IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社今仙電機製作所の特許一覧

<>
  • 特開-シートレール装置 図1
  • 特開-シートレール装置 図2
  • 特開-シートレール装置 図3
  • 特開-シートレール装置 図4
  • 特開-シートレール装置 図5
  • 特開-シートレール装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112551
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】シートレール装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/07 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
B60N2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017672
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】辻井 謙一
(72)【発明者】
【氏名】芝野 宏
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BB03
3B087BC17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電動式のシートレール装置において、スライド荷重の増加を防止しつつ、上下方向のがたつきを防止することができるシートレール装置を提供する。
【解決手段】シートレール装置は、上面に形成されたロアレールの一部と摺動する上面摺動部51dと、後端に形成された弾性部材当接面51cと、を有するカム51と、弾性部材当接面51cに一方端部が当接し、カム51を先端側に付勢する弾性部材52と、弾性部材52の他方端部を支持する弾性部材支持部53cと、アッパーレールに接触するように突出して形成されたアッパーレール接触面53dと、を備えているブッシュ53と、先端に形成された先端開口部55aと、底面側に形成された底面開口部55bと、上面に形成された上面開口部55cと、アッパーレールに取り付け可能な取付部と、を有する容器状に形成され収容部材55と、を有してなる上下方向がたつき防止部材50を有することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートをスライド可能に設けるためのシートレール装置において、
両側に設けられたローラーと、上下方向のがたつきを防止する上下方向がたつき防止部材と、を有するアッパーレールと、
前記アッパーレールよりも長尺に形成され、前記ローラー及び前記上下方向がたつき防止部材を案内するローラー案内部を有するロアレールと、
を備え、
前記上下方向がたつき防止部材は、
先端が細くテーパー状となるように上面に対して斜面で形成されたカム底面を有してなり、上面に形成された前記ロアレールの一部と摺動する上面摺動部と、カム底面に形成された底面当接部と、後端に形成された弾性部材当接面と、を有するカムと、
前記弾性部材当接面に一方端部が当接し、前記カムを先端側に付勢する弾性部材と、
前記カムのカム底面と当接し、先端が太くなるように形成されたブッシュ斜面部と、前記弾性部材に並行に配置されるブッシュ並行部と、前記弾性部材の他方端部を支持する弾性部材支持部と、前記アッパーレールに接触するように突出して形成されたアッパーレール接触面と、を備えているブッシュと、
先端に形成された先端開口部と、底面側に形成された底面開口部と、上面に形成された上面開口部と、前記アッパーレールに取り付け可能な取付部と、を有する容器状に形成され、前記ブッシュはアッパーレール接触面を前記底面開口部から露出するように配置され、前記カムは前記カム底面が前記ブッシュのブッシュ斜面部に対向するように、かつ前記カムの前記上面摺動部が前記上面開口部から露出するように配置され、前記カムの先端は前記先端開口部から露出するように形成され、前記弾性部材は前記カムの前記弾性部材当接面と前記ブッシュの前記弾性部材支持部との間に配置されるように収容する収容部材と、
を有してなり、
前記アッパーレール接触面は、前記アッパーレールの一部に接触し、前記上面摺動部は前記ロアレールの一部と摺動可能に設けられていることを特徴とするシートレール装置。
【請求項2】
前記カムは、2箇所の前記上面摺動部と、1箇所の前記底面当接部を備えていることを特徴とする請求項1記載のシートレール装置。
【請求項3】
前記上面摺動部と前記ロアレールの一部との摩擦力は、前記アッパーレール接触面と前記アッパーレールの一部との摩擦力より強いことを特徴とする請求項1に記載のシートレール装置。
【請求項4】
前記アッパーレールには、前記上下方向がたつき防止部材が載置される取付用台座を備えていることを特徴とする請求項1に記載のシートレール装置。
【請求項5】
前記アッパーレールには、側方方向がたつき防止部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載のシートレール装置。
【請求項6】
前記上下方向がたつき防止部材は、前方側及び後方側に、前後対称となるように2つ設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシートレール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートレール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手動式の車両用シートのシートレール装置において、左右、上下のガタツキ抑制機構は種々提案されている(例えば、特許文献1)。特に上下のがたつきについては、ロック機構と連動させてがたつきを抑えることができる。
【0003】
しかし、最近は、車両用のシートレール装置にパワースライド機構を適応したものが多くなっている。パワースライド機構を使用したシートレール装置の場合、前後方向のがたつきはギヤとスクリューとの噛み合いによって抑制でき、左右方向のがたつきは左右ガタ抑え部材を取り付けることで抑制することができる。しかしながら、上下方向のがたつきについては、手動式のようなロック機構を有していないため、ロック機構と連動させるガタ抑制機構が成立せず、そのままでは上下方向のがたつきを抑制することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-43884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこうした課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、電動式のシートレール装置において、スライド荷重の増加を防止しつつ、上下方向のがたつきを防止することができるシートレール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0007】
本発明にかかるシートレール装置は、
車両用シートをスライド可能に設けるためのシートレール装置において、
両側に設けられたローラーと、上下方向のがたつきを防止する上下方向がたつき防止部材と、を有するアッパーレールと、
前記アッパーレールよりも長尺に形成され、前記ローラー及び前記上下方向がたつき防止部材を案内するローラー案内部を有するロアレールと、
を備え、
前記上下方向がたつき防止部材は、
先端が細くテーパー状となるように上面に対して斜面で形成されたカム底面を有してなり、上面に形成された前記ロアレールの一部と摺動する上面摺動部と、カム底面に形成された底面当接部と、後端に形成された弾性部材当接面と、を有するカムと、
前記弾性部材当接面に一方端部が当接し、前記カムを先端側に付勢する弾性部材と、
前記カムのカム底面と当接し、先端が太くなるように形成されたブッシュ斜面部と、前記弾性部材に並行に配置されるブッシュ並行部と、前記弾性部材の他方端部を支持する弾性部材支持部と、前記アッパーレールに接触するように突出して形成されたアッパーレール接触面と、を備えているブッシュと、
先端に形成された先端開口部と、底面側に形成された底面開口部と、上面に形成された上面開口部と、前記アッパーレールに取り付け可能な取付部と、を有する容器状に形成され、前記ブッシュはアッパーレール接触面を前記底面開口部から露出するように配置され、前記カムは前記カム底面が前記ブッシュのブッシュ斜面部に対向するように、かつ前記カムの前記上面摺動部が前記上面開口部から露出するように配置され、前記カムの先端は前記先端開口部から露出するように形成され、前記弾性部材は前記カムの前記弾性部材当接面と前記ブッシュの前記弾性部材支持部との間に配置されるように収容する収容部材と、
を有してなり、
前記アッパーレール接触面は、前記アッパーレールの一部に接触し、前記上面摺動部は前記ロアレールの一部と摺動可能に設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明にかかるシートレール装置によれば、アッパーレールが前方向及び後方向のいずれの方向に移動した場合であっても、カムとブッシュが隙間なくアッパーレールとロアレールに接触した状態を保持することができるので、停止中、移動中のいずれの場合であっても上下方向のがたつきを防止することができる。
【0009】
また、本発明にかかるシートレール装置において、前記カムは、2箇所の上面摺動部と、1箇所の底面摺動部を備えていることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、上面側でロア上面部に対して2箇所の上面摺動部で接触し、底面側でブッシュに対して1箇所の底面当接部で接触することに合計3箇所で接触するように形成することで、カムやブッシュ等の製品にばらつきが発生しても、必ず3点が接触させることができ、隙間が発生することを防止すうることができる。
【0010】
さらに、本発明にかかるシートレール装置において、前記上面摺動部と前記ロアレールの一部との摩擦力は、前記アッパーレール接触面とアッパーレールの一部との摩擦力より強いことを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、上下方向がたつき防止部材をスムーズに前後方向に移動させることができる。
【0011】
さらに、本発明にかかるシートレール装置において、前記アッパーレールには、上下方向がたつき防止部材が載置される取付用台座を備えていることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、上下方向がたつき防止部材をアッパーレールに容易に取り付けることができる。
【0012】
さらに、本発明にかかるシートレール装置において、前記アッパーレールには、側方方向がたつき防止部材を備えていることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、上下方向にがたつきに加え、側方方向のがたつきも防止することができる。
【0013】
さらに、本発明にかかるシートレール装置において、前記上下方向がたつき防止部材は、前方側及び後方側に、前後対称となるように2つ設けられていることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、前方向及び後方向のいずれの方向に移動させた場合でも同様の効率でがたつき防止効果を発揮することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるシートレール装置によれば、電動式のシートレール装置において、スライド荷重の増加を防止しつつ、上下方向のがたつきを防止することができるシートレール装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態にかかるシートレール装置100を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態にかかるシートレール装置100のアッパーレール30を示す斜視図である。
図3図3Aは、実施形態にかかるシートレール装置100の上下方向がたつき防止部材50を示す斜視図である。図3Aは、実施形態にかかるシートレール装置100の上下方向がたつき防止部材50のカム51、弾性部材52及びブッシュ53を示す斜視図である。
図4図4は、実施形態にかかるートレール装置100の上下方向がたつき防止部材50の側面模式図である。図4Aは、アッパーレール30及びロアレール10を有する上下方向がたつき防止部材50の側方模式図であり、図4Bは、ロアレール10を削除して、アッパーレール30のみを示した上下方向がたつき防止部材50の側方模式図である。
図5図5は、実施形態にかかるートレール装置100のアッパーレール30を左方向に移動させた場合の作動状態を説明するための説明図である。
図6図6は、実施形態にかかるートレール装置100のアッパーレール30を右方向に移動させた場合の作動状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。また、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。なお、本発明において、「上下」、「前後」とは、図1に示された方向を指し、「前」とは、車両用シートを前方側に移動する方向を指す。
【0017】
本実施形態にかかるシートレール装置100は、車両用のシート(図示しない。)を前後方向にスライド可能に支持するものであり、車両用フロア(図示しない。)に固定されて使用されるものである。本実施形態にかかるシートレール装置100は、図1又は図2に示すように、主として、両側にローラー34を案内するローラー案内部19を有するロアレール10と、ロアレール10に対して前後にスライド移動するアッパーレール30と、このアッパーレール30に取り付けられ、アッパーレール30とロアレール10の上下方向のがたつきを防止する上下方向がたつき防止部材50と、を備えている。
【0018】
ロアレール10は、長尺のレール状に形成されており、図1に示すように、車両フロアに固定される底面部11と、この底面部11の両側に設けられたローラー案内部19と、を備えている。底面部11は車両フロアに固定するための複数の貫通孔(図示しない。)が形成されており、この貫通孔を利用して螺合部材等で車両フロアに固定することができる。ロアレール10は、この底面部11の両側から立設された一対のロア側面部12と、このロア側面部12から中央に向かって水平にそれぞれ延設された一対のロア上面部13と、このロア上面部13から垂直下方方向へそれぞれ延設されたロア内面部14と、を備えている。ローラー案内部19は、図1に示すように、ロア内面部14の上端からロア上面部13、ロア側面部12及び底面部11の順に連設され、後述するローラー34を囲うように形成され、ローラー34を前後方向に案内する。なお、ローラー案内部19のローラー34を支持する支持底面16は、図1に示すように、底面部11に対して段差を有するように高く設けられていても良い。
【0019】
アッパーレール30は、主として、レール本体39と、側方方向がたつき防止部材40と、上下方向がたつき防止部材50と、この上下方向がたつき防止部材50を構成するカム51を係止するカム係止部60と、レール本体39を電動で移動させる動力源であるモータ70と、を備えている。上下方向がたつき防止部材50は、前方側及び後方側に、前後対称となるように2つ設けられている。
【0020】
レール本体39は、図2に示すように、断面が水平面31、この水平面31の両側側方から下方に垂直に垂下された垂直面部32を有する長尺の部材に形成されており、両側には、ロアレール10のロア内面部14のローラー案内部19側に配置されるように、断面J字状となるように垂直に立設された立設部33が形成されている。これら立設部33には、ローラー34が設けられている。また、図2に示すように、レール本体39の側面に上下方向がたつき防止部材50を取り付けるための取付用台座35が設けられている。
【0021】
側方方向がたつき防止部材40は、レール本体39の側面に水平方向に回転する水平回転ローラーからなり、ロアレール10に形成されたローラー案内部19のロア側面部12の内側面に当接しつつ回転することで、側方方向のがたつきを防止する。
【0022】
上下方向がたつき防止部材50は、図3A及び図3Bに示すように、アッパーレール30のいずれかの側面又は両側面に設けられており、ロアレール10に形成されたローラー案内部19内に配置される。上下方向がたつき防止部材50は、主として、カム51と、カム51を押圧する弾性部材52と、弾性部材52の反対側を支持するブッシュ53と、これらを収容する収容部材55と、を備えている。上下方向がたつき防止部材50は、前方側及び後方側に、前後対称となるように2つ設けられているが、前後対称に形成されている以外は同様の構成であるので、ここでは前方側の上下方向がたつき防止部材50を説明する。
【0023】
カム51は、カム先端51a側に向かって上下方向の幅が狭くなるように、底面側が水平な上面に対して斜面となるようなカム底面51bを有したテーパー状に形成されている。カム51の後端側には弾性部材52と当接する弾性部材当接面51cが形成されており、カム51は弾性部材52の一方側端部と当接しカム先端51a側(前方側)に付勢されている。カム51の上側には、ロアレール10に形成されたローラー案内部19のロア上面部13の内面と摺動する上面摺動部51dを有している。上面摺動部51dは、図3Aに示すように、前後2箇所でロア上面部13と摺動するように、2箇所の上面摺動部51dを設けるとよい。カム底面51bは、後述するブッシュ53に対して当接する底面当接部51eが設けられている。底面当接部51eは、ブッシュ53に対して面で接触してもよいが、図3Aに示すように、凸曲面や角を有する凸状に形成し、ブッシュ53に対して1箇所で点接触又は線接触するように設けるとよい。上面側でロア上面部13に対して2箇所の上面摺動部51dで接触し、底面側でブッシュ53に対して1箇所の底面当接部51eで接触することに合計3箇所で接触するように形成することで、カム51やブッシュ53等の製品にばらつきが発生しても、必ず3点が接触させることができる。
【0024】
弾性部材52は、ばねやゴム等から作製されており、カム51及びブッシュ53の間に配置され、カム51先端側に付勢する。
【0025】
ブッシュ53は、カム51のカム底面51b側に配置され、先端の幅が太くなるようにテーパー状に形成され、カム底面51bに接触するブッシュ斜面部53aと、弾性部材52に並行に配置されるブッシュ並行部53bと、弾性部材52の他方側端部(後側)を支持する弾性部材支持部53cとを備えている。ブッシュ53の底面側には、後述するアッパーレール30に形成された取付用台座35に接触するように突出して形成されたアッパーレール接触面53dを有している。なお、取付用台座35とアッパーレール接触面53dとの摩擦力は、ロア上面部13と上面摺動部51dとの摩擦力よりも弱く設定される。
【0026】
収容部材55は、上述したカム51、弾性部材52及びブッシュ53を内部に収容した状態で、アッパーレール30に取り付けるための容器状の部材である。収容部材55は、先端に先端開口部55aと、底面側に底面開口部55bと、上面に上面開口部55cと、が形成されている。ブッシュ53は、収容部材55内にブッシュ53のアッパーレール接触面53dが、底面開口部55bからわずかに露出するように配置される。底面開口部55bはアッパーレール接触面53dよりも大きく形成されており、ブッシュ53は収容部材55に対して前後に移動可能に配置される。カム51は、カム底面51bがブッシュ53のブッシュ斜面部53aに対向するように、かつカム51の上面摺動部51dが上面開口部55cから突出するように配置される。カム51は、カム51のカム先端51aは先端開口部55aから突出するように配置されるとともに、収容部材55に対して前後に移動可能に配置される。弾性部材52は、カム51の当接面51cとブッシュ53の弾性部材支持部53cとの間に配置される。また、収容部材55は、アッパーレール30の取付用台座35に取り付けるためのフック状の取付部55eを有している。
【0027】
以上のように作製された上下方向がたつき防止部材50は、図2に示すように、アッパーレール30に設けられた取付用台座35の取付用孔36にフック55fを差し込むようにして取り付けられる。
【0028】
取付用台座35に取り付けられた上下方向がたつき防止部材50に配置されるカム51のカム先端51aの近傍には、カム係止部60が設けられている。
【0029】
モータ70は、座席の近傍に設けられたスイッチによって、レール本体39を電動で移動させることができるものであり、既知のものを使用することができる。
【0030】
こうして作製されたシートレール装置100は、以下のように作用する。図4Aには、アッパーレール30及びロアレール10を有する上下方向がたつき防止部材50の側方模式図が示されている。図4Bには、ロアレール10を削除して、アッパーレール30のみを示した上下方向がたつき防止部材50の側方模式図が示されている。図4A及び図4Bのいずれもハッチングで表された部分がアッパーレール30であり、図4Aのドットで表された部分がロアレール10である。シートレール装置100を移動させる前の状態が図4Aの状態となる。この状態からアッパーレール30を矢印の方向(図中左方向)へ移動させると、カム51は上面摺動部51dとロアレール10のロア上面部13との摩擦により停止している。またブッシュ53もカム51との摩擦及び接触面の傾斜により、カム51とブッシュ53の互いの位置関係は変化することなく、この状態のまま、摩擦力の弱いブッシュ53のアッパーレール接触面53dと取付用台座35が滑り、図5Aに示すように先端開口部55aから突出したカム51のカム先端51aは短くなり(d1>d2)、アッパーレール接触面53dの先端側と底面開口部55bの先端側の隙間は広くなる(d3<d4)。そして、さらにアッパーレール30を移動すると、収容部材55はブッシュ53の後端に到達し、その後は、ブッシュ53の後端を押圧するように移動することになる。このブッシュ53の押圧により、図5Bに示すように、ブッシュ53とアッパーレール30の取付用台座35との滑りは停止し、カム51とブッシュ53との互いの押圧力がゆるくなり、カム51とロアレール10のロア上面部13とが滑り始めることになる。以降、カム51はロアレール10に対して滑りつつ、上下方向がたつき防止部材50とともにアッパーレール30が移動することになる。この移動の際には、カム51は、弾性部材52によって先端側に押圧されるため、カム51とブッシュ53との位置関係はほとんど変化することなくロアレール10とアッパーレール30との間で上下に隙間なく移動するため、ロアレール10とアッパーレール30の上下方向のがたつきを防止することができる。
【0031】
次に、図6Aに示すように、アッパーレール30を矢印の方向(図中右方向)へ移動させるときについて説明する。図6Aに示すように、アッパーレール30を右方向へ移動させると、カム51はロアレール10のロア上面部13との摩擦によりロアレール10との関係では移動することはなく、カム51によって規制されているブッシュ53も移動が規制される。したがって、収容部材55が右方向へ移動する。この際に、カム51とブッシュ53の位置関係は変化することなく、この状態のままアッパーレール30を滑り始める。つまり、ブッシュ53のアッパーレール接触面53dと取付用台座35が滑り、先端開口部55aから突出したカム51のカム先端51aは長くなり(d5<d6)、アッパーレール接触面53dの先端側と底面開口部55bの先端側の隙間は狭くなる(d7>d8)。そして、アッパーレール30をさらに右方向へ移動し、カム係止部60がカム51のカム先端51aに当接すると、図6Bに示すように、カム係止部60がカム先端51aを押圧し、カム51をロアレール10のロア上面部13との摩擦力に対抗して滑るように移動させる。これにより、カム51とブッシュ53との互いの押圧力がゆるくなり、カム51とブッシュ53の互いの位置関係をほとんど変化することなく、移動していくことになる。このように、カム51とブッシュ53との位置関係はほとんど変化せず、ロアレール10とアッパーレール30との間で上下に隙間なく移動するため、ロアレール10とアッパーレール30の上下方向のがたつきを防止することができる。
【0032】
このように、本発明にかかる上下方向がたつき防止部材50によれば、シートレール装置100の車両用シートを前後のいずれに移動した場合、すなわち、アッパーレール30を前後いずれの方向に移動させた場合でも、カム51とブッシュ53の互いの位置関係を変化することなく、移動させることができるので、ロアレール10とアッパーレール30の上下方向のがたつきを防止させた状態で移動させることができる。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得る。
【0034】
上記実施形態においては、上下方向がたつき防止部材50は、前方側及び後方側に、前後対称となるように2つ設けられているが、いずれか一方であってもよい。本実施形態にかかる上下方向がたつき防止部材50は、前方向及び後ろ方向いずれの方向でもがたつきを抑えることができるので、いずれか一方であっても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
上述した実施形態で示すように、自動車用シートを取り付けるためのシートレール装置として、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
10…ロアレール、11…底面部、12…ロア側面部、13…ロア上面部、14…ロア内面部、16…支持底面、19…ローラー案内部、30…アッパーレール、31…水平面、32…垂直面部、33…立設部、34…ローラー、35…取付用台座、36…取付用孔、39…レール本体、40…側方方向がたつき防止部材、50…上下方向がたつき防止部材、51…カム、51a…カム先端、51b…カム底面、51c…弾性部材当接面、51d…上面摺動部、51e…底面当接部、52…弾性部材、53…ブッシュ、53a…ブッシュ斜面部、53b…ブッシュ並行部、53c…弾性部材支持部、53d…アッパーレール接触面、55…収容部材、55a…先端開口部、55b…底面開口部、55c…上面開口部、55e…取付部、55f…フック、60…カム係止部、70…モータ、100…シートレール装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6