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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112547
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】半導体製造用組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20240814BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017665
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100209037
【弁理士】
【氏名又は名称】猪狩 俊博
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】星野 良輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英之
(72)【発明者】
【氏名】片桐 誠之
(72)【発明者】
【氏名】越後 雅敏
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H197CE10
2H197HA03
2H225AF25P
2H225AF43P
2H225AF64P
2H225AF85P
2H225AH12
2H225AJ13
2H225AJ44
2H225AJ48
2H225AM67P
2H225AN11P
2H225AN34P
2H225AN41P
2H225AN56P
2H225BA01P
2H225BA34P
2H225CA12
2H225CC03
2H225CC15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】取り扱い性に優れる半導体製造用組成物を提供する。
【解決手段】一般式(b-1)で表されるβ-ジケトン化合物(B1)を含む溶媒(B)を含有する半導体製造用組成物。

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(b-1)で表されるβ-ジケトン化合物(B1)を含む溶媒(B)を含有する半導体製造用組成物。
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表す。)
【請求項2】
及びRが、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基を表し、Rが、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す、請求項1に記載の半導体製造用組成物。
【請求項3】
前記β-ジケトン化合物(B1)が、アセチルアセトン、3,5-ヘプタンジオン、1-フェニル-1,3-ブタンジオン、又は1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオンである請求項1に記載の半導体製造用組成物。
【請求項4】
前記溶媒(B)が、前記β-ジケトン化合物(B1)以外の溶媒(B2)として、下記一般式(b-2)で表される化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン(CHN)、乳酸エチル(EL)、及びγ-ブチロラクトン(γ-BL)からなる群より選択される一つ以上を含む、請求項1~3のいずれかに記載の半導体製造用組成物。
【化2】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、又は炭素数1~10のアシル基を表し、Rは、炭素数1~10のアルキル基を表す。)
【請求項5】
前記一般式(b-2)で表される化合物が、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)、α-ホルミルオキシイソ酪酸メチル(FBM)、α-アセトキシイソ酪酸メチル(ABM)、又は2-ヒドロキシイソ酪酸イソプロピル(i-PHIB)である、請求項4に記載の半導体製造用組成物。
【請求項6】
前記一般式(b-2)で表される化合物を、前記溶媒(B)の全量(100質量%)基準で、10質量%以上で含む、請求項4又は5に記載の半導体製造用組成物。
【請求項7】
前記β-ジケトン化合物(B1)を、前記溶媒(B)の全量(100質量%)基準で、10質量%以上で含む、請求項1~6のいずれかに記載の半導体製造用組成物。
【請求項8】
前記半導体製造用組成物が、レジスト組成物である、請求項1~7のいずれかに記載の半導体製造用組成物。
【請求項9】
前記半導体製造用組成物が、レジスト補助膜組成物である、請求項1~7のいずれかに記載の半導体製造用組成物。
【請求項10】
前記レジスト補助膜が、レジスト下層膜又はレジスト中間層膜である、請求項9に記載の半導体製造用組成物。
【請求項11】
前記半導体製造用組成物が、シンナー組成物である、請求項1~7のいずれかに記載の半導体製造用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造では、フォトレジスト材料を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。リソグラフィーは、通常、ウエハー上にレジストを形成した後、露光及び現像を行い、次いで、エッチング等によりウエハーに回路パターンを形成し、最後にレジストを剥離除去することにより行われる。
【0003】
近年、半導体の高機能化、小型化が進められており、パターン寸法の更なる微細化が求められている。
【0004】
このようなパターン寸法の微細化に対応するために、露光光源として、高圧水銀灯のg線(波長436nm)、i線(波長365nm)等の紫外線、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)等の遠紫外線、極端紫外線(EUV)といった短波長の光源が使用されている。
【0005】
しかしながら、短波長の露光光源を用いる場合、露光光源のウエハーからの反射や定常波の影響により、レジストの解像性能が低下する問題が生じうる。このような問題に対応するため、レジスト補助膜として、レジスト及びウエハーの間に反射防止膜(Bottom Anti-Reflective Coating:BRAC)を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0006】
また、短波長の露光光源を用いる場合、汚染源に敏感である。そこで、露光工程前にシンナー組成物を用いて、レジスト膜、反射防止膜(BRAC)等の残渣や汚染物を除去する工程、いわゆるEBR(edge bead removing)工程を行う技術が知られている(例えば、特許文献2)。
【0007】
一方で、上記のようなパターン寸法の微細化に代えて、微小電極(バンプ)を用いて半導体素子を3次元に集積してメモリの大容量化を図る三次元実装に係る技術も知られている(例えば、特許文献3)。なお、特許文献3には、三次元実装においては、厚みのあるレジスト膜を使用して微小電極(バンプ)を形成し、半導体素子間の距離を保持することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2004/034148号
【特許文献2】特開2015-232708号公報
【特許文献3】特開2019-137612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、レジスト膜、レジスト補助膜等は、一般に、溶液を塗布し、加熱することにより形成される。
また、シンナー組成物は溶液であり、これを適用することにより、残渣や汚染物等が除去される。
【0010】
すなわち、これらの半導体製造用組成物は溶液であり、従来の液状の半導体製造用組成物は、取り扱い性に改善の余地があった。
【0011】
そこで、本発明は、取り扱い性に優れる半導体製造用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、例えば以下の半導体製造用組成物を提供する。
【0013】
[1]下記一般式(b-1)で表されるβ-ジケトン化合物(B1)を含む溶媒(B)を含有する半導体製造用組成物。
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表す。)
[2]R及びRが、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基を表し、Rが、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す、上記[1]に記載の半導体製造用組成物。
[3]前記β-ジケトン化合物(B1)が、アセチルアセトン、3,5-ヘプタンジオン、1-フェニル-1,3-ブタンジオン、又は1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオンである上記[1]に記載の半導体製造用組成物。
[4]前記溶媒(B)が、前記β-ジケトン化合物(B1)以外の溶媒(B2)として、下記一般式(b-2)で表される化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン(CHN)、乳酸エチル(EL)、及びγ-ブチロラクトン(γ-BL)からなる群より選択される一つ以上を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の半導体製造用組成物。
【化2】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、又は炭素数1~10のアシル基を表し、Rは、炭素数1~10のアルキル基を表す。)
[5]前記一般式(b-2)で表される化合物が、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)、α-ホルミルオキシイソ酪酸メチル(FBM)、α-アセトキシイソ酪酸メチル(ABM)、又は2-ヒドロキシイソ酪酸イソプロピル(i-PHIB)である、上記[4]に記載の半導体製造用組成物。
[6]前記一般式(b-2)で表される化合物を、前記溶媒(B)の全量(100質量%)基準で、10質量%以上で含む、上記[4]又は[5]に記載の半導体製造用組成物。
[7]前記β-ジケトン化合物(B1)を、前記溶媒(B)の全量(100質量%)基準で、10質量%以上で含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の半導体製造用組成物。
[8]前記半導体製造用組成物が、レジスト組成物である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の半導体製造用組成物。
[9]前記半導体製造用組成物が、レジスト補助膜組成物である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の半導体製造用組成物。
[10]前記レジスト補助膜が、レジスト下層膜又はレジスト中間層膜である、上記[9]に記載の半導体製造用組成物。
[11]前記半導体製造用組成物が、シンナー組成物である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の半導体製造用組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、取り扱い性に優れる半導体製造用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0016】
1.半導体製造用組成物
本発明に係る半導体製造用組成物は、下記一般式(b-1)で表されるβ-ジケトン化合物(B1)を含む溶媒(B)を含有する。
【0017】
【化3】
【0018】
上記式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表す。
【0019】
本発明に係る半導体製造用組成物は取り扱い性に優れる。
【0020】
例えば、本発明に係る半導体製造用組成物は、樹脂を溶解した場合であっても粘度が低い、樹脂の使用量を低減する、形成される塗膜が均一となる、及びレジストやレジスト補助膜に含まれる成分を好適に溶解する、のうち少なくとも1つの効果を有する。
【0021】
例えば、本発明に係る半導体製造用組成物をレジスト膜の形成に用いられるレジスト組成物として使用した場合、樹脂の使用量を低減することができる、均一なレジスト膜を形成できる等の効果を奏しうる。また、特に、三次元実装に使用されるレジスト膜の形成に用いられるレジスト組成物では、レジスト膜を厚膜化するために樹脂濃度が高くなることで粘度が高くなりうる。しかしながら、本発明に係るレジスト組成物(半導体製造用組成物)では低粘度化が可能であり、例えば、レジスト組成物(半導体製造用組成物)を吐出ポンプから好適に吐出することができる。
【0022】
また、本発明に係る半導体製造用組成物をレジスト補助膜の形成に用いられるレジスト補助膜組成物として使用した場合、樹脂の使用量を低減することができる、均一なレジスト補助膜を形成できる等の効果を奏しうる。
【0023】
さらに、本発明に係る半導体製造用組成物をシンナー組成物として使用した場合、レジスト膜、レジスト補助膜等の成分、例えば、樹脂や光酸発生剤(PAG)を好適に溶解することができる等の効果を奏しうる。その結果、高効率で残渣や汚染物を除去するEBR工程等を行うことができる。
【0024】
なお、本発明の効果は上記に限定されず、上記のような優れた取り扱い性に由来して得られる効果も発現されうる。
【0025】
以下、本発明の構成について説明する。
【0026】
[溶媒(B)]
溶媒(B)は、β-ジケトン化合物(B1)を含む。その他、β-ジケトン化合物(B1)以外の溶媒(以下、「他の溶媒」とも称することがある)(B2)等をさらに含んでいてもよい。
【0027】
(β-ジケトン化合物(B1))
β-ジケトン化合物(B1)は、下記一般式(b-1)で表される。
【0028】
【化4】
【0029】
及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表す。
【0030】
炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0031】
これらのうち、R及びRは、それぞれ独立して、R及びRが、炭素数1~3のアルキル基、フェニル基であることが好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0032】
一実施形態において、R及びRは、同じであることが好ましく、メチル基、エチル基、i-プロピル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0033】
は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表す。なお、炭素数1~10のアルキル基としては、R及びRと同様のものが挙げられる。
【0034】
は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、フェニル基、ベンジル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基であることがさらに好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0035】
一実施形態において、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基を表し、Rが、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表すことが好ましく、R及びRが炭素数1~3のアルキル基を表し、Rが水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表すことがより好ましく、R及びRがメチル基を表し、Rが水素原子又はメチル基を表すことがさらに好ましい。
【0036】
β-ジケトン化合物(B1)の具体例としては、特に制限されないが、アセチルアセトン(AAc)、3,5-ヘプタンジオン、1-フェニル-1,3-ブタンジオン、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン、又は1,3-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-プロパンジオン等が挙げられる。これらのうち、β-ジケトン化合物(B1)は、アセチルアセトン(AAc)、3,5-ヘプタンジオン、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオンであることが好ましく、アセチルアセトン(AAc)であることがより好ましい。
【0037】
なお、上述のβ-ジケトン化合物(B1)は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
β-ジケトン化合物(B1)は、溶媒(B)の全量(100質量%)基準で、10質量%以上で含まれることが好ましく、30質量%以上で含まれることがより好ましく、50質量%以上で含まれることがより好ましく、60質量%以上で含まれることがさらに好ましい。β-ジケトン化合物(B1)の含有量の上限はないが、95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下であってもよい。一実施形態において、β-ジケトン化合物(B1)は、溶媒(B)の全量(100質量%)基準で、10~100質量%含まれることが好ましく、30~95質量%含まれることがより好ましく、50~95質量%含まれることがさらに好ましく、50~90質量%含まれることが特に好ましく、60~80質量%含まれることが最も好ましい。
【0039】
(他の溶媒(B2))
溶媒(B)は、β-ジケトン化合物(B1)以外の溶媒(他の溶媒)(B2)をさらに含んでいてもよい。
【0040】
他の溶媒(B2)としては、特に制限されないが、下記一般式(b-2)で表される化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン(CHN)、乳酸エチル(EL)、及びγ-ブチロラクトン(γ-BL)からなる群より選択される一つ以上を含むことが好ましい。
【0041】
【化5】
【0042】
は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、又は炭素数1~10のアシル基を表す。
【0043】
炭素数1~10のアルキル基は、一般式(b-1)のR及びRに記載のものと同様である。
【0044】
炭素数6~10のアリール基は、特に制限されないが、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、トリル基、キシリル基、メチルフェニル基、イソプロピルフェニル基等が挙げられる。
【0045】
炭素数1~10のアシル基は、特に制限されないが、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等が挙げられる。
【0046】
これらのうち、Rは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアシル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、ホルミル基、アセチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0047】
は、炭素数1~10のアルキル基を表す。当該炭素数1~10のアルキル基は、一般式(b-1)のR及びRに記載のものと同様であり、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基であることが好ましく、メチル基、i-プロピル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0048】
一実施形態において、Rが、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアシル基であり、Rが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基であることが好ましく、Rが、水素原子、メチル基、エチル基、ホルミル基、アセチル基であり、Rが、メチル基、i-プロピル基であることがより好ましく、Rが、水素原子、メチル基、アセチル基であり、Rが、メチル基であることがさらに好ましい。
【0049】
一般式(b-2)で表される化合物の具体例としては、特に制限されないが、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)、α-ホルミルオキシイソ酪酸メチル(FBM)、α-アセトキシイソ酪酸メチル(ABM)、2-ヒドロキシイソ酪酸イソプロピル(i-PHIB)、2-ヒドロキシイソ酪酸イソブチル(i-BHIB)、又は2-ヒドロキシイソ酪酸ノルマルブチル(n-BHIB)等が挙げられる。このうち、一般式(b-2)で表される化合物は、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)、α-ホルミルオキシイソ酪酸メチル(FBM)、α-アセトキシイソ酪酸メチル(ABM)、又は2-ヒドロキシイソ酪酸イソプロピル(i-PHIB)であることが好ましく、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)であることがより好ましい
【0050】
一実施形態において、他の溶媒(B2)は、一般式(b-2)で表される化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)からなる群より選択される一つ以上を含むことが好ましく、一般式(b-2)で表される化合物を含むことがより好ましく、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)、α-ホルミルオキシイソ酪酸メチル(FBM)、α-アセトキシイソ酪酸メチル(ABM)、及び2-ヒドロキシイソ酪酸イソプロピル(i-PHIB)からなる群より選択される一つ以上を含むことがさらに好ましく、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)を含むことが特に好ましい。
【0051】
なお、上述の他の溶媒(B2)は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
他の溶媒(B2)は、溶媒(B)の全量(100質量%)基準で、10質量%以上で含まれることが好ましく、15質量%以上で含まれることがより好ましく、20質量%以上で含まれることがさらに好ましい。他の溶媒(B2)の含有量の上限は、例えば、80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。一実施形態において、他の溶媒(B2)は、溶媒(B)の全量(100質量%)基準で、10~80質量%含まれることが好ましく、15~70質量%含まれることがより好ましく、15~60質量%含まれることがさらに好ましく、20~50質量%含まれることが特に好ましく、20~40質量%含まれることが最も好ましい。
【0053】
好ましい一実施形態において、一般式(b-2)で表される化合物を、前記溶媒(B)の全量(100質量%)基準で、10質量%以上で含むことが好ましく、10~80質量%で含むことがより好ましく、15~70質量%で含むことがさらに好ましく、15~60質量%で含むことが特に好ましく、20~50質量%で含むことが非常に好ましく、20~40質量%で含むことが最も好ましい。
【0054】
(β-ジケトン化合物(B1)及び他の溶媒(B2)の組み合わせ)
溶媒(B)が、β-ジケトン化合物(B1)とともに他の溶媒(B2)を含む場合、β-ジケトン化合物(B1)及び他の溶媒(B2)の好ましい組み合わせとしては、アセチルアセトン(AAc)及び2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)の組み合わせ、アセチルアセトン(AAc)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の組み合わせ、アセチルアセトン(AAc)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の組み合わせ、アセチルアセトン(AAc)及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の組み合わせ、3,5-ヘプタンジオン及び2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)の組み合わせ、3,5-ヘプタンジオン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)の組み合わせ、3,5-ヘプタンジオン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の組み合わせ、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン及び2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)の組み合わせ、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)の組み合わせ、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の組み合わせが挙げられる。これらのうち、β-ジケトン化合物(B1)及び他の溶媒(B2)の組み合わせは、例えば、後述するレジスト組成物、レジスト補助膜組成物に適用した場合に、粘度が低く、かつ、面内均一性がより高い観点から、アセチルアセトン(AAc)及び2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)の組み合わせ、アセチルアセトン(AAc)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の組み合わせ、3,5-ヘプタンジオン及び2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)の組み合わせ、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン及び2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)の組み合わせが好ましく、アセチルアセトン(AAc)及び2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)の組み合わせ、アセチルアセトン(AAc)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の組み合わせがより好ましく、アセチルアセトン(AAc)及び2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)の組み合わせがさらに好ましい。この際、アセチルアセトン(AAc)及び2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)の含有量比(AAc:HBM、質量比)は、50:50~90:10であることが好ましく、60:40~80:10であることがより好ましい。
【0055】
2.半導体製造用組成物の用途
本発明に係る半導体製造用組成物は、取り扱い性に優れるため、種々の用途に使用することができる。
【0056】
一実施形態において、本発明に係る半導体製造用組成物は、レジスト組成物である。
また、別の一実施形態において、本発明に係る半導体製造用組成物は、レジスト補助膜組成物である。
また、別の一実施形態において、本発明に係る半導体製造用組成物は、シンナー組成物である。
【0057】
なお、半導体製造用組成物の用途に応じて、半導体製造用組成物は、その用途に適した成分をさらに含むことができる。以下、各用途について説明する。
【0058】
[レジスト組成物]
レジスト組成物は、溶媒(B)に加えて、感光性樹脂(A1)を含む。その他、必要に応じて、感光剤、光酸発生剤(PAG)、添加剤等をさらに含みうる。なお、レジスト組成物は、溶媒(B)を含むことにより、低粘度化、均一なレジスト膜の形成等が可能となりうる。特に、三次元実装等の用途において、厚膜化したレジスト膜の製造に好適に使用することができる。なお、本明細書において、「厚膜」とは、膜厚が1μm以上、好ましくは1~100μm、より好ましくは1~20μm、さらに好ましくは1~15μmであることを意味する。
【0059】
(溶媒(B))
溶媒(B)は、上述のものを含む。
【0060】
溶媒(B)の含有量は、レジスト組成物の全量(100質量%)基準で、50質量%以上であることが好ましく、60~98質量%であることがより好ましく、65~95質量%であることがさらに好ましい。
【0061】
(感光性樹脂(A1))
感光性樹脂(A1)は、ポジ型感光性樹脂であっても、ネガ型感光性樹脂であってもよい。また、樹脂(A1)は化学増幅機構が導入されていてもよい。
【0062】
感光性樹脂(A1)の具体例としては、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、アダマンタン骨格を有する(メタ)アクリル樹脂、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリビニアルアルコール、ポリイソプレン、ポリアクリルアミド、エポキシ樹脂、エチレン性不飽和型樹脂等が挙げられる。これらのうち、感光性樹脂(A1)は、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、アダマンタン骨格を有する(メタ)アクリル樹脂、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、エチレン性不飽和型樹脂であることが好ましく、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、アダマンタン骨格を有する(メタ)アクリル樹脂、エチレン性不飽和型樹脂であることがより好ましく、エチレン性不飽和型樹脂であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、メタクリル及び/又はアクリルを意味する。
【0063】
なお、前記エチレン性不飽和型樹脂としては、特に制限されないが、芳香族ビニルモノマー類、フェノール性水酸基含有芳香族ビニルモノマー類およびそのα-メチル置換体、並びにエチレン性不飽和モノマー類からなる群から選択される少なくとも1つを重合してなる樹脂が挙げられる。
【0064】
この際、芳香族ビニルモノマー類としては、例えば、スチレンやα―メチルスチレンなどが挙げられる。
また、フェノール性水酸基含有芳香族ビニルモノマー類およびそのα-メチル置換体としては、ヒドロキシスチレン等のフェノール性水酸基を有する芳香族ビニルモノマー類およびそのα-メチル置換体;p-(1-メトキシエトキシ)スチレン等のアセタール基で保護されたフェノール性水酸基を有する芳香族ビニルモノマー類およびそのα-メチル置換体;p-アセトキシスチレン等のアシル基で保護されたフェノール性水酸基を有する芳香族ビニルモノマー類およびそのα-メチル置換体等が挙げられる。
さらに、エチレン性不飽和モノマー類としては、t-ブチル(メタ)アクリレート等の酸分解性エステル基で保護された(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0065】
一実施形態において、エチレン性不飽和型樹脂は、フェノール性水酸基含有芳香族ビニルモノマー類およびそのα-メチル置換体のホモポリマー;芳香族ビニルモノマー類並びにフェノール性水酸基含有芳香族ビニルモノマー類およびそのα-メチル置換体のコポリマー;または芳香族ビニルモノマー類、フェノール性水酸基含有芳香族ビニルモノマー類およびそのα-メチル置換体、並びにエチレン性不飽和モノマー類のコポリマーであることが好ましく、芳香族ビニルモノマー類、フェノール性水酸基含有芳香族ビニルモノマー類およびそのα-メチル置換体、並びにエチレン性不飽和モノマー類のコポリマーであることがより好ましい。
【0066】
これらの感光性樹脂(A1)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
感光性樹脂(A1)の含有量は、レジスト組成物の全量(100質量%)基準で、50質量%以下であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、2~35質量%であることがさらに好ましい。
【0068】
(感光剤)
レジスト組成物は感光剤を含んでいてもよい。
感光剤としては、一般的にポジ型レジスト組成物において、感光性成分として用いられているものが挙げられる。
【0069】
感光剤の具体例としては、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロライド、ベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライド等の酸クロライドと、ハイドロキノン、レゾルシン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン等の酸クロライドと縮合可能な官能基(水酸基、アミノ基等)を有する化合物との反応物が挙げられる。
【0070】
感光剤の市販品としては、「DTEP-350」(ダイトーケミックス株式会社製、ジアゾナフトキノン型感光剤)等が挙げられる。
【0071】
これらの感光剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
感光剤の含有量は、樹脂(A1)100質量部に対して、0.01~80質量部、より好ましくは0.05~65質量部、更に好ましくは0.1~50質量部、より更に好ましくは0.5~30質量部である。
【0073】
(光酸発生剤(PAG))
レジスト組成物は光酸発生剤を含んでいてもよい。
光酸発生剤は、可視光線、紫外線、エキシマレーザー、電子線、極端紫外線(EUV)、X線、及びイオンビーム等の放射線の照射によって、直接的又は間接的に酸を発生し得る化合物である。
【0074】
光酸発生剤としては、特に制限されないが、トリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩等のイオン性光酸発生剤;イミドスルホネート、ジアゾジスルホン、オキシムスルホネート等の非イオン性光酸発生剤等が挙げられる。
【0075】
前記トリアリールスルホニウム塩としては、特に制限されないが、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホナート、ジフェニル-4-メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウムp-トルエンスルホナート、ジフェニル-4-メトキシフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホナート等が挙げられる。
【0076】
前記アリールヨードニウム塩としては、特に制限されないが、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート等が挙げられる。
【0077】
前記イミドスルホネートとしては、特に制限されないが、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド等が挙げられる。
【0078】
前記ジアゾジスルホンとしては、特に制限されないが、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4-メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0079】
前記オキシムスルホネートとしては、特に制限されないが、α-(メチルスルホニルオキシイミノ)-フェニルアセトニトリル、α-(メチルスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシフェニルアセトニトリル-フェニルアセトニトリル、α-(メチルスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシフェニルアセトニトリル等が挙げられる。
【0080】
上述の光酸発生剤は、溶媒(B)への溶解性が高い観点から、トリアリールスルホニウム塩およびジアゾジスルホンの少なくとも1つを含むことが好ましく、ジフェニル-4-メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウムp-トルエンスルホナート、およびビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタンからなる群から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましい。
【0081】
光酸発生剤の市販品としては、「WPAG-145」、「WPAG-149」、「WPAG-170」、「WPAG-199」、「WPAG-336」、「WPAG-367」、「WPAG-370」、「WPAG-469」、「WPAG-638」(富士フイルム和光純薬株式会社製)等が挙げられる。
【0082】
これらの光酸発生剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
光酸発生剤の含有量は、樹脂(A1)100質量部に対して、0.01~80質量部、より好ましくは0.05~65質量部、更に好ましくは0.1~50質量部、より更に好ましくは0.5~30質量部である。
【0084】
(添加剤)
レジスト組成物は添加剤を含んでいてもよい。
【0085】
添加剤としては、特に制限されないが、酸架橋剤、酸拡散制御剤、溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体、染料、顔料、接着助剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、酸化防止剤、消泡剤、形状改良剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
添加剤の含有量は、特に制限されないが、樹脂(A1)100質量部に対して、好ましくは0.001~100質量部、より好ましくは0.01~70質量部、更に好ましくは0.1~50質量部、より更に好ましくは0.3~30質量部である。
【0087】
(塗布法)
本発明に係るレジスト組成物の塗布法は、特に制限されず、スピンコート法、スリットコート法等が挙げられる。このうち、本発明に係るレジスト組成物の塗布法は、スピンコート法であることが好ましい。すなわち、一実施形態において、本発明に係るレジスト組成物は、スピンコート法で塗布されるレジスト組成物である。レジスト組成物をスピンコート法で塗布することで、例えば、得られるレジスト膜が面内均一性に優れる、レジスト膜の厚膜化が容易である等の効果を奏する。
【0088】
[レジスト補助膜組成物]
レジスト補助膜とは、上述したレジスト膜とともに使用されうるものであり、例えば、2層レジスト法で使用されるレジスト下層膜、3層レジスト法で使用されるレジスト下層層膜、レジスト中間層膜等が挙げられる。なお、レジスト補助膜には、レジスト膜、すなわちレジストのうち最表面の膜は含まれない。
【0089】
一実施形態において、レジスト補助膜は、レジスト下層膜又はレジスト中間層膜である。換言すると、レジスト補助膜組成物は、レジスト下層膜組成物又はレジスト中間層膜組成物である。
【0090】
また、一実施形態において、レジスト補助膜は反射防止膜(BRAC)である。
【0091】
レジスト補助膜組成物は、所望とする機能によっても異なるが、溶媒(B)に加えて、樹脂(A2)を含む。その他、必要に応じて、感光剤、光酸発生剤、架橋剤、添加剤等をさらに含みうる。なお、レジスト補助膜組成物は、溶媒(B)を含むことにより、低粘度化、均一なレジスト補助膜の形成等が可能となりうる。
【0092】
(溶媒(B))
溶媒(B)は、上述のものを含む。
【0093】
溶媒(B)の含有量は、レジスト補助膜組成物の全量(100質量%)基準で、50質量%以上であることが好ましく、60~98質量%であることがより好ましく、65~95質量%であることがさらに好ましい。
【0094】
(樹脂(A2))
樹脂(A2)としては、感光性樹脂(A1)、珪素含有系樹脂、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0095】
感光性樹脂(A1)は、上述したものと同様である。
【0096】
珪素含有系樹脂は、珪素元素を含む樹脂である。珪素含有系樹脂の具体例としては、例えば、特開2007-226170号公報、特開2007-226204号公報等に記載される公知の樹脂が挙げられる。
【0097】
ナフタレンホルムアルデヒド樹脂としては、ナフタレン及び/又はアルキルナフタレンと、ホルムアルデヒドとの反応生成物が挙げられる。
【0098】
これらの樹脂(A2)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
樹脂(A2)の含有量は、レジスト補助膜組成物の全量(100質量%)基準で、50質量%以下であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、2~35質量%であることがさらに好ましい。
【0100】
(感光剤及び光酸発生剤)
感光剤及び光酸発生剤は、上述したものと同様である。
【0101】
感光剤の含有量は、樹脂(A2)100質量部に対して、0.01~80質量部、より好ましくは0.05~65質量部、更に好ましくは0.1~50質量部、より更に好ましくは0.5~30質量部である。
【0102】
光酸発生剤の含有量は、樹脂(A2)100質量部に対して、0.01~80質量部、より好ましくは0.05~65質量部、更に好ましくは0.1~50質量部、より更に好ましくは0.5~30質量部である。
【0103】
(架橋剤)
架橋剤は、樹脂(A2)を架橋してインターミキシングを防止する機能を有する。
【0104】
架橋剤としては、特に制限されないが、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメラミン化合物;テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシテトラメチロールグアナミン等のグアナミン化合物;テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル等のグリコールウリル化合物;テトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア等のウレア化合物;エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等のアルケニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0105】
これらの架橋剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
架橋剤の含有量は、樹脂(A2)100質量部に対して、5~50質量部であることが好ましく、20~40質量部であることがより好ましく、10~40質量部であることがさらに好ましい。
【0107】
(添加剤)
添加剤は、上述したものと同様である。
【0108】
添加剤の含有量は、特に制限されないが、樹脂(A2)100質量部に対して、好ましくは0.001~100質量部、より好ましくは0.01~70質量部、更に好ましくは0.1~50質量部、より更に好ましくは0.3~30質量部である。
【0109】
(塗布法)
本発明に係るレジスト補助膜組成物の塗布法は、特に制限されず、スピンコート法、スリットコート法等が挙げられる。このうち、本発明に係るレジスト補助膜組成物の塗布法は、スピンコート法であることが好ましい。すなわち、一実施形態において、本発明に係るレジスト補助膜組成物は、スピンコート法で塗布されるレジスト補助膜組成物である。レジスト補助膜組成物をスピンコート法で塗布することで、例えば、得られるレジスト補助膜が面内均一性に優れる等の効果を奏する。
【0110】
[シンナー組成物]
シンナー組成物は、溶媒(B)を含む。その他、必要に応じて、添加剤等をさらに含みうる。シンナー組成物は、溶媒(B)を含むことにより、レジスト膜、レジスト補助膜等の成分、例えば、樹脂や光酸発生剤(PAG)を好適に溶解することができる。その結果、高効率で残渣や汚染物を除去するEBR工程等を行うことができる。
【0111】
(溶媒(B))
溶媒(B)の含有量は、シンナー組成物の全量(100質量%)基準で、50質量%以上であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましく、80~100質量%であることがさらに好ましい。
【0112】
(添加剤)
添加剤としては、界面活性剤、染料、顔料、保存安定剤、接着助剤、保存安定剤、酸化防止剤、消泡剤等が挙げられる。これらの添加剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
添加剤の含有量は、溶媒(B)1質量部に対して、0.000000001~1質量部であることが好ましく、0.000001~0.1質量部であることがより好ましく、0.00001~0.001質量部であることがさらに好ましい。
【0114】
[半導体の製造方法]
本発明の一態様によれば、半導体の製造方法が提供される。
【0115】
一実施形態において、半導体の製造方法は、ウエハー上にレジスト組成物を塗布(好ましくはスピンコート)してレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、レジストパターン形成工程と、エッチング工程と、を含む。この際、必要に応じて、レジスト膜形成工程前にウエハーにシンナー組成物を塗布する前処理工程、レジスト膜形成工程後にシンナー組成物を接触させて、レジスト膜の残渣や汚染物等の少なくとも一部を除去するレジスト膜洗浄工程等をさらに含んでいてもよい。
【0116】
好ましい一実施形態において、前処理工程、レジスト膜形成工程、レジスト膜洗浄工程、レジストパターン形成工程、及びエッチング工程をこの順で含む。この際、前処理工程で使用するシンナー組成物、レジスト膜形成工程で使用するレジスト組成物、及びレジスト膜洗浄工程で使用するシンナー組成物の少なくとも1つが、本発明に係る半導体製造用組成物(レジスト組成物又はシンナー組成物)である。
【0117】
前処理工程を行うことで、少ない量のフォトレジストで基板を塗布することができる。
また、レジスト膜形成工程により、レジスト膜を形成することができる。
レジスト膜洗浄工程により、基板のエッジ及び/又は裏面の残渣や汚染物を除去することができる。その結果、レジストパターン形成工程において、解像性能が高くなりうる。
レジストパターン形成工程において、レジストを露光、現像することで、パターン形成をすることができる。この際、前記露光は、好ましくは低波長の露光光源を用いる。これにより、パターン寸法の微細化を実現することができる。
【0118】
また、別の一実施形態において、半導体の製造方法は、ウエハー上にレジスト補助膜組成物を塗布(好ましくはスピンコート)してレジスト補助膜を形成するレジスト補助膜形成工程と、レジスト補助膜上にレジスト組成物を塗布(好ましくはスピンコート)してレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、レジストパターン形成工程と、エッチング工程と、を含む。この際、必要に応じて、レジスト補助膜形成工程前にウエハーにシンナー組成物を塗布する前処理工程、レジスト膜形成工程後にシンナー組成物を接触させて、レジスト補助膜の残渣や汚染物等の少なくとも一部を除去するレジスト補助膜洗浄工程、レジスト膜形成工程後にシンナー組成物を接触させて、レジスト補助膜及び/又はレジスト膜の残渣や汚染物等の少なくとも一部を除去するレジスト補助膜及び/又はレジスト膜洗浄工程等をさらに含んでいてもよい。
【0119】
好ましい一実施形態において、前処理工程、レジスト補助膜形成工程、レジスト補助膜洗浄工程、レジスト膜形成工程、レジスト補助膜及び/又はレジスト膜洗浄工程、レジストパターン形成工程、及びエッチング工程をこの順で含む。この際、レジスト補助膜洗浄工程、レジスト補助膜及び/又はレジスト膜洗浄工程は一方が省略されうる。また、前処理工程で使用されるシンナー組成物、レジスト補助膜形成工程で使用されるレジスト補助膜組成物、レジスト補助膜洗浄工程で使用されるシンナー組成物、レジスト膜形成工程で使用されるレジスト膜組成物、並びにレジスト補助膜及び/又はレジスト膜洗浄工程で使用されるシンナー組成物の少なくとも1つが、本発明に係る半導体製造用組成物(レジスト組成物、レジスト補助膜組成物、又はシンナー組成物)である。
【0120】
なお、形成されるレジスト補助膜は、レジスト下層膜の1層構成であってもよいし、レジスト下層膜及びレジスト中間膜の2層構成であってもよい。レジスト補助膜が2層構成である場合、各層は所望とされる物性、用途、パターン形成方法等に応じて適宜レジスト下層膜及びレジスト中間膜の層構成が設定されうる。
【実施例0121】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0122】
1.半導体製造用組成物の製造
[実施例1-1]
アセチルアセトン(AAc)及び2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)を混合することで、半導体製造用組成物を製造した。この際、AAc:HBM(質量比)=70:30であった。
【0123】
[実施例1-2]
アセチルアセトン(AAc)及びプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)を混合することで、半導体製造用組成物を製造した。この際、AAc:PGMEA(質量比)=70:30であった。
【0124】
[実施例1-3]
アセチルアセトン(AAc)を半導体製造用組成物として用いた。
【0125】
[比較例1-1]
2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)を半導体製造用組成物として用いた。
【0126】
[比較例1-2]
プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)を半導体製造用組成物として用いた。
【0127】
実施例1-1~1-3及び比較例1-1~1-2で製造した半導体製造用組成物を下記表1に示す。
【表1】
【0128】
【化6】
【0129】
2.レジスト組成物
[実施例2-1]
実施例1-1で製造した半導体製造用組成物に99質量部に、非イオン性界面活性剤であるFTX-218(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ネオス株式会社製)1質量部を溶解させ、1質量%の界面活性剤溶液を作製した。次にポジ型感光性樹脂であるヒドロキシスチレン/t-ブチルアクリレート/スチレン=3/1/1(モル比)の構成単位を有する共重合体(丸善石油化学株式会社製、Mw=12,000)200質量部と、作製した界面活性剤溶液10質量部と、実施例1-1で製造した半導体製造用組成物290質量部を混合し、共重合体質量部に対して非イオン性界面活性剤が500ppm添加された樹脂濃度が40質量%であるレジスト組成物を製造した。
また、前記レジスト組成物に、実施例1-1で製造した半導体製造用組成物を適宜添加して、樹脂濃度が30質量%、32.5質量%、33質量%、及び35質量%のレジスト組成物を製造した。
【0130】
[実施例2-2]
実施例1-2で製造した半導体製造用組成物を用いたことを除いては、実施例2-1と同様の方法で、樹脂濃度が30質量%、32.5質量%、34.3質量%、35質量%、及び40質量%のレジスト組成物を製造した。
【0131】
[実施例2-3]
実施例1-3で製造した半導体製造用組成物を用いたことを除いては、実施例2-1と同様の方法で、樹脂濃度が30質量%、35質量%、及び40質量%のレジスト組成物を製造した。
【0132】
[比較例2-1]
比較例1-1で製造した半導体製造用組成物を用いたことを除いては、実施例2-1と同様の方法で、樹脂濃度が29.4質量%のレジスト組成物を製造した。
【0133】
[比較例2-2]
比較例1-2で製造した半導体製造用組成物を用いたことを除いては、実施例2-1と同様の方法で、樹脂濃度が30質量%、32.5質量%、34.6質量%、35質量%、及び40質量%のレジスト組成物を製造した。
【0134】
[レジスト組成物の評価]
実施例2-1~実施例2-3及び比較例2-1~比較例2-2で製造したレジスト組成物について、各種評価を行った。
【0135】
(膜厚)
温度23℃、相対湿度45%RHの環境下、シリコンウエハー(4インチ)上にレジスト組成物2.5mLをスピンコート(200rpmにて3秒、次いで1200rpmにて60秒)した。次いで、110℃に昇温し、90秒間プリベークすることでレジスト膜を作製した。
【0136】
レジスト膜の膜厚を、膜厚測定システム「F20」(フィルメトリクス株式会社製)を用いて測定した。得られた結果を下記表2に示す。
【0137】
【表2】
【0138】
(粘度)
レジスト組成物について、EMS粘度計を用いて、以下の条件で粘度を測定した。得られた結果を下記表3に示す。
モーター回転数:1000rpm
温度:25℃
測定時間:5秒
繰り返し回数:10回
繰り返し間隔:5秒
【0139】
【表3】
【0140】
(面内均一性)
シリコンウエハー上に、プリウェット溶剤(PGME/PGMEA=7/3)を吐出した後、メインスピン1200rpmの条件でレジスト組成物をスピンコートして塗膜を形成し、当該塗膜に対して110℃にて90秒間のプレベークを行い、平均膜厚7.2μmのレジスト膜を形成した。
【0141】
レジスト膜上の直径方向に3mm間隔で50点の膜厚を測定した。膜厚の標準偏差の3倍を平均膜厚で割り、膜厚ムラ3σを算出して面内均一性を評価した。得られた結果を粘度の結果とともに下記表4に示す。
【0142】
【表4】
【0143】
表2~4の結果から、実施例のレジスト組成物は高膜厚の塗膜を形成できた。また、実施例のレジスト組成物は粘度が低いことが分かった。このため、吐出ポンプから好適に吐出することができる。また、実施例のレジスト組成物は均一なレジスト膜を形成できることが分かった。なお、実施例のレジスト組成物は粘度が低く、均一なレジスト膜を形成できることから、レジスト補助組成物としても使用することができる。
【0144】
3.シンナー組成物の製造
[実施例3-1]
実施例1-1で製造した半導体製造用組成物をシンナー組成物として用いた。
【0145】
[実施例3-2]
実施例1-2で製造した半導体製造用組成物をシンナー組成物として用いた。
【0146】
[実施例3-3]
実施例1-3で製造した半導体製造用組成物をシンナー組成物として用いた。
【0147】
[比較例3-1]
比較例1-2で製造した半導体製造用組成物をシンナー組成物として用いた。
【0148】
[シンナー組成物の評価]
実施例3-1~実施例3-3及び比較例3-1で製造したシンナー組成物について、光酸発生剤の溶解の有無の評価を行った。
【0149】
(測定サンプルの調製)
シンナー組成物100質量部に、光酸発生剤であるWPAG-336、WPAG-367、又はWPAG-145を10質量部添加し、ローラー式撹拌機を用いて30rpmで終夜撹拌を行うことで、測定サンプルを調製した。
【0150】
【化7】
【0151】
(光酸発生剤の溶解の有無の評価)
測定サンプル中の光酸発生剤の溶解の有無を目視で確認し、以下の基準に従って判定した。得られた結果を下記表5に示す。
A:測定サンプル中に光酸発生剤の不溶物がない
B:測定サンプル中に光酸発生剤の不溶物がある
【0152】
【表5】
【0153】
表5の結果から、実施例のシンナー組成物は光酸発生剤を好適に溶解できたことが分かった。よって、実施例3-1~3-3のシンナー組成物を用いることで、高効率で残渣や汚染物を除去することができる。