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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112520
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】通信装置及び電波環境生成システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/18 20090101AFI20240814BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20240814BHJP
   G01S 5/12 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H04W16/18
H04W64/00 130
H04W64/00 110
H04W64/00 171
G01S5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017593
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森時 悠
【テーマコード(参考)】
5J062
5K067
【Fターム(参考)】
5J062AA08
5J062BB05
5J062CC14
5J062CC18
5K067AA21
5K067DD43
5K067DD44
5K067EE22
5K067EE25
5K067FF23
5K067HH23
5K067JJ52
5K067JJ54
5K067LL11
(57)【要約】
【課題】無線機器を設置するエリア内の状況に応じた電波環境を容易に生成することができるようにする。
【解決手段】通信装置(3)は、電波環境生成エリア(2)内に配置され、電波環境生成エリア内に先に配置された3台の他の通信装置(3)からの電波を受信したときに、受信した電波に基づいて、電波を受信した位置を推定する位置推定部(302)を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波環境生成エリア内に配置され、前記電波環境生成エリア内に先に配置された3台の他の通信装置からの電波を受信したときに、受信した前記電波に基づいて、前記電波を受信した位置を推定する位置推定部を備える通信装置。
【請求項2】
前記位置推定部は、受信した前記電波の強度と、前記電波の到来方向とに基づいて、前記電波を受信した前記位置を推定する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記位置推定部は、前記他の通信装置の位置と、受信した前記電波の強度と、前記電波の到来方向とに基づいて、前記電波を受信した前記位置を推定する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記位置推定部は、予め設定された条件に従って、前記電波を受信した位置の推定を繰り返す、請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記位置推定部で推定した前記位置を他の通信装置に送信する送信部をさらに備える、請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
画像又は映像を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影した前記画像又は前記映像を他の通信装置に送信する送信部と、をさらに備える、請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
電波環境生成エリア内に配置された無線機器が前記電波環境生成エリア内に先に配置された3台の他の無線機器からの電波を受信したときに、受信した前記電波に基づいて、前記電波を受信した無線機器の位置を推定する位置推定部を備える通信装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の通信装置と、
前記通信装置が推定した前記位置を前記通信装置から取得し、前記電波環境生成エリアの地理的情報を含むマップ上に登録するサーバ装置と、を備える電波環境生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置及び電波環境生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場(建築現場)では、近年、無線通信を利用した現場内の監視、各種情報の共有等が行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-219394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、建設現場では、作業の進行に応じて現場内の状況が変化し、無線通信のための良好な電波環境を得るためのアクセスポイント等の無線機器の配置が変化する。このため、例えば、建設現場内に電波環境を生成するために、現場内の状況を示すマップ上に、現場内の状況毎に無線機器の設置位置を決定して登録する作業を行うこととなり手間がかかる。
【0005】
1つの側面において、本発明は、無線機器を設置するエリア内の状況に応じた電波環境を容易に生成することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様に係る通信装置は、電波環境生成エリア内に配置され、前記電波環境生成エリア内に先に配置された3台の他の通信装置からの電波を受信したときに、受信した前記電波に基づいて、前記電波を受信した位置を推定する位置推定部を備える通信装置である。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様によれば、無線機器を設置するエリア内の状況に応じた電波環境を容易に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る電波環境の生成方法が適用されるシステムの構成例を説明する図である。
図2】電波環境の生成に用いられる無線機器の構成例を示すブロック図である。
図3】サーバ装置及び端末として利用可能なコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
図4】一実施形態に係る電波環境の生成方法の例を説明するフロー図である。
図5】新たに配置した無線機器の位置を推定する位置推定処理の例を説明するフロー図である。
図6A】電波環境が生成される様子を説明する図(その1)である。
図6B】電波環境が生成される様子を説明する図(その2)である。
図6C】電波環境が生成される様子を説明する図(その3)である。
図6D】電波環境が生成される様子を説明する図(その4)である。
図6E】電波環境が生成される様子を説明する図(その5)である。
図6F】電波環境が生成される様子を説明する図(その6)である。
図7】生成された電波環境の利用方法の一例を説明するブロック図である。
図8】無線機器と通信するサーバ装置の構成例を示すブロック図である。
図9図8のサーバ装置における記憶部の構成例を説明する図である。
図10】生成された電波環境の利用方法の別の例を説明する図である。
図11】電波環境を生成するエリア内の無線機器の位置を推定する位置推定処理の例を説明するフロー図である。
図12】電波環境を生成するエリア内の無線機器の位置情報の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る電波環境の生成方法に関する実施形態を詳細に説明する。
【0010】
本明細書における「無線機器」は、周知の無線通信規格に従って他の電子機器と無線通信を行うための構成を有する種々の通信装置のうちの、電波環境の生成に関わる通信装置を指す。すなわち、本明細書では、無線通信ネットワークの構築に利用可能なルータ、アクセスポイント等の通信装置が「無線機器」と称される。また、本明細書では、「無線機器」を介して他の電子機器と通信を行うコンピュータ、スマートフォン等の通信装置は、「端末」又は「通信端末」と称される。
【0011】
また、本明細書において参照する図面中の符号のうちの数字の後にA~E等のアルファベットを伴う表記は、その数字が割り当てられた複数の要素を識別する場合に使用される。例えば、図1に例示した5台の無線機器3A~3Eに関する説明において、対象が5台の無線機器のうちのどの無線機器であってもよい場合には「無線機器3」と表記され、対象が特定の無線機器である場合には「無線機器3A」等と表記される。
【0012】
図1は、一実施形態に係る電波環境の生成方法が適用されるシステムの構成例を説明する図である。図2は、電波環境の生成に用いられる無線機器の構成例を示すブロック図である。図3は、サーバ装置及び端末として利用可能なコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0013】
図1に例示したシステム1は、電波環境生成エリア2内に設置される複数の無線機器33(無線機器3A~3E)と、サーバ装置4とを含む。
【0014】
電波環境生成エリア2は、無線通信のための電波環境を生成するエリアであり、例えば、建設現場(建築現場)内に設定される。電波環境生成エリア2は、平面的なエリアであってもよいし、立体的なエリアであってもよい。例えば、電波環境生成エリア2は、多層階の構造物における複数の階にわたるエリアであってもよい。
【0015】
複数の無線機器3は、電波環境生成エリア2内の電波環境の生成に用いる電子機器である。本実施形態のシステム1では、少なくとも3台の無線機器3が電波環境の生成に用いられる。図1には、5台の無線機器3A~3Eが示されているが、電波環境生成エリア2内に設置される無線機器3は、6台以上あってもよい。
【0016】
図1に例示した電波環境生成エリア2内には、5台の無線機器3A~3Eのうちの1台(無線機器3A)のみがインターネット等の通信ネットワーク5と直接的に接続され、残りの4台(無線機器3B~3E)は無線機器3Aを介して通信ネットワーク5と接続される、ローカルな無線ネットワークを構成する。本明細書における「直接的に接続」又は「直接的な接続」等の表記における「直接的」は、電波環境生成エリア2内の無線機器3が、電波環境生成エリア2内の他の無線機器3を介さずに通信ネットワーク5と接続されることを意味する。例えば、無線機器3が通信キャリアにより提供される基地局と無線通信を行って通信ネットワーク5に接続される場合、当該無線機器3は、通信ネットワーク5と直接的に接続される。無線機器3と通信ネットワーク5との直接的な接続は、例えば、LAN(Local Area Network)ケーブル等の伝送ケーブルによる接続であってもよい。
【0017】
なお、電波環境生成エリア2内に配置された複数の無線機器3によるローカルな無線ネットワークは、特定のネットワーク構成に限定されない。例えば、複数の無線機器3のうちの少なくとも1台の無線機器3は、2台以上の他の無線機器3を介して通信ネットワーク5に接続されてもよい。具体的には、図1に例示した無線機器3Cは、無線機器3B又は無線機器3Dのいずれかと無線機器3Aとを介して、通信ネットワーク5と接続されてもよい。また、電波環境生成エリア2内に配置された複数の無線機器3のうちの通信ネットワーク5と直接的に接続される無線機器3は、1台に限らず、2台以上であってもよい。複数の無線機器3のすべてが通信ネットワーク5と直接的に接続されてもよい。
【0018】
本実施形態のシステム1における無線機器3は、図2に例示したように、制御部300と、記憶部310と、送信部320と、受信部330とを含む。制御部300は、無線機器3の動作を制御する。制御部300は、信号処理部301と位置推定部302とを含む。信号処理部301は、端末6又は他の無線機器3等から受信した信号、及び端末6又は他の無線機器3等に送信する信号に関する各種処理を行う。位置推定部302は、他の無線機器3から受信した信号(電波)に基づいて、当該位置推定部302を含む無線機器3の位置を推定する処理を行う。記憶部310は、無線機器3の動作の制御に用いられる各種情報を記憶する。送信部320は、端末6又は他の無線機器3等への信号を送信し、受信部340は、端末6又は他の無線機器3等からの受信を受信する。送信部320は、例えば、信号処理部301で生成した信号に基づいて変調された搬送波を放射する。受信部330は、例えば、受信した搬送波を復調して得られる端末6又は他の無線機器3等が送信した信号を信号処理部301又は位置推定部302に入力する。
【0019】
なお、無線機器3の機能的な構成は、図2を参照して上述した構成に限定されない。例えば、無線機器3の送信部320は、無線通信のための変調された搬送波を放射することに加え、LANケーブル等の伝送ケーブルに電気信号又は光信号等の信号を出力することが可能であってもよい。同様に、無線機器3の受信部330は、受信した搬送波を復調することに加え、LANケーブル等の伝送ケーブルにより伝送された電気信号又は光信号等の信号を受信することが可能であってもよい。
【0020】
電波環境生成エリア2内にある端末6(6A、6B)は、電波環境生成エリア2内に配置された複数の無線機器3のうちの1台と無線通信を行うことにより、当該無線機器3を介して他の電子機器と通信することができる。
【0021】
電波環境生成エリア2内の端末6は、例えば、作業員等のエリア内の人物7(7A、7B)が操作するタブレット型のコンピュータやスマートフォン等であってもよいし、人物7が身に着ける無線通信可能なセンサ装置等であってもよい。
【0022】
図1において、人物7Aが所持している端末6Aは、無線機器3Bと無線通信を行い、無線機器3B及び無線機器3Aを介して通信ネットワーク5と接続されることで、サーバ装置4や外部の端末8等と通信することができる。また、人物7Bが所持している端末6Bは、無線機器3Dと無線通信を行い、無線機器3D及び無線機器3Aを介して通信ネットワーク5と接続されることで、サーバ装置4や外部の端末8等と通信することができる。端末6は、例えば、サーバ装置4の記憶部410に格納された、電波環境生成エリア2と関連付けられるマップデータを表示すること(当該端末6を所持している人物7に提示すること)に利用される。端末6は、例えば、通信ネットワーク5を介して接続される外部の端末8との間で、Web会議システムを利用した音声や映像等の送受信を行うことが可能なものであってもよい。端末6は、例えば、人物7の体調に関する情報を検知してサーバ装置4又は外部の端末8等に送信すること可能なものであってもよい。
【0023】
サーバ装置4は、電波環境生成エリア2が設定される建設現場(建築現場)と関連付けられる各種情報を格納し、格納された情報を端末6や外部の端末8に提供する電子機器である。サーバ装置4は、マップデータ及び位置データを格納(記憶)する記憶部410を有する。マップデータは、例えば、建設現場内の地理的な情報を含む。位置データは、例えば、建設現場内に建設される構造物における各種部位(例えば、壁等)の位置の情報と、建設現場内に配置される建機、資材、及び無線機器3等の位置の情報を含む。
【0024】
本実施形態のシステム1におけるサーバ装置4及び端末6は、例えば、汎用のコンピュータであってよい。コンピュータ9は、ハードウェア構成要素として、例えば、図3に示すように、プロセッサ901、メモリ902、補助記憶装置903、入力装置904、出力装置905、通信装置906、媒体駆動装置907、及び入出力インタフェース908を含むことができる。これらのハードウェア構成要素は、例えば、バス909を介して相互に接続される。
【0025】
プロセッサ901は、コンピュータ9を動作させるための各種処理を実行する。プロセッサ901は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であってよい。プロセッサ901は、例えば、メモリ902や補助記憶装置903等に格納されたプログラムを読み出して実行し、コンピュータ9を動作させる。
【0026】
メモリ902は、コンピュータ9を動作させるためのプログラム等の各種情報を記憶する。メモリ902は、ROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)とを含む。メモリ902のROMは、例えば、コンピュータ9の起動時にプロセッサ901によって読み出され実行されるプログラム等の記憶に利用される。メモリ902のRAMには、プロセッサ901が実行するプログラムの一部又は全部、プログラムの実行中に参照するデータ、プログラムの実行中に生成されるデータ等の記憶に利用される。
【0027】
補助記憶装置903は、メモリ902と比べて記憶容量が大きい記憶装置であり、プログラム等の各種情報を記憶する。補助記憶装置903は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等である。
【0028】
入力装置904は、例えば、キーボード等の文字入力に利用可能な入力装置、及びマウス等のポインタ等の操作に利用可能な入力装置を含む。入力装置904は、例えば、内蔵されたカメラやマイク等を含んでもよい。出力装置905は、液晶ディスプレイ等の文字や図形等の情報を可視化して表示する表示装置を含む。出力装置905は、例えば、印刷装置やスピーカ等を含んでもよい。コンピュータ9は、例えば、出力装置905の1つである表示装置の表示面に入力装置904の1つであってよいデジタイザ(位置検出装置)が配置されたタッチパネルディスプレイを備えてもよい。
【0029】
通信装置906は、他の電子機器と通信を行う。サーバ装置4としてのコンピュータ9における通信装置906は、通信のための信号をコンピュータ9に接続された伝送ケーブルにより送受信する有線方式のものであってもよいし、無線通信により送受信する無線方式のものであってもよいし、有線方式及び無線方式の両方に対応したものであってもよい。端末6としてのコンピュータ9における通信装置906は、少なくとも、通信のための信号を無線通信により送受信することが可能なものであり得る。
【0030】
媒体駆動装置907は、可搬型記録媒体910の情報記録領域にアクセスして記録された情報を読み出す装置であり得る。媒体駆動装置907は、情報の読み出しに加え、可搬型記録媒体910の情報記憶領域にアクセスして情報を記録する(書き込む)ことが可能な装置であってもよい。可搬型記録媒体910は、例えば、光学的に、電気的に、又は磁気的に情報を記録することが可能なものであり得る。光学的に情報を記録する可搬型記録媒体910は、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、Blu-ray(登録商標)ディスク等の光ディスクであってよい。電気的に情報を記録する可搬型記録媒体910は、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(登録商標)カード等のフラッシュメモリを内蔵したものであってよい。
【0031】
入出力インタフェース908は、コンピュータ9に接続して利用することが可能な種々の周辺機器をコンピュータ9に接続するための端子を有するハードウェアインタフェースである。入出力インタフェース908は、例えば、USB端子、IEEE1394端子等を有する。
【0032】
サーバ装置4や端末6として利用可能なコンピュータ9は、例えば、図3に1つのブロックで示されているハードウェア構成要素が、複数のハードウェアを含んでもよい。例えば、コンピュータ9のプロセッサ901は、CPUに加え、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphic Processing Unit)等を含んでもよい。また、コンピュータ9は、例えば、図3において複数のブロックで示されているハードウェア構成要素が1つのハードウェア内に統合されていてもよい。例えば、コンピュータ9におけるプロセッサ901とメモリ902とは、各々が別個のハードウェアとして製造されマザーボード等の配線板により接続されたものであってもよいし、プロセッサ901及びメモリ902を含む1つのハードウェアとして製造されたものであってもよい。
【0033】
本実施形態のシステム1における複数の無線機器3を電波環境生成エリア2内に配置する作業は、例えば、図4に示した手順で行われる。
【0034】
図4は、一実施形態に係る電波環境の生成方法の例を説明するフロー図である。
【0035】
複数の無線機器3を電波環境生成エリア2内に配置するときには、まず、3台の無線機器3を基準機器に指定してそれらの設置位置を決定し、設置位置をマップ上に登録する(ステップS1)。ステップS1では、例えば、作業員等の人物7が、基準機器に指定した3台の無線機器3の設置位置を決定した後、端末6を操作して決定した位置情報をサーバ装置4に送信する作業が行われる。
【0036】
次に、3台の基準機器の電波を受信できる領域内に新たな無線機器3を配置する(ステップS2)。ステップS2では、例えば、端末6が、各基準機器の電波が届く範囲に基づいて3台の基準機器の電波を受信可能な領域を、新たな無線機器3の配置に適した推奨領域として表示する。作業員等の人物7は、端末6に表示された推奨領域に基づいて、推奨領域内に1台の新たな無線機器3を配置する。なお、ステップS2では、例えば、端末6が、推奨領域とともに、推奨領域内の新たな無線機器3の設置に適した位置を示す情報を表示してもよい。
【0037】
次に、基準機器の情報に基づいて、新たに配置した無線機器3の位置を推定する(ステップS3)。ステップS3は、基準機器から所定の電波が放射されている環境下で行われる。電波環境生成エリア2内に配置する複数の無線機器3がBluetooth(登録商標)、又はBluetooth Low Energy(登録商標)に従って無線通信を行う機器の場合、基準機器が放射する所定の電波は、ビーコンであってよい。また、複数の無線機器3が、例えば、Wi-Fi(登録商標)等の他の無線通信規格に従って無線通信を行う機器の場合、基準機器が放射する所定の電波は、無線通信規格に応じて設定された電波であってよい。ステップS3では、例えば、新たに配置した無線機器3の位置推定部302が、3台の基準機器の位置、及び受信した各基準機器からの電波の強度等の情報に基づいて、自身の位置を推定する。無線機器3は、例えば、3点測位を用いる方法等の、周知の位置推定方法により、自身の位置を推定する。
【0038】
次に、ステップS3における位置の推定結果に基づいて、新たに配置した無線機器3をマップ上に登録する(ステップS4)。ステップS4では、例えば、新たに配置した無線機器3が、推定した自身の位置をサーバ装置4、又は所定の端末6に送信する。このとき、新たに配置した無線機器3は、基準機器を介して通信ネットワーク5と接続されてもよいし、通信ネットワーク5と直接的に接続されてもよい。
【0039】
ステップS4の後、電波環境生成エリア2内への無線機器3の配置を続けるか否かの判定が行われる(ステップS5)。無線機器3の配置を続ける場合(ステップS5;YES)、ステップS2以降の処理が行われる。無線機器3の配置を続けない場合(ステップS5;NO)、図4に例示した手順で行われる電波環境生成エリア2内への無線機器3の配置は終了する。
【0040】
このように、本実施形態に係る無線機器3を配置する作業では、位置が既知である3台の無線機器3を基準機器とし、それら基準機器からの電波を受信可能な領域内に新たな無線機器3を配置し、新たに配置された無線機器3の位置を推定する。新たに配置した無線機器3の位置は、例えば、当該無線機器3が受信した基準機器からの電波に基づいて、無線機器3自身が推定する。電波環境生成エリア2内に新たに配置される無線機器3は、上述したステップS3及びS4において、例えば、図5に例示した位置推定処理を行う。
【0041】
図5は、新たに配置した無線機器の位置を推定する位置推定処理の例を説明するフロー図である。
【0042】
無線機器3は、3台以上の他の無線機器3からの電波を受信したか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11の判定は、無線機器3の位置推定部302が行う。位置推定部302は、例えば、1台の他の無線機器3からの電波を受信した時刻から所定の期間が経過するまでに3台以上の他の無線機器3からの電波を受信した場合に、3台以上の他の無線機器3からの電波を受信したと判定する。位置推定部302は、例えば、1台の他の無線機器3からの電波を受信した時刻から所定の期間が経過する前に3台の他の無線機器3からの電波を受信した場合には、所定の期間が経過するのを待たずに、3台以上の他の無線機器3からの電波を受信したと判定してもよい。
【0043】
3台以上の他の無線機器3からの電波を受信した場合(ステップS11;YES)、無線機器3は、電波を受信した3台以上の他の無線機器3のうちの3台の無線機器3を基準機器に選択する(ステップS12)。ステップS12は、無線機器3の位置推定部302が行う。電波を受信した他の無線機器3が4台以上である場合、位置推定部302は、4台以上の他の無線機器3のうちの3台を基準機器に選択する。例えば、位置推定部302は、電波を受信した時刻が早い順に3台の他の無線機器3を選択し、それらを基準機器に設定する。また、位置推定部302は、例えば、4台以上の無線機器3のうちの、受信した電波の強度が強い順に3台の他の無線機器3を選択してもよいし、電波の到来方向が互いに所定の角度以上になる3台の他の無線機器3を選択してもよい。
【0044】
次に、無線機器3は、基準機器に選択した3台の他の無線機器からの電波に基づいて、自身の位置を推定する(ステップS13)。ステップS13は、無線機器3の位置推定部302が行う。位置推定部302は、例えば、基準機器に選択した3台の他の無線機器3の位置、受信した電波の強度、及び受信した電波の到来方向等の情報に基づいて、自身の位置を推定する。なお、位置推定部302による位置の推定方法は、特定の方法に限定されない。位置推定部302は、無線通信に関する分野において強度及び3台の無線機器3の検出位置による周知の推定方法に従って、位置を推定することができる。
【0045】
次に、無線機器3は、自身の位置を推定できたか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14の判定は、無線機器3の位置推定部302が行う。位置推定部302は、例えば、ステップS13で推定した位置の信頼度に基づいて、自身の位置を推定できたか否かを判定する。例えば、位置推定部302は、位置の推定に用いた他の無線機器3からの電波が所定の強度よりも低い場合、又は電波の到来方向が互いに所定の角度以下である場合等に、自身の位置を推定することができなかったと判定する。自身の位置を推定できなかった場合(ステップS14;NO)、無線機器3は、例えば、基準機器とする3台の無線機器3の組み合わせを変更してステップS12及びS13を再度行う。自身の位置を推定できた場合(ステップS14;YES)、無線機器3は、推定した位置をサーバ装置4、又は端末6に送信し(ステップS15)、位置推定処理を終了する。
【0046】
このように、本実施形態に係る無線機器3を配置する作業では、電波環境生成エリア2内に新たに配置される無線機器3が自身の位置を推定し、その推定した位置に基づいて当該無線機器3がマップ上に登録される。新たに配置される無線機器3は、先に配置された3台の他の無線機器3(基準機器)からの電波に基づいて、自身の位置を推定する。このため、本実施形態に係る無線機器3を配置する作業では、例えば、最初に3台の無線機器3の位置を特定することにより、4番目以降に配置される無線機器3の位置を位置推定部302が行う処理により自動的に推定することができる。したがって、本実施形態に係る無線機器3を配置する作業によれば、電波環境生成エリア2内に設置される無線機器3の位置を特定してマップ上に登録する作業を効率よく行うことができる。
【0047】
また、本実施形態に係る無線機器3を配置する作業では、4番目以降に配置される無線機器3の各々が、先に配置されている3台の他の無線機器3(基準機器)からの電波を受信可能な位置に配置される。このため、電波環境生成エリア2内の電波の密度を高くすることができ、電波環境生成エリア2内での端末6を利用した無線通信を快適に行うことができる。
【0048】
図6A図6Fは、電波環境が生成される様子を説明する図である。
【0049】
図6Aには、電波環境生成エリア2内に最初に基準機器として配置される3台の無線機器3の位置P1、P2、P3及び電波の届く範囲R1、R2、R3の一例を示している。3台の基準機器の位置P1、P2、及びP3は、例えば、二次元座標(X,Y)で表される。二次元座標(X,Y)の座標系は、例えば、緯度及び経度で位置を表す地理座標系であってもよいし、電波環境生成エリア2に対して独自に設定される二次元座標系であってもよい。各位置に配置される無線機器3を識別する情報(例えば、図9を参照して後述する無線機器IDなど)と関連付けられてサーバ装置4の記憶部401に格納される。基準機器の位置P1、P2、P3は、例えば、作業員等の人物が周知の計測方法に従って計測して特定する。基準機器の位置P1、P2、P3は、特定の位置に限定されないが、図6Aに例示したように、各基準機器の電波の届く範囲R1、R2、R3のそれぞれが、2台の他の基準機器の電波の届く範囲と重なる三重領域Tと、1つの他の基準機器の電波の届く範囲と重なる領域と、他の基準機器の電波の届く範囲と重ならない領域とを有するような位置にする。なお、図6A図6Eでは、各無線機器3の電波の届く範囲R1~R*を同一の楕円形(長円形)で示しているが、電波の届く範囲は特定の形状や大きさに限定されない。電波の届く範囲は、無線機器3の機種や配置場所の周囲の状況応じて互いに異なっていてもよい。以下の説明では、3台の基準機器の電波の届く範囲が重なる領域Tを、三重領域Tと呼ぶ。なお、三重領域Tは、4台以上の基準機器の電波の届く範囲が重なる領域を含んでもよい。
【0050】
図6Bには、4台目の無線機器3を配置する様子が例示されている。4台目の無線機器3は、例えば、電波環境生成エリア2内のうちの三重領域T内に向けて運ばれ、4台目の無線機器3の位置は、図6Bに例示したように、三重領域Tの外側の領域に含まれる位置P4’から三重領域T内の位置P4に移動する。4台目の無線機器3が三重領域T内の位置P4に配置されると、4台目の無線機器3は、先に配置された3台の基準機器からの電波を受信し、自身の位置P4を推定する。位置P4を推定した無線機器3が推定した位置P4をサーバ装置4、又は端末6に送信すると、マップに4台目の無線機器3の位置P4が登録される。
【0051】
図6Cには、5台目の無線機器3を配置する様子が例示されている。具体的には、図6Cには、位置P2、P3、P4の各位置に配置された無線機器3を基準機器に選択し、各位置に配置された無線機器3の電波の届く範囲R2、R3、R4が重なる三重領域T内に5台目の無線機器3を配置する例が示されている。5台目の無線機器3は、三重領域T内であって、先に他の無線機器3が配置されている位置P1から可能な限り遠方となる、位置P5に配置される。これにより、電波環境生成エリア2内における、少なくとも1台の無線機器3からの電波を受信可能な範囲が拡大される。また、5台目の無線機器3の位置P5を、基準機器に選択されていない他の無線機器3の位置P1から可能な限り遠方となる位置にすることで、例えば、位置P5に配置された5台目の無線機器3の電波の届く範囲と先に配置された他の無線機器3の電波の届く範囲とが重なる領域の増加を抑制し、少なくとも1台の無線機器3からの電波を受信可能な範囲をより大きくすることができる。
【0052】
図6Dには、6台目の無線機器3を配置する様子が例示されている。具体的には、図6Dには、位置P3、P4、P5の各位置に配置された無線機器3を基準機器に選択し、各位置に配置された無線機器3の電波の届く範囲R3、R4、R5が重なる三重領域T内に6台目の無線機器3を配置する例が示されている。6台目の無線機器3は、三重領域T内であって、先に他の無線機器3が配置されている位置P1、P2から可能な限り遠方となる、位置P6に配置される。これにより、電波環境生成エリア2内における、少なくとも1台の無線機器3からの電波を受信可能な範囲が効率的に拡大される。
【0053】
図6Eには、7台目の無線機器3を配置する様子が示されている。具体的には、図6Eには、位置P2、P4、P5の各位置に配置された無線機器3を基準機器に選択し、各位置に配置された無線機器3の電波の届く範囲R2、R4、R5が重なる三重領域T内に6台目の無線機器3を配置する例が示されている。6台目の無線機器3は、三重領域T内であって、先に他の無線機器3が配置されている位置P1、P3、P6から可能な限り遠方となる、位置P7に配置される。これにより、電波環境生成エリア2内における、少なくとも1台の無線機器3からの電波を受信可能な範囲が効率的に拡大される。
【0054】
その後、図6C図6Eを参照して上述した手順を繰り返すことにより、図6Fに例示したような、電波環境生成エリア2内の位置P1~P16の各位置に無線機器3を配置した電波環境が電波環境生成エリア2内に生成され、各無線機器3の位置P1~P16がマップ上に登録される。本実施形態の電波環境の生成方法に従って図6Fに例示した位置P1~P16の各位置に無線機器3を配置した電波環境を生成するとき、位置P4~P16は、各位置に順次配置される無線機器3が先に配置されている無線機器3(基準機器)からの電波に基づいて自動的に推定し、自動的にマップに登録される。このため、位置P1~P16のすべてを作業員等の人物により計測してマップに登録する場合に比べて、電波環境生成エリア2内に設置される無線機器3の位置を特定してマップ上に登録する作業の効率を格段に向上させることができる。このような本実施形態の電波環境の生成方法は、電波環境を、無線機器3を設置する電波環境生成エリア2の状況の変化に柔軟に対応させることが容易であり、作業の進行に応じて無線通信のための良好な電波環境が変化する建設現場内の電波環境の生成に好適である。例えば、無線機器3の電源投入時又はその他の予め定めたタイミングで、定期的に又は不定期に、図4に例示したステップS2~S6の処理を実施することにより、電波環境生成エリア2内の状況が変化しても良好な電波環境を維持することができる。また、図4に例示したステップS2~S6の処理は、例えば、基準機器からの電波強度をモニタリングし、電波強度に大きな変化があった場合に実施するようにしてもよい。
【0055】
なお、上述した電波環境を生成するための作業は、例えば、複数の無線機器3によるローカルな無線ネットワークを介して他の端末に各種情報を送信する、カメラ10等の電子機器を電波環境生成エリア2内に設置する作業を含んでもよい。
【0056】
図7は、生成された電波環境の利用方法の一例を説明するブロック図である。図8は、無線機器と通信するサーバ装置の構成例を示すブロック図である。図9は、図8のサーバ装置における記憶部の構成例を説明する図である。
【0057】
電波環境生成エリア2内に配置する無線機器3は、端末6と他の端末との通信を中継するものに限らず、例えば、図7に例示するように、カメラ10と組み合わされてもよい。カメラ10は、例えば、電波環境生成エリア2を含む建設現場(建築現場)内の監視等に利用可能な画像又は映像の撮影に使用される。カメラ10は、可視光カメラ(可視カメラ)であってもよいし、赤外線カメラ等の非可視光カメラであってもよいし、それらの組み合わせであってもよい。また、無線機器3と組み合わせて使用するカメラ10は、図7に例示したように、無線機器3とは別個に設けられ、伝送ケーブルにより又は無線通信により無線機器3と接続されるものに限定されない。カメラ10は、無線機器3に内蔵されたもの、又は無線機器3と同等の機能を内蔵したものであってもよい。
【0058】
カメラ10を無線機器3と組み合わせて使用する場合、例えば、カメラ10で撮影した映像をサーバ装置4に送信して蓄積することができる。カメラ10の映像を蓄積するサーバ装置4は、例えば、図8に示すように、制御部420と、送信部430と、受信部440と、入力部450と、出力部460と、記憶部410とを含む。制御部420は、例えば、図3に例示したコンピュータ9における所定のプログラムを実行するプロセッサ901と対応する。送信部430及び受信部440は、図3に例示したコンピュータ9における通信装置906と対応する。入力部450及び出力部460は、図3に例示したコンピュータ9における入力装置904及び出力装置905と対応する。記憶部410は、図9に例示したコンピュータ9におけるメモリ902及び補助記憶装置903、並びに可搬型記録媒体910のうちの1つ以上であってよい。記憶部410には、マップ411、位置情報412、及び映像データ413が格納される。
【0059】
記憶部410に格納される位置情報412は、例えば、図9に示すように、無線機器3を識別する情報である無線機器IDと、位置(X,Y)と、カメラ10を識別する情報であるカメラIDとが関連付けられている。位置情報412における無線機器IDと位置(X,Y)とは、例えば、マップ411上に無線機器3を表示することに利用される。位置情報412におけるカメラIDと位置(X,Y)とは、例えば、格納された映像データ413がどの位置に配置されたカメラ10により撮影された映像のデータであるかを特定することに利用される。
【0060】
図7図9を参照して上述した例では、電波環境生成エリア2内に複数のカメラ10を設置するときの各カメラ10の位置を特定する作業を、複数の無線機器3を配置する作業と並行して行うことができる。このため、複数のカメラ10を設置して位置を特定する作業を効率よく行うことができる。
【0061】
更に、本実施形態に係る電波環境の生成方法は、例えば、電波環境生成エリア2内を移動する人物やロボット等の位置又は移動経路の導出に利用されてもよい。
【0062】
図10は、生成された電波環境の利用方法の別の例を説明する図である。
【0063】
図10には、電波環境生成エリア2内の3台の無線機器3についての、無線機器3の位置P1、P2、P3と電波の届く範囲R1、R2、R3を示している。図10に例示した人物7は、端末6を所持しており、定められた作業を行うために電波環境生成エリア2内を移動する。最初、人物7は、電波環境生成エリア2内のうちの無線機器3の電波の届く範囲R1、R2、R3のいずれにも含まれない領域におり、人物7が所持している端末6は、3台の無線機器のいずれとも接続されていない。
【0064】
その後、人物7が、電波環境生成エリア2内のうちの無線機器3の電波の届く範囲R1、R2、R3が重なる三重領域T内に移動すると、端末6は、位置P1、P2、P3の各位置に配置された無線機器からの電波を受信する。このとき、端末6が、上述した無線機器3の位置推定部302と同様の機能を備えていると、端末6は、受信した3台の無線機器3からの電波に基づいて自身の位置を推定し、サーバ装置4又は他の端末に推定した位置を送信することができる。
【0065】
また、人物7が、三重領域T内の位置から三重領域T外の位置に移動すると、端末6は、例えば、位置P2、P3、及び図示しない位置P4の各位置に設置された無線機器からの電波を受信して位置を測定する。このように、電波環境生成エリア2内に生成した電波環境を利用して人物7が所持する端末6の位置を推定することにより、人物7が適切な行動(作業)をしているか否かを監視することができる。また、端末6は、人物7の位置の推定に限らず、例えば、ロボット、資材等の物品の位置の推定に利用することもできる。図10を参照して上述した例では、電波環境生成エリア2内に配置される無線機器3は3台であってもよく、当該3台の無線機器3の位置が既知であることにより、端末6等の通信装置は3台の無線機器3の位置と受信した電波の強度等に基づいて自身の位置を推定することができる。
【0066】
図11は、電波環境を生成するエリア内の無線機器の位置を推定する位置推定処理の例を説明するフロー図である。以下の説明では、図11に例示した位置推定処理は端末6が行うものとして説明するが、図11に例示した位置推定処理は、無線機器3が行ってもよい。
【0067】
端末6は、3台以上の他の無線機器3からの電波を受信したか否かを判定する(ステップS21)。ステップS21の判定は、端末6が備える位置推定部が行う。位置推定部は、例えば、1台の他の無線機器3からの電波を受信した時刻から所定の期間が経過するまでに3台以上の他の無線機器3からの電波を受信した場合に、3台以上の他の無線機器3からの電波を受信したと判定する。位置推定部は、例えば、1台の他の無線機器3からの電波を受信した時刻から所定の期間が経過する前に3台の他の無線機器3からの電波を受信した場合には、所定の期間が経過するのを待たずに、3台以上の他の無線機器3からの電波を受信したと判定してもよい。
【0068】
3台以上の他の無線機器3からの電波を受信した場合(ステップS21;YES)、端末6は、電波を受信した3台以上の他の無線機器3のうちの3台の無線機器3を基準機器に選択する(ステップS22)。ステップS22は、端末6の位置推定部が行う。電波を受信した他の無線機器3が4台以上である場合、位置推定部は、4台以上の他の無線機器3のうちの3台を基準機器に選択する。例えば、位置推定部は、電波を受信した時刻が早い順に3台の他の無線機器3を選択し、それらを基準機器に設定する。また、位置推定部は、例えば、4台以上の無線機器3のうちの、受信した電波の強度が強い順に3台の他の無線機器3を選択してもよいし、電波の到来方向が互いに所定の角度以上になる3台の他の無線機器3を選択してもよい。
【0069】
次に、端末6は、基準機器に選択した3台の他の無線機器からの電波に基づいて、自身の位置を推定する(ステップS23)。ステップS23は、端末6の位置推定部が行う。位置推定部は、例えば、基準機器に選択した3台の他の無線機器3の位置、受信した電波の強度、及び受信した電波の到来方向等の情報に基づいて、自身の位置を推定する。位置推定部による位置の推定方法は、特定の方法に限定されない。位置推定部は、無線通信に関する分野において周知の推定方法に従って、位置を推定することができる。
【0070】
次に、端末6は、自身の位置を推定できたか否かを判定する(ステップS24)。ステップS24の判定は、端末6の位置推定部が行う。位置推定部は、例えば、ステップS23で推定した位置の信頼度に基づいて、自身の位置を推定できたか否かを判定する。例えば、位置推定部は、位置の推定に用いた他の無線機器3からの電波が所定の強度よりも低い場合、又は電波の到来方向が互いに所定の角度以下である場合等に、自身の位置を推定することができなかったと判定する。自身の位置を推定できなかった場合(ステップS24;NO)、端末6は、例えば、ステップS22及びS23を再度行う。
【0071】
自身の位置を推定できた場合(ステップS24;YES)、端末6は、自身が基準機器と非基準機器のどちらであるかを判定する(ステップS25)。ステップS25の判定は、端末6の位置推定部が行う。位置推定部は、例えば、自身の記憶部に格納されている識別情報等に基づいて、自身が基準機器となりうる無線機器3であるか否かを判定する。端末6の位置推定部は、自身が非基準機器(基準機器ではない)と判定する。
【0072】
端末6が自身は非基準機器であると判定すると(ステップS25;非基準機器)、端末6は、推定した位置を更新し、非基準機器として推定した位置をサーバ装置4等に送信する(ステップS26)。ステップS26において、端末6は、例えば、自身が非基準機器であることを示し、かつ他の非基準機器と識別するための情報とともに、推定した位置をサーバ装置4等に送信する。その後、端末6は、位置の推定を続けるか否かを判定し(ステップS27)、続ける場合には(ステップS27;YES)、ステップS21以降の処理を繰り返す。位置の推定を続けない場合(ステップS27;NO)、端末6は、図11に例示した位置推定処理を終了する。
【0073】
一方、図11に例示した位置推定処理を無線機器3等の基準機器となりうる機器が行う場合、ステップS25において自身が基準機器であると判定する(ステップS25;基準機器)。この場合、無線機器3は、例えば、自身が基準機器であることを示し、かつ他の基準機器と識別するための情報とともに、推定した位置をサーバ装置4等に送信する(ステップS28)。その後、無線機器3は、図11に例示した位置推定処理を終了する。
【0074】
このように、本実施形態の電波環境の生成方法は、電波環境を生成するために配置され基準機器となりうる無線機器3とは異なる、端末6等の非基準機器の位置の推定、追跡等に利用することもできる。
【0075】
図12は、電波環境を生成するエリア内の無線機器の位置情報の別の例を示す図である。図12には、図8を参照して上述したサーバ装置4の記憶部410に格納される位置情報の別の例を示している。
【0076】
図12に例示した位置情報414では、無線機器3、端末6等の無線通信が可能な電子機器を識別する情報である無線機器IDと、機器種別と、位置(X,Y)とが関連付けられている。機器種別は、基準機器となりうる機器であるか否かを示す情報であり、「基準機器」は基準機器となり得ることを示し、「非基準機器」は基準機器として利用しないことを示している。機器種別が「基準機器」である無線機器は、マップ上に表示される。また、位置情報414における機器種別が「非基準機器」である端末6等の電子機器に関する位置の情報は、当該電子機器が位置を推定してサーバ装置4に送信するごとに、無線機器IDと関連付けて位置情報414内に追加される。
【0077】
このように、本実施形態に係る生成方法を利用して生成した電波環境は、電波環境生成エリア2内の人物7、ロボット、資材等の位置や数の推定にも利用可能である。したがって、本実施形態に係る電波環境の生成方法によれば、電波環境生成エリア2内の人物7、ロボット、資材等の位置や数の時間変化を容易に記録し、管理することができる。
【0078】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらに、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0079】
例えば、図5及び図11に例示したフロー図は、位置推定処理の例示に過ぎず、図示された処理の順番は矛盾しない範囲において変更可能である。例えば、新たに配置される無線機器3又は端末6が行う位置推定処理は、基準機器とする3台の無線機器3を先に決め、その3台の無線機器(基準機器)からの電波を受信したときに位置を推定するようにしてもよい。また、新たに配置される無線機器3又は端末6が行う位置推定処理は、例えば、自身の位置を推定できたか否かの判定(図5のステップS14又は図11のステップS24)が省略されてもよい。更に、図11を参照して上述した位置推定処理は、当該処理を行う機器が無線機器3である場合にはステップS25~S27を含まない処理を行わせ、端末6である場合にはステップS25及びS28を含まない処理を行わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 システム
2 電波環境生成エリア
3、3A~3E 無線機器
300 制御部
301 信号処理部
302 位置推定部
310 記憶部
320 送信部
330 受信部
4 サーバ装置
410 記憶部
411 マップ
412、414 位置情報
413 映像データ
420 制御部
430 送信部
440 受信部
450 入力部
460 出力部
5 通信ネットワーク
6、6A、6B 端末
7、7A、7B 人物
8 外部の端末
9 コンピュータ
901 プロセッサ
902 メモリ
903 補助記憶装置
904 入力装置
905 出力装置
906 通信装置
907 媒体駆動装置
908 入出力インタフェース
909 バス
910 可搬型記録媒体
10 カメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8
図9
図10
図11
図12