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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112526
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】トレー、及び、トレーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/00 20060101AFI20240814BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B65D77/00 B
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017605
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】永田 晃大
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正幸
(72)【発明者】
【氏名】古▲瀬▼ 清人
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
【Fターム(参考)】
3E067AB01
3E067BA10A
3E067BA15A
3E067BB01A
3E067BB14A
3E067BC02A
3E067CA24
3E067EA06
3E067EA32
3E067EE38
3E067FA01
3E067FC01
3E067GD07
3E086AD05
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB51
3E086BB85
3E086CA01
(57)【要約】
【課題】熱可塑性樹脂層としてポリメチルペンテンを用いた場合でもトレーの立体形状が崩れにくいトレーを提供する。
【解決手段】台紙と、台紙に積層されトレーの内側面を向くポリメチルペンテン樹脂層12とを備えるトレーであって、ポリメチルペンテン樹脂層12とトレーの外側面とが対向する対向部分9を有している。対向部分9では、ポリメチルペンテン樹脂層12に含まれているポリメチルペンテン樹脂とは別に適用されたポリメチルペンテン樹脂(8)が介在してポリメチルペンテン樹脂層12とトレーの外側面とが互いに固定されている。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製のトレーであって、
台紙と、前記台紙に積層され前記トレーの内側面を向くポリメチルペンテン樹脂層とを備え、
前記ポリメチルペンテン樹脂層と前記トレーの外側面とが対向する対向部分を有し、
前記対向部分では、前記ポリメチルペンテン樹脂層に含まれているポリメチルペンテン樹脂とは別に適用されたポリメチルペンテン樹脂が介在して前記ポリメチルペンテン樹脂層と前記トレーの外側面とが互いに固定されている、トレー。
【請求項2】
内容物を密封するために蓋材とシールされるべきフランジ部を有しており、
前記対向部分が前記フランジ部に存在する、請求項1記載のトレー。
【請求項3】
一枚のブランクシートからその形状が構成されており、
前記対向部分は、前記ブランクシートの折り立てによって生じた部分である、請求項2記載のトレー。
【請求項4】
前記ブランクシートは、前記台紙が存在しないが前記ポリメチルペンテン樹脂層が存在する樹脂層領域を有しており、
前記樹脂層領域における前記ポリメチルペンテン樹脂層が前記対向部分をなしている、請求項3記載のトレー。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載のトレーを製造する製造方法であって、
台紙とポリメチルペンテン樹脂層とを含むブランクシートを作製するブランクシート作製工程と、
前記ブランクシートを折り立てるとともに、少なくとも前記対向部分において前記ポリメチルペンテン樹脂層と前記台紙とを互いに固定するトレー形状形成工程を有し、
前記ブランクシート作製工程は、
前記台紙の一方側の面に前記ポリメチルペンテン樹脂層を積層する積層工程と、
前記台紙の他方側の面のうち少なくとも前記対向部分に相当する部分にポリメチルペンテン樹脂を適用する適用工程と、を有する、製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙製のトレーは、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の小売の場面で、例えば食品の包装材料として使用されている。紙を基材としていることから、環境適合型の包装材料として広く使われている。トレーには内容物が収容され、蓋をされて包装体とされている。
【0003】
特許文献1には、蓋材とシールされることで密封性を確保する紙製のトレーが開示されている。このトレーには蓋材をシールするためのフランジが設けられている。一般に、紙をトレー形状に成形するために折り立てて製函すると、隅部において紙が重なる部分が生じざるを得ず、そこで紙の厚さによる段差が生じて密封性が低下する原因となる。この点、特許文献1のトレーは、内容物を収容する側に積層されている熱可塑性樹脂層がトレーの隅部において蓋材との密着性に寄与するので、密封性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-15906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トレーを電子レンジ調理やオーブン調理に用いるためには、熱可塑性樹脂層に耐熱性が要求される。熱可塑性樹脂層として耐熱性の高いポリメチルペンテンを用いた場合、耐熱性は高まるものの、その離型性の高さから、折り立てと各部の融着とで製函したトレーの立体形状が崩れやすい。そこで本発明は、熱可塑性樹脂層としてポリメチルペンテンを用いた場合でもトレーの立体形状が崩れにくいトレーを提供することを目的とする。また、そのようなトレーを製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、紙製のトレーであって、台紙と、台紙に積層されトレーの内側面を向くポリメチルペンテン樹脂層とを備え、ポリメチルペンテン樹脂層とトレーの外側面とが対向する対向部分を有し、対向部分では、ポリメチルペンテン樹脂層に含まれているポリメチルペンテン樹脂とは別に適用されたポリメチルペンテン樹脂が介在してポリメチルペンテン樹脂層とトレーの外側面とが互いに固定されている、トレーを提供する。
【0007】
このトレーでは、ポリメチルペンテン樹脂層とトレーの外側面とが対向する対向部分を有しており、この部分で両者が固定されてトレーの立体形状を形作っている。従来、この固定をポリメチルペンテン樹脂層の熱融着で行うと、ポリメチルペンテンは離型性が高いので、トレーの外側面との融着部分が剥がれてしまい、立体形状が崩れることが多かった。本発明のトレーでは当該対向部分にポリメチルペンテン樹脂が介在してこれが両者の固定に用いられているので、固定が持続して立体形状が崩れにくい。
【0008】
このトレーは、内容物を密封するために蓋材とシールされるべきフランジ部を有しており、対向部分がフランジ部に存在していてもよい。
【0009】
また、このトレーは、一枚のブランクシートからその形状が構成されており、対向部分は、ブランクシートの折り立てによって生じた部分であってもよい。
【0010】
このブランクシートは、台紙が存在しないがポリメチルペンテン樹脂層が存在する樹脂層領域を有しており、樹脂層領域におけるポリメチルペンテン樹脂層が対向部分をなしていてもい。これによれば、樹脂層領域の可動性が高いのでブランクシートをトレー形状に成形しやすくなるとともに、ポリメチルペンテン樹脂層の面の連続性が保たれているので、トレーを蓋材とシールしたとき密封性が高いものとなりやすい。
【0011】
また、本発明は、上記トレーを製造する製造方法であって、台紙とポリメチルペンテン樹脂層とを含むブランクシートを作製するブランクシート作製工程と、ブランクシートを折り立てるとともに、少なくとも対向部分においてポリメチルペンテン樹脂層と台紙とを互いに固定するトレー形状形成工程を有し、ブランクシート作製工程は、台紙の一方側の面にポリメチルペンテン樹脂層を積層する積層工程と、台紙の他方側の面のうち少なくとも対向部分に相当する部分にポリメチルペンテン樹脂を適用する適用工程と、を有する、製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱可塑性樹脂層としてポリメチルペンテンを用いた場合でもトレーの立体形状が崩れにくいトレーを提供することができる。また、そのようなトレーを製造する製造方法を提供することを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】包装体の分解斜視図である。
図2】トレーの平面図である。
図3】ブランクシートの平面図である。
図4図3のブランクシートの裏面を示す図である。
図5図2のV-V線での断面図である。
図6】他の実施形態のトレーを示す図である。(A)~(C)はブランクシートを折り立てる様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。トレーと蓋とのシール方法がヒートシールである例を示す。
【0015】
<包装体>
図1及び図2に示されているとおり、本実施形態の紙製のトレー2は、フランジ部4を有して開口する容器であり、内容物を収容して蓋(蓋材)3とヒートシールされることで包装体1を構成するものである。なお、図1ではトレー2に収容されている内容物の図示を省略している。
【0016】
(トレー)
トレー2は、平面視で略長方形をなしており、底面部5と、底面部5の周囲を囲う側面部6とを有している。側面部6は、底面部5の周縁から連設されるとともに所定の角度で立ち上がって延びており、容器としての収容部分である凹部を構成している。側面部6は、トレー2の形状の略長方形の辺に沿って延びる部分である第一側面部6aと、略長方形の頂点部分を構成する第二側面部6bとを交互に有している。側面部6の周縁からは、トレー2の内部側からみて外側へ折れ曲がったフランジ部4が連設されている。
【0017】
フランジ部4は、側面部6と同様にトレー2の周方向(底面部5を囲う方向)全周に亘って連続している。そしてフランジ部4は、平面視での長方形の辺を構成する部分では直線状に延びる直線部4aを構成し、当該長方形の頂点にあたる部分(隅部)においては周方向に屈曲して方向転換する方向転換部4bを構成している。換言すれば、直線状に延びるフランジ同士が方向転換部4bで連結されることで、全周で連続した一つのフランジ部4が構成されている。
【0018】
トレー2は、図3及び図4に示されている一枚のブランクシート10を折り立てることによって形成される。図3はトレー2の展開図にあたり、図4はその裏面の図である。図3及び図4の破線部分で山折り又は谷折りされることでトレー2の容器形状が構成される。ブランクシート10は、台紙11と、台紙11に積層されたポリメチルペンテン樹脂層12との層を備えている(図5も参照)。ポリメチルペンテン樹脂層12が積層されている面が、トレー2の内側面を向く側である。なお、ブランクシート10の「折り立て」とは、ブランクシート10がなしている平面とは同一平面にない部分を生じさせるためにブランクシート10を折り曲げる行為、又は、そのように折り曲げられた状態をいう。
【0019】
台紙11としては、紙容器として通常使用され得る板紙を用いることができる。例えば、カード紙、マニラボール紙、コート紙、アイボリー紙が挙げられる。また、食品用一次容器として使用するためには、カード紙、アイボリー紙等の、古紙の混入の虞が小さい板紙を用いることが好ましい。また、印刷適性を良好なものにするために、板紙上のコート層が設けられてもよい。
【0020】
台紙11の面のうち、トレー2の外側面となる側の面にはアンカーコート層が形成されていてもよい。
【0021】
ポリメチルペンテン樹脂層12を構成する樹脂は、ポリメチルペンテンである。また、ポリメチルペンテン樹脂層12には、ポリメチルペンテンのほかにポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)やポリエステルが含まれていてもよい。本明細書において「ポリメチルペンテン」とは、4-メチル-1-ペンテンの単重合体である場合と、4-メチル-1-ペンテンと他のα-オレフィンとの共重合体である場合とを含む。当該α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン等の、炭素数が2~20の化合物が挙げられる。
【0022】
ポリメチルペンテンが共重合体である場合、その共重合体は、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位が60モル%以上99モル%以下であってもよく、70モル%以上98モル%以下であってもよく、80モル%以上97モル%以下であってもよく、90モル%以上95モル%以下であってもよい。これに併せ、当該共重合体は、α-オレフィンに由来する構成単位が1モル%以上40モル%以下であってもよく、2モル%以上30モル%以下であってもよく、3モル%以上20モル%以下であってもよく、5モル%以上10モル%以下であってもよい。
【0023】
また、ポリメチルペンテンとしては、4-メチル-1-ペンテンと、(メタ)アクリル酸又はそのエステルとの共重合体であってもよく、無水マレイン酸変性ポリメチルペンテン等の酸変性ポリメチルペンテンであってもよい。ポリ(4-メチル-1-ペンテン)としては、三井化学(株)から商品「TPX RT18」、「TPX MX002」、「TPX DX310」として入手することができる。
【0024】
ポリメチルペンテン樹脂層12の厚さは、20μm~150μmであってもよく、30μm~130μmであってもよく、50μm~100μmであってもよい。
【0025】
(ブランクシート)
ブランクシート10は、平面視で長辺と短辺を交互に有する略八角形をなしている。その長辺に沿う部分が、トレー2のフランジ部4のうち直線状の部分を構成すべき部分にあたり、短辺に沿う部分が、方向転換部4bを構成すべき部分にあたる。ブランクシート10は、短辺に沿う部分それぞれ(合計四か所)において、台紙11が存在しないがポリメチルペンテン樹脂層12が存在する二つの樹脂層領域13,13を有している。なお、図3及び図4では、トレー2を構成した場合と共通する符号を付している。
【0026】
樹脂層領域13,13は、いずれもブランクシート10の外周側(フランジ部4に相当する部分)からブランクシート10の内部側へ向かって延びる凹形状をなしている。凹形状のうち、フランジ部4に相当する開口部分(短辺に近い部分)は、トレー2を構成したときに互いに衝突しないように、又は、重ならないように十分な幅を有する幅広部を構成している。凹形状は、この幅広部から底面部5となるべき部分へ向かうに従って先細り形状となっており、凹形状の底(短辺から遠い部分)は底面部5となるべき部分に達しない程度の位置にある。樹脂層領域13,13がこのような凹形状をなしていることによって、トレー2を構成したときに第二側面部6bとなる部分が、その両側にそれぞれ樹脂層領域13を挟んで第一側面部6aとなる部分が位置するように画成されている。ブランクシート10の作製においては、樹脂層領域13,13がこのような凹形状をなすように台紙11を型抜きし、これに略八角形形状のポリメチルペンテン樹脂層12を積層する。あるいは、ブランクシート10の作製は、台紙に凹形状に相当する領域の型抜きをしてからポリメチルペンテン樹脂層12を積層し、その後に略八角形状に型抜きする手順としてもよい。
【0027】
ブランクシート10の裏面には、図4に示されているとおり、樹脂層領域13,13の近傍の台紙の面に、ポリメチルペンテン樹脂が適用された補強層8が形成されている。補強層8は、ブランクシート10を折り立てた際に台紙が二重に重なる部分に形成されている(図5も参照)。本実施形態では、第一側面部6a及び第一側面部6aから外側へ向けて連設されたフランジ部4となる部分のうち、トレー2の周方向側の端部、すなわち樹脂層領域13に隣接する領域に補強層8が形成されている。なお、本実施形態では補強層8は樹脂層領域13の近傍にのみ形成されているが、台紙の全面に形成されていてもよい。また、補強層8は樹脂層領域13の近傍であってフランジ部4となる部分のみに形成されていてもよい。
【0028】
補強層8は、ポリメチルペンテン樹脂を含む層である。「ポリメチルペンテン」の意味は、ポリメチルペンテン樹脂層12を構成する樹脂としての「ポリメチルペンテン」と同義である。
【0029】
補強層8の形成方法は特に限定されない。例えば、ポリメチルペンテンの溶液又は分散液を塗布したり、ポリメチルペンテンの粉末を他の樹脂に分散させて塗工したり、印刷したりしてもよい。ここで、ポリメチルペンテンを溶液又は分散液とするために用いる溶媒としては、炭化水素であってもよく、エーテルであってもよく、これらの混合物であってもよい。混合物を用いる場合、その混合比(体積比)は炭化水素:エーテル=20:80~85:15であってもよく、33:67~80:20であってもよい。この混合比であると、ポリメチルペンテンを高濃度で容易に溶解又は分散でき、得られた溶液又は分散液も安定性が高い。
【0030】
炭化水素は、塩素、臭素、ヨウ素等の原子を含んでいてもよい炭化水素、例えば、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素(例えば、メチル基を有していてもよい、炭素数が5~7のシクロアルカン)等であってもよい。エーテルは、環状エーテル(例えば、1個のエーテル結合を有する3~7員環状エーテル)であってもよい。
【0031】
ポリメチルペンテンの混合割合は、溶媒100重量部に対して0.01~25重量部であってもよく、0.05~10重量部であってもよく、0.10~5重量部であってもよい。
【0032】
ブランクシート10は、台紙の一方側の面にポリメチルペンテン樹脂層12を積層する積層工程と、台紙の他方側の面にポリメチルペンテン樹脂を適用して補強層8を形成する適用工程とを経て作製される(ブランクシート作製工程)。積層工程は、例えば台紙の上にポリメチルペンテン樹脂を押出しラミネートすることで行うことができる。押出しラミネートする前に、台紙にコロナ処理を施してもよい。コロナ処理を施すと、台紙とポリメチルペンテン樹脂層12との積層がより強固になる。
【0033】
適用工程は、印刷や塗工によって行うことができる。印刷の場合はフレキソ印刷が好ましい。台紙の全面に補強層8を形成する場合は、積層工程と同様の押出しラミネートによって行ってもよい。積層工程と適用工程は、いずれを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0034】
(トレー形状の構成方法)
ブランクシート10の各部を折り立てることによってトレー2の容器形状が構成される。ここで、折り立てによって形成される方向転換部4b及び第二側面部6bの構造について説明する。図5に示されているとおり、方向転換部4bは、第二側面部6bとなる部分の上に、台紙が二重に重なっている部分と台紙が重なっていない部分とが形成されている。トレー2の形成に際しては、第二側面部6bとなる部分に対して、樹脂層領域13,13とともに第一側面部6a,6aとなる部分が両側から迫り、第二側面部6bとなる部分の上、かつ、トレー2の内側となる側に、樹脂層領域13,13及び第一側面部6a,6aが重ねられる。これにより、不可避的に折り返された樹脂層領域13,13同士がその折り返し部分を第二側面部6b上で向き合った恰好になる。当該折り返し部分が向き合った箇所では、互いの樹脂層領域13,13が接触しているか、又は、僅かに隙間が生じている。ここで、第一側面部6a,6aを構成する台紙11の端面11a,11aが、樹脂層領域13,13を構成するポリメチルペンテン樹脂層12によって覆われており、方向転換部4bを平面視したときに端面11a,11aが露出していない状況となっている。ここで「露出していない」とは、仮にトレー2の上面側から液体を垂らしたとしても当該液体に直接接触しないように物理的に保護されて状態をいう。
【0035】
方向転換部4bでは、台紙11が二重に重なっている領域(すなわち第二側面部6bと第一側面部6aとが重なっている領域)と、台紙11が重なっておらず折り返された樹脂層領域13,13同士が直接向き合っている領域とが存在する。樹脂層領域13,13同士が直接向き合っている領域では樹脂層領域13,13の折り返しによって、ポリメチルペンテン樹脂層12が合計三層重なり合っている。ポリメチルペンテン樹脂層12がこのように重なり合うことによって、第二側面部6bと第一側面部6aの台紙11間に生じている段差が緩和されている。段差が緩和された状況は、蓋3とのヒートシール時に樹脂層領域13、13及びポリメチルペンテン樹脂層12が溶融した後にも存続する。
【0036】
また、方向転換部4bでは、ポリメチルペンテン樹脂層12とトレー2の外側面(ここでは第一側面部6aの外側面)とが対向する対向部分9を有している。対向部分9では、ポリメチルペンテン樹脂層12と第一側面部6aの外側面との間に補強層8が介在しており、補強層8によってポリメチルペンテン樹脂層12と第一側面部6aの外側面とが互いに固定されている(トレー形状形成工程)。
【0037】
ブランクシート10をトレー2の形状に折り立てた後、台紙11が二重に重なっている領域のうちの任意の箇所に超音波をあてて、重なり部分を熱融着させる。超音波装置のアンビルとヘッドとを所望の箇所にあてがうことで熱融着が達成される。このとき、補強層8に含まれているポリメチルペンテン樹脂と、ポリメチルペンテン樹脂層12とがいずれも溶融して、互いの結合が強固になる。これにより、トレー2の形状が保持される。
【0038】
(蓋)
蓋3は、樹脂製のフィルムである。図1では、蓋3の形状をトレー2の平面視形状と同一としているが、トレー2の平面視形状よりも大きな相似形としてもよく、トレー2の平面視形状の凹凸に関わらず、長方形であってもよい。蓋3の形成方法としては、トレー2とのヒートシール時は長尺の樹脂フィルムであってもよく、この場合、ヒートシール後に裁断することで蓋3となる。蓋3の材質としては、ポリメチルペンテン樹脂層12を構成する材質と同様であってもよく、ポリメチルペンテン樹脂層12を構成する材質と非相溶または部分相溶な海島構造を有してもよい。海島構造は、蓋3の表面の外形を形成する海状部と海状部内に分散した複数の島状部とから構成される。島状部を構成する樹脂の材質としては、ポリメチルペンテン樹脂層12と非相溶または部分相溶である限り、任意の熱可塑性樹脂を用いることができる。蓋3が海島構造を有する場合、海島構造を有しない樹脂基材と海島構造を有する層が積層されていてもよい。
【0039】
<包装体の作製方法>
包装体の作製方法、すなわち、トレー2と、蓋3になる樹脂フィルムとをヒートシールして包装体とする方法について説明する。上記の方法で構成したトレー2に内容物を入れ、その上から蓋3となるフィルムを被せる。ここで、フィルムは長尺のフィルムであるとする。そして、フィルムの上からトレー2のフランジ部4に対してシールヘッドで加熱及び加圧をして、フィルムとトレー2とをヒートシールする。ヒートシールの際、トレー2のフランジ部4に掛かる圧力の受台として、フランジ部4を支えられるように成形された受台を用いてもよい。最後に、フィルムを蓋3の形状に裁断して包装体1が完成する。
【0040】
<効果>
本実施形態のトレー2では、ポリメチルペンテン樹脂層12とトレーの外側面とが対向する対向部分9を有しており、この部分で両者が固定されてトレー2の立体形状を形作っている。従来、この固定をポリメチルペンテン樹脂層12の熱融着で行うと、ポリメチルペンテンは離型性が高いので、トレー2の外側面との融着部分が剥がれてしまい、立体形状が崩れることが多かった。これに対し、本実施形態のトレー2では対向部分9にポリメチルペンテン樹脂が介在して(補強層8)これが両者の固定に用いられているので、固定が強固に持続する。したがって、トレー2の立体形状が崩れにくい。
【0041】
トレー2は、食品を収容する内側面にポリメチルペンテン樹脂層12を有するので、耐熱性が高く、電子レンジ調理やオーブン調理に十分に耐える。
【0042】
また、一枚のブランクシートからトレーを構成する場合、側面部を構成すべくブランクシートを折り立てた際に、隅部においてシートが重なり合い、他の部分との段差が生じるのが通常である。従来、トレーと蓋とをヒートシールしたときに、ヒートシール面において段差が生じている隅部と、段差がないそれ以外の部分とで圧力に差異が生じ、それ故、密封性に差異が生じやすかった。また、密封性向上のためにヒートシール強度を追求すると、代わりに開封性が低下するので、これらをバランスさせることが課題となっていた。
【0043】
この点、本実施形態の包装体1では、トレー2が有するフランジ部4において、段差が生じにくい直線部4aと段差が生じやすい方向転換部4bとでヒートシール形状が異なっており、かつ、方向転換部4bにおいて台紙11の端面11aがポリメチルペンテン樹脂層12によって覆われることで外部に露出することが防止されている。これにより、ヒートシール時に掛かる圧力が直線部4aと方向転換部4bとの構造上の相違に応じて分散され、かつ、溶融した熱可塑性樹脂により端面11aが保護される。
【0044】
また、方向転換部4bのヒートシール面においては、台紙11の端面11aがポリメチルペンテン樹脂層12によって覆われているので、ヒートシール時にポリメチルペンテン樹脂層12の溶融によって端面11a周辺の閉塞性が高まり、包装体1の密封性が向上する。樹脂層領域13,13が折り返されて直接向き合っている部分(図5参照)では、ポリメチルペンテン樹脂層12の溶融によって互いに融着し、トレー2の内外方向(図5の奥行方向)の通気も封じられる。
【0045】
トレー2を構成するブランクシート10は、隅部一箇所あたり二つの樹脂層領域13,13を有しており、樹脂層領域13,13には台紙11が存在しないため可動性が高い。これによりブランクシート10はトレー形状に成形しやすく、同時にポリメチルペンテン樹脂層12の面の連続性が保たれているので、トレー2と蓋3との密封性が高いものとなりやすい。また、ブランクシート10が樹脂層領域13,13を有することで、第二側面部6b上で台紙11の折り返しが生じることがなくトレー2を組み立てることができるので、トレー2の隅部(方向転換部4b及び第二側面部6bを含んだ部分)において台紙11の厚さによって生じる段差を小さくすることができる。
【0046】
これに加えて、方向転換部4bのうち、蓋3とヒートシールされる面側かつ台紙11が重ならない部分において樹脂層領域13,13が折り重なることによって、台紙11が重なる部分と重ならない部分との間で生じるべき段差が更に小さくされている。これにより、台紙11が重ならない部分に樹脂層領域13,13が位置しているので、これがトレー2と蓋3とのヒートシールに寄与して密封性が高くなりやすい。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ブランクシート10の時点で台紙11に積層されていたポリメチルペンテン樹脂層12と、蓋3とが直接ヒートシールされている態様を示したが、方向転換部に生じている段差を一層緩和するために、別途、熱可塑性樹脂シートを方向転換部4bの上に載せたうえで、蓋となるフィルムとのヒートシールをしてもよい。あるいは、台紙11の端面11aを覆うために、同様の熱可塑性樹脂シートを方向転換部4bの上に載せたうえで、蓋となるフィルムとのヒートシールをしてもよい。
【0048】
また、本発明は図6に示された形態のように、樹脂層領域13を備えない形態であってもよい。図6に示されているブランクシート10A及びトレー2Aの構成材料は、上記実施形態と同一である。
【0049】
図6(A)~(C)は、ブランクシート10Aが折り立てられてトレー2Aが構成される様子を示している。上記実施形態と異なる点は、フランジ部4の方向転換部4bの形状、及び、これに伴うブランクシート10Aの形状である。図6(A)に示されているとおり、ブランクシート10Aにおいて、二つの隣り合う第一側面部6aとなる部分に挟まれた領域には、第二側面部6bとなる部分のほか、二つの対面領域6c,6cが連設されている。これらの連設順は、第一側面部6aとなる部分、第二側面部6bとなる部分、一方の対面領域6c、他方の対面領域6c、第一側面部6aとなる部分、の順である。第二側面部6bとなる部分と対面領域6cとの間は山折り線33、対面領域6c同士の間は谷折り線34となっている。
【0050】
第一側面部6aとなる部分、第二側面部6bとなる部分、及び、対面領域6cは、その周縁部にトレー2Aのフランジ部となる部分が連設されている。ただし、二つの対面領域6cのうち、山折り線33と谷折り線34とに挟まれた対面領域6cには当該部分が連設されていない。フランジ部となる部分には、周方向に延びる二本の山折り線31,32が設けられている。
【0051】
第二側面部6bとなる部分に連設されているフランジ部となる部分41の裏面には補強層8が設けられている。図6(B)に示されているとおり、ブランクシート10Aを折り立てると、対面領域6c,6c同士が対面していずれも外観で見えなくなるとともに、フランジ部となる部分41の裏面の補強層8が、対面領域6cに連設されたフランジ部となる部分42と対向する。すなわち、この実施形態においても、ブランクシート10Aのポリメチルペンテン樹脂層とトレー2Aの外側面とが対向する対向部分9が生じている。補強層8を介してフランジ部となる部分41,42同士を互いに熱融着したあと、図6(C)に示されているとおり、山折り線31,32を折り曲げてフランジ部4(4a,4b)を形成すると、トレー2Aが完成する。
【0052】
また、本発明は、トレーの内側面であるポリメチルペンテン樹脂層とトレーの外側面とが接触する形状のトレーであれば適用可能であるので、トレーの角部のほか、容器内部を仕切る仕切り構造と側面部との合流部分のように、形状が変化する部分において適用する機会がある。
【実施例0053】
以下、実験例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実験例に限定されるものではない。
【0054】
トレーにおける対向部分の固定の安定性を実験により確かめた。以下の実験では、図5に示されている対向部分9が存在する台紙の重ね合わせ部分を様々な積層構成で再現して、熱融着による固定強度(引張強度)や剥離の有無を調べた。
【0055】
ポリメチルペンテンのフィルム(高剛性)200mgを破砕して瓶に入れ、シクロヘキサン5gを加え、40~50℃に加温して完全に溶解させた(以下、これを「PMP溶液」と呼ぶ)。
【0056】
以下の各積層体を準備した。積層体の形状は80mm×15mmの短冊状(長方形)とした。なお、下記において「紙」とは、坪量260g/mのNEWタフアイボリー(北越コーポレーション株式会社製)である。「押出しPMP層」とは、ポリメチルペンテン樹脂を紙の上に押出しラミネートした層を意味し、厚さは平均で64μmであった。
・積層体1…紙
・積層体2…押出しPMP層/紙
・積層体3…押出しPMP層/紙/ヒートシール(HS)ニス層
・積層体4…押出しPMP層/紙/PMP溶液をスポイトで滴下して塗工した層
【0057】
上記(1)~(4)の積層体を用いて、以下の組み合わせにより対向部分を再現した。
・実験例1…積層体1の紙層側と、積層体2のPMP層側との融着
・実験例2…積層体3のHSニス層側と、積層体2のPMP層側との融着
・実験例3…積層体2のPMP層側と、積層体2のPMP層側との融着
・実験例4…積層体4のPMP溶液塗工層側と、積層体2のPMP層側との融着
【0058】
(実験例1)
積層体1の紙層側と積層体2のPMP層側とが対面するように、短冊状の両積層体を重ね合わせた。短冊の長辺方向の中央位置よりも少し片側へ寄った位置において、両積層体を熱融着した(テスター産業社製のヒートシールテスター「TP-701-B」を使用。シール圧は0.2MPa、シール時間は5秒間)。融着の長さは短冊の短辺の長さと同じ15mm、融着の長辺方向の線幅は10mmとした。その後、両積層体の重ね合わせを開き、融着されている領域の短冊長辺方向の端部のうち短冊の中央に近い側の端部でそれぞれの積層体を互いに遠ざかる方向へ90°に折り曲げ、両積層体の折り曲げ角度の合計で180°に開いた形状とした。両端部をそれぞれテンシロンの腕で挟んで固定し、片方の腕を当該180°の方向へ300mm/minの速度で移動させて融着部分を引き剥がし、引き剥がしに必要な力を測定した。この実験において、熱融着の温度は250℃、280℃、300℃の三種類で行った。各温度で三回ずつ行った平均値を測定結果とした。
【0059】
(実験例2~4)
上記実験例2~4の積層体の組み合わせにて、実験例1と同様に実験を行った。
【0060】
実験結果を表1に示す。表1において「不能」は、熱融着後、テンシロンの腕に挟む前に融着部分が自然に剥離したことを示している。「-」は実験を行わなかったことを示している。
【表1】
【0061】
紙と押出しPMP層とを直接熱融着させた実験例1、及び、HSニス層と押出しPMP層とを熱融着させた実験例2では、融着がほとんど有効でなかったことが分かる。紙と押出しPMP層との間にポリメチルペンテン樹脂(押出しPMP層)が介在している実験例3では、融着部分に引張強度が得られた。紙と押出しPMP層との間にポリメチルペンテン樹脂(ポリメチルペンテン溶液塗工層)が介在している実験例4でも、融着部分に引張強度が得られた。しかも実験例4では、280℃での熱融着で実験例3よりも高い引張強度を得られた。したがって、実験例4の積層構成では熱融着の温度を低くすることができ、紙を焦がしにくいといえる。
【0062】
また、対向部分が実験例1~4での積層体の組み合わせとなるように図3に示された形状のブランクシートを各々作製し、折り立て及び超音波融着によりトレーを製函した。その結果、実験例1及び実験例2の組み合わせでは対向部分の固定が不良であってトレー形状を維持できなかった。実験例3及び実験例4の積層体の組み合わせでは、対向部分が良好に固定され、トレー形状を維持できた。これにより、実験例3及び実験例4で得られた引張強度の大きさが、トレー形状の維持に有効であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、食品の包装に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…包装体、2,2A…トレー、3…蓋、4…フランジ部、4a…直線部、4b…方向転換部、5…底面部、6…側面部、6a…第一側面部、6b…第二側面部、6c…対面領域、8…補強層、9…対向部分、10,10A…ブランクシート、11…台紙、11a…端面、12…ポリメチルペンテン樹脂層、13…樹脂層領域、31,32,33…山折り線、34…谷折り線、41,42…フランジ部となる部分。

図1
図2
図3
図4
図5
図6