(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112512
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】偏光フィルムの製造方法及び偏光フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240814BHJP
B29C 55/12 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G02B5/30
B29C55/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017579
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢一
【テーマコード(参考)】
2H149
4F210
【Fターム(参考)】
2H149AA21
2H149AB26
2H149BA02
2H149BA13
2H149BB02
2H149BB14
2H149FA03W
2H149FB05
4F210AA19
4F210AC03
4F210AG01
4F210AH73
4F210AJ08
4F210QA10
4F210QC06
4F210QD01
4F210QD07
4F210QD25
4F210QG01
4F210QG11
4F210QG18
4F210QW36
(57)【要約】
【課題】偏光フィルムを容易に製造することができる。
【解決手段】偏光フィルムの製造方法は、可撓性の原料フィルム11aを延伸させることにより偏光フィルムを製造する方法であって、原料フィルム11aの平面部111の面方向に沿う第1方向Xにおいて平面部111を延伸させる第1延伸工程と、第1方向Xにおいて間隔をあけて交互に配置され、平面部111をそれぞれ保持する第1治具21と第2治具22とを、面方向に沿う方向であり、且つ第1方向Xに交差する第2方向Yにおいて互いに反対方向に移動させることにより平面部111を延伸させる第2延伸工程とを備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の原料フィルムを延伸させることにより偏光フィルムを製造する方法であって、
前記原料フィルムの平面部の面方向に沿う第1方向において前記平面部を延伸させる第1延伸工程と、
前記第1方向において間隔をあけて交互に配置される第1治具と第2治具とにより前記平面部をそれぞれ保持しつつ、前記面方向に沿う方向であり、且つ前記第1方向に交差する第2方向において互いに反対方向に移動させることにより、前記平面部を延伸させる第2延伸工程と、を備える、
偏光フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1延伸工程に先立ち、ロール巻きされた前記原料フィルムの原反から前記原料フィルムを引き出すことで前記平面部を供給する供給工程を更に備える、
請求項1に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第1治具及び前記第2治具は、前記第2方向に延在するとともに前記平面部を厚み方向においてそれぞれ挟持する挟持具である、
請求項1に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項4】
複数の前記第1治具が、前記第1方向において等間隔にて配置され、
複数の前記第2治具が、前記第1方向において等間隔にて配置され、
前記第2治具は、前記第1方向において隣り合う2つの前記第1治具からの距離が等しい位置に配置される、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第2延伸工程において、前記第1治具の各々と、前記第2治具の各々とを、前記第2方向において等しい距離移動させて前記平面部を延伸させる、
請求項4に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項6】
ヨウ素溶液により染色されたポリビニルアルコール製のフィルム本体と、前記フィルム本体を挟んだ状態で固定される一対の固定フィルムと、を有する偏光フィルムであって、
前記フィルム本体の厚み方向に直交する方向を第1方向とし、前記厚み方向及び前記第1方向の双方に直交する方向を第2方向とするとき、
前記フィルム本体は、前記第1方向において互いに隣接して交互に形成された第1領域及び第2領域を有し、
前記第1領域と前記第2領域とは、平滑に連なっており、
前記第1領域は、前記第1方向及び前記第2方向の双方に対して傾いている第1偏光軸を有し、
前記第2領域は、前記第1方向及び前記第2方向の双方に対して傾いており、且つ前記第1偏光軸とは反対側に傾いている第2偏光軸を有する、
偏光フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルムの製造方法及び偏光フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、調光装置が開示されている。特許文献1に開示の調光装置は、対向して配置される2枚の面状材を備える。面状材は、互いに隣接する複数の単位偏光領域を有する。面状材は、透明基材と、透明基材に貼り付けられ、単位偏光領域を構成する偏光子とを有する。互いに隣接する単位偏光領域の偏光軸は、互いに異なっている。上記調光装置においては、一方の面状材に対して他方の面状材がスライドされると、一方の面状材の単位偏光領域に対する他方の面状材の単位偏光領域の重なり状態が、互いの偏光軸を同一とする状態から、互いの偏光軸を異ならせる状態まで変化する。これにより、調光装置の透光性を変化させることができる。
【0003】
また、特許文献2には、調光装置が開示されている。特許文献2に開示の調光装置は、対向して配置される2枚の偏光フィルムを備える。偏光フィルムは、当該偏光フィルムの原料としての透過性を有する膜体の互いに異なる部分の面同士を重ね合わせた状態で、当該膜体に対し延伸処理を施すことで形成されている。上記延伸処理により、偏光フィルムの互いに隣り合う部分のうちの1つの偏光軸の方向と、別の1つの偏光軸の方向とが異なるものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-310567号公報
【特許文献2】特開2015-138077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の面状材(以下、偏光フィルム)の場合、製造に際して、互いに隣接する単位偏光領域の偏光軸が互いに異なるように、透明基材に対して偏光子を貼り付ける工程が必要となる。このため、偏光フィルムの製造工程が煩雑になる。
【0006】
特許文献2に開示の偏光フィルムの場合、製造に際して、膜体の互いに異なる部分の面同士を重ね合わせる工程が必要となる。これにより、偏光フィルムの互いに隣り合う部分の境界に折り皺が生じる。すなわち、偏光フィルムの互いに隣り合う部分が平滑に連ならない。その結果、折り皺に起因して偏光フィルムの光学特性が損なわれるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための偏光フィルムの製造方法及び偏光フィルムの各態様を記載する。
[態様1]
可撓性の原料フィルムを延伸させることにより偏光フィルムを製造する方法であって、前記原料フィルムの平面部の面方向に沿う第1方向において前記平面部を延伸させる第1延伸工程と、前記第1方向において間隔をあけて交互に配置される第1治具と第2治具とにより前記平面部をそれぞれ保持しつつ、前記面方向に沿う方向であり、且つ前記第1方向に交差する第2方向において互いに反対方向に移動させることにより、前記平面部を延伸させる第2延伸工程と、を備える、偏光フィルムの製造方法。
【0008】
同構成によれば、第1延伸工程において、原料フィルムの平面部を第1方向に延伸させることで平面部に第1方向に沿った偏光軸が形成される。続いて、第2延伸工程において、第1方向において間隔をあけて交互に配置される第1治具と第2治具とにより平面部をそれぞれ保持しつつ、第2方向において互いに反対方向に移動させることにより平面部を延伸させる。これにより、平面部のうち第1治具と第2治具とにより挟まれた領域であって第1方向において隣り合う2つの領域の偏光軸が互いに反対側に傾けられる。その結果、第1方向において互いに隣接して交互に形成され、平滑に連なった第1領域及び第2領域を有し、第1領域の偏光軸と第2領域の偏光軸とが互いに反対側に傾いている偏光フィルムを得ることができる。このように、従来の製造工程である第1延伸工程に第2延伸工程を加えるだけで上記偏光フィルムを得ることができる。したがって、偏光フィルムを容易に製造することができる。
【0009】
[態様2]
前記第1延伸工程に先立ち、ロール巻きされた前記原料フィルムの原反から前記原料フィルムを引き出すことで前記平面部を供給する供給工程を更に備える、態様1に記載の偏光フィルムの製造方法。
【0010】
同構成によれば、ロール巻きされた原料フィルムの原反を裁断することなく偏光フィルムを製造することができる。このため、偏光フィルムをロール状に巻き取ることが可能となる。したがって、ロール巻きされた偏光フィルムを得ることができる。
【0011】
[態様3]
前記第1治具及び前記第2治具は、前記第2方向に延在するとともに前記平面部を厚み方向においてそれぞれ挟持する挟持具である、態様1または態様2に記載の偏光フィルムの製造方法。
【0012】
同構成によれば、第1治具及び第2治具により原料フィルムの平面部がそれぞれ厚み方向に挟持した状態で、第1治具と第2治具とを互いに反対方向に移動させることにより平面部が延伸される。これにより、平面部のうち第1治具と第2治具とにより挟まれた領域であって第1方向において隣り合う2つの領域の偏光軸を互いに反対側に傾けることを容易且つ精度よく行うことができる。
【0013】
[態様4]
複数の前記第1挟持部が、前記第1方向において等間隔にて配置され、複数の前記第2挟持部が、前記第1方向において等間隔にて配置され、前記第2挟持部は、前記第1方向において隣り合う2つの前記第1挟持部からの距離が等しい位置に配置される、態様1から態様3のいずれか1つに記載の偏光フィルムの製造方法。
【0014】
同構成によれば、第1方向における第1領域及び第2領域の長さが等しい偏光フィルムを得ることができる。
[態様5]
前記第2延伸工程において、前記第1治具の各々と、前記第2治具の各々とを、前記第2方向において等しい距離移動させて前記平面部を延伸させる、態様4に記載の偏光フィルムの製造方法。
【0015】
同構成によれば、第1方向に対する第1領域の偏光軸の傾きと第2領域の偏光軸の傾きとを等しくすることができる。
[態様6]
ヨウ素溶液により染色されたポリビニルアルコール製のフィルム本体と、前記フィルム本体を挟んだ状態で固定される一対の固定フィルムと、を有する偏光フィルムであって、前記フィルム本体の厚み方向に直交する方向を第1方向とし、前記厚み方向及び前記第1方向の双方に直交する方向を第2方向とするとき、前記フィルム本体は、前記第1方向において互いに隣接して交互に形成された第1領域及び第2領域を有し、前記第1領域と前記第2領域とは、平滑に連なっており、前記第1領域は、前記第1方向及び前記第2方向の双方に対して傾いている第1偏光軸を有し、前記第2領域は、前記第1方向及び前記第2方向の双方に対して傾いており、且つ前記第1偏光軸とは反対側に傾いている第2偏光軸を有する、偏光フィルム。
【0016】
同構成によれば、延伸工程により形成される偏光フィルムでありながら、第1領域と第2領域との境界に折り皺がない。したがって、簡単な構成を備えながらも、折り皺に起因して光学特性が損なわれることを回避できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る偏光フィルムの製造方法によれば、偏光フィルムを容易に製造することができる。また、本発明に係る偏光フィルムによれば、簡単な構成を備えながらも、折り皺に起因して光学特性が損なわれることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、一実施形態の偏光フィルムを示す平面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の調光装置の透過状態を示す図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の調光装置の遮断状態を示す図である。
【
図5】
図5は、一実施形態の偏光フィルムの製造手順を示すフロー図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、一実施形態の偏光フィルムの第1延伸工程の前後の状態を示す図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、一実施形態の偏光フィルムの第2延伸工程の前後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1~
図7を参照して、一実施形態の偏光フィルム10及びその製造方法について説明する。
まず、
図1及び
図2を参照して、偏光フィルム10の構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の偏光フィルム10は、平面視長方形状である。
図2に示すように、偏光フィルム10は、ヨウ素溶液により染色されたポリビニルアルコール製のフィルム本体11と、フィルム本体11を挟んだ状態で固定される一対の固定フィルム12とを有する。
【0021】
固定フィルム12は、例えばトリアセチルセルロース製のフィルム、所謂TACフィルムであることが好ましい。
以降において、フィルム本体11の厚み方向を単に厚み方向Zとし、厚み方向Zに直交する方向を第1方向Xとし、厚み方向Z及び第1方向Xの双方に直交する方向を第2方向Yとする。
【0022】
図1に示すように、本実施形態では、偏光フィルム10の長辺方向(
図1の左右方向)が第1方向Xに一致し、偏光フィルム10の短辺方向(
図1の上下方向)が第2方向Yに一致する。
【0023】
フィルム本体11は、第1方向Xにおいて互いに隣接して交互に形成された第1領域A1及び第2領域A2を有する。第1領域A1と第2領域A2とは、平滑に連なっている。第1領域A1と第2領域A2との境界には折り皺がない。
【0024】
第1領域A1及び第2領域A2は、第2方向Yにおいて偏光フィルム10の全体にわたって形成されている。
本実施形態では、第1方向Xにおける第1領域A1の長さLと、第1方向Xにおける第2領域A2の長さLとが等しい。したがって、第1領域A1及び第2領域A2は、同一の形状及び大きさを有する平面視長方形状の領域である。
【0025】
第1領域A1は、第1方向X及び第2方向Yの双方に対して傾いている第1偏光軸pa1を有する。第2領域A2は、第1方向X及び第2方向Yの双方に対して傾いており、且つ第1偏光軸pa1とは反対側に傾いている第2偏光軸pa2を有する。
【0026】
第1方向Xに延在する仮想軸線Vに対する第1偏光軸pa1の傾き角度αは、45度である。仮想軸線Vに対する第2偏光軸pa2の傾き角度βは、-45度である。したがって、第1偏光軸pa1と第2偏光軸pa2とは直交する。
【0027】
図3及び
図4に示すように、調光装置は、互いに重なり合って配置された2枚の偏光フィルム10を備える。
図3及び
図4において、手前側に配置される偏光フィルム10を「偏光フィルム10A」とし、奥側に配置される偏光フィルム10を「偏光フィルム10B」として説明する。
【0028】
図3に、偏光フィルム10Aの第1領域A1と、偏光フィルム10Bの第1領域A1とが重なり合うとともに、偏光フィルム10Aの第2領域A2と、偏光フィルム10Bの第2領域A2とが重なり合った状態を示す。なお、
図3では、2枚の偏光フィルム10A,10Bが重なり合っていることを表現するために、2枚の偏光フィルム10A,10Bを第1方向Xにおいて僅かにずらしている。
【0029】
調光装置の外部から偏光フィルム10Aに入射した光は、偏光フィルム10Aの第1領域A1を透過する際に、第1偏光軸pa1に沿う方向に直線偏光した光となり、偏光フィルム10Bを透過する際に、第2偏光軸pa2に沿う方向に直線偏光した光となる。
【0030】
図3に示す状態においては、調光装置の外部から偏光フィルム10Aに入射した光のうち、偏光フィルム10Aを透過したものは、全て偏光フィルム10Bを透過する。
図4に、偏光フィルム10Aの第1領域A1と、偏光フィルム10Bの第2領域A2とが対向するとともに、偏光フィルム10Aの第2領域A2と、偏光フィルム10Bの第1領域A1とが重なり合っている状態を示す。この状態においては、第1偏光軸pa1と第2偏光軸pa2とが直交するため、偏光フィルム10Aを透過した光の全てが、偏光フィルム10Bによって遮断される。
【0031】
次に、
図5~
図7を参照して、偏光フィルム10の製造方法について説明する。
図5に示すように、偏光フィルム10の製造工程は、供給工程、染色工程、第1延伸工程、第2延伸工程、ラミネート工程、及び巻き取り工程を備える。
【0032】
まず、供給工程では、ロール巻きされた原料フィルム11aの原反から、搬送装置の送りローラによって原料フィルム11aを引き出すことで平面部111を供給する。原料フィルム11aは、ポリビニルアルコール製のフィルムであり、可撓性を有する。
【0033】
本実施形態では、搬送装置による原料フィルム11aの搬送方向が、第1方向Xに一致し、原料フィルム11aの幅方向が、第2方向Yに一致する。したがって、第1方向Xは、平面部111の面方向に沿う方向であり、第2方向Yは、平面部111の面方向に沿う方向であり、且つ第1方向Xに直交する方向である。
【0034】
次に、染色工程では、引き出された原料フィルム11aにヨウ素溶液を含浸させることで染色を行う。これにより、原料フィルム11aを構成するポリビニルアルコールの分子の鎖状部分にヨウ素イオンが化学結合する。なお、染色工程の前後において、水洗工程を行うことが好ましい。また、染色工程を複数回行うことが好ましい。この場合、染色工程間において水洗工程を行うことが好ましい。
【0035】
次に、第1延伸工程では、第1方向X、すなわち原料フィルム11aの搬送方向において平面部111を延伸させる(
図6(a)、
図6(b)参照)。第1延伸工程では、平面部111を2~6倍の倍率m1にて延伸させることが好ましい。これにより、原料フィルム11aには、第1方向Xに沿った偏光軸pa0が形成される。
【0036】
次に、第2延伸工程では、第1治具21と第2治具22を、第1方向Xにおいて間隔をあけて交互に配置する。そして、第1治具21と第2治具22により、平面部111をそれぞれ保持しつつ、第2方向Yにおいて互いに反対方向に移動させることにより、平面部111を延伸させる。
【0037】
本実施形態の第1治具21及び第2治具22は、第2方向Yに延在するとともに平面部111を厚み方向Zにおいてそれぞれ挟持する挟持具である(
図7(a)参照)。複数の第1治具21が、第1方向Xにおいて等間隔にて配置される。また、複数の第2治具22が、第1方向Xにおいて等間隔にて配置される。第2治具22は、第1方向Xにおいて隣り合う2つの第1治具21からの距離が等しい位置に配置される。第1治具21の各々と、第2治具22の各々とを、第2方向Yにおいて等しい距離移動させて原料フィルム11aを延伸させる(
図7(b)参照)。第1延伸工程における倍率m1に対し、√2を乗算した倍率にて平面部111を延伸させることが好ましい。これにより、平面部111のうち治具21(22)を介して互いに隣り合う2つの領域の一方には、第1方向Xに対して45度傾いた第1偏光軸pa1が形成され、他方には、第1方向Xに対して-45度傾いた第2偏光軸pa2が形成される。なお、第2延伸工程を行った後、平面部111から治具21,22を取り外す。そして、平面部111のうち第2方向Yの両側に形成された余剰部112をトリミングする。
【0038】
次に、ライミネート工程では、平面部111の両面に固定フィルム12を貼り合わせる。平面部111の両面に固定フィルム12を固定することで、フィルム本体11の収縮変形、すなわち偏光軸pa1,pa2の変形が阻止される。
【0039】
最後に、巻き取り工程において、平面部111を巻き取ることにより、ロール巻きされた偏光フィルム10を得る。
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0040】
第1延伸工程において、原料フィルム11aの平面部111を第1方向Xに延伸させることで平面部111に第1方向Xに沿った偏光軸pa0が形成される。続いて、第2延伸工程において、第1方向Xにおいて間隔をあけて交互に配置される第1治具21と第2治具22とにより平面部111をそれぞれ保持しつつ、第2方向Yにおいて互いに反対方向に移動させることにより、平面部111を延伸させる。これにより、平面部111のうち第1治具21と第2治具22とにより挟まれた領域であって第1方向Xにおいて隣り合う2つの領域A1,A2の偏光軸pa1,pa2が互いに反対側に傾けられる。その結果、第1方向Xにおいて互いに隣接して交互に形成され、平滑に連なった第1領域A1及び第2領域A2を有し、第1領域A1の偏光軸pa1と第2領域A2の偏光軸pa2とが互いに反対側に傾いている偏光フィルム10を得ることができる。
【0041】
次に、本実施形態の作用について説明する。
(1)偏光フィルム10の製造方法は、第1延伸工程と第2延伸工程とを備える。
こうした構成によれば、上述した作用を奏するため、従来の製造工程である第1延伸工程に第2延伸工程を加えるだけで偏光フィルム10を得ることができる。したがって、偏光フィルム10を容易に製造することができる。
【0042】
(2)偏光フィルム10の製造方法は、第1延伸工程に先立ち、ロール巻きされた原料フィルム11aの原反から原料フィルム11aを引き出すことで平面部111を供給する供給工程を更に備える。
【0043】
こうした構成によれば、ロール巻きされた原料フィルム11aの原反を裁断することなく偏光フィルム10を製造することができる。このため、偏光フィルム10をロール状に巻き取ることが可能となる。したがって、ロール巻きされた偏光フィルム10を得ることができる。
【0044】
(3)第1治具21及び第2治具22は、第2方向Yに延在するとともに平面部111を厚み方向Zにおいてそれぞれ挟持する挟持具である。
こうした構成によれば、第1治具21及び第2治具22により原料フィルム11aの平面部111がそれぞれ厚み方向Zに挟持した状態で、第1治具21と第2治具22とを互いに反対方向に移動させることにより平面部111が延伸される。これにより、平面部111のうち第1治具21と第2治具22とにより挟まれた領域であって第1方向Xにおいて隣り合う2つの領域A1,A2の偏光軸pa1,pa2を互いに反対側に傾けることを容易且つ精度よく行うことができる。
【0045】
(4)複数の第1治具21が、第1方向Xにおいて等間隔にて配置される。複数の第2治具22が、第1方向Xにおいて等間隔にて配置される。第2治具22は、第1方向Xにおいて隣り合う2つの第1治具21からの距離が等しい位置に配置される。
【0046】
こうした構成によれば、第1方向Xにおける第1領域A1及び第2領域A2の長さLが等しい偏光フィルム10を得ることができる。
(5)第2延伸工程は、第1治具21の各々と、第2治具22の各々とを、第2方向Yにおいて等しい距離移動させて平面部111を延伸させる。このため、第1方向Xに対する第1偏光軸pa1の傾きと第2偏光軸pa2の傾きとを等しくすることができる。
【0047】
(6)偏光フィルム10は、フィルム本体11と、一対の固定フィルム12とを有する。フィルム本体11は、第1領域A1及び第2領域A2を有する。第1領域A1と第2領域A2とは、平滑に連なっている。第1領域A1は、第1方向X及び第2方向Yの双方に対して傾いている第1偏光軸pa1を有する。第2領域A2は、第1方向X及び第2方向Yの双方に対して傾いており、且つ第1偏光軸pa1とは反対側に傾いている第2偏光軸pa2を有する。
【0048】
こうした構成によれば、延伸工程により形成される偏光フィルム10でありながら、第1領域A1と第2領域A2との境界に折り皺がない。したがって、簡単な構成を備えながらも、折り皺に起因して光学特性が損なわれることを回避できる。
【0049】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0050】
・固定フィルム12は、トリアセチルセルロース製のフィルム、所謂TACフィルムに限定されず、TAC代替材料として周知のフィルムを採用することもできる。
・第2延伸工程において、第1治具21の各々と、第2治具22の各々とを、第2方向Yにおいて互いに異なる距離移動させて平面部111を延伸させるようにしてもよい。すなわち、第1偏光軸pa1の傾き角度αの全体値と、第2偏光軸pa2の傾き角度βの絶対値とを異ならせてもよい。
【0051】
・複数の第1治具21が、第1方向Xにおいて不等間隔にて配置されていてもよい。また、複数の第2治具22が、第1方向Xにおいて不等間隔にて配置されていてもよい。すなわち、第1方向Xにおける第1領域A1の長さと、第1方向Xにおける第2領域A2の長さとを異ならせてもよい。
【0052】
・第1治具21及び第2治具22は、上記実施形態において例示した挟持具に限定されず、例えば第2方向Yに間隔をあけて配置され、平面部111に突き刺される複数の針部を有するものであってもよい。
【0053】
・枚葉状に裁断された状態の原料フィルム11aに対して、第1延伸工程及び第2延伸工程を行うようにしてもよい。
・第2延伸工程は、第1治具21と第2治具22とにより、原料フィルム11aの平面部111を、第2方向Yにおいて互いに反対方向に移動させることにより、平面部111を延伸させるものであればよい。第2方向Yは、平面部111の面方向に沿う方向であり、且つ第1方向Xに交差する方向であればよく、第1方向Xに直交する方向でなくてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10,10A,10B…偏光フィルム
11…フィルム本体
11a…原料フィルム
111…平面部
112…余剰部
12…固定フィルム
21…第1治具
22…第2治具
A1…第1領域
A2…第2領域
pa1…第1偏光軸
pa2…第2偏光軸
X…第1方向
Y…第2方向
Z…厚み方向