(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112543
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】分散型電源制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20240814BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240814BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017655
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 聡史
【テーマコード(参考)】
5G015
5G066
【Fターム(参考)】
5G015GA10
5G015GA11
5G015JA22
5G015JA58
5G015KA08
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA02
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】マイクログリッド内の個人宅等の複数の需要家間において、蓄積されている電力及び発電した電力にばらつきがある場合でも、蓄積されている電力及び発電した電力を共有して利用可能とする。
【解決手段】分散型電源制御装置10は、外部系統から供給される電源の異常が検出された場合、マイクログリッドを外部系統から解列させて、複数の需要家であるA宅20A~F宅20Fのうちの1つを供給元として選択し、供給元として選択した需要家のPCS35から出力された非常用電源がマイクログリッド内の他の需要家に供給されるような切り替えを行う。そして、分散型電源制御装置10は、供給先の各需要家では、供給元から供給されてきた非常用電源がコンバータ37によりそれぞれ直流電力に変換されてそれぞれのPCS35に入力されるように制御する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を発電又は電力を蓄積する機能を備えた分散型電源と、交流電力を直流電力に変換するコンバータと、前記分散型電源と外部系統との間の系統連携運転を制御する電力変換装置とをそれぞれ備えた複数の需要家により構成されたマイクログリッドの制御を行うための分散型電源制御システムであって、
外部系統から供給される電源の異常が検出された場合、マイクログリッドを前記外部系統から解列させて、前記複数の需要家のうちの1つを供給元として選択し、供給元として選択した需要家の電力変換装置から出力された非常用電源がマイクログリッド内の他の需要家に供給されるような切り替えを行い、供給先の各需要家では、前記供給元から供給されてきた非常用電源が前記コンバータによりそれぞれ直流電力に変換されてそれぞれの電力変換装置に入力されるように制御する制御部を備えた、
分散型電源制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、外部系統から供給される電源の異常が検出された場合、マイクログリッド内の複数の需要家のうち、特定の分散型電源を備えた需要家を供給元として選択する請求項1記載の分散型電源制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、供給元として選択した需要家に備えられた分散型電源に蓄積されている電力残量が、予め設定された量以下となった場合、マイクログリッド内の他の需要家を新たな供給元として切り替えるような制御を行う請求項1記載の分散型電源制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の需要家内の電力変換装置内においてそれぞれ配置された複数の子機と、前記複数の子機を介して前記複数の需要家内の各電力変換装置の状態を監視して各電力変換装置を制御する親機とから構成されている請求項1記載の分散型電源制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数の需要家内の電力変換装置内においてそれぞれ分散して配置され、お互いに情報を送受信して各電力変換装置を制御する複数の制御装置により構成されている請求項1記載の分散型電源制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型電源制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システム等の再生可能エネルギーを利用した発電装置や、家庭用蓄電池等の分散型電源(DER:Distributed Energy Resources)の普及拡大や、災害発生の際にも電源を確保したいという要求の高まりを背景に、マイクログリッドが注目されつつある。特に家庭用の分散型電源は今後も普及拡大が見込まれ、需給調整が可能な家庭用蓄電池を用いた低圧マイクログリッドについても実現性が高まってきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、停電時における給電系統の電力変動を抑制し、商用系統の異常状態が長時間継続しても、自立範囲にある負荷に対して、従来よりも長く継続して電力を供給することができるようにした分散型電源の自立運転システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、停電発生時にマイクログリッド内の電力を利用する場合、マイクログリッド内において発電された電力や、蓄えられている電力を複数の住宅(需要家)で共用して消費することが望ましい。しかし、家庭用の分散型電源を利用してマイクログリッドを実現した際に、マイクログリッド内で複数の需要家の間で電力を融通しようとした場合に下記に説明するような技術的な問題が発生する場合がある。
【0006】
先ず、分散型電源による電力と外部系統からの電力を利用するために、需要家である各家庭には、パワーコンディショナ(以下PCS(Power Conditioning System)と略す。)と呼ばれる電力変換装置が配置されており、このPCSにおいて太陽光発電システムで発電された直流電源の交流電源への変換や、家庭用蓄電池へ蓄電等の制御が行われている。
【0007】
そして、このPCSに自立運転機能が備えられている場合、外部系統において停電が発生すると、PCSは自立運転モードで動作する。PCSは、停電していない通常時であれば系統連携モードで動作するため、接続されている外部系統の周波数に同期させて交流電源を生成するので、生成される交流電源の電力品質は高い。しかし、自立運転モードでは、PCSは、生成する電源の周波数を外部系統の周波数に同期させることができず、自装置において電圧・周波数を調整した電力を非常用電源として出力する。そのため、自立運転モードにおいて生成される非常用電源の電圧、周波数等の電力品質は低くなり、精密機器には使用できないという制限がある。しかし、家庭内において予め選択しておいた特定負荷に対して非常用電源を供給するようにすれば停電が発生した場合でも特定負荷を動作させることが可能となる。
【0008】
このように停電が発生してマイクログリッドを外部系統から切り離して自立化する場合、マイクログリッド内の1つの需要家が供給元となって、その供給元のPCSにおいて生成された非常用電源による電力をマイクログリッド系統内の他の需要家にも供給することが考えらえる。この場合、供給先となった他の需要家では、供給元から供給された電力を受けて各家庭におけるPCSを起動して、特定負荷に電源を供給することになる。
【0009】
しかし、PCSにおいて出力される非常用電源は、一般的に通常よりも使用可能な電力に上限が課されており、マイクログリッド全体の負荷総量と比較して小さいため、負荷の変動に対する周波数や電圧の擾乱が通常時と比較して大きくなる。また、上述したようにPCSにおいて生成される非常用電源の電力品質はもともと低いため、負荷変動よりますます電力品質が低下する。
【0010】
そして、PCSは、系統連系保護機能が備えられており、外部系統からの電源品質が予め設定された基準を満たしていない場合、外部系統から解列するように設定されている。この電源品質の基準としては、例えば、日本電気協会が定める系統連携規程に記載されている電圧・周波数等の基準が用いられる。例えば、系統連携規程において標準電圧101±6Vという基準が設定されている場合、外部系統の電圧が110Vになると、PCSでは電源異常であると判定して外部系統から解列するような動作を行う。
【0011】
そのため、供給元の需要家から供給されてきた非常用電源の電力品質がこのような基準から外れている場合、PCSは、供給元の需要家から供給されてきた非常用電源を受け付けずに解列してしまいマイクログリッド内において蓄積されている電力及び発電した電力を共有して利用可能にできないという課題が発生する。
【0012】
本発明の目的は、マイクログリッド内の個人宅等の複数の需要家間において、蓄積されている電力及び発電した電力にばらつきがある場合でも、蓄積されている電力及び発電した電力を共有して利用可能な分散型電源制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1態様の分散型電源制御システムは、電力を発電又は電力を蓄積する機能を備えた分散型電源と、交流電力を直流電力に変換するコンバータと、前記分散型電源と外部系統との間の系統連携運転を制御する電力変換装置とをそれぞれ備えた複数の需要家により構成されたマイクログリッドの制御を行うための分散型電源制御システムであって、
外部系統から供給される電源の異常が検出された場合、マイクログリッドを前記外部系統から解列させて、前記複数の需要家のうちの1つを供給元として選択し、供給元として選択した需要家の電力変換装置から出力された非常用電源がマイクログリッド内の他の需要家に供給されるような切り替えを行い、供給先の各需要家では、前記供給元から供給されてきた非常用電源が前記コンバータによりそれぞれ直流電力に変換されてそれぞれの電力変換装置に入力されるように制御する制御部を備えている。
【0014】
また、本発明の第2態様では、前記制御部は、外部系統から供給される電源の異常が検出された場合、マイクログリッド内の複数の需要家のうち、特定の分散型電源を備えた需要家を供給元として選択する。
【0015】
また、本発明の第3態様では、前記制御部は、供給元として選択した需要家に備えられた分散型電源に蓄積されている電力残量が、予め設定された量以下となった場合、マイクログリッド内の他の需要家を新たな供給元として切り替えるような制御を行う。
【0016】
また、本発明の第4態様では、前記制御部は、前記複数の需要家内の電力変換装置内においてそれぞれ配置された複数の子機と、前記複数の子機を介して前記複数の需要家内の各電力変換装置の状態を監視して各電力変換装置を制御する親機とから構成されている。
【0017】
さらに、本発明の第5態様では、前記制御部は、前記複数の需要家内の電力変換装置内においてそれぞれ分散して配置され、お互いに情報を送受信して各電力変換装置を制御する複数の制御装置により構成されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、マイクログリッド内の個人宅等の複数の需要家間において、蓄積されている電力及び発電した電力にばらつきがある場合でも、蓄積されている電力及び発電した電力を共有して利用可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態の分散型電源制御システムのシステム構成を示す図である。
【
図2】マイクログリッドを構成するA宅20A~F宅20F内におけるそれぞれの屋内配線の配線図である。
【
図3】系統連携運転時におけるA宅20A~F宅20Fそれぞれの屋内配線における切り替え状態を示す図である。
【
図4】自立運転モードとなった場合のPCS35の動作を説明するための図である。
【
図5】分散型電源制御装置10がF宅20Fを供給元として選択した場合を示す図である。
【
図6】供給元として選択されたF宅20Fの屋内配線における切り替え状態を示す図である。
【
図7】供給先として選択されたA宅20A~E宅20Eの屋内配線における切り替え状態を示す図である。
【
図8】分散型電源制御装置10が供給元をF宅20FからB宅20Bに切り替える様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明の一実施形態の分散型電源制御システムのシステム構成を示す図である。また、
図2は、マイクログリッドを構成するA宅20A~F宅20F内におけるそれぞれの屋内配線の配線図である。
【0022】
本実施形態におけるマイクログリッドは、A宅20A~F宅20Fという6つの個人宅(需要家)により構成され、ブレーカ21を介して外部系統に接続されている。そして、A宅20A~F宅20Fは、それぞれ、
図2に示すように、メータ31と、ブレーカ(配線用遮断器)32~34と、PCS(電力変換装置)35と、特定負荷36と、一般負荷38と、コンバータ37と、蓄電池39と、太陽光発電システム40とを備えている。
【0023】
メータ31は、外部系統から供給を受けた電力消費量を計測するための計測装置である。ブレーカ32は、PCS35により生成されたAC100Vの非常用電源をマイクログリッド内の送電配線に出力するか否かを切り替えるための配線遮断器である。ブレーカ33は、マイクログリッド内の送電配線から供給されてきた交流電力をPCS35に接続するか否かを切り替えるための配線遮断器である。ブレーカ34は、マイクログリッド内の送電配線から供給されてきた交流電力をコンバータ37に接続するか否かを切り替えるための配線遮断器である。
【0024】
ここで、特定負荷36とは、冷蔵庫、最低限の照明設備等の停電等の非常時においても最低限動作させたい負荷である。そして、一般負荷38とは、特定負荷36以外の通常の負荷である。
【0025】
そして、
図1に示されるように、マイクログリッド内には、分散型電源制御装置10が設けられている。この分散型電源制御装置10は、外部系統の電源状態を監視しており、外部系統の電源が停電状態になった場合、A宅20A~F宅20F内のそれぞれのPCS35を制御して自立運転モードに移行させてマイクログリッド内において非常用電源を生成するような制御を行っている。
【0026】
本実施形態の分散型電源制御システムは、上記のように構成されたマイクログリッドの制御を行うためのシステムである。
【0027】
なお、蓄電池39は、電力を蓄積する機能を備えた分散型電源の一例であり、太陽光発電システム40は、電力を発電する機能を備えた分散型電源の一例である。
【0028】
また、コンバータ37は、AC100Vの交流電力を直流電力に変換する。
【0029】
そして、PCS35は、蓄電池39及び太陽光発電システム40等の分散型電源と、外部系統との間の系統連携運転を制御する電力変換装置である。PCS35は、複数の直流電源からの電力を入力した制御が可能なマルチ入力PCSである。
【0030】
このPCS35には、子機41が設けられている。そして、分散型電源制御装置10は、この子機41を介してPCS35の状態を監視してPCS35の動作を制御している。
【0031】
そして、分散型電源制御装置10は、外部系統から供給される電源が正常な場合、マイクログリッドを外部系統に連携させる系統連携運転を行うようPCS35を制御する。
【0032】
このような系統連携運転時におけるA宅20A~F宅20Fそれぞれの屋内配線における切り替え状態を
図3に示す。
【0033】
系統連携運転が行われる場合、分散型電源制御装置10は、
図3に示されるように、A宅20A~F宅20F内におけるブレーカ32をオフ状態、ブレーカ33をオン状態、ブレーカ34をオフ状態として、PCS35を系統連携モードで動作させる。
【0034】
そのため、外部系統から供給される電力がブレーカ33を介してPCS35に供給される。そして、PCS35は、太陽光発電システム40において発電された直流電力を外部系統の電源の周波数に同期させた交流電力に変換して一般負荷38、特定負荷36に供給したり、余剰の電力を蓄電池39に蓄積したりする等の動作を行う。
【0035】
次に、自立運転モードとなった場合のPCS35の動作について
図4を参照して説明する。
【0036】
PCS35は、外部系統からの電源が停電状態となった場合、自立運転モードに移行して、蓄電池39に蓄積された電力や、太陽光発電システム40において発電された電力を用いて、非常用電源を生成して、特定負荷36のみに供給する。そのため、外部系統からの電源が停電状態となった場合でも、蓄電池39に蓄積された電力が消費されるまで、又は太陽光発電システム40において一定量以上の発電が行われている間は、特定負荷36に非常用電源を供給することが可能となっている。
【0037】
そして、分散型電源制御装置10は、外部系統から供給される電源の異常が検出された場合、マイクログリッドを外部系統から解列させて、複数の需要家であるA宅20A~F宅20Fのうちの1つを供給元として選択し、供給元として選択した需要家のPCS35から出力された非常用電源がマイクログリッド内の他の需要家に供給されるような切り替えを行う。そして、分散型電源制御装置10は、供給先の各需要家では、供給元から供給されてきた非常用電源がコンバータ37によりそれぞれ直流電力に変換されてそれぞれのPCS35に入力されるように制御する。
【0038】
なお、マイクログリッド内において複数の供給元から電源を供給したのでは、それぞれの電源の周波数や位相の同期をとることができないため、マイクログリッド内では、1つの供給元しか存在することはできない。
【0039】
例えば、分散型電源制御装置10は、外部系統から供給される電源の異常が検出された場合、マイクログリッド内の複数の需要家のうち、特定の蓄電池39を備えた需要家を供給元として選択する。具体的には、分散型電源制御装置10は、マイクログリッド内の複数の需要家のうち、蓄積されている電力残量が最も多い蓄電池39を備えた需要家を供給元として選択する。ここで選択される分散型電源としては、蓄積されている電力残量が最も多いものを自動的に選択するほか、手動によってあらかじめ定められた電源を選択することもできる。以下の説明においては、
図5に示すように、分散型電源制御装置10がF宅20Fを供給元として選択した場合について説明する。この場合、F宅20F以外の需要家であるA宅20A~E宅20Eは供給先となる。
【0040】
このようにして供給元として選択されたF宅20Fの屋内配線における切り替え状態を
図6に示す。
【0041】
供給元として選択されたF宅20Fでは、分散型電源制御装置10は、
図6に示されるように、ブレーカ32をオン状態、ブレーカ33をオフ状態、ブレーカ34をオフ状態として、PCS35を自立運転モードで動作させる。
【0042】
このような切り替えが行われたことにより、F宅20Fでは、PCS35は自立運転モードで動作して、蓄電池39に蓄積された電力又は太陽光発電システム40において発電された電力を用いて非常用電源を生成して特定負荷36に対して供給するとともに、ブレーカ32を経由してマイクログリッド内の他の需要家であるA宅20A~E宅20Eに供給する。
【0043】
そして、供給先として選択されたA宅20A~E宅20Eの屋内配線における切り替え状態を
図7に示す。
【0044】
供給先として選択されたA宅20A~E宅20Eでは、分散型電源制御装置10は、
図7に示されるように、ブレーカ32をオフ状態、ブレーカ33をオフ状態、ブレーカ34をオン状態として、PCS35を自立運転モードで動作させる。
【0045】
このような切り替えが行われたことにより、A宅20A~E宅20Eでは、供給元のF宅20Fから供給されてきたAC100Vの非常用電源がブレーカ34を経由してコンバータ37に供給される。すると、コンバータ37は、供給されたAC100Vの非常用電源を直流電力に変換してPCS35に供給する。
【0046】
その結果、PCS35は自立運転モードで動作して、コンバータ37から供給された直流電力を用いて非常用電源を生成して特定負荷36に対して供給することになる。
【0047】
もしも、ブレーカ33をオン状態として、F宅20Fから供給されてきた非常用電源を交流のままPCS35に供給した場合、PCS35では、非常用電源の電力品質が悪いことを理由に非常用電源から解列してしまい、非常用電源を受け付けない可能性がある。
【0048】
しかし、本実施形態では、供給元のF宅20FのPCS35により生成された非常用電源の電力品質が低い場合でも、供給先のA宅20A~E宅20Eでは、供給されてきた非常用電源はコンバータ37により直流電力に変換されてからPCS35に供給されることになる。
【0049】
そのため、PCS35では、非常用電源の電力品質が悪いことを理由に非常用電源から解列してしまうようなことが防がれる。
【0050】
つまり、本実施形態では上記のような構成とすることにより、例えば非常用電源の周波数や電圧等の電力品質が低かったとしても、コンバータ37により一旦直流電力に変換することにより、交流電力特有の高度な品質管理が省略され、品質管理が不要な直流電力としてPCS37に供給することが可能となっている。
【0051】
なお、このような構成とした場合に供給元のF宅20Fでは自宅に設置された蓄電池39の電力を供給先に供給するだけで、マイクログリッド系統からの充電を受けることができないため、時間経過とともに蓄電池39の充電量が枯渇していく。
【0052】
この問題に対しては、供給元に蓄積されている電力残量が少なくなってきた場合に、自動的に他の需要家の蓄電池が供給元になるように入れ替える制御で解決することができる。
【0053】
具体的には、分散型電源制御装置10は、供給元として選択した需要家に備えられた蓄電池39に蓄積されている電力残量が、予め設定された量以下となった場合、マイクログリッド内の他の需要家を新たな供給元として切り替えるような制御を行う。
【0054】
例えば、分散型電源制御装置10は、
図8に示すように、供給元として選択したF宅20Fに備えられた蓄電池39に蓄積されている電力残量が、予め設定された量以下となった場合、マイクログリッド内のB宅20Bを新たな供給元として切り替えるような制御を行う。
【0055】
新たに供給元となる電源の選択方法としては、蓄積されている電力残量が最も多いものに切り替わるほか、任意の時間ごとにあらかじめ定められた順番に従って切り替わる、また、手動によって任意の電源に切り替えることもできる。
【0056】
なお、上記で説明した本実施形態では、複数の需要家内のPCS35内においてそれぞれ配置された複数の子機41と、複数の子機41を介して複数の需要家内の各PCS35の状態を監視して各PCS35をそれぞれ制御する親機である分散型電源制御装置10とから制御部が構成されている場合について説明した。
【0057】
しかし、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、制御部が、複数の需要家内のPCS35内においてそれぞれ分散して配置され、お互いに情報を送受信して各PCS35を制御する複数の制御装置により構成されているような構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 分散型電源制御装置
20A~20F
21 ブレーカ
31 メータ
32~34 ブレーカ
35 PCS(電力変換装置)
36 特定負荷
37 コンバータ
38 一般負荷
39 蓄電池
40 太陽光発電システム
41 子機