に対して固定される。
【0028】
摩擦撹拌接合用工具1によって被加工部材を接合するために、摩擦撹拌接合用ツール30を被加工部材に押し当てて回転させると、摩擦撹拌接合用工具1の温度は上昇する。このため、ツールホルダ10および摩擦撹拌接合用ツール30のいずれも熱膨張する。本実施形態では、ツールホルダ10は、熱膨張係数が比較的大きい金属からなり、摩擦撹拌接合用ツール30は、熱膨張係数が比較的小さい窒化珪素系セラミックス、または、サイアロンから形成されている。このため、摩擦撹拌接合用ツール30を被加工部材に押し当てて回転させているとき、ツールホルダ10と摩擦撹拌接合用ツール30との間に隙間が形成される。ツールホルダ10と摩擦撹拌接合用ツール30との間に隙間が形成されると、摩擦撹拌接合用ツール30がツールホルダ10の内部で回転する。
【0029】
図7は、本実施形態のツール固定用ねじ20の効果を説明する第2の図である。図7に示す摩擦撹拌接合用工具1の断面は、孔11に摩擦撹拌接合用ツール30が挿入された状態であって、被加工部材を接合しているときの状態を示している。摩擦撹拌接合用ツール30がツールホルダ10の内部で回転すると、摩擦撹拌接合用ツール30とツール固定用ねじ20とが接触する位置がずれて、図7に示すように、摩擦撹拌接合用ツール30の当接面32bと、ツール固定用ねじ20の先端角面20cとが接触する場合がある。本実施形態のツール固定用ねじ20では、先端角面20cは、軸部22の中心軸C22を含む断面における外形線が曲線をなしている(図3参照)。これにより、摩擦撹拌接合用ツール30にツール固定用ねじ20の先端部24が食い込みにくくなる。したがって、使用後にツールホルダ10から摩擦撹拌接合用ツール30を取り外すとき、ツール固定用ねじ20による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができる。したがって、摩擦撹拌接合用ツールの交換が容易になり、摩擦撹拌接合の作業性を向上することができる。
【0030】
図8は、比較例のツール固定用ねじ90の概略模式図である。図8に示すツール固定用ねじ90が備える軸部92では、先端部94が平面によって形成されている。具体的には、軸部92の側面90aと先端面90bとを接続する先端角面90cが平面状に形成されている。このため、比較例のツール固定用ねじ90は、先端面90bから先端角面90cにかけて、角張った形状を有している。ツール固定用ねじ90を備える摩擦撹拌接合工具を用いて摩擦撹拌接合を行う場合、ツールホルダ10の熱膨張と摩擦撹拌接合用ツール30の熱膨張との差によって、摩擦撹拌接合用ツール30がツールホルダ10の内側で回転すると、ツール固定用ねじ90の先端面90bと先端角面90cとの接続箇所P90が摩擦撹拌接合用ツール30に食い込むおそれがある。摩擦撹拌接合用ツール30とツール固定用ねじ90とが食い込むと、使用後にツールホルダ10から摩擦撹拌接合用ツール30を取り外すとき、ツール固定用ねじ90による摩擦撹拌接合用ツール30の固定が容易に解除できない。このため、摩擦撹拌接合用ツール30の交換に手間がかかり、摩擦撹拌接合の作業性が低下する。
【0031】
以上説明した、本実施形態のツール固定用ねじ20によれば、図3に示すように、軸部22の中心軸C22を含む断面において、軸部22の先端面20bと側面20aとを接続する先端角面20cの外形線L20cは、曲線をなしている。これにより、摩擦撹拌接合用ツール30とツールホルダ10との熱膨張差によって摩擦撹拌接合用ツール30がツールホルダ10に対して回転し、摩擦撹拌接合用ツール30とツール固定用ねじ20の先端角面20cとが接触しても、摩擦撹拌接合用ツール30にツール固定用ねじ20が食い込みにくい。したがって、ツール固定用ねじ20による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができるため、摩擦撹拌接合用ツール30の交換が容易になり、摩擦撹拌接合の作業性を向上することができる。
【0032】
また、本実施形態のツール固定用ねじ20によれば、軸部22の中心軸C22を含む断面において、先端角面20cの外形線L20cは、長さ0.1mmごとの接線の傾きの変化量が0度より大きく10度以下となるように、先端面20bの外形線L20bとつながっている。これにより、先端面20bと先端角面20cとは滑らかに接続されるため、摩擦撹拌接合用ツール30にツール固定用ねじ20がさらに食い込みにくくなる。したがって、ツール固定用ねじ20による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができるため、作業性をさらに向上することができる。
【0033】
また、本実施形態のツール固定用ねじ20によれば、軸部22の中心軸C22を含む断面において、先端角面20cの外形線L20cは、円弧をなしている。円弧は、滑らかな曲線であり、これらを先端角面20cの外形線L20cとすることによって、ツール固定用ねじ20を摩擦撹拌接合用ツール30にさらに食い込みにくくすることができる。したがって、ツール固定用ねじ20による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができるため、作業性を向上することができる。
【0034】
また、本実施形態のツール固定用ねじ20によれば、ツール固定用ねじ20は、20℃から500℃までの温度範囲における平均熱膨張係数が10ppm/K以上の材料から形成されている。これにより、摩擦撹拌接合での使用において、摩擦撹拌接合用ツール30とツールホルダ10との熱膨張差によって摩擦撹拌接合用ツール30とツールホルダ10との間に隙間が生じても、ツール固定用ねじ20もツールホルダ10の内側に膨張し、摩擦撹拌接合用ツール30とツール固定用ねじ20との間に隙間が生じにくくなる。これにより、摩擦撹拌接合用ツール30とツール固定用ねじ20との接触位置がずれにくくなるため、ツール固定用ねじ20による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができる。したがって、摩擦撹拌接合用ツール30の交換が容易になり、作業性を向上することができる。
【0035】
また、本実施形態のツール固定用ねじ20によれば、軸部22の中心軸C22を含む断面において、外形線L20cが曲線をなす先端角面20cは、先端面20bの全周にわたって形成されている。これにより、ツール固定用ねじ20のねじ込みの深さに影響されることなく、先端角面20cのいずれもが摩擦撹拌接合用ツール30に接触しても、摩擦撹拌接合用ツール30にツール固定用ねじ20が食い込みにくくなる。したがって、ツール固定用ねじ20による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができるため、作業性を向上することができる。
【0036】
また、本実施形態の摩擦撹拌接合用工具1によれば、ツールホルダ10において、摩擦撹拌接合用ツール30の移動を規制するツール固定用ねじ20は、熱膨張差により発生する隙間によって摩擦撹拌接合用ツール30とツール固定用ねじ20の先端角面20cとが接触しても、摩擦撹拌接合用ツール30に食い込みにくい。これにより、ツール固定用ねじ20による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができるため、作業性を向上することができる。
【0037】
また、本実施形態の摩擦撹拌接合用工具1によれば、20℃から500℃までの温度範囲において、ツールホルダ10の平均熱膨張係数と摩擦撹拌接合用ツール30の平均熱膨張係数との差は比較的大きいため、熱膨張差により発生する隙間も大きくなる。しかしながら、摩擦撹拌接合用工具1では、摩擦撹拌接合用ツール30とツール固定用ねじ20の先端角面20cとが接触しても、摩擦撹拌接合用ツール30にツール固定用ねじ20が食い込みにくい。したがって、ツール固定用ねじ20による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができるため、作業性を向上することができる。
【0038】
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態のツール固定用ねじ40の断面図である。第2実施形態の摩擦撹拌接合用工具が備えるツール固定用ねじ40は、第1実施形態のツール固定用ねじ20(図2)と比較すると、先端角面の形状が異なる。
【0039】
第2実施形態の摩擦撹拌接合用工具は、ツールホルダ10と、ツール固定用ねじ40と、摩擦撹拌接合用ツール30と、を備える。ツール固定用ねじ40は、ツールホルダ10のねじ穴13aに嵌められ、ツールホルダ10が有する孔11に挿入される摩擦撹拌接合用ツール30をツールホルダ10に対して固定する。
【0040】
ツール固定用ねじ40は、図9に示すツール固定用ねじ40の軸部42の中心軸C42を含む断面において、軸部42の先端面40bと側面40aとを接続する先端角面40cの外形線L40cは、曲線部分L40c1と、直線部分L40c2とを有している。本実施形態では、先端角面40cの外形線L40cのうち、曲線部分L40c1が先端面40bの外形線L40bと接続しており、直線部分L40c2が側面40aの外形線L40aに接続している。先端角面40cの外形線L40cの曲線部分L40c1と先端面40bの外形線L40bとは、滑らかに接続されている。
【0041】
以上説明した、本実施形態のツール固定用ねじ40によれば、軸部42の中心軸C42を含む断面において、先端角面40cの外形線L40cは、曲線を有している。これにより、摩擦撹拌接合用ツール30とツール固定用ねじ40の先端角面40cとが接触しても、摩擦撹拌接合用ツール30にツール固定用ねじ40が食い込みにくい。したがって、ツール固定用ねじ40による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができるため、摩擦撹拌接合用ツール30の交換が容易になり、摩擦撹拌接合の作業性を向上することができる。
【0042】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態のツール固定用ねじ50の断面図である。第3実施形態の摩擦撹拌接合用工具が備えるツール固定用ねじ50は、第1実施形態のツール固定用ねじ20(図2)と比較すると、先端角面の形状が異なる。
【0043】
第3実施形態の摩擦撹拌接合用工具は、ツールホルダ10と、ツール固定用ねじ50と、摩擦撹拌接合用ツール30と、を備える。ツール固定用ねじ50は、ツールホルダ10のねじ穴13aに嵌められ、ツールホルダ10が有する孔11に挿入される摩擦撹拌接合用ツール30をツールホルダ10に対して固定する。
【0044】
ツール固定用ねじ50は、図10に示すツール固定用ねじ50の軸部52の中心軸C52を含む断面において、軸部52の先端面50bと側面50aとを接続する先端角面50cの外形線L50cは、曲率が異なる2つの曲線部分L50c1,L50c2を有している。本実施形態では、曲線部分L50c1の曲率は、曲線部分L50c2の曲率に比べ小さい(曲線部分L50c1に沿うように示されている仮想円V31と、曲線部分L50c2に沿うように示されている仮想円V32参照)。曲線部分L50c1は、先端面50bの外形線L50bと接続しており、曲線部分L50c2は、側面50aの外形線L50aに接続している。このように、ツール固定用ねじ50では、軸部52の中心軸C52を含む断面において、先端角面50cの外形線L50cは、先端面50b側から側面50a側に向かうにしたがって、曲率が変化する曲線をなしている。
【0045】
以上説明した、本実施形態のツール固定用ねじ50によれば、軸部52の中心軸C52を含む断面において、先端角面50cの外形線L50cは、曲線をなしている。これにより、摩擦撹拌接合用ツール30とツール固定用ねじ50の先端角面50cとが接触しても、摩擦撹拌接合用ツール30にツール固定用ねじ50が食い込みにくい。したがって、ツール固定用ねじ50による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができるため、摩擦撹拌接合用ツール30の交換が容易になり、摩擦撹拌接合の作業性を向上することができる。
【0046】
また、本実施形態のツール固定用ねじ50によれば、先端角面50cのうち、摩擦撹拌接合用ツール30と接触しやすい部分の曲率を小さくすることで、ツール固定用ねじ50を摩擦撹拌接合用ツール30にさらに食い込みにくくすることができる。したがって、ツール固定用ねじ50による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができるため、作業性を向上することができる。
【0047】
<第4実施形態>
図11は、第4実施形態のツール固定用ねじ60の断面図である。第4実施形態の摩擦撹拌接合用工具が備えるツール固定用ねじ60は、第1実施形態のツール固定用ねじ20(図2)と比較すると、先端角面の形状が異なる。
【0048】
第4実施形態の摩擦撹拌接合用工具は、ツールホルダ10と、ツール固定用ねじ60と、摩擦撹拌接合用ツール30と、を備える。ツール固定用ねじ60は、ツールホルダ10のねじ穴13aに嵌められ、ツールホルダ10が有する孔11に挿入される摩擦撹拌接合用ツール30をツールホルダ10に対して固定する。
【0049】
ツール固定用ねじ60は、図11に示すツール固定用ねじ60の軸部62の中心軸C62を含む断面において、軸部62の先端面60bと側面60aとを接続する先端角面60cの外形線L60cは、楕円弧の一部の形状と同じ形状を有している(図11に示す仮想楕円V4参照)。本実施形態では、仮想楕円V4の頂点P41において、先端面60bの外形線L60bと先端角面60cの外形線L60cとが接続し、仮想楕円V4の頂点P42において、側面60aの外形線L60aと先端角面60cの外形線L60cとが接続している。これにより、ツール固定用ねじ60は、先端面60bから、先端角面60cを挟んで、側面60aにつながる部分の表面は、滑らかになっている。
【0050】
以上説明した、本実施形態のツール固定用ねじ60によれば、軸部62の中心軸C62を含む断面において、先端角面60cの外形線L60cは、曲線をなしている。これにより、摩擦撹拌接合用ツール30とツール固定用ねじ60の先端角面60cとが接触しても、摩擦撹拌接合用ツール30にツール固定用ねじ60が食い込みにくい。したがって、ツール固定用ねじ60による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができるため、摩擦撹拌接合用ツール30の交換が容易になり、摩擦撹拌接合の作業性を向上することができる。
【0051】
また、本実施形態のツール固定用ねじ60によれば、先端角面60cの外形線L60cは、滑らかな曲線である楕円弧の一部の形状と同じ形状を有している。これにより、ツール固定用ねじ60を摩擦撹拌接合用ツール30にさらに食い込みにくくすることができる。したがって、ツール固定用ねじ60による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができるため、作業性を向上することができる。
【0052】
<第5実施形態>
図12は、第5実施形態のツール固定用ねじ70の断面図である。第5実施形態の摩擦撹拌接合用工具が備えるツール固定用ねじ70は、第1実施形態のツール固定用ねじ20(図2)と比較すると、先端角面の形状が異なる。
【0053】
第5実施形態の摩擦撹拌接合用工具は、ツールホルダ10と、ツール固定用ねじ70と、摩擦撹拌接合用ツール30と、を備える。ツール固定用ねじ70は、ツールホルダ10のねじ穴13aに嵌められ、ツールホルダ10が有する孔11に挿入される摩擦撹拌接合用ツール30をツールホルダ10に対して固定する。
【0054】
ツール固定用ねじ70は、図12に示すツール固定用ねじ70の軸部72の中心軸C72を含む断面において、軸部72の先端面70bと側面70aとを接続する先端角面70cの外形線L70cは、放物線の一部の形状と同じ形状を有している(図12に示す仮想放物線V5参照)。本実施形態では、仮想放物線V5の頂点P5において、先端面70bの外形線L70bと、先端角面70cの外形線L70cとが接続している。これにより、ツール固定用ねじ70は、先端面70bから先端角面70cにつながる部分の表面は、滑らかになっている。
【0055】
以上説明した、本実施形態のツール固定用ねじ70によれば、軸部72の中心軸C72を含む断面において、先端角面70cの外形線L70cは、曲線をなしている。これにより、摩擦撹拌接合用ツール30とツール固定用ねじ70の先端角面70cとが接触しても、摩擦撹拌接合用ツール30にツール固定用ねじ70が食い込みにくい。したがって、ツール固定用ねじ70による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができるため、摩擦撹拌接合用ツール30の交換が容易になり、摩擦撹拌接合の作業性を向上することができる。
【0056】
また、本実施形態のツール固定用ねじ70によれば、先端角面70cの外形線L70cは、滑らかな曲線である放物線の一部と同じ形状を有している。これにより、ツール固定用ねじ70を摩擦撹拌接合用ツール30にさらに食い込みにくくすることができる。したがって、ツール固定用ねじ70による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができるため、作業性を向上することができる。
【0057】
<第6実施形態>
図13は、第6実施形態のツール固定用ねじ80の断面図である。第6実施形態の摩擦撹拌接合用工具が備えるツール固定用ねじ80は、第1実施形態のツール固定用ねじ20(図2)と比較すると、先端角面の形状が異なる。
【0058】
第6実施形態の摩擦撹拌接合用工具は、ツールホルダ10と、ツール固定用ねじ80と、摩擦撹拌接合用ツール30と、を備える。ツール固定用ねじ80は、ツールホルダ10のねじ穴13aに嵌められ、ツールホルダ10が有する孔11に挿入される摩擦撹拌接合用ツール30をツールホルダ10に対して固定する。
【0059】
ツール固定用ねじ80は、図13に示すツール固定用ねじ80の軸部82の中心軸C82を含む断面において、軸部82の先端面80bと側面80aとを接続する先端角面80cの外形線L80cは、双曲線の一部と同じ形状を有している(図13に示す仮想双曲線V6参照)。本実施形態では、仮想双曲線V6の頂点P6において、先端面80bの外形線L80bと、先端角面80cの外形線L80cとが接続している。これにより、ツール固定用ねじ80は、先端面80bから先端角面80cにつながる部分の表面は、滑らかになっている。
【0060】
以上説明した、本実施形態のツール固定用ねじ80によれば、軸部82の中心軸C82を含む断面において、先端角面80cの外形線L80cは、曲線をなしている。これにより、摩擦撹拌接合用ツール30とツール固定用ねじ80の先端角面80cとが接触しても、摩擦撹拌接合用ツール30にツール固定用ねじ80が食い込みにくい。したがって、ツール固定用ねじ80による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができるため、摩擦撹拌接合用ツール30の交換が容易になり、摩擦撹拌接合の作業性を向上することができる。
【0061】
また、本実施形態のツール固定用ねじ80によれば、先端角面80cの外形線L80cは、滑らかな曲線である双曲線の一部と同じ形状を有している。これにより、ツール固定用ねじ80を摩擦撹拌接合用ツール30にさらに食い込みにくくすることができる。したがって、ツール固定用ねじ80による摩擦撹拌接合用ツール30の固定を容易に解除することができるため、作業性を向上することができる。
【0062】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0063】
[変形例1]
上述の実施形態では、ツール固定用ねじは、軸部の中心軸を含む断面において、先端角面の外形線が、円弧の一部や楕円弧の一部などと同じ形状を有しているとした。断面における先端角面の外形線の形状はこれらに限定されない。軸部の中心軸を含む断面において、先端角面の外形線が、ツール固定用ねじの外側に向かって膨らむ形状を有する曲線であればよい。これにより、摩擦撹拌接合用ツール30に固定用ねじの先端部が食い込みにくくなるため、摩擦撹拌接合用ツール30の交換が容易になり、摩擦撹拌接合の作業性を向上することができる。
【0064】
[変形例2]
上述の実施形態では、ツール固定用ねじは、軸部の中心軸を含む断面において、先端面の外形線は、直線をなしているとした。しかしながら、先端面の外形線の形状はこれに限定されない。また、先端角面の外形線は、長さ0.1mmごとの接線の傾きの変化量が0度より大きく10度以下となるように、先端面の外形線とつながっているとしたが、先端角面の外形線の先端面の外形線とのつながり方もこれに限定されない。滑らかにつながることが好ましい。
【0065】
[変形例3]
上述の実施形態では、ツール固定用ねじは、20℃から500℃までの温度範囲における平均熱膨張係数が10ppm/K以上の材料から形成されているとした。また、ツールホルダ10の平均熱膨張係数と摩擦撹拌接合用ツール30の平均熱膨張係数との差は、20℃から500℃までの温度範囲において、5ppm/K以上となるとした。ツール固定用ねじ、ツールホルダ10、および、摩擦撹拌接合用ツールのそれぞれの材料における平均膨張係数は、これらに限定されない。
【0066】
[変形例4]
上述の実施形態では、ツール固定用ねじは、六角穴付き止めねじに限定されない。軸部と、軸部よりも外径が大きい頭部を備えるものであって、工具を用いて頭部を回転させることで軸部が回転すればよい。
【0067】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0068】
(適用例1)
摩擦撹拌接合用ツールを保持するツールホルダのねじ穴に嵌められ、前記ツールホルダが有する孔に挿入される前記摩擦撹拌接合用ツールを前記ツールホルダに対して固定するツール固定用ねじであって、
側面に雄ねじが形成されている軸部を備え、
前記軸部の中心軸を含む断面において、前記軸部の先端面と前記側面とを接続する先端角面の外形線は、曲線をなしている、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
(適用例2)
適用例1に記載のツール固定用ねじであって、
前記断面において、
前記先端面の外形線は、直線をなし、
前記先端角面の外形線は、長さ0.1mmごとの接線の傾きの変化量が0度より大きく10度以下となるように、前記先端面の外形線とつながっている、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
(適用例3)
適用例1または適用例2に記載のツール固定用ねじであって、
前記断面において、前記先端角面の外形線は、前記先端面から前記側面に向かうにしたがって、曲率が変化する、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
(適用例4)
適用例1から適用例3のいずれか一例に記載のツール固定用ねじであって、
前記断面において、前記先端角面の外形線は、円弧、楕円弧、放物線、または、双曲線のいずれかの一部と同じ形状を有している、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
(適用例5)
適用例1から適用例4のいずれか一例に記載のツール固定用ねじであって、
前記ツール固定用ねじは、20℃から500℃までの温度範囲における平均熱膨張係数が10ppm/K以上の材料から形成されている、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
(適用例6)
適用例1から適用例5のいずれか一例に記載のツール固定用ねじであって、
前記断面において外形線が曲線をなす前記先端角面は、前記先端面の全周にわたって形成されている、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
(適用例7)
摩擦撹拌接合用工具であって、
適用例1から適用例6のいずれか一例に記載のツール固定用ねじと、
複数の被加工部材を当接させた部分を撹拌し、複数の前記被加工部材どうしを接合させる前記摩擦撹拌接合用ツールと、
前記摩擦撹拌接合用ツールが挿入されている前記孔と、前記固定用ねじと嵌め合わされている前記ねじ穴と、を有する前記ツールホルダと、を備える、
ことを特徴とする摩擦撹拌接合用工具。
(適用例8)
請求項7に記載の摩擦撹拌接合用工具であって、
前記ツールホルダの平均熱膨張係数と前記摩擦撹拌接合用ツールの平均熱膨張係数との差は、20℃から500℃までの温度範囲において、5ppm/K以上である、
ことを特徴とする摩擦撹拌接合用工具。
【符号の説明】
【0069】
1,2…摩擦撹拌接合用工具
10…ツールホルダ
11…孔
13a…ねじ穴
20,40,50,60,70,80…ツール固定用ねじ
20a,40a,50a,60a,70a,80a…側面
20b,40b,50b,60b,70b,80b…先端面
20c,40c,50c,60c,70c,80c…先端角面
22,42,52,62,72,82…軸部
30…摩擦撹拌接合用ツール
C22,C42,C52,C62,C72,C82…中心軸
L20c,L40c,L50c,L60c,L70c,L80…(先端角面の)外形線
L20b,L40b,L50b,L60b,L70b,L80b…(先端面の)外形線
V1…仮想円
V4…仮想楕円
V5…仮想放物線
V6…仮想双曲線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13