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特開2024-112513金属板のプレス成形品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112513
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】金属板のプレス成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/20 20060101AFI20240814BHJP
   B21D 22/26 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B21D22/20 Z
B21D22/26 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017582
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】宅見 優輝
(72)【発明者】
【氏名】山本 求
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA10
4E137AA11
4E137BA01
4E137BB01
4E137CA02
4E137CA09
4E137CA24
4E137CA26
4E137EA07
4E137GA01
4E137GB02
(57)【要約】
【課題】大開口と所定の立体形状とを併せ持つ金属板のプレス成形品を精度良くかつ効率良く量産可能とする。
【解決手段】板幅方向の一端1aが拘束され、板幅方向の他端1bが拘束されていないプレス成形品1(を構成する金属板)にプレス加工を施すことにより、板幅方向に延びた切り残し2により区分される二つの開口3,4を一端1aと他端1bとの間に形成すると共に、切り残し2よりも一端1a側の被成形部6を所定形状に成形する打ち抜き成形工程を有するプレス成形品の製造方法である。上記金属板のうち切り残し2の形成予定部2’に、被成形部6を所定形状に成形するのに伴って切り残し2を板幅方向の途中部分で分断する薄肉部7を形成してから上記打ち抜き成形工程を実施する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板幅方向の一端を拘束すると共に板幅方向の他端を拘束しない状態で施されるプレス加工により、板幅方向に延びた切り残しにより区分される複数の開口が前記一端と前記他端との間に形成されると共に、前記切り残しよりも前記一端側の被成形部が所定形状に成形される金属板のプレス成形品であって、
前記切り残しの形成予定部に設けられた薄肉部を有し、前記被成形部が所定形状に成形されるのに伴って前記薄肉部が裂けることを特徴とする金属板のプレス成形品。
【請求項2】
板幅方向の一端が拘束され、板幅方向の他端が拘束されていない金属板にプレス加工を施すことにより、板幅方向に延びた切り残しにより区分される複数の開口を前記一端と前記他端との間に形成すると共に、前記切り残しよりも前記一端側の被成形部を所定形状に成形する打ち抜き成形工程を有し、
前記金属板のうち前記切り残しの形成予定部に、前記被成形部を所定形状に成形するのに伴って前記切り残しを板幅方向の途中部分で分断するための薄肉部を形成してから前記打ち抜き成形工程を実施することを特徴とする金属板のプレス成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板のプレス成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の車体の側壁は、平板状の金属板(ブランク材)にプレス加工を施すことによって製品形状に仕上げられた、いわゆるプレス成形品とされるのが一般的である(特許文献1)。プレス加工時に使用されるプレス金型は、1サイクル動作中に、成形、切断及び切り抜き(トリミング)等の作業を一つ、あるいは二つ以上実施可能な構成を備えている。
【0003】
プレス金型に設けたトリム刃で金属板(ブランク材、あるいはプレス成形品を構成する金属板。「金属板」と言う場合、以下同様。)の一部をトリミングするのに伴って生じるスクラップは、プレス金型(の下型)に設けられたスクラップ通路を介してプレス金型の外側に排出される。但し、プレス金型の強度等を考慮すると、スクラップ通路の通路断面積(開口面積)を際限なく大きくすることはできないことから、一度のトリミングで形成できる開口の大きさには限度がある。そのため、金属板に大開口を形成する必要がある場合には、トリミングを複数回(一般的には二回)に分けて実施し、トリミング毎に生じるスクラップのサイズを小さくするという対策が採られる。
【0004】
金属板に大開口を形成すべく、トリミングを二回に分けて実施する場合の加工手順の一例を図5に基づいて簡単に説明する。まず、図5の左図に示すように、金属板100に形成すべき大開口101を区分(ここでは二分割)する直線状の切り残し102を設けるようにして、切り残し102を挟む両側に小開口103,104を形成する(一次トリミング)。その後、図5の右図に示すように、上記切り残し102を完全に切り抜く(二次トリミング)。これにより、切り残し102によって区分されていた2つの小開口103,104が繋がり、大開口101が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-101254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属板100に大開口101を形成するために実施する上記二回のトリミングのうち一回目のトリミング(一次トリミング)と、所定の成形加工とがプレス金型の1サイクル動作中に実施される場合がある。この切り抜き成形工程においては、プレス金型に対して金属板100の一部が位置ズレし、所定形状のプレス成形品を得ることができない場合があることが判明した。その詳細を図6に基づいて説明する。
【0007】
図6は、図5の左図に示す一次トリミング済の中間成形品を得るための切り抜き成形工程の実施態様を、図5の左図のX-X線矢視断面で見たときの概略図である。この切り抜き成形工程では、図6に示すように、金属板100のうち板幅方向の一端100aを下型110及び第1上型111で拘束すると共に板幅方向の他端100bを拘束していない状態で、下記の加工が金属板100に施される。
・金属板100の一端100aと他端100bとの間で板幅方向に延びる直線状の切り残し102(図5参照)により区分される複数(二つ)の開口103,104を形成する、第2上型112に設けたトリム刃113によるトリミング加工。
・上記一端100aと上記切り残し102との間に設けた被成形部105を第2上型112に設けた型部112aで所定形状に成形する成形加工。
【0008】
上記態様で被成形部105を所定形状に成形する際には、金属板100の他端100b(のうち特に切り残し102に隣接する部分)を一端100a側に変位させるような板幅方向の引張力(図6の下側の図中に示す黒塗り矢印を参照)が切り残し102(の形成予定部)に作用する。この場合、下記のような問題が生じ易くなる。
(1)金属板100の他端100bのうち切り残し102に隣接する部分が所定位置よりも一端100a側に変位する結果、金属板100の他端100bに望外の変形が生じ、二次トリミング時に切り残し102を精度良く切り抜くことが難しくなる。
(2)小開口103,104形成用のトリム刃113に金属板100が食い付き、金属板100(成形品)とトリム刃113をスムーズに分離することが難しくなる、
などといった問題が生じ易い。
【0009】
例えば、小開口103,104形成用のトリム刃113の動作タイミングを調整する、あるいは上記の位置ズレを見越して切り残し102を切り抜くトリム刃(二次トリミング用のトリム刃)の形状や位置を調整する等の対策を講じれば、上記(1)の問題発生を回避できると考えられるが、これらの調整作業は煩雑で多大な手間を要する。一方、例えば、第2上型112に出没自在の突き出しピンを設け、トリミング後に突き出しピンを金属板100(成形品)に突き当てることにより成形品を強制的に分離するようにすれば、上記(2)の問題発生を回避することができる。しかしながら、突き出し機構を追加的に設けることによる設備コストの増大や、突き出しピンが成形品に突き当たることによる不良発生等が懸念されることから、安易に採用することができない。
【0010】
係る実情に鑑み、本発明の主な目的は、トリミングを二回に分けて実施することで得られる大開口を有する所定形状の金属板のプレス成形品を精度良くかつ効率良く量産可能とするための技術手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明では、板幅方向の一端を拘束すると共に板幅方向の他端を拘束しない状態で施されるプレス加工により、板幅方向に延びた切り残しにより区分される複数の開口が上記一端と上記他端との間に形成されると共に、上記切り残しよりも上記一端側の被成形部が所定形状に成形される金属板のプレス成形品であって、上記切り残しの形成予定部に設けられた薄肉部を有し、上記被成形部が所定形状に成形されるのに伴って上記薄肉部が裂けることを特徴とする金属板のプレス成形品、を提供する。
【0012】
上記の構成を有する本発明に係る金属板のプレス成形品を、その板幅方向に延びる切り残しにより区分される複数の開口を板幅方向の一端(プレス金型による被拘束部)と他端(非拘束部)との間に形成すると共に、上記切り残しよりも上記一端側に設けた被成形部を所定形状に成形するためのプレス加工に供すると、上記切り残しの形成予定部に設けた薄肉部が裂けることにより、上記切り残し(の形成予定部)が板幅方向の途中部分で二分割される。この場合、被成形部の成形中に切り残しを介しての一端側と他端側間での応力伝達ができなくなるので、切り残しを介して他端側が一端側に引っ張られることに由来する上記(1)(2)の問題発生を回避することができる。そのため、上記(1)(2)の問題発生を回避するための、前述したような手間及びコストのかかる対策を講じずとも、大開口と所定の立体形状とを併せ持つ金属板のプレス成形品を精度良くかつ効率良く量産することができる。
【0013】
また、上記の目的を達成するため、板幅方向の一端が拘束され、板幅方向の他端が拘束されていない金属板にプレス加工を施すことにより、板幅方向に延びた切り残しにより区分される複数の開口を上記一端と他端との間に形成すると共に、上記切り残しよりも上記一端側の被成形部を所定形状に成形する打ち抜き成形工程を有し、
上記金属板のうち上記切り残しの形成予定部に、上記被成形部を所定形状に成形するのに伴って上記切り残しを板幅方向の途中部分で分断するための薄肉部を形成してから上記打ち抜き成形工程を実施することを特徴とする金属板のプレス成形品の製造方法を提供する。
【0014】
上記の製造方法によっても、上述した本発明に係る金属板のプレス成形品と同様の作用効果を享受することができる。
【0015】
上記の薄肉部は、例えばコイニング加工によって形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上より、本発明によれば、トリミングを二回に分けて実施することで得られる大開口と、所定の立体形状とを併せ持つ金属板のプレス成形品を精度良くかつ効率良く量産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るプレス成形品の成形手順を説明するための部分概略平面図であり、(a)図は一次中間成形品の部分概略平面図、(b)図は二次中間成形品の部分概略平面図、(c)図は三次中間成形品の部分概略平面図である。
図2図1(b)に示す二次中間成形品を得るための切り抜き成形工程の初期段階を示す概略断面図であって、(a)図は、上記切り抜き成形工程で使用するプレス金型を図1(a)中のA-A断面で見た図、(b)図は、上記プレス金型を図1(a)中のB-B断面で見た図である。
図3図1(b)に示す二次中間成形品を得るための切り抜き成形工程の途中段階を示す概略断面図であって、(a)図は、上記切り抜き成形工程で使用するプレス金型を図1(a)中のA-A断面で見た図、(b)図は、上記プレス金型を図1(a)中のB-B断面で見た図である。
図4図1(b)に示す二次中間成形品を得るための切り抜き成形工程の最終段階を示す概略断面図であって、(a)図は、上記切り抜き成形工程で使用するプレス金型を図1(a)中のA-A断面で見た図、(b)図は、上記プレス金型を図1(a)中のB-B断面で見た図である。
図5】プレス加工によって金属板に大開口を形成すべく、トリミングを二回に分けて実施する場合の加工手順の一例を説明するための概略図である。
図6】金属板に大開口を形成するために実施する二回のトリミングのうち一回目の一次トリミングを実施するのと同時に所定の成形加工を実施する切り抜き成形工程の実施態様の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面(図1図4)に基づいて説明する。
【0019】
図1(a)~(c)は、本発明に係る金属板のプレス成形品の製造方法を実施する過程で得られるプレス成形品1の部分概略平面図であり、図1(a)~(c)のそれぞれに示すプレス成形品1は、平板状をなした金属板としての鋼板(ブランク材)にプレス加工を施す第1プレス工程で得られる一次中間成形品1A、一次中間成形品1Aにプレス加工を施す第2プレス工程で得られる二次中間成形品1B、及び二次中間成形品1Bにプレス加工を施す第3プレス工程で得られる三次中間成形品1Cである。
【0020】
本実施形態では、自動車の車体の側壁(サイドメンバ)を構成するプレス成形品1に設けるべきドア開口やガラス開口等に代表される複数の開口部のうち、自動車の前後方向にスライド移動するスライドドアの支持部材が挿入される長孔5と、所定の立体形状とを併せ持つプレス成形品1としての三次中間成形品1C[図1(c)参照]を製造するに際して本発明を適用している。つまり、長孔5は、一度のトリミングでは形成することが難しい長寸の開口寸法を有している。なお、図1の紙面左右方向及び上下方向は、それぞれ、自動車の前後方向及び高さ方向に対応するものとする。また、自動車の高さ方向でもある図1の紙面上下方向が本発明で言う「板幅方向」に対応する。
【0021】
図1(a)に示す一次中間成形品1Aは、図2(a)中の拡大図に示すように、他所よりも板厚が小さい薄肉部7を有する。この薄肉部7は、図1(b)に示す二次中間成形品1Bに設けられる切り残し2の形成予定部2’に設けられており、例えば、平板状の鋼板(ブランク材)を図2(a)(b)に示すような所定の立体形状(一次中間成形品1A)にプレス成形する際に形成される。薄肉部7の形成方法は特に問わないが、一次中間成形品1Aの成形と同時に実施できる加工法、例えばコイニング加工によって薄肉部7を形成することができる。本実施形態の薄肉部7は、鋼板の板長方向に延びた直線状の形態を有する。
【0022】
図1(b)に示す二次中間成形品1Bは、図1(c)に示す三次中間成形品1Cに設けられる大開口としての長孔5をその長手方向で区分(二分割)するように鋼板の板幅方向に延びた切り残し2と、切り残し2を挟んでその両側に設けられた(切り残し2により区分された)2つの小開口3,4とを有する。切り残し2は、その長手方向(鋼板の板幅方向)の途中部分に設けられた分断部8によって二分割されている。分断部8は、一次中間成形品1Aに設けた薄肉部7に対応する位置に形成されている。
【0023】
以下、図2図4を参照して、上記の二次中間成形品1Bを得るために実施される第2プレス工程について説明する。この第2プレス工程で使用するプレス金型は、その1サイクル動作中に一次中間成形品1Aの一部をトリミングしつつ、一次中間成形品1Aを所定形状(二次中間成形品2A)に成形する。そのため、この第2プレス工程は、本発明で言う「切り抜き成形工程」に相当する。
【0024】
図2図4に示すように、第2プレス工程で二次中間成形品1Bを得るために使用するプレス金型10は、下型11と、下型11と協働して一次中間成形品1A(を構成する鋼板)の板幅方向の一端1aを拘束する第1上型12と、第1上型12とは別に設けられた第2上型13と、トリム刃14とを備える。第1上型12、第2上型13及びトリム刃14は互いに独立して昇降可能となっている。
【0025】
第2上型13には、一次中間成形品1Aの一部を所定形状に成形するための型部13aが設けられている。本実施形態の型部13aは、一次中間成形品1Aのうち、下型11及び第1上型12により拘束される一端1aと切り残し2の形成予定部2’との間に設けられた凸状の被成形部6を凹状に成形する。そのため、下型11には、成形すべき凹状形態に倣った凹状部が設けられている。
【0026】
トリム刃14は、一次中間成形品1Aの一部(切り残し2の形成予定部2’を挟んで離間した2つの領域。以下、被トリム部とも言う。)をトリミングすることにより2つの小開口3,4を形成する。
【0027】
プレス金型10は概ね以上の構成を有し、以下に説明するように動作することにより、図1(a)に示す一次中間成形品1Aを図1(b)に示す二次中間成形品1Bに加工する。まず、図2(a)(b)に示すように、下型11上に一次中間成形品1Aを載置した後、第1上型12が下降し、下型11と第1上型12とで一次中間成形品1A(を構成する鋼板)の板幅方向の一端1aが拘束される。その一方、一次中間成形品1Aの板幅方向の他端1b(に設けたフランジ部)は拘束されない。
【0028】
次いで、トリム刃14の刃先が一次中間成形品1A(の被トリミング部)に接触するよりも先に、第2上型13の型部13aが一次中間成形品1Aの被成形部6に接触するように、第2上型13が下降する。そのため、第2プレス工程の初期段階(開始直後)においては、一次中間成形品1Aの被トリミング部はトリミングされず、凸状の被成形部6を凹状に成形する成形加工のみが実施される。
【0029】
第2上型13の型部13aによる被成形部6の成形加工がある程度進行すると、図3(b)に示すように、トリム刃14が下降してその刃先が一次中間成形品1A(の被トリミング部)に切り込み、一次中間成形品1Aの被トリミング部がトリミングされる。これにより一次中間成形品1Aに、鋼板の板幅方向に延びた直線状の切り残し2と、切り残し2により区分された2つの小開口3,4とが形成される。小開口3,4が形成されることにより生じたスクラップ9は、下型11に設けられたスクラップ通路11aを介してプレス金型10(下型11)の外側に排出される。そして、第2上型13が下降限に到達すると、図4(a)(b)及び図1(b)に示すようなプレス成形品1、すなわち、切り残し2、及びこの切り残し2により区分された2つの小開口3,4を有すると共に、一次中間成形品1Aの被成形部6が凹状に成形された二次中間成形品1Bが得られる。
【0030】
図示は省略するが、第3プレス工程においては、二次中間成形品1Bに設けられた切り残し2がトリミングされる。これにより、図1(c)に示すようなプレス成形品1、詳細には、切り残し2がトリミングされて2つの小開口3,4が繋がることにより形成された長孔5を有する三次中間成形品1Cが得られる。
【0031】
ここで、一次中間成形品1Aに対して成形加工及びトリミングを施す切り抜き成形工程としての第2プレス工程は、上記のように一次中間成形品1Aの一端1aを拘束する一方、他端1bを拘束しない状態で行われる。このため、第2上型13の型部13aによる被成形部6の成形(型部13aの下降移動)が進展するのに伴い、一次中間成形品1Aのうち被成形部6よりも他端1b側の領域には、他端1bを一端1a側に変位させるような引張力が作用する。このような引張力が作用している状況下でトリム刃14によるトリミングが行われると、トリム刃14に一次中間成形品1Aが食い付いてしまい、トリム刃14をスムーズに分離することが難しくなる。また上記の引張力が作用した結果、一次中間成形品1Aの他端1bが所定位置(初期位置)から一端1a側に変位してしまうと、所定の立体形状や開口形状等を有する二次中間成形品1B、ひいては製品を得ることができなくなる可能性がある。
【0032】
この点、本実施形態の一次中間成形品1Aのうち切り残し2の形成予定部2’、つまりトリム刃14によるトリミングで形成される2つの小開口3,4間の領域には、他所よりも板厚が小さい薄肉部7を設けていることから[図2(a)参照]、型部13aによる一次中間成形品1Aの被成形部6の成形が進行している状態でトリム刃14が一次中間成形品1Aに切り込むのに伴って切り残し2(の形成予定部2’)にこれを一端1a側に変位させるような引張力が作用すると、薄肉部7(の肉)が裂け、切り残し2を板幅方向の途中部分で分断(二分割)した分断部8が形成される。
【0033】
このように、切り残し2(の形成予定部2’)が二分割されると、切り残し2を介しての一次中間成形品1Aの一端1a側と他端1b側との間での応力伝達ができなくなるので、一次中間成形品1Aの他端1bを一端1a側に変位させるような引張力が他端1bに作用し難くなる。そのため、一次中間成形品1Aの他端1b(の一部)が初期位置から一端1a側に位置ズレするのを防止することができることに加え、一次中間成形品1Aに対してトリム刃14が食い付くのを防止することができる。これにより、多大な手間やコストを必要とする種々の対策を講じずとも、大開口としての長孔5と所定の立体形状とを併せ持つプレス成形品1としての三次中間成形品1Cを精度良くかつ効率良く量産することができる。
【0034】
上記態様で分断部8を形成するには、第2上型13に設けた型部13aが一次中間成形品1Aの被成形部6を所定形状に成形している最中に、一次中間成形品1Aの所定箇所にトリム刃14を切り込ませる必要がある。但し、型部13aによる被成形部6の成形が終了する間際に一次中間成形品1Aの所定箇所にトリム刃14を切り込ませる(分断部8を形成する)と、一次中間成形品1Aの他端1bの一端1a側への変位を効果的に防止することができない可能性がある。そのため、トリム刃14によるトリミングは、型部13aによる被成形部6の成形が開始された直後に行うようにするのが好ましいと言える。
【0035】
以上、本発明の一実施形態について説明を行ったが、本発明の実施の形態はこれに限定されるわけではない。例えば、コスト面等で問題がなければ、プレス成形品1としての一次中間成形品1Aに設ける薄肉部7は、切削等の機械加工で形成しても構わない。また、薄肉部7は、被成形部6を所定形状に成形するのに伴って当該部分の肉が裂けるように形成されていれば良い。従って、薄肉部7は図示例で挙げたような直線状以外の形態(例えば、円弧状の凹凸が交互に設けられた波形形状や、尖頭形状の凹凸が交互に設けられたジグザグ形状)に形成しても構わない。また、本発明に係るプレス成形品の製造方法は、板幅方向に延びた切り残し2が2つ以上設けられ、形成すべき大開口が3つ以上の小開口に区分されるプレス成形品1としての二次中間成形品1Bを得る際にも好ましく適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 プレス成形品
1a 一端
1b 他端
1A 一次中間成形品
1B 二次中間成形品
1C 三次中間成形品
2 切り残し
2’ (切り残しの)形成予定部
3 小開口
4 小開口
5 長孔(大開口)
6 被成形部
7 薄肉部
8 分断部
10 プレス金型
11 下型
12 第1上型
13 第2上型
14 トリム刃
図1
図2
図3
図4
図5
図6