(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112528
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ナノ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/14 20060101AFI20240814BHJP
B82B 1/00 20060101ALI20240814BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240814BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240814BHJP
【FI】
C08J3/14 CER
B82B1/00 ZNM
C08J3/14 CEZ
A61K9/51
A61K47/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017609
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】水口 智貴
(72)【発明者】
【氏名】堤 健之
(72)【発明者】
【氏名】林 素子
【テーマコード(参考)】
4C076
4F070
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076AA95
4C076EE26F
4C076FF16
4C076FF70
4F070AA54
4F070AB01
4F070AB08
4F070AB13
4F070AB22
4F070AC12
4F070AC20
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4F070AC47
4F070AC50
4F070AE28
4F070DA24
4F070DC07
4F070DC16
(57)【要約】
【課題】本開示は、より簡略化した手順で両親媒性ポリマーをナノ粒子化する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】酸性基を有する両親媒性ポリマーであって前記酸性基が実質的にイオン化されていないものの良溶媒溶液を、貧溶媒溶液と混合することにより、前記貧溶媒溶液中で前記両親媒性ポリマーのイオン化及び粒子化を行う工程を含むナノ粒子の製造方法は、イオン化及び粒子化を同時に行うことで、より簡略化した手順で両親媒性ポリマーをナノ粒子化することを可能とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性基を有する両親媒性ポリマーであって前記酸性基が実質的にイオン化されていないものの良溶媒溶液を、貧溶媒溶液と混合することにより、前記貧溶媒溶液で前記両親媒性ポリマーのイオン化及び粒子化を行う工程を含む、ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記良溶媒溶液1体積部当たりの前記貧溶媒溶液の使用量が0.5体積部以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記貧溶媒溶液の25℃でのpHが、5以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記貧溶媒溶液が、前記酸性基を有する両親媒性ポリマーに対して塩基として作用する物質を含む貧溶媒溶液である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記貧溶媒溶液が中性のアルカリ金属塩を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記中性のアルカリ金属塩が、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記酸性基を有する両親媒性ポリマーがグラフトポリマーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記酸性基を有する両親媒性ポリマーが、親水性主鎖と、疎水性基Rを有する側鎖とを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記親水性主鎖がポリアミノ酸である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
酸性基を有する両親媒性ポリマー分子中、前記疎水性基Rが占める比率が、前記酸性基を有する両親媒性ポリマー分子を構成する単位の総数に対する前記疎水性基Rを有する単位の数の割合で40~80%である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
前記酸性基が、カルボキシル基、硫酸基及びリン酸基からなる群より選択される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
前記良溶媒の、20℃での前記両親媒性ポリマーの溶解度が5mg/mL以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
前記良溶媒が、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンからなる群より選択される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
前記貧溶媒が水である、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナノ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラッグデリバリーシステムの薬剤キャリアとして、両親媒性ポリマーが形成するナノ粒子が有用と考えられている。中でも、疎水性基を有する側鎖を持つポリアミノ酸から形成されるナノ粒子は、アジュバント効果も奏する機能性キャリアとして提案されている。
【0003】
ポリアミノ酸系両親媒性ポリマーのような両親媒性ポリマーをナノ粒子化させるためには、両親媒性ポリマーがイオンの形態で溶解した良溶媒溶液を調製し、その後、貧溶媒と混合するのが通常である。
【0004】
例えば、特許文献1では、疎水化ポリ(γ-グルタミン酸)からなるナノ粒子の製造方法であって、上記疎水化ポリ(γ-グルタミン酸)を弱アルカリ性水溶液と炭素数1から3のアルコールとの混合溶媒からなる良溶媒に溶解させた溶液と、貧溶媒とを混合して、ナノ粒子を生成させることを特徴とする修飾ポリ(γ-グルタミン酸)からなるナノ粒子の製造方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2では、ポリ(γ-グルタミン酸)、ポリ(α-グルタミン酸)、およびポリ(アスパラギン酸)よりなる群から選択されるポリアミノ酸またはその塩と、一般式(I):A-NH2[式中、Aは、疎水性部位を示す。]で表される疎水性第1級アミン化合物またはその塩とのイオン化されたグラフト共重合体を含む、ナノ粒子の製造方法であって、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、アルカリ金属のリン酸塩、アルカリ金属のリン酸一水素塩、アルカリ金属のリン酸二水素塩、アルカリ金属の有機酸塩、またはアルカリ金属の酸性アミノ酸塩を作用させてイオン化されたグラフト共重合体を、ナノ粒子化する工程を含む、ナノ粒子の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-285624号公報
【特許文献2】国際公開第2014/208611号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
両親媒性ポリマーをナノ粒子化するには、一旦、両親媒性ポリマーがイオンの形態で溶解した良溶媒溶液を調製し、その後、貧溶媒と混合する必要がある。このように、ナノ粒子化には少なくとも2段階の工程を行う必要がある点で、未だ改善の余地がある。しかしながら、ナノ粒子化を行うには、それに先立ってポリマーをイオン化しておく必要があること、及び当該ポリマーを溶解状態としておくことが技術常識上必須であるため、上記少なくとも2段階の工程を行うことは不可避であり、それよりも工程を簡略化することは不可能であった。しかしながら、ナノ粒子の製造効率を向上させるには、工程の簡略化が望まれる。
【0008】
そこで、本開示は、より簡略化した手順で両親媒性ポリマーをナノ粒子化する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、予想外にも、実質的に非イオン化状態のポリマー溶液を貧溶媒と混合することで、イオン化と同時にナノ粒子形成を行うことが可能であることを見出した。本開示はこの知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 酸性基を有する両親媒性ポリマーであって前記酸性基が実質的にイオン化されていないものの良溶媒溶液を、貧溶媒溶液と混合することにより、前記貧溶媒溶液で前記両親媒性ポリマーのイオン化及び粒子化を行う工程を含む、ナノ粒子の製造方法。
項2. 前記良溶媒溶液1体積部当たりの前記貧溶媒溶液の使用量が0.5体積部以上である、項1に記載の製造方法。
項3. 前記貧溶媒溶液の25℃でのpHが、5以上である、項1又は2に記載の製造方法。
項4. 前記貧溶媒溶液が、前記酸性基を有する両親媒性ポリマーに対して塩基として作用する物質を含む貧溶媒溶液である、項1~3のいずれかに記載の製造方法。
項5. 前記貧溶媒溶液が中性のアルカリ金属塩を含む、項1~4のいずれかに記載の製造方法。
項6. 前記中性のアルカリ金属塩が、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムである、項5に記載の製造方法。
項7. 前記酸性基を有する両親媒性ポリマーがグラフトポリマーである、項1~6のいずれかに記載の製造方法。
項8. 前記酸性基を有する両親媒性ポリマーが、親水性主鎖と、疎水性基Rを有する側鎖とを含む、項1~7のいずれかに記載の製造方法。
項9. 前記親水性主鎖がポリアミノ酸である、項8に記載の製造方法。
項10. 酸性基を有する両親媒性ポリマー分子中、前記疎水性基Rが占める比率が、前記酸性基を有する両親媒性ポリマー分子を構成する単位の総数に対する前記疎水性基Rを有する単位の数の割合で40~80%である、項8又は9に記載の製造方法。
項11. 前記酸性基が、カルボキシル基、硫酸基及びリン酸基からなる群より選択される、項1~10のいずれかに記載の製造方法。
項12. 前記良溶媒の、20℃での前記両親媒性ポリマーの溶解度が5mg/mL以上である、項1~11のいずれかに記載の製造方法。
項13. 前記良溶媒が、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンからなる群より選択される、項1~12のいずれかに記載の製造方法。
項14. 前記貧溶媒が水である、項1~13のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、より簡略化した手順で両親媒性ポリマーをナノ粒子化する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示のナノ粒子の製造方法は、酸性基を有する両親媒性ポリマーであって前記酸性基が実質的にイオン化されていないものの良溶媒溶液を、貧溶媒溶液と混合することにより、前記貧溶媒溶液中で前記両親媒性ポリマーのイオン化及び粒子化を行う工程を含むことを特徴とする。
【0013】
[1.酸性基を有する両親媒性ポリマー]
本開示における酸性基を有する両親媒性ポリマーは、酸性基を有し且つ両親媒性であることを限度として特に限定されないが、典型的には、親水性主鎖と、疎水性基Rを有する側鎖とを含むポリマーが用いられる。
【0014】
[1-1.ポリマーの種類]
酸性基を有する両親媒性ポリマーの種類としては特に限定されず、例えば、グラフトポリマー及びランダムポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらのポリマーの中でも、好ましくはグラフトポリマーが挙げられる。
【0015】
[1-2.親水性主鎖]
酸性基を有する両親媒性ポリマーの親水性主鎖の好ましい例としては、ポリアミノ酸の親水性主鎖が挙げられる。また、酸性基を有する両親媒性ポリマーの親水性主鎖の好ましい例としては、酸性基を側鎖に持つ親水性主鎖が挙げられる。ポリアミノ酸の親水性主鎖を持つ両親媒性のグラフトポリマーの構造を下記一般式(1)に示す。式(1)において、Ln、Lm、及びLlはアミノ酸骨格(アミノ基とカルボキシル基の間に介在する連結基であり、側鎖を有する)を表し、GAはイオン化されていない酸性基を表し、GA-はイオン化された酸性基を表し、Rは疎水性基を表し、Lは、直接結合又は2価の連結基を表す。また、Mxは、イオン化されていない酸性基GAを有するモノマー単位を表し、Myは、イオン化された酸性基GA-を有するモノマー単位を表し、Mzは、疎水性基Rを有するモノマー単位を表す。n、m及びlは、それぞれ、モノマー単位Mx、My、Mzの数を表す。なお、下記式(1)は、ポリアミノ酸の親水性主鎖を持つ両親媒性ポリマーの良溶媒中に溶解させた場合の構造であり、溶解前においてはGA-基が金属元素と塩を形成している。
【0016】
【0017】
酸性基を有する両親媒性ポリマーの親水性主鎖のより好ましい例としては、酸性基を側鎖に持つ酸性アミノ酸のポリマーが挙げられ、さらに好ましくは、ポリ(γ-グルタミン酸)、ポリ(α-グルタミン酸)、及びポリ(アスパラギン酸)が挙げられ、特に好ましくはポリ(γ-グルタミン酸)が挙げられる。ポリ(γ-グルタミン酸)の親水性主鎖を持つ両親媒性のグラフトポリマーの構造を下記一般式(1a)に示す。式(1)において、Rは疎水性基を表す。なお、下記式(1a)は、ポリ(γ-グルタミン酸)の親水性主鎖を持つ両親媒性ポリマーの良溶媒中に溶解させた場合の構造であり、溶解前においてはCOO-基が金属元素と塩を形成している。
【0018】
【0019】
[1-3.疎水性基R]
酸性基を有する両親媒性ポリマーの疎水性基Rとしては限定されず、例えば、[I]置換又は無置換の芳香族基、及び[II]置換又は無置換の脂肪族基が挙げられる。酸性基を有する両親媒性ポリマー分子には、疎水性基Rとして、1種の基が単独で含まれていてもよいし、2種以上の異なる基が含まれていてもよい。
【0020】
[1-3-1.[I]置換又は無置換の芳香族基]
前記[I]置換又は無置換の芳香族基としては、芳香族基を有していることを限度として特に限定されないが、例えば、[I-1]置換又は無置換のアリール基、及び[I-2]置換又は無置換のヘテロアリール基等が挙げられる。
【0021】
前記[I-1]置換又は無置換のアリール基としては、C6-14アリール基又はそれにさらに置換基を有するものが挙げられ、C6-14アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基等が挙げられる。
【0022】
前記[I-1]置換又は無置換のアリール基が置換基を有する場合の当該置換基の数としては、例えば1~5個、好ましくは1~3個が挙げられる。当該置換基の数が2個以上の場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0023】
前記[I-1]置換又は無置換のアリール基が置換基を有する場合の当該置換基としては、例えば、以下の(a1)~(a65)に示す基が挙げられる。
【0024】
(a1)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基(例えば、メチル、クロロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、エチル、2-ブロモエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、プロピル、2,2-ジフルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、イソプロピル、ブチル、4,4,4-トリフルオロブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、5,5,5-トリフルオロペンチル、ヘキシル、6,6,6-トリフルオロヘキシル等)、
(a2)C6-14アリール基(例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル等)、
(a3)C7-16アラルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチル、フェニルプロピル等)、
(a4)ハロゲン基(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)、
(a5)ニトロ基、
(a6)シアノ基、
(a7)ヒドロキシ基、
(a8)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、
(a9)C6-14アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、ナフトキシ)、
(a10)C7-16アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ)、
(a11)5~14員芳香族複素環オキシ基(例えば、ピリジルオキシ)、
(a12)3~14員非芳香族複素環オキシ基(例えば、モルホリニルオキシ、ピペリジニルオキシ)、
(a13)C1-6アルキル-カルボニルオキシ基(例えば、アセトキシ、プロパノイルオキシ)、
(a14)C6-14アリール-カルボニルオキシ基(例えば、ベンゾイルオキシ、1-ナフトイルオキシ、2-ナフトイルオキシ)、
(a15)C1-6アルコキシ-カルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ)、
(a16)モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイルオキシ基(例えば、メチルカルバモイルオキシ、エチルカルバモイルオキシ、ジメチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシ)、
(a17)C6-14アリール-カルバモイルオキシ基(例えば、フェニルカルバモイルオキシ、ナフチルカルバモイルオキシ)、
(a18)5~14員芳香族複素環カルボニルオキシ基(例えば、ニコチノイルオキシ)、
(a19)3~14員非芳香族複素環カルボニルオキシ基(例えば、モルホリニルカルボニルオキシ、ピペリジニルカルボニルオキシ)、
(a20)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例えば、メチルスルホニルオキシ、トリフルオロメチルスルホニルオキシ)、
(a21)C1-6アルキル基で置換されていてもよいC6-14アリールスルホニルオキシ基(例えば、フェニルスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシ)、
(a22)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ)、
(a23)5~14員芳香族複素環基(例えば、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニルなどの5~6員単環式芳香族複素環基;
ベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、イミダゾピリジニル、チエノピリジニル、フロピリジニル、ピロロピリジニル、ピラゾロピリジニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピラジニル、イミダゾピリミジニル、チエノピリミジニル、フロピリミジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、オキサゾロピリミジニル、チアゾロピリミジニル、ピラゾロトリアジニル、ナフト[2,3-b]チエニル、フェノキサチイニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、プリニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニルなどの8~14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)芳香族複素環基が挙げられる。)、
(a24)3~14員非芳香族複素環基(例えば、アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロフラニル、ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、テトラヒドロイソチアゾリル、テトラヒドロオキサゾリル、テトラヒドロイソオキサゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピリジニル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロピリダジニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、アゼパニル、ジアゼパニル、アゼピニル、オキセパニル、アゾカニル、ジアゾカニルなどの3~8員単環式非芳香族複素環基;
ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾチアゾリル、ジヒドロベンゾイソチアゾリル、ジヒドロナフト[2,3-b]チエニル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロキノリル、4H-キノリジニル、インドリニル、イソインドリニル、テトラヒドロチエノ[2,3-c]ピリジニル、テトラヒドロベンゾアゼピニル、テトラヒドロキノキサリニル、テトラヒドロフェナントリジニル、ヘキサヒドロフェノチアジニル、ヘキサヒドロフェノキサジニル、テトラヒドロフタラジニル、テトラヒドロナフチリジニル、テトラヒドロキナゾリニル、テトラヒドロシンノリニル、テトラヒドロカルバゾリル、テトラヒドロ-β-カルボリニル、テトラヒドロアクリジニル、テトラヒドロフェナジニル、テトラヒドロチオキサンテニル、オクタヒドロイソキノリルなどの9~14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)非芳香族複素環基が挙げられる。)、
(a25)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル-カルボニル基(例えば、アセチル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル)、
(a26)C6-14アリール-カルボニル基(例えば、ベンゾイル、1-ナフトイル、2-ナフトイル)、
(a27)5~14員芳香族複素環カルボニル基(例えば、ニコチノイル、イソニコチノイル、テノイル、フロイル)、
(a28)3~14員非芳香族複素環カルボニル基(例えば、モルホリニルカルボニル、ピペリジニルカルボニル、ピロリジニルカルボニル)、
(a29)C1-6アルコキシ-カルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル)、
(a30)C6-14アリールオキシ-カルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル、1-ナフチルオキシカルボニル、2-ナフチルオキシカルボニル)、
(a31)C7-16アラルキルオキシ-カルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル)、
(a32)カルボキシ基、
(a33)カルバモイル基、
(a34)モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、N-エチル-N-メチルカルバモイル)、
(a35)C6-14アリール-カルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル)、
(a36)5~14員芳香族複素環カルバモイル基(例えば、ピリジルカルバモイル、チエニルカルバモイル)、
(a37)3~14員非芳香族複素環カルバモイル基(例えば、モルホリニルカルバモイル、ピペリジニルカルバモイル)、
(a38)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基(メチルスルホニル、ジフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、4,4,4-トリフルオロブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニル)、
(a39)C6-14アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、1-ナフチルスルホニル、2-ナフチルスルホニル)、
(a40)5~14員芳香族複素環スルホニル基(例えば、ピリジルスルホニル、チエニルスルホニル)、
(a41)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル)、
(a42)C6-14アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル、1-ナフチルスルフィニル、2-ナフチルスルフィニル)、
(a43)5~14員芳香族複素環スルフィニル基(例えば、ピリジルスルフィニル、チエニルスルフィニル)、
(a44)モノ-またはジ-C1-6アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、N-エチル-N-メチルアミノ)、
(a45)モノ-またはジ-C6-14アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ)、
(a46)5~14員芳香族複素環アミノ基(例えば、ピリジルアミノ)、
(a47)C7-16アラルキルアミノ基(例えば、ベンジルアミノ)、
(a48)ホルミルアミノ基、
(a49)C1-6アルキル-カルボニルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、プロパノイルアミノ、ブタノイルアミノ)、
(a50)(C1-6アルキル)(C1-6アルキル-カルボニル)アミノ基(例えば、N-アセチル-N-メチルアミノ)、
(a51)C6-14アリール-カルボニルアミノ基(例えば、フェニルカルボニルアミノ、ナフチルカルボニルアミノ)、
(a52)C1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、プロポキシカルボニルアミノ、ブトキシカルボニルアミノ、tert-ブトキシカルボニルアミノ)、
(a53)C7-16アラルキルオキシ-カルボニルアミノ基(例えば、ベンジルオキシカルボニルアミノ)、
(a54)C1-6アルキルスルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ)、
(a55)C1-6アルキル基で置換されていてもよいC6-14アリールスルホニルアミノ基(例えば、フェニルスルホニルアミノ、トルエンスルホニルアミノ)、
(a56)アミノ基、
(a57)C2-6アルケニル基(例えば、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、5-ヘキセニル)、
(a58)C2-6アルキニル基(例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、5-ヘキシニル、4-メチル-2-ペンチニル)、
(a59)C3-10シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、アダマンチル)、
(a60)C3-10シクロアルケニル基(例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、
(a61)C1-6シクロアルコキシ-カルボニル基(例えば、シクロペントキシ)、
(a62)C7-16アラルキルチオ基(例えば、S-ベンジルチオ)、
(a63)メルカプト基、
(a64)スルホ基、及び
(a65)グアジニノ基。
【0025】
前記[I-2]置換又は無置換のヘテロアリール基において、「ヘテロアリール基」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群より選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~14員(好ましくは5~10員)の芳香族複素環基等が挙げられる。
【0026】
前記[I-2]置換又は無置換のヘテロアリール基が置換基を有する場合の当該置換基の数は、例えば、1~5個、好ましくは1~3個が挙げられる。当該置換基の数が2個以上の場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
前記[I-2]置換又は無置換のヘテロアリール基が置換基を有する場合の当該置換基は、例えば、上記の(a1)~(a65)に示す基が挙げられる。
【0028】
[1-3-2.[II]置換又は無置換の脂肪族基]
前記[II]置換又は無置換の脂肪族基としては、例えば、[II-1]R1-(CHR2)-で表される基、[II-2]R3-(CR4R5)-(CR6R7)-で表される基、及び[II-3]C3以上のアルキル基又はさらにそれに置換基を有するもの、が挙げられる。
【0029】
前記[II-1]R1-(CHR2)-で表される基のR1としては、水素原子、及び以下の(b1)~(b32)に示す基が挙げられる。
【0030】
(b1)ハロゲン基、
(b2)シアノ基、
(b3)ヒドロキシ基、
(b4)置換又は無置換のC1-6アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)、
(b5)置換又は無置換のC6-14アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、ナフトキシ)、
(b6)置換又は無置換のC7-16アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ)、
(b7)置換又は無置換のC1-6アルキル-カルボニルオキシ基(例えば、アセトキシ、プロパノイルオキシ)、
(b8)置換又は無置換のC1-6アルキル-カルボニル基(例えば、アセチル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル)、
(b9)置換又は無置換のC6-14アリール-カルボニル基(例えば、ベンゾイル、1-ナフトイル、2-ナフトイル)、
(b10)置換又は無置換の5~14員芳香族複素環カルボニル基(例えば、ニコチノイル、イソニコチノイル、テノイル、フロイル)、
(b11)置換又は無置換の3~14員非芳香族複素環カルボニル基(例えば、モルホリニルカルボニル、ピペリジニルカルボニル、ピロリジニルカルボニル)、
(b12)置換又は無置換のC1-6アルコキシ-カルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル)、
(b13)置換又は無置換のC6-14アリールオキシ-カルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル、1-ナフチルオキシカルボニル、2-ナフチルオキシカルボニル)、
(b14)置換又は無置換のC7-16アラルキルオキシ-カルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル)、
(b15)カルボキシ基、
(b16)カルバモイル基、
(b17)置換又は無置換のモノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、N-エチル-N-メチルカルバモイル)、
(b18)置換又は無置換のC6-14アリール-カルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル)、
(b19)置換又は無置換のC1-6アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ)、
(b20)置換又は無置換のC1-6アルキルスルホニル基(メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニル)、
(b21)置換又は無置換のC1-6アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル)、
(b22)置換又は無置換のモノ-またはジ-C1-6アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、N-エチル-N-メチルアミノ)、
(b23)置換又は無置換のモノ-またはジ-C6-14アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ)、
(b24)置換又は無置換のC1-6アルキル-カルボニルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、プロパノイルアミノ、ブタノイルアミノ)、
(b25)置換又は無置換のC6-14アリール-カルボニルアミノ基(例えば、フェニルカルボニルアミノ、ナフチルカルボニルアミノ)、
(b26)置換又は無置換のC1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、プロポキシカルボニルアミノ、ブトキシカルボニルアミノ、tert-ブトキシカルボニルアミノ)、
(b27)置換又は無置換のC7-16アラルキルオキシ-カルボニルアミノ基(例えば、ベンジルオキシカルボニルアミノ)、
(b28)置換又は無置換の5~14員芳香族複素環基(例えば、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニルなどの5~6員単環式芳香族複素環基;
ベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、イミダゾピリジニル、チエノピリジニル、フロピリジニル、ピロロピリジニル、ピラゾロピリジニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピラジニル、イミダゾピリミジニル、チエノピリミジニル、フロピリミジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、オキサゾロピリミジニル、チアゾロピリミジニル、ピラゾロトリアジニル、ナフト[2,3-b]チエニル、フェノキサチイニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、プリニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニルなどの8~14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)芳香族複素環基が挙げられる。)、
(b29)置換又は無置換のC6-14アリール基(例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル)、
(b30)C7-16アラルキルチオ基(例えば、S-ベンジルチオ)、
(b31)スルホ基、及び
(b32)メルカプト基。
【0031】
上記(b4)~(b14)、(b17)~(b29)に示す基が有していてもよい置換基としては、上記(a4)~(a65)に示す基が挙げられる。上記(b4)~(b14)、(b17)~(b29)に示す基が置換基を有する場合の当該置換基の数としては、例えば1~5個、好ましくは1~3個が挙げられる。当該置換基の数が2個以上の場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
前記[II-1]R1-(CHR2)-で表される基のR2としては、上記の(a29)C1-6アルコキシ-カルボニル基、上記の(a30)C6-14アリールオキシ-カルボニル基、上記の(a31)C7-16アラルキルオキシ-カルボニル基、上記の(a32)カルボキシ基、上記の(a33)カルバモイル基、上記の(a34)モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、上記の(a35)C6-14アリール-カルバモイル基、上記の(a61)C1-6シクロアルコキシ-カルボニル基が挙げられる。
【0033】
前記[II-2]R3-(CR4R5)-(CR6R7)-で表される基のR3としては、例えば、水素原子、及び上記の(b1)~(b32)に示す基が挙げられ、好ましくは、水素原子、(b3)ヒドロキシ基、(b29)置換又は無置換のC6-14アリール基、(b32)メルカプト基が挙げられ、より好ましくは(b29)置換又は無置換のC6-14アリール基、(b32)メルカプト基が挙げられ、さらに好ましくは置換又は無置換のフェニル基が挙げられ、特に好ましくは無置換のフェニル基が挙げられる。
【0034】
前記[II-2]R3-(CR4R5)-(CR6R7)-で表される基のR4及びR5としては、例えば、互いに同じ又は異なっていてよい、水素原子、及び上記(a4)~(a65)に示す基が挙げられ、好ましくは、いずれも水素原子が挙げられる。
【0035】
前記[II-2]R3-(CR4R5)-(CR6R7)-で表される基のR6としては、例えば、水素原子、並びに、上記の(a1)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、上記の(a2)C6-14アリール基、上記の(a7)ヒドロキシ基、上記の(a23)5~14員芳香族複素環基、及び上記の(a59)C3-10シクロアルキル基が挙げられ、好ましくは水素原子及び(a1)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基が挙げられ、より好ましくは水素原子及びハロゲン化されていないC1-6アルキル基が挙げられ、さらに好ましくは水素原子、メチル基及びエチル基が挙げられ、一層好ましくは水素原子が挙げられる。
【0036】
前記[II-2]R3-(CR4R5)-(CR6R7)-で表される基のR7としては、例えば、上記の(a29)C1-6アルコキシ-カルボニル基、上記の(a30)C6-14アリールオキシ-カルボニル基、上記の(a31)C7-16アラルキルオキシ-カルボニル基、上記の(a32)カルボキシ基、上記の(a33)カルバモイル基、上記の(a34)モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、上記の(a35)C6-14アリール-カルバモイル基、上記の(a61)C1-6シクロアルコキシ-カルボニル基が挙げられ、好ましくは、(a29)C1-6アルコキシ-カルボニル基、(a31)C7-16アラルキルオキシ-カルボニル基、(a32)カルボキシ基、(a33)カルバモイル基、(a61)C1-6シクロアルコキシ-カルボニル基が挙げられ、より好ましくは(a29)C1-6アルコキシ-カルボニル基が挙げられ、さらに好ましくはメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニルが挙げられ、一層好ましくはエトキシカルボニルが挙げられる。
【0037】
前記[II-3]C3以上のアルキル基又はさらにそれに置換基を有するものについて、「アルキル基」としては、C3-7アルキル基(例えば、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、オクチル)、C3-10シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、アダマンチル)、直鎖C8-22アルキル基(例えば、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル)等が挙げられる。
【0038】
前記[II-3]C3以上のアルキル基又はさらにそれに置換基を有するものが置換基を有する場合の当該置換基の数としては、例えば1~5個、好ましくは1~3個が挙げられる。当該置換基の数が2個以上の場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0039】
前記[II-3]C3以上のアルキル基又はさらにそれに置換基を有するものが置換基を有する場合の当該置換基としては、例えば、上記の(a4)~(a65)に示す基が挙げられる。
【0040】
[1-3-3.疎水性基Rの結合形態]
疎水基Rは、任意の結合形態で主鎖に結合することができる。つまり、疎水性基Rは、直接的又は間接的に、主鎖を構成する原子に結合することができる。主鎖が酸性基を側鎖に持つ親水性ポリマーである場合(好ましくは酸性基を側鎖に持つ酸性アミノ酸のポリマーである場合)、疎水性Rは、当該酸性基と、疎水性基Rを有する第一級アミン化合物(R-NH2で表される化合物)との脱水縮合の形態で結合することができる。当該酸性基がカルボキシル基である場合、疎水性基Rは、アミド結合を介して結合することができる。
【0041】
[1-3-4.疎水性基Rの導入]
酸性基を有する両親媒性ポリマーを合成する方法については特に限定されないが、一例として、当該ポリマーの構成材料となる主鎖ポリマーの側鎖官能基に、疎水性基Rを有する化合物を反応させることで調製する方法が挙げられる。この例においては、好ましくは、側鎖酸性基を有する主鎖ポリマー(より好ましくは、酸性アミノ酸ポリマー)の当該側鎖酸性基に、疎水性基Rを有する第一級アミン化合物(R-NH2で表される化合物)を反応させることができる。
【0042】
また、酸性基を有する両親媒性ポリマーを合成する方法の他の例としては、当該ポリマーの構成モノマーに少なくとも疎水性基Rを有するモノマーを用いて重合する方法が挙げ得られる。この例においては、好ましくは、疎水性基Rを有しないコモノマーと疎水性基Rを有するコモノマーとを共重合することができ、より好ましくは、側鎖に酸性基を有し疎水性基Rを有しないコモノマー(さらに好ましくは、疎水性基Rを有しない酸性アミノ酸)と、側鎖に疎水性基Rを有するコモノマー(さらに好ましくは、側鎖に疎水性基Rを有するアミノ酸)とを共重合させることができる。なお、側鎖に疎水性基Rを有するコモノマーは、側鎖に酸性基を有し疎水性基Rを有しないコモノマーの側鎖酸性基に、疎水性基Rを有する第一級アミン化合物(R-NH2で表される化合物)を反応させることで調製することができる。
【0043】
[1-3-5.疎水性基導入率]
酸性基を有する両親媒性ポリマー分子中、疎水性基Rが占める比率(疎水性基導入率)については特に限定されない。疎水性基導入率とは、酸性基を有する両親媒性ポリマー分子を構成する単位の総数(イオン化された酸性基を有する単位、イオン化されていない酸性基を有する単位、及び疎水性基Rを有する単位の総数をいい、式(1)で表される両親媒性ポリマーの場合、モノマー単位Mx、モノマー単位My及びモノマー単位Mzの総数であるn+m+lに相当する数をいう。)に対する、疎水性基Rを有する単位の数(式(1)で表される両親媒性ポリマーの場合、モノマー単位Mzの数であるlに相当する数をいう。)の割合(l/(n+m+l)×100)(%)をいう。
【0044】
酸性基を有する両親媒性ポリマー分子の具体的な疎水性基導入率としては、例えば40~80%が挙げられる。さらに、ナノ粒子に担持すべき対象物の担持効率を向上させる等の観点から、疎水性基導入率としては、好ましくは50~70%、より好ましくは55~67%、さらに好ましくは60~65%が挙げられる。或いは、疎水性基Rの導入率としては、好ましくは50~62%、さらに好ましくは50~57%又は52~57%が挙げられる。
【0045】
[1-4.酸性基]
酸性基を有する両親媒性ポリマーの酸性基としては、後述の良溶媒溶液中でイオン化せず、後述の貧溶媒溶液中でイオン化するものであることを限度として特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、硫酸基及びリン酸基からなる群より選択される。酸性基を有する両親媒性ポリマー分子において、これらの酸性基は、1種が単独で含まれていてもよいし、複数種の組み合わせで含まれていてもよい。これらの酸性基の中でも、好ましくはカルボキシル基が挙げられる。
【0046】
酸性基を有する両親媒性ポリマーが酸性アミノ酸ポリマーの親水性主鎖を持つ場合、当該酸性基は、好ましくは、酸性アミノ酸の側鎖に由来する酸性基である。
【0047】
[1-5.分子量]
酸性基を有する両親媒性ポリマーの分子量としては特に限定されないが、例えば、重量平均分子量Mwとしては、例えば1kDa以上、好ましくは30kDa以上、より好ましくは50kDa以上、さらに好ましくは70kDa以上が挙げられる。重量平均分子量Mwの範囲は、その上限においても特に限定されないが、例えば1500kDa以下、好ましくは300kDa以下、より好ましくは120kDa以下、さらに好ましくは90kDa以下が挙げられる。また、数平均分子量Mnとしては、例えば1kDa以上、好ましくは20kDa以上、より好ましくは30kDa以上、さらに好ましくは40kDa以上が挙げられる。数平均分子量Mnの範囲は、その上限においても特に限定されないが、例えば1000kDa以下、好ましくは200kDa以下、より好ましくは70kDa以下、さらに好ましくは60kDa以下が挙げられる。また、多分散度Mw/Mnについては、上記重量平均分子量Mw及び上記数平均分子量Mnに応じて定まるが、例えば1以上、好ましくは1.4以上、1.55以上が挙げられ、また、3以下、好ましくは2以下、より好ましくは1.85以下が挙げられる。なお、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した、ポリスチレン換算分子量とする。
【0048】
[2.良溶媒溶液]
酸性基を有する両親媒性ポリマーは、良溶媒中に溶解させられた良溶媒溶液の形態に調製される。良溶媒中では、酸性基を有する両親媒性ポリマーの酸性基は実質的にイオン化されていない。
【0049】
酸性基を有する両親媒性ポリマーの酸性基が実質的にイオン化されていないとは、当該両親媒性ポリマー分子を構成する単位の総数(イオン化された酸性基を有する単位、イオン化されていない酸性基を有する単位、及び疎水性基Rを有する単位の総数をいい、式(1)で表される両親媒性ポリマーの場合、モノマー単位Mx、モノマー単位My及びモノマー単位Mzの総数であるn+m+lに相当する数をいう。)に対する、イオン化されている酸性基の数(式(1)で表される両親媒性ポリマーの場合、モノマー単位Myの数であるmに相当する数をいう。)の割合として表されるイオン化率(m/(n+m+l)×100)(%)が、1%未満であることをいう。両親媒性ポリマーのイオン化率は、好ましくは0.9%以下、より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.7%以下、一層好ましくは0.6%以下、より一層好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.45%以下である。
【0050】
良溶媒としては、20℃での前記両親媒性ポリマーの溶解度が5mg/mL以上、好ましくは10mg/mL以上、より好ましくは50mg/mL以上、さらに好ましくは80mg/mL以上、一層好ましくは100mg/mL以上、より一層好ましくは110mg/mL以上である溶媒が挙げられる。当該溶解度の上限については特に限定されないが、例えば500mg/mL以下、400mg/mL以下、300mg/mL以下、200mg/mL以下、170mg/mL以下、又は150mg/mL以下が挙げられる。
【0051】
良溶媒の具体例としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンが挙げられる。これらの良溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、複数種の組み合わせで用いてもよい。これらの良溶媒の中でも、好ましくはジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0052】
良溶媒溶液中の両親媒性ポリマーの濃度としては特に限定されないが、例えば1~50mg/mL、好ましくは3~30mg/mL、より好ましくは5~15mg/mL、さらに好ましくは8~12mg/mLが挙げられる。
【0053】
[3.貧溶媒溶液]
上記の酸性基を有する両親媒性ポリマーの良溶媒溶液は、貧溶媒溶液と混合される。これにより、両親媒性ポリマーのイオン化及び粒子化を同時に行う。
【0054】
貧溶媒としては、通常、水が用いられる。
【0055】
貧溶媒溶液は、酸性基を有する両親媒性ポリマーのイオン化を可能にするpHを有する。具体的なpH(25℃)としては、例えば5以上、好ましくは5.5以上、5.6以上、5.7以上、5.8以上、5.9以上、6以上、6.1以上、6.2以上、6.3以上、6.4以上、6.5以上、6.7以上、6.8以上、6.9以上又は7以上が挙げられる。当該pHの範囲は、その上限についても特に限定されないが、例えば8.5以下、好ましくは7.2以下、6.8以下、6.5以下、又は6以下が挙げられる。
【0056】
貧溶媒溶液中の溶質としては、酸性基を有する両親媒性ポリマーに対して塩基として作用する化合物、つまり、酸性基を有する両親媒性ポリマーをイオン化する塩基強度を持つ化合物(塩基化合物)が挙げられ、好ましくは、塩基性塩、及び弱酸と強塩基との塩が挙げられ、具体的には、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、アルカリ金属のリン酸塩、アルカリ金属のリン酸一水素塩、アルカリ金属のリン酸二水素塩、アルカリ金属の有機酸塩、またはアルカリ金属の酸性アミノ酸塩等が挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられる。アルカリ金属の有機酸塩における有機酸としては、ギ酸、酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、安息香酸等が挙げられる。
【0057】
これらの塩基化合物は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの塩の中でも、好ましくはアルカリ金属のリン酸一水素塩、アルカリ金属のリン酸二水素塩が挙げられ、より好ましくは、リン酸一水素ナトリウム(リン酸水素二ナトリウム)、リン酸二水素ナトリウムが挙げられる。
【0058】
貧溶媒溶液中の塩基化合物の濃度については特に限定されず、例えば1~300mM、2~200mM、3~100mM、好ましくは5~25mM、より好ましくは8~25mM、さらに好ましくは10~25mM、一層好ましくは15~25mM、より一層好ましくは16~25mMが挙げられる。当該範囲の上限は、23mM以下、20mM以下、又は18mM以下であってもよい。
【0059】
貧溶媒溶液中の溶質としては、粒子サイズの制御性を高める観点から、さらに中性のアルカリ金属塩を含むことが好ましい。中性のアルカリ金属塩としては、無機強酸のアルカリ金属塩が挙げられる。無機強酸としては、塩酸、硫酸、硝酸が挙げられる。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。これらの中性のアルカリ金属塩は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの中性のアルカリ金属塩中でも、好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウムが挙げられ、より好ましくは塩化ナトリウムが挙げられる。
【0060】
貧溶媒溶液中の中性のアルカリ金属塩の含有量(総量)は、ナノ粒子の制御すべき粒子径に応じて適宜設定することができる。具体的には、中性のアルカリ金属塩の含有量としては、例えば1~1500mM、5~1000mM、10~500mM、20~350mMが挙げられる。当該総量の範囲の下限は、25mM以上、80mM以上、100mM以上、140M以上、180mM以上、200mM以上、又は240mM以上であってもよい。当該総量の範囲の上限は、320mM以下、300mM以下、280mM以下、260mM以下、230mM以下、又は210mM以下であってもよい。
【0061】
貧溶媒中には、ナノ粒子に担持(好ましくは内包)させるための対象物を含ませることができる。当該対象物としては、タンパク質、ペプチド、低分子化合物等の、DDSで運搬すべき薬剤から任意に選択することができる。
【0062】
前記貧溶媒溶液の使用量としては、両親媒性ポリマーのイオン化及び粒子化を可能にする限りにおいて特に限定されないが、良溶媒溶液1体積部当たりの使用量として、例えば0.5体積部以上、好ましくは0.8体積部以上、より好ましくは0.9体積部以上、さらに好ましくは0.95体積部以上が挙げられる。当該使用量の範囲の上限としては特に限定されないが、例えば3体積部以下、2.5体積部以下、2体積部以下、又は1.5体積部以下が挙げられる。
【0063】
[4.混合操作]
上記良溶媒溶液と上記貧溶媒溶液との具体的な混合操作については、両親媒性ポリマーのイオン化及び粒子化を可能にする限りにおいて特に限定されない。例えば、貧溶媒溶液中に、良溶媒溶液を連続的又は断続的に添加(好ましくは滴下)して混合することが好ましい。この場合、貧溶媒溶液を撹拌しながら当該添加を行ってもよいし、当該添加を行った後に、混合液を撹拌して分散してもよい。分散は、攪拌及び/又は超音波処理により行うことができる。
【0064】
混合時の温度としては特に限定されず、好ましくは非加熱条件が挙げられ、より好ましくは室温、例えば15~28℃が挙げられる。
【0065】
[5.ナノ粒子]
上記良溶媒溶液と上記貧溶媒溶液との混合により生じたナノ粒子は、貧溶媒及び良溶媒の混合溶媒中で分散した状態で得られる。ナノ粒子は、得られた分散液を固液分離し、固形分を洗浄することにより回収することができる。
【0066】
得られたナノ粒子は、緩衝液中に分散させてもよいし、乾燥(例えば凍結乾燥)させてもよい。なお、ナノ粒子の分散には、超音波処理を用いることができる。
【0067】
ナノ粒子の平均粒子径としては、担持すべき対象物のサイズ及び量等により異なり得るが、例えば、20nm以上、好ましくは60nm以上、より好ましくは100nm以上、さらに好ましくは120nm以上が挙げられる。ナノ粒子の平均粒子径の範囲は、その上限においても特に限定されないが、例えば、350nm以下、好ましくは320nm以下が挙げられる。なお、ナノ粒子の平均粒子径は、ISO 13321に規定されるZ平均粒径とする。
【0068】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【実施例0069】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
【0070】
試験例1:酸性基を有する両親媒性ポリマー(γ-PGA-PAE)の合成
(1)合成法
γ-ポリグルタミン酸ナトリウム710mgを精製水25mLに溶かし、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩766mgを添加し5分間攪拌した。その後、L-フェニルアラニンエチルエステル塩酸塩(PAE・HCl)917mgを添加し、3時間攪拌した。反応終了後、1Mの塩酸(3mL)を添加した後、吸引濾過で固形物を水洗しながら回収した。回収した固形物を減圧乾燥し、これによって、γ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)の側鎖に、疎水性基としてL-フェニルアラニンエチルエステル(PAE)由来基(構造式C6H5-CH2-CH(CO2C2H5)-で表される基)が、PAEが持つアミノ基から形成されるアミド結合(-NH-CO-)を介して導入された両親媒性ポリマーγ-PGA-PAE(988mg)を得た。
【0071】
(2)分子量
得られた両親媒性ポリマーを、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で平均分子量を測定した。
<分析条件>
・カラム
Shodex Asahipak GF-7M
Shodex Asahipak GF-1G 7B(ガードカラム)
・溶離液
DMF + 10mM LiBr
・カラム温度
40℃
・分析時間
40分
・分子量標品
ポリスチレン
・サンプル濃度
1.0mg/mL
【0072】
測定の結果、重量平均分子量Mwは82kDa、数平均分子量Mnは49kDa、多分散度Mw/Mnは1.67であった。
【0073】
(3)両親媒性ポリマーのイオン化率及び疎水性基導入率(PAE導入率)
得られた両親媒性ポリマー(γ-PGA-PAE)の構造(凍結乾燥物)は、下記式に示すように、側鎖に-CO2H基を有するγ-グルタミン酸単位Mxと、側鎖に-CO2Na基を有するγ-グルタミン酸単位Myと、γ-グルタミン酸の側鎖カルボキシル基に、疎水性基であるPAE由来基(C6H5-CH2-CH(CO2C2H5)-)が、PAEが持つアミノ基から形成されるアミド結合(-NH-CO-)を介して導入された単位Mzとから構成されるものであった。
【0074】
この両親媒性ポリマーγ-PGA-PAE凍結乾燥物の原子吸光分析測定によるNa含有率から、Mx、My及びMzの総数(n+m+l)に対するMyの数(m)の割合であるイオン化率を導出した結果、0.42%であった。つまり、得られた両親媒性ポリマー(γ-PGA-PAE)の構造は、側鎖酸性基が実質的にイオン化されていないものであった。
【0075】
また、この両親媒性ポリマーγ-PGA-PAEの1H-NMRスペクトルに基づいてMx、My及びMzの総数(n+m+l)に対するMzの数(l)の割合である疎水性基導入率(PAE導入率)を導出した結果、63%であった。
【0076】
【0077】
試験例2:ナノ粒子の調製-1
(1)酸性基を有する両親媒性ポリマー(γ-PGA-PAE)の用意
試験例1で合成したPAE導入率63%のγ-PGA-PAEを用意した。別途、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩およびL-フェニルアラニンエチルエステル塩酸塩(PAE・HCl)の使用量を適宜変更することを除いて試験例1と同様の操作により、PAE導入率が55%、61%、又は69%のγ-PGA-PAEも合成した。
【0078】
(2)良溶媒溶液調製
上記(1)で合成したγ-PGA-PAEの10mgをジメチルスルホキシド1.0mLに溶解させ、0.2μmのフィルターを通じて不溶物を除去した。これにより、10mg/mL DMSO溶液を得た。なお、DMSOの、20℃でのγ-PGA-PAEの溶解度は、125mg/mLであった。
【0079】
(3)貧溶媒溶液調製
100mMリン酸水素二ナトリウム水溶液と100mMのリン酸二水素ナトリウム水溶液を体積比3:7で混合し、pH6.6(25℃)の水溶液を調製するとともに、さらに塩化ナトリウム溶液を貧溶媒中の成分濃度が表1の濃度となるように添加することで、NaClを含む貧溶媒溶液を得た。なお、実施例1~9において、貧溶媒溶液のpHは6.4~6.5(25℃)であり、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム水溶液のpHと同等であった。
【0080】
(4)イオン化及びナノ粒子化
上記(3)で得られた貧溶媒溶液(水溶液)200μLに、上記(2)で得られた良溶媒溶液(DMSO溶液)200μLを添加し、30回ピペッティングした。
【0081】
(5)ナノ粒子回収
上記(4)で得られた混合液を、18000×gで10~20分間遠心し、上清を除去し、その後、精製水400μLを加えた。この操作を2回繰り返してナノ粒子を洗浄した。さらに、18000×gで10~20分間遠心し、上清を除去し、その後、200μLのPBS溶液を添加し、1分間超音波処理を行うことでナノ粒子を分散させた。
【0082】
(6)
上記(5)で得られたナノ粒子の平均粒子径(Z平均粒子径)及び分散指数(PDI)を、ゼータサイザーナノZS(マルバーン社)で測定した。結果を表1に示す。
【0083】
【0084】
なお、実施例3を5倍スケールで追試したところ、平均粒子径が189nm、PDIが0.18のナノ粒子(凍結乾燥物)を8.4mg(収率84%)得た。
【0085】
試験例3:ナノ粒子の調製-2
PAE導入率が61%のγ-PGA-PAEを用い、貧溶媒溶液の内訳を表2の通りに変更したことを除いて、試験例2と同様にしてナノ粒子を調製し、平均粒子径及びPDIを測定した。なお、実施例10~16において、貧溶媒溶液のpHは、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム水溶液のpH-0.2以上、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム水溶液のpH以下であり、実施例17、18において、貧溶媒溶液のpHは、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム水溶液のpH-0.4以上、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム水溶液のpH以下であった。結果を表2に示す。
【0086】
【0087】
試験例4:ナノ粒子の調製-3
γ-PGA-PAEの良溶媒溶液(10mg/mL DMSO溶液)の使用量を30mLに変更し、貧溶媒溶液(Na2HPO4、NaH2PO4、及びNaClを含む水溶液)の使用量を30mLに変更し、貧溶媒溶液を撹拌しながら良溶媒溶液を滴下し、ナノ粒子を分散させるPBS溶液の量を30mLに変更し、且つ、溶液の撹拌にスターラーを用い、遠心の条件を13000×gに変更したことを除いて、試験例2の実施例4と同様にしてナノ粒子(実施例19)を調製し、平均粒子径(Z平均粒子径)及びPDIを測定した。
【0088】
その結果、得られたナノ粒子(実施例19)の平均粒子径は238nm、PDIは0.12であった。
【0089】
試験例5:ナノ粒子の調製-4
本実施例では、オボアルブミン(OVA)を内包したナノ粒子を調製した。具体的には、PAE導入率、NaCl濃度を表3の通りとし、貧溶媒溶液を、さらにOVAを2mg/mLを含むものに変更したことを除いて、試験例2と同様にしてナノ粒子を調製し、平均粒子径及びPDIを測定した。なお、実施例20~23において、貧溶媒溶液のpHは6.4~6.5(25℃)であり、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム水溶液のpHと同等であった。結果を表3に示す。さらに、ナノ粒子中のOVA内包量、及び貧溶媒溶液中のOVAに対するナノ粒子への内包されたOVAの比率(内包効率)を、表3に示す。
【0090】
【0091】
試験例6
γ-PGA-PAEのPAE導入率を表4の通りとし、リン酸水素二ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウムを使用せず(これらの塩を使用しない貧溶媒溶液のpHは表4に示す通りであった。)、塩化ナトリウムの使用量を表4の通りに変更したことを除いて、試験例2と同様の操作を行ってナノ粒子の調製を試みた。
【0092】
【0093】
しかしながらナノ粒子は生成せず、沈殿物が生じたのみであった。