(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112564
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】エンジンのウォータポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04D 13/06 20060101AFI20240814BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20240814BHJP
F04D 29/043 20060101ALI20240814BHJP
F04D 29/22 20060101ALI20240814BHJP
F01P 5/10 20060101ALI20240814BHJP
F01P 5/12 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
F04D13/06 C
F04D29/42 A
F04D29/043 Z
F04D29/22 C
F01P5/10 B
F01P5/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017690
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大文
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB07
3H130AB12
3H130AB22
3H130AB42
3H130AC16
3H130BA13D
3H130BA13E
3H130BA33C
3H130BA33D
3H130BA73D
3H130BA73E
3H130CA23
3H130DA02X
3H130DB03X
3H130DB13X
3H130DD04Z
3H130DH03Z
(57)【要約】
【課題】中心軸にロータが回転自在に保持されている電動式ウォータポンプを備えたポンプ装置に関し、耐久性低下や性能低下をもたらすことなく構造を簡単化する。
【解決手段】ウォータポンプ装置は、中心軸11にロータ15が回転自在に保持されたポンプ本体3と、ロータ15に設けた羽根車23を後ろから覆うカバー部材25とを備えている。中心軸11の前端部は本体ケース5に形成された軸受け穴10に圧入されて、中心軸11の後端部11aは、カバー部材25にアーム部33を介して形成されたキャップ部31で外周側から抱持されている。中心軸11は両端支持になるため、前端部を軸受け穴10に圧入した簡単な構成でありながら、ロータ15(羽根車23)を安定的に保持できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ室を含む凹所が外向きに開口したポンプハウジングと、
一端部が前記ポンプ室の側に位置して他端部はポンプ本体に保持された中心軸と、
前記中心軸に回転自在に保持されて前記ポンプ室に位置した羽根車と、
前記凹所の側から前記羽根車と対向するように配置されたカバー部材と、を備えており、
前記カバー部材に、前記中心軸の一端部を周方向から支持するキャップ部が設けられている、
エンジンのウォータポンプ装置。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記中心軸と平行な姿勢で前記ポンプハウジングに形成された水通路に嵌入する筒状部と、羽根車を前記凹所の側から覆う屋根部と、を有しており、
前記屋根部に、前記羽根車の外周の外側に位置して周方向に点在する足片の群を形成している、
エンジンの請求項1に記載したウォータポンプ装置。
【請求項3】
ポンプ室を含む凹所が外向きに開口したポンプハウジングと、
前記ポンプ本体に外側から重なった中間ハウジングと、
一部が前記中間ハウジングを貫通した状態で前記中間ハウジングに固定されたポンプ本体と、を有し、
前記中間ハウジングに形成された貫通穴の内周面と前記ポンプ本体の外周との間に、前記ポンプ室と連通した隙間が空いている、
エンジンのウォータポンプ装置。
【請求項4】
前記ポンプハウジングに、前記ポンプ室に連通した水通路が前記中間ハウジングの貫通穴と平行な状態に形成されて、
前記凹所に、前記ポンプ本体に設けた羽根車を覆う屋根部と前記水通路に入り込む筒状部とを有するカバー部材が配置されて、前記羽根車を回転自在に保持する中心軸の一端部が前記カバー部材で支持されており、
かつ、前記カバー部材における筒状部の外周面と前記水通路の内周面との間にガスケットを介在させている、
請求項3に記載したエンジンのウォータポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、エンジンのウォータポンプ装置に関するもので、特に、差し込み装着式の電動式ウォータポンプを好適な対象にしている。
【背景技術】
【0002】
自動車用等の水冷式エンジンでは、ウォータポンプが必須の部材として使用されている。ウォータポンプは、クランクプーリで駆動されるタイプと電動式とがあり、電動式ウォータポンプの例が特許文献1に開示されている。
【0003】
電動式ウォータポンプでは、永久磁石を設けた筒状のロータ(回転軸)に羽根車が取り付けられており、ロータは、一般に、ポンプ本体に固定された中心軸にブッシュを介して回転自在に保持されている。
【0004】
そして、特許文献1では、ステータコア等の駆動部材を内蔵した第1ハウジングと、シリンダブロックに形成されて凹所の内部に配置された第2ハウジングとを基本的な部材(ケーシング)として、両者の間にポンプ室を形成してこのポンプ室に羽根車を配置している。そして、特許文献1では、中心軸の基端は樹脂製の第1ハウジングにインサート成型によって固定されて、ブッシュの他端面が、第2ハウシングに内蔵されたガイド体で支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
羽根車は回転すると水の抵抗によってポンプ本体から離れようとするため、特許文献1のようにブッシュをガイド体で支持すると、羽根車が第2ハウジングに当たることを防止しつつ両者の隙間をできるだけ小さくできるため、ポンプ効率を向上できる利点がある。
【0007】
しかし、特許文献1の構成では、中心軸は、一端を自由端とした片持ちの状態になっているため、その基端部をインサート成型によって第1ハウジングに強固に固定せねばならず、このため、製造コストが嵩むという問題が懸念される。また、中心軸はその一端部が第2ハウジングの外側にはみ出ているため、インサート成型してからウォータポンプをエンジンに組み付けるまでの間の保管や運搬段階で、物が中心軸に当たって変形したり破損したりするおそれがある。
【0008】
他方、電動式のウォータポンプでは駆動によってモータ部分が発熱することは否めず、発熱による部材の膨張によって回転抵抗が増大したり、磁力が低下して効率が悪化したりすることが懸念される。特に、ウォータポンプをタイミングチェーンカバーに取り付ける場合は、ウォータポンプをシリンダブロックに直接取り付ける場合に比べて熱が籠もり気味になるため、発熱対策が要請されるといえる。しかし、特許文献1には、このような発熱に関する課題は提示されていない。
【0009】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は多くの構成を備えており、その展開例を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は上位概念を成すもので、
「ポンプ室を含む凹所が外向きに開口したポンプハウジングと、
一端部が前記ポンプ室の側に位置して他端部はポンプ本体に保持された中心軸と、
前記中心軸に回転自在に保持されて前記ポンプ室に位置した羽根車と、
前記凹所の側から前記羽根車と対向するように配置されたカバー部材と、を備えており、
前記カバー部材に、前記中心軸の一端部を周方向から支持するキャップ部が設けられている」
という構成になっている。
【0011】
請求項2の発明は請求項1の展開例であり、
「前記カバー部材は、前記中心軸と平行な姿勢で前記ポンプハウジングに形成された水通路に嵌入する筒状部と、羽根車を前記凹所の側から覆う屋根部と、を有しており、
前記屋根部に、前記羽根車の外周の外側に位置して周方向に点在する足片の群を形成している」
という構成になっている。この場合は、各足片は、強度の点からリング板に一体化するのが好ましい。
【0012】
請求項3は上位概念を成すもので、
「ポンプ室を含む凹所が外向きに開口したポンプハウジングと、
前記ポンプ本体に外側から重なった中間ハウジングと、
一部が前記中間ハウジングを貫通した状態で前記中間ハウジングに固定されたポンプ本体と、を有し、
前記中間ハウジングに形成された貫通穴の内周面と前記ポンプ本体の外周との間に、前記ポンプ室と連通した隙間が空いている」
という構成になっている。
【0013】
請求項4の発明は請求項3の展開例であり、
「前記ポンプハウジングに、前記ポンプ室に連通した水通路が前記中間ハウジングの貫通穴と平行な状態に形成されて、
前記凹所に、前記ポンプ本体に設けた羽根車を覆う屋根部と前記水通路に入り込む筒状部とを有するカバー部材が配置されて、前記羽根車を回転自在に保持する中心軸の一端部が前記カバー部材で支持されており、
かつ、前記カバー部材における筒状部の外周面と前記水通路の内周面との間にガスケットを介在させている」
という構成になっている。
【0014】
なお、本願発明において、請求項1の構成と請求項3の構成とは対立するものではなく、互いに併存可能である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、中心軸の他端部はポンプ本体で支持されるが、一端と他端との両方が支持されて両端支持になるため、他端部をインサート成型によってポンプ本体に固定しなくても、軸受け穴に圧入したり挿入したりしただけのような簡易な支持構造であっても、中心軸を安定的に保持できる。従って、羽根車を安定的に支持する機能を確保しつつ製造コストを抑制できる。
【0016】
また、中心軸は、ポンプ本体にカバー部材等を装着してユニット化する組み立て工程においてポンプ本体に組み付けできるため、部材の保管や運搬時に中心軸が変形したり破損したりする事態を防止できる。すなわち、保管や運搬工程でのトラブルを防止できる。
【0017】
請求項2のようにカバー部材に足片の群を設けると、カバー部材をポンプ本体に突っ張らせることができるため、カバー部材の安定性を向上できる。特に、足片をリング板に一体化すると、足片の支持強度も向上して特に好適である。また、各足片をフィン状に形成することにより、足片に整流作用を持たせることができるため、水の流れをスムース化して圧損の抑制に貢献できる利点もある。
【0018】
請求項3の構成を採用すると、中間ハウジングの貫通穴とポンプ本体との間の隙間に水(冷却水)が流入するため、ポンプ本体を冷却できる。従って、部材の熱膨張による抵抗の増加を防止できる。また、電動式ウォータポンプに適用すると、モータの昇温を抑制してポンプ効率の低下(磁力の低下)を防止又は大幅に抑制できる。
【0019】
請求項3の構成では、ポンプ本体は中間ハウジングの貫通穴に対して遊嵌しているが、請求項4の構成を採用すると、ポンプ本体の中心軸を安定的に支持し羽根車の円滑な回転を確保できる。そして、カバー部材の筒状部と水通路の内周面との間にガスケットを介在させているため、筒状部や水通路に加工誤差があっても水封状態を保持しつつ、カバー部材を正確に組み付けできる。従って、部材の加工の手間を抑制しつつ、ウォータポンプの性能を高い状態に維持して信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】
図1のIII-III 視概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1).実施形態の構造
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車用エンジンのウォータポンプ装置に適用している。
【0022】
図1に示すように、エンジンは、シリンダブロック1とその一端面に重ね固定されたタイミングチェーンカバー2とを備えており、ウォータポンプのポンプ本体3が、その一部がタイミングチェーンカバー2を貫通した状態で配置されている。従って、タイミングチェーンカバー2には、ポンプ本体3の一部が貫通する貫通穴4が空いている。シリンダブロック1は、請求項に記載したポンプハウジングの一例であり、タイミングチェーンカバー2は請求項に記載した中間ハウジングの一例である。
【0023】
以下では、説明の便宜のために前後の文言を使用するが、
図1に表示しているように、タイミングチェーンカバー2の外側に向いた方向を前として、シリンダブロック1に向いた方向を後ろとしている。請求項との関係では、前端は一端で後端は他端になる。
【0024】
ポンプ本体3は、金属又は合成樹脂より成る筒状の本体ケース5を備えており、本体ケース5に設けた外向きフランジ6(
図3も参照)が、タイミングチェーンカバー2の外面(前面)にボルト(図示せず)で固定されている。本体ケース5には、タイミングチェーンカバー2の貫通穴4に入り込む薄肉状の後ろ向きの嵌入部7が形成されている。
【0025】
本体ケース5の内部でかつ前部には、外周部と一体に繋がったフロント支持部9が設けられており、フロント支持部9に設けた軸受け穴10に中心軸(支軸)11の前端部(一端部、基部)が圧入されている。従って、中心軸11は回転不能に保持されている。
図1において符号12で示すのは内部蓋板、符号13で示すのは外部蓋板、符号5aで示すのはコネクタ用アームである。コネクタ用アーム5aに設けたコネクタに、電源及び制御のためのブラグが接続される。
【0026】
中心軸11には、ブッシュ(スリーブ)14が回転自在に嵌まっており、ブッシュ14に外側から筒状のロータ(回転筒)15が抱持固定されて、ロータ15の外周に、永久磁石よりなる回転子16が固定されている。本体ケース5には回転子16を囲う環状空間17が形成されており、環状空間17に、ステータコア等の駆動部材や、回路基板のような制御部材が配置されている。回転子16の後端は、ロータ15に設けたフランジ18で位置決めされる。
【0027】
ロータ15には、フランジ18の後ろに位置した大径筒部19が一体に形成されており、大径筒部19の後端に一体に形成した回転円板20に、
図3に示すように多数枚のインペラー(フィン)21が形成されている。
図3に明示するように、各インペラー21は、回転軸心方向から見て円弧状でかつ捩じれた姿勢に配置されており、このため、回転によって水を周方向に案内する。
【0028】
図2から理解できるように、インペラー21の群には後ろから円板状の蓋板22が重ねられて、溶接又はろう付けで固定されている。従って、回転円板20とインペラー21の群と蓋板22とによって籠形の羽根車23が構成されている。
【0029】
羽根車23は、タイミングチェーンカバー2の後面から後ろに突出しており、そして、羽根車23はシリンダブロック1の側からカバー部材25で覆われている。
図2から理解しやすいと思われるが、カバー部材25は、羽根車23を後ろから囲うリング状の屋根部26と、屋根部26の内周部から後ろ向きに突出した筒状部27と、屋根部26の外周部から前向きに突出した足片(固定翼)28の群と、足片28の前端に一体に連続したリング板29とを有している。
【0030】
カバー部材25のリング板29は、ロータ15の回転円板20の外側に位置しており、かつ、回転円板20と同一面を成した状態でポンプ本体3の本体ケース5に後ろから重なっている。この場合、リング板29に環状の前向き突条29aを設けて、この前向き突条29aをポンプ本体3の後面に形成された環状溝30に嵌め合わせている。従って、リング板29は本体ケース5とずれ不能に位置決めされている。
【0031】
また、
図3に示すように、カバー部材25の各足片28は、回転軸心方向から見て円弧状でフィン状に形成されており、インペラー21の群を外側から囲うように配置されている。従って、足片28の群が固定翼となって、インペラー21の群で圧送される水が整流されている。
【0032】
中心軸11に回転自在に被嵌したブッシュ14の後端寄り部位にはフランジ14aが形成されており、フランジ14aは、ロータ15の大径筒部19の基端の段部に重なっている。そして、中心軸11の後端部(他端部、先端部)11aはブッシュ14の後ろに突出しており、中心軸11の後端部11aが、カバー部材25に設けたキャップ部(軸受け部)31で後ろから抱持されている。
【0033】
キャップ部31の前端は、ワッシャ(スペーサリング、スラスト軸受け)32を介してブッシュ14の後端面と当接又は近接している。なお、ワッシャ32をキャップ部31の先端面に溶接やろう付けで固定することも可能である。
【0034】
図3に示すように、カバー部材25のキャップ部31は3本の板状のアーム部33の前端に一体に形成されており、アーム部33は、カバー部材25の筒状部27に一体に形成さている。
【0035】
カバー部材25は、シリンダブロック1に形成された前向き開口の凹所34に嵌め込まれている。凹所34は、カバー部材25の筒状部27がガスケット35を介して挿入された吸い込み口36と、羽根車23が配置されたポンプ室(渦室)37とを有しており、冷却水は、吸い込み口36からポンプ室37に流入して、ポンプ室37の大径部37aから図示しない吐出通路に排出される。吸い込み口36は、請求項に記載した水通路に該当する。
【0036】
ポンプ室37の一部はカバー部材25によっても形成されている。すなわち、凹所34の一部をカバー部材25で詰めることにより、ポンプ室37のうち羽根車23が配置されている部分を形成している。従って、凹所34はポンプ室37とカバー部材25とを含んでいる。
【0037】
ロータ15における回転円板20の外周面とカバー部材25におけるリング板29の内周面との間、及び、ロータ15と本体ケース5間には、若干の寸法の第1環状空間38が空いている。従って、冷却水がポンプ室37から第1環状空間38が流入して、ロータ15と本体ケース5の内周部とを冷却できる。
【0038】
本体ケース5の外周面とタイミングチェーンカバー2における貫通穴4の内周面との間には若干の寸法の第2環状空間39が空いており、第2環状空間39はポンプ室37に開口している。従って、カバー部材25におけるリング板29の外周面とタイミングチェーンカバー2における貫通穴4の内周面との間には、若干の間隔の隙間が空いている。第2環状空間39は、請求項に記載した隙間になる。
【0039】
カバー部材25は、本体ケース5によってシリンダブロック1の凹所34に押さえ保持されているが、リング板29をビスで本体ケース5に固定することも可能である。また、カバー部材25の屋根部26とシリンダブロック1との間、又は、カバー部材25のリング板29と本体ケース5との間に弾性体を介在させて、加工誤差を吸収することも可能である。
【0040】
(2).まとめ
本実施形態では、中心軸11の後端部が、カバー部材25に設けたキャップ部31によって周方向から抱持されているため、中心軸11は両端支持の状態に保持されている。従って、中心軸11は、その前端部を軸受け穴10に圧入しただけの簡単な構造でありながら、安定した姿勢に保持される。従って、インサート成型のような複雑な構造を採用することなく、ロータ15を安定的に支持できる。よって、コストを抑制しつつ、品質と耐久性とに優れたウォータポンプ装置を実現できる。
【0041】
実施形態のように、カバー部材25にフィン状の足片28の群を設けると、足片28が冷却水の流れを方向付ける整流作用を発揮するため、冷却水の流れをスムース化して圧損を抑制できる。
【0042】
また、足片28はカバー部材25の支持機能も備えているため、カバー部材25の安定性の向上にも貢献できる。特に、実施形態のようにリング板29を設けると、足片28の支持強度も向上できる。また、足片28は薄くて軸方向に僅かながら変形し得るため、本体ケース5でカバー部材25を凹所34に押さえ保持するにおいて、カバー部材25の弾性変形によってカバー部材25の製造誤差を吸収できる利点もある。すなわち、緩衝材を設けることなく、カバー部材25をしっかりと保持できる。
【0043】
本体ケース5に内蔵したステータコア等は運転によってコイルや鉄心、銅心が発熱し、発熱すると磁力が低下して駆動効率が低下する現象が見られるが、本実施形態のように本体ケース5の外側に第2環状空間39を形成してここに冷却水を導くと、本体ケース5が外周側から冷却される(本体ケース5から外周側に放熱される)ため、ステータコア等の昇温を抑制して駆動効率の低下を防止できる。
【0044】
本体ケース5をタイミングチェーンカバー2の貫通穴4に遊嵌させると、本体ケース5の位置決め(芯合わせ)と姿勢安定性とが問題になるが、本実施形態では、カバー部材25の筒状部27がタイミングチェーンカバー2の吸い込み口36に嵌合していることと、カバー部材25におけるリング板29の前向き突条29aがポンプ本体3の環状溝30に嵌合していることにより、本体ケース5はカバー部材25を介してシリンダブロック1にしっかりと保持されている。従って、本体ケース5は、外周からの冷却性を確保しつつ安定的に保持されている。
【0045】
また、カバー部材25の筒状部27とシリンダブロック1の吸い込み口36とはガスケット35を介して嵌合しているため、シール性を確実化できるだけでなく、筒状部27と吸い込み口36とに加工誤差があっても、その加工誤差を吸収してきっちりと嵌め合わせできる。ガスケット35に代えてOリングを使用することも可能である。
【0046】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、ウォータポンプをシリンダブロック1の排気側面又は吸気側面に配置することも可能であり、この場合は、タイミングチェーンカバーとの関係はなくなって、本体ケースはシリンダブロックに固定される。逆に、ウォータポンプをタイミングチェーンカバーに設けつつ、タイミングチェーンカバーに凹所を形成することも可能である。この場合は、タイミングチェーンカバーが請求項に記載したポンプハウジングになる。ウォータポンプをシリンダヘッドに固定することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本願発明は、エンジンのウォータポンプ装置に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 ポンプハウジングの一例としてのシリンダブロック
2 中間ハウジングの一例としてタイミングチェーンカバー
3 ポンプ本体
4 タイミングチェーンカバーの貫通穴
5 本体ケース
7 嵌入部
9 本体ケースのフロント支持部
10 軸受け穴
11 中心軸
14 ブッシュ(スリーブ)
15 ロータ
16 回転子
17 環状空間
20 羽根車を構成する回転円板
21 羽根車を構成するインペラー(フィン)
22 羽根車を構成する蓋板
23 羽根車
25 カバー部材
26 屋根部
27 筒状部
28 足片(固定翼)
29 リング板
31 キャップ部
32 ワッシャ
33 アーム部
34 凹所
35 ガスケット
36 吸い込み口(冷却水流入通路)
37 ポンプ室(渦室)