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特開2024-112568細胞凍結保存剤及び細胞凍結保存方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112568
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】細胞凍結保存剤及び細胞凍結保存方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/00 20060101AFI20240814BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20240814BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240814BHJP
   C12N 1/04 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C07K14/00 ZNA
C07K7/06
C07K7/08
C12N1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017699
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599029420
【氏名又は名称】田畑 泰彦
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大田 英和
(72)【発明者】
【氏名】田畑 泰彦
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065BD27
4B065BD39
4B065CA60
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045BA20
4H045BA21
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞を保存する際に、凍結時の細胞死及び細胞の機能低下を抑制し、かつ、溶解時に細胞の生存率低下及び細胞の機能低下を引き起こさない細胞凍結保存剤を提供する。
【解決手段】細胞凍結保存剤は、タンパク質(A)、水及びアルコール(B)を含有し、前記アルコール(B)の重量割合が、細胞凍結保存剤の重量を基準として2~10重量%であり、前記タンパク質(A)の重量割合が、氷晶からの保護の観点から、細胞凍結保存剤の重量を基準として0.5~15重量%である。また、アルコール(B)が有する水酸基の重量割合は、氷晶からの保護の観点から、アルコール(B)の重量を基準として、40~60重量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質(A)、水及びアルコール(B)を含有する細胞凍結保存剤であって、
前記アルコール(B)の重量割合が、細胞凍結保存剤の重量を基準として2~10重量%であり、
前記タンパク質(A)の重量割合が、細胞凍結保存剤の重量を基準として0.5~15重量%であり、
前記タンパク質(A)1分子中のポリペプチド鎖(y)とポリペプチド鎖(y’)との合計個数が1~100個であり、
前記ポリペプチド鎖(y)が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号13からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸配列(X)が2~200個連続したポリペプチド鎖であり、
前記ポリペプチド鎖(y’)は、前記アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸数の60%以下のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換された前記アミノ酸配列(X’)を含み、かつ、前記ポリペプチド鎖(y)を構成するアミノ酸数の5%以下のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖であり、1つの前記ポリペプチド鎖(y’)において置換された前記リシン及び前記アルギニンの合計個数は1~100個であり、
前記アミノ酸配列(X)の疎水性度が1.1~1.3であり、
前記アミノ酸配列(X’)の疎水性度が-3~-0.4であり、
前記タンパク質(A)に含まれる前記アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸の合計個数の割合が、タンパク質(A)を構成するアミノ酸数を基準として、40~68%であり、
前記タンパク質(A)に含まれる前記アミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数の割合が、タンパク質(A)を構成するアミノ酸数を基準として、2~10%であり、
前記タンパク質(A)に含まれる前記アミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数と、前記アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸の合計個数との比率[アミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数/アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸の合計個数]が0.09~0.2であり、
前記タンパク質(A)の疎水性度が0.2~1.2であり、
前記アルコール(B)が有する水酸基の重量割合が、前記アルコール(B)の重量を基準として、40~60重量%である細胞凍結保存剤。
【請求項2】
前記タンパク質(A)が、配列番号14に示されるアミノ酸配列であるGAGAGS配列(14)が2~50個連続して結合したポリペプチド鎖(S)をさらに有する請求項1に記載の細胞凍結保存剤。
【請求項3】
前記タンパク質(A)1分子中の、前記GAGAGS配列(14)の個数と、前記アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計個数との比{GAGAGS配列(14):アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計}が、1:1~1:20である請求項2に記載の細胞凍結保存剤。
【請求項4】
タンパク質(A)のSDS-PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法による分子質量が15~200kDaである請求項1又は2に記載の細胞凍結保存剤。
【請求項5】
タンパク質(A)が、前記GVGVP配列(1)が2~200個連続したポリペプチド鎖(y1)中の1個のアミノ酸がリシンで置換されたポリペプチド鎖(y’1)を有するタンパク質(A11)である請求項1又は2に記載の細胞凍結保存剤。
【請求項6】
タンパク質(A)が、配列番号15に示されるアミノ酸配列である(GAGAGS)配列(15)であるポリペプチド鎖(S1-1)及び配列番号16に示されるアミノ酸配列である(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(16)であるポリペプチド鎖(y’11)を有する人工タンパク質(A111-1-1)である請求項1又は2に記載の細胞凍結保存剤。
【請求項7】
前記タンパク質(A)は、配列番号28に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号28に示されるアミノ酸配列との相同性が70%以上であるアミノ酸配列を有する請求項1に記載の細胞凍結保存剤。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の細胞凍結保存剤を用いて細胞(C)を凍結保存する方法である細胞凍結保存方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞凍結保存剤及び細胞凍結保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の保存には、従来、凍結保存方法等が用いられている。
凍結保存法としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)と血清とを含む培地に細胞を入れて凍結保存する方法(非特許文献1)が一般的に用いられている。細胞は使用時には、凍結状態から溶解し使用される。しかしながら、溶解状態ではDMSOの細胞毒性により細胞の機能が低下(例えば、接着率が低下)してしまう問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】村上浩紀、菅原卓也、細胞工学概論、コロナ社、1994年12月、p99-104
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は細胞を保存する際に、凍結時の細胞死及び細胞の機能低下を抑制し、かつ、溶解時に細胞の生存率低下及び細胞の機能低下を引き起こさない細胞凍結保存剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究を重ねてきた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明の細胞凍結保存剤は、タンパク質(A)、水及びアルコール(B)を含有する細胞凍結保存剤であって、前記アルコール(B)の重量割合が、細胞凍結保存剤の重量を基準として2~10重量%であり、前記タンパク質(A)の重量割合が、細胞凍結保存剤の重量を基準として0.5~15重量%であり、前記タンパク質(A)1分子中のポリペプチド鎖(y)とポリペプチド鎖(y’)との合計個数が1~100個であり、前記ポリペプチド鎖(y)が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号13からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸配列(X)が2~200個連続したポリペプチド鎖であり、前記ポリペプチド鎖(y’)は、前記アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸数の60%以下のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換された前記アミノ酸配列(X’)を含み、かつ、前記ポリペプチド鎖(y)を構成するアミノ酸数の5%以下のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖であり、1つの前記ポリペプチド鎖(y’)において置換された前記リシン及び前記アルギニンの合計個数は1~100個であり、前記アミノ酸配列(X)の疎水性度が1.1~1.3であり、前記アミノ酸配列(X’)の疎水性度が-3~-0.4であり、前記タンパク質(A)に含まれる前記アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸の合計個数の割合が、タンパク質(A)を構成するアミノ酸数を基準として、40~68%であり、前記タンパク質(A)に含まれる前記アミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数の割合が、タンパク質(A)を構成するアミノ酸数を基準として、2~10%であり、前記タンパク質(A)に含まれる前記アミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数と、前記アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸の合計個数との比率[アミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数/アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸の合計個数]が0.09~0.2であり、前記タンパク質(A)の疎水性度が0.2~1.2であり、前記アルコール(B)が有する水酸基の重量割合が、前記アルコール(B)の重量を基準として、40~60重量%である。
本発明の細胞凍結保存方法は、前記本発明の細胞凍結保存剤を用いて細胞(C)を凍結保存する方法である。
【発明の効果】
【0006】
また、本発明の細胞凍結保存剤を用いて細胞を凍結保存すると、溶解時に細胞の生存率及び細胞の機能が低下しにくいという効果を奏する。
本発明の細胞凍結保存剤による上記の効果は、細胞死及び細胞の機能低下の原因となる、凍結時の氷晶の成長抑制、及び、氷晶の細胞内への侵入防止により、効果を奏しているものと推測される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の細胞凍結保存剤は、タンパク質(A)を含有し、タンパク質(A)の重量割合が、氷晶からの保護の観点から、細胞凍結保存剤の重量を基準として0.5~15重量%である。
タンパク質(A)の重量割合が、0.5重量%未満であると、タンパク質(A)による細胞外部の保護効果(特に、細胞死及び細胞の機能低下の原因となる、凍結時の氷晶からの保護)が不十分であり、細胞死及び細胞の機能低下につながる。
タンパク質(A)による氷晶からの保護効果の観点からは、タンパク質(A)の重量割合は、細胞凍結保存剤の重量を基準として2~10重量%であることが好ましい。
【0008】
タンパク質(A)は、疎水性度の調整や動物由来物質の排除のために、下記の人工タンパク質であることが好ましい。
人工タンパク質は、人工的に製造されるものであり、有機合成法(酵素法、固相合成法及び液相合成法等)及び遺伝子組み換え法等によって製造できる。有機合成法に関しては、「生化学実験講座1、タンパク質の化学IV(1981年7月1日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」又は「続生化学実験講座2、タンパク質の化学(下)(昭和62年5月20日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」に記載されている方法等が適用できる。遺伝子組み換え法に関しては、特許第3338441号公報に記載されている方法等が適用できる。有機合成法及び遺伝子組み換え法はともに、人工タンパク質を作製できるが、アミノ酸配列を簡便に変更でき、安価に大量生産できるという観点等から、遺伝子組み換え法が好ましい。
【0009】
タンパク質(A)は、ポリペプチド鎖(y)及びポリペプチド鎖(y’)を有する。なお、以下、「ポリペプチド鎖(y)」及び「ポリペプチド鎖(y’)」の両者を区別する必要がない場合には、両者をまとめて、「ポリペプチド鎖(Y)」とも記載する。
【0010】
本発明において、ポリペプチド鎖(y)は、配列番号1に示されるアミノ酸配列であるGVGVP配列(1)、配列番号2に示されるアミノ酸配列であるVGVPG配列(2)、配列番号3に示されるアミノ酸配列であるGVPGV配列(3)、配列番号4に示されるアミノ酸配列であるVPGVG配列(4)、配列番号5に示されるアミノ酸配列であるPGVGV配列(5)、配列番号6に示されるアミノ酸配列であるGVGVAP配列(6)、配列番号7に示されるアミノ酸配列であるVGVAPG配列(7)、配列番号8に示されるアミノ酸配列であるGVAPGV配列(8)、配列番号9に示されるアミノ酸配列であるVAPGVG配列(9)、配列番号10に示されるアミノ酸配列であるAPGVGV配列(10)、配列番号11に示されるアミノ酸配列であるPGVGVA配列(11)、配列番号12に示されるアミノ酸配列であるAGVPGFGVG配列(12)及び配列番号13に示されるアミノ酸配列であるAGVPGLGVG配列(13)からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸配列(X)が2~200個連結したポリペプチド鎖である。
【0011】
本発明においてポリペプチド鎖(y)は、具体的には、(GVGVP)配列、(VGVPG)配列、(GVPGV)配列、(VPGVG)配列、(PGVGV)配列、(GVGVAP)配列、(VGVAPG)配列、(GVAPGV)配列、(VAPGVG)配列、(APGVGV)配列、(PGVGVA)配列、(AGVPGFGVG)配列及び(AGVPGLGVG)配列で表されるポリペプチド鎖等が挙げられる。(なお、b~nはそれぞれアミノ酸配列(X)の連続する個数であり、2~200の整数である。)
タンパク質(A)1分子中にポリペプチド鎖(y)を複数有する場合は、上記ポリペプチド鎖(y)は同一でも異なっていてもよい。
また、タンパク質(A)が、ポリペプチド鎖(y)を複数有する場合は、上記アミノ酸配列(X)の連続する個数は、ポリペプチド鎖(y)ごとに同一でも異なっていてもよい。すなわち、アミノ酸配列(X)の連続する個数上記b~nが同じポリペプチド鎖(y)を複数有してもよく、b~nが異なるポリペプチド鎖(y)を複数有してもいい。
【0012】
ポリペプチド鎖(y)を構成するアミノ酸配列(X)としては、氷晶からの保護の観点から、GVGVP配列(1)が好ましい。つまり、ポリペプチド鎖(y)として(GVGVP)配列が好ましい。
【0013】
ポリペプチド鎖(y)は、アミノ酸配列(X)が2~200個連続した(上記b~nが2~200)ポリペプチド鎖であるが、氷晶からの保護の観点から、連続する個数は2~20個(上記b~nが2~20)が好ましく、さらに好ましくは8~16個(上記b~nが8~16)である。
【0014】
ポリペプチド鎖(y’)は、アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸数の60%以下のアミノ酸がリシン(K)及び/又はアルギニン(R)で置換されたアミノ酸配列(X’)を含み、かつ、ポリペプチド鎖(y)を構成するアミノ酸数の5%以下のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖であり、1つのポリペプチド鎖(y’)において置換されたリシン及びアルギニンの合計個数が1~100個である。
【0015】
ポリペプチド鎖(y’)であるかどうかは、タンパク質(A)の配列中のリシン(K)及びアルギニン(R)を、他のアミノ酸[グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、プロリン(P)等]に置きかえたときに、ポリペプチド鎖(y)となるかによって判断する。
ポリペプチド鎖(y’)において、置換されたリシン及び/又はアルギニンの合計個数は1~100個であるが、氷晶からの保護の観点から、5~50個が好ましく、さらに好ましくは13~26個である。
また、ポリペプチド鎖(y’)において、置換されたリシン及び/又はアルギニンの割合は、1つのポリペプチド鎖(y’)を構成するアミノ酸数に対し、5%以下であるが、氷晶からの保護の観点から、0.06%~5%であることが好ましく、0.5~5%がさらに好ましく、特に好ましくは1~5%である。
【0016】
アミノ酸配列(X’)として、具体的には、配列番号17に示されるアミノ酸配列であるGKGVP配列(17)、配列番号18に示されるアミノ酸配列であるGKGKP配列(18)、配列番号19に示されるアミノ酸配列であるGKGRP配列(19)及び配列番号20に示されるアミノ酸配列であるGRGRP配列(20)等が挙げられる。
アミノ酸配列(X’)において、アミノ酸配列(X)中のアミノ酸の置換の数[リシン(K)及び/又はアルギニン(R)で置換された数]は、水への溶解性の観点から、1~5個が好ましく、さらに好ましくは1~3個である。
また、アミノ酸配列(X’)は、溶解性の観点から、アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸数の10~60%が置換されたアミノ酸配列が好ましく、さらに好ましくは20~60%が置換されたアミノ酸配列である。
また、アミノ酸配列(X’)としては、水への溶解性の観点から、GKGVP配列(17)、GKGKP配列(18)及びGRGRP配列(20)からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列が好ましく、さらに好ましくはGKGVP配列(17)及びGKGKP配列(18)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0017】
タンパク質(A)1分子中のポリペプチド鎖(y)とポリペプチド鎖(y’)の合計個数は、氷晶からの保護の観点から、1~100個である。また、これらの合計個数は、氷晶からの保護の観点から、4~80個が好ましく、さらに好ましくは4~60個である。
【0018】
なお、タンパク質(A)中に、アミノ酸配列(X)の種類及び/又は連続する個数が異なるポリペプチド鎖(y)を有している場合は、それぞれを1個として数え、ポリペプチド鎖(y)の個数はその合計である。ポリペプチド鎖(y’)についても同様である。
【0019】
本発明の細胞凍結保存剤では、タンパク質(A)に含まれるアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数の割合が、氷晶からの保護の観点から、タンパク質(A)を構成する全アミノ酸数を基準として50~70%であることが好ましい。
上記の割合は、氷晶からの保護作用をさらに向上させる観点から、52.5~67.5%が好ましく、さらに好ましくは55~65%である。
【0020】
また、本発明の細胞凍結保存剤では、タンパク質(A)に含まれるアミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸の合計個数の割合が、氷晶からの保護の観点から、タンパク質(A)を構成する全アミノ酸数を基準として40~68%である。
上記の割合は、氷晶からの保護作用をさらに向上させる観点から、45~60%であることが好ましい。
【0021】
また、本発明の細胞凍結保存剤では、タンパク質(A)に含まれるアミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数の割合が、氷晶からの保護の観点から、タンパク質(A)を構成する全アミノ酸数を基準として2~10%である。
上記の割合は、氷晶からの保護作用をさらに向上させる観点から、5~9%であることが好ましい。
【0022】
タンパク質(A)に含まれるアミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数と、アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸の合計個数との比率[アミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数/アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸の合計個数]は、氷晶からの保護の観点から、0.09~0.2である。
【0023】
上記のタンパク質(A)に含まれるアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数の割合等は、プロテインシークエンサーによって求めることができる。具体的には、下記の測定法により求めることができる。
【0024】
<タンパク質(A)中の全アミノ酸数に対するアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数の割合の測定法>
特定のアミノ酸残基で切断できる切断方法から2種類以上を用いて、タンパク質(A)を30残基以下程度まで分解する。その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離した後、プロテインシークエンサーにてアミノ酸配列を読み取る。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、タンパク質(A)の全配列を決定する。その後、タンパク質(A)を構成する全アミノ酸数に対する全てのアミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸及び全てのアミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数の割合を算出する。
【0025】
本発明において、タンパク質(A)は、氷晶からの保護及び水への溶解性の観点から、配列番号14に示されるアミノ酸配列であるGAGAGS配列(14)が2~50個個連続して結合したポリペプチド鎖(S)を有することが好ましい。
ポリペプチド鎖(S)において、GAGAGS配列(14)が連続する個数は、氷晶からの保護及び水への溶解性の観点から、2~50個が好ましく、さらに好ましくは2~40個であり、次にさらに好ましくは2~30個であり、特に好ましくは2~10個である。
タンパク質(A)が、ポリペプチド鎖(S)を有する際、タンパク質(A)1分子中にポリペプチド鎖(S)が1個以上含まれていればよいが、氷晶からの保護及び水への溶解性の観点から、4~100個含まれることが好ましく、さらに好ましくは4~60個含まれることである。
【0026】
タンパク質(A)において、タンパク質(A)を構成する全アミノ酸数に対する全てのGAGAGS配列(14)を構成するアミノ酸数の割合[{タンパク質(A)中のGAGAGS配列(14)の数×6}/{タンパク質(A)中の全アミノ酸数}×100]は、氷晶からの保護の観点から、5~50%が好ましく、さらに好ましくは10~47.5%であり、特に好ましくは20~45%である。
タンパク質(A)を構成する全アミノ酸数に対する全てのGAGAGS配列(14)を構成するアミノ酸数の割合は、プロテインシークエンサーによって求めることができる。具体的には、下記の測定法により求める。
【0027】
<タンパク質(A)を構成する全アミノ酸数に対する全てのGAGAGS配列(14)を構成するアミノ酸数の割合>
特定のアミノ酸残基で切断できる切断方法の2種類以上を用いて、タンパク質(A)を30残基以下程度まで分解する。その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離した後、プロテインシークエンサーにてアミノ酸配列を読み取る。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、タンパク質(A)の全配列を決定する。その後、以下記載の測定式にてタンパク質(A)を構成する全アミノ酸数に対する全てのGAGAGS配列(14)を構成するアミノ酸数の割合を算出する。
タンパク質(A)を構成する全アミノ酸数に対する全てのGAGAGS配列(14)を構成するアミノ酸数の割合(%)=[{GAGAGS配列(14)の数×6}/{タンパク質(A)中の全アミノ酸の数}]×100
【0028】
タンパク質(A)が、ポリペプチド鎖(S)を有する場合、タンパク質(A)は、ポリペプチド鎖(Y)及びポリペプチド鎖(S)が、交互にそれぞれ4個以上化学結合したポリペプチド鎖(YS)を有することが好ましい。
ポリペプチド鎖(YS)は、ポリペプチド鎖(Y)及びポリペプチド鎖(S)が、交互にそれぞれ4個以上、直接(後述の介在アミノ酸配列(Z)を介さず)、化学結合した構造であることが好ましい。
上記の通り、ポリペプチド鎖(YS)は、ポリペプチド鎖(Y)及びポリペプチド鎖(S)が、交互にそれぞれ4個以上、直接、化学結合した構造をとることで、タンパク質(A)の分子は、分子内のポリペプチド鎖(S)部位同士の距離が近づくように、折りたたんだ高次構造をとりやすくなる。この高次構造が細胞周辺を保護することで、細胞死及び細胞の機能低下の原因となる、凍結時の氷晶の侵入を防いでいるものと推測される。
【0029】
ポリペプチド鎖(YS)には、GAGAGS配列(14)、アミノ酸配列(X)、アミノ酸配列(X’)、介在アミノ酸配列(Z)、又は末端アミノ酸配列(T)が結合してもよい。
【0030】
タンパク質(A)では、ポリペプチド鎖(y)、ポリペプチド鎖(y’)及びポリペプチド鎖(S)を合計2個以上有する場合は、タンパク質(A)は、ポリペプチド鎖とポリペプチド鎖との間に、介在アミノ酸配列(Z)を有していても良い。
介在アミノ酸配列(Z)は、アミノ酸が1個又は2個以上結合したペプチド配列であって、GAGAGS配列(14)、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)を含まないペプチド配列である。介在アミノ酸配列(Z)を構成するアミノ酸の数は、水への溶解性の観点から、1~30個が好ましく、さらに好ましくは1~15個、特に好ましくは1~10個である。介在アミノ酸配列(Z)として、具体的には、配列番号21に示されるアミノ酸配列であるVAAGY配列(21)、配列番号22に示されるアミノ酸配列であるGAAGY配列(22)及びLGP配列等が挙げられる。
タンパク質(A)を構成する全アミノ酸数に対する全ての介在アミノ酸配列(Z)を構成するアミノ酸数の割合[Σ{(介在アミノ酸配列(Z)中のアミノ酸の数)×(介在アミノ酸配列(Z)の数)}/{タンパク質(A)中の全アミノ酸数}×100]は、氷晶からの保護の観点から、0~25%が好ましく、さらに好ましくは0~22.5%であり、特に好ましくは0.01~15%である。
【0031】
タンパク質(A)中の両末端の各ポリペプチド鎖(y)、ポリペプチド鎖(y’)及びポリペプチド鎖(S)のN及び/又はC末端には、末端アミノ酸配列(T)を有していても良い。
末端アミノ酸配列(T)を有する場合、タンパク質(A)の末端の構造としては、GAGAGS配列(14)、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)に、末端アミノ酸配列(T)が結合した構造等が挙げられる。
なお、末端アミノ酸配列(T)に結合するGAGAGS配列(14)は、ポリペプチド鎖(S)を構成していなくてもよい。
末端アミノ酸配列(T)に結合するアミノ酸配列(X)は、ポリペプチド鎖(Y)を構成していなくてもよい。
末端アミノ酸配列(T)に結合するアミノ酸配列(X’)は、ポリペプチド鎖(Y)を構成していなくてもよい。
末端アミノ酸配列(T)は、アミノ酸が1個又は2個以上結合したペプチド配列であって、GAGAGS配列(14)、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)を含まないペプチド配列である。
末端アミノ酸配列(T)を構成するアミノ酸の数は、水への溶解性の観点から、1~100個が好ましく、さらに好ましくは1~50個、特に好ましくは1~40個である。(T)として、具体的には、配列番号23に示されるアミノ酸配列であるMDPVVLQRRDWENPGVTQLNRLAAHPPFASDPM配列(23)、配列番号24に示されるアミノ酸配列であるMDPVVLQRRDWENPGVTQLNRLAAHPPFASDPMGAGS配列(24)、配列番号25に示されるアミノ酸配列であるGAGAMDPGRYQDLRS配列(25)等が挙げられる。
【0032】
タンパク質(A)を構成する全アミノ酸数に対する末端アミノ酸配列(T)を構成するアミノ酸数の割合は、氷晶からの保護の観点から、25%以下が好ましく、さらに好ましくは22.5%以下であり、特に好ましくは0.01~15%である。
【0033】
タンパク質(A)は、前述の通り、生物工学的手法により細菌を用いて製造することがある。このような場合、発現させたタンパク質(A)の精製又は検出を容易にするために、タンパク質(A)は末端アミノ酸配列(T)の内の末端側に、N及び/又はC末端に特殊なアミノ酸配列を有するタンパク質又はペプチド(以下これらを「精製タグ」と称する)を有しても良い。精製タグとしては、アフィニティー精製用のタグが利用される。そのような精製タグとしては、ポリヒスチジンからなる6×Hisタグ、V5タグ、E2タグ、Xpressタグ、AU1タグ、T7タグ、VSV-Gタグ、DDDDKタグ、Sタグ、CruzTag09TM、CruzTag22TM、CruzTag41TM、Glu-Gluタグ、Ha.11タグ及びKT3タグ等がある。
以下に、各精製タグ(i)とそのタグを認識結合するリガンド(ii)との組み合わせの一例を示す。
(i-1)グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GTS) (ii-1)グルタチオン
(i-2)マルトース結合タンパク質(MBP) (ii-2)アミロース
(i-3)HQタグ (ii-3)ニッケル
(i-4)Mycタグ (ii-4)抗Myc抗体
(i-5)HAタグ (ii-5)抗HA抗体
(i-6)FLAGタグ (ii-6)抗FLAG抗体
(i-7)6×Hisタグ (ii-7)ニッケル又はコバルト
精製タグ配列の導入方法としては、発現用ベクターにおけるタンパク質(A)をコードする核酸の5’又は3’末端に精製タグをコードする核酸を挿入する方法や市販の精製タグ導入用ベクターを使用する方法等が挙げられる。
【0034】
タンパク質(A)において、タンパク質(A)を構成する全ての介在アミノ酸配列(Z)を構成するアミノ酸数、タンパク質(A)を構成する全ての末端アミノ酸配列(T)を構成するアミノ酸数及び精製タグを構成するアミノ酸数の合計数の割合は、氷晶からの保護の観点から、タンパク質(A)を構成する全アミノ酸数を基準として、0~25%が好ましく、さらに好ましくは0~22.5%であり、特に好ましくは0.01~15%である。
【0035】
タンパク質(A)1分子中の、GAGAGS配列(14)の個数と、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計個数との比率(GAGAGS配列(14)の個数:アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計個数)は、氷晶からの保護及び水への溶解性の観点から、1:1~1:20が好ましく、1:1~1:6がさらに好ましく、1:1~1:5が特に好ましく、1:1~1:4がとりわけ好ましく、1:1.5~1:4が最も好ましい。
【0036】
好ましいタンパク質(A)の一部を以下に例示する。
(A1):アミノ酸配列(X)がGVGVP配列(1)であるタンパク質
(A11):GVGVP配列(1)が2~200個連続したポリペプチド鎖(y1)中の1個のアミノ酸がリシン(K)で置換されたポリペプチド鎖(y’1)を有するタンパク質
(A111)ポリペプチド鎖(y’1)とGAGAGS配列(14)が2~200個連続したポリペプチド鎖(S1)とを有するタンパク質
(A111-1):GVGVP配列(1)が8個連続した配列番号26に示されるアミノ酸配列である(GVGVP)配列(26)のポリペプチド鎖(y11)の1個のアミノ酸がリシン(K)で置換された配列番号16に示されるアミノ酸配列である(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(16)であるペプチド鎖(y’11)と、GAGAGS配列(14)が2~200個連続したポリペプチド鎖(S1)を有するタンパク質
(A111-1-1):GAGAGS配列(14)が4個連続した配列番号15に示されるアミノ酸配列である(GAGAGS)配列(15)であるポリペプチド鎖(S1-1)と(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(16)とを有するタンパク質
具体的には、下記タンパク質が含まれる。
(i)(GAGAGS)配列(15)を12個及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(16)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、配列番号27に示されるアミノ酸配列である(GAGAGS)配列(27)が化学結合したタンパク質[分子質量が約80kDaの配列番号28に示されるアミノ酸配列である配列(28)のタンパク質(SELP8K)]
(ii)(GAGAGS)配列(15)及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(16)をそれぞれ4個有し、これらが交互に化学結合してなる分子質量が約30kDaの配列番号29に示されるアミノ酸配列である配列(29)のタンパク質(SELP8K4)
(A111-1-2):(GAGAGS)配列(27)であるポリペプチド鎖(S1-2)と(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(16)とを有するタンパク質
具体的には、下記タンパク質が含まれる。
(i)(GAGAGS)配列(27)及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(16)をそれぞれ17個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約82kDaの配列番号30に示されるアミノ酸配列である配列(30)のタンパク質(SELP0K)
【0037】
(A111-2):GVGVP配列(1)が12個連続したポリペプチド鎖の1個のアミノ酸がリシン(K)で置換された配列番号31に示されるアミノ酸配列である(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(31)(y’12)と、GAGAGS配列(14)が2~200個連続したポリペプチド鎖(S1)を有するタンパク質
(A111-2-1):(GAGAGS)配列(15)と(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(31)とを有するタンパク質
(i)(GAGAGS)配列(15)を12個及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(31)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、(GAGAGS)配列(27)が化学結合した分子質量が約105kDaの配列番号32に示されるアミノ酸配列である配列(32)のタンパク質
【0038】
これらの中では、配列(28)のタンパク質(SELP8K)であることが好ましい。
また、タンパク質(A)は、配列(28)のタンパク質のアミノ酸配列と相同性が70%以上であるアミノ酸配列を有するタンパク質であっても良い。
また、この相同性は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0039】
本発明におけるタンパク質(A)は、円二色性スペクトル法により求められるタンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計割合が60~85%であることが好ましい。タンパク質の配列が同じでも、タンパク質の作製方法、タンパク質の精製方法、タンパク質を溶解させる溶媒のpH及び溶媒の極性等により、タンパク質中のβターン構造とランダムコイル構造との合計割合は異なる。
βターン構造とランダムコイル構造との合計割合が上記の範囲であると、氷晶からの保護効果が向上する。
タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計割合は、氷晶からの保護の観点から、さらに好ましくは65~80%であり、特に好ましくは70~80%である。
上記割合を制御する方法としては特に限定されないが、以下の方法により増加又は低下させることができる。
上記割合を増加させる場合には、例えば、タンパク質(A)を例えば、単独のタンパク質(A)を過剰量の緩衝液で希釈してからリフォールディングさせる希釈リフォールディング法(大希釈法)が挙げられる。
また、上記割合を低下させる場合には、例えば、タンパク質(A)を変性剤や熱等により変性させる方法が挙げられる。
タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計割合は、下記測定法によって求める。
【0040】
<タンパク質(A)中のβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合の測定方法>
タンパク質を0.3mg/mLとなるように脱イオン水(4℃)に溶解し、タンパク質の水溶液を作製する。作製したタンパク質の水溶液を円二色性スペクトル測定器(日本分光株式会社製、「J-820」)にて測定し(測定温度:4℃)、二次構造解析プログラム(JWSSE型:日本分光株式会社製)にてβターン構造の割合とランダムコイル構造の割合とを算出し、これらの合計をβターン構造とランダムコイル構造との合計の割合とする。
【0041】
タンパク質(A)の分子質量は、氷晶からの保護の及び水への溶解性の観点から、15~200kDaが好ましく、さらに好ましくは30~150kDaであり、特に好ましくは70~120kDaである。
なお、タンパク質(A)の分子質量は、SDS-PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法により、タンパク質(A)を分離し、泳動距離を標準物質と比較する方法によって求められる。
【0042】
本発明において、タンパク質(A)の疎水性度は、氷晶からの保護及び水への溶解性の観点から、0.2~1.2であり、好ましくは0.5~1.2が好ましく、さらに好ましくは0.5~0.8であり、特に好ましくは0.55~0.75であり、最も好ましくは0.60~0.72である。
(A)の疎水性度は、(A)分子の疎水性の度合いを示すものであり、(A)分子を構成するそれぞれのアミノ酸の数(Mα)、それぞれのアミノ酸の疎水性度(Nα)及び(A)1分子中のアミノ酸の総数(M)を、下記数式に当てはめることにより算出することができる。なお、それぞれのアミノ酸の疎水性度は、非特許文献(アルバート・L.レーニンジャー、デビット・L.ネルソン、レーニンジャーの新生化学上、廣川書店、2010年9月、p.346-347)に記載されている下記の数値を用いる。
疎水性度=Σ(Mα×Nα)/(M
α:(A)1分子中のそれぞれのアミノ酸の数
α:各アミノ酸の疎水性度
:(A)1分子中のアミノ酸の総数
A(アラニン):1.8
R(アルギニン):-4.5
N(アスパラギン):-3.5
D(アスパラギン酸):-3.5
C(システイン):2.5
Q(グルタミン):-3.5
E(グルタミン酸):-3.5
G(グリシン):-0.4
H(ヒスチジン):-3.2
I(イソロイシン):4.5
L(ロイシン):3.8
K(リシン):-3.9
M(メチオニン):1.9
F(フェニルアラニン):2.8
P(プロリン):-1.6
S(セリン):-0.8
T(トレオニン):-0.7
W(トリプトファン):-0.9
Y(チロシン):-1.3
V(バリン):4.2
例えば、(A)が(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(17)である場合、(A)の疎水性度={16(Gの数)×(-0.4)+15(Vの数)×4.2+8(Pの数)×(-1.6)+1(Kの数)×(-3.9)}/40(アミノ酸の総数)=1.00である。
【0043】
アミノ酸配列(X)の疎水性度は、1.1~1.3である。
アミノ酸配列(X’)の疎水性度は、-3~-0.4である。
タンパク質(A)は、上記の疎水性度のアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)を有することで、細胞と適度に相互作用し、細胞死及び細胞機能低下の原因となる氷晶の細胞内部への侵入を防止し、氷晶からの保護作用を発揮しているものと推測される。
【0044】
本発明の細胞凍結保存剤は水を含む。
細胞凍結保存剤中の水としては、特に限定するものではなく、滅菌されたものが好ましい。滅菌方法としては、0.2μm以下の孔径を持つ精密ろ過膜を通した水、限外ろ過膜を通した水、逆浸透膜を通した水及びオートクレーブで121℃20分加熱して過熱滅菌したイオン交換水等が挙げられる。
【0045】
細胞凍結保存剤に含まれる水の含有量は、タンパク質(A)の溶解性の観点から50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましい。
また、細胞凍結保存剤に含まれる水の含有量の上限は、特に限定されないが、97重量%以下、94重量%以下、84重量%以下等が挙げられる。
【0046】
本発明の細胞凍結保存剤は、上記タンパク質(A)以外に、アルコール(B)を含有する。
【0047】
アルコール(B)が有する水酸基の重量割合は、氷晶からの保護の観点から、アルコール(B)の重量を基準として、40~60重量%であり、50~60重量%であることが好ましく、55~60重量%であることがさらに好ましい。
アルコール(B)としては、炭素数2~5のアルコール(エチレングルコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロール等)等が挙げられる。
【0048】
本発明の細胞凍結保存剤が含有するアルコール(B)の重量割合は、氷晶からの保護の観点から、細胞凍結保存剤の重量を基準として、2~10重量%である。
【0049】
本発明の細胞凍結保存剤が含有するアルコール(B)の重量と、タンパク質(A)の重量との比率[アルコール(B)の重量/タンパク質(A)の重量]は、氷晶からの保護の観点から、0.1~10であることが好ましい。
【0050】
本発明の細胞凍結保存剤が含有するタンパク質(A)及びアルコール(B)の合計重量の割合は、氷晶からの保護の観点から、細胞凍結保存剤の重量を基準として、6重量%以上であることが好ましく、7重量%以上であることがさらに好ましい。
【0051】
アルコール(B)は、適度な親水性と疎水性のバランスを有することで、細胞内に含まれやすくなり、細胞死等の原因となる氷晶の発生源である水が、細胞内に存在する量を低減させているものと推測される。
さらに、適度な親水性と疎水性のバランスを有するタンパク質(A)が、細胞及びアルコール(B)と相互作用することで、タンパク質(A)と細胞との親和性が向上し、タンパク質(A)による保護効果が向上するという効果、及び、細胞周辺のタンパク質(A)の存在により、水の細胞膜透過による水の流入を抑制し、するという効果が好適に発揮され、溶解時に細胞の生存率及び細胞の機能が低下しにくいという効果が好適に発揮されると考えられる。
【0052】
本発明の細胞凍結保存剤は、上記タンパク質(A)、水及びアルコール(B)以外に、発明の効果を妨げない範囲で、DMSO、培地成分(血清、成長因子、糖、ビタミン、アミノ酸、ピルビン酸、フェノール指示薬等)、無機塩及びリン酸(塩)を含んでも良い。
【0053】
血清としては、ウシ血清(FBS等)、ウマ血清、ヤギ血清、ヒツジ血清、ブタ血清、ウサギ血清、ニワトリ血清、ラット血清、及びマウス血清等などが挙げられる。
細胞凍結保存剤中の血清の含有量(重量%)は、細胞保存性の観点から、細胞凍結保存剤の重量を基準として10~25%が好ましい。
【0054】
本発明の細胞凍結保存剤が含有するDMSOの重量割合の上限は、細胞機能保護の観点から、細胞凍結保存剤の重量を基準として、10重量%以下であることが好ましく、7重量%以下であることがさらに好ましく、5重量%以下であることが特に好ましく、3重量%以下であることが最も好ましい。
本発明の細胞凍結保存剤がDMSOを含有する場合、DMSOの重量割合の下限は、細胞機能保護の観点から、細胞凍結保存剤の重量を基準として、1重量%以上が好ましく、2重量%以上であることがさらに好ましい。
また、本発明の細胞凍結保存剤がDMSOを含有する場合、タンパク質(A)の重量と、DMSOの重量との比率[タンパク質(A)の重量/DMSOの重量]は、細胞機能保護の観点から、0.1~10が好ましく、0.5~6がさらに好ましい。
【0055】
成長因子としては、上皮成長因子(Epidermal growth factor:EGF)、インスリン様成長因子(Insulin-like growth factor:IGF)、トランスフォーミング成長因子(Transforming growth factor:TGF)、神経成長因子(Nerve growth factor:NGF)、脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor:BDNF)、血管内皮細胞増殖因子(Vesicular endothelial growth factor:VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte-colony stimulating factor:G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Granulocyte-macrophage-colony stimulating factor:GM-CSF)、血小板由来成長因子(Platelet-derived growth factor:PDGF)、エリスロポエチン(Erythropoietin:EPO)、トロンボポエチン(Thrombopoietin:TPO)、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF又はFGF2)、肝細胞増殖因子(Hepatocyte growth factor:HGF)等が挙げられる。
細胞凍結保存剤中の成長因子の含有量(重量ppm)は、細胞保存性の観点から、細胞凍結保存剤の重量を基準として0~1000が好ましく、さらに好ましくは0~100であり、次にさらに好ましくは0~50である。
【0056】
糖としては、従来知られている糖が含まれ、具体的には、単糖(グルコース等)、オリゴ糖(ショ糖、ラクトース及びマンノース等)、多糖(ヒアルロン酸等)及びこれらが化学修飾されたもの等が挙げられる。
細胞凍結保存剤中の糖の含有量(重量%)は、細胞保存性の観点から、細胞凍結保存剤の重量を基準として0~1重量%が好ましく、0.1~0.5重量%が好ましい。
【0057】
ビタミンとしては、従来知られているビタミンが含まれ、具体的には、ミオイノシトール、ニコチン酸、塩酸ピリドキシン及び塩酸チアミン等が挙げられる。
細胞凍結保存剤中のビタミンの含有量(重量%)は、細胞保存性の観点から、細細凍結胞保存剤の重量を基準として0~0.01重量%が好ましい。
【0058】
アミノ酸としては、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、ロイシン、リシン、ヒスチジン、システイン、グルタミン、グルタミン酸、イソロイシン、メチオニン、プロリン、セリン、トレオニン、バリン及びそれらの塩等が挙げられる。
細胞凍結保存剤中のアミノ酸の含有量(重量%)は、細胞保存性の観点から、細胞凍結保存剤の重量を基準として0~0.2重量%が好ましい。
【0059】
無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム及び炭酸水素マグネシウム等が挙げられる。リン酸塩は無機塩に含まない。
細胞凍結保存剤中の塩の含有量(重量%)は、細胞保存性の観点から、細胞凍結保存剤の重量を基準として0~1.3重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5~1.3重量%であり、特に好ましくは0.7~1.1重量%であり、最も好ましくは0.85~0.95重量%である。
【0060】
リン酸(塩)は、リン酸及び/又はリン酸塩を意味する。
細胞凍結保存剤中のリン酸(塩)としては、リン酸及びリン酸塩が挙げられる。
塩としては、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩等が挙げられる。
細胞凍結保存剤中のリン酸(塩)の含有量(重量%)は、細胞保存性の観点から、細胞凍結保存剤の重量を基準として0~0.30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.10~0.30重量%であり、特に好ましくは0.12~0.28重量%であり、最も好ましくは0.14~0.26重量%である。
【0061】
細胞凍結保存剤のpHは、細胞保存性の観点から、6~8が好ましく、さらに好ましく
は6.8~7.2である。
【0062】
また、水及びその他の成分(培地成分等)を含む下記培地を用いて細胞凍結保存剤を作成してもよい。培地を用いて細胞凍結保存剤を作成した場合の、細胞凍結保存剤中の各成分の好ましい含有量、好ましいpHは、上述と同じである。
培地としては、無血清培地及び血清培地が含まれる。
無血清培地としては、Grace培地、IPL-41培地、Schneider’s培地、Opti-PROTMSFM培地、Opti-MEMTMI培地、VP-SFM培地、CD293培地、293SFMII培地、CD-CHO培地、CHO-S-SFMII培地、FreeStyleTM293培地、CD-CHO AGTTM培地、RPMI培地、DMEM培地、MEM培地、Eagle’sMEM培地、BME培地、DME培地、αMEM培地、IMEM培地、ES培地、DM-160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地、ASF103培地、ASF104培地、ASF301培地、TC-100培地、Sf-900II培地、Ex-cell405培地、Express-Five培地、Drosophila培地及びこれらの混合培地等が挙げられる。
これらのうち、細胞の安定性の観点から、Opti-PROTMSFM培地、Opti-MEMTMI培地、VP-SFM培地、CD293培地、293SFMII培地、CD-CHO培地、CHO-S-SFMII培地、FreeStyleTM293培地、CD-CHO AGTTM培地、DMEM培地及びこれらの混合培地が好ましく、さらに好ましくはOpti-PROTMSFM培地、VP-SFM培地、CD293培地、293SFMII培地、FreeStyleTM293培地、DMEM培地及びこれらの混合培地である。
血清培地としては、一般の培地(DMEM培地、DME培地、RPMI培地、MEM培地、BME培地、DME培地、αMEM培地、IMEM培地、ES培地、DM-160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地、ASF103培地、ASF104培地、ASF301培地、TC-100培地、Sf-900II培地、Ex-cell405培地、Express-Five培地、Drosophila培地及びこれらの混合培地等)に血清を加えたもの等が挙げられる。血清としては、ヒト血清、及び動物血清(ウシ血清、ウマ血清、ヤギ血清、ヒツジ血清、ブタ血清、ウサギ血清、ニワトリ血清、ラット血清、及びマウス血清等)が含まれる。
【0063】
本発明の細胞凍結保存剤の製造方法としては、特に限定ないが、一例を下記に示す。
水を含む20~40℃の溶液(前記の培地等)に、所定量のタンパク質(A)を添加し、均一になるまで室温(例えば25℃)で振とう混和する。
混和の方法としては、遠心分離(3,000g,3分間等)及びピペッティング等の操作を数回繰り返す方法等が挙げられる。
【0064】
本発明の細胞(C)の細胞凍結保存方法は、本発明の細胞凍結保存剤を用いて、細胞(C)を凍結保存する方法である。
【0065】
また、本発明の細胞凍結保存剤の使用方法としては、特に限定ないが、一例を下記に示す。
(I)細胞凍結保存剤を20~40℃に温調する。
(II)(I)の細胞凍結保存剤中に細胞を添加し、ピペット等を用いて懸濁させる。
(III)細胞を懸濁させた(II)の溶液を、20~40℃に温調する。
上記(II)において、細胞数は、細胞保存性の観点から、細胞凍結保存剤の体積を基準として、10~10個/mLが好ましく、さらに好ましくは10~10個/mLである。
(IV)(III)で得た液を、凍結保存容器(コスモ・バイオ(株)製ミスターフロスティー等)に入れ、例えば-80℃のディープフリーザー庫内で、例えば1℃/minの凍結速度で凍結する。また、-80℃での凍結保存後(18~30時間後等)、に凍結したサンプルを液体窒素中(-196℃)に移し保存する。(凍結保存の期間は、1~40日間であることが好ましい。)
【0066】
本発明の細胞凍結保存剤を用いて保存できる細胞(C)としては、特に限定はなく、接着性細胞(C1)及び浮遊性細胞(C2)が含まれる。
接着性細胞(C1)は、幹細胞、前駆細胞、上皮細胞、中皮細胞、内皮細胞及びがん細胞等であり、具体的には、ES細胞、iPS細胞、MS細胞、線維芽細胞、神経前駆細胞、肝前駆細胞、骨前駆細胞、表皮細胞、腺房細胞、腺細胞、腹膜由来細胞、血管内皮細胞、肝がん細胞、腸がん細胞、肺がん細胞等が挙げられる。
接着性細胞(C1)としては、具体的には、MC3T3-E1細胞及びhADSC細胞等が挙げられる。
浮遊性細胞(C2)は、血球系細胞であり、具体的には、単球、リンパ球、好中球、好酸球、好塩基球等が挙げられる。
浮遊性細胞(C2)としては、具体的には、THP-1細胞等が挙げられる。
【0067】
本発明の細胞凍結保存剤の使用方法としては、細胞の凍結保存剤として使用できる。
本発明の細胞凍結保存剤は、細胞凍結保存剤に細胞を懸濁して細胞を保存しても良く、細胞懸濁液中に添加しても良い。
細胞を懸濁させた溶液中に添加する場合、細胞懸濁液中のタンパク質(A)の濃度は、細胞保存性の観点から、細胞懸濁液の重量を基準として、0.5~15重量%が好ましく、さらに好ましくは2~10重量%である。
細胞(C)の濃度は、細胞保存性の観点から、細胞凍結保存剤の体積を基準として、10~10個/mLが好ましく、さらに好ましくは10~10個/mLである。
【0068】
本明細書には、以下の事項が開示されている。
【0069】
本開示(1)は、タンパク質(A)、水及びアルコール(B)を含有する細胞凍結保存剤であって、前記アルコール(B)の重量割合が、細胞凍結保存剤の重量を基準として2~10重量%であり、前記タンパク質(A)の重量割合が、細胞凍結保存剤の重量を基準として0.5~15重量%であり、前記タンパク質(A)1分子中のポリペプチド鎖(y)とポリペプチド鎖(y’)との合計個数が1~100個であり、前記ポリペプチド鎖(y)が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号13からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸配列(X)が2~200個連続したポリペプチド鎖であり、前記ポリペプチド鎖(y’)は、前記アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸数の60%以下のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換された前記アミノ酸配列(X’)を含み、かつ、前記ポリペプチド鎖(y)を構成するアミノ酸数の5%以下のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖であり、1つの前記ポリペプチド鎖(y’)において置換された前記リシン及び前記アルギニンの合計個数は1~100個であり、前記アミノ酸配列(X)の疎水性度が1.1~1.3であり、前記アミノ酸配列(X’)の疎水性度が-3~-0.4であり、前記タンパク質(A)に含まれる前記アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸の合計個数の割合が、タンパク質(A)を構成するアミノ酸数を基準として、40~68%であり、前記タンパク質(A)に含まれる前記アミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数の割合が、タンパク質(A)を構成するアミノ酸数を基準として、2~10%であり、前記タンパク質(A)に含まれる前記アミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数と、前記アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸の合計個数との比率[アミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数/アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸の合計個数]が0.09~0.2であり、前記タンパク質(A)の疎水性度が0.2~1.2であり、前記アルコール(B)が有する水酸基の重量割合が、前記アルコール(B)の重量を基準として、40~60重量%である細胞凍結保存剤である。
【0070】
本開示(2)は、前記タンパク質(A)が、配列番号14に示されるアミノ酸配列であるGAGAGS配列(14)が2~50個連続して結合したポリペプチド鎖(S)をさらに有する本開示(1)に記載の細胞凍結保存剤である。
【0071】
本開示(3)は、前記タンパク質(A)1分子中の、前記GAGAGS配列(14)の個数と、前記アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計個数との比{GAGAGS配列(14):アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計}が、1:1~1:20である本開示(2)に記載の細胞凍結保存剤である。
【0072】
本開示(4)は、タンパク質(A)のSDS-PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法による分子質量が15~200kDaである本開示(1)~(3)のいずれかに記載の細胞凍結保存剤である。
【0073】
本開示(5)は、タンパク質(A)が、前記GVGVP配列(1)が2~200個連続したポリペプチド鎖(y1)中の1個のアミノ酸がリシンで置換されたポリペプチド鎖(y’1)を有するタンパク質(A11)である本開示(1)~(4)のいずれかに記載の細胞凍結保存剤である。
【0074】
本開示(6)は、タンパク質(A)が、配列番号15に示されるアミノ酸配列である(GAGAGS)配列(15)であるポリペプチド鎖(S1-1)及び配列番号16に示されるアミノ酸配列である(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(16)であるポリペプチド鎖(y’11)を有する人工タンパク質(A111-1-1)である本開示(1)~(5)のいずれかに記載の細胞凍結保存剤である。
【0075】
本開示(7)は、前記タンパク質(A)は、配列番号28に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号28に示されるアミノ酸配列との相同性が70%以上であるアミノ酸配列を有する本開示(1)に記載の細胞凍結保存剤である。
【0076】
本開示(8)は、本開示(1)~(7)のいずれかに記載の凍結保存剤を用いて細胞(C)を凍結保存する方法である細胞凍結保存方法である。
【実施例0077】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、部は重量部を示す。
【0078】
<製造例1>
(1)タンパク質(A-1)(SELP8K)の作製
○SELP8Kの生産
特許第4088341号公報の実施例記載の方法に準じて、SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345を作製した。
作製したプラスミドを大腸菌にトランスフォーメーションし、SELP8K生産株を得た。以下、このSELP8K生産株を用いて、配列(28)を有するタンパク質(A-1)を生産する方法を示す。
【0079】
○SELP8K生産株の培養
30℃で生育させたSELP8K生産株の一夜培養液を使用して、250mLフラスコ中のLB培地50mLに接種した。カナマイシンを最終濃度50μg/mLとなるように加え、該培養液を30℃で攪拌しながら(200rpm)培養した。培養液が濁度OD600=0.8(吸光度計UV1700:(株)島津製作所製を使用)となった時に、40mLを42℃に前もって温めたフラスコに移し、同じ温度で約2時間培養した。培養した培養液を氷上で冷却し、培養液の濁度OD600を測定し、遠心分離にて大腸菌を集菌した。
【0080】
○SELP8Kの精製
集菌した大腸菌を用い、下記1:菌体溶解、2:遠心分離による不溶性細片の除去、3:硫安沈殿、4:限外濾過、5:陽イオン交換クロマトグラフィー、6:限外濾過、7:凍結乾燥により大腸菌バイオマスからタンパク質を精製した。このようにして、分子質量が約80kDaの配列(28)を有するタンパク質の精製物である製造例1に係るタンパク質(A-1)(SELP8K)を得た。
【0081】
1:菌体溶解
集菌した大腸菌100gに対して、脱イオン水200gを加えて、高圧ホモジナイザー(55MPa)にて菌体溶解し、溶解した菌体を含む菌体溶解液を得た。その後、菌体溶解液を氷酢酸にてpH4.0に調整した。
【0082】
2:遠心分離による不溶性細片の除去
さらに菌体溶解液を遠心分離(6300rpm、4℃、30分間)して、上清を回収した。
【0083】
3:硫安沈殿
回収した上清に硫安濃度が25重量%となるように飽和硫安溶液を投入した。その後、8~12時間静置した後、遠心分離にて沈殿物を回収した。回収した沈殿物を脱イオン水に溶解した。溶解した液に対して、同様に硫安濃度が25重量%となるように飽和硫安溶液を投入した。その後、8~12時間静置した後、遠心分離にて沈殿物を回収した。回収した沈殿物を脱イオン水に溶解し、溶液を得た。
【0084】
4:限外濾過
「3:硫安沈殿」で得た溶液を分子質量30,000Daカットの限外濾過装置(ホロファーバー:GEヘルスケア社製)に供した。「3:硫安沈殿」で得た溶液に対して、10倍量の脱イオン水を用いて、限外濾過を実施し、限外濾過後のタンパク質を得た。
【0085】
5:陽イオン交換クロマトグラフィー
限外濾過後のタンパク質を10mM酢酸ナトリウム緩衝液に溶解して20g/Lとし、陽イオン交換カラムHiPrepSP XL16/10(GEヘルスケア社製)をセットしたAKTAPilot(GEヘルスケア社製)に供した。溶出液として500mM酢酸ナトリウム緩衝液を用いて、溶出画分を回収した。
【0086】
6:限外濾過
「5:陽イオン交換クロマトグラフィー」で得た溶液を上記「4:限外濾過」と同様にして処理し、限外濾過後のタンパク質を得た。
【0087】
7:凍結乾燥
タンパク質を脱イオン水に溶解して5g/Lとし、水位が15mm以下となるようにステンレス製のバットに入れた。その後、凍結乾燥機(日本テクノサービス(株)製)に入れて、-40℃、16時間かけて凍結させた。凍結後、真空度が8Pa以下、-20℃で、90時間かけて1次乾燥、真空度が8Pa以下、20℃で、24時間かけて2次乾燥させた。このようにして、製造例1に係るタンパク質(A-1)(SELP8K)を得た。
【0088】
○SELP8Kの同定
製造例1に係るタンパク質(A-1)を下記の手順で同定した。
ラビット抗SELP8K抗体及びC末端配列の6×Hisタグに対するラビット抗6×His抗体(Roland社製)を用いたウエスタンブロット法により分析した。ウエスタンブロット法の手順は下記の通りとした。見かけ分子質量80kDaの位置に、各抗体に抗体反応性を示すバンドが見られた。
また、アミノ酸分析システム(Prominence島津製作所製)を用いたアミノ酸組成分析より得られた製造例1に係るタンパク質(A-1)のアミノ酸の組成物率(実測値)と、合成遺伝子配列から推測されるSELP8Kのアミノ酸の組成物率(理論値)を表1に示す。
これらから、製造例1に係るタンパク質(A-1)は、(GAGAGS)配列(15)を12個及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(16)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、(GAGAGS)配列(27)が化学結合してなる配列(28)を有するタンパク質(SELP8K)であることを確認した。
即ち、タンパク質(A-1)において、
アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸の合計個数の割合は、タンパク質(A-1)の全アミノ酸数を基準として51%であり、
アミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数の割合は、タンパク質(A-1)の全アミノ酸数を基準として7%であり、
アミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数と、アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸の合計個数との比率[アミノ酸配列(X’)を構成するアミノ酸の合計個数/アミノ酸配列(X)を構成するアミノ酸の合計個数]は、0.14である。
また、タンパク質(A-1)を構成するアミノ酸配列(X)[GVGVP(1)]の疎水性度は、1.2であり、
タンパク質(A-1)を構成するアミノ酸配列(X’)[GKGVP(17)]の疎水性度は、-0.42であり、
タンパク質(A-1)疎水性度は、0.62である。
【0089】
【表1】
【0090】
<ウエスタンブロット法>
ウエスタンブロット用サンプル20μLに3×SDS処理バッファ[150mM Tris HCl(pH6.8)、300mM ジチオスレイトール、6重量% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.3重量% ブロモフェノールブルー、及び30重量% グリセロールを含む]10μLを添加して95℃で5分間加温し、泳動用試料を調製した。この泳動用試料15μLを用いてSDS-PAGEを行った。泳動後のゲルをフッ化ポリビニリデンメンブレンにトランスファー(以下、「メンブレン」と略記)し、これをブロッキングバッファ[20mM Tris(pH7.6)、137mM NaCl、0.1重量% Tween20、及び5重量% スキムミルクを含む]に浸漬して1時間室温で振蕩することによりメンブレンのブロッキング処理を行った。ブロッキング処理後、メンブレンをTBS-T[20mM Tris(pH7.6)、137mM NaCl、及び0.1重量% Tween20を含む]で2分間洗浄した。次に、メンブレンを一次抗体溶液(一次抗体:抗SELP8K抗体及び抗His-tag抗体(Rockland社製)をTBS-Tで500分の1に希釈した溶液)に浸漬し、4℃で一晩静置して抗体反応を行った。反応後、このメンブレンをTBS-Tで5分間、4回洗浄した後、一次抗体に結合可能であり且つ標識酵素として西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させた二次抗体の溶液(二次抗体:ECL anti-rabbit IgG HRP linked F(ab’)2 fragment(GEヘルスケア社製)をTBS-Tで2000分の1に希釈した溶液)にメンブレンを浸漬し、30分間室温で静置して抗体反応を行った。反応後、メンブレンをTBS-Tで5分間、4回洗浄した後、ECL-Advance Western Blotting Detection Kit(GEヘルスケア社製)により酵素反応を行った。ルミノメーターForECL(GEヘルスケア社製)を用いて、高感度インスタント黒白フィルム(富士フイルム株式会社製)に感光させ、バンドを可視化した。
【0091】
○βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合の測定
製造例1に係るタンパク質(A-1)を用いて下記の手順でβターン構造とランダムコイル構造の合計の割合を測定した。
<βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合の測定>
製造例1に係るタンパク質(A-1)を0.3mg/mLとなるように脱イオン水(4℃)に溶解し、製造例1に係るタンパク質(A-1)水溶液を作製した。作製した製造例1に係るタンパク質(A-1)水溶液を円二色性スペクトル測定器(日本分光:J-820)にて測定し(測定温度:4℃)、二次構造解析プログラム(JWSSE型:日本分光株式会社製)を用いて、βターン構造とランダムコイル構造の合計の割合を算出した。結果は、70.9%であった。
【0092】
<実施例1~19及び比較例1~5>
本発明の細胞凍結保存剤は、以下の方法で製造した。
(1)タンパク質(A-1)に、血清を含まない培地を、表2に記載の重量比率となるように添加し、均一になるまで25℃で混和した。
培地はMC3T3-E1細胞又はhADSC細胞を培養する場合はαMEM培地(1重量%PS含有)を、THP-1細胞を培養する場合はRPMI1640培地(1重量%PS含有)を用いた。
(2)(1)で調製した溶液に、表2に記載のアルコールを、表2に記載の重量比率となるように添加し以降の実験に用いた。
【0093】
【表2】
【0094】
<細胞の培養>
マウス頭蓋冠細胞として、MC3T3-E1細胞を、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞としてhADSCを使用した。
MC3T3-E1細胞及びhADSC細胞は、MEMα培地(10重量%FBS,1重量%PS含有)を用いて、37℃、5体積%CO条件下で十分量が得られるまで培養した。
ヒト血球系細胞として、THP-1細胞を使用した。THP-1細胞は、RPMI1640培地(10重量%FBS,1重量%PS含有)(GIBCO社製)を用いて、37℃、5体積%CO条件下で充分量が得られるまで培養した。
【0095】
<凍結保存サンプルの調製方法>
上記の<細胞の培養>にて培地をアスピレーターで除去した後、少量のPBS(-)(100mm培養皿に対して5mL)で洗浄し、その後トリプシン水溶液(2.5g/L-トリプシン、1mM-EDTAを含有、ナカライテスク株式会社製)(100mm培養皿に対して2mL)を加え37℃,5体積%CO下で5分間インキュベーションした。その後、トリプシンと当量の培地を加え遠心分離(200g,3分間)して細胞を回収した。
なお、THP-1細胞(浮遊細胞)を培養した場合は、上記のトリプシン処理をせず、遠心分離して回収した。
各凍結保存条件に対し15mLtubeに細胞を3.0×10cellsになるように分取し、遠心分離後(200g,3分間)にアスピレーターにより上清を取り除きPBS(-)を3mL加えて懸濁し洗浄した。その後、遠心分離し再度上清を取り除いた。上記のPBS(-)による洗浄操作は2回繰り返した。
その後、1.0×10cells/mLになるように実施例1~19及び比較例1~5で調製した細胞凍結保存剤を3mL加えて懸濁し各クライオチューブに1mLずつ分注した。
【0096】
<凍結保存方法>
上記の<凍結保存サンプルの調製方法>で得た細胞凍結保存サンプルを含有するクライオチューブを、標線まで、2-プロパノールを注いだ凍結保存容器(ミスターフロスティー、コスモ・バイオ(株)製)に入れ、-80℃のディープフリーザー庫内で、1℃/minの凍結速度で凍結した。24時間後に、凍結したサンプルを液体窒素中(-196℃)に移し、3日間保存した。
【0097】
細胞の凍結保存後に、以下の方法で、細胞生存率、細胞初期接着率及び細胞増殖率を測定した。
【0098】
(1)細胞生存率の測定
表2に示す実施例及び比較例に関して、細胞生存率の評価を、トリパンブルー(0.05%p-ヒドロキシ安息香酸メチル含有生理食塩水含有,ナカライテスク株式会社製)染色法にて行った。
まず、液体窒素中に保存していたサンプルを37℃で3分間温浴させ急速溶解させた。次に、15mLチューブ中に溶解したサンプル1mLをMEMα培地(10重量%FBS,1重量%PS)3mLで希釈し、遠心分離(200g,3分間)し上清を取り除いた。MEMα培地1mL/tubeで細胞を再懸濁した。その後細胞懸濁液10μL、トリパンブルー溶液10μL混ぜて10μLの混合液を細胞計測盤(ワケンカウンター,ワケンビューテック株式会社製)に入れて生細胞数、死細胞数を各区画(5区画/枚)カウントした。
細胞生存率は以下の式に従い各区画(生細胞数最大と最小の区画は除外)にて算出した。
各区画の細胞生存率(%)=生細胞数/(生細胞数+死細胞数)×100
上記の各サンプルの細胞生存率は3回で実施し、その平均値を細胞生存率とした。
また、細胞としてMC3T3-E1を用いる場合、上記の<凍結保存方法>において、液体窒素中での保存期間を3日間から7日間に変更した条件での試験も実施した。
【0099】
(2)凍結保存後の細胞初期接着率の測定
表2に示す実施例及び比較例に関して、保存期間が3日間のMC3T3-E1細胞及びhADSCについて(1)で得た再懸濁後の液を、6wellプレートに添加した。その際、MEMα培地(10重量%FBS,1重量%PS)を用いて1.0×10cells/wellの生細胞密度となるように、2mL/穴の量となるように、6wellプレート添加した。その後、37℃インキュベーター内に3時間培養した。
3時間後(培養終了後)、アスピレーターを用いて培地を除去し、PBS(-)を細胞に直接当たらないように注意しながら1mL/wellで添加し、アスピレーターを用いてPBS(-)を除去した。
次に、トリプシン水溶液(2.5g/L-トリプシン,1mM-EDTAを含有)を1mL/wellで添加し、37℃、二酸化炭素濃度5容量%のインキュベーター中に5分間放置した。
5分後に、MEMα培地(10重量%FBS,1重量%PS含有)を1mL/well添加し、1.5mLエッペンドルフチューブに移し、遠心分離(200g,3min)の後、上清を取り除いた。
MEMα培地(10重量%FBS,1重量%PS含有)を用いて、100μL/tubeとなるように再懸濁し、トリパンブルー(ナカライテスク製)染色にて生細胞数をカウントした。得られた生細胞数から以下の式を用い細胞接着率を算出した。なお、試験は3回実施し、その平均値を各細胞凍結保存剤の細胞初期接着率とした。
結果を表2に示す。
なお、細胞増殖率が高いほど、凍結保存により、細胞の機能が損なわれていないことを示す。
細胞接着率(%)=(X)/(X)×100
X:3時間後トリプシン処理にて回収した生細胞数
:1.0×10(播種した生細胞数)
得られた細胞接着率と、プレート表面のコーティング量をプロットし、近似直線を描き、コーティング量が2.5のときの細胞接着率を、上記の細胞接着率とする。
【0100】
(3)細胞増殖率の測定
表2に示す実施例及び比較例に関して、保存期間が3日間のMC3T3-E1細胞、hADSC及びTHP-1細胞について(1)で得た再懸濁後の液を、6wellプレートに添加した。その際、MEMα培地(10重量%FBS,1重量%PS)を用いて1.0×10cells/wellの生細胞密度となるように、2mL/穴の量となるように、6wellプレートに添加した。その後、37℃インキュベーター内に1,3又は4日間培養した。
各培養期間終了後(1、3又は4日後)、アスピレーターを用いて培地を除去し、PBS(-)を細胞に直接当たらないように注意しながら1mL/wellで添加し、アスピレーターを用いてPBS(-)を除去した。
次に、トリプシン水溶液(2.5g/L-トリプシン,1mM-EDTAを含有)を1mL/wellで添加し、37℃、二酸化炭素濃度5容量%のインキュベーター中に5分間放置した。
5分後に、MEMα培地(10重量%FBS,1重量%PS含有)を1mL/well添加し、1.5mLエッペンドルフチューブに移し遠心分離(200g,3min)の後上清を取り除いた。
MEMα培地(10重量%FBS,1重量%PS含有)を用いて、1日間培養した時は100μL/tubeとなるように、3日間及び4日間培養した時は500~600μL/tubeとなるように再懸濁し、トリパンブルー(ナカライテスク製)染色にて生細胞数をカウントした。得られた生細胞数から以下の式を用い細胞増殖率を算出した。なお、試験は3回実施し、その平均値を各細胞凍結保存剤の細胞増殖率とした。結果を表2に示す。
細胞増殖率(%)=(X)/(X)×100
X:培養期間終了後(1、3又は4日後)トリプシン処理にて回収した生細胞数
:1.0×10 (播種した生細胞数)
【0101】
表2に示すように、各実施例に係る細胞凍結保存剤を用いて細胞を凍結保存した場合、溶解後の細胞生存率、細胞初期接着率及び細胞増殖率が高いことが判明した。
従って、各実施例に係る細胞凍結保存剤を用いて細胞を凍結保存すると、溶解時に細胞の生存率及び細胞の機能が低下しにくいという効果を奏することが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の細胞凍結保存剤は、細胞を凍結保存する際の細胞凍結保存剤として使用できる。
【配列表】
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