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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112546
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】情報処理方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20240814BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20240814BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20240814BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/20
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017661
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春日井 志門
(72)【発明者】
【氏名】金子 弘幸
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DC04
5B146FA02
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】スタッキングを効率よく行う。
【解決手段】複数のエリアを建物内の複数のフロアのうちどのフロアに配置するかの配置案を作成するための配置案作成システムのコンピュータが実行する情報処理方法であって、複数の初期配置案をランダムに作成するステップと、少なくともフロアの面積、エリアの専有面積、及び異なるエリア間の親近度を利用して求められる評価値に基づいて複数の初期配置案を最適化して最適配置案を生成するステップと、複数の最適配置案をクラスタリングして複数のクラスを生成するステップと、複数のクラスのそれぞれに対して、クラス内に含まれる最適配置案どうしの共通項に基づいて当該クラスの特徴量を抽出するステップと、クラスの特徴量と当該クラスに含まれる最適配置案とを互いに対応付けて出力するステップと、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエリアを一又は複数の建物内にある複数のフロアのうちのどのフロアに配置するかの配置案を作成するための配置案作成システムのコンピュータが実行する情報処理方法であって、
複数の初期配置案をランダムに作成するステップと、
少なくとも前記フロアの面積、前記エリアの専有面積、及び異なる前記エリア間の親近度を利用して求められる評価値に基づいて複数の前記初期配置案から最適配置案を生成するステップと、
複数の前記最適配置案をクラスタリングして複数のクラスを生成するステップと、
複数の前記クラスのそれぞれに対して、前記クラス内に含まれる前記最適配置案どうしの共通項に基づいて当該クラスの特徴量を抽出するステップと、
前記クラスの前記特徴量と当該クラスに含まれる前記最適配置案とを互いに対応付けて出力するステップと、を含む、
情報処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理方法であって、
前記特徴量は、前記クラス内の所定割合以上の前記最適配置案において配置が共通する前記エリア及び当該エリアが配置される前記フロアとして表される、
情報処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理方法であって、
前記最適配置案を生成する最適化手法は、遺伝的アルゴリズムに基づくものである、
情報処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理方法であって、
複数の前記最適配置案をクラスタリングする手法は、階層型クラスタリングに基づくものである、
情報処理方法。
【請求項5】
複数のエリアを一又は複数の建物内の複数のフロアのうちどのフロアに配置するかの配置案を作成する情報処理装置であって、
複数の初期配置案をランダムに作成する初期案生成部と、
少なくとも前記フロアの面積、前記エリアの専有面積、及び異なる前記エリア間の親近度を利用して求められる評価値に基づいて複数の前記初期配置案をそれぞれ最適化して複数の最適配置案を生成する最適化処理部と、
複数の前記最適配置案をクラスタリングして複数のクラスを生成するクラス生成部と、
複数の前記クラスのそれぞれに対して、前記クラス内に含まれる前記最適配置案どうしの共通項に基づいて当該クラスの特徴量を抽出する特徴抽出部と、
前記クラスの前記特徴量と当該クラスに含まれる前記最適配置案とを互いに対応付けて出力する出力部と、を含む、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の基本計画の段階では、複数のエリアを建物のどの階(フロア)に配置するかを決めるスタッキングと呼ばれる工程がある。スタッキングを効率的に行う手法として、非特許文献1のような手法が提案されている。非特許文献1に記載の手法は、遺伝的アルゴリズムを用いて初期配置案をフロアの面積、エリア間の親近度などに基づく評価値によって最適化させることで最適配置案を得ようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】赤木宏匡、田中重良、渡辺克彦 「遺伝的アルゴリズムのスタッキング問題への適用」日本建築学会大会学術講演梗概集Vol1997 1997年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スタッキングでは、エリア間の親近度だけではなくその他にも様々な要素(観点)を考慮して配置案を決定する必要がある。しかしながら、配置案を決定するために考慮する要素のすべてを評価値に反映させることは困難である。このため、特徴が異なる配置案を複数生成して比較検討することで、より良い配置案を模索したいというニーズがある。従来の手法では一つの配置案しか取得できないため、設計者は、従来の手法を複数回実行して複数の配置案を作成することとなり、工数がかかっていた。
【0005】
本発明は、スタッキングを効率よく行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のエリアを一又は複数の建物内の複数のフロアのうちどのフロアに配置するかの配置案を作成するための配置案作成システムのコンピュータが実行する情報処理方法であって、複数の初期配置案をランダムに作成するステップと、少なくともフロアの面積、エリアの専有面積、及び異なるエリア間の親近度を利用して求められる評価値に基づいて複数の初期配置案から最適配置案を生成するステップと、複数の最適配置案をクラスタリングして複数のクラスを生成するステップと、複数のクラスのそれぞれに対して、クラス内に含まれる最適配置案どうしの共通項に基づいて当該クラスの特徴量を抽出するステップと、クラスの特徴量と当該クラスに含まれる最適配置案とを互いに対応付けて出力するステップと、を含む。
【0007】
本発明は、複数のエリアを一又は複数の建物内の複数のフロアのうちどのフロアに配置するかの配置案を作成する情報処理装置であって、複数の初期配置案をランダムに作成する初期案生成部と、少なくともフロアの面積、エリアの専有面積、及び異なるエリア間の親近度を利用して求められる評価値に基づいて複数の初期配置案から最適配置案を生成する最適化処理部と、複数の最適配置案をクラスタリングして複数のクラスを生成するクラス生成部と、複数のクラスのそれぞれに対して、クラス内に含まれる最適配置案どうしの共通項に基づいて当該クラスの特徴量を抽出する特徴抽出部と、クラスの特徴量と当該クラスに含まれる最適配置案とを互いに対応付けて出力する出力部と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スタッキングを効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態におけるスタッキングの一例を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態における親近度の一例を示すマップである。
図4】本発明の実施形態に係る情報処理方法を示すフローチャート図である。
図5】本発明の実施形態に係る最適化手法の概略を示す概略図である。
図6】本発明の実施形態に係る情報処理方法の最適配置案生成方法を示すフローチャート図である。
図7】本発明の実施形態に係る情報処理方法の交叉の一例を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る情報処理方法の突然変異の一例を示す図であり、(a)は第一の突然変異、(b)は第二の突然変異を示すものである。
図9】本発明の実施形態に係る情報処理方法のクラスタリング方法を示すフローチャート図である。
図10】本発明の実施形態に係る情報処理方法のクラスタリング方法を示す図であり、(a)は各最適配置案に対応するクラスを二次元座標上に模式的に表した図、(b)はクラス2とクラス3とを統合した状態を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係る情報処理方法のクラスタリング方法を示す図であり、クラス分けを示す樹形図である。
図12】本発明の実施形態に係る情報処理方法の特徴量を抽出する方法を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る情報処理装置100を備える配置案作成システム101及び情報処理方法について説明する。
【0011】
図1に示す本実施形態の情報処理装置100及び情報処理方法は、機能又は性質によって区別される複数のエリア(配置要素)を一又は複数の建物のどの階(フロア)に配置するかを決める、いわゆるスタッキング(又はバーチカルゾーニング)を行うものである。本実施形態では、図2に示すように、4階建ての一つの建物にA1~A6の6つのエリアを配置する場合を例に説明する。
【0012】
本明細書では、エリアとは、例えば、企業の事業部署、会議室、食堂など、空間機能又は性質によって区別される配置要素を意味する。なお、本発明は、一つの建物に限定されず、二以上の複数の建物に存在する複数のフロアに対するスタッキングに対しても適用することができる。
【0013】
配置案作成システム101は、図1に示すように、情報処理装置100と、作業者等によって操作され情報処理装置100に対して情報を入力する入力装置30と、情報処理装置100から出力される情報を表示する表示装置31と、を有する。
【0014】
情報処理装置100は、制御プログラム等を実行するCPU(Central Processing Unit)と、CPUにより実行される制御プログラムを記憶するROM(Read-Only Memory)と、CPUの演算結果等を記憶するRAM(Random Access Memory)と、通信装置と、等を備えたコンピュータによって構成される。情報処理装置100は、ROMに記憶される制御プログラムがRAMに読み込まれ、RAM上でCPUによって実行されることにより、本明細書に記載の情報処理装置100の各種機能を実行する。情報処理装置100は、一つのコンピュータによって構成されていてもよいし、複数のマイクロコンピュータによって構成され各制御を当該複数のコンピュータで分散処理するように構成されていてもよい。
【0015】
情報処理装置100は、本実施形態の情報処理方法を実行するために必要な種々の情報を記憶する記憶部10と、記憶部10に記憶される情報に基づいて複数のエリアを複数のフロアに配置する配置案を作成する処理部20と、を備える。
【0016】
記憶部10には、複数のフロアの面積、配置するエリアの専有面積、及び異なるエリア間の親近度が予め記憶される。フロアの面積、エリアの専有面積、及び親近度は、例えばマップ形式で記憶部10に記憶される。親近度は、それぞれのエリアの利用者同士の交流の多さなどに基づいて任意に設定されるものであり、図3に示すように、エリア間の結びつきが大きいほど値が大きくなるように設定される。つまり、親近度は、エリアどうしをどの程度近くに配置したいかの程度を表すものである。また、記憶部10には、後述する情報処理方法を実行するために必要な情報が、入力装置30を通じて入力される。
【0017】
本実施形態の情報処理方法は、複数の初期配置案をランダムに作成するステップと、フロアの面積、エリアの専有面積、及び異なるエリア間の親近度を利用して求められる評価値に基づいて複数の初期配置案を最適化して最適配置案を生成するステップと、複数の最適配置案をクラスタリングして複数のクラスを生成するステップと、複数のクラスのそれぞれに対して、クラス内に含まれる最適配置案どうしの共通項に基づいて当該クラスの特徴量を抽出するステップと、クラスの特徴量と当該クラスに含まれる最適配置案とを互いに対応付けて出力するステップと、を含む。
【0018】
換言すると、処理部20は、図1に示すように、本実施形態の情報処理方法の各ステップに対応して、複数の初期配置案をランダムに作成する初期案生成部21と、フロアの面積、エリアの専有面積、及び異なるエリア間の親近度を利用して求められる評価値に基づいて複数の初期配置案を最適化して最適配置案を生成する最適化処理部22と、複数の最適配置案をクラスタリングして複数のクラスを生成するクラス生成部23と、複数のクラスのそれぞれに対して、クラス内に含まれる最適配置案どうしの共通項に基づいて当該クラスの特徴量を抽出する特徴抽出部24と、クラスの特徴量と当該クラスに含まれる最適配置案とを互いに対応付けて出力する出力部25と、を有する。なお、図1に示す情報処理装置100の各構成は、情報処理装置100の各機能を仮想的なユニットとして示したものであり、必ずしも物理的に存在することを意味するものではない。
【0019】
処理部20は、作業者の操作入力等に基づく入力信号を受信すると、図4に示す処理によって本実施形態に係る情報処理方法を実行する。
【0020】
以下、複数のエリアを複数のフロアに配置する配置案を作成する本実施形態の情報処理方法を具体的に説明する。
【0021】
図4に示すように、まず、ステップS10では、予め設定される所定数(二以上の複数)の初期配置案が生成される。本実施形態では、一例として300の初期配置案が生成される。初期配置案は、乱数に基づいて複数のエリアを複数のフロアに対してランダムに配置することで生成される。配置案は、n次元(nは配置されるエリアの数)のベクトルとして表現される。つまり、本実施形態では、配置案は、6つのエリアに対応して6次元のベクトルとして表現される。各要素の値は、各エリアが配置されるフロアをエリアA1からA6の順で示したものである。例えば、図2に示すように、配置案=[1,3,3,4,4,2]とは、エリアA1が1階、エリアA2及びエリアA3が3階、エリアA4及びエリアA5が4階、エリアA6が2階に配置されることを意味している。
【0022】
ステップS11では、ステップS10で生成された複数の初期配置案を評価値に基づいて最適化する。
【0023】
評価値は、各フロアの面積、各エリアの専有面積、エリア間の距離、及びエリア間の親近度に基づいて、以下の式(1)により算出される。nはエリアの数、mはフロアの数を示す。
【数1】

S:評価値
:重み
:重み
ij:i番目とj番目のエリアの親近度
ij:i番目とj番目のエリアの垂直方向の距離
:k番目のフロアの面積からk番目のフロアに配置されたエリアの総面積を引いた差
【0024】
W1及びW2は、0より大きな値で任意に設定される重みである。fは、0未満(負の値)となる場合には0とされ、0以上であればそのままの値が用いられる。
【0025】
配置案では、親近度が高い二つのエリアが近距離に配置されることが望ましく、各フロアにおける余剰となる面積が少ないほど望ましい。このため、本実施形態における評価値は、親近度が高い2つのエリアが離れているほど、大きな値をとる。また、評価値は、フロアの面積と当該フロアに配置されるエリアの総面積との差が大きいほど、言い換えると、フロアにおける余剰の面積が大きいほど大きな値をとる。よって、本実施形態では、評価値が低いものほど優れた配置案として評価される。
【0026】
初期配置案の最適化手法は、図5に示すように、遺伝的アルゴリズムによるものである。ベクトル表現された配置案の各要素を遺伝子の位置と対応させ、交叉、突然変異、淘汰などの操作を行って評価値が優れた個体(配置案)が生成される。
【0027】
以下、最適配置案を生成するステップS11について、図6を参照して具体的に説明する。
【0028】
まず、最適配置案の生成では、ステップS20において、図4のステップS10で生成された初期配置案を親世代の集合として設定する。
【0029】
次に、ステップS21では、親世代の初期配置案に対して所定の確率(交叉率X[%])によって交叉の操作を行う。本実施形態では、交叉が発生する場合に各遺伝子(要素)が交叉される確率(操作率x1[%])によって一様交叉を行う。図7に示す例によって説明すると、親世代から2つの個体を抜き出し、所定の交叉率Xによって交叉を行う。交叉を行う場合、対応する2つの個体の各要素を所定の操作率x1で交叉させる(入れ換える)。次に、残った親世代の集団から再び2つの個体を抜きだして同様の操作を行う。ステップS21では、このような操作が、親世代の集団から2つの個体が抜き出せなくなるまで行われる。なお、交叉率X及び交叉における操作率x1は、それぞれ0%より大きい値に設定される。
【0030】
次に、ステップS22では、親世代の配置案及びステップS21で交叉によって生成された配置案に対して、突然変異の操作を行う。本実施形態では、各配置案に対して二種類の突然変異がそれぞれ所定の確率(突然変異率Y[%])で独立して発生する。
【0031】
図8(a)に示すように、第一の突然変異では、配置案の各要素が所定の確率(操作率y1[%])で、ランダムに選択される他の要素と入れ換わる。第一の突然変異の場合、所定の突然変異率Yによって突然変異が発生すると判定された場合でも、すべての要素で入れ換えが行われないと判定されれば、元の配置案のままとなる(元の配置案と同じ配置案が生成される)。
【0032】
図8(b)に示すように、第二の突然変異では、フロアの番号(要素の値)からランダムに二つの値が選択され、配置案に含まれる当該二つの値が入れ換えられる。第二の突然変異においても、突然変異によって入れ換えられる二つの値が、配置案に含まれないこともあるため、突然変異率Yによって突然変異が発生すると判定された場合でも、元の配置案のままとなる(元の配置案と同じ配置案が生成される)ことがある。
【0033】
このように、本実施形態では、一つの配置案に対して二種類の突然変異が実行されうる。
【0034】
次に、ステップS23では、親世代の初期配置案、交叉により生成された配置案、突然変異により生成された配置案のそれぞれについて式(1)に基づいて評価値を算出する。
【0035】
次に、ステップS24では、親世代の初期配置案、交叉によって生成された配置案、突然変異によって生成された配置案に対して、淘汰を行う。具体的には、図5に示すように、まず、対象となる配置案全体から評価値が優れた(評価値が低い)10の配置案を選択する(エリート戦略)。次に、残りの配置案から、トーナメント選択方式によって190の配置案を選択する。このようにして、最終的に200の配置案が選択される。なお、本実施形態では、例えば、トーナメント選択におけるトーナメントサイズが3とされる。
【0036】
次に、ステップS25では、初期配置案を生成する図4のステップS10と同様の方法により、100個の新たな配置案(新個体)を生成する。そして、ステップS24の淘汰により選択された200の配置案と、ステップS25で生成した新たな100の配置案と、の合計300の配置案を次世代として設定する。
【0037】
次に、ステップS26では、所定の回数だけ親世代から次世代が生成されたか(所定数だけ世代が進んだか)の終了条件を満たすかを判定する。終了条件を満たしていていなければ、ステップS27において現時点の次世代を新たな親世代として設定して、ステップS21に戻る。このようにして、ステップS26で終了条件を満たすと判定されるまで、ステップS21~ステップS25が繰り返し実行される。
【0038】
ステップS26で終了条件を満たすと判定されると、次世代の配置案の評価が行われる。評価では、次世代の各配置案の評価値を求め、評価値が最も優れている(最も低い)配置案が最適配置案として抽出される。以上のようにして、複数の初期配置案から一つの最適配置案が生成されて、図6に示す処理が終了する。
【0039】
次に、図4に示すステップS12では、最適配置案が所定数(本実施形態では10個)生成されたかを判定する。最適配置案が所定数だけ生成されていない場合には、ステップS13で乱数の初期シード値を変更して、ステップS10に戻る。このようにして、ステップS12で所定数の最適配置案が生成されたと判定されるまで、乱数の初期シード値を変更しながら、ステップS10及びステップS11が繰り返し実行される。ステップS13において乱数の初期シード値が変更されているため、ステップS10で生成される初期配置案や、図5における処理で用いられる確率に基づく処理結果は、ステップS10及びステップS11を繰り返すループごとに異なるものとなる。よって、互いに異なる複数の最適配置案を生成することができる。
【0040】
ステップS12で所定数の最適配置案が生成されていると判定されると、ステップS14において、所定数の最適配置案がクラスタリングされクラス分けされる。本実施形態では、複数の最適配置案をクラスタリングする手法として階層型クラスタリングが採用される。より具体的には、本実施形態では、クラスタリング手法の一例としてウォード法による階層型クラスタリングを行う。以下、ステップS14の処理について、図9図11を参照して具体的に説明する。
【0041】
ステップS14では、図9に示す処理が実行される。まず、ステップS30では、10の最適配置案のそれぞれに個別にクラスを割り当てる(図10(a)参照)。
【0042】
次に、ステップS31において、各クラスについて、他のクラスとの距離を求める。ウォード法におけるクラス間の距離の算出は、公知のものであるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0043】
次に、ステップS32では、クラスどうしの距離が最も小さい二つのクラスを一つのクラスに統合する。例えば、図10(b)に示すように、クラス同士の距離が最も小さいクラス2とクラス3とを統合して新たな一つのクラスを生成する。
【0044】
そして、ステップS33においてクラスが一つに統合されたと判定されるまで、ステップS31及びステップS32が繰り返し実行される。これによって、複数の最適配置案は、図11の樹形図で示されるように、初期のクラス(クラス数=10)から一つのクラス(クラス数=1)に統合されるまでクラス分けがなされる。つまり、複数の最適配置案を、1から最適配置案の数と同じである10までの任意の数(自然数)のクラスに分けることができる。以上のようにして、複数の最適配置案がクラスタリングされて、図9に示す処理が終了する。
【0045】
次に、図4に示すステップS15では、所定数のクラスに分割された最適配置案のクラスから、最適配置案同士の共通項に基づいて特徴量(スキーマ)が抽出される。最適配置案を分割するクラスの数は、出力するクラスの数を意味するものであり、予め設定される。例えば分割するクラス数を3とする場合、図11に示すように、最適配置案2、3、0、1を含むクラスA、最適配置案4、7、8を含むクラスB、最適配置案5、6、9を含むクラスCの三つに分けられる。そして、クラスA~Cに含まれる最適配置案の各要素を互いに比較して共通項を求める。具体的には、各最適配置案を要素ごとに比較し、所定割合(本実施形態では70%)以上の最適配置案において値が共通している要素を抽出する。なお、この所定割合は、本実施形態の数値に限定されず、任意に設定することができる。
【0046】
クラスAの特徴量の算出を例に説明すると、図12に示すように、最適配置案0から3においては、1~3番目の要素の値が、70%以上(3案以上)で共通している。よって、当該クラスAでは、1番目の要素の値が1、2番目の要素の値が3、3番目の要素の値3とする特徴量が抽出される。本実施形態では、このように抽出された特徴量を配列によって[1、3、3、*、*、*]のように表現する。この配列は、特徴量となる要素番号とその値を配置案のベクトル表現に対応させて表現したものであり、*は、特徴量ではないことを意味する記号(ワイルドカード)である。これらの処理を分割したクラスのすべてに行って、各クラスの特徴量を抽出する。
【0047】
次に、ステップS16では、ステップS15で抽出した各クラスの特徴量を、当該クラスに含まれる最適配置案と対応付けて出力して処理を終了する。出力された情報は、表示装置31(図1参照)に入力されて表示される。以上のようにして、複数の最適配置案がその特徴と共に作業者に対して提供される。
【0048】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0049】
本実施形態では、複数の最適配置案をクラスタリングしたうえで、それぞれのクラスタを表すクラスから特徴量を抽出する。よって、クラス分類された複数の最適配置案の生成及びその特徴の抽出が自動で行われるため、最適配置案をその特徴と共に容易に取得することができる。本実施形態によれば、評価値(適応度)に大きな影響を与える遺伝子型の部分集合である特徴量(スキーマ)が可視化されるため、配置案の比較検討が行いやすくなり、スタッキングが効率化される。
【0050】
より具体的に説明すると、一般的に、スタッキングのような組み合わせ最適化問題では、変数が増えるに従い、組み合わせの数が膨大になり、計算量が爆発的に増加し、現実的な時間では解が求められないことが多い。そのため、正確な最適解ではないにしても、比較的短時間で取得でき解として許容できる案として準最適解(最適解の近似解)を採用することがある。しかし、初期条件(初期配置案)が異なると準最適解も様々な値に収束することがあるため、どの組み合わせパターンが有効であったかを特定することが難しい。
【0051】
これに対し、本実施形態では、機能配置の最適化問題を何度も解いたうえで、複数の準最適解をクラスタリングし、解のクラスタを表すクラスから特徴量(共通性)を抽出してクラス(解集合)を可視化する。よって、クラスごとの共通性・類似性を系統的に表現することで、高評価となる配置案の組み合わせパターンの特徴を容易に把握することができ、配置案の比較検討が効率化される。
【0052】
また、本実施形態では、遺伝的アルゴリズムによる最適化において、2種類の突然変異の操作を行っている。また、本実施形態では、親世代からの交叉及び突然変異によって生成した個体に親世代とは独立して生成される新個体を加えて、次世代を生成している。これらの構成により、評価値の低い局所的最適解に陥ることを抑制して、評価値の高い多様な解を取得することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0054】
以下では、本実施形態の変形例について説明する。次のような変形例も本発明の範囲内である。また、変形例に示す構成と上記の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0055】
上記実施形態では、初期配置案から最適配置案を生成する最適化手法は、遺伝的アルゴリズムによるものである。これに対し、最適化手法は、組み合わせ最適化問題を解く手法であれば、遺伝的アルゴリズムに限定されず、その他の手法であってもよい。例えば、遺伝的アルゴリズムと同様、特定の問題に依存しないメタヒューリティクスである焼きなまし法を用いてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、複数の最適配置案をクラスタリングする手法として、階層的クラスタリングが用いられる。これに対し、クラスタリング手法は、階層的クラスタリングに限定されず、その他の手法であってもよい。例えば、クラスタリング手法には、非階層クラスタリングであるk-means法が用いられてもよい。
【0057】
また、配置案の評価値を算出する評価式は、少なくともフロアの面積、エリアの専有面積、及びエリア間の親近度を利用したものであればよく、上記式(1)に限定されるものではない。
【0058】
また、クラスの特徴量を取得する手法は、上記実施形態に限定されず、任意の手法とすることができる。
【0059】
また、情報処理装置100は、その一部または全部の構成が、クラウド環境に設けられるクラウドサーバとして構成されてもよい。
【0060】
また、上述した情報処理装置100における一連の処理は、コンピュータにこれを実行さるためのプログラムとして提供されてもよい。
【0061】
即ち、上記実施形態に係るプログラムは、複数の初期配置案をランダムに作成するステップと、少なくともフロアの面積、エリアの専有面積、及び異なるエリア間の親近度を利用して求められる評価値に基づいて複数の初期配置案から最適配置案を生成するステップと、複数の最適配置案をクラスタリングして複数のクラスを生成するステップと、複数のクラスのそれぞれに対して、クラス内に含まれる最適配置案どうしの共通項に基づいて当該クラスの特徴量を抽出するステップと、クラスの特徴量と当該クラスに含まれる最適配置案とを互いに対応付けて出力するステップと、をコンピュータである情報処理装置100に実行させるものである。
【0062】
また、上述した一連の処理を実行するためのプログラムは、情報処理装置100によって読み取り可能な記憶媒体によって提供される。また、プログラムは、ネットワーク回線を通じて情報処理装置100に提供されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
100 情報処理装置
10 記憶部
20 処理部
21 初期案生成部
22 最適化処理部
23 クラス生成部
24 特徴抽出部
25 出力部
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