(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112538
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】温調システム
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20240814BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240814BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240814BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
B60H1/22 651B
H01M10/613
H01M10/625
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017644
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩間 恵三
【テーマコード(参考)】
3L211
5H031
【Fターム(参考)】
3L211AA11
3L211BA01
3L211BA32
3L211CA17
3L211CA20
3L211DA21
3L211DA48
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】消費電力の増加を抑制しながら、空調性能及びパワーユニットの温調性能の両立が可能な温調システムを提供する。
【解決手段】車両に搭載される温調システム1は、第1冷媒が流通し、バッテリ15の温度を調整するPU冷却回路10と、第2冷媒が流通する空調用のA/C回路50と、PU冷却回路10の第1冷媒とA/C回路50の第2冷媒とが熱交換可能なチラー2と、第1冷媒を気体と液体に分離する気液分離装置4と、第1冷媒が流通し気液分離装置4を介してPU冷却回路10に連通する冷媒冷却回路70と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される温調システムであって、
第1冷媒が流通し、パワーユニットの温度を調整するPU冷却回路と、
第2冷媒が流通する空調用の冷凍サイクル回路と、
前記PU冷却回路の前記第1冷媒と前記冷凍サイクル回路の前記第2冷媒とが熱交換可能な第1熱交換器と、
前記第1冷媒を気体と液体に分離する気液分離装置と、
前記第1冷媒が流通し、前記気液分離装置を介して前記PU冷却回路に連通する冷媒冷却回路と、を備える、温調システム。
【請求項2】
請求項1に記載の温調システムであって、
前記冷凍サイクル回路は、前記第2冷媒が、
前記第2冷媒と外気とが熱交換可能な第2熱交換器と、第1膨張弁と、エバポレータと、第1圧縮機と、第1ヒーターコアと、をこの順に流通する第1流路と、
前記第2熱交換器と、前記第1圧縮機と、前記第1ヒーターコアと、前記第1熱交換器と、第2膨張弁と、をこの順に流通する第2流路と、を備え、
前記第1流路と前記第2流路とがバルブ装置により、切り替え可能に構成される、温調システム。
【請求項3】
請求項2に記載の温調システムであって、
前記冷媒冷却回路は、前記第1冷媒が、
前記気液分離装置と、第2圧縮機と、コンデンサと、第3膨張弁と、をこの順に流通するメイン流路と、
前記メイン流路の前記第2圧縮機をバイパスするバイパス流路と、を備え、
前記メイン流路と前記バイパス流路とが第1バルブにより、切り替え可能に構成される、温調システム。
【請求項4】
請求項3に記載の温調システムであって、
前記第1流路は、前記第2圧縮機と前記コンデンサとの間に配置された第2ヒーターコアを流通する、温調システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の温調システムであって、
前記PU冷却回路は、前記第1冷媒が、
バッテリと、前記気液分離装置と、ポンプと、ラジエータと、駆動部と、前記第1熱交換器と、ヒーターと、を流通するメイン流路と、
前記メイン流路の前記ラジエータをバイパスするバイパス流路と、を備え、
前記メイン流路と前記バイパス流路とが第2バルブにより、切り替え可能に構成される、温調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、車両においてもCO2排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、電動化技術に関する研究開発が行われている。
【0003】
電動車両には、駆動源としてモータ、モータに電力を供給するバッテリ、バッテリからの電力を変換してモータに供給するインバータ等のパワーユニットが搭載される。これらのパワーユニットは発熱部品であるため、適切に冷却又は加温することで温度調整する必要がある。また、一方で、車室内の快適性を向上させるためには、適切に暖房又は冷房を利かせる必要がある。
【0004】
そこで、電動車両には、空調用の冷凍サイクル回路に加えて、パワーユニットを温調するパワーユニット冷却回路を設け、冷凍サイクル回路の冷媒とパワーユニット冷却回路の冷媒とがチラーで熱交換可能に構成された温調回路が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、冷凍サイクル回路におけるヒートポンプ制御は、外気温が低いと暖房能力が下がってしまうという課題がある。温調回路では、環境温度によらず、消費電力の増加を抑制しながら、空調性能及びパワーユニットの温調性能の両立が望まれている。
【0007】
本発明は、消費電力の増加を抑制しながら、空調性能及びパワーユニットの温調性能の両立が可能な温調システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
車両に搭載される温調システムであって、
第1冷媒が流通し、パワーユニットの温度を調整するPU冷却回路と、
第2冷媒が流通する空調用の冷凍サイクル回路と、
前記PU冷却回路の前記第1冷媒と前記冷凍サイクルの前記第2冷媒とが熱交換可能な第1熱交換器と、
前記第1冷媒を気体と液体に分離する気液分離装置と、
前記第1冷媒が流通し、前記気液分離装置を介して前記PU冷却回路に連通する冷媒冷却回路と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、消費電力の増加を抑制しながら、空調性能及びパワーユニットの温調性能を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の温調システム1の回路図である。
【
図2】エアコン(A/C)の暖房時、且つ、バッテリ(BAT)の適温時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【
図3】エアコン(A/C)の暖房時、且つ、バッテリ(BAT)の冷却時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【
図4】エアコン(A/C)の非作動時、且つ、バッテリ(BAT)の暖気時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【
図5】エアコン(A/C)の非作動時、且つ、バッテリ(BAT)の適温時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【
図6】エアコン(A/C)の非作動時、且つ、バッテリ(BAT)の冷却時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【
図7】エアコン(A/C)の冷房時、且つ、バッテリ(BAT)の適温時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【
図8】エアコン(A/C)の冷房時、且つ、バッテリ(BAT)の冷却時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【
図9】エアコン(A/C)の暖房時、且つ、バッテリ(BAT)の暖気時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【
図10】エアコン(A/C)の冷房時、且つ、バッテリ(BAT)の暖気時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【
図11】温調システム1の制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の温調システムの一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
【0012】
先ず、本実施形態の温調システム1の構成について説明する。
図1は、車両に搭載される温調システム1の回路図である。
図1に示すように、温調システム1は、第1冷媒が流通しバッテリ15(IPU)を冷却するPU(Power Unit)冷却回路10と、HVAC(Heating,Ventilation, and Air Conditioning)6と、第2冷媒が流通しHVAC6に用いられるA/C回路50(冷凍サイクル回路)と、PU冷却回路10を流通する第1冷媒とA/C回路50を流通する第2冷媒との間で熱交換可能なチラー2(H/E)と、第1冷媒を気体と液体に分離する気液分離装置4と、第1冷媒が流通し気液分離装置4を介してPU冷却回路10に連通する冷媒冷却回路70と、を備える。
【0013】
HVAC6は、車室内を快適に保つために風の温度や風量を調整するカーエアコンユニットであり、A/C回路50のエバポレータ54及び第1ヒーターコア56(H/C1)と、冷媒冷却回路70の第2ヒーターコア76と、を備える。冷房時には、エバポレータ54を通過する風により車室内に冷気が供給され、暖房時には、第1ヒーターコア56及び/又は第2ヒーターコア76を通過する風により車室内に暖気が供給される。
【0014】
PU冷却回路10のメイン流路18には、バッテリ15、気液分離装置4、PU冷却回路Pump11、ラジエータ12、PU冷却回路3VLV17、PCU13、チラー2、及びECH14がこの順に配置される。バッテリ15は、充電式の蓄電池であり、例えば、リチウムイオン電池である。電解質は液体であってもよく、個体であってもよい。PU冷却回路Pump11は、電動ポンプである。PCU13は、駆動源としてモータやバッテリ15からの電力を変換してモータに供給するインバータ、車載充電器(OBC)等を含む発熱部品である。ECH14は水加熱ヒーターである。チラー2は、熱交換器である。また、PU冷却回路10には、PU冷却回路Pump11とラジエータ12の間に位置する分岐部16とPU冷却回路3VLV17とを結ぶバイパス流路19が、ラジエータ12を迂回するように設けられる。
【0015】
PU冷却回路3VLV17は、三方向バルブであり、RADバイパスOFF状態及びRADバイパスON状態を切り替え可能に構成される。PU冷却回路3VLV17のRADバイパスOFF状態では、第1冷媒が、バッテリ15、気液分離装置4、PU冷却回路Pump11、ラジエータ12、PU冷却回路3VLV17、PCU13、チラー2、及びECH14に流れる。ラジエータ12では、PU冷却回路10を流通する第1冷媒と大気との間で熱交換が行われる。
【0016】
一方、PU冷却回路3VLV17のRADバイパスON状態とすると、第1冷媒が、ラジエータ12を迂回し、バッテリ15、気液分離装置4、PU冷却回路Pump11、バイパス流路19、PU冷却回路3VLV17、PCU13、チラー2、及びECH14に流れる。このとき、第1冷媒がラジエータ12を流通しないため、第1冷媒がラジエータ12で大気と熱交換しない。
【0017】
冷媒冷却回路70のメイン流路78には、気液分離装置4、冷媒冷却回路Comp72、第2ヒーターコア76(H/C2)、コンデンサ73、及び第3膨張弁75がこの順に配置される。冷媒冷却回路Comp72は、コンプレッサであり、ON状態とOFF状態とが切り替えられる。また、冷媒冷却回路70には、気液分離装置4と冷媒冷却回路Comp72との間に位置する分岐部71aと、冷媒冷却回路Comp72と第2ヒーターコア76との間に位置する合流部71bと、を結ぶバイパス流路79が、冷媒冷却回路Comp72を迂回するように設けられる。バイパス流路79には冷媒冷却回路VLV77が設けられる。
【0018】
冷媒冷却回路VLV77は、遮断弁であり、OPEN状態とCLOSE状態を切り替え可能に構成される。冷媒冷却回路VLV77をCLOSE状態とし、冷媒冷却回路Comp72を作動(ON)すると、ヒートポンプ制御が実行され、冷媒冷却回路Comp72から排出された第1冷媒が、第2ヒーターコア76、コンデンサ73、第3膨張弁75、及び気液分離装置4に流れる。
【0019】
一方、冷媒冷却回路VLV77のOPEN状態とし、冷媒冷却回路Comp72をOFF状態とすると、ヒートパイプ制御が実行され、第1冷媒が、冷媒冷却回路Comp72を迂回し、冷媒冷却回路VLV77(バイパス流路79)、第2ヒーターコア76、コンデンサ73、第3膨張弁75、及び気液分離装置4に流れる。
【0020】
気液分離装置4では、PU冷却回路10を流通する第1冷媒を気体と液体とに分離する。なお、第1冷媒は、沸点がバッテリ15の適温領域内にあることが好ましい。気液分離装置4は、第1冷媒を気体と液体とに分けた後、ガス状第1冷媒だけを冷媒冷却回路70に供給し、液状第1冷媒をPU冷却回路10に戻す。また、気液分離装置4には、冷媒冷却回路70の第3膨張弁75から排出されるガス状第1冷媒も供給される。したがって、冷媒冷却回路Comp72にはPU冷却回路10からのガス状第1冷媒と冷媒冷却回路70のガス状第1冷媒が供給されるので、冷媒冷却回路Comp72に供給されるガス状第1冷媒の密度が増え、冷媒冷却回路Comp72によって圧縮した後のガス状第1冷媒の流量が大きくなる。これにより、第2ヒーターコア76における暖房効率が向上し、低温時であっても適切に暖房を利かせることができる。一方で、ガス状第1冷媒には吸熱効果はないので、PU冷却回路10に吸熱効果の高い液状第1流体のみが循環される。
【0021】
A/C回路50は、冷房用流路58と暖房用流路59とを備える。冷房用流路58には、室外機51、第1膨張弁53、エバポレータ54、コンプレッサ55、第1ヒーターコア56(H/C2)、A/C回路3VLV63、及び第2遮断弁62がこの順に配置される。暖房用流路59には、室外機51、第1遮断弁61、コンプレッサ55、第1ヒーターコア56、A/C回路3VLV63、チラー2、及び第2膨張弁57がこの順に配置される。冷房用流路58及び暖房用流路59は、一部の流路及び機器が共通しており、第1遮断弁61及び第2遮断弁62を切り替えることで、冷房用流路58と暖房用流路59とが切り替えられる。
【0022】
第1遮断弁61及び第2遮断弁62は、ともに遮断弁であり、OPEN状態とCLOSE状態を切り替え可能に構成される。第1遮断弁61及び第2遮断弁62は、冷房時に第1遮断弁61がCLOSE状態且つ第2遮断弁62がOPEN状態となるように制御され、暖房時に第1遮断弁61がOPEN状態且つ第2遮断弁62がCLOSE状態となるように制御される。コンプレッサ55は、冷房時及び暖房時に作動し、非作動時は作動しないように制御される。
【0023】
また、冷房用流路58のA/C回路3VLV63と第2遮断弁62の間の第1連結部64aと、暖房用流路59のチラー2と第2膨張弁57の間の第2連結部64bとが、連結流路65で連結される。
【0024】
A/C回路3VLV63は、三方弁であり、H/EバイパスON状態及びH/EバイパスOFF状態を切り替え可能に構成される。H/EバイパスON状態では、第2冷媒が、第1ヒーターコア56からA/C回路3VLV63を介して第1連結部64aに流れる。そして、第2遮断弁62がOPEN状態であれば第2遮断弁62を介して室外機51に流れ、第2遮断弁62がCLOSE状態であれば第2膨張弁57を介して室外機51に流れる。
【0025】
一方、H/EバイパスOFF状態では、第2冷媒が、第1ヒーターコア56からA/C回路3VLV63を介してチラー2に流れる。チラー2では、PU冷却回路10を流通する第1冷媒とA/C回路50を流通する第2冷媒との間で熱交換が行われる。そして、第2遮断弁62がOPEN状態であれば第2遮断弁62を介して室外機51に流れ、第2遮断弁62がCLOSE状態であれば第2膨張弁57を介して室外機51に流れる。
【0026】
室外機51は、コンデンサ73の近傍に配置され、コンデンサ73からの廃熱によりA/C回路50に流通する第2冷媒を加温することができる。
【0027】
A/C回路50には、第1ヒーターコア56とA/C回路3VLV63との間に第2冷媒の温度(TA/C)を検出する温度計Taが設けられている。PU冷却回路10には、バッテリ15の温度(TIPU)を検出する温度計Tbと、第1冷媒の圧力(PIPU)を検出する圧力計Pとが、設けられている。
【0028】
続いてこのように構成された温調システム1の作動状態について
図2~
図9を参照しながら説明する。なお、
図2以降の図面では、冷媒がポンプ等により積極的に流れていない流路については流路を省略している点に留意されたい。また、A/C回路50の第2冷媒の流れを細い実線で示し、冷媒冷却回路70の第1冷媒の流れを太い実線で示し、PU冷却回路10の第1冷媒の流れを、中間の太さの実線で示している。
【0029】
図2は、エアコン(A/C)の暖房時、且つ、バッテリ(BAT)の適温時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【0030】
エアコン(A/C)の暖房時、且つ、バッテリ(BAT)の適温時に、A/C回路50では、第1遮断弁61がOPEN状態且つ第2遮断弁62がCLOSE状態で、コンプレッサ55が作動(ON)する。これにより、第2冷媒が暖房用流路59を循環し、第1ヒーターコア56から暖気が車室内に排出される。このとき、A/C回路3VLV63は、H/EバイパスON状態に制御され、第2冷媒はチラー2を流れない。そのため、チラー2でのA/C回路50の第2冷媒とPU冷却回路10の液状第1冷媒との熱交換は行われない。
【0031】
また、PU冷却回路10において、ECH14をOFF状態、且つ、PU冷却回路3VLV17をRADバイパスON状態として、PU冷却回路Pump11を作動(ON)する。これにより、PU冷却回路Pump11から排出された第1冷媒は、ラジエータ12を迂回し、バイパス流路19、PU冷却回路3VLV17、PCU13、チラー2、ECH14、バッテリ15、気液分離装置4を循環する。PU冷却回路10を流れる第1冷媒の熱は、ラジエータ12ではなく気液分離装置4で冷媒冷却回路70に渡される。
【0032】
冷媒冷却回路70では、冷媒冷却回路Comp72をOFF状態、且つ、冷媒冷却回路VLV77をOPEN状態とすることで、第1冷媒が気液分離装置4、冷媒冷却回路VLV77(バイパス流路79)、第2ヒーターコア76、コンデンサ73、及び第3膨張弁75を循環し、第2ヒーターコア76からも暖気が車室内に排出される。
【0033】
このように、気液分離装置4でPU冷却回路10から冷媒冷却回路70へ渡された熱は、第2ヒーターコア76で暖房に利用される。即ち、冷媒冷却回路70のPCU13の廃熱は、ラジエータ12で排出されずに、暖房に利用される。また、冷媒冷却回路70のコンデンサ73での廃熱は、コンデンサ73の近傍に配置されたA/C回路50の室外機51で取り込まれ、第1ヒーターコア56で暖房に利用されるので、暖房効率を向上させることができる。
【0034】
図3は、エアコン(A/C)の暖房時、且つ、バッテリ(BAT)の冷却時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【0035】
エアコン(A/C)の暖房時、且つ、バッテリ(BAT)の冷却時には、A/C回路50では、第1遮断弁61がCLOSE状態且つ第2遮断弁62がCLOSE状態で、コンプレッサ55が作動しない(OFF)。これにより、エアコン(A/C)の暖房がON状態にもかかわらず、A/C回路50を第2冷媒が流れない。なお、本例では、A/C回路50を利用しない場合を例示するが、
図2のように、A/C回路50を併用して第1ヒーターコア56から暖気を発生させてもよい。
【0036】
PU冷却回路10において、ECH14をOFF状態、且つ、PU冷却回路3VLV17をRADバイパスOFF状態として、PU冷却回路Pump11を作動する(ON)。これにより、PU冷却回路Pump11から排出された第1冷媒は、ラジエータ12、PU冷却回路3VLV17、PCU13、チラー2、ECH14、バッテリ15、気液分離装置4を循環する。PU冷却回路10を流れる第1冷媒の熱は、ラジエータ12で大気に排出されるとともに気液分離装置4で冷媒冷却回路70に渡される。
【0037】
冷媒冷却回路70では、冷媒冷却回路Comp72をON状態、且つ、冷媒冷却回路VLV77をCLOSE状態とすることで、ヒートポンプ制御が行われる。冷媒冷却回路Comp72から排出された第1冷媒は、第2ヒーターコア76、コンデンサ73、第3膨張弁75、及び気液分離装置4を循環する。このとき、冷媒冷却回路Comp72にて第1冷媒が圧縮されて高圧ガスが形成され、第2ヒーターコア76から暖気が車室内に排出される。
【0038】
このようにA/C回路50のコンプレッサ55が作動しないことで、消費電力を抑制できる。また、気液分離装置4でガス状第1冷媒を分離することで、効率的にバッテリ15を冷却でき、バッテリ15を高効率ポイントで使用することができる。
【0039】
図4は、エアコン(A/C)の非作動(OFF)時、且つ、バッテリ(BAT)の暖気時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【0040】
エアコン(A/C)の非作動(OFF)時、且つ、バッテリ(BAT)の暖気時には、A/C回路50では、第1遮断弁61がCLOSE状態且つ第2遮断弁62がCLOSE状態で、コンプレッサ55が作動しない(OFF)。
【0041】
PU冷却回路10において、ECH14をON状態、且つ、PU冷却回路3VLV17をRADバイパスON状態として、PU冷却回路Pump11を作動する(ON)。これにより、PU冷却回路Pump11から排出された第1冷媒は、ラジエータ12を迂回し、バイパス流路19、PU冷却回路3VLV17、PCU13、チラー2、ECH14、バッテリ15、気液分離装置4を循環する。PU冷却回路10を流れる第1冷媒は、PCU13の廃熱とECH14の熱により温められ、バッテリ15を加温する。
【0042】
冷媒冷却回路70では、冷媒冷却回路Comp72をOFF状態、且つ、冷媒冷却回路VLV77をCLOSE状態とすることで、第1冷媒は流れない。
【0043】
図5は、エアコン(A/C)の非作動(OFF)時、且つ、バッテリ(BAT)の適温時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【0044】
エアコン(A/C)の非作動(OFF)時、且つ、バッテリ(BAT)の適温時には、A/C回路50では、第1遮断弁61がCLOSE状態且つ第2遮断弁62がCLOSE状態で、コンプレッサ55が作動しない。
【0045】
PU冷却回路10において、ECH14をOFF状態、且つ、PU冷却回路3VLV17をRADバイパスOFF状態として、PU冷却回路Pump11を作動する(ON)。これにより、PU冷却回路Pump11から排出された第1冷媒は、ラジエータ12、PU冷却回路3VLV17、PCU13、チラー2、ECH14、バッテリ15、気液分離装置4を循環する。PU冷却回路10を流れる第1冷媒の熱は、ラジエータ12で大気に排出される。
【0046】
冷媒冷却回路70では、冷媒冷却回路Comp72をOFF状態、且つ、冷媒冷却回路VLV77をOPEN状態とすることで、第1冷媒が気液分離装置4、冷媒冷却回路VLV77(バイパス流路79)、第2ヒーターコア76、コンデンサ73、及び第3膨張弁75を循環する。冷媒冷却回路70を流れる第1冷媒は、ヒートパイプ制御により廃熱するため、冷媒冷却回路70での電力消費ない。
【0047】
図6は、エアコン(A/C)の非作動(OFF)時、且つ、バッテリ(BAT)の冷却時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【0048】
エアコン(A/C)の非作動(OFF)時、且つ、バッテリ(BAT)の冷却時には、A/C回路50では、第1遮断弁61がCLOSE状態且つ第2遮断弁62がCLOSE状態で、コンプレッサ55が作動しない。
【0049】
PU冷却回路10において、ECH14をOFF状態、且つ、PU冷却回路3VLV17をRADバイパスOFF状態として、PU冷却回路Pump11を作動する(ON)。これにより、PU冷却回路Pump11から排出された第1冷媒は、ラジエータ12、PU冷却回路3VLV17、PCU13、チラー2、ECH14、バッテリ15、気液分離装置4を循環する。PU冷却回路10を流れる第1冷媒の熱は、ラジエータ12で大気に排出されるとともに気液分離装置4で冷媒冷却回路70に渡される。
【0050】
冷媒冷却回路70では、冷媒冷却回路Comp72をON状態、且つ、冷媒冷却回路VLV77をCLOSE状態とすることで、冷媒冷却回路70でヒートポンプ制御が行われる。冷媒冷却回路Comp72から排出された第1冷媒は、第2ヒーターコア76、コンデンサ73、第3膨張弁75、及び気液分離装置4を循環する。このとき、気液分離装置4で第1冷媒が冷却される。したがって、PU冷却回路10を流れる第1冷媒によってバッテリ15が冷却される。これにより、冷媒冷却回路Comp72mの稼働により消費電力は発生するが、効率的にバッテリ15を冷却でき、バッテリ15を高効率ポイントで使用することができる。また、走行風が確保できない充電時において、冷媒冷却回路70の冷媒冷却回路Comp72を稼働させることで、外気温との差を大きくすることで冷却性能を確保でき、充電時間を短縮することができる。
【0051】
図7は、エアコン(A/C)の冷房時、且つ、バッテリ(BAT)の適温時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【0052】
エアコン(A/C)の冷房時、且つ、バッテリ(BAT)の適温時には、A/C回路50では、第1遮断弁61がCLOSE状態且つ第2遮断弁62がOPEN状態で、コンプレッサ55が作動する(ON)。これにより、第2冷媒が冷房用流路58を循環し、エバポレータ54から冷気が車室内に排出される。このとき、A/C回路3VLV63は、H/EバイパスON状態に制御され、第2冷媒はチラー2を流れない。そのため、チラー2でのA/C回路50の第2冷媒とPU冷却回路10の液状第1冷媒との熱交換は行われない。
【0053】
PU冷却回路10において、ECH14をOFF状態、且つ、PU冷却回路3VLV17をRADバイパスOFF状態として、PU冷却回路Pump11を作動する(ON)。これにより、PU冷却回路Pump11から排出された液状第1冷媒は、ラジエータ12、PU冷却回路3VLV17、PCU13、チラー2、ECH14、バッテリ15、気液分離装置4を循環する。PU冷却回路10を流れる液状第1冷媒の熱は、ラジエータ12で大気に排出される。
【0054】
冷媒冷却回路70では、冷媒冷却回路Comp72をOFF状態、且つ、冷媒冷却回路VLV77をOPEN状態とすることで、第1冷媒が気液分離装置4、冷媒冷却回路VLV77(バイパス流路79)、第2ヒーターコア76、コンデンサ73、及び第3膨張弁75を循環する。冷媒冷却回路70を流れる第1冷媒は、ヒートパイプ制御により廃熱するため、冷媒冷却回路70での電力消費ない。
【0055】
図8は、エアコン(A/C)の冷房時、且つ、バッテリ(BAT)の冷却時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【0056】
エアコン(A/C)の冷房時、且つ、バッテリ(BAT)の冷却時には、A/C回路50では、第1遮断弁61がCLOSE状態且つ第2遮断弁62がOPEN状態で、コンプレッサ55が作動する(ON)。これにより、第2冷媒が冷房用流路58を循環し、エバポレータ54から冷気が車室内に排出される。このとき、A/C回路3VLV63は、H/EバイパスON状態に制御され、第2冷媒はチラー2を流れない。そのため、チラー2でのA/C回路50の第2冷媒とPU冷却回路10の液状第1冷媒との熱交換は行われない。
【0057】
PU冷却回路10において、ECH14をOFF状態、且つ、PU冷却回路3VLV17をRADバイパスOFF状態として、PU冷却回路Pump11を作動する(ON)。これにより、PU冷却回路Pump11から排出された第1冷媒は、ラジエータ12、PU冷却回路3VLV17、PCU13、チラー2、ECH14、バッテリ15、気液分離装置4を循環する。PU冷却回路10を流れる液状第1冷媒の熱は、ラジエータ12で大気に排出されるとともに気液分離装置4で冷媒冷却回路70に渡される。
【0058】
冷媒冷却回路70では、冷媒冷却回路Comp72をON状態、且つ、冷媒冷却回路VLV77をCLOSE状態とすることで、冷媒冷却回路70でヒートポンプ制御が行われる。冷媒冷却回路Comp72から排出された第1冷媒は、第2ヒーターコア76、コンデンサ73、第3膨張弁75、及び気液分離装置4を循環する。このとき、気液分離装置4で第1冷媒が冷却される。したがって、PU冷却回路10を流れる第1冷媒によってバッテリ15が冷却される。これにより、冷媒冷却回路Comp72mの稼働により消費電力は発生するが、効率的にバッテリ15を冷却でき、バッテリ15を高効率ポイントで使用することができる。
【0059】
図9は、エアコン(A/C)の暖房時、且つ、バッテリ(BAT)の暖気時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【0060】
エアコン(A/C)の暖房時、且つ、バッテリ(BAT)の暖気時に、A/C回路50では、第1遮断弁61がOPEN状態且つ第2遮断弁62がCLOSE状態で、コンプレッサ55が作動する(ON)。これにより、第2冷媒が暖房用流路59を循環し、第1ヒーターコア56から暖気が車室内に排出される。このとき、第2冷媒の温度が所定温度(後述のバッテリ15の適温領域の下限温度(T1))より高い場合、A/C回路3VLV63は、H/EバイパスOFF状態に制御され、第2冷媒はチラー2を流れ、チラー2でA/C回路50の第2冷媒とPU冷却回路10の第1冷媒との熱交換が行われ、第1冷媒が温められる。なお、図示は省略するが、第2冷媒の温度が該所定温度より低い場合、A/C回路3VLV63は、H/EバイパスON状態に制御され、第2冷媒はチラー2を迂回する。
【0061】
PU冷却回路10において、ECH14をON状態、且つ、PU冷却回路3VLV17をRADバイパスON状態として、PU冷却回路Pump11を作動する(ON)。これにより、PU冷却回路Pump11から排出された液状第1冷媒は、ラジエータ12を迂回し、バイパス流路19、PU冷却回路3VLV17、PCU13、チラー2、ECH14、バッテリ15、気液分離装置4を循環する。PU冷却回路10を流れる第1冷媒は、PCU13の廃熱と、チラー2での受熱、及びECH14の熱により温められ、バッテリ15を加温する。
【0062】
冷媒冷却回路70では、冷媒冷却回路Comp72をOFF状態、且つ、冷媒冷却回路VLV77をCLOSE状態とすることで、ガス状第1冷媒は流れない。
【0063】
このように、第1冷媒をPCU13の廃熱と、チラー2での受熱、及びECH14の熱により加温できるので、ECH14の稼働時間を短縮できる分、消費電力を抑制できる。
【0064】
図10は、エアコン(A/C)の冷房時、且つ、バッテリ(BAT)の暖気時の温調システム1の冷媒流れを示す図である。
【0065】
エアコン(A/C)の冷房時、且つ、バッテリ(BAT)の暖気時には、A/C回路50では、第1遮断弁61がCLOSE状態且つ第2遮断弁62がOPEN状態で、コンプレッサ55が作動する(ON)。これにより、第2冷媒が冷房用流路58を循環し、エバポレータ54から冷気が車室内に排出される。このとき、第2冷媒の温度が所定温度(後述のバッテリ15の適温領域の下限温度(T1))より高い場合、A/C回路3VLV63は、H/EバイパスOFF状態に制御され、第2冷媒はチラー2を流れ、チラー2でA/C回路50の第2冷媒とPU冷却回路10の第1冷媒との熱交換が行われ、第1冷媒が温められる。なお、図示は省略するが、第2冷媒の温度が該所定温度より低い場合、A/C回路3VLV63は、H/EバイパスON状態に制御され、第2冷媒はチラー2を迂回する。
【0066】
PU冷却回路10において、ECH14をON状態、且つ、PU冷却回路3VLV17をRADバイパスON状態として、PU冷却回路Pump11を作動する(ON)。これにより、PU冷却回路Pump11から排出された第1冷媒は、ラジエータ12を迂回し、バイパス流路19、PU冷却回路3VLV17、PCU13、チラー2、ECH14、バッテリ15、気液分離装置4を循環する。PU冷却回路10を流れる第1冷媒は、PCU13の廃熱と、チラー2での受熱、及びECH14の熱により加温され、バッテリ15を加温する。
【0067】
冷媒冷却回路70では、冷媒冷却回路Comp72をOFF状態、且つ、冷媒冷却回路VLV77をCLOSE状態とすることで、第1冷媒は流れない。
【0068】
このように、第1冷媒をPCU13の廃熱と、チラー2での受熱、及びECH14の熱により加温できるので、ECH14の稼働時間を短縮できる分、消費電力を抑制できる。
【0069】
次に温調システム1の制御フローについて
図11を参照しながら説明する。なお、HVAC6の冷房、暖房、非作動は乗員の意思又は空調制御装置によって選択されるため、以下では温調システム1の要素(ECH14、冷媒冷却回路VLV77、冷媒冷却回路Comp72、PU冷却回路3VLV17、A/C回路3VLV63、PU冷却回路Pump11)の制御について説明する。
【0070】
イグニッションがON状態になると(S11)、まずバッテリ15の温度(TIPU)がバッテリ15の適温領域の下限温度(T1)より低いか否かを判定する(S12)。バッテリ15の温度(TIPU)がバッテリ15の適温領域の下限温度(T1)より低い場合(S12のYES)、バッテリ15を加温する暖気制御を実行する。具体的には、ECH14をON状態とし(S13)、冷媒冷却回路VLV77をCLOSE状態とし(S14)、冷媒冷却回路Comp72をOFF状態とし(S15)、PU冷却回路3VLV17をRADバイパスON状態とする(S16)。
【0071】
続いて、第2冷媒の温度(TA/C)がバッテリ15の適温領域の下限温度(T1)より低いか否かを判定する(S17)。第2冷媒の温度(TA/C)がバッテリ15の適温領域の下限温度(T1)より低い場合(S17のYES)、A/C回路3VLV63をH/EバイパスON状態とし(S18)、第2冷媒の温度(TA/C)がバッテリ15の適温領域の下限温度(T1)より高い場合(S17のNO)、A/C回路3VLV63をH/EバイパスOFF状態とする(S19)。
【0072】
そして、イグニッションがOFF状態か否かを判定し(S20)、イグニッションがOFF状態であれば(S20のYES)、冷媒冷却回路Comp72をOFF状態として(S21)、処理を終了する。一方、イグニッションがON状態であれば(S20のNO)、PU冷却回路Pump11をON状態とし(S22)、ステップS12に戻る。
【0073】
バッテリ15の温度(TIPU)がバッテリ15の適温領域の下限温度(T1)より高い場合(S12のNO)、ECH14をOFF状態とし(S25)、続いて、バッテリ15の温度(TIPU)がバッテリ15の適温領域の上限温度(T2)より低いか否かを判定する(S30)。バッテリ15の温度(TIPU)がバッテリ15の適温領域の上限温度(T2)より低い場合(S30のYES)、バッテリ15を加温も冷却もしない適温制御を実行する。具体的には、冷媒冷却回路Comp72をOFF状態とし(S31)、冷媒冷却回路VLV77をOPEN状態とする(S32)。そして、エアコンが暖房か否かを判定し(S33)、エアコンが暖房の場合(S33のYES)、PU冷却回路3VLV17をRADバイパスON状態とし(S34)、前述のステップS19以降の処理に移行する。
【0074】
バッテリ15の温度(TIPU)がバッテリ15の適温領域の上限温度(T2)より高い場合(S30のNO)。バッテリ15を冷却する冷却制御を実行する。具体的には、冷媒冷却回路Comp72をON状態とし(S36)、冷媒冷却回路VLV77をCLOSE状態とし(S37)、PU冷却回路3VLV17をRADバイパスOFF状態とする(S38)。
【0075】
図12は、変形例の温調システム1の回路図である。
冷媒冷却回路70のメイン流路78には、気液分離装置4、冷媒冷却回路Comp72、コンデンサ73、及び第3膨張弁75がこの順に配置され、上記実施形態のように第2ヒーターコア76(H/C2)が配置されていない。即ち、HVAC6は、A/C回路50のエバポレータ54及び第1ヒーターコア56(H/C1)のみを備える。この場合、暖房時には第1ヒーターコア56(H/C1)で車室内を暖房すればよく、部品点数を削減することができる。
【0076】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0077】
例えば、各回路の要素の配置順を変更してもよい。PU冷却回路10のメイン流路18には、PCU13、チラー2、ECH14、バッテリ15が必ずしもこの順に配置されている必要はない。
【0078】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0079】
(1) 車両に搭載される温調システム(温調システム1)であって、
第1冷媒が流通し、パワーユニット(PCU13、バッテリ15)の温度を調整するPU冷却回路(PU冷却回路10)と、
第2冷媒が流通する空調用の冷凍サイクル回路(A/C回路50)と、
前記PU冷却回路の前記第1冷媒と前記冷凍サイクル回路の前記第2冷媒とが熱交換可能な第1熱交換器(チラー2)と、
前記第1冷媒を気体と液体に分離する気液分離装置(気液分離装置4)と、
前記第1冷媒が流通し、前記気液分離装置を介して前記PU冷却回路に連通する冷媒冷却回路(冷媒冷却回路70)と、を備える、温調システム。
【0080】
外気温度が低い場合、第2冷媒が大気から受け取る熱が小さくなることに加えて、第2冷媒の密度が下がるため、冷凍サイクル回路の圧縮機で圧縮して高温にした第2冷媒の流量が小さくなり暖房性能が悪化する。(1)によれば、気液分離装置により分離されたガス状第1冷媒から冷媒冷却回路のコンデンサで大気に捨てられた廃熱を冷凍サイクル回路の熱交換器(室外機)で取り込むことで、暖房性能を向上させることができる。これにより、消費電力の増加を抑制しながら、空調性能及びパワーユニットの温調性能を両立させることができる。
【0081】
(2) (1)に記載の温調システムであって、
前記冷凍サイクル回路は、前記第2冷媒が、
前記第2冷媒と外気とが熱交換可能な第2熱交換器(室外機51)と、第1膨張弁(第1膨張弁53)と、エバポレータ(エバポレータ54)と、第1圧縮機(コンプレッサ55)と、第1ヒーターコア(第1ヒーターコア56)と、をこの順に流通する第1流路(第1流路58)と、
前記第2熱交換器と、前記第1圧縮機と、前記第1ヒーターコアと、前記第1熱交換器と、第2膨張弁(第2膨張弁57)と、をこの順に流通する第2流路(第2流路59)と、を備え、
前記第1流路と前記第2流路とがバルブ装置(第1遮断弁61、第2遮断弁62)により、切り替え可能に構成される、温調システム。
【0082】
(2)によれば、冷房時には第1流路に切り替え、暖房時には第2流路に切り替えることで、車室内を適切に温調することができる。
【0083】
(3) (2)に記載の温調システムであって、
前記冷媒冷却回路は、前記第1冷媒が、
前記気液分離装置と、第2圧縮機(冷媒冷却回路Comp72)と、コンデンサ(コンデンサ73)と、第3膨張弁(第3膨張弁75)と、をこの順に流通するメイン流路(メイン流路78)と、
前記メイン流路の前記第2圧縮機をバイパスするバイパス流路(バイパス流路79)と、を備え、
前記メイン流路と前記バイパス流路とが第1バルブ(冷媒冷却回路VLV77)により、切り替え可能に構成される、温調システム。
【0084】
(3)によれば、ヒートポンプ冷却制御とヒートパイプ冷却制御を切り替えることで消費電力を抑制することができる。
【0085】
(4) (3)に記載の温調システムであって、
前記第1流路は、前記第2圧縮機と前記コンデンサとの間に配置された第2ヒーターコア(第2ヒーターコア76)を流通する、温調システム。
【0086】
(4)によれば、気液分離を行った気体状態の第1冷媒の廃熱を暖房に利用することができる。
【0087】
(5) (3)又は(4)に記載の温調システムであって、
前記PU冷却回路は、前記第1冷媒が、
バッテリ(バッテリ15)と、前記気液分離装置と、ポンプ(PU冷却回路Pump11)と、ラジエータ(ラジエータ12)と、駆動部(PCU13)と、前記第1熱交換器と、ヒーター(ECH14)と、を流通するメイン流路(メイン流路18)と、
前記メイン流路の前記ラジエータをバイパスするバイパス流路(バイパス流路19)と、を備え、
前記メイン流路と前記バイパス流路とが第2バルブ(PU冷却回路3VLV17)により、切り替え可能に構成される、温調システム。
【0088】
(5)によれば、パワーユニットの温度に応じてラジエータへの流通を遮断又は許容することで、パワーユニットの温度を適切に制御することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 温調システム
2 チラー(第1熱交換器)
4 気液分離装置
10 PU冷却回路
11 PU冷却回路Pump(ポンプ)
12 ラジエータ
13 PCU(駆動部)
14 ECH(ヒーター)
15 バッテリ(パワーユニット)
17 PU冷却回路3VLV(第2バルブ)
18 メイン流路
19 バイパス流路
50 A/C回路(冷凍サイクル回路)
51 室外機(第2熱交換器)
53 第1膨張弁
54 エバポレータ
55 コンプレッサ(第1圧縮機)
56 第1ヒーターコア
57 第2膨張弁
58 第1流路
59 第2流路
70 冷媒冷却回路
72 冷媒冷却回路Comp(第2圧縮機)
73 コンデンサ
75 第3膨張弁
76 第2ヒーターコア
77 冷媒冷却回路VLV(第1バルブ)
78 メイン流路
79 バイパス流路
【手続補正書】
【提出日】2024-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される温調システムであって、
第1冷媒が流通し、パワーユニットの温度を調整するPU冷却回路と、
第2冷媒が流通する空調用の冷凍サイクル回路と、
前記PU冷却回路の前記第1冷媒と前記冷凍サイクル回路の前記第2冷媒とが熱交換可能な第1熱交換器と、
前記第1冷媒を気体と液体に分離する気液分離装置と、
気体状の前記第1冷媒が流通し、前記気液分離装置を介して前記PU冷却回路に連通する冷媒冷却回路と、を備え、
前記気液分離装置により分離された気体状の前記第1冷媒から前記冷媒冷却回路のコンデンサで大気に捨てられた廃熱を前記冷凍サイクル回路の第2熱交換器で取り込み可能に構成された、温調システム。
【請求項2】
請求項1に記載の温調システムであって、
前記冷凍サイクル回路は、前記第2冷媒が、
前記第2冷媒と外気とが熱交換可能な前記第2熱交換器と、第1膨張弁と、エバポレータと、第1圧縮機と、第1ヒーターコアと、をこの順に流通する第1流路と、
前記第2熱交換器と、前記第1圧縮機と、前記第1ヒーターコアと、前記第1熱交換器と、第2膨張弁と、をこの順に流通する第2流路と、を備え、
前記第1流路と前記第2流路とがバルブ装置により、切り替え可能に構成される、温調システム。
【請求項3】
請求項2に記載の温調システムであって、
前記冷媒冷却回路は、前記第1冷媒が、
前記気液分離装置と、第2圧縮機と、前記コンデンサと、第3膨張弁と、をこの順に流通するメイン流路と、
前記メイン流路の前記第2圧縮機をバイパスするバイパス流路と、を備え、
前記メイン流路と前記バイパス流路とが第1バルブにより、切り替え可能に構成される、温調システム。
【請求項4】
請求項3に記載の温調システムであって、
前記第1流路は、前記第2圧縮機と前記コンデンサとの間に配置された第2ヒーターコアを流通する、温調システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の温調システムであって、
前記PU冷却回路は、前記第1冷媒が、
バッテリと、前記気液分離装置と、ポンプと、ラジエータと、駆動部と、前記第1熱交換器と、ヒーターと、を流通するメイン流路と、
前記メイン流路の前記ラジエータをバイパスするバイパス流路と、を備え、
前記メイン流路と前記バイパス流路とが第2バルブにより、切り替え可能に構成される、温調システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明は、
車両に搭載される温調システムであって、
第1冷媒が流通し、パワーユニットの温度を調整するPU冷却回路と、
第2冷媒が流通する空調用の冷凍サイクル回路と、
前記PU冷却回路の前記第1冷媒と前記冷凍サイクルの前記第2冷媒とが熱交換可能な第1熱交換器と、
前記第1冷媒を気体と液体に分離する気液分離装置と、
気体状の前記第1冷媒が流通し、前記気液分離装置を介して前記PU冷却回路に連通する冷媒冷却回路と、を備え、
前記気液分離装置により分離された気体状の前記第1冷媒から前記冷媒冷却回路のコンデンサで大気に捨てられた廃熱を前記冷凍サイクル回路の第2熱交換器で取り込み可能に構成された、温調システムである。