(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112498
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017555
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 康浩
(72)【発明者】
【氏名】泉 純太
(72)【発明者】
【氏名】三木 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】伴 尊行
(72)【発明者】
【氏名】水野 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】戸村 修二
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大塚 一雄
(72)【発明者】
【氏名】塚田 浩司
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503BA03
5G503BA04
5G503BB01
5G503DA02
5G503GB03
5G503GB06
5G503GD03
(57)【要約】
【課題】第1~第3電池ストリングを用いた3相4線式の交流電源において短絡電流および突入電流を抑制する。
【解決手段】電源システムが、電池ストリングSt1と、電池ストリングSt2と、電池ストリングSt3とを備える。電池ストリングSt1~St3の各々は、直流電力を出力可能な複数の電池11を含む。電池ストリングSt1~St3は、三相出力端子(交流出力端子Tu,Tv,Tw)に三相交流電力を出力するようにY結線され、かつ、中性線NLに接続されている。中性線NLには、直流カット用の中性線コンデンサ(コンデンサ21)と、中性線コンデンサと直列に配置された中性線スイッチ(リレー22)と、中性線スイッチと並列に配置された電気抵抗素子23とが設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電池ストリングと、第2電池ストリングと、第3電池ストリングとを備える電源システムであって、
前記第1~第3電池ストリングの各々は、直流電力を出力可能な複数の電池を含み、
前記第1~第3電池ストリングは、三相出力端子に三相交流電力を出力するようにY結線され、かつ、中性線に接続されており、
前記中性線には、直流カット用の中性線コンデンサと、前記中性線コンデンサと直列に配置された中性線スイッチと、前記中性線スイッチと並列に配置された電気抵抗素子とが設けられている、電源システム。
【請求項2】
前記第1電池ストリング、前記第2電池ストリング、前記第3電池ストリングと前記三相出力端子との間には、それぞれ第1相リレー、第2相リレー、第3相リレーが設けられており、
当該電源システムは、前記中性線スイッチ、前記第1相リレー、前記第2相リレー、および前記第3相リレーを制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第1相リレー、前記第2相リレー、および前記第3相リレーの各々が導通状態であり、かつ、前記中性線スイッチが遮断状態であるときに前記第1~第3電池ストリングから前記三相出力端子へ三相交流電力を出力させることにより前記中性線コンデンサに対するプリチャージを実行することと、
前記中性線コンデンサに対するプリチャージが完了した後に前記中性線スイッチを導通状態にすることと、
を実行するように構成される、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記中性線コンデンサに対するプリチャージの実行中に前記三相出力端子の電流値をゼロに近づけるように前記第1~第3電池ストリングを制御する、請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
当該電源システムは、前記第1~第3電池ストリングの各々から出力されるストリング電圧を個別に検出する検出回路をさらに備え、
前記第1~第3電池ストリングの各々は、複数の電池回路を備え、
前記複数の電池回路の各々は、前記電池と、直流出力端子と、前記電池と前記直流出力端子との接続/切離しを切り替えるスイッチ回路とを含み、
前記制御装置は、前記検出回路が検出した前記第1~第3電池ストリングの各々の前記ストリング電圧に基づいて、前記第1~第3電池ストリングの各々に含まれる前記スイッチ回路を制御することにより、前記第1~第3電池ストリングから前記三相出力端子へ三相交流電力を出力させるように構成される、請求項2または3に記載の電源システム。
【請求項5】
前記検出回路は、第1フィルタ回路、第2フィルタ回路、および第3フィルタ回路を備え、
前記第1フィルタ回路と前記第2フィルタ回路と前記第3フィルタ回路との各々は、コンデンサおよびインダクタを含み、
前記第1フィルタ回路、前記第2フィルタ回路、前記第3フィルタ回路は、それぞれ前記第1電池ストリング、前記第2電池ストリング、前記第3電池ストリングと前記第1相リレー、前記第2相リレー、前記第3相リレーとの間に配置されている、請求項4に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-120255号公報(特許文献1)には、第1~第3電池ストリングを用いた三相交流電源が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるように第1~第3電池ストリングをY結線することで、三相交流電源を実現することができる。ただし、第1~第3電池ストリングを3相3線式の回路構成にした三相交流電源では、3相の和がゼロという制約によって瞬間的な電流が成り行きで決まり、力率(電圧および電流の位相差)が悪化する。そこで、第1~第3電池ストリングを中性線に接続して3相4線式の回路構成にすることが考えられる。3相4線式の交流電源では、0相電流を流せる(すなわち、3相の和がゼロでなくてもよくなる)ため、3相とも位相制御可能になり、力率の悪化が抑制される。
【0005】
第1~第3電池ストリングを中性線に接続した回路構成では、短絡電流が生じ得る。そこで、短絡電流を抑制するために、直流カット用のコンデンサ(中性線コンデンサ)を中性線に設けることが考えられる。しかし、中性線にコンデンサを設けた回路構成では、突入電流が生じ得る。詳しくは、中性線コンデンサがチャージされていない状態で第1~第3電池ストリングから三相出力端子への給電を開始すると、中性線コンデンサに突入電流が流れてしまう。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、第1~第3電池ストリングを用いた3相4線式の交流電源において短絡電流および突入電流を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る一形態に従うと、以下に示す構成を有する電源システムが提供される。この電源システムは、第1電池ストリングと、第2電池ストリングと、第3電池ストリングとを備える。第1~第3電池ストリングの各々は、直流電力を出力可能な複数の電池を含む。第1~第3電池ストリングは、三相出力端子に三相交流電力を出力するようにY結線され、かつ、中性線に接続されている。中性線には、直流カット用の中性線コンデンサと、中性線コンデンサと直列に配置された中性線スイッチと、中性線スイッチと並列に配置された電気抵抗素子とが設けられている。
【0008】
上記構成によれば、本格的な給電を開始する前に、中性線スイッチを遮断状態にすることで、電気抵抗素子で突入電流を抑制しつつ、中性線コンデンサのプリチャージを実行することが可能になる。そして、チャージされた中性線コンデンサによって短絡電流が抑制される。このため、第1~第3電池ストリングを用いた3相4線式の交流電源において短絡電流および突入電流を抑制することが可能になる。
【0009】
なお、第1~第3電池ストリングの各々は、1つの直列電池ストリング(電圧の印加/非印加を個別に切替え可能な複数の電池が直列に接続された電池集合体)であってもよい。あるいは、第1~第3電池ストリングの各々は、並列に接続された複数の直列電池ストリングを含む電池モジュールであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、第1~第3電池ストリングを用いた3相4線式の交流電源において短絡電流および突入電流を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態に係る電源システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】本開示の実施の形態に係る電源システムによる給電準備に係る処理を示すフローチャートである。
【
図3】本開示の実施の形態に係る電源システムが給電準備を行う第1の例について、動作波形例を示すタイムチャートである。
【
図4】
図1に示した3相4線式の交流電源の動作波形例を示すタイムチャートである。
【
図5】本開示の実施の形態に係る電源システムが給電準備を行う第2の例について、第1動作波形例(Vca,Vcb,Vcc,Iu,Iv,Iw)を示すタイムチャートである。
【
図6】本開示の実施の形態に係る電源システムが給電準備を行う第2の例について、第2動作波形例(Vcn,In)を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0013】
図1は、この実施の形態に係る電源システムの概略的な構成を示す図である。
図1を参照して、この実施の形態に係る電源システムは、電池ストリングSt1(第1電池ストリング)と、電池ストリングSt2(第2電池ストリング)と、電池ストリングSt3(第3電池ストリング)と、電線PL1,PL2,PL3と、フィルタ回路30と、リレー41,42,43と、中性線NLと、交流出力端子Tu,Tv,Twと、トランス50と、系統端子GT1,GT2,GT3と、制御装置100とを備える。以下では、リレー41,42,43の3つをまとめて「3相リレー41~43」と称することがある。また、交流出力端子Tu,Tv,Twの3つをまとめて「三相出力端子Tuvw」と称することがある。
【0014】
電池ストリングSt1~St3の各々は、直流電力を出力可能に構成される。そして、電池ストリングSt1~St3は、三相出力端子Tuvwに三相交流電力を出力するようにY結線され、かつ、中性線NLに接続されている。電池ストリングSt1、St2、St3は、それぞれU相用電池ストリング、V相用電池ストリング、W相用電池ストリングに相当する。交流出力端子Tu,Tv,Twはトランス50を介して系統端子GT1,GT2,GT3と電気的に接続されている。系統端子GT1,GT2,GT3は、図示しない電力系統(商用電源)と電気的に接続されている。電力系統は、例えば電気事業者と契約した各需要家に電力を供給する電力網である。
【0015】
電池ストリングSt1~St3は、電力系統との間で電力をやり取りするように構成される。図示していないが、交流出力端子Tu、Tv、Twにはそれぞれ、当該出力端子を流れる電流であるIa、Ib、Icを検出する電流センサと、当該出力端子に印加される電圧であるVa、Vb、Vcを検出する電圧センサとが設けられている。各センサによる検出結果(Ia,Ib,Ic,Va,Vb,Vc)は制御装置100へ出力される。
【0016】
電池ストリングSt1~St3の各々の負極端子は中性点N1に接続されている。そして、電線PL1、PL2、PL3が、電池ストリングSt1、St2、St3の正極端子と交流出力端子Tu、Tv、Twとをそれぞれ接続している。電線PL1、PL2、PL3には、それぞれ電線PL1、PL2、PL3の導通/遮断を切り替えるリレー41、42、43が設けられている。リレー41,42,43の各々は、電磁式のメカニカルリレーであってもよい。リレー41,42,43の各々は、制御装置100によって制御される。この実施の形態では、リレー41,42,43の各々がノーマリオフ型のリレーである。このため、リレー41,42,43の各々は、制御装置100からの指示を受けていないときには遮断状態(OFF状態)に維持される。リレー41、42、43は、それぞれ本開示に係る「第1相リレー」、「第2相リレー」、「第3相リレー」の一例に相当する。
【0017】
電線PL1,PL2,PL3には、中性点N2に接続されたフィルタ回路30がさらに設けられている。フィルタ回路30は、コンデンサ34およびインダクタ31,37によって形成される第1LCLフィルタ(第1フィルタ回路)と、コンデンサ35およびインダクタ32,38によって形成される第2LCLフィルタ(第2フィルタ回路)と、コンデンサ36およびインダクタ33,39によって形成される第3LCLフィルタ(第3フィルタ回路)とを含む。第1LCLフィルタ、第2LCLフィルタ、第3LCLフィルタは、それぞれ電池ストリングSt1、St2、St3とリレー41、42、43との間に配置されている。第1LCLフィルタ、第2LCLフィルタ、第3LCLフィルタと電池ストリングSt1、St2、St3との間には、それぞれ電線PL1、PL2、PL3を流れる電流であるIu、Iv、Iwを検出する電流センサが設けられている。各電流センサによる検出結果(Iu,Iv,Iw)は制御装置100へ出力される。フィルタ回路30は、Y結線システムまたは他電源を複数並列で使用した際の横流を抑制したり、電線PL1,PL2,PL3の各々における電流リプル成分を減衰させたりする。
【0018】
また、フィルタ回路30は、本開示に係る「検出回路」の一例として機能する。すなわち、フィルタ回路30は、電池ストリングSt1~St3の各々から出力されるストリング電圧を個別に検出するように構成される。詳しくは、第1~第3LCLフィルタに含まれるコンデンサ34、35、36の端子間電圧であるVca、Vcb、Vccが、それぞれ電池ストリングSt1、St2、St3のストリング電圧と一致する。図示していないが、コンデンサ34,35,36の各々には端子間電圧を検出する電圧センサが設けられ、各電圧センサによる検出結果(Vca,Vcb,Vcc)は制御装置100へ出力される。こうした構成によれば、フィルタ回路を利用してストリング電圧を検出することが可能になる。
【0019】
トランス50は、Y-Y結線の三相変圧器である。トランス50は、Y結線された電池ストリング側のコイル51,52,53と、Y結線された電力系統側のコイル54,55,56とを含む。コイル51、52、53の正極端子は、それぞれ交流出力端子Tu、Tv、Twに接続され、各コイルの負極端子は中性線NL(グランド線)に共通接続されている。コイル54、55、56の正極端子は、それぞれ系統端子GT1、GT2、GT3に接続され、各コイルの負極端子は中性点N3に共通接続されている。
【0020】
中性線NLは、中性点N1とトランス50の負極端子とを接続している。中性線NLには、直流カット用のコンデンサ21(中性線コンデンサ)と、コンデンサ21と直列に配置されたリレー22(中性線スイッチ)と、リレー22と並列に配置された電気抵抗素子23(制限抵抗)とが設けられている。リレー22は、電磁式のメカニカルリレーであってもよい。リレー22は、制御装置100によって制御される。この実施の形態では、リレー22がノーマリオフ型のリレーである。このため、リレー22は、制御装置100からの指示を受けていないときには遮断状態(OFF状態)に維持される。
【0021】
この実施の形態では、インダクタ31~33(電池ストリング側のフィルタコイル)のインダクタンスが、インダクタ37~39(三相出力端子側のフィルタコイル)のインダクタンスよりも大きい。インダクタ31~33のインダクタンスを大きくすることで、瞬間停電などの電圧急変時に電流変化を抑制でき、過電流異常による装置停止を防ぎやすくなる。
【0022】
この実施の形態では、コンデンサ34~36の各々の静電容量が、コンデンサ21の静電容量よりも小さい。コンデンサ34~36(フィルタコンデンサ)の静電容量を小さくすることで、3相リレー41~43をオンしたとき(後述する
図2のS11参照)の突入電流を抑制できる。
【0023】
電池ストリングSt1~St3の各々は、複数の電池回路10を備える。複数の電池回路10の各々は、直流出力端子OT1,OT2と、直流電力を出力可能な電池11と、BMS(Battery Management System)12と、スイッチ回路SWと、チョークコイル17と、コンデンサ18とを含む。電池11は、充放電可能な二次電池である。電池11は、1つの二次電池であってもよいし、複数の二次電池が形成する組電池であってもよい。BMS12は、電池11の状態(例えば、電圧、電流、および温度)を検出する各種センサを含み、検出結果を制御装置100へ出力する。制御装置100は、BMS12の出力信号(BMS信号)に基づいて電池11の状態(例えば、温度、電流、電圧、およびSOC(State Of Charge))を取得することができる。BMS12は、二次電池ごとの状態を個別に検出するように構成されてもよい。SOCは、蓄電残量を示し、例えば満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。
【0024】
スイッチ回路SWは、電池11と直流出力端子OT1,OT2との接続/切離しを切り替えるように構成される。具体的には、スイッチ回路SWは、第1スイッチ13(以下、「SW13」と表記する)と、第2スイッチ14(以下、「SW14」と表記する)と、SW13の並列ダイオード15と、SW14の並列ダイオード16とを含む。SW13は、直流出力端子OT1,OT2間に位置し、直流出力端子OT1と直流出力端子OT2とを直接的につなぐ電路の導通/遮断を切り替える。SW14およびチョークコイル17は、直流出力端子OT1と電池11の正極とをつなぐ電線BL1上に位置する。直流出力端子OT2は電線BL2を介して電池11の負極と電気的に接続されている。コンデンサ18は、電線BL1と電線BL2との各々に接続されている。SW13,SW14の各々は、例えばFET(電界効果トランジスタ)のような半導体スイッチである。
【0025】
各電池ストリングにおいては、隣り合う電池回路10同士が電線(ストリング線)でつながっている。ある電池回路10の直流出力端子OT2が、当該電池回路10に隣接する別の電池回路10の直流出力端子OT1と接続されることによって、電池回路10同士が電気的に接続されている。1つの電池ストリングに含まれる電池回路10の数は任意であり、5~50個であってもよいし、100個以上であってもよい。電池ストリングSt1~St3の各々に含まれる電池回路10の数は同じでも異なってもよい。なお、
図1に示す電池回路10の構成は、一例にすぎず、適宜変更可能である。例えば、回路からチョークコイル17が取り除かれてもよい。回路構成に応じて配線インダクタンスが調整されてもよい。
【0026】
電池11が直流出力端子OT1,OT2に接続されている期間(接続期間)においては、電池11の電圧が直流出力端子OT1,OT2間に印加される。接続期間においては、電池11と直列に接続されたSW14がON状態(導通状態)に、かつ、電池11と並列に接続されたSW13がOFF状態(遮断状態)に制御される。電池11が直流出力端子OT1,OT2から切り離されている期間(切離し期間)においては、電池11の電圧が直流出力端子OT1,OT2間に出力されない。切離し期間においては、SW14がOFF状態(遮断状態)に制御される。また、SW13は、切離し期間においては、過渡期を除いてON状態(導通状態)に制御される。
【0027】
制御装置100は、接続期間と切離し期間との比を示すデューティ比に従ってスイッチ回路SWを制御することにより、ストリング電圧を制御してもよい。デューティ比は、例えば、接続期間と切離し期間との合計長さに対する接続期間の長さの割合(接続Duty)で表わすことができる。接続Dutyが大きくなるほど、切離し期間に対する接続期間の割合が大きくなる。制御装置100は、フィルタ回路30(検出回路)が検出した電池ストリングSt1~St3の各々のストリング電圧(Vca,Vcb,Vcc)に基づいて、電池ストリングSt1~St3の各々に含まれるスイッチ回路SW(特に、SW13およびSW14)を制御することにより、電池ストリングSt1~St3から三相出力端子Tuvwへ三相交流電力を出力させるように構成される。
【0028】
上述の構成を有する電池ストリングSt1~St3の各々では、1つのストリングに含まれる複数の電池11が、電圧の印加/非印加を個別に切替え可能に構成される。こうした構成によれば、電池ストリングSt1~St3によって三相交流電力を生成しやすくなる。具体的には、線間電圧(ストリング間の電位差)によって三相交流電力を生成することができる。
【0029】
制御装置100は、例えばプロセッサとRAM(Random Access Memory)と記憶装置とを備えるコンピュータである。記憶装置に記憶されているプログラムをプロセッサが実行することで、各種の処理(例えば、後述する
図2に示す制御)が実行される。ただし、これらの各種処理は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。制御装置100は、スイープ制御を実行するための機能が実装されたFPGA(Field Programmable Gate Array)をさらに備えてもよい。
【0030】
図2は、この実施の形態に係る電源システム(電池ストリングSt1~St3を含む)による給電準備に係る処理を示すフローチャートである。フローチャート中の「S」は、ステップを意味する。このフローチャートに示される処理は、例えば制御装置100が起動すると、制御装置100によって実行される。制御装置100が停止状態であるときには、3相リレー41~43およびリレー22(中性線スイッチ)の各々がOFF状態(遮断状態)になっているため、処理開始時(スタート)においては3相リレー41~43およびリレー22の各々がOFF状態になっている。なお、処理開始条件は適宜変更可能である。例えば、制御装置100が、電力系統を管理するサーバから電力系統に関するエネルギーマネジメント要請を受けた場合に、その要請に応じて給電を実行するために、
図2に示す一連の処理を開始してもよい。
【0031】
図1とともに
図2を参照して、S11では、制御装置100が3相リレー41~43をON状態にする。これにより、リレー41,42,43の各々が導通状態になり、フィルタコンデンサ(コンデンサ34~36)がチャージされる。続けて、S12では、電池ストリングSt1~St3が三相出力端子Tuvwへ三相交流電力を出力するように、制御装置100が電池ストリングSt1~St3(詳しくは、各スイッチ回路SW内のSW13およびSW14)を制御する。S12の処理により、電池ストリングSt1~St3が有効化(イネーブルON)され、各電池ストリングにおいてスイッチング動作が開始される。また、三相出力端子Tuvwに三相交流電力が出力されることにより、コンデンサ21(中性線コンデンサ)に対するプリチャージが実行される。この際、制御装置100は、交流出力端子Tu,Tv,Twの各々の電流値(Ia,Ib,Ic)を0(ゼロ)Aに近づけるように電池ストリングSt1~St3を制御する(ゼロ電流制御)。Ia,Ib,Icがゼロになると、電池ストリングSt1~St3と電力系統との間で電流がやり取りされなくなる。
【0032】
図2中の波形D11、D12、D13は、それぞれ電池ストリングSt1、St2、St3の電圧の一例を示している。各波形が示すように、電池ストリングSt1~St3の各々の電圧は、オフセットを持った0V以上の電圧波形(電圧の向きが同じ波形)になる。これらのストリング電圧はフィルタ回路30を経て三相出力端子Tuvwに出力される。これにより、交流出力端子Tu,Tv間には線間電圧Vuv、交流出力端子Tw,Tuの間には線間電圧Vwu、交流出力端子Tv,Tw間には線間電圧Vvwが印加される。各線間電圧は、周期的に極性(正/負)が変わる交流電圧波形(電圧の向きが変わる波形)になる。
図2中の波形D21、D22、D23は、それぞれ線間電圧Vuv、Vwu、Vvwの一例を示している。
【0033】
続くS13では、コンデンサ21に対するプリチャージが完了したか否かを制御装置100が判断する。制御装置100は、プリチャージを開始してから所定時間が経過しない間はプリチャージが完了していないと判断し、プリチャージを開始してから上記所定時間が経過したときにプリチャージが完了したと判断してもよい。ただしこれに限られず、プリチャージが完了したか否かの判断手法は任意である。制御装置100は、Vcn(コンデンサ21の端子間電圧)が所定値未満である間はプリチャージが完了していないと判断し、Vcnが上記所定値以上になったときにプリチャージが完了したと判断してもよい。
【0034】
コンデンサ21に対するプリチャージが完了していないと判断された場合には(S13にてNO)、処理がS12に戻る。そして、S12の処理により、コンデンサ21に対するプリチャージが実行される。S12の処理によりコンデンサ21に対するプリチャージが完了すると(S13にてYES)、処理がS14に進む。S14では、制御装置100がリレー22をON状態(導通状態)にする。これにより、電源システム(電池ストリングSt1~St3を含む)が電力系統に対して給電を実行する準備(システム立ち上げ)が完了し、
図2に示す一連の処理は終了する。給電準備完了状態では、3相リレー41~43およびリレー22がいずれもON状態になっている。こうした状態において図示しない外部サーバから給電要求を受けた制御装置100は、フィルタ回路30によって検出されるVca,Vcb,Vccに基づいて、要求された三相交流電力が三相出力端子Tuvwへ出力されるように、電池ストリングSt1~St3(詳しくは、各スイッチ回路SW内のSW13およびSW14)を制御してもよい。例えば電力系統が停電状態になったときに、EMS(Energy Management System)が、電力系統の代わりに給電(例えば、電力負荷に対する給電)を行うことを制御装置100に要求するかもしれない。コンデンサ21のプリチャージ完了後に制御装置100に対して給電が要求されない場合には、制御装置100は、プリチャージ完了後(すなわち、
図2に示す一連の処理は終了した後)においても、三相出力端子Tuvwの電流値をゼロに近づけるように電池ストリングSt1~St3を制御してもよい。制御装置100に対して給電が要求されない間は、こうしたゼロ電流制御が継続されてもよい。
【0035】
図3は、この実施の形態に係る電源システムが給電準備(
図2)を行う第1動作例について、Va,Vb,Vc,Vca,Vcb,Vcc,Ia,Ib,Ic,Iu,Iv,Iwの各々の波形例を示すタイムチャートである。タイムチャート中の「t」はタイミングを意味する。
図3に示すVa,Vb,Vc(系統相電圧)およびVca,Vcb,Vcc(ストリング相電圧)の各々は、交流電圧50V、周波数60Hzの電圧波形である。t1、t2、t3は、それぞれ3相リレーON(S11)、イネーブルON(S12)、中性線スイッチON(S14)のタイミングに相当する。
【0036】
図3を参照して、t1で、電池ストリングSt1~St3と電力系統とが電気的に接続され、フィルタコンデンサ(コンデンサ34~36)がチャージされる。t2~t3の期間においては、前述したゼロ電流制御(
図2のS12)により、Ia,Ib,Ic(系統相電流)とIu,Iv,Iw(ストリング相電流)との各々が0Aに近づく。
【0037】
図4は、
図1に示した3相4線式の交流電源によって電力指令(負荷)1800W、交流電圧200V、周波数60Hzの条件で給電を行ったときの有効電力、無効電力、力率、および歪率の各々の波形例を示すタイムチャートである。
図4に示すように、有効電力および無効電力の各々の脈動は小さく、力率は1に近く、THD(全高調波歪)は0.8%よりも小さい。このように、この実施の形態に係る電源システムによれば、高い力率を達成することができる。
【0038】
図5は、この実施の形態に係る電源システムが給電準備(
図2)を行う第2動作例について、Vca,Vcb,Vcc,Iu,Iv,Iwの各々の波形例を示すタイムチャートである。また、
図6は、この実施の形態に係る電源システムが給電準備(
図2)を行う第2動作例について、Vcn,Inの各々の波形例を示すタイムチャートである。Vcn、Inは、それぞれコンデンサ21の端子間電圧、中性線NLを流れる電流である。これら各図は、
図1に示した構成を有する電源システムについて実験を行った結果を示す。各図において、t1(1.15s)、t2(2.15s)、t3(3.17s)は、それぞれ3相リレーON(S11)、イネーブルON(S12)、中性線スイッチON(S14)のタイミングに相当する。
【0039】
この実施例では、系統端子GT1,GT2,GT3に、電圧(線間電圧)200V、周波数60Hz、出力0kWの電力系統を接続した。制御装置100は、フィードバック制御(より特定的には、PI制御)により、ゼロ電流制御を行った。
【0040】
図5および
図6を参照して、制御系の影響(制御周期が遅いなど)により、t3までにIu,Iv,Iwが0Aに収束しなかった。ただし、制御装置100がt3後もゼロ電流制御を継続した結果、数秒後にI項(積分項)で補正されて電流値(Iu,Iv,Iw)がゼロに落ち着いた。t1でストリング相電流は「-15A」程度であった。中性線NLの突入電流は、ピーク値で「-16A」程度であった。プリチャージ期間(t2~t3)においては制限抵抗(電気抵抗素子23)により突入電流が抑制された。t3での突入電流は確認されなかった。
【0041】
以上説明したように、
図1に示した構成を有する電源システムによれば、本格的な給電を開始する前に、リレー22を遮断状態にすることで、電気抵抗素子23で突入電流を抑制しつつ、コンデンサ21のプリチャージを実行することが可能になる。そして、チャージされたコンデンサ21によって短絡電流が抑制される。このため、電池ストリングSt1~St3を用いた3相4線式の交流電源において短絡電流および突入電流を抑制することが可能になる。
【0042】
また、制御装置100は、
図2に示した各処理を実行する。制御装置100は、リレー41(第1相リレー)、リレー42(第2相リレー)、およびリレー43(第3相リレー)の各々が導通状態であり、かつ、リレー22(中性線スイッチ)が遮断状態であるときに電池ストリングSt1~St3(第1~第3電池ストリング)から三相出力端子Tuvwへ三相交流電力を出力させることによりコンデンサ21(中性線コンデンサ)に対するプリチャージを実行する(S12)。そして、コンデンサ21に対するプリチャージが完了した後に、制御装置100は、リレー22を導通状態にする(S14)。こうした構成によれば、コンデンサ21に対するプリチャージを適切に行いやすくなる。また、制御装置100は、コンデンサ21に対するプリチャージの実行中に三相出力端子Tuvwの電流値をゼロに近づけるように電池ストリングSt1~St3を制御する(S12)。こうした構成によれば、プリチャージ実行中の突入電流を抑制しながら、給電のための準備を適切に行いやすくなる。
【0043】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
10 電池回路、11 電池、13 第1スイッチ、14 第2スイッチ、21 コンデンサ、22 リレー、23 電気抵抗素子、30 フィルタ回路、31,32,33,37,38,39 インダクタ、34,35,36 コンデンサ、41,42,43 リレー、50 トランス、51,52,53,54,55,56 コイル、100 制御装置、GT1,GT2,GT3 系統端子、N1,N2,N3 中性点、NL 中性線、OT1,OT2 直流出力端子、SW スイッチ回路、St1,St2,St3 電池ストリング、Tu,Tv,Tw 交流出力端子。