(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112558
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】引抜補助具
(51)【国際特許分類】
B25B 27/073 20060101AFI20240814BHJP
B66B 23/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B25B27/073 Z
B66B23/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017681
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永友 優也
(72)【発明者】
【氏名】中村 知至
【テーマコード(参考)】
3C031
3F321
【Fターム(参考)】
3C031DD46
3F321CA11
3F321HA03
(57)【要約】
【課題】フライホイールに傷がつくことを抑制しながらプーリーとフライホイールとを引き抜くことができる引抜補助具を提供する。
【解決手段】引抜補助具は、エスカレーターの駆動機のプーリーとプーリーに固定されたフライホイールとを駆動機の回転軸体から引抜方向へ引き抜くためにプーラーと共に使用する引き抜き補助具であって、フライホイールの引き抜き方向とは反対を向く内側面に接触する接触部と、接触部からフライホイールの外周部へ向かって外周部よりも外側へ延びる延出部と、延出部における外周部よりも外側の端部において回転軸体を挟んだ両側に存在し、プーラーの一対の爪がそれぞれ掛けられるように形成された一対の作用部と、を備えた。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレーターの駆動機のプーリーと前記プーリーに固定されたフライホイールとを前記駆動機の回転軸体から引抜方向へ引き抜くためにプーラーと共に使用する引き抜き補助具であって、
前記フライホイールの前記引き抜き方向とは反対を向く内側面に接触する接触部と、
前記接触部から前記フライホイールの外周部へ向かって前記外周部よりも外側へ延びる延出部と、
前記延出部における前記外周部よりも外側の端部において前記回転軸体を挟んだ両側に存在し、前記プーラーの一対の爪がそれぞれ掛けられるように形成された一対の作用部と、
を備えた引抜補助具。
【請求項2】
前記接触部は、前記回転軸体から規定の第1距離以内の位置で前記フライホイールに接触する請求項1に記載の引抜補助具。
【請求項3】
前記第1距離は、前記フライホイールの半径の2/3よりも短い距離である請求項2に記載の引抜補助具。
【請求項4】
前記接触部は、内部に磁石を有する請求項1に記載の引抜補助具。
【請求項5】
前記接触部を構成する複数の接触体と、
前記フライホイールの直径よりも長い棒状を呈し、それぞれが前記複数の接触体のうち1つ以上と連結され、前記回転軸体が間に位置するよう長手方向が同じ方向を向いて並んで前記延出部を構成する一対の延出体と、
前記一対の延出体の一方の一端部と、前記一対の延出体の他方の一端部と、を連結して前記一対の作用部の一方を構成する一方の作用体と、
前記一対の延出体の一方の他端部と、前記一対の延出体の他方の他端部と、を連結して前記一対の作用部の他方を構成する他方の作用体と、
を備えた請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の引抜補助具。
【請求項6】
前記フライホイールの直径よりも長い棒状を呈し、前記回転軸体が間に位置するよう長手方向が同じ方向を向いて並び、それぞれの中央部において前記フライホイールの前記内側面に接して前記延出部を構成する一対の延出体と、
前記一対の延出体の一方の一端部と、前記一対の延出体の他方の一端部と、を連結して前記一対の作用部の一方を構成する一方の作用体と、
前記一対の延出体の一方の他端部と、前記一対の延出体の他方の他端部と、を連結して前記一対の作用部の他方を構成する他方の作用体と、
を備え、
前記接触部は、前記一対の延出体のうち前記内側面に接する部分である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の引抜補助具。
【請求項7】
棒状を呈し、前記回転軸体が間に位置するよう長手方向が同じ方向を向いて並んで前記接触部を構成する一対の接触体と、
前記一対の接触体の各々の一端部を連結する第1連結体と、
前記一対の接触体の各々の他端部を連結する第2連結体と、
棒状を呈し、前記一対の接触体の一方に一端部が固定され、他端部が前記フライホイールの外周部へ向かって前記外周部よりも外側へ延びて前記延出部を構成する一方の延出体と、
棒状を呈し、前記一対の接触体の他方に一端部が固定され、他端部が前記フライホイールの外周部へ向かって前記外周部よりも外側へ延びて前記延出部を構成する他方の延出体と、
を備え、
前記一対の作用部の一方は、前記一方の延出体の他端部であり、
前記一対の作用部の他方は、前記他方の延出体の他端部である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の引抜補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エスカレーターの駆動機におけるプーリーとフライホイールとの引抜補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、プーリーを引き抜く工具であるプーラーを開示する。特許文献1によれば、回転軸に圧入されたプーリーを当該回転軸から引き抜くことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたプーラーは、フライホイール固定されたプーリーに対しても適用され得る。この場合、プーリーよりも径が大きいフライホイールにプーリーの爪が掛けられる。しかしながら、特許文献1に記載のプーラーの爪によって、フライホイールの外周部には大きな力が加えられる。このため、フライホイールに傷がつく恐れがある。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、フライホイールに傷がつくことを抑制しながらプーリーとフライホイールとを引き抜くことができる引抜補助具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る引抜補助具は、エスカレーターの駆動機のプーリーとプーリーに固定されたフライホイールとを駆動機の回転軸体から引抜方向へ引き抜くためにプーラーと共に使用する引き抜き補助具であって、フライホイールの引き抜き方向とは反対を向く内側面に接触する接触部と、接触部からフライホイールの外周部へ向かって外周部よりも外側へ延びる延出部と、延出部における外周部よりも外側の端部において回転軸体を挟んだ両側に存在し、プーラーの一対の爪がそれぞれ掛けられるように形成された一対の作用部と、を備えた。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、フライホイールには、プーラーの爪が接触しない。このため、プーリーとフライホイールとを引き抜く際にフライホイールに傷がつくことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1における引抜ユニットが適用されるエスカレーターの概要図である。
【
図2】実施の形態1における引抜ユニットが適用されるエスカレーターの駆動機の側面図である。
【
図3】実施の形態1における引抜ユニットが適用されるエスカレーターの駆動機の要部の上面図である。
【
図4】実施の形態1における引抜ユニットの側面図である。
【
図5】実施の形態1における引抜ユニットの側面図である。
【
図6】実施の形態1における引抜ユニットの引抜補助具が使用されないときの駆動機の要部の側面図である。
【
図7】実施の形態2における引抜ユニットが適用される駆動機の要部の側面図である。
【
図8】実施の形態2における引抜ユニットが適用される駆動機の要部の斜視図である。
【
図9】実施の形態2における引抜ユニットが適用される駆動機の要部と引抜ユニットとの上面図である。
【
図10】実施の形態2における引抜ユニットの側面図である。
【
図11】実施の形態3における引抜ユニットの側面図である。
【
図12】実施の形態3における引抜ユニットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における引抜ユニットが適用されるエスカレーターの概要図である。
図2は実施の形態1における引抜ユニットが適用されるエスカレーターの駆動機の側面図である。
図3は実施の形態1における引抜ユニットが適用されるエスカレーターの駆動機の要部の上面図である。
【0011】
図1には、エスカレーター1が示される。エスカレーター1は、図示されない建築物の上階と下階との間に掛け渡される。エスカレーター1は、上階と下階との間で乗客を輸送する。エスカレーター1は、第1乗降口2aと第2乗降口2bと主枠3と複数のステップ4とステップスプロケット5とステップチェーン6と駆動機7とを備える。
【0012】
第1乗降口2aは、建築物の上階に設けられる。第2乗降口2bは、建築物の下階に設けられる。乗客は、第1乗降口2aと第2乗降口2bとを通過してエスカレーター1を利用する。主枠3は、第1乗降口2aと第2乗降口2bとの間に掛け渡される。主枠3は、上端部に機械室3aを有する。機械室3aは、第1乗降口2aの下方に設けられる。複数のステップ4の全体は、無端状に連結される。複数のステップ4は、第1乗降口2aと第2乗降口2bとの間に配置される。ステップスプロケット5は、機械室3aに設けられる。ステップチェーン6は、無端状のチェーンである。ステップチェーン6は、複数のステップ4を連結する。ステップチェーン6の一部は、ステップスプロケット5に巻き掛けられる。
【0013】
駆動機7は、ステップスプロケット5を駆動することで、複数のステップ4を移動させる。駆動機7は、減速機8とVベルト9と駆動モータ10とを有する。減速機8は、入力軸8aとギア部8bと出力軸8cとブレーキ8dとを有する。入力軸8aは、半径L1のプーリーを有する。プーリーが回転されることで、入力軸8aは、回転駆動力の入力を受け付ける。ギア部8bは、入力軸8aが受け付けた回転駆動力を、同じまたは異なる回転数並びに同じまたは異なるトルクを有する回転駆動力に変換する。出力軸8cは、ギア部8bで変換された回転駆動力を出力する。出力軸8cは、プーリーを有する。出力軸8cはプーリーに掛けられたチェーンベルトを介してステップスプロケット5と連結される。例えば、ブレーキ8dは、ディスクブレーキである。ブレーキ8dは、入力軸8aを制動可能である。Vベルト9は、入力軸8aのプーリーに巻き掛けられる。駆動モータ10は、プーリー11を有する。プーリー11には、Vベルト9が巻き掛けられる。
【0014】
エスカレーター1が運転するとき、駆動モータ10は、回転駆動力を発生させる。減速機8の入力軸8aには、Vベルト9を介して、駆動モータ10の回転駆動力が入力される。減速機8は、出力軸8c、チェーンベルトを介して、ステップスプロケット5を回転させる。複数のステップ4は、ステップスプロケット5の回転に伴って、第1乗降口2aと第2乗降口2bとの間を循環移動する。例えば、ブレーキ8dは、入力軸8aに制動力を与えることで、入力軸8a、ギア部8b、出力軸8cおよびステップスプロケット5を介して複数のステップ4を停止させる。
【0015】
図2は、
図1におけるX方向からみた駆動機7である。
図3は、
図1におけるY方向からみた駆動モータ10である。
図2および
図3では、駆動機7を除く機器の図示が省略される。駆動モータ10は、回転軸体12とフライホイール13とを更に有する。回転軸体12は、駆動モータ10の回転駆動力を出力する。プーリー11は、マシンキー14等によって回転軸体12と同期して回転し得るよう、回転軸体12に固定される。
【0016】
フライホイール13は、円盤部13aと取付部13bとを有する。円盤部13aは、規定の慣性トルクが発生するような半径および厚みの円盤である。円盤部13aの半径は、プーリー11の半径より大きい。一例として、円盤部13aの直径は、40cmである。円盤部13aの重心は、回転軸体12の回転軸と一致する。取付部13bは、円盤部13aをプーリー11に固定する部分である。取付部13bの半径は、プーリー11の半径より大きい。なお、取付部13bは、円盤部13aの重心が回転軸からズレないよう、プーリー11に対して強固に取り付けられる。例えば、取付部13bは、プーリー11に溶接される。取付部13bは、プーリー11に対して、容易に回転しないようにボルト締めされる。なお、フライホイール13は、プーリー11と一体に製作されてもよい。
図2に示されるように、プーリー11は、駆動モータ10とフライホイール13との間に存在する。
【0017】
駆動モータ10が出力するトルクは、フライホイール13によって変動が抑制される。また、一般に、エスカレーターでは、乗客の安全を確保するために非常停止時の負の加速度である減速度が規定の加速度を下回ってはいけない。停電等によって駆動モータ10が非常停止した場合であっても、フライホイール13の慣性トルクによって、複数のステップ4の負の加速度が規定の加速度を下回ること、即ち複数のステップ4が急に停止すること、が抑制される。このような慣性トルクを発生させるため、一般に、エスカレーターのモータに設けられたフライホイールの半径は、別の用途に用いられるモータに設けられたフライホイールの半径よりも大きいことが多い。
【0018】
次に、
図4と
図5とを用いて、引抜ユニット20を説明する。
図4および
図5は実施の形態1における引抜ユニットの側面図である。
図5は、
図4におけるZ方向の矢視図である。
【0019】
駆動モータ10の軸受等の保守作業が行われる際、プーリー11とフライホイール13とは、回転軸体12から引き抜かれて取り外される必要がある。この際、プーリー11とフライホイール13とは、駆動モータ10を向く方向とは反対の引抜方向Pへ向かって引き抜かれる。プーリー11とフライホイール13とを引き抜くために、点検作業の作業員は、引抜ユニット20を使用する。
【0020】
図4および
図5に示されるように、引抜ユニット20は、プーラー30と引抜補助具40とを備える。
【0021】
プーラー30は、フライホイール13の径に対応する2本爪のプーラーである。一例として、プーラー30は、ギヤプーラーのように、基体31と一対の腕32と一対の爪33と押込体34とを備える。例えば、基体31は、フライホイール13の直径よりも長い棒状を呈する。一対の腕32は、基体31の両側の端部にそれぞれ回転自在に取り付けられる。一対の爪33は、一対の腕32の各々にそれぞれ回転自在に取り付けられる。例えば、一対の爪33の各々は、腕32とは反対側の端部に、直角に曲がった爪部33aを有する。押込体34は、外周に雄ねじの溝が設けられた棒状を呈する。押込体34は、基体31を直角に貫通する。押込体34の長手方向は、腕32の長手方向を向く。押込体34は、基体31に対して長手方向を軸として回転することで、基体31に対して垂直方向に進退可能である。
【0022】
引抜補助具40は、複数の接触体41と1以上の延出体42と一対の作用体43とを備える。複数の接触体41の各々は、同様の構成を有する。一例として、
図4および
図5には、4つの接触体41と一対の延出体42とを備える引抜補助具40が示される。
【0023】
接触体41は、接触面部41aと取付部41bとを有する。
【0024】
接触面部41aは、フライホイール13と接触する面である。具体的には、接触面部41aは、フライホイール13における駆動モータ10を向く内側面のうち回転軸体12から規定の第1距離以内の領域に接触する。なお、内側面は、フライホイール13における引抜方向Pとは反対を向く面でもある。第1距離には、15cm、等の任意の値が設定されてもよい。なお、第1距離は、フライホイール13の半径を超えない距離であって、プーリー11の半径に規定の第2距離を加えた距離であってもよい。第2距離には、5cm、等の任意の距離が設定される。また、第1距離は、円盤状である取付部13bの半径の半分よりも短い距離であってもよい。また、第1距離は、円盤状である取付部13bの半径の2/3よりも短い距離であってもよい。
【0025】
例えば、接触面部41aの表面は、ゴム等の樹脂からなる。接触面部41aの面積は、爪部33aの引っ掛かる部分の面積よりも広い。そのため、フライホイール13と接触しても、フライホイール13にキズがつきにくい。接触面部41aは、表面よりも内側に、磁石等の磁性体を有する。接触面部41aとフライホイール13との間には磁力による吸引力が発生する。このため、接触体41がフライホイール13との接触位置に配置された状態を容易に維持することができ、引抜作業を容易に行うことができる。
【0026】
取付部41bは、延出体42を取り付ける部分である。例えば、取付部41bは、接触面部41aに対してフライホイール13とは反対側に設けられる。
【0027】
例えば、4つの接触体41は、略正方形の頂点をなすようにフライホイール13にそれぞれ取り付けられる。この際、略正方形の対角線の交点が、回転軸体12と一致する。
【0028】
延出体42は、棒状を呈する。例えば、延出体42は、金属製の細長いアングルである。延出体42の長手方向の長さは、フライホイール13の円盤部13aの直径よりも長い。一対の延出体42の各々は、その中央部において、2つの接触体41の組に連結される。なお、1つの延出体42は、1つ以上の接触体41に連結されていればよい。
【0029】
この状態において、一対の延出体42は、長手方向が同じ方向を向いて並ぶ。具体的には、一対の延出体42は、長手方向が平行となるよう並ぶ。一対の延出体42の間に、回転軸体12が位置する。延出体42の両端部は、フライホイール13の外周よりも外側に存在する。
【0030】
例えば、一対の作用体43の各々は、棒状を呈する。例えば、延出体42は、金属製の細長いアングルである。一対の作用体43の一方は、一対の延出体42の一方の一端部と、一対の延出体42の他方の一端部と、にそれぞれ取り付けられる。一対の作用体43の他方は、一対の延出体42の一方の他端部と、一対の延出体42の他方の他端部と、にそれぞれ取り付けられる。即ち、一対の延出体42と一対の作用体43とは、それぞれが長方形の辺となるように連結される。この状態において、一対の作用体43の一方と他方との間に、回転軸体12が位置する。即ち、一対の作用体43は、回転軸体12を挟んだ両側に位置する。一対の作用体43の一方から他方までの距離は、フライホイール13の直径と同じまたは当該直径よりも長い。
【0031】
このように、引抜補助具40において、接触体41、延出体42、および一対の作用体43は、接触部、延出部、および一対の作用部をそれぞれ構成する。
【0032】
引抜作業において、作業員は、プーリー11を回転軸体12に固定するボルト等を取り外した後、引抜補助具40を
図4等に示される位置に配置する。なお、プーリー11は回転軸体12に対して締め込まれるように取り付けられるため、この状態において、プーリー11を回転軸体12から引き抜くためには大きな力が必要となる。引抜補助具40がフライホイール13に配置された後、作業員によって、プーラー30は、フライホイール13に対して、引抜補助具40とは反対側に配置される。その後、プーラー30の一対の爪33が一対の作用体43にそれぞれ掛けられる。この際、プーラー30の基体31および一対の腕32は、フライホイール13よりも引抜方向Pの側に存在する。一対の作用体43は、この状態において一対の爪33の爪部33aが掛けられ得るように形成される。
【0033】
その後、押込体34のうち駆動モータ10を向く端部が回転軸体12に押し付けられた状態で、作業員は、押込体34を回転させる。この際、押込体34は、基体31が駆動モータ10から離れる方向である引抜方向Pへ移動する向きで回転される。この場合、基体31と一対の腕32と一対の爪33とは、引抜方向Pへ一体となって移動する。一対の作用部である一対の作用体43には、一対の爪33のそれぞれから引抜方向Pへの力が加えられる。延出部である一対の延出体42は、一対の作用体43に加えられた力を4つの接触体41に伝達する。接触部である4つの接触体41は、フライホイール13の取付部13bに引抜方向Pへの力を加える。取付部13bは、プーリー11に引抜方向Pへの力を伝える。作業員は、プーリー11が回転軸体12から抜けるまで、押込体34を回転させ、プーリー11を回転軸体12から引き抜く。
【0034】
次に、
図6を用いて、引抜補助具40を使用せずにプーリー11の引抜作業を行った場合の比較例を説明する。
図6は実施の形態1における引抜ユニットの引抜補助具が使用されないときの駆動機の要部の側面図である。
【0035】
図6に示されるように、引抜補助具40が使用されない場合、従来のように、引抜作業ではプーラー30のみが使用される。プーラー30の一対の爪33は、フライホイール13の外周部に直接的に掛けられる。作業員は、押込体34を回転させることで一対の爪33からフライホイール13に力を加えて、プーリー11を引き抜く。
【0036】
この際、フライホイール13の円盤部13aには、外周部から中心部にわたって、プーラー30による曲げ応力が発生する。フライホイール13の外周部に掛けられた爪33の力がフライホイール13の中心部分に作用するため、当該力によって引抜方向Pへ大きなトルクが発生する。このとき、フライホイール13が変形してしまう恐れがある。また、爪33とフライホイール13とが接触する面積が小さいため、フライホイール13の外周部が爪33によって破損または変形するなどの恐れがある。更に、爪33が接触した部分において、フライホイール13の塗装が剥がれる恐れがある。このように、フライホイール13に傷がつく恐れがある。
【0037】
フライホイール13が変形するまたはフライホイール13に傷がつくと、フライホイール13の重心位置が回転軸体12の軸上からずれる恐れがある。このため、引抜作業は、フライホイール13が変形しないよう、少しずつ慎重に実施される。また、フライホイール13の塗装が剥がれた場合、重心位置が変わらないように、作業員は、剥がれた部分の塗装を塗り直す必要がある。このように、従来のプーラー30のみによる引抜作業は、フライホイール13の重心位置が変化しないように、時間と作業員の技術とが必要な作業である。
【0038】
図4および
図5に示されるように、引抜補助具40がプーラー30と共に用いられることで、フライホイール13には、爪33が直接的に接触しない。フライホイール13には、回転軸体12に近い位置に引き抜きのための力が加えられる。フライホイール13には、爪33よりも接触面積が広い力、即ち面圧が加えられる。このため、フライホイール13が変形することおよび塗装が剥がれることが抑制される。
【0039】
以上で説明した実施の形態1によれば、引抜補助具40は、接触部と延出部と一対の作用部とを有する。プーラー30から一対の作用部に与えられた引抜方向Pの力は、延出部によって接触部へ伝達され、接触部からフライホイール13に伝えられる。フライホイール13には、爪33が接触しない。このため、プーリー11とフライホイール13とを引き抜く際に、フライホイール13に傷がつくことを抑制することができる。
【0040】
また、接触部は、回転軸体12から第1距離以内の位置でフライホイール13に接触する。フライホイール13と接触部との接触位置から回転軸体12までの距離が長くなることが抑制される。その結果、フライホイール13の外周部から中心部にわたって発生する曲げ応力を小さくすることができ、フライホイール13が変形することを抑制することができる。更に、第1距離は、フライホイール13の半径の2/3よりも短い距離であれば、より効果的にフライホイール13が変形することを抑制することができる。なお、第1距離は、なるべく小さい方が好ましいため、フライホイール13の半径の半分よりも短い距離であれば、更に効果的にフライホイール13が変形することを抑制することができる。
【0041】
また、接触部は、内部に磁石を有する。当該磁石によって、接触部は、フライホイール13に吸着する。引抜作業において、接触部がフライホイール13に吸着することで、接触部、延出部、および作用部を作業員が支持する必要がない。このため、引抜作業を効率的に行うことができる。
【0042】
また、接触部は、複数の接触体41によって構成される。延出部は、一対の延出体42によって構成される。一対の作用部は、一対の作用体43の一方と一対の作用体43の他方とによって構成される。一対の延出体42は、間に回転軸体12が位置するように長手方向が同じ方向を向いて並ぶ。このため、回転軸体12から引き抜かれる力を効率的にフライホイール13に加えることができる。
【0043】
なお、4つの接触体41と一対の延出体42とは、一対の作用体43の間に回転軸体12が位置するよう一対の作用体43が配置される形態であれば、
図4および
図5に示される形態で取り付けられなくてもよい。
【0044】
実施の形態2.
図7は実施の形態2における引抜ユニットが適用される駆動機の要部の側面図である。
図8は実施の形態2における引抜ユニットが適用される駆動機の要部の斜視図である。
図9は実施の形態2における引抜ユニットが適用される駆動機の要部と引抜ユニットとの上面図である。
図10は実施の形態2における引抜ユニットの側面図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0045】
図7と
図8とに示されるように、実施の形態2において、フライホイール13は、駆動モータ10とプーリー11との間に存在する。フライホイール13と駆動モータ10との間の隙間は、実施の形態1における駆動機7のフライホイール13と駆動モータ10との間の隙間よりも狭い。この場合においても、フライホイール13は、プーリー11に対して強固に取り付けられる。プーリー11は、回転軸体12に取り付けられる。即ち、保守作業において、プーリー11の引抜作業が必要となる。
【0046】
図9と
図10に示されるように、実施の形態2において、引抜補助具40は、接触体41を備えなくてもよい。
図9は、引抜補助具40を取り付ける際に、一対の延出体42の一方の取付位置を調整している様子の概要を示す。
図10は、取り付けられた引抜補助具40の概要を示す。一対の延出体42の短手方向の長さは、駆動モータ10とフライホイール13との間の隙間よりも短い。この場合、フライホイール13の駆動モータ10を向く面には、延出体42のうち両端部の中間に位置する中央部が接触する。延出体42の中央部は、回転軸体12から第1距離以内の位置でフライホイール13に接触する。延出体42の両端部には、実施の形態1と同様に、一対の作用体43がそれぞれ取り付けられる。
【0047】
即ち、実施の形態2の引抜補助具40において、一対の延出体42の中央部、延出体42、一対の作用体43は、接触部、延出部、および一対の作用部をそれぞれ構成する。
【0048】
以上で説明した実施の形態2によれば、接触部は、一対の延出体42の中央部によって構成される。延出部は、一対の延出体42によって構成される。一対の作用部は、一対の作用体43の一方と一対の作用体43の他方とによって構成される。このため、フライホイール13と駆動モータ10との間が狭い場合でも、引抜作業において引抜ユニット20を適用することができる。
【0049】
実施の形態3.
図11および
図12は実施の形態3における引抜ユニットの側面図である。なお、実施の形態1または2の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。また、
図11および
図12において、プーラー30の図示は省略される。
【0050】
図11と
図12とに示されるように、実施の形態3における引抜補助具40の構成は、実施の形態1および2における引抜補助具40とは異なる。引抜補助具40は、一対の接触体51と一対の延出体52と第1連結体54と第2連結体55とを備える。
【0051】
一対の接触体51は、棒状を呈する。一対の接触体51の各々の長手方向における長さは、プーリー11の直径よりも大きい。一対の接触体51における接触面部51aの面積は、実施の形態1における接触面部41aの面積よりも大きい。例えば、接触面部51aの表面は、ゴム等の樹脂からなる。接触面部51aは、表面よりも内側に、磁石等の磁性体を有する。
【0052】
一対の延出体52は、棒状を呈する。一対の延出体52の長手方向における長さは、プーリー11の外周部からフライホイール13の外周部までを最短距離で結んだ距離よりも長い。一対の延出体52の一方は、一端部において、一対の接触体51の一方に溶接またはボルト等で強固に固定される。一対の延出体52の他方は、一端部において、一対の接触体51の他方に溶接またはボルト等で強固に固定される。
【0053】
第1連結体54は、棒状を呈する。第1連結体54は、一対の接触体51の一方の一端部と、一対の接触体51の他方の一端部と、に固定され、一対の接触体51を連結する。
【0054】
第2連結体55は、棒状を呈する。第2連結体55の一端部は、一対の接触体51の一方の他端部に、ピン55aによって回転可能に連結される。第2連結体55の他端部は、一対の接触体51の他方の他端部に、ボルト55bによって着脱可能に連結される。即ち、ボルト55bが取外された状態において、第2連結体55は、一端部を中心として矢印Rの方向に回転可能である。
【0055】
ボルト55bが取り外された状態で、一対の接触体51と第1連結体54とで形成されたU字状の領域の内部にプーリー11が位置するよう、引抜補助具40が配置される。その後、
図11に示される引抜補助具40の取付状態において、第2連結体55は、ボルト55bによって一対の接触体51の他方に連結されて固定される。引抜補助具40は、フライホイール13の内側面と対向するよう配置される。一対の接触体51の各々は、接触面部51aにおいて、フライホイール13の取付部13bに接する。一対の接触体51と第1連結体54と第2連結体55とは、それぞれが各辺を構成する長方形を形成する。当該長方形の内部には、プーリー11と回転軸体12とが位置する。
【0056】
この状態において、一対の延出体52の一方は、接触体51の一方の中央部からフライホイール13の外周部より外側へ延びる。一対の延出体52の他方は、接触体51の他方の中央部からフライホイール13の外周部より外側へ延びる。一対の延出体52の一方と他方とは、回転軸体12を通る同一直線上に並ぶ。
【0057】
一対の延出体52の一方における接触体51とは反対の他端部である端部Eに、プーラー30の一対の爪33の一方が掛けられる。一対の延出体52の他方における接触体51とは反対の他端部である端部Eに、プーラー30の一対の爪33の他方が掛けられる。即ち、一対の延出体52の各々の端部Eは、爪33が掛けられるよう形成されている。
【0058】
このように、引抜補助具40において、接触体51、延出体52の中央部、および一対の延出体52の各々の端部Eは、接触部、延出部、および一対の作用部をそれぞれ構成する。
【0059】
一対の端部Eには、一対の爪33のそれぞれから引抜方向Pの力が加えられる。延出体52は、端部Eに加えられた力を一対の接触体51にそれぞれ伝達する。一対の接触体51と第1連結体54と第2連結体55とが一体の四角形を構成するため、延出体52から伝達された力は、一対の接触体51によってフライホイール13の取付部13bに対して引抜方向Pへ加えられる。このようにして、プーリー11が引き抜き方向へ引き抜かれる。
【0060】
引抜作業が終わったあと、ボルト55bが取り外される。第2連結体55はピン55aを中心に回転し、一対の接触体51と第1連結体54と第2連結体55とが構成する四角形のうち第2連結体55の辺が開口する。当該開口した辺からプーリー11を抜くことで、引抜補助具40が取り外される。
【0061】
以上で説明した実施の形態3によれば、引抜補助具40は、一対の接触体51と第1連結体54と第2連結体55と一対の延出体52とを備える。接触部は、一対の接触体51によって構成される。延出部は、一対の延出体52によって構成される。一対の作用部の一方は、一対の延出体52の一方の端部Eによって構成される。一対の作用部の他方は、一対の延出体52の他方の端部Eによって構成される。一対の延出体52の端部Eに作用する引抜方向Pの力は、延出体52によって一対の接触体51に伝達され、フライホイール13に伝えられる。このため、プーリー11とフライホイール13とを引き抜く際に、フライホイール13に傷がつくことを抑制することができる。
【0062】
以上の説明をまとめると、本開示に係る技術の取りうる構成は、以下に付記として示す各構成などを含む。
(付記1)
エスカレーターの駆動機のプーリーと前記プーリーに固定されたフライホイールとを前記駆動機の回転軸体から引抜方向へ引き抜くためにプーラーと共に使用する引き抜き補助具であって、
前記フライホイールの前記引き抜き方向とは反対を向く内側面に接触する接触部と、
前記接触部から前記フライホイールの外周部へ向かって前記外周部よりも外側へ延びる延出部と、
前記延出部における前記外周部よりも外側の端部において前記回転軸体を挟んだ両側に存在し、前記プーラーの一対の爪がそれぞれ掛けられるように形成された一対の作用部と、
を備えた引抜補助具。
(付記2)
前記接触部は、前記回転軸体から規定の第1距離以内の位置で前記フライホイールに接触する付記1に記載の引抜補助具。
(付記3)
前記第1距離は、前記フライホイールの半径の2/3よりも短い距離である付記2に記載の引抜補助具。
(付記4)
前記接触部は、内部に磁石を有する付記1から付記3のいずれか一項に記載の引抜補助具。
(付記5)
前記接触部を構成する複数の接触体と、
前記フライホイールの直径よりも長い棒状を呈し、それぞれが前記複数の接触体のうち1つ以上と連結され、前記回転軸体が間に位置するよう長手方向が同じ方向を向いて並んで前記延出部を構成する一対の延出体と、
前記一対の延出体の一方の一端部と、前記一対の延出体の他方の一端部と、を連結して前記一対の作用部の一方を構成する一方の作用体と、
前記一対の延出体の一方の他端部と、前記一対の延出体の他方の他端部と、を連結して前記一対の作用部の他方を構成する他方の作用体と、
を備えた付記1から付記4のいずれか一項に記載の引抜補助具。
(付記6)
前記フライホイールの直径よりも長い棒状を呈し、前記回転軸体が間に位置するよう長手方向が同じ方向を向いて並び、それぞれの中央部において前記フライホイールの前記内側面に接して前記延出部を構成する一対の延出体と、
前記一対の延出体の一方の一端部と、前記一対の延出体の他方の一端部と、を連結して前記一対の作用部の一方を構成する一方の作用体と、
前記一対の延出体の一方の他端部と、前記一対の延出体の他方の他端部と、を連結して前記一対の作用部の他方を構成する他方の作用体と、
を備え、
前記接触部は、前記一対の延出体のうち前記内側面に接する部分である付記1から付記3のいずれか一項に記載の引抜補助具。
(付記7)
棒状を呈し、前記回転軸体が間に位置するよう長手方向が同じ方向を向いて並んで前記接触部を構成する一対の接触体と、
前記一対の接触体の各々の一端部を連結する第1連結体と、
前記一対の接触体の各々の他端部を連結する第2連結体と、
棒状を呈し、前記一対の接触体の一方に一端部が固定され、他端部が前記フライホイールの外周部へ向かって前記外周部よりも外側へ延びて前記延出部を構成する一方の延出体と、
棒状を呈し、前記一対の接触体の他方に一端部が固定され、他端部が前記フライホイールの外周部へ向かって前記外周部よりも外側へ延びて前記延出部を構成する他方の延出体と、
を備え、
前記一対の作用部の一方は、前記一方の延出体の他端部であり、
前記一対の作用部の他方は、前記他方の延出体の他端部である付記1から付記4のいずれか一項に記載の引抜補助具。
【符号の説明】
【0063】
1 エスカレーター、 2a 第1乗降口、 2b 第2乗降口、 3 主枠、 3a 機械室、 5 ステップスプロケット、 6 ステップチェーン、 7 駆動機、 8 減速機、 8a 入力軸、 8b ギア部、 8c 出力軸、 8d ブレーキ、 9 Vベルト、 10 駆動モータ、 11 プーリー、 12 回転軸体、 13 フライホイール、 13a 円盤部、 13b 取付部、 14 マシンキー、 20 引抜ユニット、 30 プーラー、 31 基体、 32 腕、 33 爪、 33a 爪部、 34 押込体、 40 引抜補助具、 41 接触体、 41a 接触面部、 41b 取付部、 42 延出体、 43 作用体、 51 接触体、 51a 接触面部、 52 延出体、 54 第1連結体、 55 第2連結体、 55a ピン、 55b ボルト、 E 端部、 P 引抜方向