(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112537
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ボビン、及び回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/47 20060101AFI20240814BHJP
H02K 3/04 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H02K3/47
H02K3/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017643
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 滉人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 徹
【テーマコード(参考)】
5H603
5H604
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603BB01
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB16
5H603CC18
5H604AA08
5H604CC01
5H604CC04
5H604CC12
5H604DB01
(57)【要約】
【課題】コイルの品質を向上するとともに作業性を向上できるボビン、及び回転電機を提供する。
【解決手段】ボビンは、複数の相のコイルが巻回されるボビンである。ボビンは、ボビンの周面に沿って互いに間隔をあけて設けられ各相のコイルをそれぞれ収容可能な複数の溝部を有し、複数の溝部は、径方向の寸法がそれぞれ異なっている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の相のコイルが巻回されるボビンであって、
前記ボビンは、前記ボビンの周面に沿って互いに間隔をあけて設けられ各相の前記コイルをそれぞれ収容可能な複数の溝部を有し、
複数の前記溝部は、径方向の寸法がそれぞれ異なっている、
ボビン。
【請求項2】
前記各相の前記コイルは、前記ボビンの周方向において重ならないように各前記溝部に収容される、
請求項1に記載のボビン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のボビンを有する固定子と、
前記固定子に対して隙間を介して回転可能に設けられる回転子と、を備える、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ボビン、及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電機子巻線を略非磁性巻型上に巻線パターンで巻き付けることにより空心電機子を形成することが知られている。電機子巻線は、1層で複数の相を有して構成されており、各相の巻線には、円周方向に掛かり複数の相と重なり、電機子エアギャップの外に配置される座巻も含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来構成の各相の巻線つまりコイルは、略非磁性巻型における径方向の同一の位置に配置される。したがって、各相のコイルの端部に位置する座巻つまりコイルエンドの立ち上がり位置が複数の相同士で重なってしまう。
【0005】
このため、従来構成では、モータジェネレータの作製時に、当該コイルエンドに対して例えば外部から強い力を加えることで成形する必要がある。このような成形作業によってコイルが傷ついてしまい品質の低下を招くおそれがあるとともに、作業手間が課題となっていた。
【0006】
そこで、本発明の実施形態は、コイルの品質を向上するとともに作業性を向上できるボビン、及び回転電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のボビンは、複数の相のコイルが巻回されるボビンである。前記ボビンは、前記ボビンの周面に沿って互いに間隔をあけて設けられ各相の前記コイルをそれぞれ収容可能な複数の溝部を有し、複数の前記溝部は、径方向の寸法がそれぞれ異なっている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態による回転電機の一例を概略的に示す正面図
【
図2】一実施形態による回転電機について、ボビンにコイルが巻き付けられた状態の一例を示す斜視図
【
図3】一実施形態によるボビンについて、各溝部に各相のコイルが収容された状態の一例を示す正面図
【
図4】一実施形態によるボビンについて、各溝部に各相のコイルが収容された状態の一例を示す断面図
【
図5】一実施形態によるボビンについて、各溝部の周辺の構成を拡大して示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図では、説明の便宜上、必要に応じて各構成の寸法を適宜拡大している場合があり、各構成同士の寸法比は実際と同一であるとは限らない。
図1に示す実施形態の回転電機1は、例えばコアレス型の回転電機で構成されている。回転電機1は、
図1に示すように、フレーム10、回転子20、及び固定子30を含んで構成されている。なお、以下の説明において、回転子20の回転中心軸Оに対して平行な方向を軸方向と称する。回転中心軸Oを中心に回転子20を回転させたとき、回転子20の外周面が回転する方向を周方向と称する。回転中心軸Oに対して直交する方向を径方向と称する。
【0010】
フレーム10は、回転電機1の外殻を構成している。フレーム10は、例えば円筒状に形成されている。フレーム10は、例えば放熱用の図示しないフィンを複数有している。複数のフィンは、フレーム10の外周面に径方向に突出して形成されている。
【0011】
回転子20は、フレーム10の内部に配置される。回転子20は、全体として中心軸Oを中心とした例えば円柱状に形成されている。回転子20は、例えば固定子30の内側に設けられ、固定子30に対して隙間を介して回転可能に設けられている。つまり、回転電機1は、例えばインナーロータ型の回転電機として構成されている。
【0012】
回転子20は、図示しない永久磁石を有している。永久磁石は、回転子20の外周面に沿って周方向に間隔をあけて複数配置されている。また、回転子20は、シャフト21と一体的に回転中心軸O周りに回転可能に構成されている。シャフト21の回転中心軸は、回転子20の回転中心軸Oと一致している。
【0013】
固定子30は、フレーム10の内側に固定されている。固定子30は、例えば全体として略円筒状に形成されている。固定子30の内径寸法は、回転子20の外形寸法よりもやや大きく設定されている。固定子30は、ボビン31、コイル32、及びバックヨーク33を有している。
【0014】
ボビン31は、例えば絶縁性を有する合成樹脂製であって、円筒状に形成されている。ボビン31は、外周に複数の相のコイル32が巻回される。なお、コイル32は、ボビン31の内周に巻回される構成としても良い。コイル32は、例えば丸線で形成された巻線によって構成されている。巻線の種類は、丸線に限らず、平角線やリッツ線等の他の形状で構成しても良い。
【0015】
コイル32は、
図2に示すように、例えばボビン31に対して波状に配置されるいわゆる波巻で構成されている。コイル32の巻き方は、波巻に限らず、同心巻や重ね巻等の他の巻き方であっても良い。コイル32は、例えば三相各相のコイルつまり第1コイルとしてのU相コイル321、第2コイルとしてのV相コイル322、及び第3コイルとしてのW相コイル323、によって構成されている。
【0016】
各相のコイル321、322、323の外径は、略同一に設定されている。各相のコイル321、322、323は、1本又は複数本の巻線によって構成されている。本実施形態では、各相のコイル321、322、323は、同一の巻線数で構成されており、それぞれ複数本例えば5本を1組の巻線として構成されている。また、各相のコイル321、322、323は、それぞれ接続端子に接続されている。
【0017】
各相のコイル321、322、323は、例えばボビン31に対して1層で巻回される。この場合、まずW相コイル323がボビン31の外周に全周に亘って巻かれ、その後、V相コイル322及びU相コイル321が順次ボビン31の外周に全周に亘って巻かれることで、全体として円筒状のコイル32が形成される。なお、各相のコイル321、322、323のボビン31に対する巻順は、任意に設定することができる。
【0018】
バックヨーク33は、例えば電磁鋼板等の磁性材であって、円筒状に形成されている。バックヨーク33の内面には、コイル32が巻き付けられたボビン31が例えば嵌め込まれて固定される。そして、ボビン31と一体にされたバックヨーク33は、フレーム10に対して固定される。
【0019】
ボビン31は、
図3及び
図4に示すように、本体部311及び溝部312を有している。本体部311は、円筒状に形成され、ボビン31の主体を構成している。溝部312は、本体部311の周面この場合外周面に沿って互いに間隔をあけて設けられている。なお、ボビン31の内周側にコイル32が巻かれる場合、溝部312は、本体部311の内周面に沿って互いに間隔をあけて設けられる。溝部312同士の間隔は、例えば等間隔に設定されている。溝部312同士の間隔は、不等間隔であっても良い。
【0020】
溝部312は、各相のコイル321、322、323をそれぞれ収容可能に複数設けられている。この場合、溝部312は、U相コイル321を収容する第1溝部としてのU相用溝部312a、V相コイル322を収容する第2溝部としてのV相用溝部312b、及びW相コイル323を収容する第3溝部としてのW相用溝部312c、を有している。なお、
図3等において、図面を見やすくするために、各溝部312a、312b、312cの符号は一部のみ付しており、その他の溝部312a、312b、312cの符号は省略している。
【0021】
各相のコイル321、322、323に対応した各溝部312a、312b、312cの径方向の寸法つまりボビン31の周面から各溝部312a、312b、312cの底面までの寸法は、それぞれ異なっている。
図5に示すように、溝部312aの溝深さH1、溝部312bの溝深さH2、及び溝部312cの溝深さH3、の関係は、H1>H2>H3の関係が成り立っている。各溝部312a、312b、312cの溝深さの最大寸法H1は、コイル32の外径の3倍以上に設定されている。
【0022】
そして、互いに隣接する溝部312a、312b、312cの溝深さHの寸法差ΔHは、コイル32の外径寸法以上に設定できる。このため、各相のコイル321、322、323は、ボビン31の周方向において重ならないように各溝部312a、312b、312cに収容される。
【0023】
本実施形態では、寸法差ΔHは、コイル32の外径寸法よりも大きく設定されている。これにより、固定子30の径方向において、隣接する各相のコイル321、322、323間には、隙間が形成される。当該隙間が形成されることで、径方向で隣接する各相のコイル321、322、323間に設けられる図示しない絶縁紙の挿入作業が容易となる。なお、互いに隣接する溝部312a、312b、312cの溝深さHの寸法差ΔHは、コイル32の外径寸法よりも小さく設定しても良い。
【0024】
以上説明した実施形態によれば、ボビン31は、複数の相のコイル321、322、323が巻回されるボビンである。ボビン31は、ボビン31の周面に沿って互いに間隔をあけて設けられ各相のコイル321、322、323をそれぞれ収容可能な複数の溝部312a、312b、312cを有している。
【0025】
ここで、各相のコイルを収容する各溝部の径方向の寸法が同一である場合、各相のコイルの各溝部からの立ち上がり位置が同一となり、異相のコイル同士が相互に重なり合って配置される。このため、固定子の作製時に、各相のコイルの軸方向の両端部に位置するいわゆるコイルエンドの成形作業が必要となる。当該コイルエンドの成形作業によって、例えば巻線が傷つくおそれがあり、また、成形作業による作業手間が生じる。
【0026】
そこで、本実施形態では、複数の溝部312a、312b、312cは、径方向の寸法がそれぞれ異なっている。これによれば、複数の溝部312a、312b、312cに段差を設けることができる。これにより、複数の溝部312a、312b、312cに収容された各相のコイル321、322、323同士の周方向における干渉を抑制することができる。よって、コイルエンドの成形作業を不要にすることができる。結果として、コイル32の品質を向上するとともに作業性を向上できる。
【0027】
また、各相のコイル321、322、323は、ボビン31の周方向において重ならないように各溝部312a、312b、312cに収容される。これによれば、異相のコイル321、322、323がボビン31の周方向において干渉することがより一層抑制されるため、コイル32の品質が向上される。
【0028】
また、各溝部312a、312b、312cの溝深さが明確に異なるため、各溝部312a、312b、312cに各相のコイル321、322、323を納める際の入れ間違いが抑制される。これにより、作業ミスに起因した不具合の発生を防止することができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
図面中、1は回転電機、20は回転子、30は固定子、31はボビン、321、322、323はコイル、312a、312b、312cは溝部、を示す。