(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011257
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】電子レンジ調理用ガゼット包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113129
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】川崎 健太郎
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA26
3E013BB12
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD20
3E013BE01
3E013BF03
3E013BF08
3E013BF23
3E013BF71
3E013BG15
(57)【要約】
【課題】電子レンジ調理時の膨張による側面部の立ち上がりによって形成された立体形状を開封後にも保持できる電子レンジ調理用ガゼット包装体を提供する。
【解決手段】ガゼット包装体1Aは、背貼りシール部3aを有する第一の面部4aと、第一の面部4aに対向している第二の面部4bと、第一の面部4aと第二の面部4bの間に介在するとともに内側への折込線を有する側面部4cと、を備えている。側面部4cは、折込線から第一の面部4aまでの幅L3が、折込線から第二の面部4bまでの幅L4よりも広く構成されている。これにより、電子レンジ調理時の膨張により立ち上がる側面部が開封後に内側へ向かって倒れ込みにくいので、開封後にも包装体1A全体の姿勢を高く保持することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装材の互いに略平行な一対の両端部が互いに合掌状にヒートシールされて形成された背貼りシール部を有する第一の面部と、
前記包装材の一部であり前記第一の面部に対向している第二の面部と、
前記包装材の一部であり、前記第一の面部と前記第二の面部の間に介在するとともに内側への折込線を有する側面部と、を備え、前記背貼りシール部の両末端部において前記背貼りシール部の延在方向に直交する方向でそれぞれヒートシールされた電子レンジ調理用ガゼット包装体であって、
前記包装材は、一軸延伸されたナイロンフィルムからなる基材層と、ヒートシール性樹脂層と、を有する積層体であり、
前記側面部は、前記折込線から前記第一の面部までの幅が、前記折込線から前記第二の面部までの幅よりも広く、
前記背貼りシール部には開封開始部が設けられており、
前記開封開始部を起点として前記背貼りシール部の延在方向に引っ張って開封した際に開封を誘導する開封誘導部が、前記第一の面部内に設けられている、電子レンジ調理用ガゼット包装体。
【請求項2】
包装材の互いに略平行な一対の両端部が互いに合掌状にヒートシールされて形成された背貼りシール部を有する第一の面部と、
前記包装材の一部であり前記第一の面部に対向している第二の面部と、
前記包装材の一部であり、前記第一の面部と前記第二の面部の間に介在するとともに内側への折込線を有する側面部と、を備え、前記背貼りシール部の両末端部において前記背貼りシール部の延在方向に直交する方向でそれぞれヒートシールされた電子レンジ調理用ガゼット包装体であって、
前記包装材は、一軸延伸されたナイロンフィルムからなる基材層と、ヒートシール性樹脂層と、を有する積層体であり、
前記背貼りシール部に直交する方向における前記第一の面部の幅は、同方向における前記第二の面部の幅よりも広く、
前記背貼りシール部には開封開始部が設けられており、
前記開封開始部を起点として前記背貼りシール部の延在方向に引っ張って開封した際に開封を誘導する開封誘導部が、前記第一の面部内に設けられている、電子レンジ調理用ガゼット包装体。
【請求項3】
前記開封誘導部は、前記開封開始部を起点として前記背貼りシール部の延在方向に引っ張って開封した際に進行する裂け目を捕捉して前記裂け目の進行を誘導するための一対のものとして、前記背貼りシール部を挟むようにして設けられている、請求項1又は2記載の電子レンジ調理用ガゼット包装体。
【請求項4】
前記背貼りシール部の延在方向は、前記ナイロンフィルムの延伸方向と一致している、請求項1又は2記載の電子レンジ調理用ガゼット包装体。
【請求項5】
前記開封誘導部は、レーザ加工によって形成された連続線、破線、点線、又はこれらの組み合わせからなる、請求項1又は2記載の電子レンジ調理用ガゼット包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ調理用ガゼット包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層フィルムからなる背貼りシール形状の包装袋が知られており、食品を内容物とした電子レンジ調理が可能な包装袋も知られている。特許文献1に開示されている包装袋は、電子レンジ調理時に包装袋が破裂しないように通蒸が可能であり、開封時には大きな開口を容易に形成することができ、そのまま食器の役割を兼ねることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この包装袋の内容量を大きくするためには、側面部に内側への折込線を有するガゼット包装体とすることが考えられる。ガゼット包装体は、電子レンジ調理時に内圧によって膨張し、折込線部分が外側へ張り出すようにして側面部が立ち上がり、その立体形状が顕著になる。この側面部の立ち上がりはその後の食器の役割としての深さを担うものであるため開封後でも保持されることが望ましいが、実際には、開封後には立ち上がった側面部が内側へ向かって倒れ込んで全体的に姿勢が低くなりやすい。その結果、積層フィルムの裏側が内部の食品に張り付いたり、中の液体(浸出液やタレ等)がこぼれやすくなったりする。
【0005】
そこで本発明は、電子レンジ調理時の膨張による側面部の立ち上がりによって形成された立体形状を開封後にも保持できる電子レンジ調理用ガゼット包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、包装材の互いに略平行な一対の両端部が互いに合掌状にヒートシールされて形成された背貼りシール部を有する第一の面部と、包装材の一部であり第一の面部に対向している第二の面部と、包装材の一部であり、第一の面部と第二の面部の間に介在するとともに内側への折込線を有する側面部と、を備え、背貼りシール部の両末端部において背貼りシール部の延在方向に直交する方向でそれぞれヒートシールされた電子レンジ調理用ガゼット包装体であって、包装材は、一軸延伸されたナイロンフィルムからなる基材層と、ヒートシール性樹脂層と、を有する積層体であり、側面部は、折込線から第一の面部までの幅が、折込線から第二の面部までの幅よりも広く、背貼りシール部には開封開始部が設けられており、開封開始部を起点として背貼りシール部の延在方向に引っ張って開封した際に開封を誘導する開封誘導部が、第一の面部内に設けられている、電子レンジ調理用ガゼット包装体を提供する。
【0007】
また、本発明は、包装材の互いに略平行な一対の両端部が互いに合掌状にヒートシールされて形成された背貼りシール部を有する第一の面部と、包装材の一部であり第一の面部に対向している第二の面部と、包装材の一部であり、第一の面部と第二の面部の間に介在するとともに内側への折込線を有する側面部と、を備え、背貼りシール部の両末端部において背貼りシール部の延在方向に直交する方向でそれぞれヒートシールされた電子レンジ調理用ガゼット包装体であって、包装材は、一軸延伸されたナイロンフィルムからなる基材層と、ヒートシール性樹脂層と、を有する積層体であり、背貼りシール部に直交する方向における第一の面部の幅は、同方向における第二の面部の幅よりも広く、背貼りシール部には開封開始部が設けられており、開封開始部を起点として背貼りシール部の延在方向に引っ張って開封した際に開封を誘導する開封誘導部が、第一の面部内に設けられている、電子レンジ調理用ガゼット包装体を提供する。
【0008】
上記の電子レンジ調理用ガゼット包装体はいずれも、開封開始部及び開封誘導部の働きによって所望の形状に開口を確保することができる。そして、電子レンジ調理時の膨張により立ち上がった側面部は、開封後に内側へ向かって倒れ込みにくいので、包装体全体の姿勢を高く保持することができる。
【0009】
ここで、開封誘導部は、開封開始部を起点として背貼りシール部の延在方向に引っ張って開封した際に進行する裂け目を捕捉して裂け目の進行を誘導するための一対のものとして、背貼りシール部を挟むようにして設けられていてもよい。
【0010】
この包装体では、背貼りシール部の延在方向は、ナイロンフィルムの延伸方向と一致していてもよい。この場合、開封時の引っ張り方向とナイロンフィルムの延伸方向とが一致するので、当該方向への引き裂きをしやすい。
【0011】
開封誘導部は、レーザ加工によって形成された連続線、破線、点線、又はこれらの組み合わせからなっていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子レンジ調理時の膨張による側面部の立ち上がりによって形成された立体形状を開封後にも保持できる電子レンジ調理用ガゼット包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(A)は、包装体の外観を示す図である。(B)は、(A)の展開図である。
【
図6】他の実施形態の包装体での
図2に相当する端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、いわゆるガゼット型の包装体に関する。この包装体は、内部に食品を収容しており、その電子レンジ調理において包装体の一部に通蒸口を形成することで、内部圧による破裂を防止することができる。また、調理後には背貼りシール部に設けた開封開始部から開封して、包装体の長手方向に比較的大きな開口幅を有する開口部を容易に形成することができるので、食品を取り出しやすく、包装材を食器として兼用することも可能である。電子レンジ調理時の膨張により立ち上がった側面部は、開封後でも内側へ向かって倒れ込みにくいので、開封後の包装体全体の姿勢を高く保持することができる。以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1及び
図2に示されているとおり、本実施形態の電子レンジ調理用ガゼット包装体(以下単に「包装体」と呼ぶ)1Aは、食品を内部に密封した袋体であり、合掌状にヒートシールされて形成された背貼りシール部3aと、背貼りシール部3aの両末端部において、背貼りシール部3aの延在方向に直交する方向でヒートシールされた二か所の端部シール部3b,3cとを備えている。背貼りシール部3aと端部シール部3b,3c以外の部分で、食品を収容する部分である胴部を構成している。背貼りシール部3aが形成されている側である第一の面部4aと、これと対向し背貼りシール部3aが形成されていない側である第二の面部4bとで包装体1Aの表裏をなしている。胴部のうち第一の面部4aと第二の面部4bの間には、包装体1Aの厚さ部分である側面部4c,4cが介在している。側面部4c,4cは、包装体1Aの内側へと折り込まれた折込線4dを有しており、一般のガゼット包装体の特徴をなしている。背貼りシール部3aには、端部シール部3b側に寄った位置に、開封開始部であるノッチ7が設けられている。なお、
図2では内部に収容されている食品の図示を省略している。
【0016】
包装体1Aは、背貼りシール部3a側から見たときに、背貼りシール部3aの基部6を中心線として、背貼りシール部3aをその両側から挟むようにして線対称に一対の開封誘導線(開封誘導部)5,5が設けられている。ここで基部6とは、背貼りシール部3aと胴部との境目を指している。開封誘導線5,5は、第一の面部4aの範囲内にある。開封誘導線5,5の詳細については後述する。
【0017】
図1(B)は
図1(A)の展開図であり、包装体1Aの構成材料である包装材100は、樹脂フィルムの積層体からなる矩形の樹脂シートである。包装体1Aの展開図に相当する包装材100は、その全ての周縁領域において、帯状に縁取られたヒートシール予定部3を有している。すなわち、ヒートシール予定部3は、矩形の縁から矩形の内側へ進入した所定の距離を幅として、矩形の全周に延在している。
図1(B)では、開封誘導線5,5が設けられている図示表面が包装体1Aの外面側、図示裏面が包装体1Aの内面側である。ヒートシール予定部3は、図示裏面にある。
図1(B)では、包装材100のうち、図示左右方向にあって図示上下方向に延在している互いに平行な一対の両端部が互いに合掌状にヒートシールされることで、背貼りシール部3aが形成される。
【0018】
図1(B)及び
図2に示されているとおり、包装体1Aは、背貼りシール部3aの延在方向に直交する方向における幅が、第一の面部4aと第二の面部4bとで異なっている。すなわち、第一の面部4aの幅L1が、第二の面部4bの幅L2よりも広い(L1>L2)。また、側面部4c,4cにおいては、折込線4dから第一の面部4aまでの幅L3が、折込線4dから第二の面部4bまでの幅L4よりも広い(L3>L4)。
【0019】
第一の面部4aの幅L1は、80mm~240mmであってもよく、100mm~200mmであってもよく、120mm~180mmであってもよい。第二の面部4bの幅L2は、60mm~200mmであってもよく、90mm~180mmであってもよく、115mm~155mmであってもよい。幅L1と幅L2との比は、L1/L2として1.05~1.80であってもよく、1.06~1.60であってもよく、1.07~1.40であってもよい。
【0020】
折込線4dから第一の面部4aまでの幅L3は、8mm~50mmであってもよく、10~40mmであってもよく、12mm~30mmであってもよい。折込線4dから第二の面部4bまでの幅L4は、3mm~40mmであってもよく、4mm~35mmであってもよく、5mm~25mmであってもよい。幅L3と幅L4との比は、L3/L4として1.05~4.00であってもよく、1.10~3.75であってもよく、1.15~3.50であってもよい。
【0021】
包装材100を構成している積層体は、一軸延伸されたナイロンフィルムからなる基材層と、ヒートシール性樹脂層と、を少なくとも備えている。ヒートシール性樹脂層は、包装体1Aの最内層として積層されている。基材層とヒートシール性樹脂層との間には、両者を貼合する接着剤や、印刷層を備えていてもよい。他に、ガスバリア層、遮光層、紫外線吸収層等を備えていてもよい。
【0022】
一軸延伸ナイロンフィルムの厚さは、例えば10μm~30μmである。一軸延伸ナイロンフィルムの一軸延伸の方向は、包装体1Aの背貼りシール部3aの延在方向と一致している。
【0023】
ヒートシール性樹脂層(シーラント)としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂が最も一般的なものとして用いることができる。ポリエチレン樹脂の中でも、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。本実施形態の包装体1Aの場合には特に、C4(ブテン-1)をコモノマーとしてZiegler-Natta系の触媒を用いて共重合した直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。このポリエチレンは手切れ性が良く、かつ、電子レンジでの加熱時に開封誘導線5,5が部分的に破断して開口し、蒸気抜きとして機能する通蒸口が形成されやすい。ヒートシール性樹脂層は、樹脂を溶融して基材層に押出して積層してもよいし、フィルムに成形されたものを貼り合せてもよい。
【0024】
本実施形態において、ヒートシール性樹脂層は、応力-歪み曲線の、弾性変形範囲における直線の傾きとして示されるヤング率(引張弾性率)がJIS K7127に準拠した測定において0.2ギガパスカル(GPa)以上であることが好ましい。このヤング率は0.3ギガパスカル以上であってもよく、0.4ギガパスカル以上であってもよい。ヤング率がこの範囲内にあるとヒートシール性樹脂層が伸びにくく、電子レンジでの加熱時に通蒸口が形成されやすくなる。
【0025】
ヒートシール性樹脂層の厚さは、例えば10μm~50μmであってもよく、20μm~40μmであってもよい。
【0026】
また、積層体については、応力-歪み曲線の、弾性変形範囲における直線の傾きとして示されるヤング率(引張弾性率)がJIS K7127に準拠した測定において0.45ギガパスカル(GPa)以上であることが好ましい。この測定では、開封誘導線5を形成したサンプルを用意し、これを測定対象として、開封誘導線5を跨いだ二か所(後述する切目線として伸びる方向に垂直な方向における二か所)を引っ張る。当該ヤング率の値が0.45ギガパスカル以上であると、電子レンジでの加熱時に、内圧による積層体の伸び(包装体1Aの破裂に耐える程度)と通蒸口の形成のされ具合がバランスしやすい。
【0027】
開封誘導線5,5は、包装材100を貫通しない程度の深さで設けられた切目線である。本実施形態において、開封誘導線5,5はいずれも、それぞれが直線形状である三つの部位からなっている。すなわち、開封誘導線5,5はいずれも、端部シール部3bに近い側、かつ、背貼りシール部3aの基部6に近い側において背貼りシール部3aの延在方向と平行に延びている第1の並走部5aと、第1の並走部5aの端部シール部3c側の端点から引き続き、端部シール部3c側に、かつ、背貼りシール部3aから遠ざかるように延びている横断部5bと、横断部5bの端部シール部3c側の端点から引き続き、背貼りシール部3aの延在方向と平行に延びている第2の並走部5cとからなる。ここで第1の並走部5aは、背貼りシール部3aの延在方向においてノッチ7の存在位置を内包するように位置しており、第2の並走部5cの終点は、背貼りシール部3aの延在幅の中央までは達しない位置にある。
【0028】
開封誘導線5,5における切れ目の深さは、当該部分を他の部分と比べて脆弱な構造とすることができ、かつ、包装材100を貫通しない程度(いわゆる「ハーフカット」)であればよく、例えば、ヒートシール性樹脂層以外の層が切れているように形成されてもよい。このような切目線は、ダイカッターやロータリーダイカッター等の刃物を用いる方法や、炭酸ガスレーザ等のレーザ加工機を用いる方法によって形成することができる。レーザ加工による場合は、レーザの線幅に基づいて材料が融けることで、幅のある切目線を形成することができる。この材料が融けて形成された切目線の幅(線の太さ)は、例えば50~300μm、好ましくは100~250μmである。また、切目線の長さは、10mm~100mmであってもよく、30mm~70mmであってもよい。
【0029】
包装体1Aは、内部に収容した食品を電子レンジ調理によって加熱し蒸らすことができる。電子レンジ内に包装体1Aを第二の面部4b側を下にして載置する。加熱すると内圧が高まって膨らみ、折込線4d部分が外側へ張り出すようにして側面部4c,4cが立ち上がり、その立体形状が顕著になる。更に加熱を続けると、従来の包装体では破裂するが、本実施形態の包装体1Aでは、胴部全体に張力が掛かる格好となったときに、引張応力に対して脆弱とされた開封誘導線5,5が部分的に破断し、通蒸口が形成される。通蒸口から蒸気が噴出することで、内圧が下がって包装体1Aの破裂が防止されるとともに、内部に充満している蒸気によって食品を蒸らすことができる。
【0030】
包装体1Aを開封するときは、はじめに、倒れた状態になっている背貼りシール部3aを起こす。次に、背貼りシール部3aのうちノッチ7の両側をそれぞれ指でつまんだ後、端部シール部3c側へ引っ張ることで包装体1Aの引き裂きが始まる。ノッチ7を起点として引き裂くと、裂け目9は背貼りシール部3aを胴部4側へ下りて基部6に達し、基部6において二股に分かれて進行し、開口部11を形成しながら第1の並走部5a,5aに達する。換言すれば、進行する裂け目9を第1の並走部5a,5aが捕捉する。その後、引き裂きを続けると(
図3)、裂け目9は第1の並走部5a,5a、横断部5b,5b、第2の並走部5c,5cに順次誘導されて進行し、第2の並走部5c,5cの終点に到達する。更に端部シール部3c側への引き裂きを続けると、開封誘導線5,5が存在しない部分において裂け目9が直線的に進行し、開口部11を大きく形成することができる(
図4)。これにより、食品13を取り出しやすくなる。また、開口部11が十分に大きいことから、包装材が食器を兼ねることができ、食品13を他の食器に移し替える必要がない。
【0031】
このような電子レンジ調理と開封の一連の手順において、包装体1Aを構成する包装材のヒートシール性樹脂層のヤング率が0.2ギガパスカル(GPa)以上である場合には特に、通蒸口が適切に形成されやすい。従来の包装体に用いていた包装材では、基材であるナイロンフィルムの吸湿性が高いために、開封誘導線5,5が設けられている部分でヒートシール性樹脂層を支持する力が弱くなり、ヒートシール性樹脂層が伸びてしまうことで通蒸口が形成されにくかったが、本実施形態の包装体1Aでは一軸延伸ナイロンフィルムが吸湿しても、通蒸口が適切に形成される。
【0032】
そして開封時には、第1の並走部5a,5aが背貼りシール部3aの延在方向においてノッチ7の存在位置を内包するように位置しているので、基部6から二股に分かれて進行した裂け目9を第1の並走部5a,5aが捕捉しやすい。また、包装材の基材層が一軸延伸ナイロンフィルムからなり、その延伸方向が引き裂く方向と一致しているので、開封誘導線5,5による誘導を終えた後の引き裂きにおいても直線的に引き裂きやすい。
【0033】
また、包装体1Aは、電子レンジ調理での膨張によって折込線4d部分が外側へ張り出すように側面部4c,4cが立ち上がり、厚さ(載置された状態での高さ)が大きくなる。この厚さにより食器の役割としての深さが確保される。ここで、通常のガゼット包装体では、開封後の形状において側面部が内側へ向かって倒れ込んで全体が低姿勢となり、積層フィルムの裏側が内部の食品に張り付いたり、中の液体(浸出液やタレ等)がこぼれやすくなったりする。これに対して本実施形態の包装体1Aでは、第一の面部の幅L1、第二の面部の幅L2、側面部の二つの幅L3,L4が所定の関係を満たしていることから、開封後の形状において側面部が内側へ向かって倒れ込むことが防止され、
図5に示されているとおり、膨張によって形成された立体形状が保持される。なお、
図5では内部に収容されている食品の図示を省略している。
【0034】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、包装体1Aの各部の幅関係について、第一の面部の幅L1が第二の面部の幅L2よりも広く、かつ、折込線4dから第一の面部4aまでの幅L3が折込線4dから第二の面部4bまでの幅L4よりも広い態様(L1>L2、かつ、L3>L4)を示したが、
図6に示されている包装体1Bのように、第一の面部の幅L1が第二の面部の幅L2よりも広く、かつ、折込線4dから第一の面部4aまでの幅L3と折込線4dから第二の面部4bまでの幅L4とが等しい態様(L1>L2、かつ、L3=L4)としてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では開封誘導線の形状を三つの直線部位からなる連続線で構成したものとしたが、曲線で構成してもよく、連続線のみならず破線、点線、又はこれらの組み合わせからなるものとしてもよい。また、上記実施形態では二本の開封誘導線を背貼りシール部に関して対称形としているが、非対称形としてもよい。
【実施例0036】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0037】
<実施例1>
(積層体の作製)
基材層としての一軸延伸ナイロン(商品名「ユニアスロン TB1000」、出光ユニテック株式会社製。厚さ15μm)に、インキ「リオグラン」(商品名、東洋インキ株式会社製)を用いて印刷を施した。この印刷面に対して、ヒートシール性樹脂層としての直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(商品名「KF101」、スカイフィルム株式会社製。厚さ40μm。ヤング率0.40GPa)を接着剤「タケラックA626」(商品名、三井化学株式会社製)及び「タケネートA50」(商品名、三井化学株式会社製)を用いて貼り合わせ、積層体を作製した。
【0038】
(包装体の形成)
基材層側から炭酸ガスレーザを照射し(出力25W、スキャン速度800mm/秒)、
図1(B)に示した形状となるように、ヒートシール性樹脂層を貫通しない開封誘導線を形成した。図示上下方向の存在領域が50mm、図示左右方向の存在領域が70mmであるようにした。内部に水20mLを充填し、
図1(A)に示した形状となるように各端部をヒートシールし、包装体を得た。背貼りシール部にアイノッチを設けた。包装体の大きさは、背貼りシール部がある面(これを「天面」と呼ぶ。)の幅(L1)を145mm、その反対側の面(これを「底面」と呼ぶ。)の幅(L2)を125mmとし、側面部のうち折込線から天面までの幅(L3)を15mm、折込線から底面までの幅(L4)を5mmとした。
【0039】
<実施例2~5及び比較例1~4>
側面部の折込幅(L3とL4)を表1に示した寸法となるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、包装体を作製した。
【0040】
(電子レンジ調理と通蒸性の評価)
実施例1~5、及び、比較例1~4の包装体を、底面が下側となるように電子レンジ内に載置して、600Wで3分間加熱した。それぞれの包装体が電子レンジ調理中に膨張する様子、及び、通蒸性を確認した。包装体を電子レンジから取り出し、開封した。開封後の形状を評価した。評価指標として、膨張によって形成された立体形状を開封後でも安定的に保持できていたものを「A」、膨張によって形成された立体形状が開封後に少し崩れたものを「B」、膨張によって形成された立体形状が開封後に保持されなかったものを「C」とした。
【0041】
【0042】
表1に示した結果によれば、側面部における天面側の幅が底面側の幅よりも広い場合に、開封後の形状安定性が優れていることが分かる。
1A,1B…包装体、3…ヒートシール予定部、3a…背貼りシール部、3b,3c…端部シール部、4a…第一の面部、4b…第二の面部、4c…側面部、4d…折込線、5…開封誘導線(開封誘導部)、5a…第1の並走部、5b…横断部、5c…第2の並走部、6…基部、7…ノッチ(開封開始部)、9…裂け目、11…開口部、13…食品、100…包装材、L1,L2,L3,L4…幅。