(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112531
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】流体機器および流体機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01L 19/06 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
G01L19/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017626
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】591257111
【氏名又は名称】サーパス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】今井 弘
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA39
2F055CC02
2F055DD09
2F055DD19
2F055EE12
2F055FF21
2F055GG22
2F055GG25
2F055HH08
(57)【要約】
【課題】流路内の液体の圧力が瞬間的に上昇する事象が発生しても流路から流体接触部側に液体が流入することを防止する。
【解決手段】圧力センサ11と、樹脂製の流路本体21と、圧力センサ11を軸線Xに沿って流路本体21の収容部21bに対して押し付けて固定するセンサーホルダ12と、圧力センサ11と接触して環状のシール領域を形成するOリング15と、を備え、収容部21bは、筒状に形成された内周面21b1と、流路21aと連通する開口穴21b2と、底面21b3と、を有し、センサーホルダ12は、筒状に形成された外周面12aに形成されたタッピングねじ12bを有し、タッピングねじ12bを内周面21b1に締結することにより圧力センサ11を収容部21bに固定する圧力検出装置を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と接触する接触面を有する液体接触部と、
軸線に沿って延びるとともに前記接触面に液体を導く流路と前記液体接触部を収容する収容部とを有する樹脂製の流路部と、
前記液体接触部を前記軸線に沿って前記収容部に対して押し付けて前記液体接触部の前記軸線に沿った位置を固定する固定部と、
前記液体接触部と前記収容部とが接触する接触領域の外周側への液体の流入を防止する環状のシール領域を形成するシール部と、を備え、
前記収容部は、
前記軸線回りに筒状に形成された内周面と、
前記流路と連通する開口穴と、
前記開口穴を取り囲むように前記軸線回りに環状に形成されるとともに前記液体接触部が接触する底面と、を有し、
前記固定部は、
前記軸線回りに筒状に形成された外周面と、
前記外周面に形成されたタッピングねじと、を有し、
前記固定部は、前記タッピングねじを前記内周面に締結することにより前記液体接触部を前記収容部に固定する流体機器。
【請求項2】
前記収容部の前記内周面の前記タッピングねじが締結される領域には、前記軸線回りに環状に形成される溝部が形成されている請求項1に記載の流体機器。
【請求項3】
前記溝部の内径は、前記タッピングねじの呼び径よりも大きい請求項2に記載の流体機器。
【請求項4】
前記収容部の前記内周面には、前記軸線に沿った方向に間隔を空けて複数の前記溝部が形成されている請求項3に記載の流体機器。
【請求項5】
前記軸線に沿った方向に隣接する一対の前記溝部の間隔は、前記タッピングねじのピッチよりも長い請求項4に記載の流体機器。
【請求項6】
前記収容部の前記底面には、前記軸線回りに環状に形成される環状溝が形成されており、
前記シール部は、弾性材料により環状に形成されるとともに前記環状溝に取り付けられており、
前記シール部が前記液体接触部に接触することにより前記シール領域が形成される請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の流体機器。
【請求項7】
前記液体接触部は、
液体の圧力を検出する圧力検出面と、
前記圧力検出面に接触した状態で配置されるとともに前記圧力検出面と液体との接触を遮断する保護膜と、を有し、
前記保護膜および前記底面は、樹脂材料により形成されており、
前記保護膜は、前記収容部の前記開口穴を閉塞するように配置されるとともに前記軸線回りの周方向に延びる前記シール領域で前記底面に溶着されている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の流体機器。
【請求項8】
前記固定部は、金属材料により形成されている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の流体機器。
【請求項9】
前記固定部は、前記収容部の前記内周面よりも硬度の高い樹脂材料により形成されている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の流体機器。
【請求項10】
前記液体接触部は、前記接触面に接触する流体の圧力を検出する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の流体機器。
【請求項11】
流体機器の製造方法であって、
前記流体機器は、
液体と接触する接触面を有する液体接触部と、
軸線に沿って延びるとともに前記接触面に液体を導く流路と前記液体接触部を収容する収容部とを有する樹脂製の流路部と、
前記液体接触部を前記軸線に沿って前記収容部に対して押し付けて前記液体接触部の前記軸線に沿った位置を固定する固定部と、
前記液体接触部と前記収容部とが接触する接触領域の外周側への液体の流入を防止する環状のシール領域を形成するシール部と、を備え、
前記収容部は、
前記軸線回りに筒状に形成された内周面と、
前記流路と連通する開口穴と、
前記開口穴を取り囲むように前記軸線回りに環状に形成されるとともに前記液体接触部が接触する底面と、を有し、
前記固定部は、
前記軸線回りに筒状に形成された外周面と、
前記外周面に形成されたタッピングねじと、を有し、
前記収容部に前記液体接触部を設置する設置工程と、
前記タッピングねじを前記内周面に締結することにより前記液体接触部を前記収容部に固定する固定工程と、を備える流体機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機器および流体機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力センサの圧力検出面に流体を導く流路が内部に形成された流路ユニットを備える圧力検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示される圧力検出装置は、流路ユニットの凹部に圧力センサを配置し、筒状に形成されるアウターホルダの外周面に形成された雄ねじを、流路ユニットの凹部の内周面に形成された雌ねじに締結することにより、圧力センサを流路ユニットに対して一定の位置に保持するものである。流路ユニットの凹部の底面部分に配置されるOリングが圧力センサに接触して形成されるシール領域により、流路から圧力センサ側に流体が流入することが阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アウターホルダの雄ねじと、流路ユニットの凹部の雌ねじとの間にはバックラッシュが存在するため、例えば、流路内の流体の圧力が瞬間的に上昇して圧力検出面に印加される圧力が上昇する場合に、バックラッシュの分だけ圧力検出面がOリングから離間する可能性がある。この場合、シール領域の少なくとも一部が消失し、圧力検出面とOリングとの間の隙間から圧力センサ側に流体が流入してしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、流路内の液体の圧力が瞬間的に上昇する事象が発生しても流路から液体接触部側に液体が流入することを防止することが可能な流体機器およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明の第1態様にかかる流体機器は、液体と接触する接触面を有する液体接触部と、軸線に沿って延びるとともに前記接触面に液体を導く流路と前記液体接触部を収容する収容部とを有する樹脂製の流路部と、前記液体接触部を前記軸線に沿って前記収容部に対して押し付けて前記液体接触部の前記軸線に沿った位置を固定する固定部と、前記液体接触部と前記収容部とが接触する接触領域の外周側への液体の流入を防止する環状のシール領域を形成するシール部と、を備え、前記収容部は、前記軸線回りに筒状に形成された内周面と、前記流路と連通する開口穴と、前記開口穴を取り囲むように前記軸線回りに環状に形成されるとともに前記液体接触部が接触する底面と、を有し、前記固定部は、前記軸線回りに筒状に形成された外周面と、前記外周面に形成されたタッピングねじと、を有し、前記固定部は、前記タッピングねじを前記内周面に締結することにより前記液体接触部を前記収容部に固定する。
【0007】
本発明の第1態様にかかる流体機器によれば、流路部の収容部に収容される液体接触部は、固定部により軸線に沿って収容部に対して押し付けられて軸線に沿った位置が固定される。固定部により収容部に対して押し付けられた液体接触部と収容部とが接触する接触領域の外周側への液体の流入は、シール部が形成する環状のシール領域により防止される。固定部は、タッピングねじを樹脂製の収容部の内周面に締結することにより液体接触部を収容部に固定する。タッピングねじが樹脂製の収容部の内周面に締結されており、タッピングねじと内周面とが締結される部分にバックラッシュが存在しない。そのため、流路内の流体の圧力が瞬間的に上昇する事象が発生しても、液体接触部とシール部とで形成されるシール領域が全周で保持され、流路から流体接触部側に液体が流入することを防止することができる。
【0008】
本発明の第2態様にかかる流体機器は、第1態様において、更に以下の構成である。すなわち、前記収容部の前記内周面の前記タッピングねじが締結される領域には、前記軸線回りに環状に形成される溝部が形成されている。
本発明の第2態様にかかる流体機器によれば、収容部の内周面に溝部が形成されているため、タッピングねじを締結する際に生じる収容部の変形を溝部で適切に吸収することができる。
【0009】
本発明の第3態様に係る流体機器は、第2態様において、更に以下の構成である。すなわち、前記溝部の内径は、前記タッピングねじの呼び径よりも大きい。
本発明の第3態様にかかる流体機器によれば、溝部の内径がタッピングねじの呼び径よりも大きいため、軸線に対してタッピングねじの先端よりも外側に溝部の底面が配置され、収容部の変形を溝部で確実に吸収することができる。
【0010】
本発明の第4態様に係る流体機器は、第3態様において、更に以下の構成である。すなわち、前記収容部の前記内周面には、前記軸線に沿った方向に間隔を空けて複数の前記溝部が形成されている。
本発明の第4態様にかかる流体機器によれば、軸線に沿った方向に間隔を空けて複数の溝部が形成されているため、収容部の変形を複数の溝部で確実に吸収することができる。
【0011】
本発明の第5態様に係る流体機器は、第4態様において、更に以下の構成である。すなわち、前記軸線に沿った方向に隣接する一対の前記溝部の間隔は、前記タッピングねじのピッチよりも長い。
本発明の第5態様にかかる流体機器によれば、軸線に沿った方向に隣接する一対の溝部の間隔がタッピングねじのピッチよりも長いため、一対の溝部の間隔を過度に短くしてタッピングねじと収容部との締結力が減少することを防止することができる。
【0012】
本発明の第6態様に係る流体機器は、第1態様から第5態様のいずれかにおいて、更に以下の構成である。すなわち、前記収容部の前記底面には、前記軸線回りに環状に形成されるとともに前記シール部が取り付けられる環状溝が形成されており、前記シール部は、弾性材料により環状に形成されるとともに前記環状溝に取り付けられており、前記シール部が前記液体接触部に接触することにより前記シール領域が形成されている。
本発明の第6態様にかかる流体機器によれば、収容部の底面に形成される環状溝に弾性材料により環状に形成されるシール部を取り付けることで、収容部に対して押し付けられた液体接触部とシール部とを接触させて環状のシール領域を形成することができる。
【0013】
本発明の第7態様に係る流体機器は、第1態様から第5態様のいずれかにおいて、更に以下の構成である。すなわち、前記液体接触部は、液体の圧力を検出する圧力検出面と、前記圧力検出面に接触した状態で配置されるとともに前記圧力検出面と液体との接触を遮断する保護膜と、を有し、前記保護膜および前記底面は、樹脂材料により形成されており、前記保護膜は、前記収容部の前記開口穴を閉塞するように配置されるとともに前記軸線回りの周方向に延びる前記シール領域で前記底面に溶着されている。
本発明の第7態様にかかる流体機器によれば、液体接触部の圧力検出面に接触した状態で配置される保護膜と収容部の底面とが溶着されているため、液体接触部と収容部の底面とが接触する接触領域の外周側に環状のシール領域を形成することができる。また、タッピングねじが樹脂製の収容部の内周面に締結されており、タッピングねじと内周面とが締結される部分にバックラッシュが存在しない。そのため、流路内の流体の圧力が瞬間的に上昇する事象が発生しても、シール領域に圧力検出面が押し付けられた状態が維持される。これにより、シール領域に圧力検出面が押し付けられない状態で流路内の液体の圧力が瞬間的に上昇する事象が発生し、シール領域の一部が破損して接触領域の内側に液体が流入することを適切に防止することができる。
【0014】
本発明の第8態様に係る流体機器は、第1態様から第5態様のいずれかにおいて、更に以下の構成である。すなわち、前記固定部は、金属材料により形成されている。
本発明の第8態様にかかる流体機器によれば、固定部を金属材料により形成することで、タッピングねじを変形させることなく樹脂製の収容部の内周面に確実に締結することができる。
【0015】
本発明の第9態様に係る流体機器は、第1態様から第5態様のいずれかにおいて、更に以下の構成である。すなわち、前記固定部は、前記収容部の前記内周面よりも硬度の高い樹脂材料により形成されている。
本発明の第9態様にかかる流体機器によれば、固定部を収容部の内周面よりも硬度の高い樹脂材料により形成することで、タッピングねじを変形させることなく収容部の内周面に確実に締結することができる。
【0016】
本発明の第10態様に係る流体機器は、第1態様から第5態様のいずれかにおいて、更に以下の構成である。すなわち、前記液体接触部は、前記接触面に接触する流体の圧力を検出する。
本発明の第10態様にかかる流体機器によれば、流路内の流体の圧力が瞬間的に上昇する事象が発生しても、圧力を検出する液体接触部とシール部とで形成されるシール領域が全周で保持され、流路から液体接触部側に流体が流入することを防止することができる。
【0017】
本発明の第11態様に係る流体機器の製造方法は、流体機器の製造方法であって、前記流体機器は、液体と接触する接触面を有する液体接触部と、軸線に沿って延びるとともに前記接触面に液体を導く流路と前記液体接触部を収容する収容部とを有する樹脂製の流路部と、前記液体接触部を前記軸線に沿って前記収容部に対して押し付けて前記液体接触部の前記軸線に沿った位置を固定する固定部と、前記収容部に取り付けられるとともに前記固定部により前記収容部に対して押し付けられた前記液体接触部と接触して環状のシール領域を形成するシール部と、を備え、前記収容部は、前記軸線回りに筒状に形成された内周面と、前記流路と連通する開口穴と、前記開口穴を取り囲むように前記軸線回りに環状に形成されるとともに前記液体接触部が接触する底面と、を有し、前記固定部は、前記軸線回りに筒状に形成された外周面と、前記外周面に形成されたタッピングねじと、を有し、前記収容部に前記流体接触部を設置する設置工程と、前記タッピングねじを前記内周面に締結することにより前記液体接触部を前記収容部に固定する固定工程と、を備える。
【0018】
本発明の第11態様にかかる流体機器の製造方法によれば、設置工程において、収容部に液体接触部が設置され、固定工程において、タッピングねじを内周面に締結することにより液体接触部を収容部に固定する。固定部により収容部に対して押し付けられた液体接触部と収容部とが接触する接触領域の外周側への液体の流入は、シール部が形成する環状のシール領域により防止される。タッピングねじが樹脂製の収容部の内周面に締結されており、タッピングねじと内周面とが締結される部分にバックラッシュが存在しない。そのため、流路内の流体の圧力が瞬間的に上昇する事象が発生しても、流体接触部とシール部とで形成されるシール領域が全周で保持され、流路から液体接触部側に液体が流入することを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、流路内の液体の圧力が瞬間的に上昇する事象が発生しても流路から液体接触部側に液体が流入することを防止することが可能な流体機器およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態の圧力検出装置を示す縦断面図である。
【
図2】
図1に示す圧力検出装置の部分拡大図である。
【
図4】
図2に示す圧力検出装置のA部分の部分拡大図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の圧力検出装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第2実施形態の圧力検出装置の部分拡大図である。
【
図8】本発明の第2実施形態の圧力検出装置の分解図である。
【
図9】本発明の変形例の圧力検出装置の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態の圧力検出装置(流体機器)100について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の圧力検出装置100を示す縦断面図である。
図2は、
図1に示す圧力検出装置100の部分拡大図である。
図3は、
図1に示す圧力検出装置100の分解図である。
【0022】
図1および
図2に示すように、本実施形態の圧力検出装置100は、流体の圧力を検出するための圧力検出ユニット10と、流路21aが内部に形成される流路本体21を有する流路ユニット20とを備える。流路21aは、流体が流通する配管(図示略)から分岐された流路(図示略)に接続される。
【0023】
本実施形態における流体とは、半導体製造装置による半導体製造工程で用いられる薬液、溶剤、純水等の液体が含まれる。また、本実施形態における流体には、空気や窒素ガス等の気体も含まれる。半導体製造工程においては、流路の洗浄や液体の排出のために空気や窒素ガスが用いられる。なお、液体の排出の際には、排出中の液体と液体を排出するための気体とが混合した状態となる。
【0024】
次に、本実施形態の圧力検出装置100が備える流路ユニット20について説明する。
図1および
図2に示すように、流路ユニット20は、流路本体(流路部)21と、ナット23とを備える。
図3に示すように、流路本体21は、流路21aと、収容部21bとを有する。流路21aは、軸線Xに沿って延びるとともに圧力センサ11のダイアフラム(接触面)11a(
図2参照)に流体を導く。
【0025】
流路本体21は、フッ素樹脂材料により形成されている。フッ素樹脂材料は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)である。
【0026】
収容部21bは、圧力センサ11を収容する凹所である。
図3に示すように、収容部21bは、軸線X回りに筒状に形成された内周面21b1と、流路21aと連通する開口穴21b2と、開口穴21b2を取り囲むように軸線X回りに環状に形成される底面21b3と、を有する。底面21b3には、軸線X回りに環状に形成されるとともにOリング(シール部)15が取り付けられる環状溝21b4が形成されている。
【0027】
Oリング15は、ゴム材料等の弾性材料により環状に形成される部材である。Oリング15は、ダイアフラム11aと収容部21bの底面21b3とが接触する接触領域CAの外周側(軸線Xに対して外側)への液体の流入を防止する環状のシール領域SAを形成する。Oリング15は、収容部21bに設置される圧力センサ11のダイアフラム11aに接触することにより、シール領域SAを形成する。
【0028】
ナット23は、流路本体21と流体が流通する配管(図示略)から分岐された流路(図示略)とを接続する部材である。ナット23の内周面に形成された雌ねじ23aを分岐された流路の外周面に形成された雄ねじ(図示略)に締結することにより、流路本体21の流路21aと分岐された流路とが接続される。
【0029】
次に、本実施形態の圧力検出装置100が備える圧力検出ユニット10について説明する。圧力検出ユニット10は、ダイアフラム11aに伝達される流体の圧力を検出する装置である。
【0030】
図1および
図2に示すように、圧力検出ユニット10は、流体の圧力を検出する圧力センサ(流体接触部)11と、センサーホルダ(固定部)12と、センサ基板13と、ハウジング14と、Oリング15と、を備える。以下、圧力検出ユニット10が備える各部について説明する。
【0031】
図2に示すように、圧力センサ11は、ダイアフラム(接触面)11aと、ダイアフラム11aに貼り付けられる抵抗体である歪みゲージ11bと、ダイアフラム11aを保持するベース部11cとを備える。圧力センサ11は、ダイアフラム11aに伝達される圧力に応じて変化する歪みゲージ11bの抵抗値に応じた圧力信号を出力する歪みゲージ式の圧力センサである。ダイアフラム11aは、液体と接触する接触面であり、耐腐食性および耐薬品性のある非導電性材料(例えば、サファイア、セラミックスなど)により形成されている。
【0032】
センサーホルダ12は、軸線X回りに円筒状に形成される金属製(例えば、SUS304等のステンレス製)の部材である。センサーホルダ12は、圧力センサ11を軸線Xに沿って流路本体21の収容部21bに押し付けて圧力センサ11の軸線Xに沿った位置を固定する。センサーホルダ12は、軸線X回りに筒状に形成された外周面12aと、外周面12aに形成された雄ねじであるタッピングねじ12bと、を有する。
【0033】
タッピングねじ12bは、ねじ山の角度θが、メートルねじ(メートル並目ねじ,メートル細目ねじ)よりのねじ山の角度である60度よりも小さい角度である。角度θは、例えば、0度より大きくかつ35度以下の範囲とするのが望ましい。
【0034】
図3に示すように、センサーホルダ12は、下端部の軸線X回りの内径ID1が圧力センサ11のベース部11cの外径OD1よりも大きく、下端部より上方部分の軸線X回りの内径ID2が圧力センサ11のベース部11cの外径OD1よりも小さい段形状となっている。センサーホルダ12は、センサーホルダ12の外周面12aに形成されたタッピングねじ12bを収容部21bの内周面21b1に締結することにより、圧力センサ11の軸線X方向の位置を固定する。
【0035】
図4は、
図2に示す圧力検出装置100のA部分の部分拡大図である。
図4に示すように、収容部21bの内周面21b1のタッピングねじ12bが締結される領域には、軸線X回りに環状に形成される溝部21b5が形成されている。
図3に示すように、溝部21b5の内径ID3は、タッピングねじ12bの呼び径OD2よりも大きい。
【0036】
図3および
図4に示すように、収容部21bの内周面21b1には、軸線Xに沿った方向に間隔を空けて2つの溝部21b5が形成されている。なお、
図3および
図4では、内周面21b1に2つの溝部21b5が形成されているものとしたが、他の態様であってもよい。収容部21bの内周面21b1には、軸線Xに沿った方向に間隔を空けて1つまたは3以上の溝部21b5が形成されていてもよい。
【0037】
図4に示すように、軸線Xに沿った方向に隣接する一対の溝部21b5の間隔Lは、タッピングねじのピッチPよりも長くするのが好ましい。また、溝部21b5の軸線Xに沿った方向の幅Wは、下記の式(1)を満たすように設定するのが好ましい。
0.2・P≦W≦0.8・P (1)
【0038】
図5は、
図3に示すセンサーホルダ12の正面図である。
図5に示すように、センサーホルダ12の外周面12aには、一条のタッピングねじ12bが形成されている。なお、センサーホルダ12の外周面12aに、二条以上の複数条のタッピングねじ12bを形成してもよい。
【0039】
センサ基板13は、圧力センサ11が出力する圧力信号を増幅する増幅回路(図示略)と、増幅回路により増幅された圧力信号をケーブル200(
図1,
図2参照)の圧力信号線(図示略)に伝達するインターフェース回路と、ケーブル200を介して外部から供給される電源電圧を圧力センサ11へ伝達する電源回路(図示略)とを備える。
【0040】
ハウジング14は、軸線X回りに円筒状に形成される部材であり、その下端側の内周面が流路本体21の上端側の外周面に取り付けられている。ハウジング14は、その内周側にセンサ基板13収容している。
【0041】
Oリング15は、収容部21bの底面21b3に形成される環状溝21b4に配置される円環状の弾性部材である。Oリング15は、センサーホルダ12により収容部21bの底面21b3に対して押し付けられた圧力センサ11と接触してダイアフラム11aとの間に軸線X回りに環状に形成されるシール領域を形成する。シール領域により、流路21aから圧力検出ユニット10側に流体が流入することが防止される。
【0042】
次に、
図6を参照して、本実施形態の圧力検出装置100の製造方法について説明する。
図6は、本発明の第1実施形態の圧力検出装置100の製造方法を示すフローチャートである。
【0043】
ステップS101で、作業者は、流路本体21の収容部21bの底面21b3に形成された環状溝21b4に、Oリング15を取り付ける。
ステップS102で、作業者は、収容部21bに圧力センサ11を設置して圧力センサ11のダイアフラム11aをOリング15に接触させる。
【0044】
ステップS103で、作業者は、トルクレンチ(図示略)を用いてセンサーホルダ12を軸線X回りに回転させ、収容部21bの内周面21b1にタッピングねじ12bを締結する。作業者は、トルクレンチに設定されたトルクに到達するまでセンサーホルダ12を軸線X回りに回転させ、
図4に示す状態とする。
【0045】
ステップS104で、作業者は、流路本体21にハウジング14を取り付ける。
以上の工程により、作業者は、流路本体21の収容部21bに圧力センサ11が収容され、タッピングねじ12bが樹脂製の収容部21bの内周面21b1に締結され、センサーホルダ12により軸線X方向の位置が固定された圧力センサ11のダイアフラム11aがOリング15に接触して環状のシール領域が形成された状態とする。
【0046】
以上説明した本実施形態の圧力検出装置100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の圧力検出装置100によれば、流路本体21の収容部21bに収容される圧力センサ11は、センサーホルダ12により軸線Xに沿って収容部21bに対して押し付けられて軸線Xに沿った位置が固定される。センサーホルダ12により収容部21bに対して押し付けられた圧力センサ11とOリング15とが接触して環状のシール領域が形成される。
【0047】
センサーホルダ12は、タッピングねじ12bを樹脂製の収容部21bの内周面21b1に締結することにより圧力センサ11を収容部21bに固定する。タッピングねじ12bが樹脂製の収容部21bの内周面21b1に締結されており、タッピングねじ12bと内周面21b1とが締結される部分にバックラッシュが存在しない。そのため、流路21a内の流体の圧力が瞬間的に上昇する事象が発生しても、圧力センサ11とOリング15とで形成されるシール領域が全周で保持され、流路21aから圧力センサ11側に流体が流入することを防止することができる。
【0048】
また、本実施形態の圧力検出装置100によれば、収容部21bの内周面21b1に溝部21b5が形成されているため、タッピングねじ12bを締結する際に生じる収容部21bの変形を溝部21b5で適切に吸収することができる。
【0049】
また、本実施形態の圧力検出装置100によれば、溝部21b5の内径ID3がタッピングねじ12bの呼び径OD2よりも大きいため、軸線Xに対してタッピングねじ12bの先端よりも外側に溝部21b5の底面が配置され、収容部21bの変形を溝部21b5で確実に吸収することができる。
【0050】
また、本実施形態の圧力検出装置100によれば、軸線Xに沿った方向に間隔Lを空けて複数の溝部21b5が形成されているため、収容部21bの変形を複数の溝部21b5で確実に吸収することができる。
【0051】
また、本実施形態の圧力検出装置100によれば、軸線Xに沿った方向に隣接する一対の溝部21b5の間隔Lがタッピングねじ12bのピッチPよりも長いため、一対の溝部21b5の間隔を過度に短くしてタッピングねじ12bと収容部21bとの締結力が減少することを防止することができる。
【0052】
また、本実施形態の圧力検出装置100によれば、収容部21bの底面21b3に形成される環状溝21b4にOリング15を取り付けることで、収容部21bに対して押し付けられた圧力センサ11とOリング15とを接触させて環状のシール領域を形成することができる。
【0053】
また、本実施形態の圧力検出装置100によれば、センサーホルダ12を金属材料により形成することで、タッピングねじ12bを変形させることなく樹脂製の収容部21bの内周面21b1に確実に締結することができる。
【0054】
また、本実施形態の圧力検出装置100によれば、流路21a内の流体の圧力が瞬間的に上昇する事象が発生しても、圧力を検出する圧力センサ11とOリング15とで形成されるシール領域が全周で保持され、流路21aから圧力センサ11側に流体が流入することを防止することができる。
【0055】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態の圧力検出装置100Aについて、図面を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0056】
第1実施形態の圧力検出装置100は、収容部21bの底面21b3に形成される環状溝21b4に取り付けられるOリング15を圧力センサ11のダイアフラム11aに接触させることにより、接触領域CAの外周側にシール領域SAを形成するものであった。それに対して、本実施形態の圧力検出装置100Aは、ダイアフラム11aに接触した状態で配置される保護膜11dを収容部21bの底面21b3に溶着することにより、接触領域CAの外周側にシール領域SAを形成するものである。
【0057】
図7は、本発明の第2実施形態の圧力検出装置100Aの部分拡大図である。
図8は、本発明の第2実施形態の圧力検出装置100Aの分解図である。
図7および
図8に示すように、圧力センサ11は、ダイアフラム11aに接触した状態で配置されるとともにダイアフラム11aと液体との接触を遮断する薄膜状の保護膜11dを有する。保護膜11dは、収容部21bと同じ樹脂材料(例えば、熱可塑性フッ素樹脂であるPFA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂))により形成されている。
【0058】
図7および
図8に示すように、保護膜11dは、収容部21bの開口穴21b2を閉塞するように配置される。また、保護膜11dは、軸線X回りの周方向に延びるシール領域SAで収容部21bの底面21b3に溶着されている。
図7および
図8に示す溶着部(シール部)16は、同一材料により形成される保護膜11dと収容部21bとが溶けあって一体となった部分を示す。溶着部16は、保護膜11dの上方からレーザ光(例えば、炭酸ガスレーザ光)を照射することにより形成される。
【0059】
本実施形態の圧力検出装置100Aによれば、圧力センサ11のダイアフラム11aに接触した状態で配置される保護膜11dと収容部21bの底面21b3とが溶着されているため、圧力センサ11と収容部21bの底面21b3とが接触する接触領域CAの外周側に環状のシール領域SAを形成することができる。また、タッピングねじ12bが樹脂製の収容部21bの内周面21b1に締結されており、タッピングねじ12bと内周面21b1とが締結される部分にバックラッシュが存在しない。そのため、流路21a内の液体の圧力が瞬間的に上昇する事象が発生しても、シール領域SAにダイアフラム11aが押し付けられた状態が維持される。
【0060】
溶着部16は、軸線X回りの周方向の全周に渡ってシール領域SAを形成するが、シール領域SAにダイアフラム11aが押し付けられない状態で流路21a内の液体の圧力が瞬間的に上昇する事象が発生すると、シール領域SAの一部が破壊されるか、シール領域SAの近傍の保護膜11dが破断する可能性がある。本実施形態では、タッピングねじ12bにより、シール領域SAにダイアフラム11aが押し付けられた状態が維持されるため、シール領域SAの一部が破損して接触領域CAの内側に液体が流入することを適切に防止することができる。
【0061】
〔他の実施形態〕
以上の説明において、センサーホルダ12は、金属製(例えば、SUS304等のステンレス製)の部材であるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、センサーホルダ12は、流路本体21の収容部21bの内周面21b1よりも硬度の高い樹脂材料(例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン))により形成されていてもよい。
【0062】
以上の説明において、収容部21bに収容されるものは圧力センサ11であるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、温度センサなど、流体の特性を検出する他のセンサであってもよい。
【0063】
以上の説明において、収容部21bの内周面21b1には、軸線Xに沿った方向に間隔を空けて2つの溝部21b5が形成されているものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、
図9の変形例の圧力検出装置100Bに示すように、収容部21bの内周面21b1には、軸線X回りに旋回する螺旋状の溝部21b6を形成してもよい。
図9に示す溝部21b6は、収容部21bの内周面21b1に軸線X回りに1回転(360度)旋回する螺旋状に形成されたものである。螺旋状の溝部21b6が旋回する方向は、時計回り方向(右回り)でも反時計回り方向(左回り)のいずれでもよい。また、溝部21b6は、軸線X回りに1回転以上するものとしてもよい。
【0064】
図9に示す圧力検出装置100Bによれば、螺旋状の溝部21b6が軸線Xに沿った方向の各位置に存在しているため、
図8に示す圧力検出装置100Aのように軸線Xに沿った方向の予め決められた位置(
図8では2箇所)にのみ溝部21b5が存在する場合に比べ、タッピングねじ12bを締結する際に生じる収容部21bの変形を軸線Xに沿った各位置で均等に分散させることができる。
【0065】
また、
図9に示す圧力検出装置100Bによれば、溝部21b6が螺旋状であるため、流路本体21を溝部21b6の形状を含めて樹脂材料を金型に射出して成型する場合に、流路本体21を回転させて金型から容易に引き抜くことができる。
また、螺旋状の溝部21b6が軸線X回りに旋回する方向とタッピングねじ12bが軸線X回りに旋回する方向とを同方向とすることにより、タッピングねじ12bと溝部21b6とが交差する領域を広くし、タッピングねじ12bを締結する際に生じる収容部21bの変形を確実に吸収することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 圧力検出ユニット
11 圧力センサ(液体接触部)
11a ダイアフラム(接触面)
11b 歪みゲージ
11c ベース部
11d 保護膜(接触面)
12 センサーホルダ(固定部)
12a 外周面
12b タッピングねじ
13 センサ基板
14 ハウジング
15 Oリング(シール部)
20 流路ユニット
21 流路本体(流路部)
21a 流路
21b 収容部
21b1 内周面
21b2 開口穴
21b3 底面
21b4 環状溝
21b5 溝部
23 ナット
23a 雌ねじ
100 圧力検出装置(流体機器)
200 ケーブル
ID1,ID2,ID3 内径
L 間隔
OD1 外径
OD2 呼び径
P ピッチ
W 幅
X 軸線
θ 角度