(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112496
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240814BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20240814BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017550
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】新井 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 脩平
(72)【発明者】
【氏名】金田 大成
(72)【発明者】
【氏名】森 淳二
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BB01
5H740BB09
5H740BC01
5H740BC02
5H740KK01
5H740MM11
5H770BA11
5H770DA03
5H770DA11
5H770DA33
5H770GA01
5H770JA17Z
5H770KA03Z
5H770LA05X
5H770LB09
(57)【要約】
【課題】数のスイッチング素子のいずれかが故障しても、短絡電流を抑制可能である電力変換装置を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る電力変換装置は、複数のスイッチング素子の直列回路により第1乃至第4アームをそれぞれ形成する。複数のスイッチング素子のそれぞれは、ゲート回路と、短絡検出回路と、を有する。ゲート回路は、スイッチング素子を導通状態、又は非導通状態に制御するゲート信号を、当該スイッチング素子のゲートに供給する。短絡検出回路は、スイッチング素子に短絡電流が流れている状態を検出した場合に、検出信号を出力する。短絡検出回路が対応するスイッチング素子の検出信号を出力する場合に、ゲート回路は、対応するスイッチング素子をオフするゲート信号を生成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子の直列回路により第1乃至第4アームをそれぞれ形成する電力変換装置であって、
前記複数のスイッチング素子のそれぞれは、
スイッチング素子を導通状態、又は非導通状態に制御するゲート信号を、当該スイッチング素子のゲートに供給するゲート回路と、
前記スイッチング素子に短絡電流が流れている状態を検出した場合に、検出信号を出力する短絡検出回路と、を有し、
前記短絡検出回路が対応するスイッチング素子の検出信号を出力する場合に、前記ゲート回路は、前記対応するスイッチング素子を非導通状態にする前記ゲート信号を生成する、電力変換装置。
【請求項2】
正極側の第1アーム、及び第2アームの中間接続点と中性点の間と、負極側の第3アーム、及び第4アームの中間接続点と中性点の間と、に接続されるクランプダイオードを有する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1乃至第4アームのそれぞれは、直列に接続された複数のスイッチング素子を有し、
前記第1乃至第4アームのそれぞれが有する複数のスイッチング素子に対応するゲート回路に、オフさせる遮断信号を出力する短絡遮断信号生成回路を更に備え、
前記短絡遮断信号生成回路は、前記第1乃至第4アームのそれぞれが有する複数のスイッチング素子に対応する前記短絡検出回路のうちのいずれかの検出信号を受信した場合に、当該複数のスイッチング素子それぞれに対応する前記ゲート回路に対して遮断信号を出力する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1アームの一端は、第1直流電源の正極に接続され、他端は、前記第2アームの一端に接され、
前記第2アームの他端は、交流系統に接続され、
前記第4アームの一端は、第2直流電源の負極に接続され、他端は、前記第3アームの一端に接され、
前記第3アームの他端は、交流系統に接続される、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第2アーム、及び前記第3アームのスイッチング素子の直列数は、前記第1アーム、及び前記第4アームのスイッチング素子の直列数よりも多く構成される、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第2アーム、及び前記第3アームのスイッチング素子の合計耐圧を前記正極と前記負極の間の直流電圧より大きくする、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記短絡遮断信号生成回路は、前記第1アーム、及び前記第4アームのうちいずれの短絡故障を検出可能である、請求項4項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第2アーム、及び前記第3アームと前記交流系統の接続を遮断する遮断器を更に備え、
前記短絡検出回路が検出信号を出力する場合に、前記遮断器は、前記接続を遮断する、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項9】
複数のスイッチング素子の直列回路により第1乃至第4アームをそれぞれ形成する電力変換装置の制御装置であって、
スイッチング素子の導通状態、又は非導通状態を制御するゲート信号を、当該スイッチング素子のゲートに供給するゲート回路と、
前記スイッチング素子に短絡電流が流れている状態を検出すると検出信号を出力する短絡検出回路と、
前記短絡検出回路が対応するスイッチング素子の検出信号を出力する場合に、前記ゲート回路に前記対応するスイッチング素子をオフする前記ゲート信号を生成させる短絡遮断信号生成回路と、
を備える、制御装置。
【請求項10】
複数のスイッチング素子の直列回路により第1乃至第4アームをそれぞれ形成する電力変換装置の制御方法であって、
スイッチング素子を導通状態、又は非導通状態に制御するゲート信号を、当該スイッチング素子のゲートに供給するゲート駆動工程と、
前記スイッチング素子に短絡電流が流れている状態を検出すると検出信号を出力する短絡検出工程と、
前記検出信号を出力する場合に、前記検出信号に対応するスイッチング素子を非導通状態にする前記ゲート信号を生成させる、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置、制御装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧のモータドライブや系統連系インバータには、高電圧化のためにマルチレベル変換器を有する電力変換装置が実用化されている。この電力変換装置の一例であるNPCインバータ(Neutral-Point Clamp)は、鉄道や電力系統用の変換器に使用されている。このような電力変換装置は、直列化した複数のスイッチング素子を動作させることで、直流電力を交流電力又は、交流電力を直流電力に変換する。
【0003】
一方で、変換器のさらなる高電圧・大容量化が求められている。NPCインバータの場合、レベル数を増やすと回路が煩雑になり、直流コンデンサのバランス回路が必要になるデメリットがある。そのため、スイッチング素子を複数直列化して高電圧化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第1314987号公報
【特許文献2】特開平9-182461号公報
【特許文献3】特開2005―185003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、これらの複数のスイッチング素子で構成された電力変換装置は、スイッチング素子の1つが破損した場合に、直流短絡が誘発され、主回路が破損する恐れがある。
【0006】
そこで、本実施形態では、複数のスイッチング素子のいずれかが故障しても、短絡電流を抑制可能である電力変換装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る電力変換装置は、複数のスイッチング素子の直列回路により第1乃至第4アームをそれぞれ形成する。複数のスイッチング素子のそれぞれは、ゲート駆動回路と、短絡検出回路と、を有する。ゲート駆動回路は、スイッチング素子を導通状態、又は非導通状態に制御するゲート信号を、当該スイッチング素子のゲートに供給する。短絡検出回路は、スイッチング素子に短絡電流が流れている状態を検出した場合に、検出信号を出力する。短絡検出回路が対応するスイッチング素子の検出信号を出力する場合に、ゲート駆動回路は、対応するスイッチング素子をオフするゲート信号を生成する。
【発明の効果】
【0008】
複数のスイッチング素子のいずれかが故障しても、短絡電流を抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る電力変換装置の概略的な全体構成を示すブロック。
【
図2】制御装置とゲート駆動回路の構成例を示すブロック図。
【
図4】短絡遮断信号生成回路のスイッチ部に関する回路例を示す図。
【
図5】正側アームがオン状態で、負側アームがオフ状態である例を示す図。
【
図6】正側アームがオン状態で、負側アームがオフ状態である故障例を示す図。
【
図7】スイッチ部がオフ状態で、スイッチ部がオン状態の制御時を示す図。
【
図8】短絡遮断信号生成回路がスイッチ部のゲート回路に短絡遮断信号を出力した状態を示す図。
【
図9】短絡遮断しない場合に、スイッチ部に通常の2倍の電圧がかかる例を示す図。
【
図11】第2実施形態に係る電力変換装置1aの構成例を示す図。
【
図12】スイッチ部が短絡故障している場合の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る電力変換装置、制御装置、及び制御方法ついて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置1の概略的な全体構成を示すブロック図である。
図1に示すように電力変換装置1は、変換器10により直流電力を交流電力に変換し、3相の電力系統Pgに供給が可能なシステムである。より具体的には、この電力変換装置1は、変換器10と、変圧器20と、遮断器30と、制御装置40と、を備え、変換器10の短絡電流を遮断可能な装置である。
【0012】
変換器10は、例えば、直流電圧VDCを取り込み、3相(U相、V相、W相)の交流電圧に変換する。変換器10は、例えばNPCインバータ(Neutral-Point Clamp)である。なお、本実施形態に係る変換器10は、NPCインバータを例に説明するが、これに限定されない。例えば、NPCコンバータを変換器10として電力変換装置1に用いる場合にも、変換器10の短絡電流を遮断可能である。また、NPCインバータ変換器10の詳細は、後述する。
【0013】
変圧器20は、変換器10の3相交流電圧を、3相の電力系統Pgの系統電圧に変換する。また、変圧器20は、事故などによる系統からの短絡電流を限流することも可能である。
【0014】
遮断器30は、3相の電力系統Pgと変圧器20とを、電気的に接続、又は遮断することが可能である。この遮断器30は、事故や故障が生じた場合に、3相の電力系統Pgから変換器10を切り離すことが可能である。
【0015】
制御装置40は、変換器10における各スイッチング素子S11、S12、S21、S22、S31、S32、S41、S42のゲート駆動回路400を制御して、直流電圧を交流電圧に変換させる装置である。なお、
図1では、説明を簡単化するため、ゲート駆動回路400を1つしか図示していないが、各スイッチング素子S11、S12、S21、S22、S31、S32、S41、S42のゲートには、ゲート信号を出力することが可能であるゲート駆動回路400が構成される。また、コンバータとして動作する場合には、制御装置40は、変換器10における各スイッチング素子S11、S12、S21、S22、S31、S32、S41、S42のゲート駆動回路400を制御して、交流電圧を直流電圧に変換させることも可能である。さらにまた、制御装置40の詳細も、後述する。なお、直列に接続されるスイッチング素子S11、S12、S21、S22、S31、S32、S41、S42は、U相、V相、W相とも同一の構成であるため、以下では、例えばU相について説明する。
【0016】
ここで、変換器10の詳細を説明する。
図1に示すように、変換器10は、直列接続された複数のスイッチング素子S11、S12、S21、S22、S31、S32、S41、S42で構成される。スイッチング素子S11、S12、S21、S22、S31、S32、S41、S42は、例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスター(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)と、ダイオードとで構成される。ダイオードは、IGBTに逆並列に接続される。
【0017】
このように、スイッチング素子S11、S12、S21、S22、S31、S32、S41、S42は、半導体スイッチング素子(IGBT)と、逆並列に接続されるダイオードで構成される。絶縁ゲート型バイポーラトランジスターは、例えば入力部がMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)、出力部がバイポーラー構造となっており、バイポーラーモードで動作するパワートランジスターの一種である。なお、本実ではIGBTを例に説明するが、これに限定されない。例えば、スイッチング素子は、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)のスイッチング素子と、ある閾値以上の電圧が加わった時に電流を流すようなクランプ素子とで構成してもよい。なお、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)として、絶縁ゲート電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)などを用いることが可能である。
【0018】
スイッチング素子S11、S12、S21、S22、S31、S32、S41、S42は、ゲート駆動回路400により駆動制御される。これらの複数のスイッチング素子S11~S42は、直列回路を形成している。スイッチング素子S11、S12は第1スイッチング部S1である第1アームを構成し、スイッチング素子S21、S22は第2スイッチング部S2である第2アームを構成し、スイッチング素子S31、S32は第3スイッチング部S3である第3アームを構成し、スイッチング素子S41、S42は第4スイッチング部S4である第4アームを構成する。より詳細には、第1アームの一端は、第1直流電源(C10)の正極に接続され、他端は、第2アームの一端に接され、第2アームの他端は、交流系統Pgの交流出力端子Uに接続される。同様に、第4アームの一端は、第2直流電源(C20)の負極に接続され、他端は、第3アームの一端に接され、第3アームの他端は、交流系統Pgの交流出力端子Uに接続される。また、V相の第2、第3アームの他端は、交流系統Pgの交流出力端子Vに接続され、W相の第2、第3アームの他端は、交流系統Pgの交流出力端子Wに接続される点を除き、上述のように、V相、W相の複数のスイッチング素子S11~S42もU相の複数のスイッチング素子S11~S42と同等の構造である。
【0019】
スイッチング素子S11、S12は、同一のゲート信号により制御される。このため、スイッチング素子S11、S12は、同時にオン、オフする。同様に、スイッチング素子S21、S22も同時にオン、オフし、スイッチング素子S31、S32も同時にオン、オフし、イッチング素子S41、S42も同時にオン、オフする。このように、上側4素子S11、S12、S21、S22により正側アームを形成し、下側4素子S31、S32、S41、S42により負側アームを形成している。なお、本実施形態では、半導体スイッチング素子(IGBT)の導通状態をスイッチング素子のオンと称し、半導体スイッチング素子(IGBT)の非導通状態をスイッチング素子のオフと称する場合がある。また、半導体スイッチング素子(IGBT)の非導通状態をスイッチング素子の遮断状態と称する場合がある。
【0020】
第1アームと第2アームの中間接続点と中性点Cとの間には、クランプダイオードDu1が接続される。例えば、クランプダイオードDu1は、2つの直列接続されたダイオードで構成される。同様に、第3アームと第4アームの中間接続点と中性点Cとの間には、クランプダイオードDu2が接続される。例えば、クランプダイオードDu2は、2つの直列接続されたダイオードで構成される。このように、本実施形態に係る変換器10は、所謂ダイオードクランプ形であるがこれに限定されない。例えば、クランプダイオードDu1、Du2にスイッチング素子S11からS42を接続し、アクティブ形としてもよい。また、素子直列数や耐圧は、電圧仕様に基づいて、設計することが可能である。例えば、第2アーム、及び第3アームのスイッチング素子の合計耐圧を正極端子Pと負極端子Nの間の直流電圧VDより大きくする。
【0021】
このように、スイッチング部S1~S4がU、V、W相毎に直列接続され、それぞれの交流出力端子U、V、Wに直流電圧の正極P、負極N、中性点Cの3レベルのいずれかの電位をパルス状に出力し、パルス幅変調された交流電圧を変圧器20に供給する。
【0022】
正側アームのスイッチ部S1、S2が同時にオンしたときに正極端子Pの電位が出力され、負側アームのスイッチ部S3、S4が同時にオンしたときに負極端子Nの電位が出力され、スイッチ部S1、S4が共にオフし、スイッチ部S2とS3が同時にオンしたとき、中性点クランプダイオードDu1、Du2のいずれかを介して中性点Cの電位が出力される。なお、正の交流電圧を出力するとき、スイッチ部S2はオン状態とされ、スイッチ部S1がオン・オフする。また、負の交流電圧を出力するとき、スイッチ部S3はオン状態とされ、スイッチ部S4がオン・オフする。また、スイッチ部S1とS3及びS2とS4は互いに相補的にオン・オフし同時にオンすることはなく制御される。このスイッチング制御動作は周知であるので詳細説明は省略する。
【0023】
ここで、制御装置40とゲート駆動回路400の詳細を説明する。
図2は、制御装置40とゲート駆動回路400の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、ゲート駆動回路400は、短絡検出回路402と、クランプ回路404と、ゲート回路406とを有する。以下では、例えばスイッチング素子S11と、スイッチング素子S12、S21、S22、S31、S32、S41、S42との制御は、制御タイミングを除いて同等であるので、スイッチング素子S12、S21、S22、S31、S32、S41、S42の説明を省略する場合がある。
【0024】
短絡検出回路402は、スイッチング素子S11に短絡電流が流れている状態を検出した場合に、検出信号を出力する。この短絡検出回路402は、スイッチング素子S11における例えば半導体スイッチング素子(IGBT)のコレクタ電圧を検出する検出回路を有する。この検出回路は、例えば分圧抵抗や分圧コンデンサを半導体スイッチング素子のコレクタCに接続することでコレクタ電圧を検出することが可能となる。
【0025】
また、直流短絡が発生して大きな電流が流れると、半導体スイッチング素子(IGBT)は飽和してコレクタ電位が上昇する。例えば、短絡検出回路402は、半導体スイッチング素子がオン状態であり、且つコレクタ電圧が所定の閾値を超えて上昇した場合に、直流短絡状態であることを示す短絡検出信号(S1-1)を出力する。上述のように、スイッチング素子S11を例に説明するが、スイッチング素子S12~S42のゲート駆動回路400も同等の構成を有する。なお、本実施形態に係る短絡検出回路402は、電圧を検知するが、これに限定されない。例えば、検出回路は、導体スイッチング素子のコレクタCに流れる電流を検知してもよい。
【0026】
クランプ回路404は、半導体スイッチング素子のコレクタCのコレクタ電圧を所定値にクランプすることが可能である。例えば、クランプ回路404には、半導体スイッチング素子(IGBT)のコレクタCとゲートG間にダイオードを使用したアクティブクランプ回路を用いることが可能である。また、コレクタ電圧に基づいて、スイッチング素のコレクタ電圧の上昇を所定値に抑制するようにゲート信号を制御する電圧クランプ回路を用いることが可能である。より具体的には、この電圧クランプ回路は、コレクタ電圧に応じて、所定の電流をゲートGに注入し、スイッチング素のコレクタ電圧の上昇を所定値に抑制するように制御する。
【0027】
図3は、クランプ回路404の動作特性例を示す図である。
図3(a)は、コレクタ電圧の特性を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は半導体スイッチング素子(IGBT)のコレクタ電圧の2倍を示す。なお、スイッチング素子S11、S12が2つであるので、コレクタ電圧Vceを2倍で示している。つまり、スイッチング素子1つあたりでは、縦軸の電圧特性は、半分の値となる。コレクタ電圧Vceは、例えばコレクタCとエミッタE間の電圧である。実線が、クランプ回路404を用いた場合の特性であり、破線がクランプ回路404を用いない場合の特性である。
図3(b)は、コレクタ電流の特性を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は半導体スイッチング素子(IGBT)のコレクタ電流を示す。実線が、クランプ回路404を用いた場合の特性であり、破線がクランプ回路404を用いない場合の特性である。
【0028】
このように、クランプ回路404は、コレクタCとエミッタE間の電圧を半導体スイッチング素子(IGBT)における耐圧以下の設定電圧Vclpに、クランプする。このとき、コレクタ電流は、
図3(b)に示すように、より時間をかけて減少するように制御される。また、短絡遮断した後の過電圧を抑制するためには、正極P、負極N間の電圧をVdc、素子の直列数をN(
図1ではN=2)とすると、クランプ回路の設定電圧VclpはVclp<Vdc/Nとされる。このような特性により、クランプ回路404は、大きな短絡電流を遮断する際の過電圧V
surgeと、通常のスイッチング動作時の多直列間の電圧アンバランスによる過電圧V
surgeと、短絡遮断した後の過電圧V
surgeと、を抑制することが可能である。
【0029】
ゲート回路406は、通常運転時は制御装置40で生成したゲート信号S1a~S4aを各スイッチング素子S11~S42に与えることで、変換器10が所望の電圧を出力するように各スイッチング素子を制御する。上述のように、スイッチング素子S11、S12は同時にオン、オフするので、同一のゲート信号S1aが供給される。
【0030】
また、ゲート回路406は短絡遮断信号S1b~S4bを受信した場合に、各スイッチング素子S11~S42を遮断、すなわちオフさせる。このように、ゲート回路406はゲート信号S1a~S4aや短絡遮断信号S1b~S4bなどを受信して、半導体スイッチング素子のゲートへの電圧印加状態を制御することにより、半導体スイッチング素子のオン/オフを制御することが可能である。例えば、ゲート回路406がハイレベル信号を出力する場合(ターンオン中)には、各スイッチング素子S11~S42のゲート容量、及びミラー容量が充電され、オンとなる。一方で、ゲート回路406がロウレベル信号を出力する場合(ターンオフ中)には各スイッチング素子S11~S42の、ゲート容量、及びミラー容量が放電され、オフとなる。
【0031】
制御装置40は、制御回路408と、短絡遮断信号生成回路410と、を有する。制御回路408は、例えば、一般的な駆動を行うためのゲート信号を生成する。すなわち、制御回路408は、上述のように、正の交流電圧を出力するとき、ゲート回路406を介して、スイッチ部S2をオン状態とし、スイッチ部S1をオン・オフに制御する。また、制御回路408は、負の交流電圧を出力するとき、スイッチ部S3をオン状態とし、スイッチ部S4をオン・オフに制御する。さらにまた、制御回路408は、スイッチ部S1とS3及びS2とS4は互いに相補的にオン・オフし同時にオンすることはないように制御する。なお、スイッチ部S1を第1アーム、スイッチ部S2を第2アーム、スイッチ部S3を第3アーム、スイッチ部S4を第4アームと称する場合がある。
【0032】
図4は、短絡遮断信号生成回路410のスイッチ部S1~S4に関する回路例を示す図である。短絡遮断信号生成回路410は、短絡検出信号S1-1~S4-2のいずれかが検出された場合に、第1乃至第4アームのそれぞれが有する複数のスイッチング素子のうちの対応するゲート回路406に、対応するスイッチング素子をオフさせる遮断信号を出力する。より具体的には、この短絡遮断信号生成回路410は、スイッチ部S1に対して、短絡検出信号S1-1、S1-2のオア(OR)遮断回路508aを有する。オア(OR)遮断回路508aは、例えばハイレベル信号を出力する場合に、ゲート回路406に対してスイッチ部S1のスイッチ素子S11、S12を遮断(オフ)させる。同様に、短絡遮断信号生成回路410は、短絡検出信号S2-1、S2-2のオア(OR)遮断回路508a、短絡検出信号S3-1、S3-2のオア(OR)遮断回路508a、短絡検出信号S4-1、S4-2のオア(OR)遮断回路508aを有する。
【0033】
これにより、本実施の形態に係る短絡遮断信号生成回路410は、スイッチ部S1~S4に関して、例えば短絡検出信号S1-1、S1-2、S2-1、S2-2、S3-1、S4-2、S4-1、S4-2を受信すると、短絡遮断信号S1b、S2b、S3b、S4bを出力する。これにより、遮断可能であれば、スイッチ部S1~S4を遮断する。上述のように、クランプ回路404でのクランプ特性により、半導体スイッチング素子の過電圧破壊は抑制される。一方で、半導体スイッチング素子を遮断しない場合には、過大な損失熱量を発生させる恐れがあり、半導体スイッチング素子のエネルギー耐量を越える恐れがある。これに対して、本実施形態によれば、半導体スイッチング素子を遮断するので、半導体スイッチング素子のエネルギー耐量を越える恐れが抑制される。
【0034】
ここで、
図5乃至
図9を用いて、制御回路408と、短絡遮断信号生成回路410との具体的な動作例を説明する。
図5は、正側アームがオン状態で、負側アームがオフ状態である例を示す図である。スイッチ部S1は、未故障の状態である。
【0035】
図6は、正側アームがオン状態で、負側アームがオフ状態である故障例を示す図である。スイッチ部S1は、
図5の状態で短絡故障を起こしている。この状態では、
図6の正常状態と同様であるので、短絡遮断信号生成回路410は、スイッチ部S1に対して、通常動作のハイレベル信号(オン信号)を出力している。
【0036】
図7は、スイッチ部S1、S4がオフ状態で、スイッチ部S2、S3がオン状態の制御時を示す図である。制御回路408は、スイッチ部S1、S4をオフ状態、スイッチ部S2、S3をオン状態に制御している。しかしながら、制御回路408の制御に反して、スイッチ部S1が短絡故障を起こしているので、スイッチ部S1が導通状態を維持している。このような場合、破線で示す電流経路が構成されてしまう。このように、短絡電流は、第1アームS1、第2アームS2、第3アームS3、第4アームS4の内の、第2アームS2、及び第3アームS3を含む3つのアームのスイッチング素子と、第1直流電源であるコンデンサC10、又は第2直流電源であるコンデンサC20との間の伝導経路が形成されることにより流れる。
【0037】
これにより、第1アームS1、第2アームS2、及び第3アームS3が導通状態になることにより、コンデンサC10に対して短絡電流が発生する。スイッチ部S1、S2、S3の短絡検出回路402は、短絡検出信号S1-1、S1-2、S2-1、S2-2、S3-1、S3-2を出力する。これらの信号を受信した短絡遮断信号生成回路410は、スイッチ部S1、S2、S3のゲート回路406に短絡遮断信号S1b~S3bを出力する。これにより、
図7において、短絡電流が遮断され、スイッチ部S2、S3の破壊が抑制される。
【0038】
同様に、第1アームS2、第2アームS3、及び第4アームS4(短絡故障)が導通状態になることにより、コンデンサC20に対して短絡電流が発生する。スイッチ部S2、S3、S4の短絡検出回路402は、短絡検出信号S2-1、S2-2、S3-1、S3-2、S4-1、S4-2を出力する。これらの信号を受信した短絡遮断信号生成回路410は、スイッチ部S2、S3、S4のゲート回路406に短絡遮断信号S2b~S4bを出力する。これにより、短絡電流が遮断され、スイッチ部S2、S3の破壊が抑制される。
【0039】
図8は、短絡遮断信号生成回路410がスイッチ部S1、S2、S3のゲート回路406に短絡遮断信号S1b~S3bを出力した状態を示す図である。スイッチ部S1は、短絡故障してるので、オフできない状態を維持している。一方で、スイッチ部S2、S3のゲート回路406は、短絡遮断信号S2b、S3bにより、スイッチ部S1、S3をオフ(遮断)する。これにより、スイッチ部S2、S3の破壊が抑制される。
【0040】
また、
図8に示すように、負側アームから電力を供給する状態でも、スイッチ部S3のダイオードを電流が通過し、出力される。これにより、過大な損失熱量の発生が抑制され、半導体スイッチング素子のエネルギー耐量を越えことが抑制される。
【0041】
図9は、短絡遮断しない場合に、スイッチ部S2に通常の2倍の電圧がかかる例を示す図である。制御回路408は、スイッチ部S1、S3、S4をオフ状態、スイッチ部S2をオン状態に制御している。ここでは、正側アームから電力を供給する制御状態においてのタイミングを示している。しかしながら、制御回路408の制御に反して、スイッチ部S1が短絡故障を起こしているので、スイッチ部S1がオン状態を維持している。このようなタイミング状態では、スイッチ部S3、S4のダイオードを電流が通過し、電圧の減少がスイッチ部S3、S4において生じない状態となる。このため、通常であれば、スイッチ部S2には、電圧V
DC/2しか印加されないのに、電圧V
DCの電圧がかかり、耐圧を越えてしまう恐れがある。これに対して、本実施形態では、上述のように、スイッチ部S2、S3を遮断(オフ)するので、正側アームの短絡電流が遮断され、このような状態を生じないものである。
【0042】
図10は、制御装置40の処理例を示すフローチャートである。ここでは、スイッチ部S1、S2、S3、及びS4のいずれかで短絡故障が発生した例で説明する。
図10に示すように、スイッチ部S1、S2、S3、及びS4のいずれかで故障が発生する(ステップS10)。続けて、スイッチ部S1、S2、S3、及びS4のいずれかで直流短絡が発生する(ステップS20)。
【0043】
制御装置40の短絡遮断信号生成回路410は、短絡検出信号S1-1、S1-2、S2-1、S2-2、S3-1、S4-2、S4-1、S4-2のいずれかを受信すると(ステップS30)、短絡検出信号に対応する短絡遮断信号S1b、S2b、S3b、S4bのいずれかを出力する(ステップS40)。次に、制御装置40の制御回路408は、全スイッチ部S1、S2、S3、及びS4に対して、短絡遮断信号S1b、S2b、S3b、S4bを出力する(ステップS50)。そして、制御装置40の制御回路408は、遮断器30(
図1参照)を解放する(ステップS60)。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、制御装置40の短絡遮断信号生成回路410は、短絡検出信号S1-1、S1-2、S2-1、S2-2、S3-1、S4-2、S4-1、S4-2のいずれかを受信すると、対応する短絡遮断信号S1b、S2b、S3b、S4bのいずれかを出力し、対応するスイッチ部S1、S2、S3、S4を遮断することとした。これにより、制御装置40の制御回路408が、駆動を停止するまでの期間に、通常の制御を継続しても、スイッチ部S1、S2、S3、S4に短絡電流が流れることが停止され、スイッチ部S1、S2、S3、S4の破壊が抑制される。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る電力変換装置1aは、スイッチ部S2、及びS3のスイッチング素子数を、スイッチ部S1、及びS4のスイッチング素子数よりも増加させることで、第1実施形態に係る電力変換装置1と相違する。以下では、第1実施形態に係る電力変換装置1と相違する点を説明する。
【0046】
図11は、第2実施形態に係る電力変換装置1aの構成例を示す図である。
図11に示すように、第2アーム、及び第3アーム(スイッチ部S2、及びS3)のスイッチング素子の直列数を、第1アーム、及び第4アーム(スイッチ部S1、及びS4)のスイッチング素子の直列数よりも多く構成する。すなわち、スイッチ部S2、及びS3のスイッチング素子数を、3にしている例である。
【0047】
上述のように、クランプ回路404でのクランプ特性により、半導体スイッチング素子の過電圧破壊は抑制される。一方で、半導体スイッチング素子を遮断しない場合には、過大な損失熱量を発生させる恐れがあり、半導体スイッチング素子のエネルギー耐量を越える恐れがある。そこで、交流系統Pgに接続されるスイッチ部S2、及びS3の耐圧を、選択的に上げることとする。
【0048】
図12は、スイッチ部S1が短絡故障している場合の例を示す図である。上述の
図8と同様の状態である。上述のように、
図12となる前に、
図7と同様に短絡する瞬間が生じる場合でも、スイッチ部S2、及びS3の耐圧を上げているため、スイッチ部S2、及びS3の破壊が抑制される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、交流系統Pgに接続されるスイッチ部S2、及びS3に対して選択的に耐圧を上げることとした。これにより、スイッチ部S1、及びS4が短絡故障を起こした場合にも、スイッチ部S2、及びS3の破壊が抑制される。
【符号の説明】
【0050】
1、1a:電力変換装置、40:制御装置、400:ゲート駆動回路、402:短絡検出回路、404:クランプ回路、406:ゲート回路、S1:第1アーム、S2:第2アーム、S3:第3アーム、S4:第4アーム、S11、S12、S21、S22、S31、S32、S41、S42:スイッチング素子。